説明

ラッチ錠

【課題】簡単な構造で扉を閉める際に確実に固定側に係止することができるラッチ錠を提供する。
【解決手段】一対のラッチ部材32,124と、一対のラッチ部材32,124を突出方向に付勢させるラッチ部材戻しバネ40,134と、一対のラッチ部材32,124をラッチ戻しバネ40,134に抗して、ハンドル操作により後退させる回転カム70を有する。回転カム70に当接して回転を止める回転ブロック52と、回転ブロック52が回転カム70に当接する位置と退避した位置との間での移動の抵抗となるダンパー68を備える。回転ブロック52のダンパー68と反対側に取付けられ、ラッチ部材32,124と平行にケース本体12から突出するトリガー46を有する。トリガー46が回転ブロック52から離れる方向へ、ダンパー68の復帰バネよりも強い力で付勢するトリガー戻しバネ61を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揺動する扉の開放端に取付けられ、柱や固定扉等に扉を保持するラッチ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、揺動扉に取り付けられ揺動扉を枠等の固定側に対して両側方向に開くことができるラッチ錠がある。特許文献1に開示されているラッチ錠は、固定側に取り付けるラッチ受け部材と、揺動扉側に取付ける突没自在で且つ一対となる少なくとも2つのラッチ部材とを備え、ラッチ受部材には一対のラッチ部材にそれぞれ対応してラッチヘッド収容部が設けられている。一方のラッチヘッド収容部には、扉の揺動方向左側にラッチ係止部が設けられ、他方のラッチヘッド収容部には、扉の揺動方向右側にラッチ係止部が設けられている。ラッチヘッドの形状は、ラッチ係止部に当接係止する係止面部とラッチ係止部に当接して没入する傾斜面部とからなる略直角三角形に形成されている。一対のラッチ部材のラッチヘッドは、係止面部がそれぞれ係止部側に位置して相互に対称に形成されている。
【特許文献1】特開2006−233462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の技術の場合、揺動扉を固定側に閉じるとき、ハンドル操作をして一対のラッチヘッドが後退した状態で閉めると、扉が固定側を通り越して反対側へ開くことがあった。これにより、扉を閉めたつもりで開いていたり、また扉を戻して閉め直す手間がかかることがあった。ハンドル操作をせずにラッチヘッドが突出した状態で閉めると、扉が固定側に近づいたときにラッチヘッドがラッチ係止部に押されて後退し、ラッチヘッド収容部に一致したときに突出し、確実に係止されるが、知らずにハンドル操作をすると、扉が固定側を通過してしまうこともあった。
【0004】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で扉を閉める際に確実に固定側に係止することができるラッチ錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、揺動する扉の開放端付近に設けられたケース本体と、上記ケース本体から突出する一対のラッチ部材と、前記一対のラッチ部材を突出方向に付勢させるラッチ部材戻しバネと、前記一対のラッチ部材を前記ラッチ戻しバネに抗して後退させる回転カムと、前記回転カムに連結されたハンドル部材と、前記回転カムに当接して回転を止める回転ブロックと、前記回転ブロックが前記回転カムに当接する位置と退避した位置との間での移動の抵抗となるダンパーと、前記回転ブロックの前記ダンパーと反対側に取付けられ前記ラッチ部材と平行に前記ケース本体から突出するトリガーと、前記トリガーが前記回転ブロックから離れる方向へ前記ダンパーの復帰バネよりも強い力で付勢するトリガー戻しバネが設けられ、前記扉の開放端が対面する部材には、前記一対のラッチ部材を収容する凹部であるラッチ部材収容部と、前記トリガーが前記トリガー戻しバネに抗して後退した状態で当接するトリガー当接突起が設けられているラッチ錠である。
【0006】
また、前記ラッチ部材は、前記扉の揺動方向にほぼ直角に対面する当接面と、前記当接面の先端に連続し先端から離れるに従い前記当接面からの距離が長くなる傾斜面が設けられ、前記一対のラッチ部材は、前記当接面と前記傾斜面が前記扉の揺動方向の反対側に設けられている。
