説明

ラッピング・アンラッピングツール

【課題】所定のラッピング工具を自動的に時計回りに回転させて、ラッピング端子にジャンパー線を簡単に巻き付けることができると共に、所定のアンラッピング工具を自動的に反時計回りに回転させて、ラッピング端子に巻き付いているジャンパー線を簡単に取り外すことができるラッピング・アンラッピングツールを提供する。
【解決手段】本発明に係るラッピング・アンラッピングツールは、両プーリ間に掛架されたエンドレスベルトと、エンドレスベルトに接合された動力用バネを備え、動力用バネの弾発力によってエンドレスベルトを牽引して両プーリを回転させる動力部と、該動力部の一方のプーリに連繋されて回転する駆動シャフトと、駆動シャフトの先端に着脱可能に取り付けたラッピング工具・アンラッピング工具を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック端子台に高密度に配設されているラッピング端子にジャンパー線を接続するラッピング作業と、ラッピング端子からジャンパー線を取り外すアンラッピング作業のそれぞれを容易に行うことができる、ラッピング・アンラッピングツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、ラッピング端子Lにジャンパー線Jを接続するには、先ず、ワイヤーストリッパー等でジャンパー線Jの被覆部分Sを剥ぎ取り、所定の長さに芯線Rを露出させておく。
【0003】
そして、図15に示すような、手動式のラッピング工具Q1を使用して、芯線Rをラッピング端子Lに巻き付けていく。
【0004】
このラッピング工具Q1は、図15・図16に示すように、ロッド100の基端側に柄101を備えており、先端部には巻き込み部102が設けられている。この巻き込み部102は、図16に示すように、ラッピング端子Lを挿入するための孔部103を先端部中央に有し、孔部103の周縁部分の一部には扇形状に切欠部104が形成されている。
【0005】
この切欠部104周縁からロッド100の側面長手方向に沿って長尺な凹溝条105が形成され、ロッド100先端側における凹溝条105の一部分を円筒カバー106によって覆っている。そして、図16に示すように、ロッド100先端側における凹溝条105の端部は、所定の凹溝条孔105aを形成している。
【0006】
このラッピング工具Q1を使ってラッピング端子Lにジャンパー線Jを接続する場合、先ず、作業中において接続対象となるラッピング端子Lの周囲にある他のラッピング端子Lと接触しないようにするために、近隣のラッピング端子Lに絶縁性のゴム等を被せておく。
【0007】
そして、図17(a)に示すように、ラッピング工具Qのロッド100先端に位置している凹溝条孔105aから円筒カバー106内側の凹溝条105内に、ジャンパー線Jの被覆部分Sを剥ぎ取った芯線Rを挿入しておき、図17(b)に示すように、孔部103にラッピング端子Lを挿入する。次いで、図17(c)に示すように、柄101を介してロッド100を回転させながら、ロッド100自体を引き抜いていく。
【0008】
このとき、ジャンパー線Jの被覆部分Sを片手で持ちながら、図18(a)に示すように、凹溝条105内に挿入されて凹溝条孔105aから突出している芯線Rの一部を、ラッピング端子Lに宛がっておく。
【0009】
そして、図18(b)に示すように、柄101を介してロッド100を回転させて、芯線Rをラッピング端子Lに巻き付けて行く。さらに、図18(c)・図17(c)に示すように、ロッド100の回転と同時に当該ロッド100をラッピング端子Lから引き抜いていくと、図17(b)(c)に示すように、凹溝条105内に挿入されている芯線Rが徐々に引き出されて、芯線Rが次々と螺旋状となってラッピング端子Lに巻かれるのである。
【0010】
一方、ブロック端子台Wに高密度に配設されているラッピング端子Lからジャンパー線Jを取り外す際には、図12・図13に示すような手動式のアンラッピング工具Q2を使用する。
【0011】
このアンラッピング工具Q2は、ロッド200の基端側に柄203を備えている。ロッド200は、先端部に挿入孔201を有する筒状に形成されている。また、ロッド200の先端部には、筒の外周面に螺旋状となるように溝条202が設けられている。
【0012】
そして、図14(a)に示すように、ジャンパー線Jの芯線Rが螺旋状に巻きついているラッピング端子Lにロッド200の挿入孔201を宛がい、ロッド200を押し込んで、ロッド200の筒内にラッピング端子Lを挿入していく。
