説明

ラジカル硬化型接着剤組成物

【課題】空気による硬化不良を起こさず、種々被着体を強靱な接着力で接合するラジカル硬化型接着剤組成物を提供する。
【解決手段】クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体、バルビツール酸誘導体、ヒンダードアミン化合物、および遷移金属錯体を含むラジカル硬化型接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジカル硬化型接着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
“にかわ”等で知られているとおり、接着剤は、太古の昔から身近な存在である。接着剤は、ポリ酢酸ビニル接着剤やゴム糊などのように、溶媒が蒸発することで接着機能を発揮するものから、エポキシ樹脂接着剤のように主剤と硬化剤を混合し、加熱等により三次元架橋を起こさせてより強靱な接着力や耐熱性、耐薬品性を発揮するものもある。
【0003】
近年、接着をより低温短時間で行おうとする試みがなされている。この接着剤は、レドックス系の重合開始剤を用いるラジカル硬化型接着剤であり、第二世代接着剤(SGA)として広く知られる。
【0004】
SGAは、通常、塩素化ポリエチレンなどのゴム高分子をメタクリル酸メチルなどのアクリル単量体に分散または溶解し、さらにエチレングリコールジメタクリレートなどの架橋性モノマーを加え、レドックス重合開始剤で硬化される。レドックス重合開始剤は、例えば、過酸化ベンゾイル/N,N−ジメチル−p−トルイジンなどの有機過酸化物(酸化剤)とアミン化合物(還元剤)との組み合わせ、クメンヒドロペルオキシド/オクチル酸コバルトなどのヒドロペルオキシド化合物(酸化剤)と金属石鹸(還元剤)との組み合わせなどがよく知られており、一般に室温〜100℃でラジカル硬化反応を開始する硬化系として知られている。
【0005】
SGAは、低温短時間硬化で、比較的良好な接着強度を示すことから航空機などに使用する構造接着剤として広く認知されている。欠点としては、アクリル単量体特有の悪臭が強いこと、硬化時の収縮が大きいこと、発熱量が大きくプラスチックなどに適用した場合ひけ等の影響で表面に欠陥が出やすいこと、酸素による硬化阻害の影響を受けやすく時として硬化が不十分となり接着不良を起こす場合があることなどが挙げられる。
【0006】
分子中に、−OC(O)C(R)=CHを有するアクリルポリマーとレドックス系重合開始剤とからなる接着剤組成物が示されている(特許文献1参照)。特許文献1で提案されている技術は、アクリル単量体の原子移動ラジカル重合に関するものであり、その応用として接着剤組成物が示されている。
【0007】
特許文献1で提案されている技術に示されているような柔軟なアクリルポリマーはポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のゴム弾性を有する高分子に比しポリマーの凝集力が小さい。したがって、柔軟なアクリルポリマーを主成分とする接着剤は、例えば、引張り試験でだらだらと伸張するだけで、応力は小さい。すなわち、接着剤の機械的強度が不足する。
【0008】
特許文献1で提案されている技術の実施例には、接着剤の接着力評価としてよく実施されるアルミニウム合金−アルミニウム合金のシングルラップ接着性試験結果が示されている。実施例に見られるとおり剪断接着力が10MPa(剪断接着力の最大値は6.65MPa)を超えるものはなく、構造接着剤としては、剪断接着力が小さい。
【0009】
過酸化ベンゾイル/アミン系に代わるレドックス硬化系の紹介がなされている(非特許文献1参照)。紹介されている技術は、酸化剤として塩化第一銅(Cu(I)Cl)を用い、還元剤として1,3,5−トリメチルバルビツール酸を用いるものである。この組み合わせでは、酸素による重合阻害を大きく受け、硬化不良を起こしやすい。また、本開始系は硬化性が悪い。
【特許文献1】特開2006−299257号公報
【非特許文献1】平林茂、奈須郁代、原嶋郁郎、平澤忠、「歯科用メタクリルレジンに関する研究;(第9報)加熱重合レジン、ヒートショックレジン、流し込みレジンおよび常温重合レジンの組成について」、歯科材料・器械(Journal of the Japanese Society for Dental Materials and Devices)、Vol13.No.3(19840525),pp338-349
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、ラジカル硬化型接着剤組成物は、ラジカル反応は空気に含まれる酸素により重合阻害を受けやすく、硬化不良やこれが基になる接着不良を起こしやすい。
本発明が解決しようとする課題は、空気による硬化不良を起こさず、種々被着体を強靱な接着力で接合するラジカル硬化型接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体、
下記構造式のバルビツール酸誘導体、
【0012】
【化1】

