説明

ラジエータの樹脂タンク構造

【課題】 比較的高圧に耐え得るラジエータの樹脂タンク構造であって、補強用の架橋体4の抜け落ちを防止すると共に、架橋体4とチューブプレート2との間に腐蝕が起こることを防止する。
【解決手段】 門形の架橋体4の脚部4aの先端側が、樹脂製のタンク本体1に設けた一対の嵌着部3に嵌着され、その脚部4aの後端の取付部4bに樹脂材5が被着固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水冷却用ラジエータとして最適な樹脂タンク構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジエータの樹脂タンクは、細長い箱状に形成されたタンク本体の開口側が、アルミニューム製のチューブプレートで閉塞され、そのチューブプレートに多数の偏平チューブが貫通し、その貫通部がろう付け固定されると共に、各偏平チューブ間にフィンが配置されるものである。
このような樹脂タンク本体は、外周縁に小フランジ部が環状に形成され、チューブプレートにはその小フランジ部に整合する溝部を有し、その溝部にOリングを介してタンク本体の小フランジ部が嵌着され、チューブプレートの縁部がその小フランジ部にカシメられてタンクを形成する。そして、一方のタンクから流入した高温の冷却水が各チューブ内を流通し、他方のタンクに導かれ、チューブ及びフィンの外面側に冷却風を流通させ、それと冷却水との間に熱交換を行うものである。
【0003】
通常、ラジエータ内はプレッシャバルブを介して加圧され、冷却水の沸騰温度を120℃程度又はそれ以上に維持し、冷却風との温度差を大きくし、小型で冷却性能の高いラジエータとしている。
このような樹脂タンクは冷却水の加圧によって、外方に変形して液漏れを起こすおそれがある。
そこで、その補強のため下記特許文献の熱交換器用合成樹脂製タンクの発明が知られている。これは、タンクの幅方向に渡る梁材を樹脂タンク内に設けたものである。この梁材は一例として、棒材をコ字状に曲折し、その両端部を樹脂タンクの対向面に設けた孔に嵌着したものである。
【0004】
【特許文献1】特開昭56−80482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の樹脂タンクの補強材は、略門形に形成された両脚部をタンクの対向面間に掛け渡すものであり、振動等によってその補強材が抜け落ちるおそれがある。それによって、補強効果が著しく損なわれると共に、補強材とチューブプレートとが異種金属である場合には夫々の冷却水中での電位が異なり、その電位差に基づき卑電位な金属が溶解する接触腐蝕が生じる。一般にチューブプレートはアルミニューム材であり、補強材は強度の高いステンレス等の鋼材とすることが好ましい。しかしながら、その場合には上記に接触腐蝕が生じるおそれがある。
そこで本発明は、上記の問題点を解決すると共に、さらに進んで補強効果の高いタンク構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、樹脂製の細長い箱状のタンク本体(1)の開口側が、金属製のチューブプレート(2)で閉塞されたラジエータの樹脂タンク構造において、
そのタンク本体(1)の幅方向の対向面にそれぞれチューブプレート(2)側からタンク底部(1b)に向けて一対の嵌着部(3)が設けられ、
前記チューブプレート(2)とは異種金属からなる正面略門形の架橋体(4)の両脚部(4a)の先端側が、前記一対の嵌着部(3)に嵌着されると共に、両脚部(4a)の後端に取付部(4b)が突設され、その取付部(4b)に樹脂材(5)が被着固定されたことを特徴とするラジエータの樹脂タンク構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記樹脂材(5)の端(5a)が前記チューブプレート(2)の内面に接するように配置されたラジエータの樹脂タンク構造である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記チューブプレート(2)がアルミニューム材であり、架橋体(4)がステンレス鋼材であるラジエータの樹脂タンク構造である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記架橋体(4)は、平行に離間した一対の橋部(4c)とそれらの両端間を連結する一対の側部とで平面方形枠状に形成され、その両側部が橋部(4c)に対して直交して前記脚部(4a)を形成し