説明

ラックの洗浄装置

【課題】使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置であって、操作性が良く、且つラックの深部まで確実に洗浄することのできる洗浄装置を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄装置10は、原子力発電所の使用済燃料プール12内の液中のラック30を洗浄する。この洗浄装置10は、ポンプ40(液体供給装置)と、ポンプ40に接続されたホース42と、ホース42の先端に取り付けられ、管をリング状に湾曲して形成したリング部44Bを有するとともに、ホース42を持って吊り下げ支持した際に前記リング部44Bが略水平に配置されるヘッド44と、リング部44Aに一定の間隔で設けられ、リング部44Aの外側に向けて液体を噴射するノズル44C、44C…と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラックの洗浄装置に係り、特に原子力発電所設備において使用済燃料プール内の使用済燃料棒用のラックを洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型(BWR)の原子力発電所では、原子炉容器内の使用済燃料の一部が定期的に取り出され、使用済燃料プールに移動される。使用済燃料プールの内部には、使用済燃料からの放射線の遮蔽と冷却のために水が貯留されている。また、使用済燃料プール内の液中には縦置きの細長いラックが設けられ、このラックに使用済燃料が貯蔵される(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような使用済燃料プールでは、ラックのサイズ変更等によってラックを入れ替えることがある。その場合、使用済みのラックを洗浄することによって、ラックに付着したクラッド(すなわち放射化された金属酸化物)を払い落とすことが必要となる。ラックの洗浄は、従来、ラックの壁面をブラシにより、手動或いは自動で擦ることによって行っていた。
【特許文献1】特開平7−35893号公報
【特許文献2】特開平10−227890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラックが縦長であること、さらにラックがプールの深部に配置されていることから、ブラシによる洗浄は作業効率が悪いという問題があった。また従来の洗浄方法は、ラックの底部を十分に洗浄することができず、クラッドが残るという問題があった。さらに従来の洗浄方法は、ラックをブラシで擦るために、ブラシにクラッドが付着し、ブラシの洗浄が必要になるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置であって、操作性が良く、且つラックの深部まで確実に洗浄することのできる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、原子力発電所の使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置において、液体供給装置と、該液体供給装置に接続されたホースと、該ホースの先端に取り付けられ、管をリング状に湾曲して形成されるとともに前記ホースを持って懸吊した際に略水平に配置されるリング部を有するヘッドと、該ヘッドのリング部に一定の間隔で設けられ、前記ヘッドに送液された液体を前記リング部の外側に向けて噴射するノズルと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1の発明によれば、液体供給装置を駆動することによって、ホースを介してヘッドに液体が供給され、ヘッドのリング部のノズルから液体が噴射される。また、請求項1の発明によれば、ホースを持ってヘッドを懸吊した際にリング部が略水平に配置される。よって、水平に配置されたリング部の外側にノズルから液体が噴射されるので、噴射した液体によってラックの側面を洗浄することができる。したがって、ホースを操作し、リング部をラック内で上下に移動させることによって、ラック内全体を容易に洗浄することができる。すなわち、請求項1の発明によれば、ホースを持ってヘッドを懸吊し、ヘッドをラック内で上下に移動させるだけでラック内全体を洗浄することができる。よって、洗浄作業の操作性が良く、プールの深部に設置された縦長のラックを容易に洗浄することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記ノズルは、液体の噴射方向を調節可能に構成したことを特徴とする。