説明

ラップシートの切断方法

【目的】 ラップシートの停止状態でラップロールから延在するラップシートを短時間で、確実に切断する。
【構成】 旧ラップロールELが空近くなった時に機台を停止し、先に吸引パイプ43を、次にプレス部材53を夫々開放位置B3とプレス位置C2に位置させる。次に切断用コーム32を、旧ラップシートLP2下側の待機位置A1から上方の切断位置A2へ向けてプレス部材53のニップ点N2から離れる方向へ円弧移動させ、旧ラップシートLP2を分離する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ロール状に巻かれたラップシートを、コーミングヘッドやドラフト部といったラップ処理手段で処理するようにした繊維機械、例えばコーマやリボンラップマシンにおいて、ラップロールから送り出されている連続したラップシートを切断する技術に関し、特にラップシートの送り出しが停止した状態で切断する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】このようなラップシートの切断技術として、■空に近い旧ラップロールを載置するキャリヤローラ(フィードローラ)の前方に配置した接合ローラで、ラップロールから送り出されるラップシートをニップすると共に、空に近い旧ラップロールをキャリヤローラへ押圧し、この状態でキャリヤローラを逆回転させるもの(特開平4−222234号)、■コーマ運転中に空に近い旧ラップロールを前後一対のフィードローラ間から下方へ落下させ、この落下と同期してあらかじめ準備してあった満ラップボビンがフィードローラ上へ載置され、旧ラップロールの落下で、供給ローラ下方に配置してあるコーム歯が旧ラップロールから連続するラップシートに作用して旧ラップロールのラップシートを切断するもの(アメリカ特許第2559074号)などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来技術■では、旧ラップロールの押圧装置を必要とし、装置が複雑化するおそれがあった。また、従来技術■は、フィードローラ下方に位置しているコーム歯と、ラップシートの移動によりコーマ運転中、即ち、旧ラップシートの送り出し中に旧ラップシートを切断する方式のため、旧ラップシートの送り出しを停めてラップシートを切断しようとしても切断できない。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、旧ラップシートの送り出しを停めた状態で短い時間で確実に切断可能なラップシートの切断方法を得ることを目的とし、一対のフィードローラ上のラップロールからラップ処理手段へ向けて送り出される連続したラップシートを、ラップシートを停止させてラップ処理手段とフロントフィードローラ間でニップし、このニップ部分とフロントフィードローラ間で、ラップシートの厚さ方向の一側にある待機位置から、厚さ方向他側にあって待機位置に対してフロントフィードローラ方向に位置する切断位置へ向けて切断用コームを移動させることを特徴とする。
【0005】
【作用】前記によれば、ラップシートの停止状態において、ニップ部分とフロントフィードローラ間に延在するラップシートを、厚さ方向の一側にある待機位置から、厚さ方向の他側にあってニップ部分から離れる方向に位置する切断位置へ向けて切断用コームを移動させる。こうしてニップ動作と切断用コームの移動動作だけで、停止しているラップシートを確実に、かつ、短時間に切断する。
【0006】
【実施例】以下、本願をリボンラップマシン1に適用した例で説明する。図3に示すように、リボンラップマシン1は、両端のフレーム2,3の間に中間のフレーム4が一定間隔で機台長手方向に並設してある。隣り合って対となっているフレーム2,4間(フレーム4,4間、フレーム3,4間も同じ)には図1,図2に示すように夫々その前部に4本のドラフトローラを回動自在に支持し、ドラフト部5(ラップ処理手段)を構成している。各ドラフト部5の後方(図3の右側)にはラップ送り部6が設けてある。ラップ送り部6の後方には機台長手方向にラップ供給コンベア7が配設され、各ドラフト部5に対応した待機位置Aに満ラップロールFLが準備されるようにしてある。
【0007】ラップ送り部6は図1,2に示すようにフロントフィードローラ10とバックフィードローラ11とを備えている。フロントフィードローラ10は各フレーム2,3,4に設けられた図示しない軸受によって回転自在に支持されたフロントフィードローラシャフト12に楔着されている。このフロントフィードローラ10の後方下部にはフレーム2,3,4間にわたってバックフィードローラ揺動軸13が回動自在に支持してある。このバックフィードローラ揺動軸13には各ラップ送り部6に対応して夫々左右一対のフレーム2,4(4,4及び3,4)の内側に一対のバックフィードローラ用の揺動レバー14が楔着してある。この揺動レバー14の先端に回動自由に支持され、フレーム2〜4にわたるバックフィードローラシャフト15にバックフィードローラ11が楔着されている。
