説明

ライナーレスラベルの印刷方法および印刷システム

【課題】ライナーレスラベルからサーマルヘッドへの異物の付着、ライナーレスラベルとの摺動によるプラテンローラの偏摩耗を防止可能な印刷システムを提案すること。
【解決手段】印刷システム1で用いるライナーレスラベル3は、その裏面の両端部分に粘着剤塗布層32L、32Rが形成され、表面の両端部分に形成した剥離剤塗布層34L、34Rの間が印刷領域35となっている。プラテンローラ23のローラ部分23Aによってライナーレスラベル3の非粘着剤領域36を押圧して、表面側の剥離剤が塗布されていない印刷領域35をサーマルヘッド22の表面に押し付けて印刷を行う。印刷領域35には粘着剤、剥離剤が付着していないので、サーマルヘッド22にこれらが付着することがない。プラテンローラ23のローラ部分23Aはライナーレスラベル3の粘着剤塗布層32L、32Rに接触しないので、粘着剤による偏摩耗がローラ部分23Aに発生しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に形成した粘着面がライナーによって覆われずに露出状態となっている長尺状のライナーレスラベルに印刷を行うのに適したライナーレスラベルの印刷方法および印刷システムに関する。また、本発明は、かかる印刷システムに用いるライナーレスラベルのロール体およびラベルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを備えたラベルプリンタによって印刷されるラベルとして、ライナーがないもので、裏面の粘着面が露出状態のままの長尺状の感熱式のライナーレスラベルが用いられることがある。ライナーレスラベルを用いてラベルを作成するラベルプリンタは、特許文献1、2に開示されている。これらの特許文献にも開示されているように、ライナーレスラベルは一般に同心状に巻き付けられたロール体として提供され、その表面側の印刷面に裏面側の粘着面が接触した状態となっている。したがって、印刷面に粘着面が貼りついてしまうことを防止するために、表面側の印刷面における発色層の表面には剥離剤が塗布されている。
【0003】
ラベルプリンタによる印刷時には、ロール体から繰り出されたライナーレスラベルは、その表面側の印刷面がサーマルヘッドに向き、その裏面側の粘着面がプラテンローラに向く状態で、サーマルヘッドによる印刷位置を経由して搬送される。印刷位置においては、ライナーレスラベルは、その裏面側からプラテンローラによってサーマルヘッドの発熱体表面に押し付けられながら送り出され、サーマルヘッドによって表面側の印刷面に印刷が施される。
【特許文献1】特開2000−52613号公報
【特許文献2】特表平9−506053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ラベルプリンタを用いてライナーレスラベルに印刷を行う場合には次のような問題点がある。
【0005】
まず、ライナーレスラベルは裏面側の粘着面が表面側の印刷面に直接に接触した状態でロール状に巻かれているので、繰り出されたライナーレスラベルの印刷面には剥離剤が塗布されていても、貼りついていた粘着面から剥がす際に当該粘着面から剥離した粘着剤が付着していることがある。サーマルヘッドの印刷位置においては、裏面側からライナーレスラベルの印刷面がサーマルヘッドに押し付けられながら送り出されるので、かかる摺動によってライナーレスラベルの表面(印刷面)に付着していた粘着剤がサーマルヘッドの表面に付着してそこに溜まることがある。また、ライナーレスラベルの印刷面には剥離剤が塗布されているので、サーマルヘッドの表面を摺動する際に剥離剤の一部が剥離して同様にサーマルヘッドの表面に付着してそこに溜まることがある。このような粘着剤や剥離剤などの異物がサーマルヘッドの表面に付着すると、サーマルヘッドによるライナーレスラベルの加熱状態にムラができ、印刷かすれなどの印刷品位の低下を招いてしまう。
【0006】