【0013】
次に、図13に示すように、ロッド200の先端部の溝条202に、芯線Rの端部を巻回するように導入させる。このように、ロッド200の溝条202に芯線Rの端部を導入している状態において、柄203を介してロッド200を反時計回りに回転させながら、ロッド200をラッピング端子Lに沿って押し込んでいく。すると、図14(b)に示すように、溝条202に巻回している芯線Rは、溝条202の反時計回りの回転により強制的に伸展した状態となり、ラッピング端子Lへの巻回状態が解かれていく。
【0014】
この他、従来のラッピングツールとしては、特許文献1に開示されているような、電動機によって駆動するワイヤラッピングツールが存在する。このワイヤラッピングツールは、グリップを把持する手の親指によって、操作棒の末端部に設けた操作部を、バネの力に打ち勝つように押圧すると、回転ビットに嵌めた分割スリーブが操作棒によって開かれて案内溝が露出し、これにワイヤを挿入できるようにしている。
【0015】
また、特許文献2に開示されているような、線材の巻き付けのばらつきを防止するためのスプリング式のラッピングツールも存在する。このラッピングツールは、ビットを中継端子に取り付けた状態でソケットをカバーに押し込み、回転軸およびビットを回転させることで、配線材を中継端子に巻き付ける。このとき、配線材の巻き上がりと同時にスプリングを圧縮させてビットが上へ後退するため、重ね巻き等の配線材の巻き付けのばらつきを無くすものである。
【0016】
さらに、ロックダイヤルにより配線材の巻き付け直後のビットを中継端子に取り付けた状態でスプリングの力でソケットが上昇してビットを逆回転させることで、巻き付けた配線材をほぐしてしまうのを防止している。
【0017】
また、特許文献3に開示されているような、ワイヤを端子に巻き付け接続するための手動タイプのスクリュー式ワイヤラッパーも存在する。このスクリュー式ワイヤラッパーは、外筒内に回転可能に配されたストックネジと当該外筒との相互隙間に軸方向でのみ可動に配置され、且つストックネジに螺合した可動部材と、該可動部材を軸方向一方へ付勢するバネを備え、該可動部材の移動によるストックネジの回転でもってラッピングビットを回転させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭54−134386号公報
【特許文献2】特開平11−40308号公報
【特許文献3】実開昭56−92381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、従来においては、ジャンパー線の芯線巻装専用のラッピング工具Q1を使用して、芯線Rをラッピング端子Lに手動で巻き付ける作業となるため、ラッピング端子Lに対するジャンパー線Jの接続作業が非常に面倒である。
【0020】
しかも、このようなラッピング工具Q1がないと、ラッピング端子Lにジャンパー線Jを取り付けるのが容易でないばかりでなく、これとは別にアンラッピング工具Q2も予め用意しておかないと、ラッピング端子Lからジャンパー線Jを取り外すことも困難である。
【0021】
また、手動式のアンラッピング工具Q2の場合、ラッピング端子Lに巻き付けているジャンパー線Jを取り外す際に、ロッド200の溝条202に芯線Rの端部を導入している状態において、柄203を介してロッド200を反時計回りに回転させながら、ロッド200をラッピング端子Lに沿って押し込む必要がある。
【0022】
しかし、ロッド200の回転操作に気を取られて、手によるロッド200の押し込みが足りない状態が生じ、溝条202に巻回している芯線Rを連続的に伸展させることができないこともあった。
【0023】
さらに、このような手動式のアンラッピング工具Q2を使用し、作業員がアンラッピング工具Q2を手で回しながらラッピング端子Lからジャンパー線Jを取り外すことから、その作業に多大な時間と労力が必要となる。
【0024】
この他、特許文献1に示す電動機によって駆動されるワイヤラッピングツールでは、電動機自体の重量が大きく、且つ電動機の駆動用電源も必要なことから、これを手に持って行うラッピング端子Lへのジャンパー線Jの取り付け操作と、ラッピング端子からのジャンパー線Jの取り外し操作が容易でなく、且つコストも掛かることとなる。
【0025】
さらに、特許文献2に示すラッピングツール、また、特許文献3に示すスクリュー式ワイヤラッパーは、ラッピング端子Lに対し、バネ・スプリングによる回転機構によって、ジャンパー線Jの巻き付け作業だけを行うものであることから、ラッピング端子からのジャンパー線Jの取り外し作業に使用することが困難である。
