ラケットフレーム
【課題】打球感、反発性及び操作性に優れたラケットフレーム2の提供。
【解決手段】ラケットフレーム2は、本体4と、2つの第一振動減衰部6とからなる。本体4は、ヘッド8、2つのスロート10、シャフト12及びグリップ14からなる。第一振動減衰部6は、本体4に固定されている。第一振動減衰部6はスロート10からグリップ14にまで至っている。第一振動減衰部6は、繊維強化ナイロンからなる。ヘッド8及びスロート10は、第二振動減衰部18を含んでいる。第二振動減衰部18は、改質エポキシ樹脂からなる。このラケットフレーム2では、スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上である。グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは、300kg・cm2未満である。面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上1.0以下である。
【解決手段】ラケットフレーム2は、本体4と、2つの第一振動減衰部6とからなる。本体4は、ヘッド8、2つのスロート10、シャフト12及びグリップ14からなる。第一振動減衰部6は、本体4に固定されている。第一振動減衰部6はスロート10からグリップ14にまで至っている。第一振動減衰部6は、繊維強化ナイロンからなる。ヘッド8及びスロート10は、第二振動減衰部18を含んでいる。第二振動減衰部18は、改質エポキシ樹脂からなる。このラケットフレーム2では、スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上である。グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは、300kg・cm2未満である。面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上1.0以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケット等のフレームに関する。詳細には、本発明は、振動減衰部を備えたラケットフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスラケットでボールが打撃されたとき、プレーヤーに振動が伝わる。振動に不快を感じるプレーヤーがいる。プレーヤーは、マイルドな打球感を望んでいる。振動はさらに、テニスエルボーの原因となり得る。
【0003】
振動を減衰させるための種々の提案が、なされている。特開平4−236973号公報には、グリップが弾性体を備えたテニスラケットが開示されている。この弾性率は、振動減衰に寄与しうる。特開2003−10362公報には、ヘッドがダンパーを備えたテニスラケットが開示されている。このダンパーは、振動減衰に寄与しうる。
【0004】
プレーヤーは、テニスラケットに、反発性を求めている。反発性に優れたラケットにより打撃されたボールは、高速で飛行しうる。プレーヤーはさらに、テニスラケットに操作性を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−236973号公報
【特許文献2】特開2003−10362公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反発性及び操作性に優れたテニスラケットは、競技に参加するプレーヤーには適している。しかし、反発性及び操作性に優れたテニスラケットは、概して振動減衰性に劣る。
【0007】
本発明の目的は、振動減衰性、反発性及び操作性に優れたラケットフレームの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るラケットフレームは、本体と、この本体に固定された第一振動減衰部とを備える。この本体は、ヘッドと、シャフトと、このヘッドから延びてシャフトに至る左右一対のスロートと、このシャフトに連続するグリップとを備える。この本体は、第二振動減衰部を含む。この第二振動減衰部の材質は、第一振動減衰部の材質と異なっている。このラケットフレームでは、スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上である。グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは、300kg・cm2未満である。面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上1.0以下である。
【0009】
好ましくは、第一振動減衰部は、繊維強化ナイロンからなる。好ましくは、第二振動減衰部は、エポキシ樹脂からなる。
【0010】
好ましくは、第一振動減衰部がスロート、シャフト又はグリップに固定され、第二振動減衰部がヘッド又はスロートに含まれる。好ましくは、第一振動減衰部は、スロートからグリップにまで至る。
【0011】
好ましくは、ヘッドは、一対の第二振動減衰部を含む。これら第二振動減衰部は、ラケットフレームの軸に対して対称に配置される。
【0012】
それぞれのスロートが、第二振動減衰部を含んでもよい。これら第二振動減衰部は、ラケットフレームの軸に対して対称に配置される。
【0013】
好ましくは、側圧剛性R2は95kgf/cm以上であり、スロート剛性R4は350kgf/cm以下である。好ましくは、比(R2/R4)は、0.28以上である。好ましくは、慣性モーメントは、295kg・cm2未満である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るラケットフレームは、振動減衰性、反発性及び操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るラケットフレームが示された正面図である。
【図2】図2は、図1のラケットフレームが示された側面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った拡大断面図である。
【図4】図4は、ラケットフレームの第二振動減衰部の位置が説明されるための正面図である。
【図5】図5は、図1のラケットフレームの頂圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図6】図6は、図1のラケットフレームの側圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図7】図7は、図1のラケットフレームの平圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図8】図8は、図1のラケットフレームのスロート剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図9】図9は、図1のラケットフレームの打球面剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図10】図10は、図1のラケットフレームの面外二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【図11】図11は、図10の測定に用いられる装置が示された概念図である。
【図12】図12は、図10の測定によって得られた結果が示されたグラフである。
【図13】図13は、図1のラケットフレームの面外一次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【図14】図14は、図1のラケットフレームの面内二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1から3に示されたラケットフレーム2は、本体4と、2つの第一振動減衰部6とからなる。本体4は、ヘッド8、2つのスロート10、シャフト12及びグリップ14からなる。このラケットフレーム2にグロメット、グリップテープ、エンドキャップ等が取り付けられ、さらにガットが張られることにより、硬式テニス用のラケットが得られる。図1における上下方向は、ラケットフレーム2の軸方向である。