【0013】
(ここで、R1,R2,R3,R4は水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
下記構造式のヒンダードアミン化合物、
【0014】
【化2】

【0015】
(ここで、R5は、水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
および遷移金属錯体を含むラジカル硬化型接着剤組成物である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、空気による硬化不良を起こさず、種々被着体を強靱な接着力で接合するものである。
【0017】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、鉄−鉄、鉄−アルミニウム、アルミニウム−アルミニウム、鉄−銅、銅−銅、チタン合金−チタン合金、鉄−プラスチック、アルミニウム−プラスチック等の金属−金属間の接着、金属−プラスチック類間の接着、金属−熱硬化性樹脂間の接着、プラスチック−プラスチック間の接着剤として好適である。特に、プラスチックとして難接着性とされるポリフェニレンオキサイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)、芳香族系ナイロン(NY)などに好適な接着剤として、強靱な接着力を発揮する。
【0018】
さらに、本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、高張力鋼(High Tensile Steel)間の接着、高張力鋼と炭素繊維やガラス繊維で強化したプラスチック(CFRP、GFRP)間の接着、アルミニウム合金と炭素繊維やガラス繊維で強化したプラスチック(CFRP、GFRP)間の接着でも好適な接着剤として強靱な接着力を発揮する。
【0019】
本発明の接着剤組成物は、機械的強度にも優れ、構造接着剤として必要十分な性能を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体、
下記構造式のバルビツール酸誘導体、
【0021】
【化3】

【0022】
(ここで、R1,R2,R3,R4は、水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
下記構造式のヒンダードアミン化合物、
【0023】
【化4】

