説明

ラッシングフックの取り付け構造

【課題】貨物の緊縛用ロープ等のラッシングフックを、良好な耐荷重性を発揮するようフロアサイドレール等に取り付けるとともに、簡単な作業で装着及び脱着を可能とする。
【解決手段】緊縛用ロープの掛け止め部を行うラッシングフック1の脚部12には、その先端部に、断面の一部が張り出した断面拡大部12Lを形成する。また、フロアサイドレール3の下面に当接するロックプレート5を配置し、ロックプレート5には、断面拡大部12Lが通過可能な通過孔と、断面拡大部の上方のみが通過可能な抜け止め孔とを連続して形成する。ラッシングフック1を取り付けるには、脚部の断面拡大部12Lを、ロックプレート5の通過孔を通過させて挿入した後、ロックプレート5をスライドし断面拡大部12Lの上方を抜け止め孔に嵌め込んで、ロックプレート5を固着する。ロックプレート5は補強板としても機能し、ラッシングフック装着部の耐荷重性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物輸送用車両の荷台において、走行中の貨物の荷くずれや移動等を防止する緊縛用ベルトを、荷台の床部に固定するためのラッシングフックの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物輸送用のトラックやトラクタに牽引されるトレーラーなどの荷台には、上方が開放された無蓋の荷台あるいは屋根を備え周囲が密閉された箱型荷台等がある。近年では、風雨などによる貨物の損傷及び貨物の転落が防止可能であり、梱包の簡易化も容易な箱型荷台が広く普及している。箱型荷台の中では、迅速な貨物の積み降ろし等荷役作業の合理化を目的として、跳ね上げ式の屋根を設け、荷台の両側及び後部から貨物の積み降ろしができるようにしたウイングボディも多用されている。
【0003】
ところで、貨物輸送用車両の荷台では、積載した貨物が車両走行中に荷くずれを生じたり、相互に衝突して損傷したりすることがないよう、緊縛用のロープ、ベルト等により貨物を固定する。荷台の床部には、緊縛用ロープ等を掛け止めする複数のフック部材が、車両前後方向に適宜の間隔で設置されており、ラッシングフックと呼ばれている。ラッシングフックは、無蓋の荷台であるか箱型荷台であるかを問わず、貨物輸送用車両の荷台に設置されるものであって、一般的には、荷台の車両の横方向両端を前後方向に延びるフロアサイドレールに取り付けてあり、不使用時には、荷台の上面に突出し荷役作業等の障害となるのを防止するため、フロアサイドレールの下側に落し込む構造となっている。
なお、トラクタに牽引されるトレーラー等の大型貨物輸送用車両の荷台では、フロアサイドレールとは別に、ラッシングフックを取り付ける鋼製の部材を床部の適所に設置することがある。この場合でも、ラッシングフックは不使用時にはその部材の下側に落し込まれ、荷台の床面から突出しないように構成される。ラッシングフックを取り付けるフロアサイドレール等の部材を、以下では「装着用部材」という。
【0004】
フロアサイドレールに装着されるラッシングフックは、一例として実用新案登録第2576435号公報に開示されており、図4にこの公報に記載されたラッシングフックの構造を示す。図4(a)は、ラッシングフックを用いて、ウイングボディ(分かりやすいように、跳ね上げ式の屋根は取り除かれている)に積載された貨物を緊縛用ロープにより固定する様子を表す概略図であり、図4(b)は、一部が断面で示されるA部の拡大斜視図である。
ウイングボディの床面に積載された貨物Cは、荷くずれ等が生じないように、緊縛用ロープRによって固定されており、床面の横方向端部には、ロープRを掛け止めする複数のラッシングフック1が適宜の間隔で取り付けられる。ウイングボディの後端には観音開き式のドアDが設けられるとともに、側面下部には煽り板Pが設けられ、側面を開放する貨物の積み降ろしに際しては、図4(a)のように煽り板Pが下方に回動される。
【0005】
