説明

ラクトンキノン誘導体およびそれを用いた電子写真感光体

【課題】 新規なラクトンキノン誘導体およびそれを用いた高い感度を有する電子写真感光体を提供することである。
【解決手段】 一般式(I):
【化11】


[式中、R1,R2は、それぞれ同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基、置換基として炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基を有することのあるアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルコキシ基を示す。X1,X2は、それぞれ同一または異なる基であって、ハロゲン原子を示す。]で表されるラクトンキノン誘導体である。導電性基体上に、少なくとも電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂を含有した感光層が設けられた電子写真感光体であって、前記ラクトンキノン誘導体を前記電子輸送剤に用いた電子写真感光体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なラクトンキノン誘導体およびそれを用いた複写機、ファクシミリ、プリンタなどの画像形成装置に使用される電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の画像形成装置では、当該装置に用いられる光源の波長領域に感度を有する種々の感光体が使用されている。その1つはセレンなどの無機材料を感光層に用いた無機感光体であり、他は有機材料を感光層に用いた有機感光体である。有機感光体は、無機感光体に比べて製造が容易であり、かつ電荷発生剤、電荷輸送剤(電子輸送剤・正孔輸送剤)、バインダ樹脂などの材料選択肢が多様で、機能設計の自由度が高いことから、近年、多く使用されるようになっている。
【0003】
有機感光体には、電荷発生剤を含有した電荷発生層と電荷輸送剤を含有した電荷輸送層との積層構造からなる、いわゆる積層型感光体と、電荷発生剤と電荷輸送剤とを単一層に含有させた、いわゆる単層型感光体とがある。
【0004】
これらの有機感光体に電荷輸送剤として含有される電子輸送剤には、一般に、3,5−ジメチル−3’,5’−ジt−ブチルジフェノキノンが使用される。しかしながら、この電子輸送剤を含有した感光体では十分な感度が得られない。
【0005】
一方、特許文献1には、電子輸送剤として、前記3,5−ジメチル−3’,5’−ジt−ブチルジフェノキノンに代えて、特定のフェニルベンゾジフラノン誘導体を含有させた電子写真感光体(有機感光体)が記載されている。この電子輸送剤を含有させた感光体は、高い感度を示すとされている。しかしながら、この電子輸送剤を含有させた感光体であっても、必ずしも十分な感度が得られていないのが現状である。このため、より高い感度を有する電子写真感光体(有機感光体)の開発が望まれている。
【特許文献1】特開平11−305456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、新規なラクトンキノン誘導体およびそれを用いた高い感度を有する電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための、本発明のラクトンキノン誘導体は、一般式(I):
【化2】

[式中、R1,R2は、それぞれ同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基、置換基として炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基を有することのあるアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルコキシ基を示す。X1,X2は、それぞれ同一または異なる基であって、ハロゲン原子を示す。]で表される。
【0008】
かかる本発明のラクトンキノン誘導体は文献未記載の新規化合物である。また、本発明では、上記一般式(I)で示す特定の構造を有するラクトンキノン誘導体を電子輸送剤として使用することにより、電子写真感光体の感度を向上させることができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明における電子写真感光体は、導電性基体上に、少なくとも電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂を含有した感光層が設けられたものであって、前記電子輸送剤が、前記一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の前記一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体は、バインダ樹脂等との相溶性に優れ且つ高い電荷移動度を示すので、このラクトンキノン誘導体を電子輸送剤として使用することにより、電子写真感光体の残留電位を効果的に低下させ、高い感度を得ることができると共に、良好な画像が得られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<ラクトンキノン誘導体>
前記一般式(I)において、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0012】
前記アリール基としては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ビフェニリル、ナフチル等の炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。このアリール基は、置換基として炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基を有していてもよく、このアルキル基としては、前記で例示したものと同様のアルキル基が挙げられる。
【0013】
前記炭素数6〜12のアラルキル基としては、例えばベンジル、α−メチルベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、6−フェニルヘキシル等が挙げられる。
【0014】
前記炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
【0015】
前記炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルコキシ基としては、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。また、前記ハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0016】
前記一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体は、例えば以下に示すような反応工程式を経て製造することができる。
【化3】

