ランプ及び加熱装置
【課題】構造が簡単でありながら封止部の過熱を効果的に防止できるランプ及び加熱装置を提供する。
【解決手段】コイル部14を有するフィラメント13が収容された管部11と、前記フィラメント13の末端に接続された金属箔16が封止された封止部12と、前記管部11の外表面11aの一部を覆う過熱防止部30と、を備えたランプ1とする。
【解決手段】コイル部14を有するフィラメント13が収容された管部11と、前記フィラメント13の末端に接続された金属箔16が封止された封止部12と、前記管部11の外表面11aの一部を覆う過熱防止部30と、を備えたランプ1とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ及び加熱装置に関し、特に、ランプの封止部の過熱防止に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンランプ等、フィラメントの末端に接続された金属箔が封止された封止部を有するランプは、その使用時に、当該封止部の温度が過熱される寿命が低減する。
【0003】
例えば、半導体製造用の純水や薬液等の流体を加熱するためのインラインヒータとして、タングステンフィラメントが収容された石英ガラス管を有するハロゲンランプを備えたものがある。このインラインヒータにおいては、ハロゲンランプは加熱の対象となる流体と直接接触しない。このため、タングステンフィラメントの発熱に伴い、石英ガラス管の末端部分である封止部が過熱されやすい。封止部が過熱されると、金属箔の膨張により当該封止部が変形して、石英ガラス管内に外気が流入し、その結果、当該石英ガラス管内のタングステンフィラメントが酸化され劣化してしまうことがある。
【0004】
そこで、従来、例えば、特許文献1においては、冷却用の空気をハロゲンランプの端部に導く冷却配管を備えた加熱装置が記載されている。
【特許文献1】特開2003−97849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された加熱装置においては、冷却配管を設けることにより、例えば、当該加熱装置の構造が複雑化するとともに、当該加熱装置が大型化して、その設置に大きなスペースを確保する必要があるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、構造が簡単でありながら封止部の過熱を効果的に防止できるランプ及び加熱装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るランプは、コイル部を有するフィラメントが収容された管部と、前記フィラメントの末端に接続された金属箔が封止された封止部と、前記管部の外表面の一部を覆う過熱防止部と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、構造が簡単でありながら封止部の過熱を効果的に防止できるランプを提供することができる。
【0008】
また、前記過熱防止部は、前記管部の前記外表面のうち、前記フィラメントの前記コイル部より前記末端側の部分を覆うように設けられていることとしてもよい。この場合、管部から封止部への熱の伝達を効果的に低減して、当該封止部の過熱をより効果的に防止することができる。また、前記過熱防止部は、発熱する前記コイル部から前記封止部への光を遮るよう前記管部の径方向外側に張り出した形状で形成されていることとしてもよい。この場合、フィラメントのコイル部からの輻射による封止部の温度上昇を効果的に抑制して、当該封止部の過熱をより効果的に防止することができる。また、前記過熱防止部は、セラミック製であることとしてもよい。この場合、過熱防止部の耐火性を確保できるとともに、封止部の過熱を効果的に防止することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る加熱装置は、上記いずれかのランプを加熱源として備えたことを特徴とする。本発明によれば、構造が簡単でありながらランプの封止部の過熱を効果的に防止できる加熱装置を提供することができる。
【0010】
また、前記加熱装置は、前記ランプが収容される内筒部と、加熱の対象となる流体が流れる外筒部と、を有する二重管部を備え、前記ランプは、前記過熱防止部が前記内筒部と接触するとともに、前記封止部が前記二重管部の外に突出するよう、前記内筒部に収容されることとしてもよい。こうすれば、ランプの封止部の過熱をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態に係るランプ(以下、「本ランプ」という。)について説明する。本実施形態においては、本ランプがハロゲンランプとして実現される例について説明する。
【0012】
図1は、本ランプ1の斜視図である。図2は、本ランプ1の平面図である。図3は、本ランプ1の側面図である。図4は、本ランプ1のうち、図2に示す破線IVで囲まれた部分の断面図である。図5は、本ランプ1のうち、図3に示す破線Vで囲まれた部分の断面図である。図6は、本ランプ1を図2に示すVI−VI線で切断した場合の断面図である。
【0013】