図4(b)に示すように、ウイングボディの下部には、その全幅に亘って横方向に延びる断面コ字状のクロスメンバ2が、適宜の間隔を開けて前後方向に多数本設置され(図には1本のみを示す)、クロスメンバ2の上に木製の床板Fが張設されている。クロスメンバ2の先端を覆うように、車両の前後方向に延びるフロアサイドレール3が設置してあり、ラッシングフック1は、このフロアサイドレール3に取り付けられる。この例におけるラッシングフック1は、ロープRを掛け止めする水平棒体11と2本の脚部12を備えている。2本の脚部12は少し屈曲しており、フロアサイドレール3の上面部に開けられた挿入孔31にそれぞれ挿入される。
【0006】
図4(c)は、フロアサイドレール3に挿入されるラッシングフック1を断面図により示すものである。ラッシングフック1の2本の脚部12には、その先端部にそれぞれねじが形成してあり、ねじには、脚部12が貫通する挿入孔31の径よりも大きなナット13が嵌め込んである。図4(b)のようにロープRの掛け止めを行うときは、(c)の右図に示すとおり、ラッシングフック1が上方に引き出され、ナット13がフロアサイドレール3に当接した位置に保持される。ラッシングフック1を使用しないときは、(c)の左図に示すとおり、ラッシングフック1の水平棒体11がフロアサイドレール3の上面に当接するまで、脚部12はフロアサイドレール3の下側に落し込まれる。そのため、ラッシングフック1は、ほぼフロアサイドレール3の突起部32の高さに一致するまで引き込まれ、荷役作業等の障害とならない状態となる。
フロアサイドレール3の下方には、落し込まれたラッシングフック1を収容する収容体14が設けてあり、この例では溶接によってフロアサイドレール3に固着される。収容体14は、雨水等が脚部12と挿入孔31との間隙から侵入し、積載した貨物が水濡れを起こすのを防止する役割も担っている。なお、フロアサイドレール3の側面には、煽り板Pがヒンジによって取り付けられる。
【0007】
上記のラッシングフック1は、ロープRを使用して貨物を緊縛する際に、ラッシングフック1の抜け止めを図るため脚部12のそれぞれにナット13を嵌め込むものであるが、特許第3817196号公報には、異なる抜け止め方法を備えたラッシングフックが開示されている。図5(a)に示すとおり、この公報に記載のラッシングフック1(図4の部材に対応するものには同一の符号を付す)は、基本的には図4のものと同様な形態であって、水平棒体11と2本の脚部12を備えている。ただし、右側面図に示されるとおり、脚部12の下方部分は、ほぼ直角に曲げられた曲げ部12Aとなっており、曲げ部12Aの上方には、楔形断面の保持突起12Bが形成されている。
【0008】
ラッシングフック1を設置するときは、まず、2点鎖線で表すフロアサイドレール3の挿入孔31に2本の脚部12を挿入し、その後、(b)に示す抜け止め部材4を組み合わせる。抜け止め部材4は、中央部に中高凸部41を形成するとともに、その両側の斜面部には抜け止め部材4の端部に開口する係止溝42をそれぞれ形成したものであり、係止溝42の幅は、保持突起12Bの先端から脚部12の反対側までの距離Hよりも僅かに小さく設定されている。そのため、左右の係止溝42を、保持突起12Bの上方の脚部12にそれぞれ嵌め込んだ後、抜け止め部材4を下方に強く押し込むと、係止溝42が楔形断面の保持突起12Bを乗り越えて、(c)のように、抜け止め部材4が保持突起12Bと曲げ部12Aとの間に位置する。抜け止め部材4は、逆方向には保持突起12Bを越えられないため、その位置が保持される。ロープ等の掛け止めを行うラッシングフック1の使用時においては、(d)に示すように、抜け止め部材4の中高凸部41がフロアサイドレール3の下面に当接し、ラッシングフック1の姿勢を安定させながら抜け止めが行われる。
ただし、この抜け止め方法は、2本の脚部を有するラッシングフックに特有の抜け止め方法である。ラッシングフックには、脚部が1本のもの、例えば実開昭58−2136号公報に開示されるT字形のラッシングフックもあるが、こうしたラッシングフックの抜け止めに適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第2576435号公報
【特許文献2】特許第3817196号公報
