説明

ラビング装置

【課題】ラビング処理により発生する異物を含んだエアを滞留させることなく吸引することができるラビング装置を提供する。
【解決手段】基板5を載置可能なステージ6と、基板5の表面に対してラビング処理を行うラビングローラ3とを備えたラビング装置に係る。ラビング装置を包囲するチャンバ14と、チャンバ14の、ステージ6の基板載置面に対向する第1の壁S1に形成された、チャンバ14内へエア8を送風するための送風口12と、チャンバ14の、ステージ6の基板載置面とは反対側面に対向する第2の壁S2に形成された、チャンバ14内からエア8を吸引するための吸引口13と、を有する。第1の壁S1から第2の壁S2へ向けてエア8の流路が形成されており、該流路は、第1の壁S1からラビングローラ3の位置まで所定の流路断面積を有し、ラビングローラ3の位置から第2の壁S2までは所定の流路断面積より大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置の製造に用いる基板の表面に対してラビング処理を行うラビング装置に関する。特に、ラビング処理時に発生する異物を除去することができるラビング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造に試用される基板(以下、液晶表示装置製造用基板)には、液晶分子群を一定方向に配列させる機能(配向機能と称する)が付与されている。配向機能を付与するために液晶表示装置製造用基板には配向膜が設けられている。配向膜は、例えばポリイミド(polyimide)系樹脂といった有機高分子が液晶表示装置製造用基板の表面に膜状に塗布されることによって形成される。
【0003】
液晶表示装置製造用基板の配向膜へ配向機能を付与する処理として、配向膜の表面をポリアミド(polyamide)系樹脂からなるラビング布で一定方向に向かって擦るラビング処理が知られている(例えば特許文献1)。図4は、特許文献1で開示されている、ラビング処理を施すラビング装置の部分断面図である。
【0004】
図4に示すように、ラビング装置は、円柱形状の金属ローラ1の表面にラビング布2が巻かれたラビングローラ3と、配向膜4を有する液晶表示装置製造用基板5を載置するためのステージ6と、を備えている。ラビング布2は、ラビングローラ3の半径方向外側に向かって突出するように設けられたパイル7を有している。
【0005】
図4に示すラビング装置を用いたラビング処理では、ラビングローラ3を液晶表示装置製造用基板5に向かって一定圧力で押し込みながら、ラビングローラ3の軸を中心にラビングローラ3を回転させて配向膜4の表面を擦る。その結果、パイル7が配向膜4の表面の高分子鎖を潰すことによって配向膜4に異方性が生じ、液晶分子群の配向方向が規定される。
【0006】
また、ステージ6は、ステージ6の基板載置面と平行な方向であって、ラビングローラ3の軸と交わる一方向に前後進移動可能に設けられている。したがって、ラビングローラ3を回転させた状態でステージ6を一方向に移動あるいは往復移動させることによって、配向膜4の表面の所望の領域にラビング処理を施すことができる。
【0007】
このようなラビング装置を用いたラビング処理では、配向膜4の表面を擦るときに、パイル7から発生する繊維くずや、配向膜4の削りかす等の多量の異物が発生する。このような異物がラビングローラ3に残っていたり、液晶表示装置製造用基板5に付着したりすると、液晶表示装置に様々な不具合が発生する。
【0008】
たとえば、ラビングローラ3に異物が残っていると、ラビング処理時の、ラビングローラ3から配向膜4へかけられる圧力にばらつきが生じ、配向膜4の表面に均一にラビング処理を施せないことがある。また、液晶表示装置製造用基板5に異物が付着すると、液晶表示装置を組立てたときに該異物が液晶表示装置に挟まってギャップ不良を生じる。
【0009】
そこで、特許文献2では、異物を除去しながらラビング処理を施すことができるラビング装置が開示されている。図5は、特許文献2で開示されているラビング装置の概略図である。図5に示すように、特許文献2で開示されているラビング装置は、ラビングローラ3の表面にエア8を吹き当てる送風装置9と、エア8を吸引する吸引装置10と、を備えている。送風装置9でラビングローラ3の表面にエア8を吹き当てることにより、異物をラビングローラ3から除去することができる。また、異物を含んだエア8を吸引装置10で吸引することにより、異物の液晶表示装置製造用基板5への付着を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−258192号公報