図1から図3に示すように、本ランプ1は、2つのランプ本体10を有している。このランプ本体10を構成する材料は、本ランプ1が発する光を透過させるものであれば特に限られないが、本実施形態において、当該ランプ本体10は、石英ガラス管である。ランプ本体10は、中空の管部11を有している。管部11には、不活性ガスと、微量のハロゲンガスと、が封入されている。
【0014】
この管部11には、フィラメント13が収容されている。このフィラメント13を構成する材料は、管部11内において通電により発熱及び発光するものであれば特に限られないが、本実施形態において、当該フィラメント13は、タングステンフィラメントである。フィラメント13は、コイル部14と、2つの非コイル部15a,15bを有している。コイル部14は、フィラメント13のうち、コイル状の中央部分である。一方側の非コイル部15aは、フィラメント13のうち、直線状に延びる一方端部分であり、他方側の非コイル部15bは、当該フィラメント13のうち、直線状に延びる他方端部分である。このフィラメント13は、リング状の金属線から構成される複数の支持部13aによって、管部11の径方向中心付近に配置されるよう支持されている。
【0015】
また、ランプ本体10は、2つの封止部12a,12bを有している。一方側の封止部12aは、ランプ本体10の一方端部分を構成し、他方側の封止部12bは、当該ランプ本体10の他方端部分を構成している。
【0016】
すなわち、一方側の封止部12aは、管部11の一方端を封止し、他方側の封止部12bは、当該管部11の他方端を封止している。これらの封止部12a,12bは、ランプ本体10の製造過程において、石英ガラス管の一方端及び他方端を加熱により軟化させ、さらに圧着して封止することにより形成されている。
【0017】
また、封止部12a,12bには、図4及び図5に示すように、金属箔16a,16bが封入されている。すなわち、ランプ本体10の一方側の封止部12aには、フィラメント13の一方側の末端(すなわち、一方側の非コイル部15aの末端)に接続された金属箔16aが封入され、当該ランプ本体10の他方側の封止部12bには、当該フィラメント13の他方側の末端(すなわち、他方側の非コイル部15bの末端)に接続された金属箔16bが封入されている。本実施形態において、金属箔16a,16bは、モリブデン箔である。
【0018】
本ランプ1において、このような2つのランプ本体10は、平行に配置され、当該2つのランプ本体10の端部は碍子部20a,20bにより支持されている。本実施形態において、碍子部20a,20bは、セラミック製であり、円板状に形成されている。
【0019】
一方側の碍子部20aには、一方側の2つの封止部12aが封入されている。そして、これら一方側の封止部12aに封入された2つの金属箔16aは、碍子部20a内において、導電性の金属線(不図示)により接続されている。
【0020】
また、他方側の碍子部20bには、他方側の2つの封止部12bが、封入されている。この他方側の碍子部20b内においては、図4及び図5に示すように、封止部12bに封入された各金属箔16bに、導電性の金属線である外部リード棒17が接続されている。本実施形態において、この外部リード棒17は、モリブデン線である。そして、この碍子部20bからは、外部リード棒17を絶縁性材料からなる外皮により被覆して形成されるリード線18が2つ延び出している。
【0021】
このような本ランプ1は、図1から図6に示すように、管部11の外表面11aを覆う過熱防止部30a,30bを備えている。本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、碍子部20a,20bと同様に、セラミック製であり、円板状に形成されている。
【0022】
図4から図6に示すように、過熱防止部30bには、管部11の外径と略等しい径の貫通穴31が形成され、当該貫通穴31bに当該管部11が挿通されている。そして、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aの周方向全域を覆っている。
【0023】
また、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aのうち、フィラメント13のコイル部14より末端側の部分を覆うように設けられている。すなわち、一方側の過熱防止部30aは、フィラメント13のコイル部14と、一方側の封止部12aと、の間に設けられている。同様に、他方側の過熱防止部30bは、フィラメント13のコイル部14と、他方側の封止部12bと、の間に設けられている。
【0024】
このような本ランプ1は、2つのリード線18のうち一方を電源の陽極に接続し、他方を当該電源の陰極に接続して、フィラメント13に電流を流すことにより、発光する。すなわち、管部11内において、通電されたフィラメント13は発熱して、光を発する。ランプ本体10は、このフィラメント13の発熱及び発光によって加熱される。
【0025】
ここで、本ランプ1は、上述の過熱防止部30a,30bを備えているため、ランプ本体10のうち、特に封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0026】