【特許文献3】実開昭58−2136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ラッシングフックは、積載した貨物の荷くずれ等を防止するための緊縛用ロープなどを掛け止めする器具であって、車両走行中の貨物に働く慣性力等に伴い、使用時には緊縛用ロープなどから大きな荷重が作用する。不使用時であっても、車両走行中の振動によりフロアサイドレール等の装着用部材に衝突して、ラッシングフックの各部分には衝撃的な力が作用する。
特許文献1のラッシングフックは、脚部の下方部分に形成したねじにナットを固定し、使用時にはナットをフロアサイドレールの下面に当接して抜け止めを図るものであるが、緊縛用ロープなどからの荷重や車両走行中の振動により、ねじとナットとの結合部に緩みが生じ易く、ナットがラッシングフックから脱落する虞れがある。また、ナットが装着用部材であるフロアサイドレールの挿入孔の周囲に直接接触しており、ラッシングフックに掛かる荷重によりナットの接触するフロアサイドレールの部位に損傷を生じ易い。特許文献2のラッシングフックでは、荷重が作用する抜け止め部材は、強度及び剛性の非常に大きな構造とする必要がある。そして、特許文献2の抜け止め方法は、脚部が1本のラッシングフックの抜け止めに適用することは不可能である。
【0011】
さらに、ラッシングフックは、大型のトラック等では多数配設されるものであるから、簡易な構造であって取り付けの際の作業が容易なものが望ましい。特許文献1のラッシングフックでは、ラッシングフックの2本の脚部にそれぞれねじを形成する作業、あるいは2本の脚部に両方の位置を正確に合わせてナットを固定する作業は、手間のかかる困難な作業となる。ことに、ラッシングフックを収容する収容体は、フロアサイドレールの下側に溶接により固着されるものであるから、装着作業が容易でないとともに、破損したラッシングフックを交換するような場合には、通常の手段では不可能となる。特許文献2のラッシングフックでも、保持突起付きのラッシングフックや複雑な形状の抜け止め部材の製造は、コストの高いものであり、ラッシングフックの交換のために抜け止め部材を取り外す作業も困難である。
本発明の課題は、大きな荷重が作用するラッシングフックの固定部の強度を増大し、しかも、簡単な作業でラッシングフックの抜け止め及び交換を行うことが可能な取り付け構造を提供して、上述の問題点を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題に鑑み、本発明は、ラッシングフックの脚部の下方部分に断面拡大部を形成し、かつ、フロアサイドレール等装着用部材の下面に当接するロックプレートを置いてラッシングフックの固定部の補強を図るとともに、断面拡大部を係止する抜け止め孔をロックプレートに設け、ロックプレートをスライドしてラッシングフックの装着及び抜け止めを行うものである。すなわち、本発明は、
「貨物輸送用車両の荷台において、荷台の床部に固定された装着用部材に取り付けられるラッシングフックの取り付け構造であって、
前記ラッシングフックは、貨物の緊縛用ロープ等を掛け止めする掛け止め部と、前記掛け止め部から下方に延びる脚部を備え、
前記脚部の下方部分には、上方よりも断面が拡大された断面拡大部が形成され、
前記装着用部材には、前記脚部の断面拡大部が通過可能な挿入孔が形成されており、さらに、
前記装着用部材の下面に当接する板状のロックプレートが設けられ、前記ロックプレートには、前記脚部の断面拡大部が通過可能な通過孔と、前記脚部の断面拡大部の上方のみが通過可能な抜け止め孔とが連続して形成されており、
前記脚部の断面拡大部を、前記装着用部材の挿入孔及び前記ロックプレートの通過孔を通過させて挿入した後、前記ロックプレートを移動し、前記脚部の断面拡大部の上方を前記抜け止め孔に嵌め込んだ状態で、前記ロックプレートを前記装着用部材の下面に固着する」ことを特徴とするラッシングフックの取り付け構造となっている。
ここで、前記装着用部材は、請求項2に記載のように、床部の横方向両端部に固定されたフロアサイドレールとすることができる。
【0013】
請求項3に記載のように、前記ラッシングフックが、水平棒体の前記掛け止め部及び平行な2本の前記脚部を備えるものであるときは、前記ロックプレートには、前記2本の脚部に対応する位置に通過孔及び抜け止め孔の組をそれぞれ形成し、かつ、2組の孔の中間には、前記ロックプレートを前記装着用部材の下面に固着する固着具を設けるよう構成することができる。
