説明

ラジエター冷却液注入方法およびラジエター冷却液注入アダプタ

【課題】 完全密閉式のラジエター用の新規なラジエター冷却液注入方法、及び、ラジエター冷却液注入アダプタ
【解決手段】 ラジエター冷却液注入方法は、ラジエター冷却液注入装置本体2(基部)と、ラジエター冷却液注入装置本体2に軸方向にスライド移動可能に装着した可動ノズル3とを備えたラジエター冷却液注入装置を用いている。可動ノズル3のノズル部17は、ノズル部17は、ラジエター冷却液注入装置本体2(基部)をオーバーフロー受溝部92に連結した状態でシール部16がラジエター冷却液注入装置本体2に当接する位置まで可動ノズル3を移動させたときに、リザーブタンク63に注入する液面調整位置hまで延在し、大気開放を行ないながらラジエター冷却液を吸引するので、リザーブタンクの液面調整が正確に行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジエターにラジエター冷却液(LLC)を注入するのに用いるラジエター冷却液注入方法およびラジエター冷却液注入アダプタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラジエター60は、図10に示すように、エンジン61の熱を吸収させて温度が高くなったラジエター冷却液の熱を放熱する放熱器である。図10中、62は、エンジンの冷却液の流路からラジエター冷却液を回収するラジエター冷却液回収ホースである。ラジエター60の近くには、ラジエター冷却液を貯留するリザーブタンク63がある。ラジエター60は、ラジエター60内の温度が高くなり、ラジエター冷却液の圧力が高くなると、ラジエター冷却液が適宜にラジエター60からオーバーフローしてリザーブタンク63に回収されるようになっている。また、リザーブタンク63は、ラジエター60の温度が低くなり、ラジエター冷却液の圧力が低下すると、適宜にラジエター冷却液をラジエター60に供給する機能を備えている。また、リザーブタンク63は安全弁を備えており、リザーブタンク63内の圧力がある値以上に上昇した場合に、適宜にリザーブタンク63を大気開放するようになっている。
【0003】
ラジエター冷却液を注入するラジエター冷却液注入部70は、ラジエター60側に設けられている。ラジエター冷却液注入部70は、図11(a)に示すように、ラジエター冷却液注入口71と、ラジエター冷却液注入口71を囲み、かつ、外側の壁72aがラジエター冷却液注入口71よりも高くなったオーバーフロー受溝部72を備えている。また、オーバーフロー受溝部72の外側の壁72aには、ラジエター冷却液がオーバーフローしたときに、ラジエター冷却液をリザーブタンク63に戻すリザーブ水路64(図10参照)に連通される流路孔73が形成されている。なお、ラジエター冷却液注入部70には、ラジエター冷却液の注入が完了した後、ラジエターのバルブ(安全弁)が装着されるようになっている。
【0004】
ラジエター60にラジエター冷却液を注入する場合、ラジエターの冷却液系統にはラジエター冷却液を満水注入し、他方、リザーブタンク63には一定の高さまでラジエター冷却液を定量注入する。この作業は、例えば、図11(b)に示すように、ラジエター冷却液注入装置80で、ラジエターの冷却液系統から空気を吸引してラジエターの冷却液系統内を真空状態にし、真空状態になったラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を注入する。ラジエターの冷却液系統をいったん真空状態にしてラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を供給することにより、ラジエター冷却液がラジエターの冷却液系統の隅々までゆきわたるようになっている。
【0005】
ラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を注入するラジエター冷却液注入装置80は、例えば、図11(b)に示すように、オーバーフロー受溝部72の上端部に連結されるラジエター冷却液注入装置本体81(外筒)と、ラジエター冷却液注入装置本体81に対して前後動するノズル82(内筒)とを備えている。ノズル82は、図11(c)に示すように、確実にラジエター冷却液注入口71に押し当てられるように、ラジエター冷却液注入装置本体81に対して前後動するようになっており、ノズル82の先端83はラジエター冷却液注入口71に密着し得る形状になっている。
【0006】
