説明

ラベル貼付装置の吸着体

【課題】 被貼付物にラベルを貼付ける際の騒音および衝撃力の減少を図ったラベル貼付装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 被貼付物に向けて進退自在に設けられた進退機構20の先端に、繰り出されるラベルLをエアーAの吸気により吸着して一時的にラベルLを仮保持する吸着面11aが形成された吸着体本体を具備し、吸着体本体に仮保持されたラベルを被貼付物に押圧して貼付するラベル貼付装置の吸着体1である。吸着体本体1は、一面が進退機構20に取り付けられるとともに、他面が第1の磁性体7により覆われた第1の吸着体本体2と、吸着面11aを表面とした吸着部11を備え、吸着部11の表面が外面となるよう吸着部を一面として囲繞して中空部12を形成するとともに、この吸着部の裏面の中空部12を隔てた対向位置に、第1の磁性体7と同極に帯磁された第2の磁性体15を対峙して備えた第2の吸着体本体10と、から構成される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、磁力を使って被貼付物にラベルを貼付ける際の騒音の減少および衝撃力の緩衝を図ったラベル貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着板を複数のスプリングで保持したラベル貼付装置が知られている。
しかしながら、この種のラベル貼付装置は、吸着板にてラベルを吸着・保持し、被貼着物に押し当ててラベルを貼付するため、吸着板を支持するスプリングやネジなどに負担が掛かり耐久性に欠けるという問題がある。このため、前記スプリングやネジを定期的に交換するか、あるいは、耐久性を考慮して強度を持たせた素材を使用していた。
上記問題に対応するため、スプリングの圧縮力を変化させることにより被貼着物に対する押圧力をコントロールするようなラベル貼着装置が知られている(例えば、特許文献1の従来の技術(図3)参照)。
しかしながら、従来のラベル貼着装置は、被貼着物の硬さが変わると、その都度スプリング圧を調整しなければならないが、スプリング圧調整は大変難しく、また作業時間も数10分に及ぶことが多いため、作業効率の低下を招くという問題があった。
そこで、特許文献1においては、ラベルを吸着した吸着板を進退機構の動力伝達部に設けたスリップクラッチによってスリップさせることにより圧力調整を図った。すなわち、吸着板を被貼着物に押圧する押圧力が所定圧力になるとスリップクラッチがスリップするように構成し、柔らかくつぶれやすい被貼付物でも破壊することなくラベルの貼付を可能にするとともに、スプリングその他に掛かる衝撃力を減少させるようにしたものである。
しかしながら、上記特許文献1のラベル貼着装置では、吸着板を進退動させる進退機構にスリップクラッチをはじめ、タイミングベルトを設ける必要があるなど装置の大型化が避けられないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−81320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題点に着目して成されたものであり、磁力を使った吸着体本体を用い、被貼付物にラベルを貼付ける際の騒音および衝撃力の減少を図ったラベル貼付装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係るラベル貼付装置は、被貼付物に向けて進退自在に設けられた進退機構の先端に、繰り出されるラベルをエアーの吸気により吸着して一時的にラベルを仮保持する吸着面が形成された吸着体本体を具備し、前記吸着体本体に仮保持された前記ラベルを被貼付物に押圧して貼付するラベル貼付装置の吸着体において、前記吸着体本体は、一面が前記進退機構に取り付けられるとともに、他面が第1の磁性体により覆われた第1の吸着体本体と、前記吸着面を表面とした吸着部を備え、前記吸着部の表面の吸着面が外面となるよう前記吸着部を一面として囲繞して中空部を形成するとともに、この吸着部の裏面の中空部を隔てた対向位置に、前記第1の磁性体と同極に帯磁された第2の磁性体を対峙して備えた第2の吸着体本体と、から構成されることを特徴とする。
また、磁性体は、永久磁石、または、帯磁力を可変自在とした電磁石により構成することができる。
また、第1の吸着体本体はフランジ部を備え、かつ、このフランジ部に引っ掛けられる第1の折返し部が第1の磁性体に形成されるようにできる。
また、フランジ部に引っ掛けて設けられた第1の磁性体の第1の折返し部に対峙して、さらに、第1の折返し部を覆う第2の折返し部が第2の磁性体に形成されるようにできる。