【0014】
請求項4に記載のように、前記脚部の断面拡大部が、前記脚部の下方部分を屈曲させた屈曲部を備え、前記屈曲部の上面は前記ロックプレートの下面に当接する平面となっていることが好ましい。
【0015】
請求項5に記載のように、前記ロックプレートに形成される前記通過孔を、前記ロックプレートの端部に開口させることができる。
【0016】
そして、請求項6に記載のように、前記ロックプレートに垂直下方に曲げられた垂直部を形成し、前記垂直部に、前記ラッシングフックの脚部を収容し、かつ、前記ロックプレートの下方側を密封する収容体を取り付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のラッシングフックは、脚部の下方部分に断面拡大部を形成するとともに、フロアサイドレール等の装着用部材の下面にロックプレートを当接し、これに断面拡大部を係止する抜け止め孔を設けてラッシングフックの抜け止めを行うものである。ロックプレートには、断面拡大部が通過可能な通過孔が抜け止め孔と連続して形成してあり、この通過孔を通して断面拡大部を下方に移動した後、ロックプレートをスライドさせ、ラッシングフックの脚部における断面拡大部の上側を抜け止め孔に嵌め込み、ラッシングフックを装着用部材に取り付ける。
ラッシングフックを取り付ける装着用部材には、車両走行中の加減速等に伴い貨物に働く慣性力により大きな荷重が作用するが、本発明の取り付け構造では、装着用部材の下面にロックプレートを当接しており、このロックプレートを介してラッシングフックの荷重が装着用部材に作用する。つまり、ロックプレートがいわば補強板となって、ラッシングフックの脚部を挿入する装着用部材の挿入孔の周辺に直接的な荷重が掛かることはない。また、ロックプレートにより、ラッシングフックに働く荷重が分散して支持され、挿入孔の周辺の損傷が防止されるなど、装着部分の耐荷重性能が向上する。
【0018】
ラッシングフックを取り付けるには、ラッシングフックの脚部の断面拡大部を、ロックプレートに設けた通過孔を貫通させた後、ロックプレートを横にスライドする。こうすると、断面拡大部の上側が抜け止め孔に嵌まり込み、この状態でロックプレートを装着用部材の下面に固着することにより、ラッシングフックを簡単に装着できる。破損等の生じたラッシングフックを交換するには、ロックプレートの固着を外した後に装着時と逆方向にスライドすると取り外しが可能となり、特殊な工具等を用いることなくラッシングフックの着脱作業を行うことができる。ロックプレートは、板状材料に抜け止め孔及び通過孔を加工し、固着手段を設けた単純な部品であり、低廉なコストで製造できる。
請求項2の発明は、床部の横方向両端部に固定されたフロアサイドレールを装着用部材として用いるものである。フロアサイドレールは既存の部品であるので、上記のロックプレートの補強作用やコスト低減の利点が、より一層効果的に発揮されることとなる。
【0019】
請求項3の発明は、水平棒体の掛け止め部及び平行な2本の脚部を備えたラッシングフックに対して本発明を適用するものである。この場合、ロックプレートには、2本の脚部に対応する位置に通過孔及び抜け止め孔の組をそれぞれ形成し、かつ、これら2組の孔の中間に、装着用部材の下面に固着する固着具を設ける。このようなロックプレートを使用することにより、2本の脚部の抜け止めを同時に行うことが可能となり、ラッシングフックの取り付け作業の工数を低減できる。
【0020】
請求項4の発明は、ラッシングフックの脚部の下方部分を屈曲させて屈曲部を形成して断面拡大部とし、屈曲部の上面を平面としてロックプレートの下に当接するものである。これにより、ラッシングフックに簡単に断面拡大部を形成できるとともに、ラッシングフックの荷重が、屈曲部の上面から分散されながらロックプレートに伝達され、ロックプレートの補強板としての機能がより確実なものとなる。
【0021】
請求項5の発明のように、ラッシングフックの装着時に断面拡大部を通過させる通過孔を、ロックプレートの端部に開口させるように形成したときは、ロックプレートの長さを極力小さなものとし、ラッシングフックの装着のために要するスペースも小さくすることが可能となる。
