説明

ライン型サーマルプリントヘッド

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ファクシミリ等のプリンタに印字用として使用するライン型のサーマルプリントヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種のライン型サーマルプリントヘッドは、長方形に形成したヘッド基板の表面に、発熱抵抗体を長手方向に一直線のライン状に延びるように形成する一方、前記ヘッド基板の表面のうち長手一側縁の部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通するコモン配線パターンを前記発熱抵抗体に沿って延びるように形成し、更に、前記ヘッド基板の表面のうち前記発熱抵抗体を挟んでコモン配線パターンと反対側の部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通する多数本の個別配線パターンを形成すると共に、この各個別配線パターンと、ヘッド基板の表面にその長手方向に延びるように形成したグランド配線パターンとを接続する複数個の駆動回路素子を搭載すると言う構成にして、前記各駆動回路素子のスイッチングにて、グランド配線パターンと各個別配線パターンのうち任意の個別配線パターンとを電気的に導通することにより、発熱抵抗体における任意の印字ドットに通電して発熱するようにしたものである。
【0003】ところで、このライン型サーマルプリントヘッドにおけるグランド配線パターン及びコモン配線パターンは、ライン状の発熱抵抗体に沿って長く延びる形状で、その一端又は両端に電力を供給すると言う構成であるために、その長手方向に沿って電圧降下が存在し、この電圧降下により、発熱抵抗体における各印字ドットによる印字に、濃度差が発生することになる。
【0004】そこで、先行技術としての特開平2−286261号公報(特公平4−17797号)は、前記グランド配線パターンを、ヘッド基板の略中央部で、右側のグランド配線パターンと、左側のグランド配線パターンとに分断する一方、前記長手一側縁と反対側の長手他側縁における長手方向の略中央部に、前記両グランド配線パターンの各々に導通する一対のグランド用接続端子と、前記コモン配線パターンの両端の各々に導通する一対のコモン用接続端子とを、両コモン用接続端子が両グランド用接続端子の内側に位置するようにして形成することを提案している。
【0005】そして、この先行技術のものは、コモン配線パターンにおける電圧降下を中央部に行くほど大きく、両グランド配線パターンにおける電圧降下を両端に行くほど大きくすることことにより、コモン配線パターンと両グランド配線パターンとの間における電圧を、その長手方向に沿って略一定に保持し、もって、電圧降下に起因する印字濃度差を小さくするものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この先行技術のように、グランド配線パターンを、右側のグランド配線パターンと、左側のグランド配線パターンとに分断すると言う構成であると、この両グランド配線パターンを使用して印字している場合において、右側のグランド配線パターンにて印字を行うドット数と、左側のグランド配線パターンに印字を行うドット数とが相違する状態になったとき、印字を行っているドット数が多いグランド配線パターンと、印字を行っているドット数が少ないグランド配線パターンとの間に、電圧差ができることになるから、一方のグランド配線パターンによる印字と、他方のグランド配線パターンによる印字とに濃度差が発生すると言う問題があった。
【0007】また、前記先行技術のものは、両コモン用接続端子を両グランド用接続端子の内側に位置するようにしたもので、前記グランド用接続端子とヘッド基板における長手他側縁の間に、コモン配線パターンの両端を両コモン用接続端子に対して導通するためのコモン接続用配線パターンが存在していて、この両グランド用接続端子をヘッド基板における長手他側縁にまで延長することができないことにより、この両グランド用接続端子に対して、外部への各種配線又は接続用コネクタ等を接続するに際しては、当該両グランド用接続端子とヘッド基板における長手他側縁との間に存在している前記コモン接続用配線パターンを飛び越えるようにしなければならないから、この両グランド用接続端子に対して外部への各種配線又は接続用ソケット等を接続することが困難である点も問題であった。
【0008】本発明は、これらの問題を解消できるようにしたライン型サーマルプリントヘッドを提供することを技術的課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】この技術的課題を態勢するため本発明は、「ヘッド基板の表面に、発熱抵抗体をライン状に延びるように形成する一方、前記ヘッド基板の表面のうち前記発熱抵抗体と平行な一側縁よりの部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通するコモン配線パターンを前記発熱抵抗体に沿って延びるように形成し、更に、前記ヘッド基板の表面のうち前記発熱抵抗体を挟んでコモン配線パターンと反対側の部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通する多数本の個別配線パターンを形成すると共に、この各個別配線パターンとヘッド基板の表面に前記発熱抵抗体に沿って延びるように形成したグランド配線パターンとを接続する複数個の駆動回路素子を搭載して成るサーマルプリントヘッドにおいて、前記ヘッド基板表面のうち前記一側縁と反対側の他側縁における略中央の部分に、前記グランド配線パターンにおける長手方向の略中央部に導通するグランド用接続端子と、前記コモン配線パターンの両端に導通する一対のコモン用接続端子とを形成する。」と言う構成にした。