【0024】
(ここで、R5は、水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
および遷移金属化合物を含むラジカル硬化型接着剤組成物である。
【0025】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用されるクロロスルホン化ポリエチレンとしては、「TOSO−CSM TS−430」、「TOSO−CSM TS−530」、「TOSO−CSM TS−830」、「TOSO−CSM TS−930」、「TOSO−CSM TS−320」、「TOSO−CSM TS−340」、「TOSO−CSM TS−1500」、「extos ET−8010」、「extos ET−8510」(以上、東ソー(株)の製品)、「Hypalon 20」、「Hypalon 30」、「Hypalon 40s」、「Hypalon 40」、「Hypalon 4085」、「Hypalon 45」、「Hypalon 48」(以上、デュポン・エラストマー(株)の製品)などが例示される。
これらのクロロスルホン化ポリエチレンは単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0026】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、クロロスルホン化ポリエチレンとして、好ましくは、23℃における25重量%トルエン溶液粘度が200〜2000mPa・sのクロロスルホン化ポリエチレンが推奨される。
【0027】
本発明では、23℃における25重量%トルエン溶液粘度は、クロロスルホン化ポリエチレンをトルエン中にクロロスルホン化ポリエチレンの濃度が25重量%となるよう溶解した後、ブルックフィールド型粘度計を用いて、23〜25℃で測定した。
【0028】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、クロロスルホン化ポリエチレンの23℃における25重量%トルエン溶液粘度が、好ましくは200〜2000mPa・s、より好ましくは300〜2000mPa・s、さらに好ましくは300〜1800mPa・sであることが望ましい。クロロスルホン化ポリエチレンの23℃における25重量%トルエン溶液粘度が200mPa・s未満の場合には、クロロスルホン化ポリエチレンの重合度が小さく、接着剤の強靱性が失われ、脆くなる傾向が見られる。クロロスルホン化ポリエチレンの23℃における25重量%トルエン溶液粘度が2000mPa・sを超える場合には、接着剤の粘度が高くなりすぎ、希釈剤としてのスチレンおよび/またはアクリル単量体の使用量が多くなって、硬化時の収縮率、発熱が大きくなり、良好な接着が設計できなくなる傾向がある。
【0029】
本発明で好ましく使用される23℃における25重量%トルエン溶液粘度が200〜2000mPa・sのクロロスルホン化ポリエチレンとしては、「TOSO−CSM TS−340」(23℃における25重量%トルエン溶液粘度350mPa・s)、「TOSO−CSM CN−1500」(23℃における25重量%トルエン溶液粘度1400mPa・s)(以上、東ソー(株)の製品)、「Hypalon 20」(23℃における25重量%トルエン溶液粘度1300mPa・s)、「Hypalon 30」(23℃における25重量%トルエン溶液粘度400mPa・s)(以上、デュポン・エラストマー(株)の製品)などが例示される。
【0030】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、23℃における25重量%トルエン溶液粘度が200〜2000mPa・sのクロロスルホン化ポリエチレンは、単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0031】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、接着剤の塗布作業性を良好とし、種々被着体に対応し接着強度を高めるために、スチレンおよび/またはアクリル単量体が使用される。
【0032】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用されるスチレンは、クロロスルホン化ポリエチレンの良溶媒として作用し、柔軟で耐衝撃性に優れた接着剤を提供する。
【0033】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用されるアクリル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソボルニル、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、ジシクロペンタニルオキシアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルアクリレート、アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸エチルエチレンウレア、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸イソボルニル、ジシクロペンテニルオキシメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、メタクリル酸エチルエチレンウレア、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレートなどが例示される。
【0034】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、アクリル単量体は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0035】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、アクリル単量体としては、特に、クロロスルホン化ポリエチレンを溶解、膨潤化または分散できるもの、または相溶化するものが望ましい。好ましいアクリル単量体は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのメタクリル酸エステルである。
【0036】
メタクリル酸2−ヒドロキシエチルは、鉄、アルミニウムなどの金属に対する接着性が向上するので、好ましく用いられる。メタクリル酸テトラヒドロフルフリルは、接着剤の粘度調整が容易となり、塗布作業性が向上して、鉄、アルミニウムなどの金属、およびFPRなどのプラスチック類に対する接着力が向上するので、好ましい。また、メタクリル酸、アクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリル単量体は、接着剤の凝集力を高め、剪断接着力を向上する傾向が見られ、好ましい。
【0037】
さらに、本発明では、接着剤が硬化する際の重合熱によるアクリル単量体の蒸発とこれに起因する発泡を回避し、発泡による接着剤の強度低下および接着力低下を回避するために、アクリル単量体としては、1013hPa(常圧)における沸点が、100℃以上であることが望ましい。また、2種類以上のアクリル単量体が混合され使用される場合には、2種類以上のアクリル単量体混合物の1013hPa(常圧)における共沸温度が、100℃以上であることが望ましい。
【0038】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、より好ましくは、アクリル単量体が、メタクリル酸メチル(沸点=100.8℃/1013hPa)および/またはメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(沸点=75℃/4hPa)を含むものであることが推奨される。アクリル単量体が、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸テトラヒドロフルフリルを含むものであると、接着剤の硬化性が向上し、酸素による硬化阻害を一段と回避しやすくなり、接着剤の機械的強度と接着力のバランス取りが高いレベルで実現できる。
【0039】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体の他に、バルビツール酸誘導体を含有する。
【0040】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用される下記構造式のバルビツール酸誘導体としては、
【0041】
【化5】

