説明

ラジエータのキャップ構造

【課題】 樹脂製タンクのフィラーネックに樹脂製の給水キャップを取り付けたものにおいて、その締結状態にあることを、キャップの外部から一見して目視できること、およびその緩み止め手段を設けること。
【解決手段】 キャプ本体7の外周にその外周に沿って弾性変形する舌片部12を一体に突設し、その先端部外周に第2凸部13を設ける。そして、フィラーネック3の上端に欠切部8を設け、欠切部8にストッパ部9を突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として自動車用エンジン冷却水冷却用の熱交換器のタンク上端に着脱自在に取り付けられる樹脂製のキャップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン冷却水冷却用の熱交換器(ラジエータ)のタンク上端には、給水用のフィラーネックが突設され、その開口にプレッシャバルブ(加圧弁)を有するキャップが着脱自在に取り付けられている。このようなキャップ構造において、樹脂製のものは下記特許文献1に記載されている。
これは合成樹脂製のキャップ本体を有底の筒状に形成し、その外周に外ネジを形成するとともに、その筒状内部に正圧弁および負圧弁を設けたものである。そして、そのキャップ本体を樹脂製タンクのフィラーネックに着脱自在に螺着させるものである。
【0003】
なお、金属製ラジエータキャップでは、キャップの締結状態において、そのキャップが逆方向に不用意に弛むことを防止するために、弛み止め手段が設けられている。その弛み止め手段はフィラーネックに突部を設け、キャップ本体に爪部を設け、それら両者が係脱自在に係止されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−106348
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂製のキャップ構造においては、一見してその締結状態を目視することができなかった。また、その弛み止めを確実なものとすることもできなかった。
そこで、本発明はこれらの問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、樹脂製のタンク(1)の外面に筒状に突設され、その内周に内ネジ(2)を有するフィラーネック(3)と、
その内ネジ(2)に着脱自在に螺着される外ネジ(4)が外周に形成され、正圧弁(5)および負圧弁(6)を有する樹脂製のキャプ本体(7)と、を具備するラジエータのキャップ構造において、
前記フィラーネック(3)の上端の開口縁の一部に欠切部(8)が設けられ、
そのフィラーネック(3)の欠切部(8)に隣接する端部で、前記内ネジ(2)の締結される回転方向の上流側に位置する側の内面にストッパ部(9)が突出され、
前記キャップ本体(7)の外周に第1凸部(10)が半径方向の外側に一体に突設されると共に、その第1凸部(10)に下流側に位置して、そのキャップ本体(7)に、その外周に沿って、半径方向に弾性変形する舌片部(12)が一体に突設され、
その舌片部(12)の先端部の外周面に第2凸部(13)が突設され且つ、その舌片部(12)の根元は第1凸部(10)の前記下流側に位置し、
その第2凸部(13)は、第1凸部(10)より前記下流側に位置し且つ、キャップ本体(7)の螺回締結の途中に、舌片部(12)が弾性変形することにより、前記第ストッパ部(9)を乗り越えて通過し、
キャップ本体(7)をフィラーネック(3)に締結する終端で、第1凸部(10)が前記ストッパ部(9)の上流側である一側面(9a)に当接すると共に、そのストッパ部(9)の下流側である他側面(9b)が第2凸部(13)に近接または接触し、
そのキャップ本体(7)を緩める方向には、その他側面(9b)と第2凸部(13)とが衝接して回り止めされる緩み止め手段が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のラジエータのキャップ構造において、
外力により前記舌片部(12)をキャップ本体(7)の中心側に弾性変形することにより、前記緩み止め手段が解除されるように構成されたラジエータのキャップ構造である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のラジエータのキャップ構造において、
キャップ本体(7)をフィラーネック(3)に締結する終端位置で、そのキャップ本体(7)の上端面がフィラーネック(3)の上面に整合し、その上端面に工具嵌着孔(15)が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造である。
請求項4に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のラジエータのキャップ構造において、
キャップ本体(7)をフィラネック(3)に締結する終端位置で、そのキャップ本体(7)の上端面がフィラーネック(3)の上面に整合し、その上端面に工具嵌着突部(15a)が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ともに樹脂製のフィラーネックにキャップ本体7が螺着されるキャップ構造において、キャップの締結状態を、一見して外部から容易に目視することができる。また、その締結状態でストッパ部9の他側面9bを第2凸部13に近接または接触するように構成したから、キャップ本体7が不用意に弛むことを防止できる。さらには、第2凸部13を有する舌片部12は、細長いスリット11によって半径方向に弾性変形するから、舌片部12を無理なく変形させ、キャップ本体7の着脱を容易に行なうことができる。それとともに、寿命の長いラジエータのキャップ構造を提供できる。