次に、近年、ライナーレスラベルとして、その裏面の幅方向の両端部分のみが粘着面とされた形式のものが用いられることがある。このライナーレスラベルを使用してラベルプリンタにより印刷を行うと、プラテンローラには粘着面の部分と、粘着面ではない部分とが接触する。本発明者等は、ライナーレスラベルをサーマルヘッドに押し付けながら搬送するためのプラテンローラの表面の摩耗度合いが場所によって相違し、粘着面でない部分に当たっているプラテンローラの表面部分の摩耗量が粘着面に当たっている部分に比べて早く摩耗し、これらの間に段差ができる状態になることを確認した。
【0007】
プラテンローラがこのような摩耗状態に陥ると、プラテンローラによるライナーレスラベルのサーマルヘッドへの押し付け力が、当該ライナーレスラベルの幅方向において変動してしまう。摩耗量の多い部分の押し付け力が小さくなり、当該部分がサーマルヘッドによって十分に加熱されなくなり、印刷が薄くなるなどの印刷品質の低下を招いてしまう。
【0008】
また、ライナーレスラベルの幅方向の両端部分において、その表面に剥離剤が塗布され、裏面には粘着剤が塗布されている。これらの塗布剤により、両端部分は中央部分に比べ、紙の厚さが厚くなる。
【0009】
このため、摩耗が始まる前は、ライナーレスラベルが受けるプラテンローラによる押し付け力が、当該ライナーレスラベルの幅方向において、両端部分が高く、印刷する部分である中央部分が低くなる。この結果、中央部分がサーマルヘッドによって十分に加熱されなくなり、印刷が薄くなるなどの印刷品質の低下を招いてしまうこともある。
【0010】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、ライナーレスラベルからサーマルヘッドに異物が付着することの無い状態でライナーレスラベルに印刷を行うことのできるライナーレスラベルの印刷方法および印刷システム、並びに、当該印刷システムに用いるロール体およびラベルプリンタを提案することにある。
【0011】
また、本発明の課題は、ライナーレスラベルとの摺動によってプラテンローラに生ずる摩耗度合いのバラツキや、塗布剤の厚さによるプラテンローラの押し付け力のバラツキを防止可能なライナーレスラベルの印刷方法および印刷システム、並びに、当該印刷システムに用いるロール体およびラベルプリンタを提案することある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
プラテンローラによって、長尺状のライナーレスラベルの表面(印刷面)をサーマルヘッドに押し付けながら搬送して当該表面に印刷を行うライナーレスラベルの印刷方法において、
前記ライナーレスラベルとして、その裏面(非印刷面)における幅方向の両端部分のうち、少なくとも一方の端部分が粘着剤塗布領域とされ、前記表面における前記粘着剤塗布領域に対応する部位が剥離剤塗布領域とされているものを用い、
前記プラテンローラとして、前記表面における前記剥離剤塗布領域以外の印刷領域の幅寸法に対応する長さ寸法のローラ部分を備えたものを用い、
前記ライナーレスラベルを、その裏面における前記粘着剤塗布領域以外の領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように搬送し、
当該ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面における前記印刷領域を前記サーマルヘッドに押し付けて、当該印刷領域に印刷を行うことを特徴としている。
【0013】
本発明の印刷方法では、ライナーレスラベルにおける剥離剤塗布領域以外の印刷領域がプラテンローラによってサーマルヘッドに押し付けられながら搬送される。したがって剥離剤塗布領域がサーマルヘッドに直接に接触することがないので、剥離剤が剥離してサーマルヘッドの表面に付着することを防止あるいは抑制できる。また、ライナーレスラベルをロール状に巻き付けた場合に、粘着剤塗布領域が剥離剤塗布領域によって覆われた状態になり、粘着剤塗布領域が剥離剤塗布領域以外の印刷領域に直接に接触することがない。したがって、ロール状に巻き付けられている状態のライナーレスラベルを繰り出した場合に、その印刷領域に粘着剤が付着したまま残ることがない。よって、印刷領域に付着したままの粘着剤がサーマルヘッドの表面に押し付けられて当該表面に付着してしまうという弊害を防止できる。よって、サーマルヘッドに剥離剤や粘着剤などの異物が付着し、当該異物に起因して印刷品位が低下してしまうという弊害を防止できる。