すなわち、本ランプ1においては、過熱防止部30a,30bが管部11と一体的に設けられているため、当該過熱防止部30a,30bが設けられていない場合に比べて、ランプ本体10の熱容量を増加させることができている。具体的には、フィラメント13から管部11に伝達された熱は、当該管部11の温度上昇のみならず、過熱防止部30a,30bの温度上昇にも費やされる。
【0027】
このため、フィラメント13に電流を流し始めた後の、封止部12a,12bの温度上昇を、過熱防止部30a,30bが設けられていない場合に比べて、緩やかにすることができるとともに、当該封止部12a,12bが到達する温度を低く維持し、過熱を防止することができる。
【0028】
また、過熱防止部30a,30bは、管部11に設けられているため、当該過熱防止部30a,30bによって、当該管部11から封止部12a,12bへの熱伝導を効果的に遮断することができる。
【0029】
すなわち、ランプ本体10のうち、フィラメント13を収容している管部11は、当該フィラメント13の発熱及び発光によって、封止部12a,12bに比べて優先的に加熱される。そして、管部11に受け止められた熱は、次に、当該管部11から封止部12a,12bへと伝達されることとなる。
【0030】
ここで、本ランプ1においては、管部11の一部と、封止部12a,12bと、の間に過熱防止部30a,30bが設けられているため、当該管部11の一部から当該封止部12a,12bへの熱伝導は、当該過熱防止部30a,30bによって妨げられる。
【0031】
特に、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aの周方向全域と接触しているため、当該管部11から封止部12a,12bへの熱伝導を確実に遮断することができる。この結果、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aのうち、フィラメント13のコイル部14より末端側の部分を覆うように設けられているため、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止できている。
【0033】
すなわち、フィラメント13のうち、コイル部14は、非コイル部15a,15bに比べて発熱量及び発光量が大きい。このため、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分は、他の部分に比べて、当該コイル部14によって急激に加熱される。
【0034】
したがって、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分よりも封止部12a,12bに近い部分に過熱防止部30a,30bを設けることにより、当該封止部12a,12bの過熱を特に効果的に防止することができる。
【0035】
具体的に、本実施形態においては、図1から図5に示すように、過熱防止部30a,30bは、管部11のうち、非コイル部15a,15bが収容されている部分に設けられている。
【0036】
したがって、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分から封止部12a,12bへの熱伝導を確実に防止することができる。この結果、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、発熱するコイル部14から封止部12a,12bへの光を遮るよう管部11の径方向外側に張り出した形状で形成されている。すなわち、過熱防止部30a,30bは、円板状に形成されて、ひさしのように管部11の外表面の周方向全域に立設されている。
【0038】
このため、発熱及び発光に伴うコイル部14から封止部12a,12bへの輻射は、過熱防止部30a,30bによって、遮断される。したがって、フィラメント13のコイル部14からの輻射による封止部12a,12bの温度上昇を効果的に抑制し、当該封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。また、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、耐熱性に優れたセラミック製であるため、上述の効果を確実に発揮することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る加熱装置(以下、「本装置」という。)について説明する。本実施形態においては、本装置が上述の本ランプ1を加熱源として用いたインラインヒータとして実現される例について説明する。
【0040】
図7は、本ランプ1を含むランプ組立体2の側面図である。図8は、図7に示すランプ組立体2を含む本装置の側面図である。
【0041】
図7に示すように、ランプ組立体2は、本ランプ1と、二重管部40と、を備えている。二重管部40は、本ランプ1が収容される内筒部41と、加熱の対象となる流体が流れる外筒部42と、を有している。この二重管部40を構成する材料は、少なくとも内筒部41が本ランプ1の発する光を透過する材料で構成されていれば特に限られないが、本実施形態において、当該二重管部40は、その全体が石英ガラス製であり、内筒部41と外筒部42とは一体的に形成されている。