【0008】揺動レバー14のうち、フレーム3に最も近いものは、後方に向けてアーム14aを一体に突出しており、このアーム14aには揺動用シリンダ16のピストンロッド16a先端がピン連結され、ピストンロッド16aの出没によりフロントフィードローラ10に対してバックフィードローラ11が近接離反するようにしてある。各フィードローラ10,11及び、ドラフト部の各ローラは主モーター17の回転によりラップ送り出し方向へ回転するようにしてある。フロントフィードローラ10とドラフト部5との間には図2に示すように左右のフレーム間にまたがってラッププレート20がフレームに固着してある。また、ラップ供給コンベア7と、各ラップ送り部6の間には傾斜テーブル21が夫々配設され、ラップ供給コンベア7上の待機位置Aに準備された満ラップロールFLが図示しないラップロール押し出しバーによって傾斜テーブル21上へ押し出されて転動し、ラップ送り部6へ供給されるようになっている。
【0009】次にラップ切断装置30について説明する。各ラップ送り部6のフロントフィードローラ10と対応して、フロントフィードローラシャフト12の、フロントフィードローラ10の軸方向両側位置にはコーム支持アーム31が夫々フロントフィードローラシャフト12に対して相対回動自在に支持してある。フロントフィードローラ10の両側のコーム支持アーム31は2つで一対になっており、各先端間には切断用コーム32が横架されている。対になった各コーム支持アーム31の一方は夫々連結アーム31aを一体に備えており、各連結アーム31aの先端は、フレーム3、又はフレーム4に一端を枢着した切断用シリンダ33のピストンロッド33aに連結され、この切断用シリンダ33の作動により、図1に示すように、旧ラップシートLP2の厚さ方向の下方である待機位置A1から上方の切断位置A2へ向けて、かつ、前方から後方へ向けて円弧移動するようになっている。
【0010】次に吸引パイプ43とプレス部材53を有するラップ継ぎ装置40について説明する。フレーム2,3,4間にわたって、ラッププレート20の後端すぐ下側にパイプ用シャフト41が回動自在に支持してある。シャフト41にはコーム支持アーム31と対応する位置にパイプ支持アーム42が夫々一体連結してある。各パイプ支持アーム42は2つずつ対になっており、先端には夫々吸引パイプ43が横架してある。各吸引パイプ43には旧ラップシートLP2とほぼ同一幅の吸引口44が形成してある。各吸引パイプ43の夫々一端はジャバラホース45を介して図示しない吸引源に連結してある。
【0011】シャフト41の一端は、フレーム3の側方へ突出され、揺動アーム46の一端に一体連結してある。揺動アーム46の他端は揺動シリンダ47に連結してある。揺動シリンダ47は2つのシリンダ48,49が背中合わせに一体に結合されて構成してあり、シリンダ49のピストンロッド49aがフレーム3に軸支してある。そして、両シリンダ48,49の作用で吸引パイプ43は円弧移動し、両シリンダ48,49のピストンロッド48a,49aが両方共突出すると、吸引パイプ43は満ラップロールFLの外周所定位置に位置している新ラップシート先端S1を吸引する吸引位置B1に位置し、ピストンロッド48a,49aが両方共引込んだ時には、ラップシートの開放位置B3に位置し、また、ピストンロッド48aが突出し、ピストンロッド49aが引込んだ時には吸引位置B1と開放位置B3の中間の待機位置B2に位置するようにしてある。前記開放位置B3は、図5の■,■に示すように、満ラップロールFLのフロントフィードローラ10によるニップラインN1と新ラップシートLP1の先端S1との間のラップシート長さLよりも、前記ニップラインN1からドラフト部5方向へ遠い位置であって、旧ラップシートL2を上方から押える位置に設定してある。
【0012】更にフレーム2,3,4間にわたってシャフト41の前側にはプレス部材用のシャフト51が回動自在に支持してある。シャフト51にはパイプ支持アーム42と対応する位置にプレス部材支持アーム52が一体連結してある。プレス部材支持アーム52は、開放位置B3に位置するパイプ43との干渉を避けるように屈曲した形状をしており、先端に新、旧ラップシートLP1,LP2の端部をラッププレート20との間で押圧するプレス部材53が固着してある。シャフト51はプレート3から一端が突出し、揺動レバー54の一端に連結され、揺動レバー54の他端は、一端をフレーム3に枢着したプレスシリンダ55のピストンロッド55aに連結され、このプレスシリンダ55の動作で新、旧ラップシートLP1,LP2の前、後端の重合部を押圧するプレス位置C2と、ラッププレート20から離れた待機位置C1との間を円弧移動するようにしてある。そして、これらの吸引パイプ43とプレス部材53はラップシート切断時のニップ部材を兼ねている。
【0013】次に作用を説明する。前工程より送られてくる満ラップロールFLは供給コンベア7上で夫々のドラフト部5に対応する待機位置Aに配置されている。満ラップロールFLは前工程で新ラップシートLP1の先端S1の円周方向位置を所定位置に割出して待機位置Aに載置され、図示しない押し出しバーで傾斜テーブル21上を転動してフロント、及びバックフィードローラ10,11上に載置された時に、丁度新ラップシートLP1の先端S1が、吸引位置B1の吸引パイプ43と対向する位置となるようにしてある。