【0007】
前記ラッチ錠は、前記扉が開いている状態では前記トリガーが突出して前記トリガー戻しバネと前記ダンパーが圧縮されない状態となり、前記回転ブロックが前記回転カムに当接され、前記回転カムの回転を防ぐ。これにより前記一対のラッチ部材は突出した状態に維持され、前記扉を閉じるときに前記ラッチ部材が付勢されて突出しているため、前記ラッチ部材収容部に差し込まれ、閉鎖される。
【0008】
前記ラッチ錠は、前記扉が閉められた直後では、前記トリガーが前記トリガー当接突起に当接し、先ず弾性変形が容易なコイルバネであるトリガー戻しバネが圧縮され、後退する。このとき、ダンパーは圧縮に時間がかかるため、前記回転ブロックは前記回転カムに当接した状態が維持され、前記回転カムの回転を防ぐ。これにより、ハンドルを操作することができず、ラッチは突出した状態に維持され、確実に前記ラッチ部材収容部に差し込まれ閉鎖される。
【0009】
前記ラッチ錠は、前記扉が閉められて一定時間が経過した後、前記トリガーが前記トリガー戻しバネの復元力に押されて圧縮される。これに伴い、前記回転ブロックが移動して前記回転カムから離れ、前記回転カムは回転可能となる。これにより、ハンドルを操作することが可能となり、ラッチヘッドを後退させて前記ラッチ部材収容部との係合を解除して、前記扉を開く。
【0010】
また、前記トリガーは、中央部分が先端に位置する突出部であり、前記突出部の前記扉の揺動方向の両側には傾斜面が設けられて二等辺三角形状に形成され、前記トリガー当接突起は、中央部分が先端に位置する当接面であり、前記当接面の前記扉の揺動方向の両側には傾斜面が設けられて台形状に形成されている。前記扉が閉じられる途中で、前記トリガーの一対の前記傾斜面のいずれか一方は前記トリガー当接突起の一方の前記傾斜面に当接し、前記トリガーは前記トリガー戻しバネに抗して徐々に後退する。そして、前記扉が閉じられたとき、前記トリガーの突出部が前記トリガー当接突起の当接面に当接し、前記トリガーが後退した状態となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のラッチ錠は、簡単な構造で、扉を閉める位置に対して両方向に扉を開閉することができ、扉を閉めるときに、閉める位置を不用意に通過して反対側へ開くことを防ぎ、扉を確実に閉めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図8はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のラッチ錠10は、揺動する扉に取付けられる箱体であるケース本体12が設けられ、ケース本体12は四角形の側面部14と、側面部14の3辺に形成され側面部14に対してほぼ直角に連続する壁部16が設けられている。ケース本体12の、壁部16が設けられていない一辺には、扉の自由端の端面に面一に取付けられる端面部18が設けられている。端面部18は、扉に取り付けた状態で垂直方向に長く形成され、側面部14に沿って上方から順に、透孔である第一ラッチ部材挿通口20、トリガー挿通口22、第二ラッチ部材挿通口24が、端面部18を貫通して設けられている。トリガー挿通口22は、下方の第二ラッチ部材挿通口24に近い位置に設けられている。なお、壁部16は、端面部18に交差する上方が壁部16a、下方が壁部16bとし、端面部18に対して平行な部分を壁部16cとする。端面部18は壁部16a,16bよりも少し外側に突出し、突出した部分には取付用の透孔19がそれぞれ設けられている。
【0013】
また、端面部18の内側面には、端面部18に交差する壁部16a,16bとの角部である2箇所と、第一ラッチ部材挿通口20とトリガー挿通口22の間の1箇所に、厚肉の部分が形成されそこに側面部14に対してほぼ直角に貫通するネジ穴26が各々形成されている。また、端面部18に対して平行に位置する壁部16cの2箇所にも、肉厚の部分が形成されそこにネジ穴26が設けられている。
【0014】
側面部14の内側面には、第一ラッチ部材挿通口20の近傍で少し側面部14の中心寄りの位置に、第一保持突起28が形成されている。第一保持突起28には、図示しないハンドルの取付部材を取り付ける透孔29が、側面部14を貫通して形成されている。壁部16aの、第一保持突起28よりも壁部16cに近い部分には第一軸受け部30が設けられている。第一軸受け部30は、壁部16aの内側面からほぼ直角に突出している。第一ラッチ部材挿通口20の内周面には、筒状のラッチガイド31が嵌合されて設けられている。