【0018】
ヘッド8は、打球面の輪郭を形成している。ヘッド8の正面形状は、略楕円である。それぞれのスロート10の一端は、ヘッド8と連続している。このスロート10は、他端の近傍で他のスロート10と合流している。スロート10は、ヘッド8から延びてシャフト12に至っている。シャフト12は、2つのスロート10が合流する箇所から延びている。シャフト12は、スロート10と連続的にかつ一体的に形成されている。グリップ14は、シャフト12と連続的にかつ一体的に形成されている。ヘッド8のうち2つのスロート10に挟まれた部分は、ヨーク16である。
【0019】
この本体4は、繊維強化樹脂からなる。この繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂は、エポキシ樹脂である。繊維強化樹脂層の強化繊維は、カーボン繊維である。この強化繊維は、長繊維である。図3から明らかなように、本体4は中空である。複数枚のプリプレグが巻かれ、このプリプレグに含まれるエポキシ樹脂が硬化することで、本体4が成形されている。
【0020】
第一振動減衰部6は、本体4に固定されている。図3に示されるように、本体4に凹みが形成され、この凹みに第一振動減衰部6が埋め込まれている。第一振動減衰部6は、接着剤によって本体4に固定されている。第一振動減衰部6は、スロート10、シャフト12又はグリップ14に固定されうる。図2から明らかなように、本実施形態では、第一振動減衰部6はスロート10からグリップ14にまで至っている。
【0021】
第一振動減衰部6は、短繊維を含む繊維強化ナイロンからなる。好ましい短繊維は、炭素繊維である。好ましいマトリクスは、66ナイロンである。この繊維強化ナイロンにおける短繊維の含有率は、10質量%以上30質量%以下である。含有率が10質量%以上である第一振動減衰部6は、弾性率が大きく、かつ寸法精度に優れる。この観点から、この含有率は15質量%以上が特に好ましい。含有率が30質量%以下である第一振動減衰部6は、振動減衰性に優れる。この観点から、この含有率は35質量%以下が好ましい。
【0022】
このラケットフレーム2が用いられたテニスラケットでは、第一振動減衰部6によって打撃時の振動が減衰される。このテニスラケットは、打球感に優れる。このテニスラケットでは、テニスエルボーが生じにくい。
【0023】
図2において符号L1で示されているのは、第一振動減衰部6の長さである。振動減衰性の観点から、長さL1は5cm以上が好ましく、8cm以上が特に好ましい。長さL1は、20cm以下が好ましい。
【0024】
図3において符号T1で示されているのは、第一振動減衰部6の厚みである。振動減衰性の観点から、厚みT1は0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上が特に好ましい。厚みT1は、4mm以下が好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。
【0025】
図1に示されるように、ヘッド8は、2つの第二振動減衰部18を含んでいる。これらの第二振動減衰部18は、ラケットフレーム2の軸に対して対称に配置されている。第二振動減衰部18は、ヘッド8の成形に用いられるプリプレグの一部に改質エポキシ樹脂が用いられることによって形成されている。この改質エポキシ樹脂では、温度が0℃であり、周波数が10Hzである条件下で測定された損失係数は0.5以上である。
【0026】
図1に示されるように、それぞれのスロート10は、第二振動減衰部18を含んでいる。2つの第二振動減衰部18は、ラケットフレーム2の軸に対して対称に配置されている。第二振動減衰部18は、スロート10の成形に用いられるプリプレグの一部に改質エポキシ樹脂が用いられることによって形成されている。ヘッド8の第二振動減衰部18の改質エポキシ樹脂と同等の改質エポキシ樹脂が、スロート10の第二振動減衰部18に用いられうる。
【0027】
このラケットフレーム2が用いられたテニスラケットでは、第二振動減衰部18によって打撃時の振動が減衰される。このテニスラケットは、打球感に優れる。このテニスラケットでは、テニスエルボーが生じにくい。第二振動減衰部18の材質は、第一振動減衰部6の材質と異なっている。互いに材質が異なる2種の振動減衰部を備えるので、このラケットフレーム2は、振動減衰性に極めて優れている。
【0028】
図2において符号L2で示されているのは、第二振動減衰部18の長さである。振動減衰性の観点から、長さL2は1cm以上が好ましく、2cm以上が特に好ましい。長さL1は、10cm以下が好ましい。
【0029】
本実施形態では、ヘッド8及びスロート10が第二振動減衰部18を含んでいる。ヘッド8のみが第二振動減衰部18を含んでもよく、スロート10のみが第二振動減衰部18を含んでもよい。
【0030】
図4は、第二振動減衰部18の位置が説明されるための正面図である。図4において符号20で示されているのは、打球面の中心Oと第二振動減衰部18の中心とを結ぶ直線である。符号θで示されているのは、直線20が軸方向に対してなす角度である。打球面が時計の文字盤とみなされたとき、角度θが60°である第二振動減衰部18は、4時位置及び8時位置にある。角度θが90°である第二振動減衰部18は、3時位置及び9時位置にある。図1に示されたラケットフレーム2では、θは90°である。換言すれば、第二振動減衰部18は、3時位置及び9時位置にある。
【0031】
振動減衰性の観点から、角度θは30°以上が好ましく、45°以上が特に好ましい。振動減衰性の観点から、角度θは120°以下が好ましく、90°以下が特に好ましい。
【0032】
図5は、図1のラケットフレーム2の頂圧剛性R1が測定される様子が示された模式図である。頂圧剛性R1の測定には、1/4円の形状を有し、半径Rが35mmである一対の受け具22が用いられる。これらの受け具22は、鋼製である。これらの受け具22の間隔Waは、80mmである。シャフト12が鉛直となるように、この受け具22にラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具24が準備される。この圧縮具24は、直径Wbが100mmである円柱状である。この圧縮具24は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具24は、ヘッド8の頂部を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具24の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具24の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、頂圧剛性R1である。頂圧剛性R1の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0033】
反発性及び操作性の観点から、頂圧剛性R1は110kgf/mm以上が好ましく、120kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、頂圧剛性R1は135kgf/mm以下が好ましく、130kgf/mm以下が特に好ましい。
【0034】
図6は、図1のラケットフレーム2の側圧剛性R2が測定される様子が示された模式図である。側圧剛性R2の測定には、2枚の挟持板26が用いられる。これらの挟持板26により、シャフト12が水平であり、打球面が鉛直となるように、ラケットフレーム2が保持される。一方、鋼製の圧縮具28が準備される。この圧縮具28は、直径Wbが100mmである円柱状である。この圧縮具28は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具28は、ヘッド8の側部を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具28の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具28の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、側圧剛性R2である。側圧剛性R2の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0035】