【0010】
上記構成において、請求項2に記載のように、キャップ本体7の締結状態からそれを弛む方向に回転したとき、第2凸部13が他側面9bに衝接してそれ以上回転できないようにし、外力により舌片部12をキャップ本体7の中心側に押込んだときのみ、その第2凸部13がストッパ部9を通過してキャップ本体7が弛むように構成した場合には、弛み止め効果を確実なものとすることができる。
【0011】
請求項3に記載のように、キャップ本体7をフィラーネック3に締結する終端位置で、そのキャップ本体7の上端面がフィラーネック3上面に面一に整合するとともに、そのキャップ本体7上面に工具嵌着孔15が設けられた場合には、工具なしにキャップが開放されることを防止できる。それによって、セキュリティーを向上させることができる。さらには、体裁の良いラジエータキャップ構造となる。
請求項4に記載のように、そのキャップ本体7上面に工具嵌着突部15aが設けられた場合には、工具の嵌着が容易で取扱易いラジエータキャップ構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のラジエータのキャップ構造の斜視図。
【図2】同キャップ構造の締結の過程を順に示す説明図。
【図3】同構造の締結前の状態を示す斜視説明図。
【図4】同締結状態を示す縦断面図。
【図5】同他の構造の締結前の状態を示す斜視説明図。
【図6】本発明の第2実施例のキャップ構造の締結状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施例)
次に、図面に基づいて本発明の第1実施の形態につき説明する。
本発明のラジエータのキャップ構造は、図3および図4に示すごとく、フィラーネック3とキャップ本体7とを有する。このフィラーネック3はタンク1の外面に筒状に突設され、その根元に首部を有する。フィラーネック3の外周にはパイプ14が突設され、そのパイプ14およびフィラーネック3がタンク1内に連通する。
【0014】
キャップ本体7は外周に外ネジ4を有する筒状に形成され、その上端面の中心に工具嵌着孔15が設けられている。そして、キャップ本体7の筒状下端部に弁本体20が嵌着される。その弁本体20は段つきの筒状に形成されるとともに、外周に複数の孔22が放射方向に貫通する。弁本体20の段付き部内面には、弁座21が環状に形成される。また、弁本体20の下端部外周にはリング溝が形成され、そこにOリング16が嵌着される。なお、キャップ本体7の下端部外周にも同様の環状溝が形成され、そこにOリング16が嵌着される。
【0015】
弁本体20底面には、孔を有するバネ座23が設けられ、そこに負圧用スプリング19の下端が着座される。その負圧用スプリング19の上端には、負圧弁6が被嵌される。この負圧弁6は逆鍋型に形成され、その外周のフランジに環状の突部が上向きに突設されている。そして、その負圧弁6の上側には正圧弁5が配置される。この正圧弁5は中心孔を有する鍋形に形成され、下面には、環状パッキン17が取り付けられている。正圧弁5内部には正圧用スプリング18が配置され、弁本体20をキャップ本体7に嵌着することにより、その正圧用スプリング18の付勢力により、正圧弁5の環状パッキン17が弁座21に着座する。それとともに、負圧弁6外周が嵌着して、そのフランジの環状突部が環状パッキン17の下面に着座される。
【0016】
フィラーネック3内面には、内ネジ2がこの例では右ネジに形成され、キャップ本体7外周にはそれに整合する外ネジ4が同様に右ネジに形成されている。フィラーネック3上端縁には欠切部8が設けられ、欠切部8の内ネジ2の回転方向の上流側内面にストッパ部9が突設される。なお、フィラーネック3上縁には内フランジ部24が環状に凹陥され、それにともなって、フィラーネック3上縁の壁部は薄肉に形成されている。そして、ストッパ部9はその薄肉壁から内面側に突出する。ストッパ部9の両側に位置する右ネジの上流になる一側面9aの傾斜は、他側面9bの傾斜よりも緩やかである。その差によって、後述する弛み止め手段を形成する。
【0017】
キャップ本体7の上端部外周には第1凸部10が半径方向外方に突設されている。その突設端の半径はフィラーネック3上端縁内壁の半径と整合する。さらに、キャップ本体7外周には、第1凸部10の回転方向下流側に舌片部12が突設されている。そして、この舌片部12とキャップ本体7外周との間にL字状の細長いスリット11が設けられている。舌片部12の先端には、その外周に第2凸部13が半径方向外方かつ、平面山形に突設されている。この例では、第2凸部13と第1凸部10との間は、ストッパ部9の長さより若干長く間隔を空けて隣接している。
【0018】
なお、第2凸部13の上流側の側面はキャップ本体7を回転したときに、ストッパ部9の一側面9aを容易に乗上げることができる程度の勾配にすることが望ましい。その下流側側面は、外力をかけなければ、ストッパ部の他側面9bに容易に乗りあげることができない勾配とする。
また、キャップ本体7の上端面中央には、この例では六角形の工具嵌着孔15が設けられている。この工具嵌着孔15に回転工具の先端を嵌着し、キャップ本体7を回転させるものである。
【0019】
そして、図1に示すごとく、キャップ本体7をフィラーネック3に完全に締結した状態で、第1凸部10の側面がストッパ部9の一側面9aに突設し、それ以上の回転を不能にする。それとともに、第2凸部13の側面がストッパ部9の他側面9bに当接または近接する。
【0020】
(作用)