したがって、請求項2の発明によれば、液体の噴射方向を変えることができ、ラックの側面だけでなくラックの底部も洗浄することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は前記目的を達成するために、原子力発電所の使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置において、液体供給装置と、該液体供給装置に接続されたホースと、該ホースの先端に取り付けられ、前記ホースを持って懸吊された状態で下向きに液体を噴射する下向きノズルと、側方に液体を噴射する横向きノズルを有するヘッドと、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、下向きノズルと横向きノズルを備えているので、ヘッドの下方と側方に液体を噴射することができ、ラックの側面と底部を洗浄することができる。また、横向きノズルから噴射した液体によってラックの側面を洗浄し、その際に剥離したクラッドを、下向きノズルから噴射した液体が成す水流によって下方に流すこともできる。よって、クラッドの再付着を防止することができ、効果的な洗浄を行うことができる。さらに、請求項3の発明によれば、ホースを持って操作し、ヘッドをラック内で上下に移動するだけでラック全体を確実に洗浄することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は請求項3の発明において、前記下向きノズルから噴射する液体の流量と、前記横向きノズルから噴射する液体の流量とを調節する流量調節手段を備えたことを特徴とする。したがって、請求項4の発明によれば、横向きに噴射する液体の流量と、下向きに噴射する液体の流量を調節することができる。例えば、ラックの上部洗浄時には横向きに噴射する液体の流量を増加させ、ラックの下部洗浄時には下向きに噴射する液体の流量を増加させる。これにより、ラックの側面と底部の両方を効果的に洗浄することができ、ラック全体において効率の良い洗浄を行うことができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は請求項3又は4の発明において、前記横向きノズルは前記ヘッドの周りを回転することを特徴とする。したがって、請求項5の発明によれば、横向きノズルをヘッドの周囲に回転させながら液体を噴射することができ、洗浄効果を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るラックの洗浄装置によれば、液体供給装置を駆動してヘッドのノズルから液体を噴射しながら、ホースを持ってヘッドを懸吊し、そのヘッドをラック内で昇降させることによって、ラック内を洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明に係るラックの洗浄装置の好ましい実施形態について説明する。まず、本発明の洗浄装置で洗浄する使用済燃料プールのラックについて図1及び図2に基づいて説明する。図1は原子力発電所設備の使用済燃料プールの構成を示す断面図であり、図2はラックの構成を示す斜視図である。
【0015】
図1に示すように、使用済燃料プール12は、コンクリート製の槽14から成り、この槽14の内部に水16が貯留されている。槽14には、循環ライン18が接続され、循環ライン18には、ポンプ20、ろ過装置22、熱交換機24が配設される。そして、ポンプ20を駆動することによって槽14内の水が循環ライン18を介して循環し、その循環水がろ過装置22によってろ過され、クラッド等の不純物が除かれ、さらに熱交換器24によって温度調節され、槽14内の水が一定の温度に維持される。
【0016】
使用済燃料プール12の底部には、使用済燃料棒26を縦置きするためのラック30が設置される。図2に示すように、ラック30は上面が開口されている。また、ラック30は縦板32、32…が格子状に組まれており、ラック30の内部には、縦に細長い多数の部屋が形成されている。使用済燃料棒26は、不図示の走行クレーン等によって縦に吊り下げられた状態で、ラック30の上方から各部屋に挿入され、格納される。
【0017】
ラック30の下部には横板34が水平に設けられ、各部屋がこの横板34によって仕切られている。横板34には円形の開口34Aが形成されており、その内径Dは、燃料棒26の外径よりも小さく形成されている。したがって、ラック30の各部屋に燃料棒26を格納すると、燃料棒26は横板26の上に搭載される。なお、縦板32は横板34よりも下側が開口されており、ラック30の内外が連通されている。
【0018】
次に本発明に係る洗浄装置の第1実施形態について説明する。
【0019】
図2に示すように、第1の実施形態の洗浄装置10は主として、ポンプ40、ホース42、及びヘッド44で構成される。ホース42は、樹脂製の軽量ホースが用いられており、その一部分が巻取機46に巻き取られ、必要な長さが引き出せるようになっている。ホース42の先端はヘッド44に接続され、ホース42の基端はポンプ40の吐出口に接続されており、さらにこのポンプ40の吸込口は別のホース47を介して液体貯留部(不図示)に接続される。したがって、ポンプ40を駆動することによって液体貯留部内の液体をホース42を介してヘッド44に供給することができる。なお、ポンプ40で送液する液体としては、水道水、工業用水、或いは使用済燃料プール12のリサイクル水等が用いられる。