このラジエター冷却液注入装置80は、図11(b)に示すように、ラジエター冷却液注入装置本体81(外筒)をラジエター冷却液注入部70をオーバーフロー受溝部72の外側の壁72aに連結する。次に、図11(c)に示すように、ノズル82(内筒)の先端83をラジエター冷却液注入口71に押し当てて密着させ、ラジエターの冷却液系統を密閉する。次に、ラジエター冷却液注入装置80のノズル82(内筒)に連結された図示されない真空ポンプを駆動させ、ラジエターの冷却液系統から空気を吸引し、ラジエターの冷却液系統を真空にする(I)。なお、このラジエター冷却液注入装置80は、ラジエターの冷却液系統を真空にする作業と同時に、図示されないラジエター冷却液供給ポンプを駆動させ、ノズル82(内筒)とラジエター冷却液注入装置本体81(外筒)との間にラジエター冷却液を供給し、オーバーフロー受溝部72の外側の壁72aに設けた流路孔73からリザーブ水路64(図10参照)を通して、リザーブタンク63にラジエター冷却液を定量供給している(II)。次に、ラジエター冷却液注入装置80は、ノズル82(内筒)に連結された図示されないラジエター冷却液供給ポンプを駆動させ、ノズル82(内筒)から真空状態になったラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を満水注入する(III)。
【0007】
このようにして、ラジエターの冷却液系統にはラジエター冷却液を満水注入するとともに、他方、リザーブタンク63には一定の高さまでラジエター冷却液を定量注入している。
【0008】
ラジエター冷却液注入装置80の各種動作は、図示されない制御装置によって、ラジエター冷却液注入装置80をラジエター冷却液注入口にセットした後、自動的に行われるように制御するとよい。
【0009】
ところで、ラジエターの構造には、図12に示すように、ラジエター60aにラジエター冷却液注入部70を設けずにラジエター60aを密閉し、冷却液系統のエンジン61側の流路とリザーブタンク63との間にラジエター冷却液を流通させる冷却液流通ホース65を設け、かつ、リザーブタンク63にラジエター冷却液注入部90を設けたいわゆる完全密閉式のラジエター60aもある。
【0010】
この完全密閉式のラジエター60aは、冷却液系統のエンジン61側の流路とリザーブタンク63の間を連通するように設けた冷却液流通ホース65により、ラジエター冷却液がリザーブタンク63を含めて常時循環するように構成されている。この完全密閉式のラジエター60aは、ラジエター60a内でキャビテーションにより気泡が生じた場合でも、ラジエター冷却液がリザーブタンク63を循環するので、図13に示すように、キャビテーションにより生じた気泡66はリザーブタンク63に収集される。
【0011】
また、完全密閉式のラジエター60aは、冷却液系統のエンジン61側の流路とリザーブタンク63との間に冷却液流通ホース65が設けられているので、エンジン61側のラジエター冷却液の圧力が低下した場合には、リザーブタンク63の上部に貯まった空気がダンパーの役目をし、リザーブタンク63から冷却液流通ホース65を通してエンジン61側の流路にラジエター冷却液を供給するようになっている。これにより、ラジエターの冷却液系統の圧力(特にエンジン61側の流路の圧力)が著しく低下するのを防止することができ、ラジエター60aによるエンジン61の冷却機能を維持でき、エンジン61の信頼性を向上させることができる。
【0012】
なお、本明細書では、この完全密閉式のラジエター60a(図12)と区別して、先に説明したラジエター60の構造(図10)を簡易密閉式のラジエター60という。
【0013】
斯かる完全密閉式のラジエター60aにラジエター冷却液を注入する方法としては、特開平7−137703号公報(特許文献1)に記載された技術を適用することができる。同公報に記載されたものは、まず図14(a)に示すように、収容空間Sを形成する容器Aに液体注入装置を構成する注入装置100を取り付ける。この注入装置100は、容器Aの口Cを塞ぐ蓋101に貫通させた、図外の真空ポンプおよび液体の供給源に連通する流通パイプ102と、開閉可能な開放パイプ103を備えている。そして、図14(b)に示すように、流通パイプ102を通して容器Aの収容空間S内を真空引きしたのち、図14(c)に示すように、同流通パイプ102を通して収容空間S内に液体Lを充填する。次に、図14(d)に示すように、開放パイプ103を開いて収容空間Sを大気に開放状態にしたのち、大気を導入しつつ流通パイプ102を通して液体Lを吸引し、この吸引を所定の時間行なうことにより、図14(e)に示すように、容器Aの収容空間Sに所定量の液体Lを残すようにして注入完了となる。(特許文献1)
【特許文献1】特開平7−137703号公報、図4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
完全密閉式のラジエターにラジエター冷却液を注入するラジエター冷却液注入装置には、特許文献1に記載されたものが知られているが、大気開放用のパイプ(開放パイプ)を別途設けているなど、構造が複雑である。本発明の第1の課題は簡単な構成のラジエター冷却液注入装置を用いてラジエター冷却液の注入が行なえるラジエター冷却液注入方法を提供することにある。
【0015】