【0026】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、
さらに、一方のプーリと駆動シャフトは、互いに接合・分離可能である一対のクラッチ歯車により連繋されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0027】
また、一対のクラッチ歯車は、両クラッチ歯車間に進入して両クラッチ歯車相互を分離させ、両クラッチ歯車のそれぞれを互いに逆回転させる中間歯車を有している回転方向切換機構を備えていることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、所定のラッピング工具・アンラッピング工具を、自動的に時計回りに回転させ、また、自動的に反時計回りにも回転させことができるため、ラッピング端子にジャンパー線を簡単に巻き付けることができると共に、ラッピング端子に巻き付いているジャンパー線を簡単に取り外すこともできる。
【0029】
すなわち、本発明に係るラッピング・アンラッピングツールは、両プーリ間に掛架されたエンドレスベルトと、エンドレスベルトに接合された動力用バネを備え、動力用バネの弾発力によってエンドレスベルトを牽引して両プーリを回転させる動力部と、該動力部の一方のプーリに連繋されて回転する駆動シャフトと、駆動シャフトの先端に着脱可能に取り付けたラッピング工具・アンラッピング工具を有していることから、ラッピング工具・アンラッピング工具を作業員の手により回転させる操作を必要としていない。
【0030】
そして、ラッピング工具を自動的に時計回りに回転させたり、アンラッピング工具を自動的に反時計回りに回転させことができるため、ラッピング端子に対するジャンパー線の巻き付け作業と、ラッピング端子からのジャンパー線の取り外し作業を、連続して簡単に行うことができる。
【0031】
この際、作業員の手によりラッピング工具・アンラッピング工具を回す必要がないため、作業員の負担となることがなく、全体の作業に要する労力を大幅に軽減できる。また、全体の作業を、極めて断時間に行うこともできる。
【0032】
さらに、作業員の手で回転させる手動式のアンラッピング工具においては、ラッピング端子に巻き付けているジャンパー線を取り外す際に、ロッドの溝条に芯線の端部を導入している状態において、ロッドを反時計回りに回転させながら、ロッドをラッピング端子に沿って押し込む必要があるが、ロッドの回転操作に気を取られて、手によるロッドの押し込みが足りない状態が生じていた。
【0033】
しかし、本発明に係るラッピング・アンラッピングツールによれば、アンラッピング工具を自動的に反時計回りに回転させことができるため、アンラッピング工具の押し込みに神経を集中して、ラッピング端子に巻き付けているジャンパー線を確実に取り外すことができる。
【0034】
また、アンラッピング工具を自動的に反時計回りに回転させことができるため、作業員が右利きの場合であっても、力が入りづらくなるようなことがなく、作業員の操作上の労力も軽減している。
【0035】
この他、動力用バネを圧縮状態に保持すると同時に、駆動シャフトの回転を阻止し、また、動力用バネの圧縮状態を解放すると同時に、駆動シャフトの回転を許容する操作トリガーを備えていることから、作業員がこの操作トリガーを操作することにより、ラッピング工具・アンラッピング工具の回転の開始と、回転の停止を容易に行うことができる。
【0036】
また、一方のプーリと駆動シャフトは、互いに接合・分離可能である一対のクラッチ歯車により連繋されていることから、一対のクラッチ歯車の接合状態において、プーリの回転力を駆動シャフトに確実に伝達することができる。
【0037】
さらに、一対のクラッチ歯車は、両クラッチ歯車間に進入して両クラッチ歯車相互を分離させ、両クラッチ歯車のそれぞれを互いに逆回転させる中間歯車を有している回転方向切換機構を備えていることから、ラッピング端子に巻き付けているジャンパー線を取り外す際には、例えば、中間歯車を退避させた状態で一対のクラッチ歯車を接合させ、アンラッピング工具を反時計回りに回転させことができる。
【0038】
また、ラッピング端子にジャンパー線を巻き付ける際には、一対のクラッチ歯車の間に中間歯車を侵入させて一対のクラッチ歯車を分離した状態とし、両クラッチ歯車のそれぞれを互いに逆回転させて、ラッピング工具を時計回りに回転させこともできる。