反発性及び操作性の観点から、側圧剛性R2は95kgf/mm以上が好ましく、100kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、側圧剛性R2は120kgf/mm以下が好ましく、110kgf/mm以下が特に好ましい。
【0036】
図7は、図1のラケットフレーム2の平圧剛性R3が測定される様子が示された模式図である。平圧剛性R3の測定には、鋼製の2本の受け具30が用いられる。それぞれの受け具30は、棒状である。この受け具30の断面形状は、半径が15mmの円である。これらの受け具30は、ピッチが600mmとなるように配置される。これらの受け具30の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具32が準備される。この圧縮具32は、棒状である。圧縮具32の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具32は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具32は、ヘッド8を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具32の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具32の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、平圧剛性R3である。平圧剛性R3の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0037】
反発性及び操作性の観点から、平圧剛性R3は50kgf/mm以上が好ましく、55kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、平圧剛性R3は65kgf/mm以下が好ましく、60kgf/mm以下が特に好ましい。
【0038】
図8は、図1のラケットフレーム2のスロート剛性R4が測定される様子が示された模式図である。スロート剛性R4の測定には、鋼製の2本の受け具34が用いられる。それぞれの受け具34は、棒状である。この受け具34の断面形状は、半径が15mmの円である。第一受け具34aは、グリップ14のエンドから距離Lの位置に配置される。第二受け具34bは、第一受け具34aから340mmの位置に配置される。これらの受け具34の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具36が準備される。この圧縮具36は、棒状である。圧縮具36の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具36は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具36は、スロート10の近傍を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具36の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具36の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、スロート剛性R4である。スロート剛性R4の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0039】
図8における距離Lは、ラケットフレーム2のサイズに応じて決定される。サイズに応じた距離Lが、以下に示される。
ラケットフレームのサイズ 距離L
27.0inch 25mm
27.5inch 38mm
28.0inch 50mm
28.5inch 63mm
29.0inch 75mm
【0040】
反発性及び操作性の観点から、スロート剛性R4は310kgf/mm以上が好ましく、320kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、スロート剛性R4は350kgf/mm以下が好ましく、340kgf/mm以下が特に好ましい。
【0041】
図9は、図1のラケットフレーム2の打球面剛性R5が測定される様子が示された模式図である。打球面剛性R5の測定には、鋼製の2本の受け具38が用いられる。それぞれの受け具38は、棒状である。この受け具38の断面形状は、半径が15mmの円である。第一受け具38aは、ヘッド8の先端から7.5mmの位置に配置される。第二受け具38bは、第一受け具38aから340mmの位置に配置される。これらの受け具38の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具40が準備される。この圧縮具40は、棒状である。圧縮具40の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具40は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具40は、ヘッド8を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具40の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具40の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、打球面剛性R5である。打球面剛性R5の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0042】
反発性及び操作性の観点から、打球面剛性R5は130kgf/mm以上が好ましく、140kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、打球面剛性R5は170kgf/mm以下が好ましく、160kgf/mm以下が特に好ましい。
【0043】
スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上が好ましい。比(R2/R4)が0.26以上であるラケットフレーム2は、打球感と反発性との両方に優れる。この観点から、比(R2/R4)は0.28以上がより好ましく、0.31以上が特に好ましい。実用的なラケットフレーム2で達成されうる比(R2/R4)は、0.40以下である。
【0044】
図10は、図1のラケットフレーム2の面外二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。図11は、図10の測定に用いられる装置が示された概念図である。この測定では、ヘッド8の上端が紐42で吊り下げられる。スロート10とシャフト12との境界部に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して垂直となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46で叩かれる。インパクトハンマー46には、フォースピックアップ計が取り付けられている。このフォースピックアップ計で計測された応答振動(F)と加速度ピックアップ44で計測された応答振動(α)とが、それぞれアンプ48及びアンプ50を介して周波数解析装置52に入力される。これらの振動は、周波数解析装置52にて解析される。応答振動(F)は、入力加振力である。応答振動(α)は、応答加速度である。この周波数解析装置52として、ヒューレットパッカード社製のダイナミックシングルアナライザーHP3562Aが用いられる。解析により、伝達関数が求められる。伝達関数のグラフの一例が、図12に示されている。このグラフでは、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸が伝達関数である。伝達関数は、[応答振動(α)/応答振動(F)]である。この測定により、面外2次モードの伝達関数が得られる。振動減衰率Rvは、以下の式(1)及び式(2)により算出される。