また、自動車の製造ラインでは、車種変更により異なる種類の車種を製造したり、又は、同時に異なる種類の車種を製造したりすることがある。この場合、車種によってラジエターの構造が簡易密閉式であったり完全密閉式であったりと異なることがある。
【0016】
上述したように、簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置と、完全密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置は構造が異なるため、両方の車種を生産するためには、製造ラインに異なる種類のラジエター冷却液注入装置を装備させることが必要になる。
【0017】
本発明の第2の課題は、斯かる設備コストを軽減するために、既設の簡易密閉式のラジエター冷却液注入装置を、完全密閉式のラジエター冷却液の注入に対応させるアダプターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るラジエター冷却液注入方法は、ラジエター冷却液注入口と、ラジエター冷却液注入口を囲み、かつ、外側の壁がラジエター冷却液注入口よりも高くなったオーバーフロー受溝部と、オーバーフロー受溝部の外側の壁に形成された大気開放孔とを備えたラジエターの冷却液注入部にラジエター冷却液を注入するラジエター冷却液注入方法において、オーバーフロー受溝部の外側の壁に連結でき、かつ、中央に軸方向に貫通した挿通孔が形成された基部と、基部の挿通孔にスライド移動可能に挿入され、挿通孔のラジエター冷却液注入部側に、ラジエター冷却液注入口を液密に封止するシール部と、基部をオーバーフロー受溝部に連結した状態でシール部が基部に当接する位置まで移動させたときに、ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部とを備えた可動ノズルとを備えたラジエター冷却液注入装置を用い、可動ノズルのノズル部をラジエター冷却液注入口に挿入するとともにシール部をラジエター冷却液注入口に密着させ、この状態でラジエターの冷却液系統の空気を吸引し、ラジエターの冷却液系統を真空状態にし、真空状態にしたラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を満水注入し、可動ノズルのシール部をラジエター冷却液注入口から離し、基部に当接する位置に移動させ、大気開放孔を通じてラジエター冷却液注入口を大気開放した状態で、ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置に延在した可動ノズルでラジエター冷却液を吸い上げることによりラジエター冷却液の液面を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係るラジエター冷却液注入アダプタは、ラジエター冷却液注入装置本体に対して軸方向に前後動するノズルを備えたラジエター冷却液注入装置に取り付けられ、ラジエター冷却液注入口と、ラジエター冷却液注入口を囲み、かつ、外側の壁がラジエター冷却液注入口よりも高くなったオーバーフロー受溝部と、オーバーフロー受溝部の外側の壁に形成された大気開放孔とを備えたラジエターの冷却液注入部にラジエター冷却液を注入するのに用いるラジエター冷却液注入アダプタであって、一端に設けられたラジエター冷却液注入部に連結される第1の連結部を備え、他端に設けられたラジエター冷却液注入装置本体に連結される第2の連結部を備え、中央に軸方向に貫通した挿通孔を備えた基部と、挿通孔にスライド移動可能に挿入され、一端にラジエター冷却液注入口を液密に封止するシール部と、基部をラジエター冷却液注入部に連結した状態でシール部をラジエター冷却液注入口から所定距離離れた位置に移動させたときに、ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部を備え、他端にラジエター冷却液注入アダプタのノズルが着座する着座部を備え、基部に対してラジエター冷却液注入装置のノズルの前後動に合わせて動く可動ノズルとを備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るラジエター冷却液注入方法によれば、シール部をラジエター冷却液注入口から軸方向に所定の距離離したときに、ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部により、大気開放を行ないながらラジエター冷却液を吸引するので、リザーブタンクの液面調整が正確に行なえる。また、ラジエター冷却液注入部に形成された大気開放孔を利用して、大気開放を行なうので別途大気開放用のパイプを設けている必要がなく、構造が簡単である。また、ノズル部にラジエター冷却液注入口に対して、より太いノズルを使うことができ、ラジエター冷却液の注入作業をより短時間で行なうことができる。
【0021】