[式中、R1,R2,X1およびX2は、前記と同じである。]
【0017】
すなわち、まず化合物Aをジクロロメタン等の溶剤に溶解し、ついでこの溶液に化合物Bと触媒とを加えて撹拌して化合物Cを得る。なお、上記化合物Aに対する上記化合物Bの使用割合は1〜4当量であるのが好ましい。また、前記触媒としては例えば塩化アルミニウム等が挙げられ、上記化合物Aに対するこの触媒の使用割合は1〜3当量であるのが好ましい。また、撹拌温度は通常室温で行い、撹拌時間は2〜6時間であるのが好ましい。なお、この化合物Cは公知の手段により精製することができる。
【0018】
ついで、この化合物Cをジクロロメタン等の溶剤に溶解し、この溶液に酸を加えて撹拌後、この溶液をメタノール等の溶剤で希釈する。そして、この希釈溶液から溶剤を留去して得られた固体化合物を酸化剤で酸化し、一般式(I)で表される化合物を得ることができる。
【0019】
前記酸を加える際の溶液温度は、−40〜0℃であるのが好ましい。また、前記酸としては、例えば三臭化ホウ素等が挙げられ、上記化合物Cに対するこの酸の使用割合は1〜5当量であるのがよい。また、撹拌時間は通常一晩程度である。前記酸化剤としては、例えばジクロロジシアノ−p−ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。なお、この一般式(I)で表される化合物は公知の手段により精製することができる。
【0020】
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、少なくとも電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂を含有し、さらに必要に応じて正孔輸送剤を含有した感光層を設けたものである。この感光層には、単層型感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、いずれの感光層も適用可能である。
【0021】
(電子輸送剤)
本発明において使用する電子輸送剤は、前記一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体である。このラクトンキノン誘導体は、溶解性が高いのでバインダ樹脂等との相溶性に優れると共に、広い共役結合を有しているので、高い電荷移動度を示す。
【0022】
本発明では、上記一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体に加えて、公知の他の電子輸送剤を併用することもできる。これら他の電子輸送剤としては、例えばジフェノキノン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、チオキサントン誘導体(2,4,8−トリニトロチオキサントン等)、フルオレノン誘導体(3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体等)、アントラセン誘導体、アクリジン誘導体、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸誘導体、無水マレイン酸誘導体、ジブロモ無水マレイン酸誘導体等の電子受容性を有する化合物が挙げられる。
【0023】
(電荷発生剤)
前記電荷発生剤としては、例えば無金属フタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、Y−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、ピリリウム顔料、アンサンスロン顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料といった有機光導電体、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミニウム、アモルファスシリコンといった無機光導電材料などが挙げられる。中でも無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、α−チタニルフタロシアニン、Y−チタニルフタロシアニン、V−ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。これらの電荷発生剤は単独でまたは2種以上をブレンドして用いてもよい。
【0024】
(バインダ樹脂)
前記バインダ樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリウレタン、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化性樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用できるほか、2種以上をブレンドすることもできる。
【0025】
(正孔輸送剤)
さらに、本発明では正孔輸送剤を感光層に含有させてもよい。特に単層型感光体では、感光層中に正孔輸送剤および電子輸送剤が含有される。前記正孔輸送剤としては、例えばN,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどのオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなどのスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなどのピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物や、縮合多環式化合物が挙げられる。
【0026】
(感光層)
[単層型]
本発明における単層型感光層は、上記した電子輸送剤、電荷発生剤、バインダ樹脂を同一層に含有した単一の感光層で構成されるものである。この単層型感光層は、層構成が簡単で生産性に優れており、層を形成する際の被膜欠陥を抑制でき、層間の界面が少なく光学的特性を向上できるという利点がある。なお、電荷輸送剤には電子輸送剤と正孔輸送剤とがあり、上記したように、特に単層型感光体においては、電子輸送剤と正孔輸送剤とを併用するのが好ましい。
【0027】