【0014】
また、プラテンローラは、ライナーレスラベルの裏面における粘着剤塗布領域には接触しない。よって、プラテンローラの表面に偏摩耗が発生し、ライナーレスラベルをサーマルヘッドに押し付けるための力がライナーレスラベルの幅方向においてばらつき、これによって印刷品位が低下する、という弊害も防止できる。
【0015】
ここで、前記ライナーレスラベルとして、その裏面における幅方向の一方の端部分あるいは両端部分が粘着剤塗布領域とされているものを用いることができる。
【0016】
この場合、前記プラテンローラとして、前記ローラ部分の少なくとも一方の側に、当該ローラ部分よりも小径の小径ローラ部分が同軸状に形成されたものを用いることができる。
【0017】
ライナーレスラベルを搬送する際に、プラテンローラに直接接触しない一方の端部分あるいは両端部分も、何らかのガイドがないとジャミングする原因になる可能性がある。これらの部分を固定されたガイド部材を用いてガイドすると、僅かな接触でもライナーレスラベルの粘着剤が付いて搬送負荷になり、ジャミングの原因となってしまう。したがって、ライナーレスラベルと共に回転可能なガイド、すなわち、プラテンローラの一方の端部分あるいは両端部分に小径ローラ部分を設けると、ライナーレスラベルの一方の端部分あるいは両端部分のガイド機能を持たせることができ、このような搬送負荷を低減できる。
【0018】
また、前記プラテンローラにおける前記ローラ部分と前記小径ローラ部分の間の段差、換言すると、ローラ部分と小径ローラ部分の半径差を、前記ライナーレスラベルにおける前記粘着剤塗布領域および前記剥離剤塗布領域の合計厚さ以上の寸法に設定しておけばよい。紙厚の差により、ライナーレスラベルが受けるプラテンローラによる押し付け力の部分的な差異により、印刷品位が低下する、という弊害も防止できる。
【0019】
次に、本発明は、
プラテンローラによって、長尺状のライナーレスラベルの表面をサーマルヘッドに押し付けながら搬送して、当該表面に印刷を行うライナーレスラベルの印刷システムにおいて、
表面が外側となるように前記ライナーレスラベルが同心状に巻き付けられた構成のロール体と、
前記サーマルヘッド、前記プラテンローラ、および、前記ロール体から繰り出されるライナーレスラベルを前記サーマルヘッドの印刷位置に案内するための搬送路を備えたラベルプリンタとを有し、
前記ライナーレスラベルは、一定幅の長尺状の基材と、この基材の裏面における幅方向の少なくとも一方の端部分に形成した粘着剤塗布層と、前記基材の表面全体を覆う状態に形成した発色剤塗布層と、この発色剤塗布層の表面における幅方向の前記粘着剤塗布層に対応する端部分に形成した剥離剤塗布層とを備え、
前記プラテンローラは、前記ライナーレスラベルにおける前記剥離剤塗布層が形成されていない印刷領域の幅寸法に対応する長さのローラ部分と、このローラ部分の少なくとも一方の側に同軸状態に形成されており、当該ローラ部分より小径の小径ローラ部分とを備えており、
前記搬送路は、前記ライナーレスラベルの裏面における前記印刷領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように前記ライナーレスラベルを案内し、
前記プラテンローラの前記ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面における前記印刷領域が前記サーマルヘッドに押し付けられ、当該印刷領域に印刷が行われることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、かかるライナーレスラベルの印刷システムに用いるライナーレスラベルのロール体であって、前記ライナーレスラベルは、一定幅の長尺状の基材と、この基材の裏面における幅方向の少なくとも一方の端部分に形成した粘着剤塗布層と、前記基材の表面全体を覆う状態に形成した発色剤塗布層と、この発色層の表面における幅方向の前記粘着剤塗布層に対応する端部分に形成した剥離剤塗布層とを備えており、当該ライナーレスラベルが、その表面が外側となるように同心状に巻き付けられ、前記粘着剤塗布層が前記剥離剤塗布層で覆われた状態となっていることを特徴としている。