また、本発明に係るラジエター冷却液注入アダプタによれば、簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置を、完全密閉式のラジエターに用いることができ、ラジエター冷却液注入装置の共用を図れ、設備コストを低く抑えることができる。また、シール部をラジエター冷却液注入口から軸方向に所定の距離離したときに、ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部を備えており、大気開放を行ないながらラジエター冷却液を吸引することにより、リザーブタンクの液面調整が正確に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入方法およびラジエター冷却液注入アダプタを図面に基づいて説明する。なお、同じ機能を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明する。
【0023】
この実施形態では、上述したようにリザーブタンク63にラジエター冷却液注入部90を備えた完全密閉式のラジエター60aにラジエター冷却液を注入する(図12、図13参照)。リザーブタンク63内(ラジエター冷却液注入口91内)には、図1に示すように、リザーブタンク63に注入するラジエター冷却液の液面の高さを調整する位置(液面調整位置h)が設定されている。また、完全密閉式のラジエター60aは、ラジエター冷却液注入部90のオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに外部に連通した大気開放孔93が形成されている。また、オーバーフロー受溝部92の外側の壁92aの上部には、内周面に安全弁(図示されない)を取り付ける雌ねじ溝94が形成されている(図5参照)。
【0024】
このラジエター冷却液注入方法で用いるラジエター冷却液注入装置1は、図1に示すように、ラジエター冷却液注入装置本体2(基部)と、ラジエター冷却液注入装置本体2(基部)に軸方向にスライド移動可能に装着した可動ノズル3と、可動ノズル3の移動を操作するアクチュエータ4と、可動ノズル3に連結された真空ポンプ5及びラジエター冷却液供給ポンプ6と、これらの動作を制御する制御装置7とを備えている。
【0025】
ラジエター冷却液注入装置本体2は、ラジエター冷却液注入部90に連結する側の端部に、オーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに連結させる連結部11を備えている。なお、この実施形態では、連結部11はオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aの上端が外径側に張り出した突縁95に連結できるようになっている。また、ラジエター冷却液注入装置本体2の中央には可動ノズル3を挿通する挿通孔12が軸方向に貫通形成されている。
【0026】
可動ノズル3は、ラジエター冷却液注入装置本体2の挿通孔12にスライド移動可能に挿入されている。可動ノズル3は、ラジエター冷却液注入装置本体2の挿通孔12からラジエター冷却液注入部90に連結する側に延在した部位に、シール部16と、ノズル部17を備えている。
【0027】
シール部16は、ラジエター冷却液注入口91を液密に封止する部位であり、この実施形態では、ラジエター冷却液注入口91より太くなっており、そのラジエター冷却液注入口91に当接する側にゴム製のシール材(図示省略)が装着された構造になっている。
【0028】
ノズル部17は、シール部16からさらに軸方向に延在し、ラジエター冷却液注入口91からリザーブタンク63内に挿入される。ノズル部17は、ラジエター冷却液注入装置本体2(基部)をオーバーフロー受溝部92に連結した状態でシール部16がラジエター冷却液注入装置本体2(基部)に当接する位置まで可動ノズル3を移動させたときに、リザーブタンク63内の液面調整位置hまで延在するようになっている。
【0029】
また、ラジエター冷却液注入装置1は、可動ノズル3のスライド移動を操作するアクチュエータ4が配設されており、可動ノズル3には、真空ポンプ5と、ラジエター冷却液供給ポンプ6がそれぞれ連結されている。
【0030】
アクチュエータ4、真空ポンプ5及びラジエター冷却液供給ポンプ6は、それぞれ制御装置7から送られる制御信号により動作が制御されるようになっている。
【0031】
完全密閉式のラジエター60aにラジエター冷却液を注入するときは、まず図1に示すように、可動ノズル3のノズル部17をラジエター冷却液注入口91に挿入した状態で、ラジエター冷却液注入部90のオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aにラジエター冷却液注入装置本体2を連結する。
【0032】
