説明

ラチェットレンチハンドル

【課題】アダプターの接続部を備えた回転体の空転時、意図しない切替え操作が行われることのないラチェットレンチハンドルを提供する。
【解決手段】回転体3の周側に連続させて設けたラチェット歯6に正転用作動爪12と逆転用作動爪13のいずれか一方を切換え駒14の切換え操作によって、選択的に係止させて、角軸5に組付けたアダプターを正転方向又は逆転方向に回転させる。そして、ハンドルヘッド1aに軸で揺動自在に支持させた作動片9の、前記回転体側の先端面の一端に前記正転用作動爪を、反対端に前記逆転用作動爪をそれぞれ設ける。また、該作動片の前記先端面に相対する後端面の、前記正、逆用の作動爪間の中央部には、円弧状に前記先端面方向に凹ませたカム縁16を設け、該カム縁に先端がばね付勢によって圧接する押しピン15を、前記回転体の回転軸と前記軸を結ぶ直線の延長上に位置させた前記切換え駒に、出入自在に係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルヘッドに設けた回転体にアダプター(ソケット)を係合、組付け、該アダプターに例えば頭部を係合させて、ボルトを締付けたり、緩めたりするために用いるラチェットレンチハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作ハンドルの先端のハンドルヘッドに、アダプター(ソケット)を係合する角軸や非円形凹入部等のアダプター接続部を設けた回転体を装置し、該回転体の周側に連続させて設けたラチェット歯に正、逆一対の係止爪の一方を選択的に係止させて前記アダプターを、正転方向又は逆転方向に回転するようにし、正逆の回転方向を、前記係止爪を備えて、前記ハンドルヘッドに揺動自在に軸支した切替えレバーで行うようにした構造のものがある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−345011号公報
【特許文献2】特開2005−297123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、ラチェット歯に係止する正、逆の係止爪の構成材と、該正、逆の係止爪のいずれかをラチェット歯に係止させるかを選択する切替材を一つの部材で兼用させ、一つの軸で支持させているため、締付けや緩めの操作時におけるラチェットレンチハンドル特有の、回転体の空転時にラチェット歯から与えられる係止爪の振動をまともに受け、係止爪と切替材の両材を兼用させた前記一つの部材は、軸を中心に揺動してしまい、係止爪がラチェット歯に対し正、逆反対に係止し、意図しない切替え操作が行われるときがある。
【0005】
そのため、前記従来例で示す通り、係止爪の正、逆の方向を維持する球体を押圧するコイルばねの弾性力を相応に強くすることが必要になるが、ラチェットレンチハンドルの大きさの関係から限界がある。
【0006】
本発明は、このような従来例の問題点に着目し、回転体の空転時に、作動爪がラチェット歯に対し正、逆反対に係止して意図しない切替え操作が行われることのないラチェットレンチハンドルを提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
操作ハンドルの先端のハンドルヘッドに、アダプターの接続部を備えた回転体を設け、該回転体の周側に連続させて設けたラチェット歯に正転用作動爪と逆転用作動爪のいずれか一方を切換え駒の操作によって、選択的に係止させて、前記アダプターを正転方向又は逆転方向に回転させるようにしたラチェットレンチハンドルにおいて、前記ハンドルヘッドに軸で揺動自在に支持させた作動片の、前記回転体側の先端面の一端に前記正転用作動爪を、反対端に前記逆転用作動爪をそれぞれ設け、該作動片の前記先端面に相対する後端面の、前記正、逆用の作動爪間の中央部には、円弧状に前記先端面方向に凹ませたカム縁を設け、該カム縁に先端がばね付勢によって圧接する押しピンを、前記回転体の回転軸と前記軸を結ぶ直線の延長上に位置させた前記切換え駒に、出入自在に設けた、構成とするのである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空転時に回転体のラチェット歯によって作動爪が押され、該作動爪を備えた作動片は軸を中心に揺動しようとするが、該作動片は前記軸と別の回転軸を中心として回転する切換え駒に組付けた押しピンで押され、しかも、コイルばねに付勢されて押されているので、切換え駒の揺動は規制され、作動爪がラチェット歯に対し正、逆反対に係止して、意図しない作動爪の切替え操作が行われることのない、従って、使用勝手の良好なラチェットレンチハンドルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】図1のa−a線断面図。