【0021】
さらに、本発明は、上記のライナーレスラベルの印刷システムに用いるラベルプリンタであって、サーマルヘッドと、プラテンローラと、ライナーレスラベルを前記サーマルヘッドの印刷位置に案内するための搬送路とを有している。前記プラテンローラは、前記ライナーレスラベルにおける前記剥離剤塗布層が形成されていない部分の幅寸法に対応する長さのローラ部分と、このローラ部分の少なくとも一方の側に同軸状態に形成されており、当該ローラ部分より小径の小径ローラ部分とを備えている。前記搬送路は、前記ライナーレスラベルの裏面における前記接着剤塗布層以外の領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように前記ライナーレスラベルを案内するようになっている。さらに、前記プラテンローラの前記ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面における前記剥離剤塗布領域以外の領域が前記サーマルヘッドに押し付けられ、当該領域に印刷が行われる。
【0022】
ここで、本発明のラベルプリンタを、前記ライナーレスラベルが同心状に巻き付けられた構成のロール体を収納するためのロール体装填部を備え、このロール体装填部に装填されたロール体から繰り出されるライナーレスラベルを前記搬送路によって前記サーマルヘッドに向けて案内する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、ライナーレスラベルとして、その裏面の幅方向の一方の端部あるいは両側の端部に粘着剤塗布領域を形成し、これらの間を印刷領域としたものを用いている。また、ラベルプリンタとして、ライナーレスラベルの印刷領域のみをサーマルヘッドに押し付け可能な長さのロール部分を備えたプラテンローラを用いている。
【0024】
この構成のライナーレスラベルをロール状に巻き付けた場合に、その表面の印刷領域に粘着剤塗布領域が接触することがないので、当該印刷領域に粘着剤が付着したまま残ることがない。また、当該印刷領域に剥離剤を塗布しておく必要もない。よって、ライナーレスラベルの印刷領域からサーマルヘッドの表面に粘着剤、剥離剤が付着することを回避できる。また、プラテンローラはライナーレスラベルにおける粘着剤塗布領域以外の裏面部分に接触するので、粘着剤塗布領域との接触によってプラテンローラの表面が偏摩耗状態に陥ることを回避できる。ライナーレスラベルに塗布された粘着剤と剥離剤による紙厚の差により、ライナーレスラベルが受ける押し付け力に差が生じることも回避できる。
【0025】
よって、本発明によれば、ライナーレスラベルへの印刷を、長期間に亘り、良好な印刷品位で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したライナーレスラベルの印刷システムの実施の形態を説明する。
【0027】
(全体構成)
図1は本発明を適用したライナーレスラベルの印刷システムを示す概略構成図である。本実施の形態に係る印刷システム1は、ラベルプリンタ2と、このラベルプリンタ2によって印刷される長尺状の感熱式のライナーレスラベル3が同心状に巻き付けられた構造のロール体3Aの組み合わせから構成されている。
【0028】
ラベルプリンタ2は、ロール体3Aが収納されるロール体装填部21と、ここに収納されたロール体3Aから繰り出されるライナーレスラベル3に印刷を行うためのサーマルヘッド22と、このサーマルヘッド22にライナーレスラベル3を押し付けながら搬送するためのプラテンローラ23と、サーマルヘッド22の印刷位置を経由する搬送経路に沿ってライナーレスラベル3を案内するための搬送路24(図においては太い一点鎖線で示してある。)と、各部の駆動制御を司る駆動制御部20とを備えている。サーマルヘッド22の印刷位置の下流側にはラベル発行口25が形成されており、ここにはカッタ26が配置されている。印刷後のライナーレスラベルはカッタ26によって幅方向に切断され、所定長さのラベルが得られるようになっている。
