説明

ラインサーマルヘッド

【課題】 ヘッド本体の表面の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って矯正することのできるラインサーマルヘッドを提供する。
【解決手段】 ヘッド取付台2およびヘッドプレート4の発熱素子6の配列方向に沿った長さを発熱素子6の配列方向の長さより長く形成し、取付ボルト9を発熱素子6の配列端より配列方向外側に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷品質を高く保持するのに好適なラインサーマルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、用紙などの印刷媒体の縦方向または横方向の印刷範囲に対向し得る長さを有するラインサーマルヘッドが熱転写プリンタなどの各種の装置に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、熱転写プリンタは、プラテンにインクフィルムやインクシートなどの幅広のインクリボンと印刷媒体としての用紙とを介して用紙の縦方向または横方向の印刷範囲に対向し得る長さを有するラインサーマルヘッドを当接させ、この当接状態でインクリボンと用紙とを搬送しつつラインサーマルヘッドの長手方向に配列されてなる印刷幅分の複数の発熱素子を、印刷情報に基づいて選択的に駆動して発熱させることにより、インクリボンのインクを用紙に転写して印刷を行うようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
図3は、従来のラインサーマルヘッドの一例を示すものであり、従来のラインサーマルヘッド101は、軽量で放熱性(熱伝導性)に優れたアルミニウム合金などの金属材料により形成されたヘッド取付台102を有している。このヘッド取付台102は、図3の左右方向に長い平面ほぼ横長矩形の平板状に形成されている。そして、ヘッド取付台102の一面たる図3の下面には、ヘッド本体103が配設されており、ヘッド取付台102の他面たる図3の上面には、ヘッドプレート104が配設されている。
【0005】
前記ヘッド本体103は、アルミナセラミックスなどによりほぼ平面横長矩形の平板状に形成された基板105の一方の面(図3下面)に複数の発熱抵抗体からなる発熱素子106を設けることにより形成されている。これらの発熱素子106は、基板105の一方の面において、図示しない印刷媒体の搬送方向に対して直交する基板105の長手方向に配列されているとともに、印刷媒体の印刷範囲の行方向における寸法に相当する長さ(印刷幅)に亘って配置されている。そして、複数の発熱素子106が配設された基板105の一方の面は、印刷面107とされている。すなわち、印刷面107には、印刷幅分の発熱素子106が基板105の長手方向に沿って配列されている。また、基板105の他方の面(図3上面)は、接着剤などの接合部材によってヘッド取付台102の下面に固着されている。
【0006】
前記ヘッドプレート104は、SUSなどの金属によりほぼ平面横長矩形の平板状に形成されている。このヘッドプレート104の長手方向の両端部近傍、詳しくは、各発熱素子106の配列端より配列方向内側には、図3の上下方向に示す厚さ方向に貫通するボルト挿通孔108がそれぞれ形成されており、これらのボルト挿通孔108に挿入される小ねじなどからなる取付ボルト109の先端部をヘッド取付台102の上面に螺入させることにより、ヘッド取付台102の上面にヘッドプレート104が取着されている。
【0007】
ところで、ラインサーマルヘッド1は、取付ボルト109の締結力によりヘッド取付台102が変形し、このヘッド取付台102の変形にともなって、ヘッド本体103の表面の形状、詳しくは、印刷時において発熱部となる発熱素子106の表面の配列方向に沿った形状が波打つように変形し、この変形した状態のままで印刷を実施すると、印刷媒体に当接する発熱素子106の圧接力にバラツキが生じて印刷に濃淡ムラなどが発生し、印刷品質を高く保持することができない。
【0008】
そこで、ヘッドプレート104に複数のねじ孔110を厚さ方向に貫通するように形成するとともに、これらのねじ孔110に止めねじなどからなる調整ねじ111を螺入させ、調整ねじ111の先端でヘッド取付台102の上面を押圧することにより、ヘッド取付台102とともにヘッド本体103を変形させることで、ヘッド本体103の表面の形状を発熱素子106の配列方向の中央部が図示しない印刷媒体に向かって凸のほぼ湾曲状をなすように矯正している。
【0009】
なお、複数のねじ孔110は、両ボルト挿通孔108の間において、それぞれの下端が発熱素子108と対向するようにして発熱素子106の配列方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。
【0010】
【特許文献1】特開平09−201991号公報
【特許文献2】特開2002−144614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述した従来のラインサーマルヘッド101においては、取付ボルト109が発熱素子106の配列端より配列方向内側に配設されているため、取付ボルト109の締結力によって、ヘッド本体103の表面の形状は、後述する本発明のラインサーマルヘッド1の実施形態におけるヘッド本体2の表面の形状を示す図2において、従来品の「矯正前」の形状として破線にて誇張して示すように、取付ボルト109の配設位置において凹となり、この取付ボルト109の配設位置の外側が凸となるように変形する。