【0039】
このように、1台のラッピング・アンラッピングツールを用意することにより、ラッピング端子にジャンパー線を巻き付ける作業と、ラッピング端子に巻き付いているジャンパー線を取り外す作業を容易に行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ラッピング・アンラッピングツールの使用状態を示す斜視図である。
【図2】ラッピング・アンラッピングツールの構成を示す側面図である。
【図3】ラッピング・アンラッピングツールの内部の構成を示す斜視図である。
【図4】動力用バネの端部に固定されているバネ押し金具7の構成を示す斜視図である。
【図5】筐体の矩形の空間内における動力用バネ、バネ押し金具、エンドレスベルトの配置を明示したもので、(a)は筐体の平面図、(b)は筐体を後方側から見た断面図である。
【図6】動力用バネの圧縮を開放した状態のラッピング・アンラッピングツールの構成を示す断面図である。
【図7】動力用バネを圧縮した状態のラッピング・アンラッピングツールの構成を示す断面図である。
【図8】操作トリガーを操作して、駆動シャフトを介してアンラッピング工具を回転させている状態を示す断面図である。
【図9】回転方向切換機構の一例を示すもので、(a)は中間歯車を退避させて、一対のクラッチ歯車同士を接合している状態を示す側面図、(b)は中間歯車を両クラッチ歯車間に進入させて一対のクラッチ歯車を分離した状態とし、両クラッチ歯車のそれぞれを互いに逆回転させる状態を示す側面図である。
【図10】筐体の左側に操作トリガー4を配置している構成を示す斜視図である。
【図11】ラッピング・アンラッピングツールの内部の構成における他の例を示す斜視図である。
【図12】手動式のアンラッピング工具の先端部の形状を示す斜視図である。
【図13】手動式のアンラッピング工具の使用状態を示す斜視図である。
【図14】手動式のアンラッピング工具の使用状態を示すもので、(a)はジャンパー線の芯線が螺旋状に巻きついているラッピング端子にロッドの挿入孔を宛がい、ロッドを押し込んでロッドの筒内にラッピング端子を挿入していく状態の側面図、(b)はロッドの溝条に芯線の端部を導入している状態において、ロッドを反時計回りに回転させながらロッドをラッピング端子に沿って押し込み、ラッピング端子が強制的に伸展した状態となり、ラッピング端子への巻回状態が解かれていく状態の側面図である。
【図15】従来のラッピング工具の全体構成を示す斜視図である。
【図16】従来のラッピング工具の先端構造を示す斜視図である。
【図17】手動式のラッピング工具の使用例を示すもので、(a)はラッピング端子に装着する直前の状態を示す斜視図、(b)はラッピング端子に装着した直後の状態を示す斜視図、(c)はラッピング工具を廻しながら引き抜くことで、ジャンパー線の芯線をラッピング端子に巻き付けている状態の斜視図である。
【図18】手動式のラッピング工具の巻き込み部の動作を説明するもので、(a)は凹溝条孔から突出している芯線の一部をラッピング端子に宛がっている状態の斜視図、(b)はロッドを回転させて芯線をラッピング端子に巻く状態の斜視図、(c)はロッドの回転と同時にロッドをラッピング端子から引き抜いていくことで、芯線が次々と螺旋状となってラッピング端子に巻かれていく状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0042】
本発明に係るラッピング・アンラッピングツールは、ブロック端子台Wに高密度に配設されているラッピング端子Lにジャンパー線Jを接続するラッピング作業と、ラッピング端子Lからジャンパー線Jを取り外すアンラッピング作業のそれぞれを行うために使用されるものである
【0043】
このラッピング・アンラッピングツールは、図1乃至図3に示すように、動力用バネ9が内蔵されている上側の動力部1と、ラッピング工具Q1またはアンラッピング工具Q2が着脱可能に取り付けられる下側の駆動部2により構成されている。また、駆動部2における下側の後方において、操作トリガー4を前側に配しているグリップ部3を備えている。
【0044】
このように、ラッピング・アンラッピングツールは、動力部1、駆動部2、操作トリガー4を有するグリップ部3により、図1に示すように、全体が所謂ガンタイプ形状になっている。
【0045】
ラッピング・アンラッピングツールの動力部1は、図3・図5(a)(b)・図6に示すように、横長の矩形状の筐体によって形成されている。