【0042】
(ここで、R1,R2,R3,R4は水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸などが例示される。
【0043】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、バルビツール酸誘導体は、単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0044】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸が好ましく使用される。1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸を使用すると、接着剤への溶解性が向上して、接着剤の硬化性が改善される。
【0045】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体の他に、ヒンダードアミン化合物を含有する。
【0046】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用される下記構造式のヒンダードアミン化合物
【0047】
【化6】

【0048】
(ここで、R5は、水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
を含む。本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用される好ましいヒンダードアミン化合物としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどが例示される。
【0049】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが、より好ましく使用され、接着剤の保存安定性、硬化性が改善される。
【0050】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、ヒンダードアミン化合物は、単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0051】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、下記構造式のバルビツール酸誘導体と
【0052】
【化7】

【0053】
(ここで、R1,R2,R3,R4は水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
下記構造式のヒンダードアミン化合物
【0054】
【化8】

【0055】
(ここで、R5は水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
併用されることにより、接着剤の硬化反応性が改善され、酸素による重合阻害を受けなくなり、室温〜80℃程度の低温、5分〜60分程度の短時間で十分な接着強度を発揮する。また同時に、接着剤の保存安定性が向上する。さらに、接着剤が良好な機械的強度を示すようになり、破断応力が30MPa以上の高強度のものから破断伸度が300%以上(引張強度試験;ASTM D 638)の柔軟なものまで設計が可能となる。同時に、アルミニウム合金−アルミニウム合金でのラップシェア強度(引張剪断強度試験;ASTM D 1002)も、10MPa以上の高引張剪断強度を発揮する。
【0056】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、遷移金属錯体は、接着剤の硬化反応を開始し、低温短時間硬化を実現するための必須の成分である。
【0057】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用される遷移金属錯体は、周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族の遷移金属からなる金属錯体化合物である。周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族の遷移金属元素としては、銅、ニッケル、ルテニウム、鉄などが例示される。
【0058】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で使用される遷移金属錯体としては、0価の銅錯体、1価の銅錯体、2価の銅錯体、2価の鉄錯体、2価のニッケル錯体などが例示され、好ましくは、0価の銅錯体、1価の銅錯体、2価の銅錯体、2価の鉄錯体が推奨され、さらに好ましくは、1価の銅錯体が推奨される。
【0059】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で好ましく使用される1価の銅化合物の一例をあげれば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ価第一銅などが例示される。
【0060】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、これらの遷移金属錯体は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。
【0061】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、遷移金属錯体と前記構造式で示されるバルビツール酸誘導体とHALSが併用されることにより、接着剤が硬化反応を起こす際に、例えば、本発明のラジカル硬化型接着剤組成物に配合されているスチレンおよび/またはアクリル単量体が原子移動ラジカル機構(ATRP)でリビングラジカル重合により高分子量化するためと推察される。
【0062】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、より低温短時間での硬化を可能とし、硬化後に未反応モノマーが残存することなく、より高分子量化(高重合度化)されるため、高強度、高接着性の接着剤が可能となる。
【0063】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、クロロスルホン化ポリエチレンとスチレンおよび/またはアクリル単量体との合計量を100重量%として、クロロスルホン化ポリエチレンは、好ましくは、3〜60重量%含有される。クロロスルホン化ポリエチレンの含有量が3重量%未満の場合には、接着剤の柔軟性が小さくなり、耐衝撃性や接着性が低下する場合が見られる。クロロスルホン化ポリエチレンの含有量が60重量%を超える場合には、接着剤の機械的強度が低下し、十分な接着力を発揮しない場合が見られる。
【0064】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、接着剤の機械的強度、接着力、および接着剤の環境適性(耐湿熱性、耐熱性など)にバランスがとれ、さらにより優れた性能を発揮するために、クロロスルホン化ポリエチレンとスチレンおよび/またはアクリル単量体との合計量を100重量%として、クロロスルホン化ポリエチレンは、より好ましくは、5〜60重量%、さらに好ましくは、8〜45重量%、さらにより好ましくは、12重量%〜42重量%含有されるのが望ましい。
【0065】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、クロロスルホン化ポリエチレンとスチレンおよび/またはアクリル単量体との合計量100重量部に対し、下記構造式のバルビツール酸誘導体は、
【0066】
【化9】