【特許文献2】特開2003−98528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献2で開示されているラビング装置では、送風装置9から送風されるエア8と、ラビング装置の周囲の雰囲気と、が十分に隔てられていない。そのため、送風装置9から送風されるエア8がラビング装置の周囲の雰囲気を巻き込み、該雰囲気に浮遊している粉塵をラビングローラ3に吹き当て、該粉塵がラビングローラ3に付着する虞があった。また、吸引装置10は、ラビング処理により発生する異物を含んだエア8だけでなく、ラビング装置の周囲の、異物を含まない雰囲気も吸引するため、ラビング処理により発生する異物を含んだエア8を十分に吸引できない。その結果、ラビング処理により発生する異物が液晶表示装置製造用基板5に付着することがあった。このようなことから、液晶表示装置に発生する不具合を防ぐことができなかった。
【0012】
そこで、送風装置9から送風されるエア8と、ラビング装置の周囲の雰囲気と、が隔てられたラビング装置を検討した。
【0013】
図6は、送風装置9から送風されるエア8と、ラビング装置の周囲の雰囲気と、が隔てられたラビング装置の概略図である。図6に示すように、ラビング装置は、ラビングローラ3およびステージ6を包囲するチャンバ11を備えている。
【0014】
チャンバ11の壁には、チャンバ11内にエア8を送風するための送風口12と、チャンバ11内のエア8を吸引するための吸引口13と、が設けられている。チャンバ11の、送風口12および吸引口13が設けられている箇所以外の璧が、チャンバ11の内側と外側とを隔てている。
【0015】
送風口12に送風装置9を接続し、吸引口13に吸引装置10を接続することによって、チャンバ11の外側の雰囲気を巻き込むことなく、エア8をラビングローラ3に吹き当てることができ、かつエア8を吸引することができる。すなわち、雰囲気の粉塵のラビングローラ3への付着を防止でき、ラビング処理によって発生する異物を含んだエア8を十分に吸引することができる。
【0016】
ところが、チャンバ11の形状や、送風口12および吸引口13の位置によっては、送風口12から送風されるエア8がチャンバ11の内部に滞留したりすることがあった。ステージ6の移動範囲の全てを含むチャンバ11は比較的大きくなりやすく、そのようなチャンバ11ではエア8の滞留が生じやすい。
【0017】
エア8がチャンバ11の内部で滞留すると、ラビング処理によって発生する異物がラビングローラ3や液晶表示装置製造用基板5に付着するだけでなく、チャンバ11の内壁に異物が堆積することがあり、チャンバ11の内部を清掃する必要があった。
【0018】
特に、近年では、ラビング処理の効率を高めるために、ラビングローラ3やステージ6以外の部品をチャンバ11に格納する場合がある。より多くの部品をチャンバ11に格納することによってエア8の流れがより複雑になり、チャンバ11の内部でより滞留しやすくなる。
【0019】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、ラビング処理により発生する異物を含んだエアを滞留させることなく吸引することができるラビング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様は、液晶表示装置の製造に用いる基板を載置可能なステージと、ステージ上の基板の表面に対してラビング処理を行うラビングローラとを備えたラビング装置に係る。この態様において、本発明は、ラビング装置を包囲するチャンバと、チャンバの、ステージの基板載置面に対向する第1の壁に形成された、チャンバ内へエアを送風するための送風口と、チャンバの、ステージの基板載置面とは反対側面に対向する第2の壁に形成された、チャンバ内からエアを吸引するための吸引口と、を有する。第1の壁から第2の壁へ向けてエアの流路が形成されており、該流路は、第1の壁からラビングローラの位置まで所定の流路断面積を有し、ラビングローラの位置から第2の壁までは所定の流路断面積より大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のラビング装置によれば、ラビング処理により発生する異物を含んだエアを滞留させることなく吸引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態におけるラビング装置の概略図である。
【図2】本発明の効果を検証するために用いた、本発明の実施例に係るラビング装置の斜視図である。
【図3】比較例に係るラビング装置の斜視図である。
【図4】従来におけるラビング装置の部分断面図である。
【図5】特許文献2に開示されている、異物を除去しながらラビング処理を施すことができるラビング装置の概略図である。