【0046】
この筐体は、図5(a)(b)に示すように、長方形の筒状部材1a,1b,1c,1dを所定の接続部材を介して連結し、筒状部材1a,1b,1c,1dの内側に、矩形の空間6を設けている。そして、図3・図5(b)・図6に示すように、この矩形の空間6内に、上下2本の動力用バネ9を収容している。
【0047】
この上下2本の動力用バネ9の前端部には、長方形の板状に形成されたバネ押し金具7が固定されている。このバネ押し金具7は、矩形の空間6内において、スライド移動できるように空間6内に収容されている。
【0048】
また、図3・図6に示すように、矩形の空間6を設けている筐体の前部および後部には、それぞれプーリ10が配置されている。この2個のプーリ10は、中心の回転軸を縦方向に配置して、プーリ10が水平回転するようになっている。
【0049】
矩形の空間6内において、所定の間隔を開けて配置されている2個のプーリ10には、図3・図5(a)(b)・図6に示すように、エンドレスベルト11が掛架されている。前記した上下2本の動力用バネ9とバネ押し金具7は、図3・図5(b)に示すように、エンドレスベルト11の内側に配置されている。
【0050】
そして、図4・図5(a)に示すように、筐体の右側に位置しているエンドレスベルト11の一部の内側部分が、バネ押し金具7の側面に固定されている。また、図4に示すように、バネ押し金具7においては、エンドレスベルト11の固定部分に、バネ操作トリガー5を取り付けている。
【0051】
このバネ操作トリガー5は、図1・図5(b)に示すように、筐体の長方形の筒状部材1a,1c間に形成されているスリット部8を介して、筐体の外側に突出している。
【0052】
そして、このバネ操作トリガー5をスリット部8に沿ってスライドさせると、エンドレスベルト11内のバネ押し金具7も一緒にスライド移動する。このとき、エンドレスベルト11の一部の内側部分がバネ押し金具7の側面に固定されているため、エンドレスベルト11がバネ押し金具7に引っ張られるように移動し、このエンドレスベルト11を掛架している2個のプーリ10を回転させるのである。
【0053】
尚、図6に示すように、後部側のプーリ10には、その回転軸であるシャフト12を介して、傘歯車13が固着されており、この傘歯車13は、後述する駆動部2の後部側に位置する傘歯車14に噛合している。
【0054】
駆動部2は、図6乃至図8に示すように、動力部1よりも狭い横長の矩形状の筐体によって形成されている。この筐体の内部には、筐体の長手方向に沿って、駆動シャフト15が回転可能に配されている。この駆動シャフト15の後端側には、後述する回転方向切換機構21を介して、傘歯車14が固着されており、前記したプーリ10側の傘歯車13に噛合している。
【0055】
一方、駆動シャフト15の前端側には、有底円筒状の接続金具16を介して、チャック体17が設けられている。このチャック体17は、長手方向に沿って割り溝を有し且つ周面にネジ溝を備えた挟持金具18と、該挟持金具18のネジ溝にねじ込まれるよう、内面にネジ溝を有する略台錘形の固定用ネジ金具19から形成されている。
【0056】
そして、アンラッピング工具Q2は、長尺な筒状に形成されている収容金具20に収容された状態で、挟持金具18内に挿入され、固定用ネジ金具19のねじ込みによる締め付けでもって固定されるようになっている。このように、アンラッピング工具Q2と収容金具20は、共に取り外せるようになっているため、市販の電動用ラッピング工具のラッピング工具Q1と収容金具20の装着が可能となる。
【0057】
グリップ部3と駆動部2の間には、図3・図6に示すように、中央の支点の回りに揺動可能とした天秤金具31が配されている。この天秤金具31の一端側は、操作トリガー4における上側の角部に形成された段差状の係合部4aに係合するようになっている。
【0058】
一方、天秤金具31の他端側は、下方に配した付勢バネ32によって、上方に常時付勢されている。また、天秤金具31の他端側上面には、圧縮された動力用バネ9を保持するためのロック金具33が、揺動自在に枢着されている。
【0059】
このロック金具33は、駆動部2を貫通して、動力部1における下方のバネ収容部6内に出没可能になっている。
【0060】
また、図3・図6に示すように、駆動シャフト15の中間部分には、円柱状のストッパ金具34が固着されている。そして、操作トリガー4がフリーの状態では、ストッパ金具34に当該操作トリガー4の上面が圧接(当接)し、これによって、駆動シャフト15の回転を阻止できるようにしている。また、ストッパ金具34における円周面には、操作トリガー4の上面と圧接(当接)したときの摩擦抵抗を大きくするために、連続した突出形状が設けられている。