次に、アクチュエータ4により可動ノズル3を操作し、図2に示すように、シール部16をラジエター冷却液注入口91に押し当て密着させラジエター冷却液注入口91を封止し、この状態で真空ポンプ5を駆動させ、リザーブタンク63を含むラジエター60a(図12参照)の冷却液系統を真空引きする。
【0033】
次に、制御装置7は、図3に示すように、ラジエター冷却液供給ポンプ6を駆動させて真空状態にしたラジエター60aの冷却液系統にラジエター冷却液L(LLC)を満水注入する。
【0034】
次に、図4に示すように、アクチュエータ4を駆動させて可動ノズル3のシール部16をラジエター冷却液注入口91から離し、ラジエター冷却液注入装置本体2に当接する位置に移動させる。また、このときノズル部17の先端はラジエター冷却液注入口91内(リザーブタンク63内)の所定の液面調整位置hに位置している。
【0035】
制御装置7は、この状態で真空ポンプ5を駆動させ、ラジエター冷却液注入口91内の所定の液面調整位置hに延在した可動ノズル3でラジエター冷却液Lを吸い上げることにより、ラジエター冷却液Lの液面を液面調整位置hに調整する。このように、シール部16をラジエター冷却液注入口91から軸方向に所定の距離離したときに、リザーブタンク63内の所定の液面調整位置hまで延在するノズル部17を備えており、大気開放を行ないながらラジエター冷却液Lを吸引するので、リザーブタンク63の液面調整が正確に行なえる。
【0036】
また、このラジエター冷却液注入方法によれば、大気開放に、ラジエター冷却液注入部90に形成された大気開放孔93を利用しており、大気開放用のパイプを別途設けている必要がなく、構造が簡単である。また、大気開放用のパイプを別途設けている必要がないので、ラジエター冷却液注入口91に対して、より太いノズルを使うことができ、ラジエター冷却液の注入作業をより短時間で行なうことができる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入方法を説明したが、本発明に係るラジエター冷却液注入方法は、上記に限定されるものではない。例えば、ラジエター冷却液を供給するラジエター冷却液供給手段として、ラジエター冷却液供給ポンプ6を例示したが、これに限定されず、他の公知のラジエター冷却液供給手段を用いることができる。
【0038】
次に、ラジエター冷却液注入アダプタを説明する。
【0039】
この実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタ30は、図5に示すように、基部31と、基部31に対してスライド移動可能に挿入された可動ノズル32と、基部31と可動ノズル32との間に介装されるばね33とを備えている。
【0040】
基部31は、図5に示すように、一端がラジエター冷却液注入部90に連結され、他端が簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置80aに連結されるようになっている。また、基部31の中央には、軸方向に貫通した可動ノズル32の軸方向の摺動を支持し得る内径の挿通孔34が形成されている。
【0041】
基部31の一端は、詳しくは、ラジエター冷却液注入部90のオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに連結できるようになっている。この実施形態では、安全弁(図示省略)を取り付けるべくラジエター冷却液注入部90のオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aの内周面に形成された雌ねじ溝94に螺合する雄ねじ構造36が形成された連結部35を備えている。また、挿通孔34の開口部には、後述する可動ノズル32のシール部44を収納し得る窪み37があり、窪み37の底にシール部44が着座する着座部38が設けられている。
【0042】
基部の他端には、ラジエター冷却液注入装置80a(図6参照)を連結する連結部39が設けられている。この実施形態では、連結部39は基部31の端縁部に外径側に突設した突縁40であり、ラジエター冷却液注入装置80aはこの突縁40に連結されるようになっている。また挿通孔34には、可動ノズル32がラジエター冷却液注入部90側へのスライド移動を規制する係止部41と、可動ノズル32との間に介在させるばね33の着座部42が形成されている。この実施形態では、挿通孔34には、開口側に係止部41、その奥側に着座部42が、それぞれ挿通孔34内に内側に突出した段差で形成されている。
【0043】
また、可動ノズル32は、基部31の挿通孔34に挿入された軸部43と、軸部43の一端側に取り付けられたシール部44と、軸部43からラジエター冷却液注入口91内に延在するノズル部45とを備えている。さらに軸部43の他端側には、基部31の挿通孔34に係止部41に当接する当接部及びばね33の着座部としての機能を備えた外フランジ部46を備えている。可動ノズル32には軸方向に貫通した流路47が形成されており、ラジエター冷却液注入装置80aが連結される側には、ラジエター冷却液注入装置80aのノズル82aが着座する着座部48を備えている。この着座部48は、ラジエター冷却液注入装置80aが着座したときに、ラジエター冷却液注入装置80aのノズル82aと、ラジエター冷却液注入アダプタ30の可動ノズル32の流路47を連通させるようになっている(図6参照)。
