説明

ラッチ(latching)型熱駆動マイクロリレー素子

【課題】 集積化が可能な超小型のラッチ型熱駆動マイクローリレー素子を提供する。
【解決手段】 所定の体積を持ち、その内部の空気を加熱するヒータ12が設置されている能動貯蔵庫10と、能動貯蔵庫10と所定の間隔に離隔されてその内部にヒータ42が設置されている、同一な体積を持つ受動貯蔵庫40と、能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の間の空間に延長されて液体金属50の移動路としての役割を果すチャンネル20と、互いに離隔されてチャンネル20の所定の領域で各々チャンネルの内部に一端が挿入され外部に伸びる第1信号電極30と、第1信号電極30と一定の間隔に離隔されて同一な形状で形成された第2信号電極32と、チャンネルの内部に実装されて第1信号電極30と第2信号電極32の接点としての役割を果す液体金属50と、半導体基板100の上、下側面に接合された上、下部ガラス基板120,130を含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はラッチ(latching)型熱駆動マイクロリレー素子に関するもので、より詳しくは他の電子部品との集積化が可能になるように超小型化して製作の可能なラッチ型熱駆動マイクロリレーおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般的に、電気信号を中継するリレー(relay)は電子力あるいは圧力等の手段によって二つの接点の間に伝導体を連結させ一側接点より他側接点に電気信号を伝達する電気部品の中の一つである。
【0003】従来のリレーは電子交換器、自動充電器機、交通信号制御システム等広い応用分野で電流の開、閉を担当するスイッチ素子として使用されているが、大きさが大きくて、高価であり、リレーアレイ構成が不可能だけでなく他の電子部品との集積化が難しいので利用に不便があった。
【0004】すなわち、従来の技術として汎用化されているリレーは主に駆動コイルとこの駆動コイルに印加される電圧によって発生する電子力でスイッチをオン/オフさせる方式が利用された。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、電子技術の発達につれて電子部品の小型化が進むようになり、これらの電子部品と同一な回路基板上にリレーを設置して回路を構成しなければならない必要性が増大している。
【0006】したがって、従来のリレーをより小型化すると同時に半導体基板上に集積させることができるマイクロリレーの開発が進行されてきた。
【0007】上述した条件を満足させるためには大きさが数mm以下で小型であり、他の電子部品とともに集積化が可能でなければならない。
【0008】こうした条件を満足させるためには半導体工程技術を使用して微細な構造を持つ形状で製造が可能なリレーが開発されなければならない。
【0009】従来技術のリレーの例として、提示されたヨーロッパの特許EP−573267号は磁気(magnetic)駆動方式を使用し、信号電極部分に金属を使用するため接触抵抗を1Ω以下にすることができず、リレーアレイ構造が複雑であるという短所をもっている。
【0010】又、1995年トランスデューサー誌(Transducers)に発表されたジェイ.ドレイク(J.Drake)の停電力駆動マイクロリレーは駆動電圧が50V以上、接触抵抗2Ωで実用化に問題点をもっている。
【0011】したがって、上述した従来技術の問題点を解決するための本発明の目的は、液体金属接点で1Ω以下の接触抵抗を保持しながら半導体工程技術とシリコンウェハーの表面(surface)およびバルク マイクロマシニング(micromachining)を利用した湿式食刻方法で集積化が可能な超小型のマイクロリレーを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための本発明は、半導体基板のバルク内に所定の体積を持ち、その内部の空気を加熱するヒータ12が設置されている能動貯蔵庫と、上記の能動貯蔵庫と所定の間隔に離隔され、その内部にヒータが設置された、同一の体積を持つ受動貯蔵庫と、上記の能動貯蔵庫と受動貯蔵庫の間の空間に延長され、接点金属である液体金属50の移動路としての役割を果すチャンネルと、互いに離隔されて上記のチャンネルの所定の領域から各々チャンネルの内部に一端が挿入され外部へ伸びる第1信号電極と、上記の第1信号電極と一定の間隔に離隔されて同一な形状で形成されている第2信号電極と、上記のチャンネルの内部に実装されて第1信号電極と第2信号電極の接点としての役割を果す液体金属と、半導体基板の上、下側面に接合されている上、下部ガラス基板とを含むことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、添付された図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0014】図1は本発明による熱駆動マイクロリレーの平面構造を概略的に図示した平面図であり、図2は本発明のラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の平面レイアウトである。