【0061】
そして、図1に示すように、操作トリガー4を人差し指等により引き絞った際には、図8に示すように、天秤金具31が付勢バネ32を圧縮させながら左上がり(右下がり)に揺動し、それに伴ってロック金具33がバネ収容部6内から下方に退避して、動力用バネ9の圧縮状態を解放する。これと同時に、操作トリガー4の上面は、ストッパ金具34から離れて、駆動シャフト15の回転を許容することとなる。
【0062】
また、後側のプーリ10と駆動シャフト15は、互いに接合・分離可能である一対のクラッチ歯車22,22により連繋されている。この一対のクラッチ歯車22,22は、回転方向切換機構21を備えている。
【0063】
回転方向切換機構21は、互いに接合・分離可能である、傘歯状に形成された一対のクラッチ歯車22,22間に進入して相互を分離させ、両クラッチ歯車22,22のそれぞれを互いに逆回転させるよう、両クラッチ歯車22,22に跨って噛合する傘歯状に形成された中間歯車23を有している。
【0064】
すなわち、図6乃至図8に示すように、駆動部2の後方側における下面に縦長の収容部24を設け、該収容部24には、両側面から操作突起25aが突出して成る押し上げ金具25が、上下にスライド可能に内装されている。
【0065】
この押し上げ金具25における上面の中央からは、シャフト26を介して傘歯状の中間歯車23が設けられ、収容部24内において、シャフト26に巻装されているコイルバネ27により、中間歯車23は下方側(一対のクラッチ歯車22,22から分離する位置)にくるように常時付勢されている。
【0066】
また、図9(a)・(b)に示すように、一対のクラッチ歯車22,22は、相対向する側面同士が互いに噛み合うようにラチェット歯が形成されており、後方側のクラッチ歯車22は、駆動部2の後部側に位置する傘歯車14のシャフト14aの一端部に取り付けられている。
【0067】
このシャフト14aは、駆動部2内に形成された仕切部に、軸受を介して回転可能に挿通されている。この仕切部から反対側に突出したシャフト14aの中間部分には、フランジ状の係止部28が設けられている。
【0068】
そして、この係止部28と後方側のクラッチ歯車22との間には、コイルバネ29が巻装されている。
【0069】
この後方側のクラッチ歯車22自体は、シャフト14aと一体となって回転するが、シャフト14aに沿ってコイルバネ29を圧縮しながら後方側へスライド移動できるようにしている。例えば、シャフト14aに形成された不図示のキー突起に、クラッチ歯車22の中心軸孔に形成された不図示のキー溝を係合させている。或いは、シャフト14a自体を角棒によって形成し、クラッチ歯車22の中心軸孔を、シャフト14aに対応した角孔状に形成しても良い。
【0070】
次に、以上のように構成されたラッピング・アンラッピングツールについて、使用・動作の一例について説明する。
【0071】
先ず、アンラッピング工具Q2によって、ブロック端子台Wに高密度に配設されているラッピング端子Lから、ジャンパー線Jを取り外す場合について説明する。
【0072】
図1に示すように、グリップ部3を片手に持ち、駆動部2の前端のチャック体17にアンラッピング工具Q2を取り付け、バネ操作トリガー5を後方へスライドさせる。
【0073】
このとき、図7に示すように、筐体の空間6内に収容されているバネ押し金具7も一緒にスライド移動する。また、エンドレスベルト11もバネ押し金具7に引っ張られるように移動し、このエンドレスベルト11を掛架している2個のプーリ10を回転させる。
【0074】
そして、動力用バネ9は、バネ押し金具7によって押されながら後方側へ向けて移動し、動力用バネ9の全体が圧縮した状態となる。
【0075】
これと同時に、バネ収容部6内に突出しているロック金具33が、バネ押し金具7によって押されて、一旦は下方側に退避する。
【0076】
そして、図7に示すように、バネ押し金具7がロック金具33の後側まで移動したときには、天秤金具31における付勢バネ32によって、ロック金具33がバネ収容部6内に突出する。
【0077】
この状態により、バネ押し金具7がロック金具33によって係止される。すなわち、ロック金具33によって係止されているバネ押し金具7により、動力用バネ9の圧縮状態が保持されるのである。
【0078】