【図6】送風装置から送風されるエアと、ラビング装置の周囲の雰囲気と、が隔てられたラビング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。なお、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態におけるラビング装置の概略図である。図1に示すように、ラビング装置は、液晶表示装置製造用基板5を載置可能なステージ6と、液晶表示装置製造用基板5にラビング処理を行うラビングローラ3と、を備えている。
【0025】
ラビングローラ3は円筒形状を有しており、ラビングローラ3の中心軸が液晶表示装置製造用基板5の表面と平行になるようにラビングローラ3が設けられている。また、ラビングローラ3は、ラビングローラ3の中心軸周りに回転可能に設けられている。
【0026】
ラビング装置を用いたラビング処理は、ラビングローラ3を液晶表示装置製造用基板5に向かって一定圧力で押し込みながら、ラビングローラ3を中心軸周りに回転させることによって行われる。液晶表示装置製造用基板5に設けられた配向膜4の表面がラビングローラ3によって擦られることによって、配向膜4の表面の高分子鎖が潰されて配向膜4に異方性が生じ、液晶分子群の配向方向が規定される。
【0027】
また、ステージ6は、ステージ6の基板載置面と平行な方向であって、ラビングローラ3の中心軸と交わる一方向(以下、移動方向Xと称す)に前後進移動可能に設けられている。したがって、ラビングローラ3を回転させた状態でステージ6を移動方向Xに移動あるいは往復移動させることによって、配向膜4の表面の所望の領域にラビング処理を施すことができる。
【0028】
ラビング装置は、ラビングローラ3およびステージ6を包囲し、ラビングローラ3およびステージ6をラビング装置の周囲の雰囲気から隔離するチャンバ14を備えている。チャンバ14の壁には、チャンバ14の内部へエア8を送るための送風口12と、チャンバ14の内部のエア8を吸引するための吸引口13と、が形成されている。送風口12および吸引口13に送風装置9および吸引装置10を接続することによって、チャンバ14の内部にエアの流れを形成することができる。
【0029】
チャンバ14の、送風口12および吸引口13が設けられている箇所以外の領域には、チャンバ11の内側と外側とを連通する開口部は形成されていない。したがって、ラビング処理時に、チャンバ14の外側の粉塵がラビングローラ3や液晶表示装置製造用基板5に付着することを防ぐことができる。
【0030】
送風口12からチャンバ14に供給されるエアには粉塵が含まれていないことが望ましい。また、送風口12から送風するエアとして、ラビング処理時に発生する異物をラビングローラ3から容易に除去できるように超音波振動エアを用いても良い。さらに、ラビング処理時にはラビングローラ3と液晶表示装置製造用基板5との間に静電気が発生することがある。該静電気を除去するために、加湿エアやイオン化エアを用いても良い。
【0031】
ここで、送風口12および吸引口13の位置並びにチャンバ14の形状について説明する。
【0032】
送風口12は、チャンバ14の、ステージ6の基板載置面に対向する第1の壁S1に形成されている。送風口12をチャンバ14の第1の壁S1に設けることによって、ステージ6に依らず、送風口12から送風されたエア8をラビングローラ3に吹き当てることができる。
【0033】
送風口12の大きさや個数は特に限定されるものではないが、ラビングローラ3の全周にエアを吹き当てるために、ラビングローラ3の直径よりも大きい範囲にエア8を送風できる大きさや個数が良い。
【0034】
また、吸引口13は、チャンバ14の、ステージ6の基板載置面とは反対側面に対向する第2の壁S2に形成されている。したがって、ラビングローラ3に吹き当てられたエアは、ステージ6の周囲を通過して吸引口13から吸引される。
【0035】
送風口12からチャンバ14内へ送風されるエア8は、第1の壁S1から第2の壁S2へ向けて流路が形成されている。
【0036】
エア8の流路は、第1の壁S1からラビングローラ3の位置まで所定の流路断面積(流れ方向に垂直に交わる断面の面積)を有している。したがって、送風口12からラビングローラ3の間におけるエア8の滞留が抑制される。
【0037】
第1の壁S1からラビングローラ3の位置までのエア8の流路断面積をより小さくすることによって、より少ないエア8の量でより強い風圧でラビングローラ3にエア8を吹き当てることができる。すなわち、送風装置9の吐出能力を小さくでき、または送風装置9の台数を少なくすることができ、コストを削減することができる。
【0038】