【0029】
(ライナーレスラベル)
図2はライナーレスラベル3を示す表面図、裏面図および断面構成図である。ライナーレスラベル3は、一定幅の長尺状の基材31と、この基材31の裏面における幅方向の両端部分に形成した粘着剤塗布層32L、32Rと、基材31の表面全体を覆う状態に形成した一定厚さの発色剤塗布層33と、この発色剤塗布層33の表面における幅方向の両端部分に形成した剥離剤塗布層34L、34Rとを備えている。ライナーレスラベル3の表面側においては、左右の剥離剤塗布層34L、34Rの間の部分は発色剤塗布層33が露出した印刷領域35となっている。また、ライナーレスラベル3の裏面側においては、左右の粘着剤塗布層32L、32Rの間の部分は基材31の裏面が露出したままの非粘着剤領域36となっている。
【0030】
なお、本例のライナーレスラベル3は幅方向において左右対称な構造となっており、左右の粘着剤塗布層32L、32Rは同一厚さおよび同一幅であり、剥離剤塗布層34L、34Rも同一厚さおよび同一幅となっている。また、剥離剤塗布層34L、34Rの幅は粘着剤塗布層32L、32Rの幅よりもわずかに広い幅に設定され、これらの粘着剤塗布層を完全に覆うことができるようになっている。このようにして、粘着剤塗布層32L、32Rが印刷領域35の部分に付着しないようにしている。
【0031】
ライナーレスラベル3は、ライナーレスラベル3の表面側の発色剤塗布層33および剥離剤塗布層34L、34Rが外側を向く状態で同心状に巻き付けられて図1に示すロール体3Aが形成されている。ロール体3Aとなった状態では、ライナーレスラベル3の裏面側の粘着剤塗布層32L、32Rが表面側の剥離剤塗布層34L、34Rに重なった状態となっている。また、表面側の印刷領域35には裏面側の非粘着剤領域36が重なった状態となっている。
【0032】
(プラテンローラ)
図3(a)はプラテンローラの形状を示すための説明図であり、図3(b)は印刷状態におけるプラテンローラ、サーマルヘッドおよびライナーレスラベルの状態を示す説明図である。
【0033】
ラベルプリンタ2のプラテンローラ23は、ライナーレスラベル3における剥離剤塗布層34L、34Rが形成されていない印刷領域35の幅寸法L(35)に対応する長さの同一外径のローラ部分23Aと、このローラ部分23Aの両側に同軸状態に形成されている小径ローラ部分23L、23Rとを備えている。小径ローラ部分23L、23Rはローラ部分23Aよりも小径であり、これらの間には円環状の段差面23a、23bが付いている。本例のプラテンローラ23は左右対称な形状をしており、小径ローラ部分23L、23Rは同一径で同一長さである。これら小径ローラ部分23L、23Rの両端面からは外方に向けて同軸状態でローラ軸23c、23dが突出しており、ラベルプリンタ2の装置フレーム(図示せず)によって回転自在の状態で支持されている。
【0034】
ここで、段差付きのプラテンローラ23における中央のローラ部分23Aの長さ寸法L(23A)はライナーレスラベル3における表面側の印刷領域35の幅寸法L(35)とほぼ同一に設定されている。ライナーレスラベル3の裏面側の非粘着剤領域36の幅は、印刷領域35の幅よりもわずかに広いので、図3(b)に示すように、プラテンローラ23のローラ部分23Aは、ライナーレスラベル3の裏面側の非粘着剤領域36にのみ当接し、その両側の粘着剤塗布領域32L、32Rには接触しない。また、中央のローラ部分23Aと左右の小径ローラ部分23L、23Rの段差寸法、すなわち、これらの半径差は、たとえば、ライナーレスラベル3の粘着剤塗布層32L、32Rと剥離剤塗布層34L、34Rの合計厚さにほぼ等しい寸法に設定されている。したがって、プラテンローラ23の両側の小径ローラ部分23L、23Rは、ライナーレスラベル3に対して大きな力で押し付けられることはなく、単に接触するか、あるいは、小さな押し付け力で接触した状態になる。ライナーレスラベル3において、基材31に発色剤塗布層33を設けたのみの部分と、それに粘着剤塗布層32L、32Rと剥離剤塗布層34L、34Rを設けた部分との、紙厚の差によりライナーレスラベル3が受ける押し付け力に差が生じ、印刷品位が低下することも回避できる。