【0042】
また、本実施形態において、本ランプ1は、過熱防止部30a,30bが内筒部41と接触するよう当該内筒部41に収容される。すなわち、図7に示すように、本ランプ1の過熱防止部30a,30bの外径は、内筒部41の内径よりも僅かに小さくなっている。そして、内筒部41内に載置された本ランプ1は、過熱防止部30a,30bを介して内筒部41の内面41aと接触している。
【0043】
このため、フィラメント13の発熱及び発光に伴って本ランプ1の管部11から過熱防止部30a,30bに伝達された熱を、内筒部41の内面41aを介して二重管部40に速やかに伝達することができる。
【0044】
すなわち、過熱防止部30a,30bを介して管部11から二重管部40への放熱を効率よく行うことができる。したがって、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。また、本ランプ1のランプ本体10は、内筒部41内において過熱防止部30a,30bにより支持されることにより、当該内筒部41の径方向中心付近に配置される。
【0045】
さらに、本実施形態において、本ランプ1は、封止部12a,12bが二重管部40の外に突出するよう、内筒部41に収容される。すなわち、図7に示すように、本ランプ1の一方側の封止部12a及び碍子部20aは内筒部41の一方端から外に露出し、当該本ランプ1の他方側の封止部12b及び碍子部20bもまた、当該内筒部41の他方端から外に露出している。
【0046】
このため、本ランプ1の封止部12a,12bを、二重管部40外の空気によって冷却することができる。したがって、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0047】
本装置3は、図8に示すように、このようなランプ組立体2と、当該ランプ組立体2を収容する筐体部50と、を備えている。なお、図8においては、筐体部50の側面を切断した本装置3を示している。
【0048】
本装置3においては、本ランプ1のフィラメント13に電流を流して発熱及び発光させるとともに、加熱の対象とする流体を、二重管部40の外筒部42内に流す。外筒部42の一方端である流入部42aから当該外筒部42の他方端である流出部42bに流れる流体は、内筒部41の外壁41bを介して、本ランプ1からの熱により温められる。
【0049】
ここで、例えば、本装置3によって、半導体や液晶の製造に用いられる薬液を加熱する場合には、室温程度の当該薬液を、比較的短時間で150℃程度まで加熱する必要がある。この場合、本ランプ1のフィラメント13には、加熱開始直後には比較的大きな電流を流して、当該フィラメント13を急激に発熱させる。したがって、内筒部41に収容された本ランプ1の温度は、加熱開始直後に急激に上昇する。
【0050】
ここで、本ランプ1は、上述のとおり、過熱防止部30a,30bを備えているため、この加熱開始直後における封止部12a,12bの温度の立ち上がりを緩やかに抑えることができるとともに、当該封止部12a,12bが到達する最高温度を300℃未満等、好ましい範囲内に抑えることができる。このように、本装置3においては、シンプル且つコンパクトな構造により、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0051】
また、本装置3において、二重管部40から突出した封止部12a,12b及び碍子部20a,20bの少なくとも一方に冷却用の気体を吹き付ける構造を設けることにより、当該封止部12a,12bの過熱をより効果的に防止することができる。
【0052】
次に、本ランプ1及び本装置3の具体的な実施例について説明する。
【0053】
[実施例]
まず、本ランプ1として、図1から図6に示すような過熱防止部30a,30bを備えたハロゲンランプであって、リード線18が延び出ている碍子部20b側の封止部12bの1つに、熱電対(不図示)の一方端が金属箔16bと接続するよう封入されたハロゲンランプを独自に製造した。
【0054】
そして、本装置3として、この熱電対が接続された本ランプ1を二重管部40の内筒部41に収容した図8に示すようなインラインヒータを製造した。この本装置3には、二重管部40から突出した封止部12a,12b及び碍子部20a,20bに冷却用の空気を吹き付けるための冷却配管を筐体部50内に設けた。
【0055】
そして、本装置3を用いて、濃硫酸を、その温度が室温から160℃に到達するまで加熱した。すなわち、本装置3の流入部42a及び流出部42bを、耐薬品性のチューブを介して、濃硫酸を入れた貯留槽と接続した。また、この貯留槽には、濃硫酸の温度を測定するための温度センサーを設けた。
【0056】
そして、ポンプを用いて本装置3と貯留槽との間で濃硫酸を循環させるとともに、本ランプ1に通電して点灯させ、加熱を開始した。加熱開始後、本ランプ1の封止部12bの温度及び当該貯留槽内の濃硫酸の温度をそれぞれモニタリングした。