【0044】
シール部44は、この実施形態では、可動ノズル32のノズル部45の基端にOリング49(シール材)を介して装着されたシール部本体50と、シール部本体50を覆うように装着されたゴム製のシール部材51で構成されている。シール部材51は、ラジエター冷却液注入口91よりも大径になっており、ラジエター冷却液注入口91に押し当てられたときに、ラジエター冷却液注入口91に密着し、ラジエター冷却液注入口91を封止できるようになっている。
【0045】
ノズル部45は、このラジエター冷却液注入アダプタ30をオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに連結した状態で、かつ、シール部44が基部31に当接する位置まで可動ノズル32を移動させたときに、リザーブタンク63に注入するラジエター冷却液Lの液面の高さを調整する位置(液面調整位置h)まで延在する長さを備えている。
【0046】
この実施形態では、可動ノズル32は、シール部44が取り付けられていない状態で、ばね33を装着し、ラジエター冷却液注入装置が連結される側から基部31の挿通孔34に軸部43を挿入し、基部31の挿通孔34を貫通したノズル部45の基端側に上述したシール部44を取り付けている。
【0047】
このラジエター冷却液注入アダプタ30は、図6に示すように、可動ノズル32のノズル部45をラジエター冷却液注入口91に挿入した状態で、基部31の一端に設けた連結部35を、完全密閉式のラジエター60aのリザーブタンク63のラジエター冷却液注入部90のオーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに連結する。
【0048】
この際、ラジエター冷却液注入アダプタ30の可動ノズル32は、図6に示すように、基部31との間に介装したばね33の作用により、シール部44がラジエター冷却液注入口91から離れ、基部31の端面に当接した位置に押し上げられている。
【0049】
次に、反対側にラジエター冷却液注入装置80aを連結する。連結するラジエター冷却液注入装置80aは、簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置であり、ラジエター冷却液注入装置本体81aに対して軸方向に前後動するノズル82aと、ノズル82aを前後動させるアクチュエータ4aと、ラジエター冷却液注入装置80aの流路84aに連結された真空ポンプ5a及びラジエター冷却液供給ポンプ6aと、アクチュエータ4a、真空ポンプ5a及びラジエター冷却液供給ポンプ6aの動作を制御する制御装置7aとを備えている。
【0050】
このラジエター冷却液注入装置80aは、ノズル82aの先端83aをラジエター冷却液注入アダプタ30の可動ノズル32の着座部48に密着させた状態で、ラジエター冷却液注入アダプタ30の基部31の連結部39(突縁)に連結する。ラジエター冷却液注入アダプタ30の可動ノズル32の着座部48は、基部31との間に介装したばね33の反力により押し上げられ、常時、ラジエター冷却液注入装置80aのノズル82aの先端83aに押し当てられている。
【0051】
ラジエター冷却液注入装置80aはラジエター冷却液注入部90に対して、上記のようにセットされ、後は制御装置7aに予め設定したプログラムに沿って駆動する。制御装置7aは、まず、図7に示すように、アクチュエータ4aを駆動させ、ラジエター冷却液注入アダプタ30の可動ノズル32に押し当てたノズル82aを押し出し、可動ノズル32のシール部44がラジエター冷却液注入口91に押し当たる位置まで前進させる。このとき、リザーブタンク63及びラジエターの冷却液系統は、シール部44により密閉された状態になる。
【0052】
次に、制御装置7aは、真空ポンプ5aを駆動させ、リザーブタンク63を含むラジエターの冷却液系統から空気を吸引する(真空引き)。
【0053】
次に、制御装置7aは、図8に示すように、真空ポンプ5aの駆動を止め、ラジエター冷却液供給ポンプ6aを駆動させ、真空状態になったリザーブタンク63とラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液Lを注入する。このとき、ラジエター冷却液Lは、ラジエターの冷却液系統が真空状態になっているので、ラジエターの冷却液系統の隅々までゆきわたる。制御装置7aは、リザーブタンク63が満水になるまでラジエター冷却液を注入する(満水注入)。
【0054】