【0015】まず、図1と図2を参照すると、本発明による熱駆動マイクロリレーは所定の体積を持つ能動貯蔵庫10と、この能動貯蔵庫10と所定の間隔に離隔されて同一な体積を持つ受動貯蔵庫40が形成されている。能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の間に所定の直径を持つ流通路としてチャンネル20が形成されている。このチャンネル20の中間部に上記のチャンネルより小さい直径を持つマイクロチャンネル領域21が形成されている。チャンネル20の内部に液体金属50が実装されている。
【0016】図1のような構造を持つ熱駆動マイクロリレーの動作原理は、リレーの能動貯蔵庫(active reservoir)10の圧力が上昇してチャンネル内部に実装されているリレーの電極接点用で使用される液体金属50が受動貯蔵庫(passive reservoir)40側に移動し、受動貯蔵庫40の圧力が上昇すると液体金属が能動貯蔵庫10側の元の位置に引き返すようになる。
【0017】これをより詳しく説明すると、マイクロチャンネル領域21で液体金属50の形状は液体金属50の表面張力とシリコンとの親和力によって決定され、この液体金属を駆動するのに必要な圧力はチャンネル20に液体金属を注入するための圧力と貯蔵庫とマイクロチャンネル領域21の体積比に対する圧力の合計で表わされる。
【0018】マイクロチャンネル領域21で液体金属50を駆動するための圧力Pは次の数式に表現される。
【0019】
【数1】


【0020】この時、Pはチャンネル20で液体金属50を駆動するために必要な圧力、γ1は表面張力(surface tension)、Dはチャンネル直径、θcは液体金属の接触角(contact angle)である。
【0021】図1のようなマイクロリレー素子で液体金属50滴が距離xほど移動すると、能動貯蔵庫10の圧力および体積が変動し、液体金属50が動くことが可能な距離が制限される。
【0022】能動貯蔵庫10の圧力、体積がP1(V1(x=0))からPa,Va(x=x)に、受動貯蔵庫40の圧力、体積がP0,V0(x=0)から、Pp,Vp(x=x)に変ったと仮定し、この時の大気圧はP0とし、体積比に対する圧力に対して数式に表現すると次のようである。
【0023】
【数2】


【0024】
【数3】


【0025】
【数4】


【0026】
【数5】


【0027】
【数6】


【0028】上の数式で、V1+Acx=V0,V1=kAcxに仮定した。Acはマイクロリレー素子のマイクロチャンネル領域21部分の断面積である。
【0029】それゆえ、マイクロリレー素子で液体金属50を駆動するための圧力は数式(1),(6)の合計である(7)式のP2に表われる。
【0030】この時、ボイル(Boyle′s)の法則とシャルル(Charles′s)の法則によりPV/T=一定であるため、圧力変化に必要な温度差を数式で表現すると次のようである。
【0031】
【数7】


【0032】
【数8】


【0033】結果的に温度変化によって圧力が増加するようになり、これによって液体金属50をリレー素子のチャンネル20内で移動させ、電気的な信号を導通および遮断できるリレー素子の動作特性が得られる。
【0034】図2は本発明による熱駆動マイクロリレー素子を平面上に表した詳細図である。
【0035】図2を参照して、本発明による熱駆動マイクロリレー素子の詳細な構成を説明する。