Rv= (1/2)× (Δω/ωn) ・・・(1)
T0=Tn/√2 ・・・(2)
数式(1)において、ωnは1次の極大値の周波数である。
【0045】
面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上が好ましく、0.80以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は1.0以下が好ましい。
【0046】
図13は、図1のラケットフレーム2の面外一次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。この測定では、ヘッド8とスロート10との境界部に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して垂直となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46(図11参照)で叩かれる。そして、面外二次モードの振動減衰率の測定と同様の方法にて、面外一次モードの振動減衰率が算出される。
【0047】
面外一次モードにおける振動減衰率は、0.50以上が好ましく、0.60以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は0.80以下が好ましい。
【0048】
図14は、図1のラケットフレーム2の面内二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。この測定では、スロート10の合流する部分に紐がかけられ、ラケットフレーム2が吊り下げられる。吊り下げられたラケットフレーム2では、ヘッド8が下側でグリップ14が上側となる。ヘッド8の側部の内側に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して平行となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46で叩かれる。そして、面外二次モードの振動減衰率の測定と同様の方法にて、面内二次モードの振動減衰率が算出される。
【0049】
面内二次モードにおける振動減衰率は、1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は2.0以下が好ましい。
【0050】
操作性の観点から、グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは300kg・cm2未満が好ましく、295kg・cm2未満が特に好ましい。実用的なラケットフレーム2で達成されうる慣性モーメントは、250kg・cm2以上である。この慣性モーメントは、バボラ社のラケット・ダイアグニスティック・センターによって測定される。
【0051】
反発性の観点から、ラケットフレーム2の質量は300g以上が好ましく、310g以上が特に好ましい。操作性の観点から、この質量は340g以下か好ましく、330g以下が特に好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0053】
[実施例1]
図1から3に示されたラケットフレームを製造した。このラケットフレームは、第一振動減衰部、ヘッドの第二振動減衰部及びスロートの第二振動減衰部を備えている。ヘッドの第二振動減衰部の角度θは、90°である。換言すれば、ヘッドの第二振動減衰部は3時の位置及び9時の位置にある。
【0054】
[実施例2]
ヘッドの第二振動減衰部の位置を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のラケットフレームを得た。
【0055】
[実施例3及び4]
スロートの第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例3のラケットフレームを得た。ヘッドの第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例4のラケットフレームを得た。
【0056】
[比較例1−3]
第一振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のラケットフレームを得た。第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のラケットフレームを得た。第一振動減衰部及び第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例3のラケットフレームを得た。
【0057】
[実施例5及び6]
質量及びヘッドの第二振動減衰部の位置を下記の表2及び3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5及び6のラケットフレームを得た。
【0058】
[比較例4−6]
比較例4−6は、市販のラケットフレームである。比較例4のラケットフレームは、第二振動減衰部をシャフトに備えている。比較例5のラケットフレームでは、マトリクスは反応射出成形で得られたナイロンであり、強化繊維はカーボン長繊維である。比較例6のラケットフレームでは、ナイロンマトリクス中にカーボン短繊維が分散している。
【0059】
[評価]
ラケットフレームにグロメット、グリップテープ、エンドキャップ及びガットを装着し、テニスラケットを製作した。このテニスラケットにて10名のハイクラスのプレーヤーにラリーを行わせ、打球感、反発性及び操作性について聞き取った。「よい」と回答したプレーヤーの数に基づき、下記の通り格付けを行った。
A:8人以上
B:6人以上
C:4人以上
D:3人以下
この結果が、下記の表1−3に示されている。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表1−3に示されるように、実施例のラケットフレームは諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【符号の説明】
【0064】
2・・・ラケットフレーム
4・・・本体
6・・・第一振動減衰部
8・・・ヘッド
10・・・スロート
12・・・シャフト
14・・・グリップ
18・・・第二振動減衰部
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケット等のフレームに関する。詳細には、本発明は、振動減衰部を備えたラケットフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
テニスラケットでボールが打撃されたとき、プレーヤーに振動が伝わる。振動に不快を感じるプレーヤーがいる。プレーヤーは、マイルドな打球感を望んでいる。振動はさらに、テニスエルボーの原因となり得る。
【0003】
振動を減衰させるための種々の提案が、なされている。特開平4−236973号公報には、グリップが弾性体を備えたテニスラケットが開示されている。この弾性率は、振動減衰に寄与しうる。特開2003−10362公報には、ヘッドがダンパーを備えたテニスラケットが開示されている。このダンパーは、振動減衰に寄与しうる。
【0004】
プレーヤーは、テニスラケットに、反発性を求めている。反発性に優れたラケットにより打撃されたボールは、高速で飛行しうる。プレーヤーはさらに、テニスラケットに操作性を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−236973号公報
【特許文献2】特開2003−10362公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