なお、ここで言う「所定の流路断面積」とは、チャンバ14によって形成される、第1の壁S1からラビングローラ3の位置までの流路断面積が全く変化しない場合に限られず、エア8の滞留を生じない程度の流路断面積の変化を含む。
【0039】
また、エア8の流路は、ラビングローラ3の位置から第2の壁S2までは、第1の壁S1からラビングローラ3の位置までの流路断面積より大きい流路断面積で形成されている。ラビングローラ3の位置から第2の壁S2までのエア8の流路を大きく形成することによって、ステージ6の移動範囲をチャンバ14に含めることができる。
【0040】
吸引口13の大きさや個数は特に限定されるものではないが、本実施形態では、吸引口13は、チャンバ14の、ステージ6の移動する方向に沿って複数配設されている。吸引口13をステージ6の移動する方向に沿って複数配設することによって、ステージ6の位置に対応した吸引口13がステージ6の基板載置面などに衝突したエア8を吸引しやすくなる。したがって、ステージ6の基板載置面などに衝突したエア8の滞留をより抑制することができる。
【0041】
ステージ6の位置によってはステージ6の基板載置面に衝突しないエア8も存在する。吸引口13をステージ6の移動範囲に対応した位置に配設した場合には、ステージ6の位置に対応していない吸引口13がステージ6の基板載置面に衝突しないエア8を吸引しやすくなり、エア8の滞留をより抑制することが可能となる。
【0042】
このように送風口12および吸引口13の位置並びにチャンバ14の形状を設けることによって、効率よくエア8をラビングローラ3に吹き当てることができる。また、ラビングローラ3に吹き当てられたエア8やステージ6の基板載置面などに衝突したエア8を吸引することができる。
【0043】
したがって、ラビング処理によって発生する異物をチャンバ14から排出することができ、該異物の、ラビングローラ3への残留や、液晶表示装置製造用基板5への付着を防止することが可能となる。
【0044】
(実施例)
本発明の効果を検証するために、汎用熱流体解析ソフトウエア(SolidWorksFlow Simulation)を用いて、送風口12から送風されたエアが吸引口13に吸い込まれるまでの平均時間、時間偏差および最大滞留時間を計算した。
【0045】
図2は、本発明の効果を検証するために用いた、本発明の実施例に係るラビング装置の斜視図であり、チャンバの内部を透過した場合の図である。
【0046】
図2に示すように、本実施例におけるラビング装置では、直方体形状のチャンバ15に遮蔽空間を設けて本発明のエアの流路(図1)を形成した。具体的には、チャンバ15は、移動方向Xの寸法が7.0m、移動方向Xと垂直に交わりステージ6の基板載置面と平行な方向(以下、幅方向Yと称す)の寸法が4.0m、ステージ6の基板載置面と垂直に交わる方向(以下、高さ方向Zと称す)の寸法が2.7mである直方体形状を有している。
【0047】
図1に示すチャンバ14の形状とするために、図2に示すように、移動方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zの寸法が1.4m、4.0mおよび0.8mの遮蔽空間A1を、チャンバ15の、ステージ6の基板載置面に対向する第1の壁S1と、移動方向Xの側に位置する第3の壁S3と、で形成される角部に設けた。また、移動方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zの寸法が0.6m、4.0mおよび0.8mの遮蔽空間A2を、第1の壁S1と、チャンバ15の、移動方向Xと反対側に位置する第4の壁S4と、で形成される角部に設けた。
【0048】
本実施例では、遮蔽空間A1およびA2は、アクリル板を用いて形成した。もちろん、アクリル板に限定されるものではなく、アクリル板以外の材質を用いて遮蔽空間A1およびA2を形成してもよい。
【0049】
送風口12として、移動方向Xおよび幅方向Yの寸法が0.4mおよび1.2mの長方形形状の開口を、第1の壁S1の、遮蔽空間A1およびA2に含まれない領域に、移動方向Xに沿って1.2mの間隔で4つ設けた。したがって、第1の壁S1からラビングローラ3の位置までの流路断面は、移動方向Xおよび幅方向Yの寸法が5.0mおよび4.0mの長方形形状となっている。
【0050】
また、吸引口13として、チャンバ15の、ステージ6の基板載置面とは反対側面に対向する第2の壁S2に、移動方向Xに沿って4つの開口を均等に設けた。
【0051】
本実施例では、ラビングローラ3を、高さ方向Zを中心にターンさせることができるターン機構16を備えており、ラビングローラ3と送風口12との間にターン機構16の一部であるローラ支持部材17が位置している。
【0052】
