説明

ラクトシルセラミドの製造方法

【課題】医学、薬学及び生化学等の分野で試薬として有用であり、かつ医薬品、化粧品、飲食品及び飼料等の素材として有用なラクトシルセラミドを提供すること。
【解決手段】ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMに対して、pH3〜5、温度70℃〜100℃の範囲で30分〜180分加熱処理を行い、さらにpHを4.5〜5.0に調整し、限外濾過膜等の方法で濃縮することによってラクトシルセラミドを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMに対して、加熱処理を行い、ラクトシルセラミドに変換することによるラクトシルセラミドの製造方法、また、乳由来原料中においてガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMをラクトシルセラミドに変換することにより高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法及び得られた高濃縮されたラクトシルセラミドに関する。
本発明の製造方法によって得られるラクトシルセラミドや高濃縮されたラクトシルセラミドは、医学、薬学及び生化学等の分野で試薬としても有用であり、また、医薬品、化粧品、飲食品及び飼料等の素材として有用である。
【背景技術】
【0002】
ラクトシルセラミドは、セラミドに乳糖の還元末端を持つスフィンゴ糖脂質で、動物組織に存在するが、特に神経系器官でその含有量が高いことが知られているが、このラクトシルセラミドは、グロボシド群、ガングリオシド群、血液型活性糖脂質群の共通前駆体であることも知られている。
また、ラクトシルセラミドは、さまざまな生理機能が報告されており、ピロリ菌に対する特異的結合性や、破骨細胞分化や好中球の成熟化に必須な成分であることが報告されている(非特許文献1〜3)。
一方、ガングリオシドGM3は、セラミドに乳糖の還元末端が結合し、かつ乳糖の非還元末端にシアル酸がα2−3結合した構造を有しており、ガングリオシドGD3は、ガングリオシドGM3の非還元末端にさらにシアル酸がα2−8結合した構造を有しており、分子全体としてはシアル酸を2分子含んでいる。
【0003】
従来、ラクトシルセラミドの製造のための代表的な方法は、酢酸又はトリクロル酢酸等の酸で蛋白質と複合体を形成している糖脂質を沈殿させ、その沈殿物に、クロロホルム−メタノール混合液等のアルコールを含む有機溶媒を加えて、蛋白質との複合体から糖脂質を分離、抽出する方法が一般的であるが、このような方法では、比較的高含有量の組成物を得ることはできず、効率よく精製できず、ラクトシルセラミドが経済的に得られないという問題があった。
また、ラクトシルセラミドの製造の別法として、牛乳等に由来する中性スフィンゴ糖脂質を含む物質に蛋白質加水分解酵素を作用させ、精製する方法も提案されているが、精製工程が複雑であり、必然的に製造コストが高くなるという問題があった(特許文献1)。
上述するように、従来のラクトシルセラミドの製造方法は、手間もかかり、しかも高濃縮されたラクトシルセラミドを製造する経済的な方法は開発されていなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平2−169596号公報
【非特許文献1】J.Phar.Macol.Sci.2006 Vol.100,No3,p195-200
【非特許文献2】生化学 Vol.77,N0.8,p872
【非特許文献3】Glycobiology. 1998 Apr;8(4):297-309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、従来方法では、高濃縮されたラクトシルセラミドを得るための精製工程が複雑であったり、効率よく精製する方法が確立されていなかった。
従って、本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、簡便な方法を用いて、比較的安価に、しかも高濃縮されたラクトシルセラミドを効率よく製造する方法を提供することを課題とする。また、このような製造方法によって得られる高濃縮されたラクトシルセラミドを含む組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高濃縮されたラクトシルセラミドを比較的安価に、かつ簡便に、効率よく、経済的に製造する方法について鋭意研究を進めたところ、酸性条件下で加熱処理することにより、原料中のガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMをラクトシルセラミドに変換させて高濃縮されたラクトシルセラミドが得られることを見出した。
【0007】
従って、本発明は下記の構成からなる発明である。
(1)ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMを酸性条件下で加熱処理してラクトシルセラミドに変換することを特徴とするラクトシルセラミドの製造方法。
(2)pH3〜5、温度70℃〜100℃の範囲で30分〜180分加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のラクトシルセラミドの製造方法。
(3)乳由来原料中においてガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3をラクトシルセラミドに変換することを特徴とする高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
(4)乳由来原料が、ホエータンパク質濃縮物 、バターミルク、バターゼーラム、脱脂乳又は、これら乳由来原料に対して有機溶媒で脂質画分を高含有化した素材から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(3)に記載の高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
(5)pH3〜5、温度70℃〜100℃の範囲で30分〜180分加熱処理を行った後、pHを4.5〜5.0に調整し、限外濾過膜、精密濾過膜から選ばれる方法で濃縮することを特徴とする(3)〜(4)記載の高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
(6)(3)〜(5)のいずれかに記載の方法で製造された高濃縮されたラクトシルセラミド。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法は、ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3から比較的安価に、かつ簡便に、ラクトシルセラミドを製造することができる。特に、タンパク質を比較的多量に含む乳や乳製品を原料としてラクトシルセラミドを製造することができるので、本発明の方法は、工業的にきわめて有用な高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法として有用である。