【0010】
【発明の作用・効果】このように、グランド配線パターンを、略中央部を境として右側の部分と左側とに分断することなく、その長手方向の略中央部に、ヘッド基板の他側縁における略中央の部分に形成したグランド用接続端子を導通することにより、印字用の電力を、このグランド用接続端子を介して、グランド配線パターンのうち右側の部分と左側の部分とに同時に供給することができると共に、グランド配線パターンのうち右側の部分に供給された電力と、左側の部分に供給された電力は、互いに行き来することになるから、グランド配線パターンの全長にわたって印字を行う場合において、このグランド配線パターンのうち右側の部分にて印字を行うドット数と、左側の部分にて印字を行うドット数とが相違する状態になったときに、グランド配線パターンのうち右側の部分と、左側の部分との間に電圧差が発生することを確実に防止できる。
【0011】従って、本発明によると、前記先行技術と同様に、コモン配線パターンとグランド配線パターンとの間における電圧差を小さくすることができることに加えて、グランド配線パターンのうち右側の部分と、左側の部分との間における電圧差を小さくすることができるから、これらが相俟って、グランド配線パターンのうち右側の部分と左側の部分との間における印字濃度差を略等しくできて、印字品質を大幅に向上できるのである。
【0012】また、「請求項2」に記載したように、グランド用接続端子と両コモン用接続端子とを、両コモン用接続端子がグランド用接続端子の外側に位置するように形成することにより、前記グランド用接続端子及び両コモン用接続端子の両方を、ヘッド基板における長手他側縁にまで延長することができるから、これらに対して外部への各種配線又は接続用コネクタ等を接続することが、電気的ショートを発生することなく、簡単・容易に、且つ、確実にできるのである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を、図1〜図3の図面について説明する。この図において、符号1は、セラミック等の耐熱絶縁材料にて長方形に形成したヘッド基板を示し、このヘッド基板1の上面には、多数個の印字ドットを構成する発熱抵抗体2が、ヘッド基板1における一側縁1aと略平行にライン状に延びるように形成されていると共に、このヘッド基板1の上面のうち前記発熱抵抗体2と平行な一側縁1aよりの部分に、前記発熱抵抗体2における各印字ドットごとに導通するコモン配線パターン3が、前記発熱抵抗体2に沿って延びるように形成されている。
【0014】また、前記ヘッド基板1の上面のうち前記発熱抵抗体2を挟んでコモン配線パターン3と反対側の部分には、前記発熱抵抗体2における各印字ドットごとに導通する多数本の個別配線パターン4が形成されていると共に、この各個別配線パターン4に導通する複数個の駆動回路素子5が前記発熱抵抗体2に沿って一列状に並ぶように搭載されている。
【0015】更にまた、前記ヘッド基板1の上面のうち前記各駆動回路素子5とヘッド基板1の他側縁1bとの間の部分には、前記各駆動回路素子5の各々にワイヤボンディングによる金属線6を介して導通するグランド配線パターン7が、各駆動回路素子5の列に沿って略平行に延びるように形成されている。そして、前記ヘッド基板1の上面のうちその他側縁1bよりの部分で、且つ、長手方向に対して略中央の部分には、前記グランド配線パターン7における長手方向の略中央部に導通する広幅のグランド用接続端子8が形成されると共に、このグランド用接続端子8の両外側に、前記各駆動回路素子5に対して各種の信号を供給するための複数個の信号用接続端子9が形成され、更に、この各信号用接続端子9の両外側に、前記コモン配線パターン3の両端の各々にコモン接続用配線パターン10,11を介して導通する広幅の一対のコモン用接続端子12,13が形成されている。
【0016】このように、グランド配線パターン7を、その略中央部を境として右側の部分と左側の部分とに分断することなく、その長手方向の略中央部に、ヘッド基板1の他側縁1bにおける略中央の部分に形成したグランド用接続端子8を導通することにより、印字用の電力を、このグランド用接続端子8を介して、グランド配線パターン7のうち右側の部分と左側の部分とに同時に供給することができると共に、グランド配線パターン7のうち右側の部分に供給された電力と、左側の部分に供給された電力は、互いに行き来することになるから、グランド配線パターン7の全長にわたって印字を行う場合において、このグランド配線パターン7のうち右側の部分にて印字を行うドット数と、左側の部分にて印字を行うドット数とが相違する状態になったときに、グランド配線パターン7のうち右側の部分と、左側の部分との間に電圧差が発生することを確実に防止できるのである。