【0012】
そして、調整ねじ111の先端でヘッド取付台102の上面を押圧することにより、基板105の印刷面107の変形の矯正を実施すると、例えば、図2の従来品の「矯正後」の形状として破線にて誇張して示すように、取付ボルト109の配設位置の内側においては、調整ねじ111によりヘッド本体103の表面の変形を、発熱素子106の配列方向の中央部が凸のほぼ湾曲状をなすように矯正することができるものの、取付ボルト109の配設位置における凹形状を矯正することができない。
【0013】
すなわち、取付ボルト109の配設位置の外側を含む印刷幅のすべての範囲に亘ってヘッド本体103の表面の形状を発熱素子106の配列方向の中央部が凸のほぼ湾曲状をなすように矯正することは極めて困難であるという問題点があった。
【0014】
そこで、ヘッド本体の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って矯正するこのできるラインサーマルヘッドが求められている。
【0015】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、ヘッド本体の表面の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って矯正することのできるラインサーマルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するため、本発明に係るラインサーマルヘッドの特徴は、ヘッド取付台と、平面横長矩形の平板状に形成された基板の一方の面に印刷幅分の発熱素子が前記基板の長手方向に沿って配列されており、前記基板の他方の面が前記ヘッド取付台の一面に固着されているヘッド本体と、前記ヘッド取付台の前記ヘッド本体の固着側の面とは反対側の面に取付ボルトにより取着されているヘッドプレートとを有するラインサーマルヘッドであって、前記ヘッド取付台およびヘッドプレートの前記発熱素子の配列方向に沿った長さが前記発熱素子の配列方向の長さより長く形成されているとともに、前記取付ボルトが前記発熱素子の配列端より配列方向外側に配設されている点にある。
【0017】
前記ヘッドプレートには、その厚さ方向に貫通する複数のねじ孔が前記プレート取付台を介して前記発熱素子と対向するように前記発熱素子の配列方向に沿っって形成されており、前記複数のねじ孔には、前記ヘッド本体の変形を矯正するための調整ねじがその先端を前記ヘッドプレートと対向するように螺入されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るラインサーマルヘッドによれば、取付ボルトが発熱素子の配列端より配列方向外側に配設されているので、ヘッド本体の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って矯正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
【0020】
図1は本発明に係るラインサーマルヘッドの実施形態の要部を示す模式的断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のラインサーマルヘッド1は、軽量で放熱性(熱伝導性)に優れたアルミニウム合金などの金属材料により形成されたヘッド取付台2を有している。このヘッド取付台2は、図1の左右方向に長い平面ほぼ横長矩形の平板状に形成されている。そして、ヘッド取付台2の一面たる図1の下面には、ヘッド本体3が配設されており、ヘッド取付台2の他面たる図1の上面には、ヘッドプレート4が取着されている。
【0022】
前記ヘッド本体3は、アルミナセラミックスなどによりほぼ平面横長矩形の平板状に形成された基板5の一方の面(図1下面)に複数の発熱抵抗体からなる発熱素子6を設けることにより形成されている。これらの発熱素子6は、基板5の一方の面において、図示しない印刷媒体の搬送方向に対して直交する基板5の長手方向に配列されているとともに、印刷媒体の印刷範囲の行方向における寸法に相当する長さ(印刷幅)に亘って配置されている。
【0023】
前記複数の発熱素子6が配設された基板5の一方の面は、印刷面7とされている。すなわち、印刷面7には、印刷幅分の発熱素子6が基板5の長手方向に沿って配列されている。
【0024】
なお、基板5には、各発熱素子6を駆動するための図示しないLSIチップ化された駆動ドライバーが熱硬化性樹脂などの封止素材によって固定されている。
【0025】
また、ヘッド本体3のその他の構成については、従来公知のラインサーマルヘッドのヘッド本体と同様に構成されているので、その詳しい説明については省略する。
【0026】
前記ヘッドプレート4は、SUSなどの金属によりほぼ平面横長矩形の平板状に形成されている。
【0027】
前記ヘッド取付台2およびヘッドプレート4は、それぞれ発熱素子6の配列方向に沿った長さが発熱素子6の配列方向の長さである印刷幅より長く形成されている。そして、ヘッドプレート4の長手方向の両端部近傍、詳しくは、各発熱素子6の配列端より配列方向外側には、図1の上下方向に示す厚さ方向に貫通するボルト挿通孔8がそれぞれ形成されており、これらのボルト挿通孔8に挿入される小ねじなどからなる取付ボルト9の先端部をヘッド取付台2の上面に螺入させることにより、ヘッド取付台2の上にヘッドプレート4が取着されている。
【0028】
すなわち、ヘッドプレート4は、ヘッド取付台2のヘッド本体3の固着側の面とは反対側の面に取付ボルト9により取着されている。