【0057】
加熱の対象となった濃硫酸の量は52.6Lであり、濃硫酸の循環流量は40L/分であった。本ランプ1の出力(すなわち、フィラメント13に対する印加電圧)は、測定された濃硫酸の温度に基づいてフィードバック制御された。
【0058】
第一の実施例においては、本装置3において、封止部12a,12b及び碍子部20a,20bに対する冷却空気の吹き付けは行わず、第二の実施例においては、25L/分の流量で当該冷却空気の吹き付けを行った。
【0059】
また、比較として、過熱防止部30a,30bを有しないハロゲンランプを加熱源として備えたインラインヒータ(以下、「比較装置」という。)を製造した。この比較装置においても、封止部には熱電対が封入された。ただし、ハロゲンランプの両端の封止部及び碍子は二重管部から突出せず、当該ハロゲンランプは、その全体が内筒部内に収容された。
【0060】
そして、この比較装置を用いて、上述の本装置3の場合と同様に、濃硫酸を、その温度が室温から160℃に到達するまで加熱し、封止部の温度をモニタリングした。比較例において加熱の対象となった濃硫酸の量は54Lであり、濃硫酸の循環流量は40L/分であった。また、比較例においては、上述の第二の実施例のような冷却空気の吹き付けは行わなかった。
【0061】
なお、第一の実施例、第二の実施例、及び比較例において用いられたハロゲンランプは、使用時における封止部の温度を300℃未満に維持することが推奨されるものであった。
【0062】
図9には、第一の実施例において測定された、封止部12bの温度及び濃硫酸酸の温度の経時的な変化を示す。図9において、横軸は、加熱開始(すなわち、本ランプ1のフィラメント13への通電開始)から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。図9において、破線は封止部12bの温度を示し、実線は濃硫酸の温度を示す。
【0063】
図9に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、264℃であった。すなわち、封止部12bの温度を、上限の300℃より十分に低く抑えることができ、当該封止部12bの過熱を防止することができた。
【0064】
図10には、第二の実施例において測定された、封止部12bの温度及び濃硫酸の温度の経時的な変化を示す。図10において、横軸は、加熱開始から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。図10において、破線は封止部12bの温度を示し、実線は濃硫酸の温度を示す。
【0065】
図10に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、210℃であった。すなわち、封止部12a,12bに冷却空気を吹き付けることにより、封止部12bの温度を、第一の実施例に比べてさらに低く抑えることができた。
【0066】
図11には、比較例において測定された、封止部の温度の経時的な変化を示す。図11において、横軸は、加熱開始から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。
【0067】
図11に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、388℃であった。すなわち、本ランプ1を用いない比較例においては、封止部の温度が上限の300℃を超えてしまい、当該封止部の過熱を防止することができなかった。
【0068】
また、第一の実施例に用いた本装置3及び比較装置について、点灯を開始してから、寿命により点灯しなくなるまで、連続的に使用できる時間を測定した。その結果、比較装置におけるハロゲンランプは、1890時間で点灯しなくなったのに対し、本装置3における本ランプ1は、8015時間もの間、連続的に点灯させることができた。すなわち、ハロゲンランプに過熱防止部30a,30bを設けることにより、当該ハロゲンランプの寿命を大幅に延長することができた。
【0069】
なお、本発明は、上述の例に限られない。例えば、過熱防止部30a,30bは、フィラメント13のコイル部14より末端側に設けられるものに限られない。すなわち、過熱防止部30a,30bは、その一部又は全部が、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分の外表面を覆うように設けられてもよい。
【0070】
また、過熱防止部30a,30bの形状及び大きさは、上述の例に限られない。すなわち、ランプ本体10の長手方向から見た過熱防止部30a,30bの形状は上述のように円形に限られず、例えば、楕円形、多角形、面取りがされた多角形、ギヤや星型のような凹凸のある形状等、任意の形状とすることができる。
【0071】
また、過熱防止部30a,30bは、コイル部14から封止部12a,12bへの光を遮るよう管部11の径方向外側に張り出した形状のものに限られない。すなわち、過熱防止部30a,30bは、コイル部14からの輻射を遮るひさしのように張り出した形状のものに限られず、例えば、管部11の外表面11aを覆う薄い帯状のものとすることもできる。
