説明

ラッピングツール

【課題】作業員が作業対象の端子を見誤るというヒューマンエラーを防止することができるラッピングツールを提供する。
【課題を解決するための手段】ラッピングツール10は、中間配線盤1の各端子2の端子番号を示すバーコード20が貼り付けられた各端子2へのラッピング作業に使用されるものであって、バーコード20の画像データを得るためのバーコード読取装置16と、バーコード読取装置16によって得られた画像データに基づいて、バーコード20によって示される端子番号を得るための制御装置18と、制御装置18によって得られた端子番号を表示するための表示装置17とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピングツールに関し、特に、中間配線盤(IDF:Intermediate Distribution Frame)における通信線のラッピング作業などに用いるのに好適なラッピングツールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数組の通信装置間を接続する多数の通信線を自由に配線することができるように、複数本の端子(金属ピン)が格子状に配置された中間配線盤が用いられている(たとえば、下記の特許文献1参照)。
【0003】
このような中間配線盤では、たとえば図6(a),(b)に示す中間配線盤1のように複数本の端子2が絶縁板3の表面および裏面に横8.5mmおよび縦8mmの狭い間隔で等間隔に格子状にそれぞれ設けられており、通信装置間の配線工事を行う際には、作業員は、配線工事図面に記載された端子番号を読み取り、読み取った端子番号に対応する端子2(以下、「作業対象端子2’」と称する。)を目視のみで確認したのちに、ラッピングツールを用いて通信線を作業対象端子2’にラッピング接続している。
【0004】
このように作業員は目視のみで作業対象端子2’を確認しているため、作業環境によっては作業員が作業対象端子2’を見誤ることがあるので、本出願人は、下記の特許文献2において作業対象端子2’以外の端子2にビニールテープなどで養生(区画・保護)することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−171664号公報
【特許文献2】特開2007−214617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、1回のラッピング作業における作業対象端子2’の本数は多く、また、端子2は狭い間隔で格子状に配置されているため、作業員が脚立を使用して高い位置で作業したり膝よりも下の位置で作業したりするような場合には、作業対象端子2’以外の端子2にビニールテープなどで養生したとしても作業員が作業対象端子2’を見誤る可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、作業員が作業対象端子を見誤るというヒューマンエラーを防止することができるラッピングツールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のラッピングツールは、各端子(2)の端子番号を示す識別コード(20)が周辺に貼り付けられた該各端子へのラッピング作業に使用されるラッピングツール(10;30)であって、前記識別コードの画像データを得るための識別コード読取装置(16;36)と、該識別コード読取装置によって得られた前記画像データに基づいて、前記識別コードによって示される端子番号を得るための制御装置(18;38)と、該制御装置によって得られた端子番号を表示するための表示装置(17;37)とを具備することを特徴とする。
ここで、作業対象端子情報が格納されたメモリカードが挿入されるメモリカードスロット(40)をさらに具備し、前記制御装置(38)が、前記メモリカードスロットに挿入された前記メモリカードから前記作業対象端子情報を読み出し、前記識別コードによって示される端子番号が該作業対象端子情報に含まれているか否かを判定し、該識別コードによって示される端子番号が該作業対象端子情報に含まれていない場合には、その旨を前記表示装置に表示させてもよい。
前記制御装置(38)が、前記識別コードによって示される端子番号が前記作業対象端子情報に含まれていない場合には、前記ラッピングツールの操作ボタン(34)が引かれても該ラッピングツールのビット(33)を回転させないようにしてもよい。
確認用ボタンをさらに具備し、前記制御装置(38)が、ラッピング作業が終わった端子番号を前記作業対象端子情報から削除していき、前記確認用ボタンが押されると、該作業対象端子情報に端子番号が残っていないかを確認し、該確認の結果を前記表示装置に表示させてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のラッピングツールは、以下に示す効果を奏する。