反発性及び操作性に優れたテニスラケットは、競技に参加するプレーヤーには適している。しかし、反発性及び操作性に優れたテニスラケットは、概して振動減衰性に劣る。
【0007】
本発明の目的は、振動減衰性、反発性及び操作性に優れたラケットフレームの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るラケットフレームは、本体と、この本体に固定された第一振動減衰部とを備える。この本体は、ヘッドと、シャフトと、このヘッドから延びてシャフトに至る左右一対のスロートと、このシャフトに連続するグリップとを備える。この本体は、第二振動減衰部を含む。この第二振動減衰部の材質は、第一振動減衰部の材質と異なっている。このラケットフレームでは、スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上である。グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは、300kg・cm2未満である。面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上1.0以下である。
【0009】
好ましくは、第一振動減衰部は、繊維強化ナイロンからなる。好ましくは、第二振動減衰部は、エポキシ樹脂からなる。
【0010】
好ましくは、第一振動減衰部がスロート、シャフト又はグリップに固定され、第二振動減衰部がヘッド又はスロートに含まれる。好ましくは、第一振動減衰部は、スロートからグリップにまで至る。
【0011】
好ましくは、ヘッドは、一対の第二振動減衰部を含む。これら第二振動減衰部は、ラケットフレームの軸に対して対称に配置される。
【0012】
それぞれのスロートが、第二振動減衰部を含んでもよい。これら第二振動減衰部は、ラケットフレームの軸に対して対称に配置される。
【0013】
好ましくは、側圧剛性R2は95kgf/cm以上であり、スロート剛性R4は350kgf/cm以下である。好ましくは、比(R2/R4)は、0.28以上である。好ましくは、慣性モーメントは、295kg・cm2未満である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るラケットフレームは、振動減衰性、反発性及び操作性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るラケットフレームが示された正面図である。
【図2】図2は、図1のラケットフレームが示された側面図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線に沿った拡大断面図である。
【図4】図4は、ラケットフレームの第二振動減衰部の位置が説明されるための正面図である。
【図5】図5は、図1のラケットフレームの頂圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図6】図6は、図1のラケットフレームの側圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図7】図7は、図1のラケットフレームの平圧剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図8】図8は、図1のラケットフレームのスロート剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図9】図9は、図1のラケットフレームの打球面剛性が測定される様子が示された模式図である。
【図10】図10は、図1のラケットフレームの面外二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【図11】図11は、図10の測定に用いられる装置が示された概念図である。
【図12】図12は、図10の測定によって得られた結果が示されたグラフである。
【図13】図13は、図1のラケットフレームの面外一次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【図14】図14は、図1のラケットフレームの面内二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0017】
図1から3に示されたラケットフレーム2は、本体4と、2つの第一振動減衰部6とからなる。本体4は、ヘッド8、2つのスロート10、シャフト12及びグリップ14からなる。このラケットフレーム2にグロメット、グリップテープ、エンドキャップ等が取り付けられ、さらにガットが張られることにより、硬式テニス用のラケットが得られる。図1における上下方向は、ラケットフレーム2の軸方向である。
【0018】
ヘッド8は、打球面の輪郭を形成している。ヘッド8の正面形状は、略楕円である。それぞれのスロート10の一端は、ヘッド8と連続している。このスロート10は、他端の近傍で他のスロート10と合流している。スロート10は、ヘッド8から延びてシャフト12に至っている。シャフト12は、2つのスロート10が合流する箇所から延びている。シャフト12は、スロート10と連続的にかつ一体的に形成されている。グリップ14は、シャフト12と連続的にかつ一体的に形成されている。ヘッド8のうち2つのスロート10に挟まれた部分は、ヨーク16である。
【0019】
この本体4は、繊維強化樹脂からなる。この繊維強化樹脂層のマトリクス樹脂は、エポキシ樹脂である。繊維強化樹脂層の強化繊維は、カーボン繊維である。この強化繊維は、長繊維である。図3から明らかなように、本体4は中空である。複数枚のプリプレグが巻かれ、このプリプレグに含まれるエポキシ樹脂が硬化することで、本体4が成形されている。
【0020】
第一振動減衰部6は、本体4に固定されている。図3に示されるように、本体4に凹みが形成され、この凹みに第一振動減衰部6が埋め込まれている。第一振動減衰部6は、接着剤によって本体4に固定されている。第一振動減衰部6は、スロート10、シャフト12又はグリップ14に固定されうる。図2から明らかなように、本実施形態では、第一振動減衰部6はスロート10からグリップ14にまで至っている。
【0021】
第一振動減衰部6は、短繊維を含む繊維強化ナイロンからなる。好ましい短繊維は、炭素繊維である。好ましいマトリクスは、66ナイロンである。この繊維強化ナイロンにおける短繊維の含有率は、10質量%以上30質量%以下である。含有率が10質量%以上である第一振動減衰部6は、弾性率が大きく、かつ寸法精度に優れる。この観点から、この含有率は15質量%以上が特に好ましい。含有率が30質量%以下である第一振動減衰部6は、振動減衰性に優れる。この観点から、この含有率は35質量%以下が好ましい。
【0022】
このラケットフレーム2が用いられたテニスラケットでは、第一振動減衰部6によって打撃時の振動が減衰される。このテニスラケットは、打球感に優れる。このテニスラケットでは、テニスエルボーが生じにくい。
【0023】
図2において符号L1で示されているのは、第一振動減衰部6の長さである。振動減衰性の観点から、長さL1は5cm以上が好ましく、8cm以上が特に好ましい。長さL1は、20cm以下が好ましい。
【0024】
図3において符号T1で示されているのは、第一振動減衰部6の厚みである。振動減衰性の観点から、厚みT1は0.5mm以上が好ましく、0.8mm以上が特に好ましい。厚みT1は、4mm以下が好ましく、1.5mm以下が特に好ましい。
【0025】
図1に示されるように、ヘッド8は、2つの第二振動減衰部18を含んでいる。これらの第二振動減衰部18は、ラケットフレーム2の軸に対して対称に配置されている。第二振動減衰部18は、ヘッド8の成形に用いられるプリプレグの一部に改質エポキシ樹脂が用いられることによって形成されている。この改質エポキシ樹脂では、温度が0℃であり、周波数が10Hzである条件下で測定された損失係数は0.5以上である。
【0026】