【0067】
(ここで、R1,R2,R3,R4は水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.2〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部使用されるのが望ましい。バルビツール酸誘導体の使用量が0.01重量部未満の場合には、接着剤の硬化性が悪化し、十分な接着強度を示さなくなる場合が見られる。バルビツール酸誘導体の使用量が5重量%を超える場合には、接着剤のポットライフが短くなりすぎる傾向が見られ、接着作業性が悪化する傾向が見られる。
【0068】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、クロロスルホン化ポリエチレンとスチレンおよび/またはアクリル単量体との合計量100重量部に対し、下記構造式のヒンダードアミン化合物は、
【0069】
【化10】

【0070】
(ここで、R5は水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
好ましくは0.005〜10重量部、より好ましくは0.05〜8重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部使用されるのが望ましい。ヒンダードアミン化合物の使用量が0.005重量部未満の場合には、接着剤の硬化性が悪化し、十分な接着強度を示さなくなる場合が見られる。ヒンダードアミン化合物の使用量が10重量%を超える場合には、接着剤の硬化性が悪化し、硬化不良を起こしやすくなる傾向が見られる。
【0071】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、遷移金属錯体は、クロロスルホン化ポリエチレンとスチレンおよび/またはアクリル単量体との合計量100重量部に対し、好ましくは、0.5〜10重量部、より好ましくは0.5〜8重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部使用されるのが望ましい。遷移金属錯体の使用量が、0.5重量部未満の場合には、接着剤の硬化性が悪化し、十分な接着強度を示さなくなる場合が見られる。遷移金属錯耐の使用量が、10重量%を超える場合には、接着剤のポットライフが短くなりすぎる傾向が見られ、接着作業性が悪化する傾向が見られる。
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、例えば、以下のように製造することができる。クロロスルホン化ポリエチレンの所定量をスチレンおよび/またはアクリル単量体に所定量溶解または膨潤、分散した後、所定量のバルビツール酸誘導体、およびヒンダードアミン化合物を添加、溶解して主剤を製造する。接着作業を行う前に硬化剤である遷移金属化合物を添加しよく混合してラジカル硬化型接着剤組成物を得る。
【0072】
本発明では、接着剤を金属、プラスチックなどの被着体に膜厚が50μm〜5mm程度となるよう塗布した後、室温〜80℃程度で5〜60分程度接着剤を硬化させることにより、良好な接着部材を製造することができる。
【0073】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、好ましくは、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマーを使用することができる。一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマーは接着剤に適度な架橋構造を付与し、接着剤の強靱性を改善し、耐熱性を向上する。
【0074】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマーとしては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジメタクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレートなどが例示される。ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジメタクリレート等のエポキシジ(メタ)クリレートの例としては、「NKエステル BPE−100」、「NKエステル BPE−200」(以上、新中村化学工業(株)の製品)、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレートなどの例としては、「アロニックスM−5700」、「アロニックスM−7100」(以上、東亞合成(株)の製品)などが例示される。本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、これらの一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマーは単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0075】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマー(以下、オリゴマーとも言う)は、好ましくは、アクリル単量体100重量%中の0.02〜50重量%、より好ましくは、0.05〜30重量%、さらに好ましくは、0.05〜25重量%使用されるのが望ましい。オリゴマーの使用量が0.02〜50重量%であると、接着剤の強靱性が改善され、耐熱性、保存安定性、耐衝撃性がよくなる傾向が見られる。
【0076】
さらに、本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、ヌレ剤、浸透・湿潤剤等の塗料添加剤が、好適に使用される。
【0077】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、ヌレ剤として、好ましくは、非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜40mN/mの化合物、より好ましくは、非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜38mN/mの化合物、さらに好ましくは、非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜35mN/mの化合物であることが推奨される。本発明では、ヌレ剤が非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜40mN/mの化合物であるとき、接着剤の被着体に対するヌレ性、浸透性が向上する傾向が見られ、より強い接着力が発揮される場合が多く見られる。