(1)識別コードによって示される端子番号をラッピングツールに表示させることができるため、作業員はラッピング作業をしようとしている端子が正しいものか否かをラッピングツールに表示された端子番号に基づいて容易にチェックすることができるので、作業員が作業対象端子を見誤るというヒューマンエラーを防止することができる。
(2)経験の少ない作業者でも確実に配線作業を行うことができるので、配線作業の品質確保が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例によるラッピングツール10の構成を示す図であり、(a)はラッピングツール10の右側面図であり、(b)はラッピングツール10の上部の正面図であり、(c)はラッピングツール10の上部の背面図である。
【図2】図1に示したラッピングツール10を用いるときの中間配線盤1におけるバーコード20の貼付方法を示す図である。
【図3】図1に示したラッピングツール10を用いるときの中間配線盤1におけるバーコード20の他の貼付方法を示す図である。
【図4】バーコード20を図3に示した貼付方法で貼り付けた場合のラッピングツール10におけるバーコード読取装置16の取付位置を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例によるラッピングツール30の構成を示す図である。
【図6】中間配線盤1の構成を示す図であり、(a)は中間配線盤1の正面図であり、(b)は中間配線盤1の一部の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の目的を、各端子の端子番号を示すバーコードを中間配線盤の各端子の周辺に貼り付けておき、作業対象端子の周辺に貼り付けられたバーコードによって示される端子番号を読み取って表示するための手段(バーコード読取装置、制御装置および表示装置)をラッピングツールに設けることにより実現した。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明のラッピングツールの実施例について図面を参照して説明する。
まず、本発明の第1の実施例によるラッピングツール10について、図1乃至図4を参照して説明する。
本実施例によるラッピングツール10は、図1(a)に示すように、本体11と、本体11の後部下側に本体11と一体的に設けられたハンドル12と、本体11の前面に取り付けられるビット13(ビット・スリーブ)と、本体11に取り付けられた、かつ、ビット13を回転させるモータ(不図示)を駆動するための操作ボタン14と、ハンドル12の下面に一端が接続されるとともに他端が電源プラグ(不図示)に接続された電源コード15と、本体11の上面の前面側に取り付けられたバーコード読取装置16(識別コード読取装置)と、本体11の後面の上部に取り付けられた表示装置17と、本体11内に設けられた制御装置18とを具備する。
【0013】
すなわち、ラッピングツール10は、バーコード読取装置16、表示装置17および制御装置18を具備する点で、従来のラッピングツールと異なる。
【0014】
ここで、バーコード読取装置16は、図1(b)に示すように、ビット13の軸方向(長手方向)に沿ってレーザー光を照射してバーコード20(図2参照)を端から端まで走査するための発光部16aと、発光部16aから出射されたレーザー光のバーコード20からの反射光を受光してバーコード20の画像データを得るための受光部16bとを備える。
【0015】
制御装置18は、受光部16bから入力されるバーコード20の画像データに基づいて、バーコード20によって示される端子番号を読み取り、読み取った端子番号を表示装置17に表示させる(図1(c)参照)。
【0016】
バーコード20は、各端子2の端子番号を示す識別コードとして機能し、中間配線盤1(図6(a)参照)の端子2毎に、図2に示すように端子2の上にかつバーコード20の中央部に端子2が位置するように横向きに貼り付けられる。そのため、バーコード20の大きさは、高さ2mmおよび幅4mm程度とされている。
また、中間配線盤1の各端子2には、図6(a)図示左から右に向かって番号順に、かつ、上から下に向かってアルファベット順に、端子番号が対応付けられている。たとえば、左から2番目でから上4番目の端子2には端子番号「2D」が対応付けられており、左から2番目でから上5番目の端子2には端子番号「2E」が対応付けられており、左から3番目で上から4番目の端子2には端子番号「3D」が対応付けられており、左から3番目で上から5番目の端子2には端子番号「3E」が対応付けられている。
したがって、バーコード20としては、中間配線盤1の端子配列を考慮して、数字2文字(1〜99)とアルファベット1文字(A〜Z)の最大3文字の情報を示すものであればよい。また、バーコード20のコード体系としては、たとえばCODE39を用いればよい。
【0017】
次に、ラッピングツール10を用いて通信装置間の配線工事を行う方法について説明する。
作業員は、配線工事図面に記載された端子番号を読み取り、作業対象端子2’(読み取った端子番号に対応する端子2)を目視で確認したのち、ラッピングツール10のビット13にこの作業対象端子2’の先端部分を挿入する。