【0022】
請求項6の発明は、ロックプレートに垂直下方に曲げられた垂直部を形成し、この垂直部に、ラッシングフックの脚部を収容し、かつ、ロックプレートの下方側を密封する収容体を取り付けるものである。こうした収容体を取り付けると、ラッシングフックの脚部と装着用部材の挿入孔との間隙から雨水等が侵入(水上がり)し、積載した貨物が水濡れを起こすのを防ぐことが可能となる。このとき、請求項6の発明では、ロックプレートに形成した垂直部に収容体を固定しているので、フロアサイドレール等の装着用部材には何ら収容体の固定手段を設ける必要はない。特許文献1のような収容体の固定方法と比較すると、収容体の着脱作業は非常に容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ラッシングフックのフロアサイドレール(装着用部材)への取り付け構造を示す本発明の全体図である。
【図2】ラッシングフック及びロックプレートの単品図である。
【図3】本発明のロックプレートの装着方法を示す図である。
【図4】ラッシングフックの従来の取り付け構造の一例を示す図である。
【図5】ラッシングフックの従来の取り付け構造の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明のラッシングフックの取り付け構造について説明するが、ラッシングフックの使用目的あるいは設置場所等は、図4に示す従来技術のラッシングフックと格別変わるわけではなく、以下の図面において、図4の部品等に対応するものについては同一の符号を付している。
【0025】
図1は、ラッシングフック1を、装着用部材であるフロアサイドレール3に設置した本発明の取り付け構造の1実施例を示す図であり、図1(a)(b)の右図では、フロアサイドレール3の前面を切除して示している。図1(a)は、ラッシングフック1を使用しないときにフロアサイドレール3の下側に落し込んだ状態を表し、図4(c)の左図に対応する。図1(b)は、緊縛用のロープ等の掛け止めを行うため、ラッシングフック1を上方に引き出した状態を表し、図4(c)の右図に対応するものである。なお、図1は、ラッシングフック1のフロアサイドレール3への取り付け部分のみを示した図であるが、本発明においても、図4(a)と同様に、床面に積載された貨物が緊縛用ロープにより固定され、図4(b)と同様に、ラッシングフックによるロープの掛け止めが行われる。
【0026】
図1(a)(b)から分かるように、この実施例におけるラッシングフック1は、基本的には図4のものと同様な形態であって、ロープを掛け止めする水平棒体11と2本の脚部12を備えている。フロアサイドレール3の断面形状はほぼコ字状となっており、2個の挿入孔31が開けられるとともに、上面には突起部32が形成されている。ラッシングフック1の2本の脚部12は、挿入孔31にそれぞれ挿入される。
【0027】
そして、フロアサイドレール3の上面部の下面には、本発明のロックプレート5が、下面に当接するように配置してあり、図1(a)(b)の右図に示すとおり、ロックプレート5のほぼ中央部がボルト等の固着具6によりフロアサイドレール3の下面に固着されている。ロックプレート5は、主に、ラッシングフック1の抜け止めの機能を果たすものであり、その装着方法等の詳細については後述する。ロックプレート5には、その端部に垂直下方に曲げられた垂直部51が形成されており、垂直部51に、2点鎖線で示される箱状の収容体14がねじ、ブラインドリベット等の締結具15により取り付けられている。収容体14は、合成樹脂製の成形体であって、ラッシングフック1をフロアサイドレール3の下方に落し込んだときに、脚部12を収容するとともに、ロックプレート5の下方側を密封し、ラッシングフック1の脚部12とフロアサイドレール3の挿入孔31との間隙から水上がりが起こるのを防止する。
【0028】
本発明におけるラッシングフック1及びロックプレート5の単品図を、図2の(a)、(b)にそれぞれ示す。