【0036】本発明による熱駆動マイクロリレーは、半導体基板100の所定の領域に一定の体積を持ち、それの底面にヒータ12がカンチレバー形状で設置されている。このヒータ12の通過ラインの下部に一方向へ一列に各々断続して進行するヒータ支持台14が設置されている能動貯蔵庫10と、上記の能動貯蔵庫10と所定の間隔に隔離されてヒータ42とヒータ支持台44が能動貯蔵庫10と同一な形状で設置されている受動貯蔵庫40が形成されている。能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の間に流通路としてチャンネル20が形成されている。このチャンネル20の全体構成は、次のごとくである。すなわち、そのチャンネル20より小さい直径を持つマイクロチャンネル21が中間領域に形成されている。能動貯蔵庫10とマイクロチャンネル領域21の間に第1チャンネル領域22が設置されている。受動貯蔵庫40とマイクロチャンネル領域21の間に第2チャンネル領域23が形成されている。第1チャンネル領域22は、能動貯蔵庫10側において、二つの狭いチャンネルで形成され、この二つの狭いチャンネルが一つの狭いチャンネルに延長される形態で第1の狭いチャンネル領域24と接続されている。第2チャンネル領域23は、受動貯蔵庫40側において、二つの狭いチャンネルで形成され、この二つの狭いチャンネルが一つの狭いチャンネルに延長される形態を持つ第2の狭いチャンネル領域25を含んでいる。
【0037】そして、互いに分離され第1チャンネル領域22で各々の内部から外部に進行する信号電極として二つの電極に分れている第1信号電極31,32と第2チャンネル23に第1信号電極31,32と同一な形状を持つ二つの電極になった第2信号電極34,35が形成されている。
【0038】そして、チャンネル20内部に導電性接触金属として液体金属50が実装されている構成を持つ。
【0039】図3は図2のA−A線によるラッチ型マイクロリレーの断面図を図示する。
【0040】図3を参照して、本発明によるラッチ型マイクロリレーの断面構造を説明する。
【0041】半導体基板100の表面の所定の領域に所定の面積と深さを持つ能動貯蔵庫10が配置されている。その内部の底面には内部の空気を加熱させるためのヒータ12がヒータ支持台14の上を通過して設置されている。
【0042】この能動貯蔵庫10と所定の間隔に離隔され、同一な形状を持つヒータ42とヒータ支持台44が設置されている受動貯蔵庫40が設置されている。
【0043】能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40との間に図3で点線に表した部分20Lまで溝でチャンネル20(図示せず)が形成されている。
【0044】上記の図示されなかったチャンネル20の進行方向で所定の間隔に離隔され、各々同一方向に対向する第1信号電極31,32と第2信号電極34,35が設置されている。
【0045】そして、第1信号電極31,32および第2信号電極34,35と半導体基板100の間は絶縁のために酸化膜112,114が形成されている。
【0046】半導体基板100の表面には能動貯蔵庫10、受動貯蔵庫40およびチャンネル20を上部より密閉させるための上部ガラス基板120が合着されている。半導体基板100の下部面よりチャンネル20に貫通する第1穴116と第2穴118を密閉させるための下部ガラス基板130が設置されている。上記第1,2穴116,118を除外した半導体基板100の下部には酸化膜106と窒化膜108でできた絶縁膜が形成されている。
【0047】上記のような構造でチャンネル20の両端部に形成されている第1の狭いチャンネル領域24と第2狭いチャンネル領域25はマイクロリレーの駆動時、能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40から発生する圧力により液体金属50が第1チャンネル領域22、マイクロチャンネル領域21および第2チャンネル領域23の範囲をはずれないようにする役割を果す。
【0048】同じように、第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23の間に形成されているマイクロチャンネル領域21は能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40から発生する圧力によって液体金属50が第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23に移動された後、上記のチャンネル領域を離脱しないようにする役割を果す。
【0049】すなわち、上記のように広い幅を持つ第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23より狭い幅を持つマイクロチャンネル領域21、このマイクロチャンネル領域21より狭い幅を持つ第1の狭いチャンネル24と第2の狭いチャンネル25により構成されたチャンネル20は、液体金属50が動いた後、逆方向に引き返すことを防止するラッチ作用とヒータ12,42に印加される電圧変動幅の範囲を大きくする作用を果たすように形成されている。