【0015】
第一ラッチ部材挿通口20には、ラッチガイド31の内側に、第一ラッチ部材32が突没可能に設けられている。第一ラッチ部材32は、断面が矩形の棒状の本体34が設けられ、本体34は壁部16aに対して平行にセットされ、本体34の、第一ラッチ部材挿通口20側の端部は、ラッチヘッド部36が一体に形成されている。ラッチヘッド部36は、取付状態で垂直方向に一定の断面形状であり、水平方向の断面形状は、図3Aに示すように、側面部14に近い部分が側面部14に対して平行な当接面36aであり、側面部14と反対側の部分が当接面36aの先端に連続し当接面36aに対して鋭角に交差する傾斜面36bとなっている。本体34の、ラッチヘッド部36と反対側の端部は二股に分岐して壁部16cに向かって延出し、壁部16aに近い部分は円柱形状の軸部38が形成され、軸部38の先端にはフランジ部39が一周して形成されている。軸部38は、壁部16aの第一軸受け部30に摺動可能に保持され、フランジ部39は第一軸受け部30の外側に位置している。軸部38には、コイルバネである第一ラッチ部材戻しバネ40が巻き回されて設けられている。第一ラッチ部材戻しバネ40は、本体34の端部と第一軸受け部30の間で適度に圧縮され、第一ラッチ部材32を第一ラッチ部材挿通口20の外側へ向かって付勢している。第一ラッチ部材32は軸部38のフランジ部39が第一軸受け部30に係止されるため、第一ラッチ部材挿通口20から外側へ外れることがない。第一ラッチ部材32の、分岐された他方の部分は、後述する第一連動カム100が差し込まれる凹部42が壁部16aの反対側に開口して形成され、凹部42の本体34と離れた部分の内周面は、第一連動カム100が当接する板部44となっている。
【0016】
トリガー挿通口22には、トリガー46が突没可能に設けられている。トリガー46は、取付状態で垂直方向に一定の断面形状であり、水平方向の断面形状は、図3Bに示すように、中央部分が先端に位置する突出部46aであり、突出部46aの側面部14側に連続する傾斜面46bと反対側に連続する傾斜面46cが設けられて二等辺三角形状に形成されている。なお、トリガー46は垂直方向の長さはラッチヘッド部36よりも短く形成されている。トリガー46の突出部46aと反対側の端部には、下方に突出する板部48が設けられ、板部48には後述するコイルバネであるトリガー戻しバネ61が嵌合される円筒形の凹部50が設けられている。
【0017】
トリガー46の突出部46aと反対側の近傍には、回転ブロック52が取り付けられている。回転ブロック52は、トリガー46の突出方向に対して平行な保持板54が設けられている。保持板54のトリガー46側の端部には、トリガー46の板部48の外側に重ねられる係止突部56が設けられ、保持板54の反対側の端部には矩形のブロック部58が設けられている。ブロック部58には、後述するトリガー戻しバネ61の内側に嵌合される軸部60が設けられている。トリガー46の板部48と、回転ブロック52の保持板54、ブロック部58で囲まれた空間には、トリガー戻しバネ61が取り付けられている。トリガー戻しバネ61の一端部は、トリガー46の板部48の凹部50に差し込まれ、他端部は回転ブロック52のブロック部58の軸部60が差し込まれ、トリガー46とブロック部58の間で適度に圧縮され、トリガー46をトリガー挿通口22の外側へ向かって付勢している。トリガー46は、板部48が回転ブロック52の係止突部56に係止されるため、トリガー挿通口22から外側へ外れることがない。
【0018】
ブロック部58の、ケース本体12の壁部16a側の上面には、後述する回転カム70に当接して回転をブロックする当接凹凸部62が形成されている。ブロック部58の、保持板54と反対側の端部、つまり壁部16c側の端部には、側面部14に近い部分に厚みが薄いロッド取付部64が一体に設けられている。なお、側面部14の内側面には、第二ラッチ部材挿通口24の近傍で少し側面部14の中心寄りの位置に、第一保持突起28と対称形状の第二保持突起53が形成され、第二保持突起53には、図示しないハンドルの取付部材を取り付ける透孔55が、側面部14を貫通して形成されている。そして、回転ブロック52の壁部16b側の下面は、第二保持突起53に摺動可能に当接し、保持されている。