図1に示されるように、それぞれのスロート10は、第二振動減衰部18を含んでいる。2つの第二振動減衰部18は、ラケットフレーム2の軸に対して対称に配置されている。第二振動減衰部18は、スロート10の成形に用いられるプリプレグの一部に改質エポキシ樹脂が用いられることによって形成されている。ヘッド8の第二振動減衰部18の改質エポキシ樹脂と同等の改質エポキシ樹脂が、スロート10の第二振動減衰部18に用いられうる。
【0027】
このラケットフレーム2が用いられたテニスラケットでは、第二振動減衰部18によって打撃時の振動が減衰される。このテニスラケットは、打球感に優れる。このテニスラケットでは、テニスエルボーが生じにくい。第二振動減衰部18の材質は、第一振動減衰部6の材質と異なっている。互いに材質が異なる2種の振動減衰部を備えるので、このラケットフレーム2は、振動減衰性に極めて優れている。
【0028】
図2において符号L2で示されているのは、第二振動減衰部18の長さである。振動減衰性の観点から、長さL2は1cm以上が好ましく、2cm以上が特に好ましい。長さL1は、10cm以下が好ましい。
【0029】
本実施形態では、ヘッド8及びスロート10が第二振動減衰部18を含んでいる。ヘッド8のみが第二振動減衰部18を含んでもよく、スロート10のみが第二振動減衰部18を含んでもよい。
【0030】
図4は、第二振動減衰部18の位置が説明されるための正面図である。図4において符号20で示されているのは、打球面の中心Oと第二振動減衰部18の中心とを結ぶ直線である。符号θで示されているのは、直線20が軸方向に対してなす角度である。打球面が時計の文字盤とみなされたとき、角度θが60°である第二振動減衰部18は、4時位置及び8時位置にある。角度θが90°である第二振動減衰部18は、3時位置及び9時位置にある。図1に示されたラケットフレーム2では、θは90°である。換言すれば、第二振動減衰部18は、3時位置及び9時位置にある。
【0031】
振動減衰性の観点から、角度θは30°以上が好ましく、45°以上が特に好ましい。振動減衰性の観点から、角度θは120°以下が好ましく、90°以下が特に好ましい。
【0032】
図5は、図1のラケットフレーム2の頂圧剛性R1が測定される様子が示された模式図である。頂圧剛性R1の測定には、1/4円の形状を有し、半径Rが35mmである一対の受け具22が用いられる。これらの受け具22は、鋼製である。これらの受け具22の間隔Waは、80mmである。シャフト12が鉛直となるように、この受け具22にラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具24が準備される。この圧縮具24は、直径Wbが100mmである円柱状である。この圧縮具24は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具24は、ヘッド8の頂部を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具24の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具24の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、頂圧剛性R1である。頂圧剛性R1の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0033】
反発性及び操作性の観点から、頂圧剛性R1は110kgf/mm以上が好ましく、120kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、頂圧剛性R1は135kgf/mm以下が好ましく、130kgf/mm以下が特に好ましい。
【0034】
図6は、図1のラケットフレーム2の側圧剛性R2が測定される様子が示された模式図である。側圧剛性R2の測定には、2枚の挟持板26が用いられる。これらの挟持板26により、シャフト12が水平であり、打球面が鉛直となるように、ラケットフレーム2が保持される。一方、鋼製の圧縮具28が準備される。この圧縮具28は、直径Wbが100mmである円柱状である。この圧縮具28は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具28は、ヘッド8の側部を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具28の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具28の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、側圧剛性R2である。側圧剛性R2の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0035】
反発性及び操作性の観点から、側圧剛性R2は95kgf/mm以上が好ましく、100kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、側圧剛性R2は120kgf/mm以下が好ましく、110kgf/mm以下が特に好ましい。
【0036】
図7は、図1のラケットフレーム2の平圧剛性R3が測定される様子が示された模式図である。平圧剛性R3の測定には、鋼製の2本の受け具30が用いられる。それぞれの受け具30は、棒状である。この受け具30の断面形状は、半径が15mmの円である。これらの受け具30は、ピッチが600mmとなるように配置される。これらの受け具30の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具32が準備される。この圧縮具32は、棒状である。圧縮具32の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具32は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具32は、ヘッド8を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具32の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具32の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、平圧剛性R3である。平圧剛性R3の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0037】
反発性及び操作性の観点から、平圧剛性R3は50kgf/mm以上が好ましく、55kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、平圧剛性R3は65kgf/mm以下が好ましく、60kgf/mm以下が特に好ましい。
【0038】
図8は、図1のラケットフレーム2のスロート剛性R4が測定される様子が示された模式図である。スロート剛性R4の測定には、鋼製の2本の受け具34が用いられる。それぞれの受け具34は、棒状である。この受け具34の断面形状は、半径が15mmの円である。第一受け具34aは、グリップ14のエンドから距離Lの位置に配置される。第二受け具34bは、第一受け具34aから340mmの位置に配置される。これらの受け具34の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具36が準備される。この圧縮具36は、棒状である。圧縮具36の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具36は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具36は、スロート10の近傍を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具36の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具36の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、スロート剛性R4である。スロート剛性R4の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0039】