このとき、操作トリガー4においては、ストッパ金具34に当該操作トリガー4の上面が圧接(当接)し、これによって、駆動シャフト15の回転を阻止している。
【0079】
そして、アンラッピング工具Q2をラッピング端子Lに装着し、ツールの操作トリガー4を人差し指等により引き絞ると同時に、ツールをラッピング端子Lに若干押し込むようにする。
【0080】
このとき、図8に示すように、天秤金具31が付勢バネ32を圧縮させながら右下がりに揺動し、ロック金具33がバネ収容部6内から下方に退避する。このロック金具33の退避により、バネ押し金具7が前方に移動できることとなり、バネ押し金具7の移動により圧縮状態の動力用バネ9を解放していく。
【0081】
これと同時に、操作トリガー4の上面は、ストッパ金具34から離れて圧接(当接)している状態が解放され、これによって駆動シャフト15の回転が許容される。
【0082】
而して、ロック金具33の退避により、バネ押し金具7が前方に移動できることとなり、圧縮状態の動力用バネ9の解放により、バネ押し金具7を前方に押し出していく。このとき、エンドレスベルト11もバネ押し金具7に引っ張られるように移動し、このエンドレスベルト11を掛架している2個のプーリ10を回転させる。
【0083】
そして、後部側のプーリ10、シャフト12、傘歯車13、駆動部2の後部側にある傘歯車14、一対のクラッチ歯車22、駆動シャフト15のそれぞれを介して、アンラッピング工具Q2が、反時計回りであるアンラッピング方向に回転する。
【0084】
このとき、途中でアンラッピング工具Q2の回転を停止させる場合には、人差し指等による操作トリガー4の引き絞りをやめればよい。すると、ストッパ金具34に当該操作トリガー4の上面が圧接(当接)し、これによって、駆動シャフト15の回転が阻止される。
【0085】
尚、ストッパ金具34の円周面には、操作トリガー4の上面との摩擦抵抗を大きくするために、連続した突出形状が設けられていることから、操作トリガー4の引き絞り加減によって、アンラッピング工具Q2における微妙な回転量の調整も可能となる。
【0086】
次に、ラッピング工具Q1によって、ブロック端子台Wに高密度に配設されているラッピング端子Lに、ジャンパー線Jを巻き付ける場合について説明する。
【0087】
先ず、駆動部2前端のチャック体17にラッピング工具Q1を取り付け、バネ操作トリガー5を後方へスライドさせる。
【0088】
そして、図8(a)に示すように、回転方向切換機構21における押し上げ金具25を、コイルバネ27に抗して上方へ押し上げる。
【0089】
すると、図9(b)に示すように、一対のクラッチ歯車22は、これらの間に進入した中間歯車23によって互いに分離させられ、当該中間歯車23を介して、一対のクラッチ歯車22,22が互いに逆方向に回転するようになる。
【0090】
而して、操作トリガー4の引き絞りにより、ロック金具33を退避させてバネ押し金具7が前方に移動できることとなり、圧縮状態の動力用バネ9の解放により、バネ押し金具7を前方に押し出していく。このとき、エンドレスベルト11もバネ押し金具7に引っ張られるように移動し、このエンドレスベルト11を掛架している2個のプーリ10を回転させる。
【0091】
そして、後部側のプーリ10、シャフト12、傘歯車13、駆動部2の後部側にある傘歯車14、一対のクラッチ歯車22,22と両クラッチ歯車22,22間にある回転方向切換機構21の中間歯車23、駆動シャフト15のそれぞれを介して、ラッピング工具Q1が時計回りであるラッピング方向に回転する。
【0092】
尚、図1乃至図8に示すラッピング・アンラッピングツールは、横長の矩形状の筐体において、その右側に操作トリガー4を配置しているが、この構成に限定されることはなく、図10に示すように、筐体の左側に操作トリガー4を配置しても良い。
【0093】
この他、図11には、本発明に係るラッピング・アンラッピングツールについての、他の構成例が示されている。
【0094】
尚、上記した実施の形態における構成と同じ部分には、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0095】
本例では、動力用バネ9として、螺旋状のバネ(所謂ゼンマイ式動力)を使用している。
【0096】
すなわち、駆動部2は、図11に示すように、横長の矩形状の筐体によって形成され、その内部には、筐体の長手方向に沿って、駆動シャフト15が回転可能に配されている。
【0097】
