説明

ランニングマシンの走者体重と傾斜角度によるすべり対応トルク発生方法

【課題】非モータ駆動型のランニングマシンにおいて下り傾斜でも安全に静止路面走行が行えるようにする。
【解決手段】ランニングマシンの走行ベルト3に傾斜角と走者の体重により発生する滑りトルクに合わせたブレーキ圧を、可変トルク型ブレーキ4を使用して加えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実坂道走行を疑似再現するランニングマシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、傾斜可能なランニングマシンやトレッドミルは存在するが、傾斜させた場合の静止トルクは、単に摩擦を利用した固定的なブレーキで、傾斜角度と走者体重に応じて自動制御するものは無かった。そのため、途中で傾斜を変更すると、その都度ブレーキ調整を行わなければならなかった。
【0003】
本発明は、傾斜角を可変出来るランニングマシンの上下傾斜角と走者体重により生じる滑りトルクを相殺するトルクを発生する方法である。
【0004】
傾斜したランニングマシンに人が乗った時、ブレーキの無い状態では、走者の体重で、登りでは後に滑リ、下りでは前方に滑り、静止する事が出来ず、正常に走行が行えない。かつ、滑る事による転倒の危険性が有った。本発明は、これを防止するものである。
【0005】
傾斜での静止を可能とする事で、実際の坂道と同等の状態を作り出す事が出来る。
【0006】
課題を解決するための手段として、傾斜角と走者の体重から算出される、必要なブレーキ圧をランニングベルトの回転ローラに与え、滑りを無くするものである。
【0007】
ブレーキ圧は、パウダーブレーキやヒステリシスブレーキ等の可変トルクブレーキ装置を使用する事で行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許公開2009−189714
【特許文献2】特許公開2006−326248
【特許文献3】特許公開平10−277178
【特許文献4】実用新案公開平5−29559
【特許文献5】特許2415016
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】クラッチ技術読本 石崎正一/編 1979年 日刊工業新聞社 ISBN 978-4-526-00971-6(4-526-00971-7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、ランニングマシンを前方又は後方に傾斜させた場合のベルトのすべりを無くし、転倒の危険性を除く事である。
【0011】
着地点を静止させる事で、実路走行と同じ走法でランニングが行える事を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、非モータ駆動型の傾斜角可変ランニングマシンに装着して使用する。
【0013】
回転ローラにエンドレスの走行ベルトをスベリの無い構造で巻きつけ、回転ローラに可変トルクブレーキを取り付け、ブレーキ圧をコントロールする構造の装置を用意する。
【0014】
回転ローラにエンドレスの走行ベルトをスベリの無い構造で巻きつけ、回転ローラに可変トルクブレーキを取り付け、ブレーキ圧を電流又は電圧コントロールする構造の装置を用意する。
【0015】
走者体重と傾斜角による荷重から、必要なブレーキのトルクが、下記計算式から求められる。
走者体重をW、傾斜角をθ、斜面方向の荷重をLとする。
L=W・sinθ
【0016】
必要なブレーキ圧のトルクTは、回転ローラの半径rと荷重Lから、T=r・Lとなる。
【0017】
走者の体重を予め計り、本装置に入力し、傾斜角を手動または自動で取り込み、計算式からトルクを算出する。算出したトルクに応じた制御値をブレーキ装置に送り、所定のトルクを得る。
【0018】
体重入力は、予め入力する他に、最大ブレーキを掛けた状態で、ランニングマシンを傾斜させ、走者が乗った状態でブレーキを徐々に緩め、動き出す直前のブレーキ圧トルクと傾斜角から逆算が可能である。
【0019】
パウダーブレーキのトルクは、電流に直線的に比例するので、算出したトルクに定数値を掛ける事で、トルクから電流への変換が可能である。直線的比例を持た無いブレーキであれば、特性曲線から補正値を求める事で、直線的なトルク変換が行える。
【0020】
走者が走行ベルトを蹴ると体重以上の荷重が掛りベルトは回転する。走者がベルトから離れるとブレーキにより静止する。これは、ランニングを動く路面で行うのではなく、静止した路面を走行しているのと、同じ条件を作り出す事になる。
【発明の効果】
【0021】
傾斜したランニングマシンの傾斜方向のすべりを無くす事で、接地点が逃げない為、坂道での走行状態が実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
傾斜するランニングマシンのすべり方向荷重を、体重入力と傾斜角度を入力する入力ポートとブレーキを制御する出力ポートを持つマイクロコンピュータのソフトウエアで相殺する事を実現する。
【実施例】
【0024】
発明実施の形態を、アナログ入出力の例として、図面を参照して説明する。図1において、1と2は回転ローラで、3のエンドレスベルトが回転ローラとの間に滑りの無い様に巻かれている。回転ローラ2には、4のブレーキを取り付ける。矢印は信号の流れを示している。
【0025】
5の制御装置により、ブレーキのトルクに必要な電流が、4のブレーキに供給される。5の制御装置の枠内は、回路構成を示している。
【0026】
6は、体重が電圧で入力される端子で、7のADコンバータでディジタル変換され、マイクロコンピュータに入力される。
【0027】
8は、傾斜角が電圧で入力される端子で、9のADコンバータでディジタル変換され、マイクロコンピュータに入力される。
【0028】
10のマイクロコンピュータは、体重と傾斜角から必要なトルクを算出し、11のDAコンバータに電圧で出力する。
【0029】
11のDAコンバータの電圧出力は、12の電圧電流変換回路を通して、ブレーキを電流制御する。
【0030】
体重と傾斜角をアナログ入力で説明したが、マイクロコンピュータに、体重及び傾斜角が入力される方法で有れば、どの様な信号形態でも、5の制御装置を対応させる事で、処理は可能である。又、ブレーキへの出力もブレーキの入力信号に合わせて出力する事が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
走行中に傾斜角を変更出来るランニングマシンに取り付ける事により、安全で、実路面と同等の環境を作り出す事が出来る。
【0032】
特許公開2009−189714「走行距離に応じ傾斜角を上下するランニングマシン制御装置」に組み込む事で、箱根駅伝5区、6区の急な上り下り坂のトレーニングを、室内で行う事が可能となる。
【0033】
特に、下り坂をランニングマシンで行う場合、前のめりになり、ブレーキの無い状態では転倒の危険が有り、非常に危険であるが、本発明により、この下り坂の問題が解決出来る。
【0034】
坂道走行の運動科学の研究への応用が可能である。
【0035】
運動科学的な、左右の膝にかかる負荷状態を、測定計器を装着した状態で計測可能となる。
【0036】
リハビリテーションでの坂道歩行訓練に応用が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 回転ローラ1
2 回転ローラ2
3 走行エンドレスベルト
4 ブレーキ
5 制御装置
6 体重入力端子
7 体重ADコンバータ
8 傾斜角入力端子
9 傾斜角ADコンバータ
10 マイクロコンピュータ
11 トルク電圧変換用DAコンバータ
12 電圧電流変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜角を可変出来るランニングマシンの走路ベルトの、体重と傾斜角によるすべりに対し、体重と傾斜角に応じた静止トルクを、可変トルク型ブレーキを用いて発生する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−102812(P2013−102812A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246522(P2011−246522)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(708000683)