【0078】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物で好ましく使用される、非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜40mN/mのヌレ剤としては、例えば、「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール104A」、「サーフィノール104DPM」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「ダイノール604」(以上、エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社の製品)などが例示される。本発明のラジカル硬化型接着剤組成物では、これらの非フッ素系化合物であって0.1%水溶液の表面張力が20〜40mN/mの化合物は単独で使用しても、2種類以上の混合物として使用してもよい。
【0079】
本発明のラジカル硬化型接着剤組成物は、さらに、接着剤の粘性調節(レオロジーコントロール)や強度向上その他の目的のために、シリカ、カーボンブラック、モンモリロナイト、ガラス繊維などの各種フィラー、液状ポリブタジエン、両末端アクリル化液状ポリブタジエン、液状アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、液状両末端アクリル化アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、MBS樹脂などのポリマー、オリゴマー類を添加することも可能である。
【実施例】
【0080】
以下に、本発明の一例を実施例によって説明する。なお、以下で説明する実施例中、接着剤の引張強度試験は、ASTM D638にしたがい、23℃と80℃で行った。また、引張剪断強度試験は、ASTM D1002にしたがい、接着剤の厚みを500μmとして23℃で行った。被着体としてアルミニウム合金(JIS A−2017P)を使用した。また、いずれの試験でも、接着剤の硬化条件は、硬化温度60℃、硬化時間30分とした。
【0081】
実施例1
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)(23℃における25%重量トルエン溶液粘度は350mPa・s)(以下、「TS−340」とも言う)35g、スチレン(以下、Stとも言う)の重合禁止剤であるt−ブチルカテコール(以下、TBCとも言う)0.05gをスチレン(St)52gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品、2,2´−ビス〔4−(メタクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン)5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEMAとも言う)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(以下、DMBAとも言う)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)(2007年7月現在、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)の製品、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)1gを添加して、接着剤主剤(1)を製造した。
【0082】
接着剤主剤(1)102.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(1)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0083】
実施例2
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)30g、メタクリル酸メチル(以下、MMAとも言う)の重合禁止剤であるp−メトキシフェノール(以下、MEHQとも言う)0.05gをメタクリル酸メチル(MMA)52gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して、接着剤主剤(2)を製造した。
【0084】
接着剤主剤(2)102.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(2)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0085】
実施例3
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)35g、p−メトキシフェノール(MEHQ)0.05gをメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)54gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して接着剤主剤(3)を製造した。
【0086】
接着剤主剤(3)102.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(3)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0087】
実施例4
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)30g、p−メトキシフェノール(MEHQ)0.05gをメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)59gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して接着剤主剤(4)を製造した。
【0088】
接着剤主剤(4)102.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(4)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0089】
実施例5
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)30g、p−メトキシフェノール(MEHQ)0.05gをメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)57gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して接着剤主剤(5)を製造した。
【0090】
接着剤主剤(5)102.05gに、硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(5)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0091】
実施例6
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)30g、p−メトキシフェノール(MEHQ)0.05gをメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)59gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)3g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して接着剤主剤(4)を製造した。