【0035】
なお、本例では、サーマルヘッド22による印刷範囲を、プラテンローラ23のローラ部分23Aの長さ、したがって、ライナーレスラベル3の印刷領域35の幅とほぼ同一としてある。
【0036】
(印刷動作)
この構成のライナーレスラベルの印刷システム1の印刷動作を説明する。ロール体装填部21に収納されているロール体3Aから繰り出されるライナーレスラベル3は、その表面側がサーマルヘッド22を向き、その裏面側がプラテンローラ23を向く状態で搬送路24に沿って搬送されてサーマルヘッド22の印刷位置に至る。
【0037】
サーマルヘッド22の印刷位置においては、図3(b)に示すように、サーマルヘッド22における発熱体(図示せず)が配列されている表面22aに、ライナーレスラベル3の表面側の印刷領域35がプラテンローラ23のローラ部分23Aによって押し付けられた状態で印刷されると共に搬送される。ライナーレスラベル3は、搬送路24に沿って、その幅方向の中心がプラテンローラ23およびサーマルヘッド22の幅方向の中心に一致する状態で、これらの間に送り込まれる。
【0038】
プラテンローラ23のローラ部分23Aの長さL(23)はライナーレスラベル3の印刷領域35の幅寸法L(35)とほぼ同一であり、裏面側の非粘着剤領域36の幅よりも僅かに狭い。また、プラテンローラ23の左右の小径ローラ部分23L、23Rによってライナーレスラベル3の両端部分がサーマルヘッド22の側に押し付けられることはない。
【0039】
したがって、ライナーレスラベル3の印刷領域35のみがサーマルヘッド22の表面22aに所定の押圧力で押し付けられ、当該印刷領域35に印刷が施される。印刷領域35は、ロール体3Aの状態において基材31の裏面に重なっていた部分であり、粘着剤塗布領域32L、32Rには重なっておらず、剥離剤も塗布されていない。よって、印刷領域35がサーマルヘッド22の表面22aに押し付けられても、粘着剤あるいは剥離剤がサーマルヘッド22に付着することがない。よって、ライナーレスラベル3の粘着剤、剥離剤がサーマルヘッド22の表面22aに付着して溜まり、印刷品位が低下するという弊害が発生しない。ライナーレスラベル3において、基材31に発色剤塗布層33を設けたのみの部分と、それに粘着剤塗布層32L、32Rと剥離剤塗布層34L、34Rを設けた部分との、紙厚の差によりライナーレスラベル3が受ける押し付け力に差が生じ、印刷品位が低下することも回避できる。
【0040】
また、ライナーレスラベル3を押し付けているプラテンローラ23では、その中央部分のローラ部分23Aのみが所定の押圧力でライナーレスラベル3の裏面を押し付けており、押し付け部分は非粘着剤領域36である。したがって、プラテンローラ23が粘着剤に押し付けられて回転して粘着剤に接している部分と非粘着剤領域36と接する部分の間に偏摩耗が発生してしまう、という弊害が起きない。よって、ローラ部分23Aが部分的に摩耗して押圧力にばらつきができ、これに起因して印刷品位が低下するとう弊害も発生しない。
【0041】
さらには、プラテンローラ23の両側の小径ローラ部分23L、23Rは粘着剤塗布領域32L、32Rに単に接触し、あるいは僅かの力で押し付けられているのみである。よって、これらの小径ローラ部分23L、23Rは、ライナーレスラベル23の両端部分をガイドするためのガイド部材として機能するが、粘着剤に押し付けられてプラテンローラ23に大きな回転負荷が作用することがないので、ライナーレスラベル23の搬送を滑りなく正確に行うことができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
上記のライナーレスラベル3では、幅方向の両端部分に粘着剤塗布層、および、これに対応させて剥離剤塗布層を形成している。幅方向の一方の端部分にのみ粘着剤塗布層および剥離剤塗布層が形成されたライナーレスラベル3を用いることも可能である。この場合には、これに対応させて、プラテンローラのローラ部分および小径ローラ部分の形成領域を決めればよい。