【0050】又、ヒータ支持台14,44は熱伝達が少ない酸化膜を使用し、ヒータ支持台14,44の配置はヒータ12,42に電圧が印加されて熱膨脹が生じる場合を考慮してカンチレバー(cantilever)形態に製作されている。
【0051】そして、第1穴116は液体金属50をリレーの第1チャンネル領域22に注入するためのものであり、第2穴118は液体金属50に注入時、逆方向の圧力発生による注入圧力の上昇を防ぐために形成されている。
【0052】この時、第1穴116と第2穴118は体積比を大きくするために下部部分が広く上部に行くにつれて狭い直径を持つように形成されている。
【0053】すなわち、能動貯蔵庫10および受動貯蔵庫40から発生する圧力がチャンネル20の液体金属50に加わる時、空気圧力の加圧方向に対して反対に作用する圧力の効果を最小化するため、第1,2穴116,118と貯蔵庫10,40の体積比を30:1になるように形成した。
【0054】又、能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の側壁部分は上部部分が広くて、下部部分が狭い傾斜型構造に形成された。これは、ヒータ12,42によって加熱された空気が効果的にチャンネル20に伝達できるようにするためである。
【0055】そして、上記の第1信号電極31,32と第2信号電極34,35はマイクロメータ単位厚さのTiW,Au,Cu,Ni等で形成され、ヒータ12,42の材料としてはプラチナ(Pt)、ポリシリコン、ニッケル等で製作される。
【0056】上述した構造を持つ熱駆動マイクロリレーは、受動貯蔵庫40のヒータ42に電源が印加されず能動貯蔵庫10のヒータ12に電源が印加される場合、能動貯蔵庫10内部の空気が加熱されることによって内部圧力が上昇する。
【0057】この時、この圧力がリレーの接点として使用される水銀、ガリウム等の液体金属50の表面張力(surface tension)である上記の式(1)の力(圧力)より強くなった時、上記の液体金属50が右側に移動して第2信号電極34,35の両端に接触することによって第2信号電極34,35が伝導(ON)状態になる。
【0058】これと反対に能動貯蔵庫10のヒータ12に電源が印加されず受動貯蔵庫40のヒータ42に電源が印加される場合、受動貯蔵庫40の内部圧力が上昇して第2チャンネル領域23にある液体金属50が第1チャンネル領域22に移動する。これによって第2信号電極34,35を通じて一側に流れる電流が遮断され、第1信号電極31,32が伝導状態になる。
【0059】すなわち、上記の二つの動作状態で、能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の各ヒータ12,42に電源を選択的に印加できるようにすることによって各々二つの電極で構成された第1信号電極31,32と第2信号電極34,35で構成される電源ラインを流れる電流をオン/オフさせることができる。
【0060】又、上記のような動作で一側の電源ラインをオンさせて、他側の電源ラインはオフさせるために能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40のヒータ12,42に印加される電源は所定の時間、たとえば、液体金属50を第1チャンネル領域10より第2チャンネル領域40に、あるいはその反対に移動させるのに必要な時間の間だけ印加することもできる。
【0061】図4は本発明のラッチ型熱駆動リレー素子の変形例を図示した平面図である。
【0062】図4に図示された変形例によるラッチ型熱駆動マイクロリレー素子は図2および図3に図示したリレー素子と狭いチャンネル領域だけが異なるだけで他の構成部分は同一である。
【0063】すなわち、本発明の変形例によると、先の実施の形態での第1の狭いチャンネル領域24と第2の狭いチャンネル領域25が、能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40から各々第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23に延長されている第1の狭いチャンネル領域28と第2の狭いチャンネル領域29が一つの流通路形状に置き換わっている。
【0064】以下、図2と図3で説明した平面構造と断面構造を持つラッチ型マイクロリレー素子の製造工程を図5ないし図11を参照して説明すると次のようである。
【0065】図5ないし図6を参照すると、〔100〕あるいは〔110〕の結晶方向を持つ半導体基板100の前面と後面に写真食刻工程時、パターンニングされて食刻遮蔽マスクとして使用される絶縁膜で各々1000Åの厚さを持つ酸化膜102,106と2000Åの厚さを持つ窒化膜104,108を基板の前面と後面に次列に形成する。