【図3】分解断面図。
【実施例】
【0010】
実施例のラチェットレンチハンドルAは、操作ハンドル1の先端に設けたハンドルヘッド1a(なお、後記の通り、ハンドルヘッド1aはハンドルヘッド構成材1a´と蓋板2´´aを組付けボルト10で組付けて構成してある。)に、ヘッド1aの上面又は下面側から見て円形状の第一収納部2A、ほぼ8の字状の第二収納部2Bおよび小円形状の第三収納部2Cを、一部を重ね合わせるようにヘッド1aの先端側から後端側方向に順次並べて構成した形状の収納室2を設け、該収納室2の第一収納部2Aは、ヘッド1aの上面と下面を開口2a´,2a´´して外部に連通させ、該第一収納部2aに回転体3を回転自在に支持させてある。
【0011】
回転体3は、周側にラチェット歯6を連続させて設け、上下両面に平面視円形状の段部4,4´を設けて該回転体3の回転軸と成し、その段部4,4´の一方の軸線上にアダプターtを組付ける角軸5を突設して構成し、前記ラチェット歯6を前記第一収納部2Aに納めるようにして段部4,4´を、前記開口2a´,2a´´に係合させて、前記の通り回転軸と成し、ハンドルヘッド1aの収納室2の一側の第一収納部2Aに回転自在に支持させてある。
【0012】
なお、角軸5にコイルばね7によって突出方向に付勢させた球体8を設け、該球体8を利用してアダプターtを着脱自在に取り付けられるようになっている(公知事項)。
【0013】
前記第一収納部2Aに連通して前記収納室2を構成する第二収納部2Bには、作動片9を収納し、作動片9は、収納室2の下壁2´´を構成する蓋板2´´aを、上壁2´(収納室2の)に締付ける組付けボルト10を揺動軸として揺動自在に軸支してある。
【0014】
なお、11は組付けボルト10を貫通させて前記上、下壁2´,2´´間に配したカラーで、カラー11の存在によって、組付けボルト10を軸とする作動片9の揺動は、支障なく円滑に行われる。
【0015】
また、前記作動片9は、前記回転体3側の先端面の一端に、該回転体3に設けたラチェット歯6と同心円上に位置して係合する複数個の正転用作動爪12,…を、反対端に、同じく、回転体3のラチェット歯6と同心円上に位置して係合する複数個の逆転用作動爪13,…を、それぞれ前記組付けボルト10を通る仮想直線を対称軸として対称的に設け、正転用作動爪12がラチェット歯6に係合したときは、逆転用作動爪13は該ラチェット歯6から離れ、逆転用作動爪13がラチェット歯6に係合したときは、正転用作動爪12が離れる関係にしてあり、ラチェット歯6に対して正逆の作動爪12,13のいずれを選択するかは、作動片9を納めた前記第二収納部2Bに隣接して連通する、小円形状の前記第三収納部2Cに収納した切換え駒14で行い、該切換え駒14の押しピン15が接離する、円弧状のカム縁16を前記作動片9の前記先端面に相対する後端面の前記正、逆作動爪12,13間の中央部に設けてある。
【0016】
カム縁16は、作動片9の後端面中央に、作動片9の前記先端面方向に円弧状に凹んだ形態で成るものである。
【0017】
なお、作動片9の揺動軸(組付けボルト10)と回転体3の回転軸(段部4,4´)を結ぶ直線の延長線上に切換え駒14の揺動軸を配してある。
【0018】
作動片9の前記先後の端面間に相対して介在する左右両側面には、山形状の凹入縁(凹入段部)17´を設けて、作動片9の前記先端面側の一側を接触縁部17とし、該接触縁部17が係合して、作動片9側からの押圧を受ける受圧縁部18を、前記第二収納部2bの相対する内縁(収納室2の内縁)に設けた山形状の突出縁18´を設けて、その一側側で構成してある。
【0019】
第二収納部2Bに連通する、平面視小円形の前記第三収納部2Cには、前記切換え駒14を、前記上壁2´を開口して設けた挿入口2c´´を通じて前記作動片9に設けた突部片19に切欠20を係合させるようにして作動片9と組合わせて、揺動自在に収納してある。
【0020】
切換え駒14は、平面視円形の前記第三収納部2Cに係合する円柱状の主体部21の一端に操作レバー22を、主体部21の径方向に突出させて設け、前記操作レバー22側の主体部21部分を前記挿入口2c´´に、主体部21の前記一端に対応する他端中央に突設した段部21´を、収納室2の下壁2´´に設けた受穴30にそれぞれ係合して、主体部21部分および段部21´を前記揺動軸として揺動する。
【0021】
また、切換え駒14は、操作レバー22側に前記切欠20を設けた主体部21の周側に支持穴23を設け、該支持穴23にコイルばね24を介して前記押しピン15を出入自在に係合し、コイルばね24の押圧によって押しピン15の丸い先端が作動片9の前記カム縁16の一端縁又は他端縁に圧接し、作動片9の切換え操作が行われ、正転用作動爪12と逆転用作動爪13のいずれかのラチェット歯6との係合状態を保持する。