【0019】
回転ブロック52の、ロッド取付部64にはロッド66が連結され、ロッド66の先端にはダンパー68が設けられている。ダンパー68とロッド66は、トリガー46の突出方向に対して平行に設けられ、ダンパー68のロッド66と反対側の端部は、壁部16cに当接されている。なお、側面部14にはダンパー68を嵌合する保持部69が設けられ、ダンパー68は保持部69に嵌合されて保持されている。
【0020】
側面部14には、中心よりも少し端面部18に近い部分で、第一ラッチ部材32と回転ブロック52の間に、図示しない円形の透孔が設けられ、この透孔に回転可能に回転カム70が設けられている。回転カム70は、円形の透孔に嵌合される短い円柱状の軸部72が設けられ、軸部72の中心に四角柱の挿通孔74が軸部72の軸方向に沿って貫通して形成されている。挿通孔74には図示しないハンドルの四角柱状の回転軸が挿通される。
【0021】
回転カム70には、回転ブロック52のブロック部58に形成された当接凹凸部62に当接する当接突起76が設けられている。当接突起76は、挿通孔74よりも端面部18に近い位置に形成され、挿通孔74を中心軸として図2において反時計回りの接線方向に、つまり壁部16aから壁部16bに向かう方向に突出し、当接凹凸部62に当接している。
【0022】
回転カム70の挿通孔74の上方、つまり壁部16aに近い位置には、挿通孔74を中心軸としてほぼ放射方向に、第一ラッチ部材挿通口20付近に向かって押し部78が延出して形成されている。なお、端面部18のトリガー挿通口22の上端縁部の内側には、回転カム70に向かって突出するバネ保持部80が設けられ、バネ保持部80には、押し部78と対向する面に後述する回転カム戻しバネ86が嵌合される円筒形の凹部82が設けられている。押し部78の、バネ保持部80と対面する面には、後述する回転カム戻しバネ86の内側に嵌合される軸部84が設けられている。
【0023】
端面部18のバネ保持部80と、回転カム70の押し部78の間には、回転カム戻しバネ86が取り付けられている。回転カム戻しバネ86はコイルバネであり、一端部は端面部18のバネ保持部80の凹部82に差し込まれ、他端部は回転カム70の押し部78の軸部84が差し込まれ、バネ保持部80と押し部78の間で適度に圧縮され、回転カム70を図2において挿通孔74を中心とする時計回りに付勢している。
【0024】
押し部78の基端部には、時計回り側に、L字形に切り欠かれて設けられた当接面88が設けられている。なお、側面部14には、当接面88に対面する係止突起90が設けられている。回転カム70は、当接面88が係止突起90に係止されるため、所定角度で回転が止められている。
【0025】
回転カム70の、挿通孔74よりも壁部16cに近い位置には、挿通孔74を中心軸としてほぼ放射方向に、回転突起92が壁部16cに向かって略水平方向に延出して形成されている。回転突起92は、幅広の矩形に形成され、上下に位置する一対の角部は面取りされ、上方の角部は後述する第一連動カム100に当接して回転させる操作部94となる。
【0026】
側面部14の、回転カム70と壁部16cの間には、側面部14に対してほぼ直角に突出する円柱状の軸部96,98が設けられ、軸部96は回転カム70の回転突起92の操作部94近傍に設けられ、軸部98は、軸部96の下方、つまり壁部16bに近い位置に設けられている。
【0027】
軸部96には、第一連動カム100が設けられている。第一連動カム100は、側面部14に対して平行な形状が略V字形に形成され、交差する中心部に透孔が形成され軸部96に挿通されて軸止されている。第一連動カム100の、軸部96近傍の側周面には、部分的に歯車部114が設けられている。
【0028】
第一連動カム100の一方の端部は第一ラッチ部材32に向かって延出する操作突起102が形成されている。操作突起102の先端は、第一ラッチ部材32の凹部42に差し込まれ、板部44に対面する部分が板部44側に僅かに膨出している。操作突起102の基端部付近は、回転カム70の回転突起92に向かって膨出し回転突起92の基端部に当接する係止突起103となっている。係止突起103よりも軸部96に近い位置で操作部94に対向する部分は、操作部94を僅かなゆとりを有して嵌合する操作凹部104が形成されている。