【0066】続いて、半導体基板100上部面の酸化膜102と窒化膜106を写真食刻法で半導体基板100上部面にマイクロリレーの配線領域を形成するための領域が露出されるように窒化膜104と酸化膜102を除去して配線領域形成用食刻マスクパターン(図示せず)を形成する。
【0067】次に、上記の食刻マスクパターンを食刻遮蔽膜に利用して露出された半導体基板100を異方性湿式食刻して図5に示されたように互いに一定の間隔に隔離されて縦方向に伸びる第1配線領域60aと第2配線領域60bを形成する。
【0068】続いて、残存する窒化膜104と酸化膜102を写真食刻法で再パターンニングして能動貯蔵庫領域、チャンネル領域および受動貯蔵庫領域用の食刻マスクパターン(図示されない)を形成した後、半導体基板100の露出された部分を異方性湿式食刻して図5に図示されたように互いに一定の間隔を保持し、大きい面積を持つ能動貯蔵庫領域10aと受動貯蔵庫領域40aを形成すると同時に二つの領域を連結させるチャンネル20を互いに一体形の溝で形成する。
【0069】この時、このチャンネル20はその中間部分に狭い幅を持つマイクロチャンネル領域22aが形成されている。能動貯蔵庫領域10aとマイクロチャンネル領域21の間には上記のマイクロチャンネル領域より狭い幅を持つ第1の狭いチャンネル領域24および第1チャンネル領域22が形成されている。上記のマイクロチャンネル領域21と受動貯蔵庫領域40aの間には第2チャンネル領域23と第2の狭いチャンネル25が形成されている構造を持つように形成される。
【0070】続いて、半導体基板100上に残存する酸化膜102と窒化膜104を次例に乾式食刻して除去した後、半導体基板100の全面に電極形成用食刻マスクパターン(図示せず)を形成し、半導体基板100の露出された部分を乾式食刻して図5と図6に図示されたように所定の間隔に隔離されて形成されている第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23の縦方向へ両側に各々分離されている第1信号電極領域31a,32aと第2信号電極領域34a,35aを定義する。
【0071】この時、食刻される第1信号電極領域31a,32aと第2信号電極領域34a,35aとして食刻される厚さは能動、受動貯蔵庫領域10a,40aおよびチャンネル領域20aの食刻深さより浅い深さを持つように形成される。これは電極として形成される金属がチャンネル22の中間の深さの範囲に形成されるようにするためである。
【0072】上述した食刻工程により図5に図示したように半導体基板100の内部に互いに空間的に連結される一定の形状を持つ溝が形成される。
【0073】続いて、図7と図8に図示したように、半導体基板100の露出された部分である第1配線領域60a,60bおよび第2配線領域70a,70b、能動貯蔵庫領域10a、受動貯蔵庫領域40aおよびチャンネル領域20aに各々酸化膜112を形成する。
【0074】この時、酸化膜112の形成工程は上述した形成方法に限定されないし、露出された半導体基板100を熱酸化して熱酸化膜を形成したり陽極酸化法等によって形成したりすることもできる。
【0075】上記の酸化膜112は、後続形成される電極およびヒータ用金属と配線用金属を半導体基板100より電気的に絶縁させるために形成される。
【0076】続いて、能動貯蔵庫領域10aと受動貯蔵庫領域40aに厚いCVD酸化膜114を形成する。これは後続工程で形成されるヒータを貯蔵庫領域10a,40aの床面より浮遊させる支持台として利用するために形成される。
【0077】続いて、図9と図10に図示したように、露出された基板の全面に導電性であるプラチナ(Pt)、ポリシリコンおよびニッケルを蒸着した後、これをパターンニングして上記の能動貯蔵庫領域10aおよび受動貯蔵庫領域40aにカンチレバー形を持つヒータ12,42を形成すると同時に第1配線領域60aと第2配線領域70aに第1配線60と第2配線70を形成する。
【0078】その後、上記のヒータ12,42を貯蔵庫領域10a,40aの床面より浮遊させるためにヒータ12,42ラインが通過する下部の酸化膜114が縦方向に断続されてヒータの下部に残存するように酸化膜114を1次湿式食刻した後、2次に乾式食刻してヒータ支持台14,44を形成する。これはヒータ12,42が各々能動貯蔵庫領域10aと受動貯蔵庫領域40bを底面より浮遊させて電圧印加の時、熱効率を高めるためである。
【0079】この時、酸化膜114を湿式食刻で完全に食刻する場合、ヒータ用金属が食刻溶液の表面張力によって貯蔵庫領域10a,40aの床面に接触するおそれがあるから湿式食刻と乾式食刻を並行した。
