説明

ラップフイルム収納箱

【課題】
現在、ラップフイルムは生活の必需品であり、特に厨房での使用頻度は高く、調理のせわしい中で素早く切り取って使用することが多い。ラップフイルムを使用の際、指先で摘み引き出しているが、そこには切断刃が付設されているから手指を傷付ける危険性がある。視力の低下や手に震戦がある人、また、指が濡れている場合には手指を損傷する危険性が一段と高くなる。したがってラップフイルム収納箱は安全な構造でなければならない。
【解決手段】
切断刃が付設されている掩蓋片を開く最初の指と、次にフイルムの先端縁部を摘む指の双方は、切断刃による損傷を受ける危険性が高い。そこで双方の指が挙動する領域内にある掩蓋片の長手縁中央部近傍には、切断刃を具有せず、切断刃は掩蓋片の長手縁部の両片端側にそれぞれ具備する新規なラップフイルム収納箱を実現したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフイルム収納箱からラップフイルムを引き出す際、手指が触れる危険性の高い領域内に切断刃を具有しない安全性の高い構造の収納箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の切断刃付きラップフイルム収納箱では、収納箱内に樹脂系ラップフイルムまたはアルミホイルがロール状に巻かれて収納されている。この収納箱本体の背面部には収納箱の開口部を覆うための蓋板が連接し、さらに蓋板の先端には収納箱本体の前面板と重なり合う掩蓋片が設けられている。この掩蓋片の長手縁部の全長に金属製、プラスチック製または紙製の切断刃が掩蓋片の長手縁部からわずかに突出するように取付けられている。ラップフイルムを使用の際には、ラップフイルム収納箱からラップフイルムの先端縁部を指先で摘み出さなければならない。すなわち、一方の手で掩蓋片の長手先端縁部を開く時と、次にフイルムの先端縁部を他方の手の指先で摘み、引き出す時とが、最も切断刃に接触しやすく、両方の手指を傷付ける危険性がある。特に指が濡れている場合、または視力の低下や手に震戦がある場合には手指を損傷する危険性が一段と高くなる。
【0003】
従来、ラップフイルムの切断には切断刃が使用されているが、その中で切断刃の安全性を考慮したラップフイルム収納箱の文献には以下のものがある。
【0004】
特開平10−258834号公報(以下、特許文献1という)に、「掩蓋片5の先端部分が鋸刃部材8に覆い被さっているので刃先部分は露出していない。すなわち、掩蓋片5の先端と折曲げ用罫線αとの間の帯状領域Aが刃先部分の上に残った状態になる。(特許文献1の第0009段落)」、「このラップフィルムFの引っ張りに応じて掩蓋片5の先端部分である帯状領域Aが捲れ上がり、ラップフィルムFは鋸刃部材8の刃先部分により切断される。(特許文献1の第0010段落)」の記載がある。
【0005】
特開昭62−208361号公報(以下、特許文献2という)に、「巻回フイルムの巻出し小分け容器において、巻回フイルムの巻芯と平行で巻回フイルムの幅より長い鋭角部を設け、該鋭角部の少なくとも両端に切断具を設け、該鋭角部をフイルムの引裂伝播の誘導部とすることを特徴とする鋭角部を有する巻回フイルムの容器(特許文献2の特許請求の範囲段落)」の記載がある。
【0006】
特開昭62−208362号公報(以下、特許文献3という)に、「容器の側壁の稜線上の少なくとも両端に、やすりシート片を貼着し、(特許文献3の特許請求の範囲段落)」の記載がある。
【0007】
実用公開平4−80822(以下、特許文献4という)に、「ロール状体物を収容する紙製カートンの展開状態において、両端側部にて囲まれた底部と正面図との折曲箇所で、且つ正面部側に刃先がより突出するように切断刃を形成し、該切断刃には硬化材を塗布し、切断刃の長手方向の中間に少なくとも1箇所に支持折曲部を形成(特許文献4の請求の範囲(2)段落)」の記載がある。
【0008】