【0029】
第一連動カム100の、他方の端部は、壁部16cに向かって延出する押し部106が形成されている。なお、壁部16cの押し部106よりも下方の位置には、側面部14中心に向かって突出するバネ保持部108が設けられ、バネ保持部108には、第一連動カム100の押し部106と対向する面に、後述する第一連動カム戻しバネ116が嵌合される円筒形の凹部110が設けられている。押し部106の、バネ保持部108と対面する面には、後述する第一連動カム戻しバネ116の内側に嵌合される軸部112が設けられている。
【0030】
壁部16cのバネ保持部108と、第一連動カム100の押し部106の間には、第一連動カム戻しバネ116が取付けられている。第一連動カム戻しバネ116はコイルバネであり、一端部は壁部16cのバネ保持部108の凹部110に差し込まれ、他端部は第一連動カム100の押し部106の軸部112が差し込まれ、バネ保持部108と押し部106の間で適度に圧縮され、第一連動カム100を図2において軸部96を中心とする反時計周りに付勢している。第一連動カム100は、係止突起103が回転カム70に当接して係止され、所定角度で回転が止められている。
【0031】
第一連動カム100の下方には、第二連動カム118が設けられている。第二連動カム118は、側面部14に対して平行な形状が略V字形に形成され、一端部に透孔が形成され軸部98に挿通されて軸止されている。
【0032】
第二連動カム118は、軸部98に軸止された端部から、回転カム70の下方へ向かって斜めに延出し、回転カム70の回転突起92を通過した付近で折り曲げられて壁部16bに向かい、ダンパー68とロッド66を通過して、後述する第二ラッチ部材124に向かって延出し、先端部は操作突起120となる。操作突起120は、後述する第二ラッチ部材124の凹部136に差し込まれ、先端は僅かに外側に膨出している。第二連動カム118の、軸部98近傍の側周面には、第一連動カム100の歯車部114に組み合わされる歯車部122が設けられている。第二連動カム118は、歯車部122が第一連動カム100の歯車部114に組み合わされて係止され、所定角度で回転が止められている。また、第一連動カム100が回転するときは、それに伴い第二連動カム118も回転する。
【0033】
壁部16bには、壁部16aの第一軸受け部30に対向する位置に、第二軸受け部123が設けられている。第二軸受け部123は、壁部16bの内側面からほぼ直角に突出している。第二ラッチ部材挿通口24の内周面には、第一ラッチ部材挿通口20と同様に筒状のラッチガイド31が嵌合されて設けられている。
【0034】
第二ラッチ部材挿通口24には、ラッチガイド31の内側に、第二ラッチ部材124が突没可能に設けられている。第二ラッチ部材124は、断面が矩形の棒状の本体126が設けられ、本体126は壁部16bに対して平行にセットされ、本体126の、第二ラッチ部材挿通口24側の端部は、ラッチヘッド部128が一体に形成されている。ラッチヘッド部128は、取付状態で垂直方向に一定の断面形状であり、水平方向の断面形状は、図3Cに示すように、側面部14と反対側の部分が側面部14に対して平行な当接面128aであり、側面部14と反対側の部分が当接面128aの先端に連続し当接面128aに対して鋭角に交差する傾斜面128bとなっている。本体126の、ラッチヘッド部128と反対側の端部は二股に分岐して壁部16cに向かって延出し、壁部16bに近い部分は円柱形状の軸部130が形成され、軸部130の先端にはフランジ部132が一周して形成されている。軸部130は、壁部16bの第二軸受け部123に摺動可能に保持され、フランジ部132は第二軸受け部123の外側に位置している。軸部130には、コイルバネである第二ラッチ部材戻しバネ134が巻き回されて設けられている。第二ラッチ部材戻しバネ134は、本体126の端部と第二軸受け部123の間で適度に圧縮され、第二ラッチ部材124を第二ラッチ部材挿通口24の外側へ向かって付勢している。第二ラッチ部材124は軸部130のフランジ部132が第二軸受け部123に係止されるため、第二ラッチ部材挿通口24から外側へ外れることがない。第二ラッチ部材124の、分岐された他方の部分は、第二連動カム118が差し込まれる凹部136が壁部16bと反対側に開口して形成され、凹部136の本体126と離れた部分の内周面は、第二連動カム118が当接する板部138となっている。