さらに、第1および第2の磁性体を連結する磁性連結帯が設けられるようにできる。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、第1の吸着体本体に備えられた第1の磁性体と、第2の吸着体本体に備えられ、前記第1の磁性体と同極に帯磁され、かつ、対峙して備えられた第2の磁性体とが磁力により反発し、第1の吸着体本体に対し、これに覆いかぶさるように設けられた第2の磁性体を備えた第2の吸着体本体を磁力の反発力で遊離して浮遊するようにしたので、ラベル貼付時に吸着体本体にかかる衝撃が吸収・緩衝され、ひいては、吸着体本体を先端に支持する進退機構などにかかる衝撃が減少し、さらに、衝撃による騒音の減少が図れるという効果がある。
また、磁性体を、帯磁力を可変自在とした電磁石とすれば、第1および第2の磁性体の帯磁力を調整できるので、同極に帯磁(励磁)された第1および第2の磁性体の反発力の調整が容易となり、もって、被貼付物の硬さに見合う緩衝状態を容易に得ることができる。
また、第1の吸着体本体にフランジ部を備えるようにし、かつ、このフランジ部に引っ掛けられる第1の折返し部を第1の磁性体に形成すると共に、前記第1の折返し部に対峙して、第1の折返し部を覆う第2の折返し部を第2の磁性体に形成すれば、吸着体の進退方向だけでなく、フランジ部を覆う左右方向、前後方向の遊離、浮遊が可能となり、もってあらゆる方向の衝撃および騒音の減少を図ることができる。
また、第1および第2の磁性体を連結する磁性連結帯を設けるようにすれば、磁力の均等化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の吸着体を備えたラベル貼付装置の一実施の形態につき、図1ないし図3に基づいて説明する。
【0007】
図1は、プリント機構50の近傍に、本発明のラベル貼付装置の「進退機構」としてのシリンダ20の先端に設けられた吸着体1が待機し、かつ、別途、搬送手段としてのコンベア51上を被貼付物52が搬送される状態を示す側面の説明図である。
先ず、プリント機構50の概要を説明すると、主に、ラベルLが台紙60に仮着されたラベル連続体53を装着する供給部54と、サーマルヘッド55およびプラテンローラ56より成る印字部57と、剥離部58と、台紙巻取り部59とを備える。供給部54に装着したラベル連続体53は印字部57側へ繰り出し補助ローラ61を経てサーマルヘッド55とプラテンローラ56の間に挟持し、剥離部59にて台紙60のみを転向と称する方向変換を行い、補助ローラ62を経て台紙巻取り部59へと巻き取る。台紙60が転向された剥離部58には、印字部57にて所望情報が印字されたラベルLが台紙60より剥離され、前記プリント機構50の近傍に待機する吸着体1により吸着されて仮保持される。そして、吸着体1により仮保持されたラベルLは、前記コンベア51上の被貼付物52の搬送に同期を取って進退動するシリンダ20により被貼付物52へ向けて運ばれ押圧されて貼付される。
【0008】
次に、主に、図2および図3に基づき、本発明に係る吸着体1の一実施の形態につき説明する。
図2は、吸着体1の要部を示す一部破断の側面説明図、図3は、図2中、矢示III方向より見た平面の説明図である。
吸着体1はアルミなどの金属で形成され、主に、第1の吸着体本体2と、第2の吸着体本体10とより構成される。
第1の吸着体本体2は、前記シリンダ20の先端部分と接合する支持板3、およびこの支持板3に設けられたバネ4付の四本の支持ネジ5を介して取り付けられており、フランジ部6が形成されている。さらに、前記支持ネジ5に支持されている面とは反対の「平面」部分と、前記フランジ部6の全面は第1の磁性体7にて覆われている。すなわち、第1の磁性体7には、支持ネジ5に支持されている面とは反対側に位置する平面部8と、前記フランジ部6に引っ掛けて設けることができるよう、図2におけるフランジ部6の側面に対峙する側面折曲げ部9aと、上面折返し部9bより成る第1の折返し部9が形成されている。
【0009】
第2の吸着体本体10は、前記第1の吸着体本体2に覆い被さるような状態で設けられており、前記ラベルLが吸着され仮保持される吸着面11aを備えた吸着部11を一面に備えており、かつ、この吸着部11の吸着面11aが外面となるよう周囲をケース本体18で囲繞して中空部12が形成されている。吸着部11には、前記中空部12に連通する複数の吸引孔13が形成されている。
また、第2の吸着体本体10には、一端が前記中空部12に連通するとともに、他端が図示省略の真空装置に接続されたホース14が設けられており、真空装置(図示省略)を作動することによりホース14からエアーAが吸引され前記中空部12が負圧となって吸着部11に形成された吸引孔13より中空部12側にエアーAが吸引され、ラベLが吸着部11、具体的には吸着面11aに吸着されて仮保持されるようになっている。