本発明の製造方法によって製造されたラクトシルセラミドや高濃縮されたラクトシルセラミドは、感染防御能等の生理機能を有するので、医薬品、化粧品、飲食品及び飼料等の素材として有用であり、組成物におけるラクトシルセラミドの高濃縮により適用範囲の拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法の特徴は、加熱処理、好ましくは酸性条件下でガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3をラクトシルセラミドに変換させることにある。
すなわち、本発明では、ガングリオシドGD及び/又はガングリオシドGMの加熱処理を酸性条件下に行うことにより、ガングリオシドGD3のシアル酸部分の非還元末端に結合するシアル酸1分子を脱シアル化し、さらにガングリオシドGM3の乳糖の非還元末端にあるシアル酸1分子を脱シアル化して、ガングリオシドGD3又はガングリオシドGM3をラクトシルセラミドに効率的に変換させることができる。
上記製造方法において、使用する原料としては、ガングリオシドGD3やガングリオシドGM3の他、全乳や脱脂乳等のタンパク質を多量に含有するが、ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3を余り多量には含まない素材も用いることもできるが、乳由来原料、特にホエータンパク質濃縮物やバターミルク、バターゼーラム、脱脂乳等ガングリオシドGD3又はガングリオシドGM3を比較的多量に含む乳由来原料であることが好ましい。
また、ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3を含む素材をエタノール等の有機溶媒で抽出する方法(特開平2−207090号公報)で調製したものを原料として用いることもできる。
【0010】
本発明の製造方法では、加熱処理時のpH及び温度の設定が非常に重要となる。pHが、低ければ低い程、また、温度が高ければ高い程、ラクトシルセラミドの生成速度は大きくなるが、ラクトシルセラミドの分解速度も大きくなる。したがって、ラクトシルセラミドを高収率で製造するためには、酸性条件下、例えばpHを3〜5の範囲、好ましくは3〜4の範囲に調整し、温度を70℃〜 100℃の範囲に調整することが好ましい。
そして、生成速度及び分解速度を考慮して、この加熱処理条件に応じた30分〜180分の処理時間を適宜、設定すればよい。
【0011】
また、乳由来原料の場合、低pHの条件下、例えばpH3未満の状態で加熱処理を行った場合、主要蛋白質であるカゼインを沈殿させて除去する際に、沈殿が上清を抱きこんでしまい、十分に沈殿と上清を分離できないため、ラクトシルセラミドを含む画分の収率が下がってしまうことがある。これはカゼインがpH3未満であると、粒子径が小さく、また、タンパク質として安定なため沈殿が起こりにくく、上清を抱き込んだままの不完全な沈殿となってしまうからである。
【0012】
目的とする組成物中のラクトシルセラミドの濃度を高めるため、乳由来原料の場合には、加熱処理終了後にpHをカゼインの等電点であるpH4.5〜5.0に調整し、カゼインの粒子径を大きくさせ、また、タンパク質として不安定にさせることにより、凝集させ、沈殿しやすくした後に除去することが好ましい。又、カゼインの凝集性をさらに高めるために塩化カルシウム等を0.01〜0.1%加えるとより好ましい。
上記沈殿したカゼイン沈殿物は、遠心分離機、クワルクセパレーターや、ノズルセパレーター、フィルタープレス、静置又は濾過布等の、一般的な除去方法によって除去することができる。
【0013】
さらに、目的とするラクトシルセラミドを含む画分の濃度を高めるためには、限外濾過膜、精密濾過膜、透析膜又は電気透析等の膜処理を行うことが有効である。このときの膜処理としては、孔径0.1〜2.0μmの精密濾過(MF)膜又は分画分子量5〜500kDaの限外濾過(UF)膜を用いるとよい。
なお、水酸化カリウム、塩化カリウム等、一般的な中和剤で濃縮液を中和することもできる。
【0014】
得られたラクトシルセラミドを含む濃縮液は、真空乾燥又は凍結乾燥等の適宜の手段により濃縮、乾固することができるが、このような方法により、全固形中のラクトシルセラミドが0.01〜8重量%という高濃縮されたラクトシルセラミドを得ることができる。なお、ラクトシルセラミドは、HPLCにより測定を行った。
【0015】
次に実施例を示し、本発明を詳細に説明する。
なお、以下に記載する実施例は本発明を説明するものであり、実施例の記述に限定するものではない。
【実施例1】
【0016】
ガングリオシドGM3組成物及びその製造法(特開平5−279379)に従って調製したガングリオシドGM3組成物500mgを水2リットルに溶解し、15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、白色粉末372mgを得た。
HPLCを用いた定量によると、この白色粉末には99重量%以上のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例2】
【0017】
1リットル当たり 230mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを4.5に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、16重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には0.5重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例3】
【0018】
1リットル当たり 230mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを4.5に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、分画粒子径0.1μMの精密濾過膜(Milipore社製)処理を行ない、濃縮液を得た。
そして、この濃縮液を凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、60重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には1重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例4】
【0019】
1リットル当たり 230mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを3.5に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は、遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、分画粒子径0.1μMの精密濾過膜(Milipore社製)処理を行ない、濃縮液を得た。
そして、この濃縮液を凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、60重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には1.5重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例5】
【0020】