【0017】また、前記コモン配線パターン3の両端に対する両コモン用接続端子12,13は、グランド配線パターン7の略中央部に対するグランド用接続端子8の外側の部位に位置していることにより、前記グランド用接続端子8及び両コモン用接続端子12,13の両方を、前記先行技術のように、コモン配線パターンの両端からのコモン接続用配線パターン10,11に邪魔されることなく、図示のように、ヘッド基板1における他側縁1bにまで延長することができるのである。
【0018】従って、ヘッド基板1に対して、例えば、ボックス14a内に複数本の端子ピン14bを固着して成る接続用のコネクタ14を装着するに際しては、このコネクタ14の各端子ピン14bにおける二股状挟持部14b′を、ヘッド基板1における他側縁1bに被嵌することにより、このコネクタ14を、当該コネクタ14における各端子ピン14bを前記グランド用接続端子8、各種の信号用接続端子9及び両コモン用接続端子12,13の各々に電気的に接続した状態にして装着することができるのである。
【0019】なお、本実施例の場合、コネクタ14は、その各端子ピン14bのうち7本の端子ピンがグランド用接続端子8に、三本の端子ピンが一方のコモン用接続端子12に、そして、四本の端子ピンが他方のコモン用接続端子13に各々接続するように構成されており、各端子ピン14bの二股状挟持部14b′は、これをヘッド基板1における他側縁1bに対して被嵌したのち、半田付け又は導電性ペーストにより固着されている。
【0020】また、外部への各種の配線を、前記グランド用接続端子9、各種の信号用接続端子10及び両コモン用接続端子13,14の各々に対して直接的に接続するようにしても良のであり、いずれの場合においても、グランド用接続端子9、各種の信号用接続端子10及び両コモン用接続端子13,14は、ヘッド基板1における他側縁1bにまで延長していることにより、これら対して外部への各種配線又は接続用コネクタ等を接続することが、前記先行技術のように、グランド用接続端子とヘッド基板の他側縁との間にコモン接続用配線パターンが存在している場合よりも、電気的ショートを発生することなく、簡単・容易に、且つ、確実に行うことかできるのである。
【0021】更にまた、前記ヘッド基板1の上面には、図3に二点鎖線で示すように、発熱抵抗体2、コモン配線パターン3及び各グランド配線パターン4を覆うガラスコート15と、各駆動回路素子5を覆う樹脂コート16とが各々施されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による全体の斜視図である。
【図2】図1の要部拡大平面図である。
【図3】図1のIII −III 視拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ヘッド基板
2 発熱抵抗体
3 コモン配線パターン
4 個別配線パターン
5 駆動回路素子
6 金属線
7 グランド配線パターン
8 グランド用接続端子
9 信号用接続端子
10,11 コモン接続用配線パターン
12,13 コモン用接続端子
14 コネクタ
14a ボックス
14b 端子ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】ヘッド基板の表面に、発熱抵抗体をライン状に延びるように形成する一方、前記ヘッド基板の表面のうち前記発熱抵抗体と平行な一側縁よりの部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通するコモン配線パターンを前記発熱抵抗体に沿って延びるように形成し、更に、前記ヘッド基板の表面のうち前記発熱抵抗体を挟んでコモン配線パターンと反対側の部分に、前記発熱抵抗体における各印字ドットごとに導通する多数本の個別配線パターンを形成すると共に、この各個別配線パターンとヘッド基板の表面に前記発熱抵抗体に沿って延びるように形成したグランド配線パターンとを接続する複数個の駆動回路素子を搭載して成るサーマルプリントヘッドにおいて、前記ヘッド基板表面のうち前記一側縁と反対側の他側縁における略中央の部分に、前記グランド配線パターンにおける長手方向の略中央部に導通するグランド用接続端子と、前記コモン配線パターンの両端に導通する一対のコモン用接続端子とを形成したことを特徴とするライン型サーマルプリントヘッド。
【請求項2】前記「請求項1」において、前記グランド用接続端子と、一対のコモン用接続端子とを、両コモン用接続端子がグランド用接続端子の外側に位置するように形成したことを特徴とするライン型サーマルプリントヘッド。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【特許番号】特許第3167262号(P3167262)
【登録日】平成13年3月9日(2001.3.9)
【発行日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−194499
【出願日】平成7年7月31日(1995.7.31)
【公開番号】特開平9−39284
【公開日】平成9年2月10日(1997.2.10)
【審査請求日】平成12年10月26日(2000.10.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−32058(JP,A)
【文献】特開 平4−14469(JP,A)
【文献】特開 平4−112049(JP,A)