、その脚部(4a)の両端が橋部(4c)より突出し、その脚部(4a)の先端側が細長い前記嵌着部(3)に嵌着すると共に、後端側の取付部(4b)に細長い前記樹脂材(5)が被着されたラジエータの樹脂タンク構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラジエータの樹脂タンク構造は、タンク本体1の対向面の一対の嵌着部3に架橋体4の脚部4aの先端側が嵌着されると共に、架橋体4の取付部4bに樹脂材5が被着固定されたものであるから、架橋体4によって樹脂製のタンク本体1を補強すると共に、その脚部4aが嵌着部3から抜け出ても、樹脂材5の存在により架橋体4とチューブプレート2との間に腐蝕が起こることがない。
即ち、架橋体4は正面略門形に形成され、両脚部4aが一対の嵌着部3に嵌着されることにより、樹脂製のタンク本体1に加わる内圧を架橋体4が支持して樹脂製のタンク本体1の補強を行う。
また、樹脂材5は架橋体4のチューブプレート2側に被着され、架橋体4がチューブプレート2側に抜け出ても、樹脂材5がチューブプレート2に接触し、それ以上抜け出ることがない。しかも、架橋体4とチューブプレート2とが直接接することがないので、異種金属の電位差に基づく腐蝕が生じることを防止できる。
【0010】
上記構成において、樹脂材5の端5aがチューブプレート2の内面に接するように配置することができる。それによって、架橋体4を位置決めすると共に、それが抜け出ることを防止し、樹脂製のタンク本体1を永続的に補強することができる。
上記構成において、チューブプレート2をアルミニューム材とし、架橋体4をステンレス鋼材とした場合、軽量で製造が容易な補強効果の強いものを提供できる。即ち、架橋体4に比べて面積が大きく複雑な形状及び加工を要するチューブプレート2を、軽量で比較的材料が軟らかく加工性の良いアルミニューム材とすることにより製造が容易となる。
また、僅かな材料で済む架橋体4をステンレス鋼材とすることにより剛性が強く補強効果の高い樹脂タンク構造を提供できる。
【0011】
上記構成において、架橋体4として、平行に離間した一対の橋部4cとそれらの両端間を連結する一対の側部とで平面方形枠状に形成し、その両側部が橋部4cに対して直交して脚部4aを構成し、脚部4aの両端を橋部4cより突出させ、その脚部4aの先端側が細長い嵌着部3に嵌着すると共に、後端側が細長い樹脂材5に被嵌するようにした場合には、補強効果が高く且つ架橋体4の抜け落ちを効果的に防止し、抜け落ちに伴う腐蝕を防止できる。
また、補強効果が高いにも拘らず、樹脂製のタンク本体1内の流体の流通を阻害することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明のラジエータの樹脂タンク構造の要部縦断面斜視略図及びそのB−B矢視断面図である。そして図2は同構造に用いられる架橋体4の斜視図であり、図3は樹脂製のタンク本体1に架橋体4を取付けた状態を示す縦断面斜視図である。
このタンク構造は、樹脂製の細長い箱状のタンク本体1の開口側がアルミニューム製のチューブプレート2で閉塞されるものである。チューブプレート2には、多数のチューブ挿通孔が穿設されると共に、その外周縁に環状溝が形成されている。そして、樹脂製のタンク本体1の開口端に形成された小フランジ部1aがチューブプレート2の環状溝にOリング7を介して嵌着され、その環状溝の外周縁がカシメ部8によりカシメ固定される。
【0013】
チューブプレート2には多数のチューブ6の端部が貫通し、その貫通部がろう付け固定されている。また、各チューブ6間には図示しないフィンが取付けられている。
このような樹脂製のタンク本体1の長手方向の中間位置には、その対向面に図3の如く一対づつの凸部9が設けられ、その端面に細長いスリット状の嵌着部3が形成されている。そして、この嵌着部3に架橋体4の脚部4aが嵌着されるものである。
架橋体4は、ステンレス鋼板のプレス成形体からなり、互いに平行に離間した一対の橋部4cと、それらの両端間を連結する一対の側部とで平面方形枠状に形成され、その両側部が橋部4cに対して直交して脚部4aを形成する。そして脚部4aの両端が橋部4cより突出し、脚部4aの先端側が凸部9の嵌着部3に嵌着する。それと共に、その後端側には細長い樹脂材5が被着される。この樹脂材5は有底の細長い筒状に形成され、脚部4aの取付部4bに整合する内周を有する。そして一対の樹脂材5が夫々の取付部4bに嵌着される。
【0014】