さらに、前記吸着部11に対し中空部12を隔てた対向位置の外側面には、第2の磁性体15が設けられている。この第2の磁性体15は、前記第1の磁性体7に対峙して設けられており、前記第1の磁性体7と同様、第2の折返し部17が形成されている。より具体的には、前記第1の磁性体7の平面部8に対峙する平面部16、側面折曲げ部9aに対峙する第2の側面折曲げ部17a、および前記第1の上面折返し部9bに対峙する第2の上面折返し部17bより成る第2の折返し部17が形成されている。
【0010】
前記第1および第2の磁性体7、15は、共に同極(S極またはN極)に帯磁されており、かつ、第1の磁性体7と第2の磁性体15の間に、わずかなギャップGが生じる程度の、同等の磁力にて帯磁されている。すなわち、第1および第2の磁性体7、15は、同極で、かつ、間にわずかなギャップGが生じる程度の同等の磁力で帯磁されることにより、第1の吸着体本体2に対し覆い被さるような状態で設けられた第2の吸着体本体10は、第2の磁性体15に形成された平面部16、側面折曲げ部17aおよび上面折返し部17bより成る第2の折返し部17の各々が、第1の磁性体7の平面部8、側面折曲げ部9aおよび上面折返し部9bより成る第1の折返し部9と対峙して磁力反発することにより遊離しギャップGを隔てた状態で浮遊する、いわばフローティングされた状態となる。
なお、19は、第1および第2の磁性体7、15を連結する磁性連結体であり、この磁性連結体19にて第1および第2の磁性体7、15を連結することにより、磁力の均等化を図ろうとするものである。
また、第1および第2の磁性体7、15は、永久磁石、または、電磁石にて作成することができる。本実施の形態においては、「永久磁石」を採用したものとして説明を進め、必要に応じて「電磁石」を採用した場合の説明に言及する。
【0011】
次に、本発明の吸着体1を用いたラベル貼付装置の使用例を説明する。
剥離部58にて台紙60より剥離されたラベルLは、プリント機構50の近傍に待機する吸着体1により吸着されて仮保持されるとともに、コンベア51上の被貼付物52の搬送に同期を取って進退動するシリンダ20により被貼付物52へ向けて運ばれる。
主に、図2に示すように、シリンダ20の先端部分と接合する支持板3、およびこの支持板3に設けられたバネ4付の支持ネジ5を介して取り付けられた吸着体1は、前記被貼付物52に向けて進出させたシリンダ20の働きにより仮保持したラベルLを押圧して貼付する。
被貼付物52に対しラベルLを貼付する際、第1の磁性体7と第2の磁性体15とが磁力反発しており、第1の磁性体7を備えた第1の吸着体本体2に対し、これに覆いかぶさるように設けられた第2の磁性体15を備えた第2の吸着体本体10が磁力の反発力で遊離しギャップGを隔てて浮遊状態、いわゆるフローティング状態となるため、ラベルL貼付時に吸着体1にかかる衝撃が吸収・緩衝され、ひいては、バネ4付の支持ネジ5および支持板3、並びに支持板3と接合するシリンダ20にかかる衝撃が減少されるため、前記バネ4や支持ネジ5などの吸着体1の「取付け支持部品」の耐久性が向上する。
なお、衝撃の緩衝作用は、第1の磁性体7の平面部8、およびこれに対峙して設けられた第2の磁性体15の平面部16との磁力の反発力だけでなく、第1の磁性体7の側面折曲げ部9a、およびこれに対峙して設けられた第2の磁性体15の側面折曲げ部17a、さらには、第1の磁性体7の上面折返し部9b、およびこれに対峙して設けられた第2の磁性体15の上面折返し部17bが磁性により反発しているため、図2におけるシリンダ20の進退方向である上下方向のみならず、左右方向、前後方向に対しても働くものである。これにより金属(アルミ)で作成された第1および第2の吸着体本体2、10の金属同士の接触がないため、騒音の発生を最小限に止めることができる。
【0012】
なお、上記実施の形態では、第1および第2の磁性体7、15として「永久磁石」を例にとって説明したが、「電磁石」を採用した場合は、図示省略の電圧装置に接続し、電圧を掛けることにより励磁するものであり、電圧の高低により第1および第2の磁性体7、15の磁力による反発力を調整できる。したがって、対象とする被貼付物52の「硬さ」により図示省略の電圧装置の電圧を調整することで、第1および第2の磁性体7、15の遊離・浮遊状態を調整できるため、被貼付物52の「硬さ」の違いによる異なる衝撃に見合う吸収・緩衝状態を容易に実現できるものである。
【0013】