【0072】
また、過熱防止部30a,30bは、セラミック製のものに限られず、例えば、金属製とすることができる。過熱防止部30a,30bを構成する金属としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。なお、過熱防止部30a,30bを構成するセラミックとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニアのうち少なくとも一つを含有するものを好ましく用いることができる。
【0073】
また、過熱防止部30a,30bと管部11を確実に密着させるために、当該管部11の一部が挿通された当該過熱防止部30a,30bの貫通穴31において、当該過熱防止部30a,30bと当該管部11との間に耐熱性のシーリング材を注入してもよい。このシーリング材は、過熱防止部30a,30bと管部11との熱膨張率の差を打ち消す緩衝材としても用いることができる。
【0074】
また、過熱防止部30a,30bは、非繊維材料、非多孔性材料から構成されることが好ましい。すなわち、過熱防止部30a,30bは、例えば、非多孔性のセラミックから構成することができる。
【0075】
また、本ランプ1は、ランプ本体10を2つ有するものに限られない。すなわち、例えば、本ランプ1は、ランプ本体10を1つ有するものとすることもできる。この場合、ランプ本体10の一方端の碍子部20a及び他方端の碍子部20bのそれぞれからリード線18が延び出すこととなる。
【0076】
また、本装置3は、本ランプ1の封止部12a,12bが二重管部40の外に突出するよう配置されるものに限られない。すなわち、本装置3において、本ランプ1は、封止部12a,12bが二重管部40の外に突出することなく、当該本ランプ1の全体が当該二重管部40の内筒部41内に収容されてもよい。
【0077】
また、本装置3において、加熱の対象となる流体は特に限られないが、例えば、半導体や液晶の製造に用いられる硫酸、濃硫酸、塩酸、リン酸、アンモニア水、純水を好ましく加熱の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態に係るランプの斜視図である。
【図2】本実施形態に係るランプの平面図である。
【図3】本実施形態に係るランプの側面図である。
【図4】本実施形態に係るランプのうち、図2に示す破線IVで囲まれた部分の断面図である。
【図5】本実施形態に係るランプのうち、図3に示す破線Vで囲まれた部分の断面図である。
【図6】本実施形態に係るランプを図2に示すVI−VI線で切断した場合の断面図である。
【図7】本実施形態に係るランプ組立体の側面図である。
【図8】本実施形態に係る加熱装置の側面図である。
【図9】本実施形態に係る加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度及び濃硫酸の温度の経時変化の一例を示す説明図である。
【図10】本実施形態に係る加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度及び濃硫酸の温度の経時変化の他の例を示す説明図である。
【図11】過熱防止部を有しないハロゲンランプを備えた加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度の経時変化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ランプ、2 ランプ組立体、3 加熱装置、10 ランプ本体、11 管部、11a 管部の外表面、12 封止部、13 フィラメント、14 コイル部、15 非コイル部、16 金属箔、17 外部リード棒、18 リード線、20 碍子部、30 過熱防止部、31 貫通穴、40 二重管部、41 内筒部、42 外筒部、50 筐体部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ及び加熱装置に関し、特に、ランプの封止部の過熱防止に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンランプ等、フィラメントの末端に接続された金属箔が封止された封止部を有するランプは、その使用時に、当該封止部の温度が過熱される寿命が低減する。
【0003】
例えば、半導体製造用の純水や薬液等の流体を加熱するためのインラインヒータとして、タングステンフィラメントが収容された石英ガラス管を有するハロゲンランプを備えたものがある。このインラインヒータにおいては、ハロゲンランプは加熱の対象となる流体と直接接触しない。このため、タングステンフィラメントの発熱に伴い、石英ガラス管の末端部分である封止部が過熱されやすい。封止部が過熱されると、金属箔の膨張により当該封止部が変形して、石英ガラス管内に外気が流入し、その結果、当該石英ガラス管内のタングステンフィラメントが酸化され劣化してしまうことがある。
【0004】
そこで、従来、例えば、特許文献1においては、冷却用の空気をハロゲンランプの端部に導く冷却配管を備えた加熱装置が記載されている。