特開2000−229628(以下、特許文献5という)に、「ロール状に巻かれたラップフィルムを収納した収納箱と、該収納箱に連接され、該ラップフィルムの巾方向に沿う端片を有する蓋板とを備えたロール状物収納体において、上記端片の長手方向の少なくとも一端部に切り込み部を設け、該切り込み部における、該端片の中央部よりの内側縁の角部をラップフィルムの切断開始部とし(特許文献5の第0004段落)」の記載がある。
【0009】
【特許文献1】特開平10−258834号公報
【特許文献2】特開昭62−208361号公報
【特許文献3】特開昭62−208362号公報
【特許文献4】実開平4−80822号公報
【特許文献5】特開2000−229628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1は、鋸刃部材の刃先部分の上に帯状領域が残った状態で切断刃を上から掩覆するから、ラップフイルム収納箱を上方から把持する方の手指の安全性は高くなるが、ラップフイルムの先端縁を摘み出しに向かう他方の手指は下方から刃に接近するから手指を傷付ける危険性は解消されていない。視力の低下や手に震戦がある場合には手指を損傷する危険性があり安全性の問題が残る。
【0011】
収納箱外壁の鋭角部または直角部、すなわち収納箱の外壁の稜の両端に切断刃を具備する文献として、特許文献2は、収納箱の形状を菱形、三角形の断面形状とし収納箱の鋭角部の両端に切断具を設け、鋭角部をフィルムの引裂伝播の誘導部とすることを特徴とする収納箱であり、特許文献3は、収納箱の側壁の稜線上の少なくとも両端に砥粒が接着されたシート片が貼着されている収納箱であり、また特許文献4は、収納箱の展開状態において、両端側部にて囲まれた底部と正面図との折曲箇所の正面部側に刃先がより突出するように硬化材を塗布して切断刃を形成し、切断刃の長手方向の中間に少なくとも1箇所に切断刃のない支持折曲部のある収納箱である。上記文献は、いずれも切断具が収納箱の外壁の折曲箇所の稜線上に形成されている。切断具が収納箱外壁から突出した構造は、使用上の安全性、収納箱の保管や製造法の諸点からの問題がある。
【0012】
特許文献5は、ラップフィルムの切断部に切断刃を具有せず収納箱の掩蓋片の長手先端部に切り込み部を設け、該切り込み部の中央部よりの内側縁の角部をフイルム切断開始部としているが、フイルム切断の切裂の開始点部は、切裂開始の起点となり得る鋸歯が多数連続している鋸歯状刃構造が優れ、内側縁の角部の一点のみでフィルムの切裂を開始させる構造に問題がある。
【0013】
現在、ラップフイルムは生活の必需品であり、特に厨房での使用頻度は高く、調理のせわしい中で収納箱から素早く切り取って使用することが多い。したがってラップフイルム収納箱は、視力の低下や手に震戦がある人、また手指が濡れている人にも安全なでなければならない。今後、増加する高齢者の使用の点からも安全なラップフイルム収納箱の提供は必要である。
【0014】
本発明は、切断刃付のラップフイルム収納箱からラップフイルムを引き出して切断する際に、切断刃による手指損傷の危険性をなくした安全性の高い構造のラップフイルム収納箱の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者は、鋭意研究の結果、ラップフイルム収納箱の掩蓋片の長手先端縁部の手指が触れると予測される領域の中央部近傍に鋸歯状刃を具有しないラップフイルム収納箱を発明し、上記課題を解決した。すなわち、
【0016】
ラップフイルム収納箱からラップフイルムを切り取る際、通常、収納箱を握持し、握持した手の親指で切断刃が付設されている掩蓋片を少し開くことにより、収納箱本体の前側面上部にラップフイルムの先端縁部を露呈させ、その露呈したラップフイルムの先端縁部を他方の指で摘み出している。すなわち、切断刃が付設されている掩蓋片を開く最初の指と、次にフイルムの先端縁部を摘む指の双方は切断刃に接近するから切断刃による損傷を受ける危険性が高い。本発明は双方の指が挙動する領域内にある掩蓋片の長手縁中央部近傍には、切断刃を具有せず、切断刃は掩蓋片の長手縁部の両片端側にのみそれぞれ具有し、これらの切断刃が切裂の開始部と終止部となり、切断刃の欠歯した中央部近傍縁部は引裂を誘導する機構を特徴とする新規なラップフイルム収納箱を実現した。