そして、タンク本体1の長手方向中間部において、対向する内壁面間を架橋体4によって補強する。このとき、樹脂材5がタンク本体1の開口側に露出する。このようにして架橋体4を各凸部9の嵌着部3に嵌着固定した状態で、チューブプレート2の周縁部を図1の如くカシメ部8によって固定する。このとき、樹脂材5の先端はチューブプレート2に接する。そのため、樹脂材5及び架橋体4が樹脂製のタンク本体1の高さ方向に位置決めされ、それらの移動を阻止する。
【0015】
次に、図4は本発明の架橋体4の他の実施の形態を示し、この例は架橋体4が針金材からなり、一対の脚部4aとそれらの間を連結する橋部4cとからなる略門形に形成され、脚部4aと橋部4cとの隅部に橋部4cよりも突出する取付部4bが設けられ、この取付部4bに樹脂材5が嵌着されるものである。この例では、取付部4bが脚部4a及び橋部4cの面に平行に形成されている。これに対して、図6の例では取付部4bが脚部4aに対し直交する方向に曲折されている。図4に示す架橋体4は、一対の樹脂材5が各取付部4bに嵌着された状態で、図5に示す如く、タンク本体1の対向面の一対の凸部9に設けられた孔からなる嵌着部3に架橋体4の脚部4aの先端が嵌着される。このとき樹脂材5は、チューブプレート2に接触する。
なお、上記の例で樹脂材5は射出成形等によって予め製造したものを取付部4bに嵌着したが、それに代えて取付部4bの外表面に樹脂膜を被着させたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のラジエータの樹脂タンク構造の要部縦断面斜視略図及びそのB−B矢視断面図。
【図2】同タンク構造に用いられる架橋体4の斜視図。
【図3】同架橋体4を樹脂製のタンク本体1に嵌着した状態を示す要部縦断面斜視図。
【0017】
【図4】本発明のラジエータの樹脂タンク構造に用いられる架橋体4の他の例を示す説明図。
【図5】同架橋体4の使用状態を示す要部縦断面図。
【図6】本発明のラジエータの樹脂タンク構造に用いられる架橋体4の他の例を示す斜視略図。
【符号の説明】
【0018】
1 タンク本体
1a 小フランジ部
1b 底部
2 チューブプレート
3 嵌着部
4 架橋体
4a 脚部
4b 取付部
4c 橋部
【0019】
5 樹脂材
5a 端
6 チューブ
7 Oリング
8 カシメ部
9 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の細長い箱状のタンク本体(1)の開口側が、金属製のチューブプレート(2)で閉塞されたラジエータの樹脂タンク構造において、
そのタンク本体(1)の幅方向の対向面にそれぞれチューブプレート(2)側からタンク底部(1b)に向けて一対の嵌着部(3)が設けられ、
前記チューブプレート(2)とは異種金属からなる正面略門形の架橋体(4)の両脚部(4a)の先端側が、前記一対の嵌着部(3)に嵌着されると共に、両脚部(4a)の後端に取付部(4b)が突設され、その取付部(4b)に樹脂材(5)が被着固定されたことを特徴とするラジエータの樹脂タンク構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記樹脂材(5)の端(5a)が前記チューブプレート(2)の内面に接するように配置されたラジエータの樹脂タンク構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記チューブプレート(2)がアルミニューム材であり、架橋体(4)がステンレス鋼材であるラジエータの樹脂タンク構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、
前記架橋体(4)は、平行に離間した一対の橋部(4c)とそれらの両端間を連結する一対の側部とで平面方形枠状に形成され、その両側部が橋部(4c)に対して直交して前記脚部(4a)を形成し、その脚部(4a)の両端が橋部(4c)より突出し、その脚部(4a)の先端側が細長い前記嵌着部(3)に嵌着すると共に、後端側の取付部(4b)に細長い前記樹脂材(5)が被着されたラジエータの樹脂タンク構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−52784(P2009−52784A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218532(P2007−218532)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)