【0022】
そして、操作ハンドル1の、ハンドルヘッド1aを構成するハンドルヘッド構成材1a´に設けた前記第一収納部2Aに対応する部分2A´に回転体3を、第二収納部2Bに対応する部分2B´に切換え駒14と、突部片19と切欠20の係合関係により組合わせた作動片9(カラー11を係合して)を、第三収納部2Cに対応する部分2C´に前記切換え駒14をそれぞれ係合し、次いで、蓋板2´´aを、これらを介在させて収納室2の下壁2´´に対向させて配置し、上壁2´の透孔26を通じて組付けボルト10をカラー11に貫通させ、カラー11より突出する組付けボルト10の先端を前記蓋板2´´aに設けたねじ孔25に螺合、締付けることによって実施例のラチェットレンチハンドルAは組立てられる。
【0023】
図1は、切換え駒14を操作して、該切換え駒14の押しピン15の先端を、作動片9のカム縁16の一端縁にコイルばね24の付勢を利用して押し当てて、作動片9の正転用作動爪12を回転体3のラチェット歯6に係合させた状態を示すが、この状態のまま角軸5に嵌め込んで組付けたアダプターtを、例えば、ボルト頭部に嵌め込んで操作ハンドル1を図示実線で示す矢印x方向に前記ボルト頭部を中心に回すと、作動爪12はラチェット歯6を押圧し、回転体3を反時計廻り方向に回転させ、回転体3の角軸5に嵌めたアダプターtを係合したボルト頭部は締め付けられ、適宜の角度に回転させた後、ラチェット機構を利用して作動爪12に対してラチェット歯6を空転させるようにして操作ハンドル1を時計廻り方向に回転させて原位置に復帰させ、再び反時計廻り方向に回転させてボルト頭部の締付け操作を行うことによって、ボルト頭部の締付け操作が継続される。
【0024】
作動爪12に対するラチェット歯6の前記空転時に、ラチェット歯6は作動爪12を押圧し、該作動爪12を備えた作動片9は揺動軸である組付けボルト10を中心に揺動して正転用作動爪12に代って逆転用作動爪13がラチェット歯6に係合しようとするが、組付けボルト10と別軸で回転する切換え駒14に備え、しかも、コイルばね24で押圧された押しピン15が作動爪12側に対応する、カム縁16の一側縁を押圧しているので、逆転用作動爪13が正転用作動爪12に代ってラチェット歯6に係合することはない。
【0025】
そして、切換え駒14を切換えて、押しピン15の先端をカム縁16の他の一端側に圧接させて正転用作動爪12に代えて逆転用作動爪13をラチェット歯6に係合させるようにして、図示点線で示す矢印y方向に操作ハンドル1を回転すると、ボルト頭部は締付け状態から緩められ、操作ハンドル1の時計廻り方向の回転操作と反時計廻り方向の回転操作の繰り返しにより前記ボルト頭部緩め操作が行われる。
【0026】
なお、切換え駒14の回転軸、作動片9の揺動軸および回転体3の回転軸は操作ハンドル1の軸線上に配してある。また、回転体のアダプター接続部は実施例の角軸に代えて、非円形凹入部でも本発明の実施に不都合はない。
【符号の説明】
【0027】
1 操作ハンドル
1a ハンドルヘッド
3 回転体
6 ラチェット歯
9 作動片
12 正転用作動爪
13 逆転用作動爪
14 切換え駒
15 押しピン
16 カム縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルの先端のハンドルヘッドに、アダプターの接続部を備えた回転体を設け、該回転体の周側に連続させて設けたラチェット歯に正転用作動爪と逆転用作動爪のいずれか一方を切換え駒の操作によって、選択的に係止させて、前記アダプターを正転方向又は逆転方向に回転させるようにしたラチェットレンチハンドルにおいて、前記ハンドルヘッドに軸で揺動自在に支持させた作動片の、前記回転体側の先端面の一端に前記正転用作動爪を、反対端に前記逆転用作動爪をそれぞれ設け、該作動片の前記先端面に相対する後端面の、前記正、逆用の作動爪間の中央部には、円弧状に前記先端面方向に凹ませたカム縁を設け、該カム縁に先端がばね付勢によって圧接する押しピンを、前記回転体の回転軸と前記軸を結ぶ直線の延長線上の軸を中心として揺動する前記切換え駒に、出入自在に係合した、ラチェットレンチハンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−73098(P2011−73098A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227155(P2009−227155)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(390003436)株式会社山下工業研究所 (9)