【0018】
このとき、バーコード読取装置16の発光部16aから出射されたレーザー光はこの作業対象端子2’の上に貼り付けられたバーコード20を照射して走査し、このバーコード20からの反射光がバーコード読取装置16の受光部16bによって受光される。受光部16bは、受光した反射光に基づいて得られるこのバーコード20の画像データを制御装置18に出力する。
【0019】
制御装置18は、受光部16bから入力されるバーコード20の画像データに基づいて、このバーコード20によって示される端子番号を読み取り、読み取った端子番号を表示装置17に表示させる。
【0020】
作業員は、表示装置17に表示された端子番号が配線工事図面から読み取った端子番号と一致するか否かをチェックする。
【0021】
その結果、両者が一致した場合には、作業員は、ラッピングツール10の操作ボタン14を引いて、この作業対象端子2’に通信線をラッピング接続する。
【0022】
一方、両者が一致しない場合には、作業員は、表示装置17に表示された端子番号に基づいて正しい作業対象端子2’を目視で確認したのち、ラッピングツール10のビット13に正しい作業対象端子2’の先端部分を挿入する。その後、作業員は、表示装置17に新たに表示された端子番号が配線工事図面から読み取った端子番号と一致するか否かをチェックし、両者が一致していることを確認すると、ラッピングツール10の操作ボタン14を引いて、正しい作業対象端子2’に通信線をラッピング接続する。
【0023】
以上の説明では、バーコード20の貼付箇所を中間配線盤1の各端子2の上でかつバーコード20の中央部に各端子2が位置する箇所にするとともに、バーコード20の向きを横向きとしたが(図2参照)、バーコード20の貼付箇所および向きはこれに限らない。
たとえば、図3に示すように、バーコード20の貼付箇所を中間配線盤1の各端子2の右上(端子2の先端側から見たとき)でかつバーコード20の下部に各端子2が位置する箇所にするとともに、バーコード20の向きを縦向きにしてもよい。この場合には、バーコード読取装置16は、バーコード20からの反射光を受光し易くするために、図4(a),(b)に示すように本体11の背面側から見て右側面の前面側に取り付けてもよい。
【実施例2】
【0024】
次に、本発明の第2の実施例によるラッピングツール30について、図5を参照して説明する。
本実施例によるラッピングツール30は、以下に示す点で、上述した第1の実施例によるラッピングツール10と異なる。
【0025】
(1)図5(a)に示すように、作業対象端子情報(すべての作業対象端子2’の端子番号を示す情報)が格納された超小型メモリカード(たとえば、マイクロSDカード)が挿入されるメモリカードスロット40が、本体31の背面側から見て右側面の中央部に取り付けられている。
【0026】
(2)制御装置38が、メモリカードスロット40に挿入された超小型メモリカードから作業対象端子情報を読み出し、バーコード読取装置36から入力されるバーコード20の画像データに基づいて読み取った端子番号が作業対象端子情報に含まれているか否かを判定する。その結果、読み取った端子番号が作業対象端子情報に含まれていない場合には、制御装置38は、図5(b)に一例を示すように、読み取った端子番号“2C”の下に“対象外端子”を表示装置37に表示させる。
【0027】
これにより、作業員は、ラッピングツール30を用いてラッピング接続しようとしている端子2が作業対象端子2’であるか否かを容易に確認することができる。
【0028】
なお、ラッピング作業毎に作業対象端子2’は異なるため、パーソナルコンピュータなどに格納されている作業対象管理データに含まれる作業対象端子情報をたとえばUSBメモリカードリーダ/ライタを介してパーソナルコンピュータなどから超小型メモリカードに転送することにより、作業対象端子情報は超小型メモリカードに書き込まれる。
【0029】
作業員のヒューマンエラーの更なる防止のために、制御装置38は、読み取った端子番号が作業対象端子情報に含まれていない場合には、操作ボタン34を引いてもビット33を回転させるためのモータが駆動しないようにしてもよい。
【0030】
また、残りの作業対象端子2’の有無を作業員が確認し易くするために、以下の機能をラッピングツール30に付加してもよい。
確認用ボタン(不図示)をラッピングツール30の本体31または表示装置37に設ける。制御装置38は、ラッピング作業が終わった端子番号を作業対象端子情報から削除していく。作業員が確認用ボタンを押すと、制御装置38は、作業対象端子情報に端子番号が残っていないかを確認し、残っていない場合には“残り作業対象端子なし”を表示装置37に表示させ、一方、残っている場合には残り作業対象端子2’の端子番号を表示装置37に表示させる。
【0031】
さらに、作業対象端子2’以外の端子2についてもラッピング接続する事態が生じた場合にも対応することができるように、以下の機能をラッピングツール30に付加してもよい。