次に、制御装置7aは、図9に示すように、ラジエター冷却液供給ポンプ6aの駆動を止め、アクチュエータ4aを駆動させて、ラジエター冷却液注入装置80aのノズル82aを後退させる。このとき、可動ノズル32は基部31との間に介装されたばね33の反力により、着座部48をラジエター冷却液注入装置80aのノズル82aの先端83aに密着させた状態で押し上げられ、シール部44はラジエター冷却液注入口91から離れる。ラジエター冷却液注入口91からシール部44が離れると、リザーブタンク63は、オーバーフロー受溝部92の外側の壁92aに設けられた大気開放孔93を通して外気に連通されて大気開放される。また、このとき、可動ノズル32のノズル部45の先端は、リザーブタンク63に注入するラジエター冷却液Lの液面の高さを調整する位置(液面調整位置h)まで延在した状態になっている。次に、制御装置7aは、真空ポンプ5aを駆動させ、可動ノズル32を通して、リザーブタンク63からラジエター冷却液Lを吸い上げる。可動ノズル32がラジエター冷却液Lを吸い上げることができるのは、ノズル部45が延在した位置までである。これにより、ラジエター冷却液Lの液面は、リザーブタンク63の液面調整位置hに正確に調整される。
【0055】
このように、以上の一連の動作は、制御装置7aに予め設定されたプログラムに沿って自動的に行なわれる。作業者は、ラジエター冷却液注入アダプタ30、及び、ラジエター冷却液注入装置80aをセットするだけでよく、作業負担が軽減されるともに、製品毎のラジエター冷却液Lの注入量も一定にすることができる。
【0056】
このラジエター冷却液注入アダプタ30を用いることにより、簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置80aを用いて、本発明に係るラジエター冷却液注入方法によりラジエター冷却液の注入が行なえ、完全密閉式のラジエター60aにラジエター冷却液Lを注入することができる。また、注入されるラジエター冷却液Lの液量も、簡易密閉式のラジエターに備え付けられている制御装置のプログラムに沿って自動化することができる。
【0057】
また、このラジエター冷却液注入アダプタ30を用いれば、簡易密閉式のラジエター用のラジエター冷却液注入装置80aを装備する設備では、アダプタを配備することと、ラジエター冷却液注入装置80aの制御装置7aのプログラムを改良するだけでよい。従って、既設の簡易密閉式のラジエターの製造ラインでも、低コストで完全密閉式のラジエターの注入作業が行なえるようになり、設備コストの低減を図ることができる。
【0058】
以上、本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入方法およびラジエター冷却液注入アダプタを説明したが、本発明に係るラジエター冷却液注入方法およびラジエター冷却液注入アダプタは、上述した形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、ラジエター冷却液注入アダプタの可動ノズルを、ラジエター冷却液注入装置に合わせて動くようにする構成は、上述したように、基部と可動ノズルとの間にばねを介在させ、可動ノズルの着座部をラジエター冷却液注入装置のノズルに密着させる構成に限定されない。他の方法としては、例えば、ラジエター冷却液注入装置をラジエター冷却液注入アダプタに装着したときに、ラジエター冷却液注入装置のノズルがラジエター冷却液注入アダプタの可動ノズルに機械的に連結され、ラジエター冷却液注入アダプタの可動ノズルがラジエター冷却液注入装置に連動して動くように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入装置を示す縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタを示す縦断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタの使用状態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタの使用状態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタの使用状態を示す縦断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るラジエター冷却液注入アダプタの使用状態を示す縦断面図である。
【図10】簡易密閉式のラジエターの概略図である。
【図11】(a)〜(c)は簡易密閉式のラジエターへのラジエター冷却液の注入作業を示す図である。
【図12】完全密閉式のラジエターの概略図である。
【図13】完全密閉式のラジエターのリザーブタンクを示す図である。
【図14】(a)〜(e)は完全密閉式のラジエターへのラジエター冷却液の注入方法を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ラジエター冷却液注入装置