ラビングローラ3を用いてラビング処理を行う場合、液晶表示装置製造用基板5の配向方向は、ラビングローラ3の軸と直交する方向に規定される。ターン機構16を設けることによってラビングローラ3の軸方向を変更することが可能となり、液晶表示装置製造用基板5の配向方向を所望の方向を容易に変更することができる。
【0053】
このように、ラビングローラ3やステージ6以外に、ターン機構16がチャンバ15に格納されており、エアの流れがより複雑になりやすい。ターン機構16をチャンバ15の内部にさらに備えるラビング装置において、エアの滞留状態を検証した。
【0054】
ラビング処理の条件は、以下のようにした。ラビング処理の対象となる液晶表示装置製造用基板5として、移動方向Xおよび幅方向Yの寸法がともに2.0mの正方形形状のものを使用した。液晶表示装置製造用基板5の移動速度を3.0m/分、ラビングローラ3の回転速度を1000rpmとした。
【0055】
また、それぞれの送風口12から15m3/分(大気圧下)の加湿エアを送風した。チャンバ15の内部圧力が大気圧よりも80Paほど低くなるように、それぞれの吸引口13から加湿エアを8.25m3/分(チャンバ11内の圧力下)で吸引した。
【0056】
以上のラビング処理の条件において、それぞれの送風口12から送風される加湿エアの、チャンバ11内での滞留時間の平均値、偏差、および最大値を表1に示す。なお、表1において、4つの送風口12を、移動方向Xの順に送風口12a、14b、14cおよび14dとした。
【0057】
【表1】

【0058】
(比較例)
比較例として用いたラビング装置について説明する。図3は、比較例に係るラビング装置の斜視図であり、チャンバの内部を透過した場合の図である。
【0059】
比較例に係るラビング装置は、図2に示す本発明の実施例に係るラビング装置から遮蔽空間A1およびA2が取りのぞかれたものである。また、送風口12の大きさや位置は同じとした。すなわち、比較例に係るラビング装置では、エアが送風口12からチャンバ15へかけて流路断面積が急激に変化している。
【0060】
吸引口13、ターン機構16の大きさや位置、およびラビング処理の条件は実施例と同じとして、それぞれの送風口12から送風される加湿エアの、チャンバ15内での滞留時間の平均値、偏差、および最大値を表1に併記する。
【0061】
表1から明らかなように、本発明の実施例のラビング装置における加湿エアの滞留時間の平均値、偏差、および最大値は、比較例のラビング装置におけるものよりも小さくなっている。このことから、本発明におけるラビング装置を用いることにより、送風口12から送風されるエアの滞留が抑制されることがわかる。
【0062】
特に、4つの送風口12のうちの、移動方向Xにおける両端に位置する送風口12aおよび送風口12dから送風されるエアの滞留時間が顕著に短縮されている。チャンバの形状を、送風口12からラビングローラ3まで一定の流路断面積とし、かつラビングローラ3から吸引口まで、移動方向Xに沿った形状とした効果である。
【符号の説明】
【0063】
3 ラビングローラ
5 液晶表示装置製造用基板
6 ステージ
8 エア
12 送風口
13 吸引口
14 チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置の製造に用いる基板を載置可能なステージと、前記ステージ上の前記基板の表面に対してラビング処理を行うラビングローラとを備えたラビング装置において、
前記ラビング装置を包囲するチャンバと、
前記チャンバの、前記ステージの基板載置面に対向する第1の壁に形成された、前記チャンバ内へエアを送風するための送風口と、
前記チャンバの、前記ステージの基板載置面とは反対側面に対向する第2の壁に形成された、前記チャンバ内からエアを吸引するための吸引口と、を有し、
前記第1の壁から前記第2の壁へ向けて前記エアの流路が形成されており、該流路は、前記第1の壁から前記ラビングローラの位置まで所定の流路断面積で形成されており、前記ラビングローラの位置から前記第2の壁までは前記所定の流路断面積より大きく形成されていることを特徴とするラビング装置。
【請求項2】
前記ステージは、前記ラビングローラに対して、前記基板載置面と平行な一方向に前後進移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のラビング装置。
【請求項3】
前記吸引口は、前記第2の壁に、前記ステージの移動する方向に沿って複数配設されていることを特徴とする請求項2に記載のラビング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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