説明

ラチェットレンチハンドル

【課題】 従来例と同様のトルクが得られ、従って、機能が劣化することなく、従来例と較べ、構造的に小形なハンドルヘッドを備えたラチェットレンチハンドルを提供する。
【解決手段】 周側にラチェット歯6,…を、下面にアダプター接続用の角軸5を設けて回転体3を構成する。該回転体3を操作ハンドル1先端のハンドルヘッド1aに設けた収納室2の先端部側に収納して、前記ハンドルヘッド1aに回転自在に支持させる。また、前記ラチェット歯6に該ラチェット歯6と同心円上に位置して係合する複数個の正転用作動爪12と複数個の逆転用作動爪13を作動片9の先端面に対称的に設ける。そして、作動片9を、前記回転体3に隣接させて前記収納室に収納して揺動自在に軸支させる。更に、該作動片9の両側には、前記正、逆の各作動爪12,13が前記ラチェット歯6側から荷重を受けたとき、前記収納室2の内縁に設けた受圧縁部18に圧接する接触縁部17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルヘッドに設けた回転体にボルトやナットなどの回転工具であるアダプターを係合組付け、例えば、ボルトの締付けを、該アダプターに頭部を係合して、一定範囲の回転操作によって行うラチェットレンチハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続させたラチェット歯を外周に設け、角軸にアダプターを組付けるようにした回転体を、操作ハンドル先端のハンドルヘッドに回転自在に支持させ、該回転体の前記ラチェット歯に係止する正転(締付け操作)用作動爪と逆転(緩め操作)用作動爪を切替え手段で切替えができるように備えた作動片を、前記ハンドルヘッドに軸で揺動自在に組付け、前記切替え手段を、作動片の後方において、前記操作ハンドルに設けたボールをコイルばねで押圧することにより、前記正逆の作動爪のラチェット歯に対する切替え係止状態を保持するように構成した構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−345011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造コストの削減等の要求から、商品の小形化が商品開発のテーマの一つとなっているが、ラチェットレンチハンドルにおいても製品(殊に、ハンドルヘッド)の小形化が希求されている。前記従来構造のものは、コイルばねで押圧されたボールによる作動片に対する押圧方向を切替えることによって、正、逆の作動爪が選択されてラチェット歯に係止するのであるが、該正、逆の作動爪は単一で成るもので、これがラチェット歯に係止してトルクがかかるようにしてあるため、ラチェット歯が小さいと、作動爪側からのトルクが掛かりすぎて容易に破損し、一定以上のトルクを得るためにはラチェット歯を相応の大きさのもの、すなわち、回転体の大きさを小さくできず、ある程度以上のものにすることが必要で、ハンドルヘッドの小形化は難しい構造となっている。
【0005】
本発明は、従来と同様のトルクが得られ、従って、機能が劣化することがなく、従来例と較べ、構造的に小形なハンドルヘッドを備えたラチェットレンチハンドルを提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
周側にラチェット歯を、下面に角軸や非円形凹入部等のアダプター接続部を設けて回転体を構成し、該回転体を操作ハンドル先端のハンドルヘッドに設けた収納室の先端部側に収納して、前記ハンドルヘッドに回転自在に支持させ、前記ラチェット歯に該ラチェット歯と同心円上に位置して係合する複数個の正転用作動爪と複数個の逆転用作動爪を対称的に先端面に設けた作動片を、前記回転体に隣接させて前記収納部に収納して揺動自在に軸支させると共に、該作動片の両側には、前記正、逆の各作動爪が前記ラチェット歯から荷重を受けたとき、前記収納室の内縁に設けた受圧縁部に圧接する接触縁部を設けたことを基本的手段とする。
【0007】
なお、この基本的手段に、収納室の作動片の後端側に、外部から回転操作可能に切換え駒を収納し、該切換え駒にコイルばねに付勢されて突出する押しピンを係合し、該押しピンの先端を前記作動片の後端面に設けた作動爪切換え用のカム縁に圧接させた点を付加することにより、作動爪とラチェット歯の係合状態を確実に維持した、すなわち、操作方向(正転と逆転)が不測に変更することなく、作動爪とラチェット歯が係合し合い、当該設定状態を確実に保つことのできるラチェットレンチハンドルを提供でき、また、収納室の内縁に山形状の突出縁を設けて受圧縁部を形成し、作動片の両側には前記突出縁に一致する山形状の凹入縁を設けて接触縁部を設けた点を付加することにより、接触縁部と受圧縁が面接触することによりトルクによる損傷をできるだけ防いだ耐久的な製品を提供できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、回転体の正転時(例えば、ボルト締め付け時)に、複数個の正転用作動爪がラチェット歯に、逆転時(例えば、ボルトを緩める時)に複数個の逆転用作動爪がラチェット歯に係止し、しかも、作動片側の接触縁部とハンドルヘッド側の受圧縁部の係合関係によって、回転時に、ラチェット歯と作動歯の係合状態を維持して、複数個の作動爪によって回転体にトルクを掛けることができ、使用上好適なラチェットレンチハンドルを提供できる。