【0014】フロント、バックフィードローラ10,11上の旧ラップロールELが空に近くなったことを図示しない紡出長検出器が検出すると、機台を停止する。紡出中、図4■に示すようにラッププレート20上を通過する旧ラップシートLP2と干渉しないように、夫々待機位置B2,C1にあった吸引パイプ43とプレス部材53は、図4■,■に示すようにまず吸引パイプ43が開放位置B3へ移動した後に、プレス部材53がプレス位置C2へ位置し、両者により、旧ラップシートLP2はラッププレート20との間でニップされる。次に待機位置A1にあった切断用コーム32が円弧を描いて旧ラップシートLP2の下方から上方へ向けて、かつ、プレス部材53による旧ラップシートLP2のニップ部分N2より離れる方向(後方)へ移動して図4■のように切断位置A2に到る。これによりコーム32で引張られた旧ラップシートLP2は、図6に示すように旧ラップシートLP2を構成する繊維間に素抜けを生じて破断状に分離する。
【0015】次いで図4■のようにコーム32を待機位置A1へ戻して切断が完了する。そして図4■のようにバックフィードローラ11を揺動シリンダ16の作用でフロントフィードローラ10から揺動離間させ、両フィードローラ10,11間から空に近いラップロールELを下方へ排出し、その後にバックフィードローラ11を元の位置へ戻すと共にプレス部材53を待機位置C1へ戻す。
【0016】続いてラップ継ぎ動作が行われる。待機位置Aにあった満ラップロールFLは、押し出しバーの作用で傾斜テーブル21上を転動して図5■のようにフロント,バックフィードローラ10,11上へ載置される。次いで図5■のように吸引パイプ43が吸引位置B1に円弧を描いて移動すると共にその吸引口44から空気吸引が行われ、所定位置に位置している新ラップシートLP1の先端S1を吸引する。吸引を続けつつ、吸引パイプ43は再び円弧を描いて開放位置B3へ向かう。開放位置B3はニップラインN1よりドラフト部5の方向へ、新ラップロールLP1の剥がされる長さより遠いので、吸引パイプ43が吸引を続けていても開放位置B3に到ると自然に吸引力が新ラップシートLP1に及ばなくなり、図5■のように旧ラップシートLP2の端部上に落下する。
【0017】次に図5■のようにプレス部材53が待機位置C2からプレス位置C1へ回動し、新,旧ラップシートLP1,LP2の重合部をラップシート20との間で上方から押圧し、両ラップシート端部を継ぎ合わせる。そして図5■のようにプレス部材53と吸引パイプ43を夫々待機位置C2,B3へ戻し機台を再起動する。
【0018】本実施例では、切断時に吸引パイプ43にもラップシートの開放位置B3で旧ラップシートLP2のニップ機能をもたせたが、プレス部材53のニップのみでも実施できる。また、吸引パイプ43は3位置をとるようにしたが、待機位置がラップシートLP1の開放位置であって、しかもその待機位置は、ラップシートのラッププレート20上の通過を許すようにラッププレート20より離れた位置となるようにしてあってもよい。
【0019】
【発明の効果】以上のようにこの発明によれば、ラップシートの停止状態において、ニップ部分とフロントフィードローラ間に延在するラップシートを、厚さ方向の一側の待機位置から、切断位置へ向けて切断用コームを移動させるようにしたので、ニップ動作と切断用コームの移動動作だけで、停止しているラップシートを確実に、かつ、短時間に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラップシートの切断及び継ぎ装置の側面図である。
【図2】プレス部材、吸引パイプのニップ状態における図1の平面図である。
【図3】本発明を適用するリボンラップマシンの全体平面図である。
【図4】ラップシートの切断作用図である。
【図5】ラップシートの継ぎ作用図である。
【図6】ラップシートの切断状態を示す図である。
【符号の説明】
5 ドラフト部、 10 フロントフィードローラ、11 バックフィードローラ、 32 切断用コーム、53 プレス部材、 N2 ニップ部分、 A1 待機位置、A2 切断位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対のフィードローラ上のラップロールからラップ処理手段へ向けて送り出される連続したラップシートを、ラップシートを停止させてラップ処理手段とフロントフィードローラ間でニップし、このニップ部分とフロントフィードローラ間で、ラップシートの厚さ方向の一側にある待機位置から、厚さ方向他側にあって待機位置に対してフロントフィードローラ方向に位置する切断位置へ向けて切断用コームを移動させることを特徴とするラップシートの切断方法。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−184833
【公開日】平成6年(1994)7月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−353254
【出願日】平成4年(1992)12月11日
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)