前記単層型感光層の膜厚は5〜100μm、好ましくは10〜50μmである。単層型感光層においては、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生剤を0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部の割合で、電子輸送剤を5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部の割合でそれぞれ含有させるのがよい。また、正孔輸送剤を含有させる場合は、バインダ樹脂100重量部に対して5〜500重量部、好ましくは25〜200重量部の割合で含有させるのがよい。
【0028】
[積層型]
一方、積層型感光層は、導電性基体上に電荷輸送剤を含有する電荷輸送層と、電荷発生剤を含有する電荷発生層とを積層することで構成される。また、電荷発生剤と共に電荷輸送剤を含有させた光導電層を、電荷輸送層、電荷発生層と組み合わせてもよい。積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸送層などの形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の種類(電子輸送剤・正孔輸送剤)によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明においては、電荷輸送層および光導電層の少なくとも1つに、電子輸送剤として一般式(I)で表されるラクトンキノン誘導体を含有させる必要がある。なお、積層型感光体は、電荷発生や電荷輸送といった機能を各層に分離しているので、構成材料の無駄が少なく、感度を向上させ易いという利点を有する。
【0029】
前記電荷発生層の膜厚は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜3μmであり、電荷輸送層の膜厚は2〜100μm、好ましくは5〜50μmである。積層型感光層のうち電荷発生層においては、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生剤を5〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部の割合で含有させるのがよい。また、電荷輸送層においては、バインダ樹脂100重量部に対して電子輸送剤を1〜250重量部、好ましくは5〜150重量部の割合で含有させるのがよい。また、電子輸送剤と正孔輸送剤を併用する場合は、その総量がバインダ樹脂100重量部に対して10〜500重量部、好ましくは30〜200重量部の割合で含有させるのがよい。
【0030】
感光層には、前記した成分のほかに、画像形成に悪影響を与えない範囲で、種々の添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、一重項クエンチャー、紫外線吸収剤などの劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナーなどが挙げられる。また、感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0031】
(導電性基体)
導電性基体としては、導電性を有する各種の材料が使用可能であり、例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属単体、上記金属が蒸着もしくはラミネートされたプラスチック材料、カーボンブラック等の導電性微粒子が分散されたプラスチック材料、さらにヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラスなどが挙げられる。導電性基体と感光層との間には、感光体の特性を阻害しない範囲でバリア層が形成されていてもよい。また、感光層の表面には保護層が形成されていてもよい。
【0032】
導電性基体は、使用する画像形成装置の構造に合わせてドラム状、シート状などの形態で使用される。この導電性基体は充分な機械的強度を有しているのが好ましい。単層型の感光層を形成するには、電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂、さらに必要に応じて正孔輸送剤や他の添加剤を適当な溶媒と共に、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカー、超音波分散機などを用いて混合して分散液を調製し、この分散液を導電性基体上に公知の手段で塗布して乾燥させればよい。また、積層型感光体の電荷発生層および電荷輸送層を形成するには、電荷発生剤、電荷輸送剤を適当なバインダ樹脂および溶媒と共に上記と同一の方法で分散液を調製し、これを公知の手段により塗布して乾燥させればよい。
【0033】
前記分散液を調製するための溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用するほか、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、電荷発生剤および電荷輸送剤の分散性、感光体表面の平滑性を良くするために、界面活性剤、レベリング剤などを使用してもよい。
【0034】
次に実施例および比較例を挙げて本発明の電子写真感光体を説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
<実施例で使用した電子輸送剤>
以下の実施例で使用した電子輸送剤は、以下の3種類である。
(合成例1)
下記式(A−1)で表されるムコブロム酸7.8g(30mmol)をジクロロメタンに溶解し、この溶液に下記式(B−1)で表される2,6−ジメチルアニソール2当量と、塩化アルミニウム1.5当量とを加え、室温で4時間撹拌した。ついで、この溶液を塩酸水に注ぎ、クロロホルムで抽出し、クロロホルム−メタノール混合溶剤で再結晶して、白色固体の下記式(C−1)で表される化合物を収率67%で得た。ついで、この化合物(C−1)0.75g(2mmol)をジクロロメタンに溶解し、この溶液を−20℃に冷却後、この冷却された溶液に三臭化ホウ素3当量を加えて一晩撹拌した。そして、この溶液をメタノールで希釈し、この希釈溶液から溶剤を留去して得られた固体化合物をDDQで酸化し、シリカゲルカラムで精製した後、再結晶して淡赤色の下記式(I−1)で表される化合物を収率15%で得た。この化合物の1H−NMRスペクトルを図1に、IRスペクトルを図2にそれぞれ示す。
【化4】