【0029】
また、本実施形態のラインサーマルヘッド1においては、取付ボルト9が発熱素子6の配列端より配列方向外側(印刷幅の外側)に配設されている。
【0030】
なお、前記取付ボルト9の配設位置としては、発熱素子6の配列端より配列方向外側に配設されていればよい。このため、ヘッド取付台2およびヘッドプレート4の発熱素子6の配列方向に沿った長さが発熱素子6の配列方向の長さより長く形成されていることが肝要である。
【0031】
前記ヘッドプレート4には、複数のねじ孔10が図1の上下方向に示す厚さ方向に貫通するように形成されており、これらのねじ孔10には、止めねじなどからなる調整ねじ11が螺入されている。そして、調整ねじ11の先端でヘッド取付台2の上面を押圧することにより、ヘッド取付台2とともにヘッド本体3を変形させることで、ヘッド本体3の表面、詳しくは、印刷時において発熱部となる発熱素子6の表面の配列方向に沿った形状を矯正することができるようになっている。
【0032】
すなわち、ヘッドプレート4には、ヘッド本体3の表面の変形を矯正するための調整ねじ11が配設されている。
【0033】
なお、調整ねじ11を用いてヘッド本体3の表面の変形を矯正する構成としては、従来公知の各種のものから選択することができる。
【0034】
その他の構成については、従来公知のラインサーマルヘッドと同様とされているので、その詳しい説明については省略する。
【0035】
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について説明する。
【0036】
本実施形態のラインサーマルヘッド1によれば、取付ボルト9が発熱素子6の配列端より配列方向外側、すなわち、印刷幅の外側に配設されているので、従来の取付ボルト109の締結力に起因して取付ボルト109の配設位置においてヘッド本体103の表面が凹形状となるのを防止することができる。
【0037】
したがって、本実施形態のラインサーマルヘッド1によれば、取付ボルト9によりヘッド取付台2の上にヘッドプレート4を取り付けても、取付ボルト9の締結力に起因してヘッド本体3の表面が凹形状に変形するのを防止できる。
【0038】
また、本実施形態のラインサーマルヘッド1によれば、取付ボルト9が発熱素子6の配列端より配列方向外側に配設されているので、調整ねじ11の先端でヘッド取付台2の上面を押圧することにより、ヘッド取付台2とともにヘッド本体3を変形させることで、ヘッド本体3の表面の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って発熱素子6の配列方向の中央部が図示しない印刷媒体に向かって凸のほぼ湾曲状をなすように矯正することが容易かつ確実にできる。
【0039】
したがって、本実施形態のラインサーマルヘッド1によれば、ヘッド本体3の表面の変形を印刷幅のすべての範囲に亘って矯正することが容易かつ確実にできる。その結果、印刷品質を高く保持することができる。
【0040】
なお、本実施形態のラインサーマルヘッド1によるヘッド本体3の表面の「矯正前」および「矯正後」の形状を、従来のラインサーマルヘッド101によるヘッド本体103の表面の「矯正前」および「矯正後」の形状とともに図2に誇張して示す。
【0041】
また、図2において、実線にて示す本発明品1とは、本実施形態のラインサーマルヘッド1におけるヘッド本体3の表面の形状を示し、破線にて示す従来品1とは従来のラインサーマルヘッド101におけるヘッド本体103の表面の形状を示す。
【0042】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るラインサーマルヘッドの実施形態の要部を示す模式的断面図
【図2】本発明に係るラインサーマルヘッドの実施形態におけるヘッド本体の表面の「矯正前」および「矯正後」の形状の一例を示す線図
【図3】従来のラインサーマルヘッドの要部を示す模式的断面図
【符号の説明】
【0044】
1 ラインサーマルヘッド
2 ヘッド取付台
3 ヘッド本体
4 ヘッドプレート
5 基板
6 発熱素子
7 印刷面
9 取付ボルト
11 調整ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド取付台と、
平面横長矩形の平板状に形成された基板の一方の面に印刷幅分の発熱素子が前記基板の長手方向に沿って配列されており、前記基板の他方の面が前記ヘッド取付台の一面に固着されているヘッド本体と、
前記ヘッド取付台の前記ヘッド本体の固着側の面とは反対側の面に取付ボルトにより取着されているヘッドプレートとを有するラインサーマルヘッドであって、
前記ヘッド取付台およびヘッドプレートの前記発熱素子の配列方向に沿った長さが前記発熱素子の配列方向の長さより長く形成されているとともに、前記取付ボルトが前記発熱素子の配列端より配列方向外側に配設されていることを特徴とするラインサーマルヘッド。
【請求項2】
前記ヘッドプレートには、その厚さ方向に貫通する複数のねじ孔が前記プレート取付台を介して前記発熱素子と対向するように前記発熱素子の配列方向に沿っって形成されており、前記複数のねじ孔には、前記ヘッド本体の変形を矯正するための調整ねじがその先端を前記ヘッドプレートと対向するように螺入されていることを特徴とする請求項1に記載のラインサーマルヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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