【0043】
また、上記の例ではプラテンローラのローラ部分の両側の小径ローラ部分を形成してあるが、これら小径ローラ部分を省略することも可能である。
【0044】
次に、粘着剤塗布層、剥離剤塗布層としては、一定厚さの塗布層とする代わりに、メッシュ状、ドット状、ストライプ状に粘着剤、剥離剤を塗布した形態の塗布層としてもよい。
【0045】
また、粘着材塗布層32L,32Rと接するプラテンローラ23の部分は、その表面を樹脂加工やエンボス加工が施されていてもよい。
【0046】
さらに、上記のラベルプリンタはロール体装填部が備わったものであるが、別置きのライナーレスラベル供給装置からラベルプリンタにライナーレスラベルを供給してラベル印刷を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用したライナーレスラベルの印刷システムの概略構成図である。
【図2】ライナーレスラベルの表面図、裏面図および断面構成図である。
【図3】(a)はプラテンローラの形状を示す説明図、(b)は印刷状態のプラテンローラ、ライナーレスラベルおよびサーマルヘッドを示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 印刷システム、2 ラベルプリンタ、3 ライナーレスラベル、3A ロール体、20 駆動制御部、21 ロール体装填部、22 サーマルヘッド、22a 表面、23 プラテンローラ、23A ローラ部分、23L,23R 小径ローラ部分、23a,23b 段差面、23c,23d ローラ軸、24 搬送路、25 ラベル発行口、26 カッタ、31 基材、32L,32R 粘着材塗布層、33 発色剤塗布層、34L,34R 剥離剤塗布層、35 印刷領域、36 非粘着剤領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラによって、長尺状のライナーレスラベルの表面をサーマルヘッドに押し付けながら搬送して当該表面に印刷を行うライナーレスラベルの印刷方法において、
前記ライナーレスラベルとして、その裏面における幅方向の両端部分のうち、少なくとも一方の端部分が粘着剤塗布領域とされ、前記表面における前記粘着剤塗布領域に対応する部位が剥離剤塗布領域とされているものを用い、
前記プラテンローラとして、前記表面における前記剥離剤塗布領域以外の印刷領域の幅寸法に対応する長さのローラ部分を備えたものを用い、
前記ライナーレスラベルを、その裏面における前記粘着剤塗布領域以外の領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように搬送し、
当該ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面の前記印刷領域を前記サーマルヘッドに押し付けて、当該印刷領域に印刷を行うことを特徴とするライナーレスラベルの印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載のライナーレスラベルの印刷方法において、
前記ライナーレスラベルとして、その裏面における幅方向の両端部分が前記粘着剤塗布領域とされているものを用いることを特徴とするライナーレスラベルの印刷方法。
【請求項3】
請求項1に記載のライナーレスラベルの印刷方法において、
前記プラテンローラとして、前記ローラ部分の少なくとも一方の側に、当該ローラ部分よりも小径の小径ローラ部分が同軸状に形成されたものを用いることを特徴とするライナーレスラベルの印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載のライナーレスラベルの印刷方法において、
前記プラテンローラにおける前記ローラ部分と前記小径ローラ部分の間の段差を、前記ライナーレスラベルにおける前記粘着剤塗布領域および前記剥離剤塗布領域の合計厚さ以上の寸法に設定することを特徴とするライナーレスラベルの印刷方法。