図2(a)の左図に示されるとおり、ラッシングフック1の脚部12は円形断面であって、その軸線Oが脚部12の中間で屈曲している。両方の脚部12の下方部分には、直角に近い角度で折れ曲がる曲がり部が形成され、この部分は、図2(a)右図において、左右方向の幅は上方と同一であるが手前方向に張り出している。そのため、軸線Oと直交する断面には円形断面より膨出する部分が存在して、この部分は、断面が拡大する断面拡大部12Lとなっている。断面拡大部12Lの上側には、平面12Pが形成される。
【0029】
ロックプレート5は、図2(b)に示されるとおり、断面において直角に曲げられた垂直部51を端部に備えた、ほぼ長方形の板状の部材である。ロックプレート5には、幅の広い部分と幅の狭い部分とを連続して有する孔52が2個設けてある。2個の孔52は、角形の幅の広い部分が、ラッシングフック1の脚部12の断面拡大部12Lが通過可能な通過孔52Wとして、幅の狭い部分が、脚部12の断面拡大部12Lの上方のみが通過可能な抜け止め孔52Nとして機能するように、ラッシングフック1の2本の脚部12の位置に対応するよう形成されたものである。換言すると、ロックプレート5は、2組の通過孔52W及び抜け止め孔52Nを、ラッシングフック1の2本の脚部12に対応する位置に備えている。また、ロックプレート5の中央部の裏側には、フロアサイドレール3の下面に固着するためのボルトを嵌め込む4角形のナット53が溶接されている。
なお、ロックプレート5の変形例である図2(c)に示すように、断面拡大部12Lを通過させる通過孔52Wの一方を、ロックプレートの端部に開口させるように形成することもできる。こうすると、ロックプレート5の長さを極力小さなものとすることが可能となり、ラッシングフック1にロックプレート5を取り付けるために要するスペースも小さくなる。
【0030】
ここで、ロックプレート5をラッシングフック1に嵌め込んで抜け止めを行うための装着方法について、図3により説明する。図3は、フロアサイドレール3の下方からラッシングフック1の脚部12の先端を見た斜視図である。
ラッシングフック1をフロアサイドレール3に取り付けるときは、図3(a)に示すように、ロックプレート5を、フロアサイドレール3の下面に接するように、また、フロアサイドレール3の孔31が通過孔52Wと一致するように位置させる。この状態でラッシングフック1の脚部12をフロアサイドレール3の挿入孔31に挿入すると、脚部12の断面拡大部12Lは通過孔52Wを通過して下降し、図3(b)に示すように、ロックプレート5は、断面拡大部12Lの上方に位置するようになる。
【0031】
そして、断面拡大部12Lの上方に位置するロックプレート5を、図3(b)の矢印方向にスライドさせ移動すると、ロックプレート5の抜け止め孔52Nがラッシングフック1の脚部12に嵌り込み、ロックプレート5の中央孔が、フロアサイドレール3の2個の挿入孔31の中央に設けた固着用の孔と一致する。断面拡大部12Lは抜け止め孔52Nを通過できないため、ラッシングフック1の抜け止めが行われ、この状態でロックプレート5が固着具6でフロアサイドレール3に固定されて、図1に示す状態となる。
【0032】
本発明の取り付け構造では、フロアサイドレール3の下面にロックプレート5を当接しており、ロックプレート5が補強板となって、ラッシングフック1の荷重がフロアサイドレール3の挿入孔31の周辺に直接的に作用することはない。特に、断面拡大部12Lの上側に平面12Pを形成したときは、平面12Pとロックプレート5との接触面積が大きくなり(図2(b)52N部分の破線参照)、ラッシングフック1に働く荷重が十分に分散して支持されることになる。
【0033】
破損したラッシングフック1を交換するには、ロックプレート5の固着具6を外した後に、装着時と逆方向にスライドするとラッシングフック1の取り外しが可能となる。このように、本発明の取り付け構造では、特殊な工具等を用いることなくラッシングフック1の着脱作業を容易に行うことができる。また、図1等に例示したラッシングフック1は、2本の脚部12を備えたものであるが、ロックプレートに1組のみの通過孔及び抜け止め孔と、固着用の孔とを設けることにより、本発明の取り付け構造を、1本の脚部を備えたラッシングフックに対して適用することも可能である。
【0034】