【0035】
ラッチ錠10のケース本体12には、壁部16と端面部18で囲まれた開口部を覆う蓋部材140が設けられている。蓋部材140は、ケース本体12の開口部を閉鎖する一枚の板体であり、ケース本体12のネジ穴26に連通する透孔142が5個設けられている。また、回転カム70の軸部72が回転可能に嵌合される円形の透孔144が設けられている。透孔144の上下の位置には、ケース本体12の第一保持突起28の透孔29と、第二保持突起53の透孔55に連通する透孔146,148が形成されている。蓋部材140の内側面には、ケース本体12の第一保持突起28、第二保持突起53、第一軸受け部30、第二軸受け部123等に対向する突起が適宜形成されている。蓋部材140は、透孔142に図示しないネジを差し込んでケース本体12に固定されている。また、側面部14と蓋部材140の透孔144には回転カム70の軸部72が露出し、軸部72の挿通孔74に図示しない軸部材が嵌合されて挿通され、この軸部材に図示しない操作用のハンドルが取り付けられている。
【0036】
ラッチ錠10は、このように組み立てられ、揺動する扉の開放端に取付けられる。開放端の端面に、ケース本体12の端面部18が面一となるように埋め込み、透孔19にネジなどを差し込んで固定する。ラッチ錠10は、上下を逆にして取付けてもよい。
【0037】
ラッチ錠10が取付けられた扉が閉められる柱や固定扉等には、ラッチ受け部材150が取付けられている。ここでラッチ受け部材150について説明する。ラッチ受け部材150は、取付状態で上下方向に長い矩形のブロック体であり、上下の端部近傍には取付用の透孔152が各々形成されている。ラッチ受け部材150の上下方向の中心部分には、トリガー当接突起154が一体に形成されている。トリガー当接突起154は、垂直方向に一定の断面形状であり、水平方向の断面形状は、中央部分が外側に突出し突出方向に直角で垂直方向に長く形成されている当接面154aである。当接面154aの図1において右側、つまりケース本体12に対面したとき側面部14側には、当接面154aから離れるに従い突出量が少ない傾斜面154bが連続し、当接面154aの左側は、当接面154aから離れるに従い突出量が少ない傾斜面154cが連続し、台形状に形成されている。
【0038】
ラッチ受け部材150の、トリガー当接突起154より上方には、透孔152との間に、第一ラッチ部材収容部156が設けられている。第一ラッチ部材収容部156は、図1において左側に切り欠かれて開口され、右側の内側面は垂直でトリガー当接突起154の当接面154aに対して直角な当接面156aが形成されている。
【0039】
ラッチ受け部材150の、トリガー当接突起154より下方には、透孔152との間に、第二ラッチ部材収容部158が設けられている。第二ラッチ部材収容部158は、図1において右側に切り欠かれて開口され、左側の内側面は垂直でトリガー当接突起154の当接面154aに対して直角な当接面158aが形成されている。なお、ラッチ受け部材150は、上下を逆にして取付けてもよい。
【0040】
次に、この実施形態のラッチ錠10の動作について説明する。ラッチ錠10を取付けた扉が、ラッチ受け部材150を取付けた柱等から開いているとき、図2、図3に示すように、図2Aに示す第一ラッチ部材32、図2Bに示すトリガー46、図2Cに示す第二ラッチ部材124は、突出した状態である。このとき、トリガー46に連結された回転ブロック52はダンパー68が突出した状態であるため、回転カム70の当接突起76に当接凹凸部62が対向して係止し、回転カム70の回転を止めている。回転カム70が回転しないため、ハンドルを操作することが不可能となり、第一ラッチ部材32、第二ラッチ部材124を後退することが不可能となる。
【0041】