【0080】続いて、上記の半導体基板100の全面に導電性金属であるTiW,Au,CuおよびNi等の金属を蒸着し、これをパターンニングして第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23に各々隔離されて縦方向へ外部に伸びる第1信号電極31,32と第2信号電極34,35を同時にパターンニングする。
【0081】続いて、半導体基板100の全面に食刻遮蔽物(図示せず)を形成した後、半導体基板100の下側面に形成されている酸化膜106と窒化膜108をパターンニングして所定の直径で上記チャンネル領域20の中、各々第1の狭いチャンネル領域24と第2の狭いチャンネル25に垂直で対応する領域が露出するように食刻マスクパターン(残存する酸化膜と窒化膜)を形成した後、半導体基板100の下側より上側に食刻して第1の狭いチャンネル24と第2の狭いチャンネル25の所定の領域に貫通するように異方性乾式食刻して第1穴116と第2穴118を形成する。
【0082】この時、形成される第1穴112と第2穴114は下側面が広くて上側面に行くにつれて狭くなり、第1狭いチャンネル24と第2狭いチャンネル25面が狭い直径で露出されるように形成する。導電性液体金属のチャンネル20の注入を容易にするため、このような傾斜型に形成される。
【0083】続いて、図11に図示したように、上記の食刻マスクパターンを除去し、半導体基板100の上部表面にガラス基板120を陽極(anodic)結合し、半導体基板100の下側面が上側面になるように裏返した状態で上記の第1穴116あるいは第2穴118を通じて導電性金属として水銀あるいはガリウム等の液体金属50を注入する。
【0084】続いて、半導体基板100の下側面にガラス基板130を紫外線接着剤で接着してマイクロリレー素子を製造する。
【0085】
【発明の効果】上述した本発明のラッチ型熱駆動マイクロリレー素子は、シリコンウェハーのバルク内にマイクロマシニング技術、電気鍍金技術および半導体工程技術を利用してリレー素子を集積させることができるので、既存のリレー素子より小型で製作することが可能である。
【0086】又、本発明のリレー素子は集積回路工程と互換性があるのでリレーアレイ(array)を構成できる長所がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の平面概略図。
【図2】本発明のラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の平面レイアウト図。
【図3】図2のA−A線による断面を概略的に表したラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の断面図。
【図4】本発明のラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の変形例を表した概略的な平面図。
【図5】ラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の平面図。
【図6】図5のA−A線によるラッチ型マイクロリレー素子の断面図。
【図7】半導体基板の食刻部分である貯蔵庫形成領域、チャンネル形成領域、電極形成領域および配線領域に酸化膜を形成した状態を表した平面図。
【図8】図7のA−A線による半導体基板の断面を表した断面図。
【図9】熱駆動マイクロリレー素子の形成領域に各々ヒータ、ヒータ支持台と信号電極を形成して液体金属を注入した状態を概略的に表した平面図。
【図10】半導体基板上に貯蔵庫、第1,2信号電極および第1,2穴の形成状態を表した断面図。
【図11】ラッチ型熱駆動マイクロリレー素子の上部面と下部面にガラス基板を合着してリレー素子の製作を完了した状態を表した断面図。
【符号の説明】
10 能動貯蔵庫
20 チャンネル
21 マイクロチャンネル領域
22 第1チャンネル領域
23 第2チャンネル領域
24 第1狭いチャンネル領域
31,32 第1信号電極
34,35 第2信号電極
60 第1配線
70 第2配線
100 半導体基板
102,106 酸化膜
104,108 窒化膜
112,114 酸化膜
116,118 第1,2穴
120 上部ガラス基板