追加作業ボタン(不図示)をラッピングツール30の本体31または表示装置37に設ける。作業員が追加作業ボタンを押すと、制御装置38は、バーコード読取装置36から入力されるバーコード20の画像データから読み取った端子番号を追加作業端子情報として、メモリカードスロット40に挿入されている超小型メモリカードに書き込む。
作業員は、ラッピング作業終了後に超小型メモリカードをメモリカードスロット40から抜き取ったのち、たとえばUSBメモリカードリーダ/ライタを介して超小型メモリカードからパーソナルコンピュータなどに追加作業端子情報を転送する。これにより、追加作業の情報(追加でラッピング接続した端子2の端子番号など)をパーソナルコンピュータなどに格納されている作業対象管理データに追加反映させることができる。
【0032】
さらにまた、接地線などを作業対象端子2’にラッピング接続する場合には2度打ちまたは3度打ちとなる場合があるが、2度打ちまたは3度打ちとなることを作業員が容易に確認することができるように、以下の機能をラッピングツール30に付加してもよい。
2度打ちまたは3度打ちとなる作業対象端子2’の端子番号も作業対象端子情報として超小型メモリカードに書き込む。制御装置38は、作業対象端子情報に基づいて作業対象端子2’が2度打ちまたは3度打ちとなるものであるか否かを判定し、2度打ちまたは3度打ちとなるものである場合には、その旨を表示装置37に表示させる。
【0033】
以上の説明では、ラッピングツール10のバーコード読取装置16は発光部16aおよび受光部16bのみを備えたが、暗い場所でラッピング作業を行う場合にも作業員が作業対象端子2’にラッピングツール10のビット13を押し込み易くするために、たとえば広角照射用LEDをさらに備えるようにしてもよい。ラッピングツール30のバーコード読取装置36についても同様である。
【0034】
また、各端子2の端子番号を示す識別コードとしてバーコード20(1次元バーコード)を用いたが、これに変わるコード(2次元バーコードなど)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 中間配線盤
2 端子
2’ 作業対象端子
3 絶縁板
10,30 ラッピングツール
11,31 本体
12,32 ハンドル
13,33 ビット
14,34 操作ボタン
15,35 電源コード
16,36 バーコード読取装置
16a 発光部
16b 受光部
17,37 表示装置
18,38 制御装置
20 バーコード
40 メモリカードスロット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各端子(2)の端子番号を示す識別コード(20)が周辺に貼り付けられた該各端子へのラッピング作業に使用されるラッピングツール(10;30)であって、
前記識別コードの画像データを得るための識別コード読取装置(16;36)と、
該識別コード読取装置によって得られた前記画像データに基づいて、前記識別コードによって示される端子番号を得るための制御装置(18;38)と、
該制御装置によって得られた端子番号を表示するための表示装置(17;37)と、
を具備することを特徴とする、ラッピングツール。
【請求項2】
作業対象端子情報が格納されたメモリカードが挿入されるメモリカードスロット(40)をさらに具備し、
前記制御装置(38)が、前記メモリカードスロットに挿入された前記メモリカードから前記作業対象端子情報を読み出し、前記識別コードによって示される端子番号が該作業対象端子情報に含まれているか否かを判定し、該識別コードによって示される端子番号が該作業対象端子情報に含まれていない場合には、その旨を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする、請求項1記載のラッピングツール。
【請求項3】
前記制御装置(38)が、前記識別コードによって示される端子番号が前記作業対象端子情報に含まれていない場合には、前記ラッピングツールの操作ボタン(34)が引かれても該ラッピングツールのビット(33)を回転させないようにすることを特徴とする、請求項2記載のラッピングツール。
【請求項4】
確認用ボタンをさらに具備し、
前記制御装置(38)が、ラッピング作業が終わった端子番号を前記作業対象端子情報から削除していき、前記確認用ボタンが押されると、該作業対象端子情報に端子番号が残っていないかを確認し、該確認の結果を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする、請求項2または3記載のラッピングツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−272221(P2010−272221A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120638(P2009−120638)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】