次に、扉を柱等に閉めるときについて説明する。例えば図1においてラッチ受け部材150の左側から閉めるとき、つまりラッチ受け部材150に対してケース本体12の側面部14側から近づいて閉めるとき、第一ラッチ部材32と第二ラッチ部材124が突出した状態でラッチ受け部材150の左側に当接し、第一ラッチ部材32は第一ラッチ部材収容部156が左側に開口しているため第一ラッチ部材収容部156に入り当接面156aに当たって係止される。第二ラッチ部材124は、ラッチ受け部材150の第二ラッチ部材収容部158近傍の側面に当たり、第二ラッチ部材124のラッチヘッド部128の傾斜面128bが押されて第二ラッチ部材戻しバネ134が圧縮されて第二ラッチ部材124が後退し、ラッチ受け部材150の側面を乗り越えて第二ラッチ部材収容部158に入り、その後、第二ラッチ部材戻しバネ134が復元されて第二ラッチ部材124が第二ラッチ部材収容部158が収容される。このとき、図4、図5に示すように、第一ラッチ部材32と第二ラッチ部材124が、互いに反対側に開口されている第一ラッチ部材収容部156、第二ラッチ部材収容部158に収容され、当接面156a,158aに当接し、確実にラッチ受け部材150に係止される。
【0042】
そして、トリガー46の傾斜面46bはトリガー当接突起154の傾斜面154cにあたり、押されてトリガー戻しバネ61が圧縮されてトリガー46が後退し、トリガー当接突起154の当接面154aにトリガー46の突出部46aが当接して後退した状態が維持される。このとき、閉じた直後では、容易に弾性変形するトリガー戻しバネ61が圧縮されるとともに、ダンパー68が抵抗となって回転ブロック52はゆっくりと後退する。このため、回転カム70の当接突起76に当接凹凸部62が対向して係止し、回転カム70の回転を止めている。回転カム70が回転しないため、ハンドルを操作することが不可能であり、第一ラッチ部材32、第二ラッチ部材124を後退することができず、この点からも確実にラッチ受け部材150に係止される。なお、図1においてラッチ受け部材150の右側から閉めるときも同様である。
【0043】
次に、扉を閉めて一定時間が経過した後について説明する。扉を閉めた後、図6に示すように、ダンパー68は、圧縮されたトリガー戻しバネ61により圧縮方向に力が加えられ、徐々にロッド66が後退し、それに伴い、トリガー戻しバネ61が復元し長くなる。これにより、回転ブロック52がダンパー68側へ移動し、回転カム70の当接突起76から回転ブロック52のブロック部58の当接凹凸部62が離れ、回転カム70が回転可能な状態となる。回転カム70が回転可能になると、図示しないハンドル操作により第一ラッチ部材32、第二ラッチ部材124を後退させることができる状態となる。しかし、ハンドル操作をしないときは、回転カム70は回転カム戻しバネ86により係止状態と同じ位置に付勢されてとまり、第一連動カム100も第一連動カム戻しバネ116により第一ラッチ部材32から離れ係止突起103が回転カム70に当接した位置に付勢されてとまり、不用意に扉が開くことがない。
【0044】
扉を開けるときは、図示しないハンドルを操作して、回転カム70を軸部72中心に、回転カム戻しバネ86に抗して反時計周りに回転させる。すると、図7に示すように、回転カム70の回転突起92の操作部94が、第一連動カム100の操作凹部104を押して、第一連動カム100を軸部96を中心に、第一連動カム戻しバネ116に抗して時計回りに回転させる。すると第一連動カム100の操作突起102が第一ラッチ部材32の板部44を押して第一ラッチ部材戻しバネ40に抗して後退させる。このとき、第二連動カム118の歯車部122は第一連動カム100の歯車部114に組み合わされているため、第一連動カム100の回転に伴い、第二連動カム118は軸部98を中心に、反時計回りに回転する。すると、第二連動カム118の操作突起120が第二ラッチ部材124の板部138を押して第二ラッチ部材戻しバネ134に抗して後退させる。
【0045】
このとき、図8に示すように第一ラッチ部材32と第二ラッチ部材124を後退させて、ラッチヘッド部36,128をラッチ受け部材150の第一ラッチ部材収容部156、第二ラッチ部材収容部158から引き抜いて係合を解除し、ラッチ受け部材150の左右のどちら側にも開くことができる。
【0046】
この実施形態のラッチ錠10によれば、簡単な構造で、扉を閉める位置に対して両方向に扉を開閉することができ、扉を閉めるときは、閉める位置を不用意に通過して反対側へ開くことを防ぎ、扉を確実に閉めることができる。扉をしめたつもりで開いていたりすることが無く、また扉を戻して閉め直す手間がかからないものである。
【0047】