以上詳述したように、本発明は、ラッシングフックの脚部の下方部分に断面拡大部を形成し、かつ、フロアサイドレール等装着用部材の下面に当接するロックプレートを置いてラッシングフックの固定部の補強を図るとともに、断面拡大部を係止する抜け止め孔をロックプレートに設け、ラッシングフックの装着及び抜け止めを行うものである。上述の実施例では、ラッシングフックの断面拡大部を、脚部の下方部分を曲げることにより形成しているが、断面の一部が張り出し抜け止め孔を通過できないものであれば、その他の形状を採用できることは言うまでもない。また、緊縛用ロープ等の掛け止め部として鉤形のフックを用いるなど、実施例に対して各種の変形が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 ラッシングフック
11 水平棒体
12 脚部
12L 断面拡大部
14 収容体
3 フロアサイドレール(装着用部材)
31 挿入孔
5 ロックプレート
51 垂直部
52 孔の組(52W:通過孔、52N:抜け止め孔)
53 ナット
6 固着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物輸送用車両の荷台において、荷台の床部に固定された装着用部材に取り付けられるラッシングフックの取り付け構造であって、
前記ラッシングフックは、貨物の緊縛用ロープ等を掛け止めする掛け止め部と、前記掛け止め部から下方に延びる脚部を備え、
前記脚部の下方部分には、上方よりも断面が拡大された断面拡大部が形成され、
前記装着用部材には、前記脚部の断面拡大部が通過可能な挿入孔が形成されており、さらに、
前記装着用部材の下面に当接する板状のロックプレートが設けられ、前記ロックプレートには、前記脚部の断面拡大部が通過可能な通過孔と、前記脚部の断面拡大部の上方のみが通過可能な抜け止め孔とが連続して形成されており、
前記脚部の断面拡大部を、前記装着用部材の挿入孔及び前記ロックプレートの通過孔を通過させて挿入した後、前記ロックプレートを移動し、前記脚部の断面拡大部の上方を前記抜け止め孔に嵌め込んだ状態で、前記ロックプレートを前記装着用部材の下面に固着することを特徴とするラッシングフックの取り付け構造。
【請求項2】
前記装着用部材が、床部の横方向両端部に固定されたフロアサイドレールである請求項1に記載のラッシングフックの取り付け構造。
【請求項3】
前記ラッシングフックが、水平棒体の前記掛け止め部及び平行な2本の前記脚部を備えるとともに、前記ロックプレートには、前記2本の脚部に対応する位置に通過孔及び抜け止め孔の組がそれぞれ形成され、かつ、2組の孔の中間には、前記ロックプレートを前記装着用部材の下面に固着する固着具が設けられる請求項1又は請求項2に記載のラッシングフックの取り付け構造。
【請求項4】
前記脚部の断面拡大部が、前記脚部の下方部分を屈曲させた屈曲部を備え、前記屈曲部の上面は前記ロックプレートの下面に当接する平面となっている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のラッシングフックの取り付け構造。
【請求項5】
前記ロックプレートに形成される前記通過孔が、前記ロックプレートの端部に開口している請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のラッシングフックの取り付け構造。
【請求項6】
前記ロックプレートには垂直下方に曲げられた垂直部が形成され、前記垂直部に、前記ラッシングフックの脚部を収容し、かつ、前記ロックプレートの下方側を密封する収容体が取り付けられる請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のラッシングフックの取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−41016(P2012−41016A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186265(P2010−186265)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)