1リットル当たり 230mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は遠心分離機(Beckman社製)で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、分画粒子径0.1μMの精密濾過膜(Milipore社製)処理を行ない、濃縮液を得た。
そして、この濃縮液を凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、60重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には3.6重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例6】
【0021】
1リットル当たり 230mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は、遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、16重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には0.9重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例7】
【0022】
1リットル当たり 200mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターゼーラム水溶液に15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、80℃にて180分間加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、分画粒子径0.1μMの精密濾過膜(Milipore社製)処理を行ない、濃縮液を得た。そして、この濃縮液を凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、60重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には3重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例8】
【0023】
ガングリオシドGD3を酸加水分解してガングリオシドGM3を製造する方法(特開平5−279379号公報)に従い、バターゼーラムから1リットル当たり360mgのガングリオシドGM3を含有するガングリオシド素材を調製した。その後、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させ、生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、分画粒子径0.1μMの精密濾過膜(Milipore社製)処理を行ない、濃縮液を得た。そして、この濃縮液を凍結乾燥して粉末状とした。得られたガングリオシド素材粉末を10重量%水溶液とし、15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、88℃にて180分間加熱処理を行った。
その後、10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、60重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には4.8重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例9】
【0024】
1リットル当たり 3.8mgのガングリオシドGD3と0.1mgのガングリオシドGM3を含有する脱脂乳5リットルに15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、0.1重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には0.01重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例10】
【0025】
1リットル当たり90mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%バターミルク溶液に15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、同時に塩化カルシウムを全体量の0.03重量%になるように添加し、88℃にて180分間加熱処理を行った。その後、pHを4.5〜5.0に調整し、原料中の主要蛋白質であるカゼインを凝集させた。生成したカゼインの沈殿は遠心分離機で処理することにより完全に除去して上清を得た。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、7重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には0.2重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。
【実施例11】
【0026】
1リットル当たり130mgのガングリオシドGD3を含有する10重量%ホエータンパク質濃縮溶液(WPC溶液)に、15%塩酸を加えてpHを3.0に調整し、88℃にて180分間加熱処理を行った。
この上清を10%水酸化カリウムにて中和し、凍結乾燥して、本発明の高濃縮されたラクトシルセラミド粉末を得た。
得られた粉末に含まれる脂質含量をレーゼゴットリーブ法により測定した結果、10重量%の脂質が含まれていた。
HPLCを用いた定量によると、この組成物には0.3重量%のラクトシルセラミドが含まれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGMを酸性条件下で加熱処理してラクトシルセラミドに変換することを特徴とするラクトシルセラミドの製造方法。
【請求項2】
pH3〜5、温度70℃〜100℃の範囲で30分〜180分加熱処理することを特徴とする請求項1に記載のラクトシルセラミドの製造方法。
【請求項3】
乳由来原料中においてガングリオシドGD3及び/又はガングリオシドGM3をラクトシルセラミドに変換することを特徴とする高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
【請求項4】
乳由来原料が、ホエータンパク質濃縮物、バターミルク、バターゼーラム、脱脂乳又は、これら乳由来原料に対して有機溶媒で脂質画分を高含有化した素材から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3に記載の高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
【請求項5】
pH3〜5、温度70℃〜100℃の範囲で30分〜180分加熱処理を行った後、pHを4.5〜5.0に調整し、限外濾過膜、精密濾過膜から選ばれる方法で濃縮することを特徴とする請求項3又は4記載の高濃縮されたラクトシルセラミドの製造方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の方法で製造された高濃縮されたラクトシルセラミド。