【請求項5】
プラテンローラによって、長尺状のライナーレスラベルの表面をサーマルヘッドに押し付けながら搬送して、当該表面に印刷を行うライナーレスラベルの印刷システムにおいて、
表面が外側となるように前記ライナーレスラベルが同心状に巻き付けられた構成のロール体と、
前記サーマルヘッド、前記プラテンローラ、および、前記ロール体から繰り出されるライナーレスラベルを前記サーマルヘッドの印刷位置に案内するための搬送路を備えたラベルプリンタとを有し、
前記ライナーレスラベルは、一定幅の長尺状の基材と、この基材の裏面における幅方向の少なくとも一方の端部分に形成した粘着剤塗布層と、前記基材の表面全体を覆う状態に形成した発色剤塗布層と、この発色剤塗布層の表面における幅方向の前記粘着剤塗布層に対応する端部分に形成した剥離剤塗布層とを備え、
前記プラテンローラは、前記ライナーレスラベルの表面における前記剥離剤塗布層が形成されていない印刷領域の幅寸法に対応する長さのローラ部分と、このローラ部分の少なくとも一方の側に同軸状態に形成されており、当該ローラ部分より小径の小径ローラ部分とを備えており、
前記搬送路は、前記ライナーレスラベルの裏面における前記粘着剤塗布層以外の領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように前記ライナーレスラベルを案内し、
前記プラテンローラの前記ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面の前記印刷領域が前記サーマルヘッドに押し付けられ、当該印刷領域に印刷が行われることを特徴とするライナーレスラベルの印刷システム。
【請求項6】
請求項5に記載のライナーレスラベルの印刷システムに用いるライナーレスラベルのロール体であって、
前記ライナーレスラベルは、一定幅の長尺状の基材と、この基材の裏面における幅方向の少なくとも一方の端部分に形成した粘着剤塗布層と、前記基材の表面全体を覆う状態に形成した発色剤塗布層と、この発色剤塗布層の表面における幅方向の前記粘着剤塗布層に対応する端部分に形成した剥離剤塗布層とを備えており、
当該ライナーレスラベルが、その表面が外側となるように同心状に巻き付けられ、前記粘着剤塗布層が前記剥離剤塗布層で覆われた状態となっていることを特徴とするライナーレスラベルのロール体。
【請求項7】
請求項5に記載のライナーレスラベルの印刷システムに用いるラベルプリンタであって、
サーマルヘッドと、
プラテンローラと、
ライナーレスラベルを前記サーマルヘッドの印刷位置に案内するための搬送路とを有しており、
前記プラテンローラは、前記ライナーレスラベルの表面における前記剥離剤塗布層が形成されていない印刷領域の幅寸法に対応する長さのローラ部分と、このローラ部分の少なくとも一方の側に同軸状態に形成されており、当該ローラ部分より小径の小径ローラ部分とを備えており、
前記搬送路は、前記ライナーレスラベルの裏面における前記粘着剤塗布層以外の領域が、前記プラテンローラの前記ローラ部分に当接するように前記ライナーレスラベルを案内し、
前記プラテンローラの前記ローラ部分によって、前記ライナーレスラベルの前記表面の前記印刷領域が前記サーマルヘッドに押し付けられ、当該印刷領域に印刷が行われることを特徴とするラベルプリンタ。
【請求項8】
請求項7に記載のラベルプリンタにおいて、
前記ライナーレスラベルが同心状に巻き付けられた構成のロール体を収納するためのロール体装填部を備えており、
このロール体装填部に装填されたロール体から繰り出されるライナーレスラベルが前記搬送路によって前記サーマルヘッドに向けて案内されることを特徴とするラベルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−284738(P2008−284738A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130306(P2007−130306)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】