しかも、複数個の作動爪によってトルクを掛けるものであるから、トルクは個数に応じて分散し、ラチェット歯を小さくできる、すなわち、回転体の径を小さくすることができ、従って、該回転体を納めるハンドルヘッドを小形化したラチェットレンチハンドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】図1のa−a線断面図。
【図3】分解断面図。
【実施例】
【0010】
実施例のラチェットレンチハンドルAは、操作ハンドル1の先端に設けたハンドルヘッド1a(なお、後記の通り、ハンドルヘッド1aはハンドルヘッド構成材1a´と蓋板2´´aを組付けボルト10で組付けて構成してある。)に、ヘッド1aの上面又は下面側から見て円形状の第一収納部2A、ほぼ8の字状の第二収納部2Bおよび小円形状の第三収納部2Cを、一部を重ね合わせるようにヘッド1aの先端側から後端側方向に順次並べて構成した形状の収納室2を設け、該収納室2の第一収納部2Aは、ヘッド1aの上面と下面を開口2a´,2a´´して外部に連通させ、該第一収納部2Aに回転体3を回転自在に支持させてある。
【0011】
回転体3は、周側にラチェット歯6を連続させて設け、上下両面に平面視円形状の段部4,4´を設け、その段部4,4´の一方の軸線上にアダプターtを組付ける角軸5を突設して構成し、前記ラチェット歯6を前記第一収納部2Aに納めるようにして段部4,4´を、前記開口2a´,2a´´に係合させてハンドルヘッド1aの収納室2の一側の第一収納部2Aに回転自在に支持させてある。
【0012】
なお、角軸5にコイルばね7によって突出方向に付勢させた球体8を設け、該球体8を利用してアダプターtを着脱自在に取り付けられるようになっている(公知事項)。
【0013】
前記第一収納部2Aに連通して前記収納室2を構成する第二収納部2Bには、作動片9を収納し、作動片9は、収納室2の下壁2´´を構成する蓋板2´´aを、上壁2´(収納室2の)に締付ける組付けボルト10で揺動自在に軸支してある。
【0014】
なお、11は組付けボルト10を貫通させて前記上、下壁2´,2´´間に配したカラーで、カラー11の存在によって、組付けボルト10を軸とする作動片9の揺動は、支障なく円滑に行われる。
【0015】
また、前記作動片9は、前記回転体3側の先端面の一側に、該回転体3に設けたラチェット歯6と同心円上に位置して係合する複数個の正転用作動爪12,…を、他側に、同じく、回転体3のラチェット歯6と同心円上に位置して係合する複数個の逆転用作動爪13,…を、それぞれ前記組付けボルト10を通る仮想直線を対称軸として対称的に設け、正転用作動爪12がラチェット歯6に係合したときは、逆転用作動爪13は該ラチェット歯6から離れ、逆転用作動爪13がラチェット歯6に係合したときは、正転用作動爪12が離れる関係にしてあり、ラチェット歯6に対して正逆の作動爪12,13のいずれを選択するかは、作動片9を納めた前記第二収納部2Bに隣接して連通する、小円形状の前記第三収納部2Cに収納した切換え駒14で行い、該切換え駒14の押しピン15が接離する、凹入円弧状のカム縁16を前記作動片9の前記先端面に対応する後端面中央に設けてある。
【0016】
作動片9の前記先後の端面間に相対して介在する両側面には、山形状の凹入縁(凹入段部)17´を設けて、作動片9の前記先端面側の一側を接触縁部17とし、該接触縁部17が係合して、作動片9側からの押圧を受ける受圧縁部18を、前記第二収納部2bの相対する内縁(収納室2の内縁)に設けた山形状の突出縁18´を設けて、その一側側で構成してある。
【0017】
第二収納部2Bに連通する、平面視小円形の前記第三収納部2Cには、前記切換え駒14を、前記上壁2´を開口して設けた挿入口2c´´を通じて前記作動片9に設けた突部片19に切欠20を係合させるようにして組合わせて、揺動自在に収納してある。
【0018】
切換え駒14は、平面視円形の前記第三収納部2Cに係合する円柱状の主体部21の一端に操作レバー22を、主体部21の径方向に突出させて設けると共に、該操作レバー22側に前記切欠20を設けた主体部21の周側に支持穴23を設け、該支持穴23にコイルばね24を介して前記押しピン15を出入自在に係合し、コイルばね24の押圧によって押しピン15の丸い先端が作動片9の前記カム縁16の一端縁又は他端縁に圧接し、作動片9の切換え操作が行われ、正転用作動爪12と逆転用作動爪13のいずれかのラチェット歯6との係合状態を保持する。