図8における距離Lは、ラケットフレーム2のサイズに応じて決定される。サイズに応じた距離Lが、以下に示される。
ラケットフレームのサイズ 距離L
27.0inch 25mm
27.5inch 38mm
28.0inch 50mm
28.5inch 63mm
29.0inch 75mm
【0040】
反発性及び操作性の観点から、スロート剛性R4は310kgf/mm以上が好ましく、320kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、スロート剛性R4は350kgf/mm以下が好ましく、340kgf/mm以下が特に好ましい。
【0041】
図9は、図1のラケットフレーム2の打球面剛性R5が測定される様子が示された模式図である。打球面剛性R5の測定には、鋼製の2本の受け具38が用いられる。それぞれの受け具38は、棒状である。この受け具38の断面形状は、半径が15mmの円である。第一受け具38aは、ヘッド8の先端から7.5mmの位置に配置される。第二受け具38bは、第一受け具38aから340mmの位置に配置される。これらの受け具38の上に、シャフト12が水平であり、打球面が水平となるように、ラケットフレーム2が置かれる。一方、鋼製の圧縮具40が準備される。この圧縮具40は、棒状である。圧縮具40の断面形状は、半径が10mmの円である。この圧縮具40は、30mm/minの速度で、矢印Aの方向に移動する。この圧縮具40は、ヘッド8を押圧する。押圧により、ラケットフレーム2に荷重がかかる。圧縮具40の移動により、荷重が徐々に大きくなる。荷重が25kgfである状態から、荷重が50kgfである状態までの圧縮具40の移動距離X(mm)が測定される。25kgfがXで除された値が、打球面剛性R5である。打球面剛性R5の測定は、振動減衰性ラケットフレーム2にグロメットが取り付けられ、ガットが張られていない状態でなされる。
【0042】
反発性及び操作性の観点から、打球面剛性R5は130kgf/mm以上が好ましく、140kgf/mm以上が特に好ましい。打球感の観点から、打球面剛性R5は170kgf/mm以下が好ましく、160kgf/mm以下が特に好ましい。
【0043】
スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)は、0.26以上が好ましい。比(R2/R4)が0.26以上であるラケットフレーム2は、打球感と反発性との両方に優れる。この観点から、比(R2/R4)は0.28以上がより好ましく、0.31以上が特に好ましい。実用的なラケットフレーム2で達成されうる比(R2/R4)は、0.40以下である。
【0044】
図10は、図1のラケットフレーム2の面外二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。図11は、図10の測定に用いられる装置が示された概念図である。この測定では、ヘッド8の上端が紐42で吊り下げられる。スロート10とシャフト12との境界部に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して垂直となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46で叩かれる。インパクトハンマー46には、フォースピックアップ計が取り付けられている。このフォースピックアップ計で計測された応答振動(F)と加速度ピックアップ44で計測された応答振動(α)とが、それぞれアンプ48及びアンプ50を介して周波数解析装置52に入力される。これらの振動は、周波数解析装置52にて解析される。応答振動(F)は、入力加振力である。応答振動(α)は、応答加速度である。この周波数解析装置52として、ヒューレットパッカード社製のダイナミックシングルアナライザーHP3562Aが用いられる。解析により、伝達関数が求められる。伝達関数のグラフの一例が、図12に示されている。このグラフでは、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸が伝達関数である。伝達関数は、[応答振動(α)/応答振動(F)]である。この測定により、面外2次モードの伝達関数が得られる。振動減衰率Rvは、以下の式(1)及び式(2)により算出される。
Rv= (1/2)× (Δω/ωn) ・・・(1)
T0=Tn/√2 ・・・(2)
数式(1)において、ωnは1次の極大値の周波数である。
【0045】
面外二次モードにおける振動減衰率は、0.70以上が好ましく、0.80以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は1.0以下が好ましい。
【0046】
図13は、図1のラケットフレーム2の面外一次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。この測定では、ヘッド8とスロート10との境界部に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して垂直となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46(図11参照)で叩かれる。そして、面外二次モードの振動減衰率の測定と同様の方法にて、面外一次モードの振動減衰率が算出される。
【0047】
面外一次モードにおける振動減衰率は、0.50以上が好ましく、0.60以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は0.80以下が好ましい。
【0048】
図14は、図1のラケットフレーム2の面内二次モードの振動減衰率が測定される様子が示された模式図である。この測定では、スロート10の合流する部分に紐がかけられ、ラケットフレーム2が吊り下げられる。吊り下げられたラケットフレーム2では、ヘッド8が下側でグリップ14が上側となる。ヘッド8の側部の内側に、加速度ピックアップ44が固定される。加速度ピックアップ44は、その測定方向が打球面に対して平行となるように、取り付けられる。ラケットフレーム2の、加速度ピックアップ44の裏側が、インパクトハンマー46で叩かれる。そして、面外二次モードの振動減衰率の測定と同様の方法にて、面内二次モードの振動減衰率が算出される。
【0049】
面内二次モードにおける振動減衰率は、1.3以上が好ましく、1.5以上が特に好ましい。反発性の観点から、この振動減衰率は2.0以下が好ましい。
【0050】
操作性の観点から、グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントは300kg・cm2未満が好ましく、295kg・cm2未満が特に好ましい。実用的なラケットフレーム2で達成されうる慣性モーメントは、250kg・cm2以上である。この慣性モーメントは、バボラ社のラケット・ダイアグニスティック・センターによって測定される。
【0051】
反発性の観点から、ラケットフレーム2の質量は300g以上が好ましく、310g以上が特に好ましい。操作性の観点から、この質量は340g以下か好ましく、330g以下が特に好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0053】
[実施例1]
図1から3に示されたラケットフレームを製造した。このラケットフレームは、第一振動減衰部、ヘッドの第二振動減衰部及びスロートの第二振動減衰部を備えている。ヘッドの第二振動減衰部の角度θは、90°である。換言すれば、ヘッドの第二振動減衰部は3時の位置及び9時の位置にある。
【0054】
[実施例2]
ヘッドの第二振動減衰部の位置を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2のラケットフレームを得た。