2 ラジエター冷却液注入装置本体
3 可動ノズル
4、4a アクチュエータ
5、5a 真空ポンプ
6、6a ラジエター冷却液供給ポンプ
7、7a 制御装置
11 連結部
12 挿通孔
16 シール部
17 ノズル部
30 ラジエター冷却液注入アダプタ
31 基部
32 可動ノズル
33 ばね
34 挿通孔
35 連結部
38 着座部
39 連結部(突縁)
41 係止部
42 着座部
43 軸部
44 シール部
45 ノズル部
46 外フランジ部
47 流路
48 着座部
60 簡易密閉式のラジエター
60a 完全密閉式のラジエター
61 エンジン
62 ラジエター冷却液回収ホース
63 リザーブタンク
64 リザーブ水路
65 冷却液流通ホース
70 ラジエター冷却液注入部
71 ラジエター冷却液注入口
72 オーバーフロー受溝部
72a オーバーフロー受溝部の外側の壁
73 流路孔
80、80a ラジエター冷却液注入装置
81、81a ラジエター冷却液注入装置本体
82、82a ノズル
83a 先端
84a 流路
90 ラジエター冷却液注入部
91 ラジエター冷却液注入口
92 オーバーフロー受溝部
92a オーバーフロー受溝部の外側の壁
93 大気開放孔
h 液面調整位置
L ラジエター冷却液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエター冷却液注入口と、前記ラジエター冷却液注入口を囲み、かつ、外側の壁がラジエター冷却液注入口よりも高くなったオーバーフロー受溝部と、前記オーバーフロー受溝部の外側の壁に形成された大気開放孔とを備えたラジエターの冷却液注入部にラジエター冷却液を注入するラジエター冷却液注入方法において、
前記オーバーフロー受溝部の外側の壁に連結でき、かつ、中央に軸方向に貫通した挿通孔が形成された基部と、
前記基部の挿通孔にスライド移動可能に挿入され、前記挿通孔のラジエター冷却液注入部側に、ラジエター冷却液注入口を液密に封止するシール部と、前記基部をオーバーフロー受溝部に連結した状態でシール部が前記基部に当接する位置まで移動させたときに、前記ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部とを備えた可動ノズルとを備えたラジエター冷却液注入装置を用い、
前記可動ノズルのノズル部をラジエター冷却液注入口に挿入するとともにシール部をラジエター冷却液注入口に密着させ、この状態でラジエターの冷却液系統の空気を吸引し、ラジエターの冷却液系統を真空状態にし、
前記真空状態にしたラジエターの冷却液系統にラジエター冷却液を満水注入し、
前記可動ノズルのシール部をラジエター冷却液注入口から離し、基部に当接する位置に移動させ、前記大気開放孔を通じてラジエター冷却液注入口を大気開放した状態で、前記ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置に延在した可動ノズルでラジエター冷却液を吸い上げることによりラジエター冷却液の液面を調整することを特徴とするラジエター冷却液注入方法。
【請求項2】
ラジエター冷却液注入装置本体に対して軸方向に前後動するノズルを備えたラジエター冷却液注入装置に取り付けられ、ラジエター冷却液注入口と、前記ラジエター冷却液注入口を囲み、かつ、外側の壁がラジエター冷却液注入口よりも高くなったオーバーフロー受溝部と、前記オーバーフロー受溝部の外側の壁に形成された大気開放孔とを備えたラジエターの冷却液注入部にラジエター冷却液を注入するのに用いるラジエター冷却液注入アダプタであって、
前記一端に設けられたラジエター冷却液注入部に連結される第1の連結部を備え、他端に設けられたラジエター冷却液注入装置本体に連結される第2の連結部を備え、中央に軸方向に貫通した挿通孔を備えた基部と、
前記挿通孔にスライド移動可能に挿入され、一端にラジエター冷却液注入口を液密に封止するシール部と、前記基部をラジエター冷却液注入部に連結した状態で前記シール部をラジエター冷却液注入口から所定距離離れた位置に移動させたときに、前記ラジエター冷却液注入口内の所定の液面調整位置まで延在するノズル部を備え、他端に前記ラジエター冷却液注入アダプタのノズルが着座する着座部を備え、前記基部に対してラジエター冷却液注入装置のノズルの前後動に合わせて動く可動ノズルとを備えたラジエター冷却液注入アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−70850(P2006−70850A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257359(P2004−257359)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)