なお、「電磁石」は、図示省略の電源を落とすと消磁し、同極に励磁された第1および第2の磁性体7、15の反発力が消失する。特に、第2の折返し部17の上面折返し部17bと、第1の折返し部9aの上面折返し部9bとの反発力が消失すると、第2の吸着体本体10は図2における下方へ落ちようとするが、第1の吸着体本体2のフランジ部6に覆い被さるように設けられた第2の折返し部17がフランジ部6上に乗っかり阻止されるため、第2の吸着体本体10は落下することはない。
【0014】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
【0015】
例えば、上記実施の形態では、吸着部11と、この吸着部11の周囲を囲繞するケース本体18とを別個に設けた例で説明したがこれに限定されないこと勿論であり、一体に成形した「ケース本体」により中空部12を形成するようにしても構わない。
【0016】
また、上記実施の形態では、説明の都合上、吸着体1が上下方向に進退動する例で説明したがこれに限定されないことは勿論であり、進退機構としてのシリンダ20を水平に配設し、シリンダ20の先端に接合した吸着体1を水平に進出して吸着体1に仮保持されたラベルL1を被貼付物52の側面に貼付するようにしても構わない。前述したように、吸着体1を水平方向に進出する、いわゆる「横置き」状態にしても、第1の磁性体7の側面折曲げ部9a、およびこれに対峙して設けられた第2の磁性体15の側面折曲げ部17aが磁性力により上下方向および前後方向で反発しギャップGを隔てた状態で第1の吸着体本体2と第2の吸着体本体10とを遊離してフローティングし、かつ、水平方向に対しては平面部8、16同士が磁性力により反発してフローティング状態を保っているため、「横置き」状態の使用も可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のラベル貼付装置の全体を示す側面の概略説明図である。
【図2】同、吸着体の一例を示す側面の概略説明図である。
【図3】同、図2中、矢示III方向より見た平面の概略説明図である。
【符号の説明】
【0018】
A エアー
L ラベル
1 吸着体
2 第1の吸着体
3 支持板
4 バネ
5 支持ネジ
6 フランジ部
7 第1の磁性体
8 平面部
9 第1の折返し部
9a 側面折曲げ部
9b 上面折返し部
10 第2の吸着体本体
11 吸着部
11a 吸着面
12 中空部
13 吸引孔
14 ホース
15 第2の磁性体
16 平面部
17 第2の折返し部
17a 側面折曲げ部
17b 上面折返し部
18 ケース本体
19 磁性連結体
20 進退機構(シリンダ)
50 プリント機構
51 コンベア
52 被貼付物
53 ラベル連続体
54 供給部
55 サーマルヘッド
56 プラテンローラ
57 印字部
58 剥離部
59 台紙巻取り部
60 台紙
61、62 補助ローラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付物に向けて進退自在に設けられた進退機構の先端に、繰り出されるラベルをエアーの吸気により吸着して一時的にラベルを仮保持する吸着面が形成された吸着体本体を具備し、前記吸着体本体に仮保持された前記ラベルを被貼付物に押圧して貼付するラベル貼付装置の吸着体において、
前記吸着体本体は、
一面が前記進退機構に取り付けられるとともに、他面が第1の磁性体により覆われた第1の吸着体本体と、
前記吸着面を表面とした吸着部を備え、前記吸着部の表面の吸着面が外面となるよう前記吸着部を一面として囲繞して中空部を形成するとともに、この吸着部の裏面の中空部を隔てた対向位置に、前記第1の磁性体と同極に帯磁された第2の磁性体を対峙して備えた第2の吸着体本体と、
から構成されることを特徴とするラベル貼付装置の吸着体。
【請求項2】
前記磁性体は、永久磁石、または、帯磁力を可変自在とした電磁石により構成することを特徴とする請求項1に記載のラベル貼付装置の吸着体。
【請求項3】
前記第1の吸着体本体はフランジ部を備え、かつ、このフランジ部に引っ掛けられる第1の折返し部が前記第1の磁性体に形成されることを特徴とする請求項1および2に記載のラベル貼付装置の吸着体。
【請求項4】
前記フランジ部に引っ掛けて設けられた前記第1の磁性体の前記第1の折返し部に対峙して、さらに、前記第1の折返し部を覆う第2の折返し部が前記第2の磁性体に形成されることを特徴とする請求項3に記載のラベル貼付装置の吸着体。
【請求項5】
前記第1および第2の磁性体を連結する磁性連結帯が設けられることを特徴とする請求項2ないし4に記載のラベル貼付装置の吸着体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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