【0020】
ヘッド44は、ステンレス等の金属管を湾曲させることによって形成される。図3(A)に斜視図を示すように、ヘッド44は、略直線状のガイド部44Aと、このガイド部44Aに連続してリング状に形成されたリング部44Bによって構成される。ガイド部44Aの端部には上述のホース42が接続される。ヘッド44は、ホース42を持って懸吊した際にリング部44Bが水平になるように形成される。すなわち、図3(B)に側面図を示すように、ヘッド44は、ガイド部44Aがリング部44Bに対して略直交する方向に形成され、具体的にはガイド部44Aがリング部44Bの中心軸側に若干傾斜して形成されている。
【0021】
リング部44Bはその外径bがラック30の各部屋の一辺x(図2参照)よりも小さくなるように形成されている。したがって、リング部44Bを水平状態のままラック30の部屋内を昇降させることができる。一方、ガイド部44Aは、その長さaが部屋の一辺xよりも十分に大きく形成されており、好ましくは長さaがxの二倍以上になるように形成されている。したがって、ヘッド44が傾動すると、ガイド部44Aがラック30の側壁に当接してガイドされるので、リング部44Bを水平に保つことができる。なお、リング部44Bの先端は閉塞されている。
【0022】
リング部44Bの外周側には多数の噴射口(ノズルに相当)44C、44C…が一定の間隔で形成されている。したがって、リング部44B内に液体が供給されると、その液体が噴射口44Cから外側に向けて噴射される。各噴射口44Cは、噴射方向がリング部44Bの径方向になるように、且つ、水平方向に対して所定の角度で下向きになるように形成されている。ここで、水平方向に対する所定の角度とは、液中に浮遊するクラッドを下方に押し込むのに適した角度であり、且つ、噴射した液体の反力によってヘッド44が浮上しない程度の角度が好ましく、例えば5°〜45°の範囲に設定される。
【0023】
次に上記の如く構成された洗浄装置10の作用について説明する。
【0024】
ラック30の洗浄作業は、まず、作業者が槽14の上方でホース42を持ち、ヘッド44を懸吊する。次いで、ホース42を巻取機46から引き出してヘッド44を徐々に降下させ、ラック30の上方に配置する。そして、ポンプ40を駆動し、ヘッド44のノズル44C、44C…から液体を噴射する。
【0025】
次に、ヘッド44をさらに降下させ、図4(A)に示すように、ヘッド44をラック30の部屋の内部を降下させる。このとき、リング部44Bは水平に保たれており、さらにリング部44Bのノズル44Cから外向きで且つ若干下向きに液体が噴射されるので、噴射した液体によって、ラック30の内側面(縦板32)に付着していたクラッドが内側面から剥離される。剥離されたクラッドは、ノズル44Cからの液体が若干下向きに噴射されているために下方に向けて送られる。
【0026】
このようにしてラック30の側壁を洗浄しながらヘッド44を徐々に降下させる。そして、図4(B)に示すように、ヘッド44がラック30の底部まで到達すると、ノズル44Cから若干下方に向けて噴射した液体の水流によって、ラック30の横板34の隅部に堆積したクラッドが横板34の開口34Aに流れ、下方空間に排除される。したがって、ラック30の底部も確実に洗浄することができる。これにより、ラック30の部屋全体の洗浄が完了する。
【0027】
部屋の洗浄が終了した後は、ヘッド44を移動させて他の部屋の洗浄を行う。すなわち、ヘッド44を上昇させて洗浄終了後の部屋から取り出し、さらに水平に移動させて未洗浄の部屋の上方に配置した後、ヘッド44を再度下降させる。これにより、その部屋を洗浄することができる。
【0028】
このように本実施の形態の洗浄装置10によれば、ヘッド44のノズル44Cから液体を噴射しながら、ヘッド44をラック30内に徐々に降下させることによって、ラック30の内部全体を洗浄することができる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、ホース42に持ってヘッド44を昇降させるだけで洗浄作業を行うことができ、非常に容易にラック30を洗浄することができる。さらに、本実施の形態では、ヘッド44を一本の金属管によって形成したので、装置が低コストであるとともに、ヘッド44が非常に軽量になり、操作性が良い。
【0030】
なお、噴射口44Cからの液体の噴射方向は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、径方向に対して若干傾いた方向に噴射するようにしてもよい。このように径方向に対して若干傾いた方向に液体を噴射すると、噴射した際の反力によってヘッド44が自動的に回転する。よって、ヘッド44を回転させながら液体を噴射することができ、噴射した液体による洗浄効果を高めることができる。
【0031】