【0017】
本発明のラップフイルム収納箱の切断刃は、ラップフイルム収納箱を握持した時、収納箱の掩蓋片の長手縁部の上端部と下端部の2箇所にそれぞれ付設されている。握持した状態でラップフイルムを切り取る際、フイルムの上縁の1箇所が上端部切断刃で裂開するようにフイルムを引く、更に引き続けるとフイルムに入った開裂が欠歯部の縁部に誘導されて進行し、下端部切断刃でフイルムは切取られ切断が完了する。
【0018】
本発明は、ラップフイルム収納箱の掩蓋片の長手縁両端部にそれぞれ切断刃を付設し、その両端の切断刃を結ぶ仮想直線の稜線部がフイルムに入った開裂の誘導部を形成、すなわち切断刃はラップフイルム収納箱の掩蓋片の長手縁両端部に付設され、両切断刃間に切断刃を具有しない切断具機構を特徴とする。
【0019】
本発明のラップフイルム収納箱の切断部は、直線状切断刃の中央部近傍が欠歯し、両片端側にのみ切断刃を具備した直線状切断刃片を掩蓋片の長手縁部に付設したものである。
【0020】
本発明のラップフイルム収納箱の切断部は、全長が鋸歯状の直線状切断刃片の中央部近傍の鋸歯に、紙、布または合成樹脂フイルムを跨乗して被着させるか、または欠歯させる中央部近傍の鋸歯に硬化性樹脂を塗布硬化させて鋸歯を欠歯させてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の装置の使用により、調理場の多忙な作業の中で、濡れた手であわただしくラップフイルムを収納箱から切り取る人、また、視力の低下や手に震戦がある人などが切断刃で手指を傷付けることのない安全な作業が可能になった。
【0022】
本発明の装置は、現在、使われている直線鋸歯状切断刃付のラップフイルム収納箱の直線鋸歯状の切断刃の中央部近傍を欠歯させた構造であるから製作に過大な変更を要しない利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を本発明装置に基づき、本発明装置の切断刃、欠歯部位、フイルム開裂誘導の稜線部位の構成との関連について説明する。
【0024】
本発明の斜視図を図1に示す。ラップフイルム収納箱11は、収納箱11内にロール状に巻かれたラップフィルム22が収納されている。収納箱本体11の背面部には収納箱11の開口部を覆うための蓋板33が連接し、さらに蓋板の先端には収納箱11本体の前面板44と重なり合う掩蓋片55が設けられている。この掩蓋片55の長手縁両端部に金属製、プラスチック製または紙製の切断刃66が掩蓋片55の長手縁部からわずかに突出するように取付けられている。対置する両端の切断刃間はフイルムに入った開裂を対置する切断刃まで誘導する稜線部77である。
【0025】
図2は、図1の本発明の斜視図から、掩蓋片55部を抽出した図である。掩蓋片55の長手縁部の両端に切断刃66が付設されラップフイルムの開裂の開始と切断終止の作用をする。両端の切断刃66を結ぶ仮想直線にあたる稜線部77は、フイルムに入った開裂を対置する切断刃まで誘導する作用を持つ。フイルムを引っ張ることで切断刃により開裂が入り、その開裂は稜線77に沿って対置する切断刃66まで進行してフイルムの切断は完了する。一度フイルムに入った開裂は対置する切断刃がなくても、フイルムを引くだけで開裂は稜線77に沿って進行し切断は完了するから、切断刃は握持した収納箱の上方の1箇所のみでよいが、握持する手を換えてもフイルムの切断を可能にするために、切断刃は両端に付設され右利き、左利きのいずれにも対応できる。
【0026】
図3は、図2に示された両端にある2箇所の切断刃66と稜線部77の拡大図である。この図は鋸歯状切断刃66から稜線部77への連結状態の構造を示し、鋸歯の歯数や厚さを規定する図ではない。