【0019】
そして、操作ハンドル1の、ハンドルヘッド1aを構成するハンドルヘッド構成材1a´に設けた前記第一収納部2Aに対応する部分2A´に回転体3を、第二収納部2Bに対応する部分2B´に切換え駒14と、突部片19と切欠20の係合関係により組合わせた作動片9(カラー11を係合して)を、第三収納部2Cに対応する部分2C´に前記切換え駒14をそれぞれ係合して、蓋板2´´aを、これらを介在させて収納室2の下壁2´´に対向させて配置し、上壁2´の透孔26を通じて組付けボルト10をカラー11に貫通させ、カラー11より突出する組付けボルト10の先端を前記蓋板2´´aに設けたねじ孔25に螺合、締付けることによって実施例のラチェットレンチハンドルAは組立てられる。
【0020】
図1は、切換え駒14を操作して、該切換え駒14の押しピン15の先端を、作動片9のカム縁16の一端縁にコイルばね24の付勢を利用して押し当てて、作動片9の正転用作動爪12を回転体3のラチェット歯6に係合させた状態を示すが、この状態のまま角軸5に嵌め込んで組付けたアダプターtを、例えば、ボルト頭部に嵌め込んで操作ハンドル1を図示実線で示す矢印x方向に前記ボルト頭部を中心に回すと、作動爪12はラチェット歯6を押圧し、回転体3を反時計廻り方向に回転させ、回転体3の角軸5に嵌めたアダプターtを係合したボルト頭部は締め付けられ、適宜の角度に回転させた後、ラチェット機構を利用して作動爪12に対してラチェット歯6を空転させるようにして操作ハンドル1を時計廻り方向に回転させて原位置に復帰させ、再び反時計廻り方向に回転させてボルト頭部の締付け操作を行うことによって、ボルト頭部の締付け操作が行われる。
【0021】
作動爪12に対するラチェット歯6の前記空転時にラチェット歯6は作動爪12を押圧し、該作動爪12を備えた作動片9は揺動軸である組付けボルト10を中心に揺動して正転用作動爪12に代って逆転用作動爪13がラチェット歯6に係合しようとするが、組付けボルト10と別軸で回転する切換駒14に備え、しかも、コイルばね24で押圧された押しピン15が作動爪12側に対応する、カム縁16の一側縁を押圧しているので、逆転用作動爪13が正転用作動爪12に代ってラチェット歯6に係合することはない。
【0022】
そして、切換え駒14を切換えて、押しピン15の先端をカム縁16の他の一端側に圧接させて正転用作動爪12に代えて逆転用作動爪13をラチェット歯6に係合させるようにして、図示点線で示す矢印y方向に操作ハンドル1を回転すると、ボルト頭部は締付け状態から緩められ、操作ハンドル1の時計廻り方向の回転操作と反時計廻り方向の回転操作の繰り返しにより前記ボルト頭部緩め操作が行われる。
【0023】
なお、切換え駒14の回転軸、作動片9の揺動軸および回転体3の回転軸は操作ハンドル1の軸線上に配してある。また、回転体のアダプター係合部は実施例の角軸に代えて、非円形凹入部でも本発明の実施に不都合はない。
【符号の説明】
【0024】
1 操作ハンドル
1a ハンドルヘッド
2 収納室
3 回転体
5 角軸
6 ラチェット歯
9 作動片
12 正転用作動爪
13 逆転用作動爪
17 接触縁部
18 受圧縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側にラチェット歯を、下面に角軸等のアダプター接続部を設けて回転体を構成し、該回転体を操作ハンドル先端のハンドルヘッドに設けた収納室の先端部側に収納して、前記ハンドルヘッドに回転自在に支持させ、前記ラチェット歯に該ラチェット歯と同心円上に位置して係合する複数個の正転用作動爪と複数個の逆転用作動爪を対称的に先端面に設けた作動片を、前記回転体に隣接させて前記収納部に収納して揺動自在に軸支させると共に、該作動片の両側には、前記正、逆の各作動爪が前記ラチェット歯から荷重を受けたとき、前記収納室の内縁に設けた受圧縁部に圧接する接触縁部を設けた、ラチェットレンチハンドル。
【請求項2】
収納室の、作動片の後端側に、外部から回転操作可能に切換え駒を収納し、該切換え駒にコイルばねに付勢されて突出する押しピンを係合し、該押しピンの先端を前記作動片の後端面に設けた作動爪切換え用のカム縁に圧接させた、請求項1記載のラチェットレンチハンドル。
【請求項3】
収納室の内縁に山形状の突出縁を設けて受圧縁部を形成し、作動片の両側には前記突出縁に一致する山形状の凹入縁を設けて接触縁部を設けた、請求項1又は2記載のラチェットレンチハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−62791(P2011−62791A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217207(P2009−217207)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(390003436)株式会社山下工業研究所 (9)