【0036】
(合成例2)
ムコブロム酸7.8g(30mmol)に代えて下記式(A−2)で表されるムコクロル酸7.7g(30mmol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(I−2)で表される化合物を収率13%で得た。
【化5】

【0037】
(合成例3)
2,6−ジメチルアニソール2当量に代えて下記式(B−2)で表される2,6−ジフェニルアニソール2当量を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(I−3)で表される化合物を収率12%で得た。
【化6】

【0038】
比較例で使用した電子輸送剤、実施例および比較例で使用した電荷発生剤、バインダ樹脂および正孔輸送剤は以下の通りである。
<比較例で使用した電子輸送剤>
【化7】

【0039】
<電荷発生剤>
【化8】

【0040】
<バインダ樹脂>
【化9】

【0041】
<正孔輸送剤>
【化10】

【0042】
[実施例1〜6]
[比較例1,2]
<電子写真感光体の作製>
上記の電子輸送剤、電荷発生剤、バインダ樹脂および正孔輸送剤を表1に示す組み合わせで用いた。すなわち、溶媒であるテトラヒドロフラン800重量部に対して、バインダ樹脂(Resin−1:粘度平均分子量50,000のビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂)100重量部、正孔輸送剤(H−1)50重量部、電荷発生剤(X−H2PcまたはY−TiOPc)3重量部、および電子輸送剤(I−1〜3、E−1)50重量部を添加した。この混合物を超音波分散機で1時間混合分散して、単層型感光層用の分散液を作製した。ついで、得られた分散液を導電性基材(アルミニウム素管)上にディップコート法にて塗布し、100℃で30分間で熱風乾燥して、膜厚30μmの単層型感光層を有する電子写真感光体を得た。
【0043】
次に、上記で得られた電子写真感光体の感度特性を以下のようにして評価した。すなわち、電子写真感光体について、ドラム感度試験機(GENTEC社製)を用いて、700Vになるように帯電させ、ついでハロゲンランプの光からハンドパルスフィルターを用いて取り出した波長780nmの単色光(半値幅:20nm、光量:16μW/cm2)を露光[照射時間:0.08秒(80msec)]した。そして、露光開始から0.33秒(330msec)経過した時点での表面電位(残留電位)を測定し、それを感度とした。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から、電子輸送剤として式(I−1〜3)で表される化合物を用いた実施例1〜6の電子写真感光体は、比較例1,2と比べて、高い感度を有していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】合成例1で得た式(I−1)で表される化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】合成例1で得た式(I−1)で表される化合物のIRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、R1,R2は、それぞれ同一または異なる基であって、水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基、置換基として炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルキル基を有することのあるアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐したアルコキシ基を示す。X1,X2は、それぞれ同一または異なる基であって、ハロゲン原子を示す。]で表されるラクトンキノン誘導体。
【請求項2】
導電性基体上に、少なくとも電子輸送剤、電荷発生剤およびバインダ樹脂を含有した感光層が設けられた電子写真感光体であって、
前記電子輸送剤が、請求項1記載のラクトンキノン誘導体であることを特徴とする電子写真感光体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−56823(P2006−56823A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239924(P2004−239924)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】