【実施例1】
【0027】
本発明装置について実施した結果を記述する。金属性鋸歯刃の中央部近傍の鋸歯刃を長さ10センチメートル、(欠歯法1)上質紙を1枚跨乗して被着させて欠歯状態にした収納箱と、(欠歯法2)速乾性樹脂系接着剤を刃先に塗布して鋸歯を掩覆させて欠歯状態にした収納箱について実施した。樹脂系ラップフイルムとして塩化ビニリデンの22センチメートル幅と30センチメートル幅のロール2種類について行った結果、樹脂系ラップフイルムの切断性能は、(欠歯法1)、(欠歯法2)共に切れ味がよく、市販の収納箱との差はなかった。
【実施例2】
【0028】
市販されている家庭用アルミホイル25センチメートル幅ロールについて、上記実施例1に記述の方法で(欠歯法1)、(欠歯法2)の収納箱を作成し、市販の収納箱との比較を行ったところ、(欠歯法1)、(欠歯法2)共に切れ味がよく、市販の収納箱との差異は認められなかった。
【0029】
機能や性能に関わる事例ではないが、本発明装置と市販の収納箱とに相違があった。樹脂系ラップフイルム切断と、アルミホイル切断のそれぞれの切断時、市販のラップフイルム収納箱では、鋸歯を全長にわたって具有するから、切断開始から切断終了まで切断音が連続したが、(欠歯法1)、(欠歯法2)では切断の開始時と終了時の2回、鋸歯による切断音が聞こえ、稜線部を引裂が走る時は音を発しなかった。実施例1および実施例2から、ラップフイルムの切断には、切断部の全長にわたって鋸歯刃を必要とせず中央部近傍の鋸歯は欠歯できる結果を得た。指の接近する領域内に鋸歯刃がないことは取扱う手指の安全性を高めたばかりでなく、視覚的にも安心感を与えた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のラップフイルム収納箱の斜視図である。
【図2】図1の斜視図から、掩蓋片55部を抽出した図である。
【図3】図2に示された両端にある2箇所の切断刃66と稜線部77の拡大図である
【符号の説明】
【0031】
11、ラップフイルム収納箱
22、ラップフイルム
33、蓋板
44、前面板
55、掩蓋片
66、切断刃
77、稜線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップフィルムのロール状巻回物を収納する収納箱であって、収納箱本体の開口部の一側縁に開閉自在な蓋体が連設されており、該蓋体の先端には収納箱本体の前側面上部と重なる掩蓋片が連設され、さらに該掩蓋片の長手縁部には直線状の鋸歯状切断刃を取付けてなるが、切断刃中央部近傍の鋸歯を欠歯させた切断具機構を特徴とするラップフイルム収納箱。
【請求項2】
ラップフイルムの切断は、掩蓋片の長手縁部の一方の片端側の切断刃により開始し、次に両端の切断刃を結ぶ仮想直線部、すなわち中央部近傍の欠歯部の縁に沿ってラップフイルムの開裂が誘導され他方の片端側の切断刃によりラップフイルムの切断が完了する機構の請求項1に記載のラップフィルム収納箱。
【請求項3】
掩蓋片の長手縁部の切断刃は中央部近傍が欠歯し、長手縁部の両端にのみ切断刃を具有する直線状切断具を付設した構造の請求項1から請求項2に記載のラップフィルム収納箱。
【請求項4】
掩蓋片の長手縁部の切断刃中央近傍の欠歯は、鋸歯に紙、布または合成樹脂フイルムを跨乗して被着させるか、または欠歯させる中央部近傍の鋸歯に硬化性樹脂を塗布硬化させて鋸歯を欠歯させてなる請求項1から請求項3に記載のラップフィルム収納箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−298396(P2006−298396A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119488(P2005−119488)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(398020585)
【Fターム(参考)】