この駆動シャフト15の後端側には、回転方向切換機構21を介して、両側に小歯車を有する駆動歯車43が固着されている。
【0098】
また、動力シャフト41の一端側には、動力用バネ9としての螺旋状のバネにおける中心の基端部分が接続されている。また、動力シャフト41の一端側には、手巻ハンドル42を連設している。
【0099】
この動力シャフト41の他端側には、中央の小歯車と、該小歯車を挟み込む両側の大歯車を備えている動力歯車44が取り付けられている。
【0100】
そして、駆動シャフト15の駆動歯車43に、動力歯車44の小歯車が噛み合い、駆動歯車43の小歯車に、動力歯車44の大歯車がそれぞれ噛み合っている。
【0101】
本ツールの使用に際しては、予め手巻ハンドル42を回して、螺旋状のバネを巻き込んでおく。
【0102】
このとき、操作トリガー4においては、ストッパ金具34に当該操作トリガー4の上面が圧接(当接)し、これによって、駆動シャフト15の回転を阻止している。
【0103】
そして、操作トリガー4を人差し指等により引き絞ると、操作トリガー4の上面がストッパ金具34から分離し、巻き込んでいる螺旋状のバネの復元力により駆動シャフト15が回転するのである。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るラッピング・アンラッピングツールは、ジャンパー線のラッピング作業・アンラッピング作業を行う他に、種々のケーブル用電線等の巻き付け作業と取り外し作業を行うためのツールとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
Q1…ラッピング工具
Q2…アンラッピング工具
W…ブロック端子台
L…ラッピング端子
J…ジャンパー線
S…被覆部分
R…芯線
1…動力部
2…駆動部
3…グリップ部
4…操作トリガー
5…バネ操作トリガー
6…矩形の空間
7…バネ押し金具
8…スリット部
9…動力用バネ
10…プーリ
11…エンドレスベルト
12…シャフト
13…傘歯車
14…傘歯車
14a…シャフト
15…駆動シャフト
16…接続金具
17…チャック体
18…挟持金具
19…固定用ネジ金具
20…収容金具
21…回転方向切換機構
22…クラッチ歯車
23…中間歯車
24…収容部
25…押し上げ金具
25a…操作突起
26…シャフト
27…コイルバネ
28…係止部
29…コイルバネ
31…天秤金具
32…付勢バネ
33…ロック金具
34…ストッパ金具
41…動力シャフト
42…手巻ハンドル
43…駆動歯車
44…動力歯車
100…ロッド
101…柄
102…巻き込み部
103…孔部
104…切欠部
105…凹溝条
105a…凹溝条孔
106…円筒カバー
200…ロッド
201…挿入孔
202…溝条
203…柄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両プーリ間に掛架されたエンドレスベルトと、エンドレスベルトに接合された動力用バネを備え、動力用バネの弾発力によってエンドレスベルトを牽引して両プーリを回転させる動力部と、
該動力部の一方のプーリに連繋されて回転する駆動シャフトと、駆動シャフトの先端に着脱可能に取り付けたラッピング工具・アンラッピング工具を有している駆動部を備えていることを特徴とするラッピング・アンラッピングツール。
【請求項2】
動力用バネを圧縮状態に保持すると同時に、駆動シャフトの回転を阻止し、また、動力用バネの圧縮状態を解放すると同時に、駆動シャフトの回転を許容する操作トリガーを備えている請求項1に記載のラッピング・アンラッピングツール。
【請求項3】
一方のプーリと駆動シャフトは、互いに接合・分離可能である一対のクラッチ歯車により連繋されている請求項1または2に記載のラッピング・アンラッピングツール。
【請求項4】
一対のクラッチ歯車は、両クラッチ歯車間に進入して両クラッチ歯車相互を分離させ、両クラッチ歯車のそれぞれを互いに逆回転させる中間歯車を有している回転方向切換機構を備えている請求項1乃至3のいずれかに記載のラッピング・アンラッピングツール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−238556(P2010−238556A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85707(P2009−85707)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】