なお、この発明のラッチ錠は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、各部材の形状や取付位置は、適宜変更可能である。回転カムを回転させるハンドルの構造は、自由に設定可能であり、扉に対してハンドルを押すと回転カムが回転する構造としても良い。ラッチ錠は、いろいろな用途の扉に取付けることができ、ラッチ受け部材を取付けるものは、固定扉や枠、門扉など自由に変更可能である。扉を閉めてからハンドル操作が可能となるために必要な時間は、ダンパーやトリガー戻しバネの強さを変更して調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態のラッチ錠の分解斜視図である。
【図2】この実施形態のラッチ錠の、ラッチ錠を取り付けた扉が開けられている状態を示す正面図である。
【図3】図2のA、B、Cから見た底面図である。
【図4】この実施形態のラッチ錠の、ラッチ錠を取り付けた扉が閉められた直後の状態を示す正面図である。
【図5】図4のA、B、Cから見た底面図である。
【図6】この実施形態のラッチ錠の、ラッチ錠を取り付けた扉が閉められたあと所定時間が経過した状態を示す正面図である。
【図7】この実施形態のラッチ錠の、ラッチ錠を取り付けた扉を開ける操作を行った状態を示す正面図である。
【図8】図7のA、B、Cから見た底面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ラッチ錠
12 ケース本体
20 第一ラッチ部材挿通口
22 トリガー挿通口
24 第二ラッチ部材挿通口
32 第一ラッチ部材
40 第一ラッチ部材戻しバネ
46 トリガー
52 回転ブロック
58 ブロック部
61 トリガー戻しバネ
70 回転カム
68 ダンパー
100 第一連動カム
118 第二連動カム
124 第二ラッチ部材
134 第二ラッチ部材戻しバネ
150 ラッチ受け
154 トリガー当接突起
156 第一ラッチ部材収容部
158 第二ラッチ部材収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動する扉の開放端付近に設けられたケース本体と、上記ケース本体から突出する一対のラッチ部材と、前記一対のラッチ部材を突出方向に付勢させるラッチ部材戻しバネと、前記一対のラッチ部材を前記ラッチ戻しバネに抗して後退させる回転カムと、前記回転カムに連結されたハンドル部材と、前記回転カムに当接して回転を止める回転ブロックと、前記回転ブロックが前記回転カムに当接する位置と退避した位置との間での移動の抵抗となるダンパーと、前記回転ブロックの前記ダンパーと反対側に取付けられ前記ラッチ部材と平行に前記ケース本体から突出するトリガーと、前記トリガーが前記回転ブロックから離れる方向へ前記ダンパーの復帰バネよりも強い力で付勢するトリガー戻しバネが設けられ、前記扉の開放端が対面する部材には、前記一対のラッチ部材を収容する凹部であるラッチ部材収容部と、前記トリガーが前記トリガー戻しバネに抗して後退した状態で当接するトリガー当接突起が設けられていることを特徴とするラッチ錠。
【請求項2】
前記トリガーは、中央部分が先端に位置する突出部であり、前記突出部の前記扉の揺動方向の両側には傾斜面が設けられて二等辺三角形状に形成され、前記トリガー当接突起は、中央部分が先端に位置する当接面であり、前記当接面の前記扉の揺動方向の両側には傾斜面が設けられて台形状に形成され、前記扉が閉じられる途中で、前記トリガーの一対の前記傾斜面のいずれか一方は前記トリガー当接突起の一方の前記傾斜面に当接し、前記トリガーは前記トリガー戻しバネに抗して後退し、前記扉が閉じられたとき、前記トリガーの突出部が前記トリガー当接突起の当接面に当接し前記トリガーが後退した状態となることを特徴とする請求項1記載のラッチ錠。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−215772(P2009−215772A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60161(P2008−60161)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(591006117)株式会社ナガエ (16)