130 下部ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板100のバルク内に所定の体積を持ち、その内部の空気を加熱するヒータ12が設置されている能動貯蔵庫10と、上記の能動貯蔵庫10と所定の間隔に離隔されてその内部にヒータ42が設置されている、同一な体積を持つ受動貯蔵庫40と、上記の能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の間の空間に延長されて接点金属である液体金属50の移動路としての役割を果すチャンネル20と、互いに離隔されて上記のチャンネル20の所定の領域で各々チャンネルの内部に一端が挿入されて外部に伸びる第1信号電極31,32と、上記の第1信号電極31,32と一定の間隔に離隔されて同一な形状で形成されている第2信号電極34,35と、上記のチャンネルの内部に実装されて第1信号電極31,32と第2信号電極34,35の接点としての役割を果たす液体金属50と、半導体基板100の上、下側面に接合されている上、下部ガラス基板120,130とを含むことを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項2】 第1項において、上記のヒータ12,42はカンチレバー形態で形成されたことを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項3】 第2項において、上記のヒータ12,42は、各々能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の床面に上記のヒータの進行方向に垂直方向に断続して一列に形成されているヒータ支持台14,44の上に支持され、床面より浮遊されていることを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項4】 第1項において、上記の液体金属50は水銀あるいはガリウムであることを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項5】 第1項において、上記の第1信号電極31,32と第2信号電極34,35はTiW,Au,CuおよびNiの中、いずれ一つの金属であることを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項6】 第1項において、上記のヒータ12,42はプラチナ、ポリシリコンおよびニッケルで形成されたことを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項7】 第1項において、上記のチャンネル20は、その中間領域にチャンネルの幅が狭いマイクロチャンネル領域21を有し、上記のマイクロチャンネル領域21の両端に上記のマイクロチャンネル領域21より広い幅を持つ第1チャンネル領域22と第2チャンネル領域23を有し、上記の第1,2チャンネル領域22,23と貯蔵庫10,40の間に各々上記のマイクロチャンネル領域21より狭い幅を持つ第1の狭いチャンネル領域24と第2の狭いチャンネル領域25を有することを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項8】 第7項において、上記の第1,2の狭いチャンネル24,25は、各々能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40側に二つの狭いチャンネルで延長される形態を持つことを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。
【請求項9】 第1項において、上記半導体基板100の下側から上側に行くにつれて狭くなり、上部が上記能動貯蔵庫10と上記第1信号電極31,32間のチャンネル20の領域と、受動貯蔵庫40と上記第2信号電極34,35間のチャンネル20の領域に各々連通されるように形成されて上記液体金属50を注入するための注入通路に使用される第1,第2穴116,118を有して構成されることを特徴とするラッチ型マイクロリレー素子。
【請求項10】 第9項において、上記第1,2穴116,118と、能動貯蔵用10および受動貯蔵庫40との体積費が30:1であることを特徴とするラッチ型熱駆動マイクロ素子。
【請求項11】 第1項において、上記の能動貯蔵庫10と受動貯蔵庫40の両端のヒータ12,14に電源を供給する第1配線60と第2配線70が追加で形成されていることを特徴とするラッチ型熱駆動マイクローリレー素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開平9−161640
【公開日】平成9年(1997)6月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−163401
【出願日】平成8年(1996)6月24日
【出願人】(591044083)財団法人韓国電子通信研究所 (1)