【0055】
[実施例3及び4]
スロートの第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例3のラケットフレームを得た。ヘッドの第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、実施例4のラケットフレームを得た。
【0056】
[比較例1−3]
第一振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のラケットフレームを得た。第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2のラケットフレームを得た。第一振動減衰部及び第二振動減衰部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例3のラケットフレームを得た。
【0057】
[実施例5及び6]
質量及びヘッドの第二振動減衰部の位置を下記の表2及び3に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例5及び6のラケットフレームを得た。
【0058】
[比較例4−6]
比較例4−6は、市販のラケットフレームである。比較例4のラケットフレームは、第二振動減衰部をシャフトに備えている。比較例5のラケットフレームでは、マトリクスは反応射出成形で得られたナイロンであり、強化繊維はカーボン長繊維である。比較例6のラケットフレームでは、ナイロンマトリクス中にカーボン短繊維が分散している。
【0059】
[評価]
ラケットフレームにグロメット、グリップテープ、エンドキャップ及びガットを装着し、テニスラケットを製作した。このテニスラケットにて10名のハイクラスのプレーヤーにラリーを行わせ、打球感、反発性及び操作性について聞き取った。「よい」と回答したプレーヤーの数に基づき、下記の通り格付けを行った。
A:8人以上
B:6人以上
C:4人以上
D:3人以下
この結果が、下記の表1−3に示されている。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表1−3に示されるように、実施例のラケットフレームは諸性能に優れている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【符号の説明】
【0064】
2・・・ラケットフレーム
4・・・本体
6・・・第一振動減衰部
8・・・ヘッド
10・・・スロート
12・・・シャフト
14・・・グリップ
18・・・第二振動減衰部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体に固定された第一振動減衰部とを備えており、
上記本体が、ヘッドと、シャフトと、このヘッドから延びてシャフトに至る左右一対のスロートと、このシャフトに連続するグリップとを備えており、
上記本体が、第二振動減衰部を含んでおり、
上記第二振動減衰部の材質が上記第一振動減衰部の材質と異なっており、
スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)が0.26以上であり、
グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントが300kg・cm2未満であり、
面外二次モードにおける振動減衰率が0.70以上1.0以下であるラケットフレーム。
【請求項2】
上記第一振動減衰部が、繊維強化ナイロンからなる請求項1に記載のラケットフレーム。
【請求項3】
上記第二振動減衰部が、エポキシ樹脂からなる請求項1又は2に記載のラケットフレーム。
【請求項4】
上記第一振動減衰部がスロート、シャフト又はグリップに固定されており、上記第二振動減衰部がヘッド又はスロートに含まれている請求項1から3のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項5】
上記第一振動減衰部が、スロートからグリップにまで至っている請求項4に記載のラケットフレーム。
【請求項6】
上記ヘッドが、一対の第二振動減衰部を含んでおり、これら第二振動減衰部がラケットフレームの軸に対して対称に配置されている請求項4又は5に記載のラケットフレーム。
【請求項7】
それぞれのスロートが上記第二振動減衰部を含んでおり、これら第二振動減衰部がラケットフレームの軸に対して対称に配置されている請求項4から6のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項8】
上記側圧剛性R2が95kgf/cm以上であり、上記スロート剛性R4が350kgf/cm以下である請求項1から7のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項9】
上記比(R2/R4)が0.28以上である請求項1から8のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項10】
上記慣性モーメントが295kg・cm2未満である請求項1から9のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項1】
本体と、この本体に固定された第一振動減衰部とを備えており、
上記本体が、ヘッドと、シャフトと、このヘッドから延びてシャフトに至る左右一対のスロートと、このシャフトに連続するグリップとを備えており、
上記本体が、第二振動減衰部を含んでおり、
上記第二振動減衰部の材質が上記第一振動減衰部の材質と異なっており、
スロート剛性R4に対する側圧剛性R2の比(R2/R4)が0.26以上であり、
グリップ端から10cmの位置における軸周りの慣性モーメントが300kg・cm2未満であり、
面外二次モードにおける振動減衰率が0.70以上1.0以下であるラケットフレーム。
【請求項2】
上記第一振動減衰部が、繊維強化ナイロンからなる請求項1に記載のラケットフレーム。
【請求項3】
上記第二振動減衰部が、エポキシ樹脂からなる請求項1又は2に記載のラケットフレーム。
【請求項4】
上記第一振動減衰部がスロート、シャフト又はグリップに固定されており、上記第二振動減衰部がヘッド又はスロートに含まれている請求項1から3のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項5】
上記第一振動減衰部が、スロートからグリップにまで至っている請求項4に記載のラケットフレーム。
【請求項6】
上記ヘッドが、一対の第二振動減衰部を含んでおり、これら第二振動減衰部がラケットフレームの軸に対して対称に配置されている請求項4又は5に記載のラケットフレーム。
【請求項7】
それぞれのスロートが上記第二振動減衰部を含んでおり、これら第二振動減衰部がラケットフレームの軸に対して対称に配置されている請求項4から6のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項8】
上記側圧剛性R2が95kgf/cm以上であり、上記スロート剛性R4が350kgf/cm以下である請求項1から7のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項9】
上記比(R2/R4)が0.28以上である請求項1から8のいずれかに記載のラケットフレーム。
【請求項10】
上記慣性モーメントが295kg・cm2未満である請求項1から9のいずれかに記載のラケットフレーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−22361(P2013−22361A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162026(P2011−162026)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)
[ Back to top ]