また、上述した実施形態は、ホース42によるヘッド44の移動を手動で行うようにしたが、天井走行クレーン等を用いることによって、ヘッド44の移動を自動で行うようにしてもよい。
【0032】
さらに、上述した実施形態は、リング部44Bを成す金属管に孔を開けることによって噴射口44Cを形成したが、ノズルの構成はこれに限定するものではなく、例えば図5に示すように筒状部材48を用いてノズルを構成してもよい。図5に示す筒状部材48は細孔が形成されており、この細孔を介してリング部44Bの内部に連通されている。また、筒状部材48は、自在継手49によってリング部44Bに取り付けられ、筒状部材48の向きを所望の方向に調節できるようになっている。したがって、図5に示すヘッド44は、筒状部材48の細孔から液体を噴射することができるとともに、その噴射方向を自在に調節することができる。噴射方向の調節は、洗浄作業前に、ラック30のサイズ等に合わせて行うとよい。なお、筒状部材48の向きの調節は自動で行うようにしてもよい。
【0033】
図6は第2の実施形態の洗浄装置の概略構成を示す図であり、図7はヘッドの縦断面図である。図7に示すように第2の実施形態のヘッド50は、内筒52Aと外筒52Bから成る二重筒状のヘッド本体52を備える。ヘッド本体52の下面には、下向きノズル54が鉛直下向きに取り付けられており、内筒52A内に供給された液体を下向きに噴射するようになっている。また、ヘッド本体52の側面(外周面)には、複数の横向きノズル56、56…が等しい間隔で設けられている。横向きノズル56、56…は、外筒52Bの内部に連通されており、外筒52内に供給された液体を、外筒52Bの径方向に、且つ若干下向きに噴射するようになっている。
【0034】
ヘッド本体52の下部には、外周面から横方向に突出した円板状のストッパ58が取り付けられている。ストッパ58は、ラック30(図2参照)の横板34の開口34Aよりも大きく形成されており、横板34の開口34Aをストッパ58が通過しないように構成される。
【0035】
ヘッド本体52の上部には、内筒52Aの内部に連通する接続管60が突設され、さらに、外筒52Bの内部に連通する接続管62が突設される。図6に示すように、接続管60にはホース64が接続され、接続管62にはホース66が接続される。これらのホース64、66はそれぞれポンプ68、70に接続されており、各ホース68、70にそれぞれ液体を供給できるようになっている。また、各ホース64、66の途中には流量調整弁72、74が設けられており、ホース64、66を流れる液体の流量を別々に調節できる。なお、ホース64、66は絡まないように束ねておくとよい。
【0036】
次に上記の如く構成された第2の実施形態の洗浄装置の作用について説明する。
【0037】
洗浄作業は、第1の実施形態と同様に、ホース64、66を操作することによって、ヘッド50をラック30の部屋内を下降させるとともに、ポンプ68、70によってヘッド50に液体を供給し、下向きノズル54と横向きノズル56から液体を噴射させる。横向きノズル56から噴射した液体によってラック30の内側面に付着したクラッドが剥離される。また下向きノズルから噴射した液体によって下向きの水流が形成されるので、剥離したクラッドが下方に送られる。このように下向きノズル54と横向きノズル56から液体を噴射しながらヘッド50を下降させることによって、ラック30の側面を洗浄することができる。なお、ラック30の側面を洗浄する際は、横向きノズル56から噴射する液体の流量が、下向きノズル54から噴射する液体の流量よりも大きくなるように調節するとよい。また、下向きノズル54から噴射する液体の流量は零であってもよい。
【0038】
ヘッド50がラック30の下部まで下降すると、液中に浮遊するクラッド、及び横板34上に蓄積したクラッドは、横向きノズル56から噴射した液体が成す水流によって横板34の開口34Aから下方空間に送られる。そして、ヘッド50が横板34まで下降すると、下向きノズル54が横板34の開口34Aに挿入され、さらにストッパ58が横板34に当接する。
【0039】
次に、流量調整弁72、74を制御することによって、横向きノズル56から噴射する液体の流量を減少、或いは噴射を停止し、さらに下向きノズル58から噴射する液体の流量を増加させる。この状態では、横板34の開口34Aがストッパ58によって閉塞されているため、下向きノズル54から液体を噴射すると、液体及びクラッドは縦板32の側面開口からラック30の外に排出される。したがって、横板34の下方空間においてもクラッドを除去することができる。
【0040】
このように本実施の形態によれば、ヘッド50が下向きノズル54と横向きノズル56を備え、ヘッド50の横方向と下方向に液体を噴射することができるので、ラック30の側面と底部を確実に洗浄することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、流量調整弁72、74を設けたので、横向きノズル56から噴射する液体の流量と、下向きノズル54から噴射する液体の流量を個別に調節することができ、ラック50の部分に応じた洗浄を行うことができる。よって、ラック30全体を効率良く洗浄することができる。