キャップ本体7をフィラーネック3に螺着すると、その締結完了の前段階において図2(A)〜(C)に示すように作用する。すなわち、キャップ本体7をフィラーネック3に螺回し、締結の最終段階の直前において同図(A)のごとく、第2凸部13がストッパ部9に接する。すると、第2凸部13は舌片部12のバネ性によって、キャップ本体7の中心側に移動し、(B)のごとくストッパ部9を乗り越えて回転する。ついで(C)のごとく第1凸部10の先端縁が一側面9aに衝接し、キャップ本体7の回転を停止させる。このとき、第2凸部13の側面は、他側面9bに当接又は近接する。
【0021】
このとき、ストッパ部9上面は図4に示すごとく、フィラーネック3の上端縁と面一に形成される。そのため、工具なしにキャップ本体7を手動で開放することはできない。工具嵌着孔15に適宜な工具を嵌着し、逆方向に回転させると、第2凸部13の側面が他側面9bに衝接し、それ以上回転することができない。すなわち、第2凸部13と他側面9bとの間に弛み止め手段が形成される。そこで、外力を加えて、第2凸部13をキャップ本体7の中心側に押込む。それとともに、キャップ本体7を逆方向にさらに回転させれば、図2と逆手順によりそれを外すことができる。
上記実施形態では、工具が嵌着する部分を工具嵌着孔15としたが、それに替えて、図5のごとく、工具嵌着凸部15bを設け、その外周にスパナを嵌着して、キャップ本体を着脱することもできる。
【0022】
(第2実施例)
図6は、本発明の第2実施例のキャップ本体7の締結状態を示す平面図である。
この例が前記図2の第1実施例と異なる点は、第2突部13に対するスリット11の位置である。前記実施例では、そのスリット11が第2突部13に対してキャップ回転方向の上流側に位置したが、第2実施例ではそれが下流側に位置している。そして舌片部12の根元に第1凸部10を一体に形成されている。
【符号の説明】
【0023】
1 タンク
2 内ネジ
3 フィラーネック
4 外ネジ
5 正圧弁
6 負圧弁
7 キャプ本体
8 欠切部
9 ストッパ部
9a 一側面
9b 他側面
【0024】
10 第1凸部
11 スリット
12 舌片部
13 第2凸部
14 パイプ
15 工具嵌着孔
15a 工具嵌着突部
16 Oリング
17 環状パッキン
【0025】
18 正圧用スプリング
19 負圧用スプリング
20 弁本体
21 弁座
22 孔
23 バネ座
24 内フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のタンク(1)の外面に筒状に突設され、その内周に内ネジ(2)を有するフィラーネック(3)と、
その内ネジ(2)に着脱自在に螺着される外ネジ(4)が外周に形成され、正圧弁(5)および負圧弁(6)を有する樹脂製のキャプ本体(7)と、を具備するラジエータのキャップ構造において、
前記フィラーネック(3)の上端の開口縁の一部には、欠切部(8)が設けられ、
そのフィラーネック(3)の欠切部(8)に隣接する端部で、前記内ネジ(2)の締結される回転方向の下流側に位置する側の内面にストッパ部(9)が突出され、
前記キャップ本体(7)の外周には、第1凸部(10)が半径方向の外側に一体に突設されると共に、その第1凸部(10)に下流側に位置して、そのキャップ本体(7)に、その外周に沿って、半径方向に弾性変形する舌片部(12)が一体に突設され、その舌片部(12)の根元は第1凸部(10)の前記下流側に位置し、
その舌片部(12)の先端部の外周面に第2凸部(13)が突設され且つ、
その第2凸部(13)は、第1凸部(10)より前記下流側に位置し且つ、キャップ本体(7)の螺回締結の途中に、舌片部(12)が弾性変形することにより、前記第ストッパ部(9)を乗り越えて通過し、
キャップ本体(7)をフィラーネック(3)に締結する終端で、第1凸部(10)が前記ストッパ部(9)の上流側である一側面(9a)に当接すると共に、そのストッパ部(9)の下流側である他側面(9b)が第2凸部(13)に近接または接触し、
そのキャップ本体(7)を緩める方向には、その他側面(9b)と第2凸部(13)とが衝接して回り止めされる緩み止め手段が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のラジエータのキャップ構造において、
外力により前記舌片部(12)をキャップ本体(7)の中心側に弾性変形することにより、前記緩み止め手段が解除されるように構成されたラジエータのキャップ構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のラジエータのキャップ構造において、
キャップ本体(7)をフィラーネック(3)に締結する終端位置で、そのキャップ本体(7)の上端面がフィラーネック(3)の上面に整合し、その上端面に工具嵌着孔(15)が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のラジエータのキャップ構造において、
キャップ本体(7)をフィラーネック(3)に締結する終端位置で、そのキャップ本体(7)の上端面がフィラーネック(3)の上面に整合し、その上端面に工具嵌着突部(15a)が設けられたことを特徴とするラジエータのキャップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−233453(P2012−233453A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103967(P2011−103967)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)