【0092】
接着剤主剤(4)102.05gに、硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gをヌレ剤である「ダイノール604」(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社の製品、アセチレンジオール)1gにあらかじめ混合しペースト化したもの2gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(6)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0093】
実施例7
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)30g、p−メトキシフェノール(MEHQ)0.05gをメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)57gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらに1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)1g、「サノールLS−744」(三共ライフテック(株)の製品)1gを添加して接着剤主剤(5)を製造した。
【0094】
接着剤主剤(5)102.05gに、硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gをヌレ剤である「ダイノール604」(エアプロダクツ・アンド・ケミカルズ社の製品)1gにあらかじめ混合しペースト化したもの2g混合し、ラジカル硬化型接着剤(7)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0095】
比較例1
実施例1において、「サノールLS−744」を配合しない以外は実施例1と同様にして、接着剤主剤101.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(8)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0096】
比較例2
実施例1において、1,3−ジメチルバルビツール酸「DMBA」を配合しない以外は実施例1と同様にして、接着剤主剤101.05gに硬化剤の塩化第一銅(Cu(I)Cl)1gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(9)を製造した。ラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0097】
比較例3
クロロスルホン化ポリエチレン「TOSO−CSM TS−340」(東ソー(株)の製品)35g、t−ブチルカテコール(TBC)0.05gをスチレン(St)52gに溶解したのち、エポキシジメタクリレートオリゴマー「BPE−200」(新中村化学工業(株)の製品)5g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)8gを加え、さらにN,N−ジメチル−p−トルイジン(以下、DMPTとも言う)2gを添加して、接着剤主剤(6)を製造した。
【0098】
接着剤主剤(6)102.05gに、硬化剤の過酸化ベンゾイル(以下、BPOとも言う)2gを混合し、ラジカル硬化型接着剤(10)を製造した。実施例、比較例のラジカル硬化型接着剤の組成一覧を表1に、試験結果を表2に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
接着剤1は、クロロスルホン化ポリエチレンと相溶性のよいスチレンが使用されているため、大きい伸び率を示した。接着強度(引張剪断強度)も、構造接着剤として要求される10MPaをクリアした。
【0102】
接着剤2は、クロロスルホン化ポリエチレンとやや相溶性に欠けるメタクリル酸メチルが使用されている。引張強度、接着性ともにバランスがとれたものとなった。
【0103】
接着剤3〜7は、クロロスルホン化ポリエチレンと相溶性がよいが、硬化後、明瞭にミクロ相分離構造をとるメタクリル酸テトラヒドロフルフリルが使用されている。
【0104】
接着剤3は、クロロスルホン化ポリエチレン(ゴム成分)が多く、引張強度、伸び率、接着強度(引張剪断強度)ともにバランスがとれ、大きい値を示した。
【0105】
接着剤4,接着剤5はクロロスルホン化ポリエチレン(ゴム成分)が少ない配合となっている。接着剤3に比べ、弾性率が大きくなり、耐熱性、剪断強度も向上している。また、接着剤5は架橋剤「BPE−200」量が多くなっており、弾性率が大きく向上しているのがわかる。
【0106】
接着剤6、7は、接着剤4、5にヌレ剤を配合したものである。接着強度(引張剪断強度)が大きく改善、向上している。
【0107】
接着剤8は、空気による硬化阻害の影響を受け硬化が不十分で、全ての試験を行うことができなかった。接着剤9は、硬化しなかったため、試験を行うことができなかった。接着剤10は、空気による硬化阻害の影響を受け、テストピース表面が硬化不良を起こしたため、引張強度試験を行うことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロスルホン化ポリエチレン、スチレンおよび/またはアクリル単量体、
下記構造式のバルビツール酸誘導体、
【化1】

(ここで、R1,R2,R3,R4は、水素原子または炭素原子数1〜4個のアルキル基を表す。)
下記構造式のヒンダードアミン化合物、
【化2】

(ここで、R5は、水素原子または炭素原子数1〜6個のアルキル基を表す。)
および遷移金属錯体を含むラジカル硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
クロロスルホン化ポリエチレンが、23℃における25重量%トルエン溶液粘度が200〜2000mPa・sを有するものである請求項1に記載のラジカル硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
アクリル単量体が、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸テトラヒドロフルフリルを含むものである請求項1または2に記載のラジカル硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
接着剤組成物が、さらに、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するラジカル重合性オリゴマーを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のラジカル硬化型接着剤組成物。

【公開番号】特開2009−46551(P2009−46551A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212751(P2007−212751)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】