【0042】
なお、上述した第2の実施形態において、ストッパ58の下面に接触センサ(不図示)を設け、この接触センサがラック30の横板34に接触したことを検出した際に、下向きノズル54から噴射する流量と横向きノズル56から噴射する流量を自動的に調節するようにしてもよい。
【0043】
また、上述した第2の実施形態は、横向きノズル56が外筒52Bの径方向に液体を噴射するようにしたが、径方向に対して若干傾けて噴射するようにしてもよい。このように径方向に対して若干傾けると、液体を噴射した際の反力によってヘッド50が回転するので、ヘッド50を回転させながら液体を噴射することができ、洗浄効果を向上させることができる。なお、この場合には、図8に示すように、短い筒状の支持筒78を設け、この支持筒78に横向きノズル56、56…を取り付けるとともに、支持筒78を外筒52Bに回動自在に取り付けるとよい。これにより、支持筒78のみが回転し、ヘッド本体52は回転しなくなるので、ホース64、66が絡まることを防止できる。
【0044】
また、上述した実施形態では、ヘッド本体52の外周面に横向きノズル56を設けたが、横向きノズル56の位置はこれに限定するものではなく、例えば図9に示すように、ストッパ80の外周面80Aに横向きノズル(噴射口)82、82…を形成するようにしてもよい。このようにストッパ80の外周面80Aにノズル82、82…を設けると、ラック30の側面に対して至近距離から液体を噴射するので洗浄効果を向上させることができる。なお、図9のストッパ80の外周面80Aは、下向きに傾斜して形成されており、この傾斜面80Aに横向きノズル82を形成することによって、斜め下方に液体を噴射できるようになっている。また、図9のストッパ80はヘッド本体52に対して回動自在に支持されており、横向きノズル82から液体を噴射した際の反力によって回動するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る洗浄装置で洗浄されるラックが設置された使用済燃料プールを示す断面図
【図2】ラックの内部構成及び洗浄装置の概略構成を示す斜視図
【図3】第1の実施形態の洗浄装置のヘッド構成を示す図
【図4】洗浄装置の作用を説明する説明図
【図5】ノズル形状の異なるヘッドを示す斜視図
【図6】第2の実施形態の洗浄装置の構成を示す図
【図7】第2の実施形態のヘッドを示す断面図
【図8】図7と異なる構成のヘッドを示す断面図
【図9】図7と異なる構成のヘッドを示す断面図
【符号の説明】
【0046】
10…洗浄装置、12…使用済燃料プール、30…ラック、32…縦板、34…横板、40…ポンプ、42…ホース、44…ヘッド、50…ヘッド、52…ヘッド本体、54…下向きノズル、56…横向きノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置において、
液体供給装置と、
該液体供給装置に接続されたホースと、
該ホースの先端に取り付けられ、管をリング状に湾曲して形成されるとともに前記ホースを持って懸吊した際に略水平に配置されるリング部を有するヘッドと、
該ヘッドのリング部に一定の間隔で設けられ、前記ヘッドに送液された液体を前記リング部の外側に向けて噴射するノズルと、を備えたことを特徴とするラックの洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルは、液体の噴射方向を調節可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のラックの洗浄装置。
【請求項3】
原子力発電所の使用済燃料プール内の液中のラックを洗浄する洗浄装置において、
液体供給装置と、
該液体供給装置に接続されたホースと、
該ホースの先端に取り付けられ、前記ホースを持って懸吊された状態で下向きに液体を噴射する下向きノズルと、側方に液体を噴射する横向きノズルを有するヘッドと、
を備えたことを特徴とするラックの洗浄装置。
【請求項4】
前記下向きノズルから噴射する液体の流量と、前記横向きノズルから噴射する液体の流量とを調節する流量調節手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載のラックの洗浄装置。
【請求項5】
前記横向きノズルは前記ヘッドの周りを回転することを特徴とする請求項3又は4に記載のラックの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−177861(P2006−177861A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372998(P2004−372998)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)