【特許文献1】特開2003−97849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された加熱装置においては、冷却配管を設けることにより、例えば、当該加熱装置の構造が複雑化するとともに、当該加熱装置が大型化して、その設置に大きなスペースを確保する必要があるといった問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、構造が簡単でありながら封止部の過熱を効果的に防止できるランプ及び加熱装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係るランプは、コイル部を有するフィラメントが収容された管部と、前記フィラメントの末端に接続された金属箔が封止された封止部と、前記管部の外表面の一部を覆う過熱防止部と、を備えたことを特徴とする。本発明によれば、構造が簡単でありながら封止部の過熱を効果的に防止できるランプを提供することができる。
【0008】
また、前記過熱防止部は、前記管部の前記外表面のうち、前記フィラメントの前記コイル部より前記末端側の部分を覆うように設けられていることとしてもよい。この場合、管部から封止部への熱の伝達を効果的に低減して、当該封止部の過熱をより効果的に防止することができる。また、前記過熱防止部は、発熱する前記コイル部から前記封止部への光を遮るよう前記管部の径方向外側に張り出した形状で形成されていることとしてもよい。この場合、フィラメントのコイル部からの輻射による封止部の温度上昇を効果的に抑制して、当該封止部の過熱をより効果的に防止することができる。また、前記過熱防止部は、セラミック製であることとしてもよい。この場合、過熱防止部の耐火性を確保できるとともに、封止部の過熱を効果的に防止することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る加熱装置は、上記いずれかのランプを加熱源として備えたことを特徴とする。本発明によれば、構造が簡単でありながらランプの封止部の過熱を効果的に防止できる加熱装置を提供することができる。
【0010】
また、前記加熱装置は、前記ランプが収容される内筒部と、加熱の対象となる流体が流れる外筒部と、を有する二重管部を備え、前記ランプは、前記過熱防止部が前記内筒部と接触するとともに、前記封止部が前記二重管部の外に突出するよう、前記内筒部に収容されることとしてもよい。こうすれば、ランプの封止部の過熱をより効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、本実施形態に係るランプ(以下、「本ランプ」という。)について説明する。本実施形態においては、本ランプがハロゲンランプとして実現される例について説明する。
【0012】
図1は、本ランプ1の斜視図である。図2は、本ランプ1の平面図である。図3は、本ランプ1の側面図である。図4は、本ランプ1のうち、図2に示す破線IVで囲まれた部分の断面図である。図5は、本ランプ1のうち、図3に示す破線Vで囲まれた部分の断面図である。図6は、本ランプ1を図2に示すVI−VI線で切断した場合の断面図である。
【0013】
図1から図3に示すように、本ランプ1は、2つのランプ本体10を有している。このランプ本体10を構成する材料は、本ランプ1が発する光を透過させるものであれば特に限られないが、本実施形態において、当該ランプ本体10は、石英ガラス管である。ランプ本体10は、中空の管部11を有している。管部11には、不活性ガスと、微量のハロゲンガスと、が封入されている。
【0014】
この管部11には、フィラメント13が収容されている。このフィラメント13を構成する材料は、管部11内において通電により発熱及び発光するものであれば特に限られないが、本実施形態において、当該フィラメント13は、タングステンフィラメントである。フィラメント13は、コイル部14と、2つの非コイル部15a,15bを有している。コイル部14は、フィラメント13のうち、コイル状の中央部分である。一方側の非コイル部15aは、フィラメント13のうち、直線状に延びる一方端部分であり、他方側の非コイル部15bは、当該フィラメント13のうち、直線状に延びる他方端部分である。このフィラメント13は、リング状の金属線から構成される複数の支持部13aによって、管部11の径方向中心付近に配置されるよう支持されている。
【0015】
また、ランプ本体10は、2つの封止部12a,12bを有している。一方側の封止部12aは、ランプ本体10の一方端部分を構成し、他方側の封止部12bは、当該ランプ本体10の他方端部分を構成している。
【0016】
すなわち、一方側の封止部12aは、管部11の一方端を封止し、他方側の封止部12bは、当該管部11の他方端を封止している。これらの封止部12a,12bは、ランプ本体10の製造過程において、石英ガラス管の一方端及び他方端を加熱により軟化させ、さらに圧着して封止することにより形成されている。
【0017】
また、封止部12a,12bには、図4及び図5に示すように、金属箔16a,16bが封入されている。すなわち、ランプ本体10の一方側の封止部12aには、フィラメント13の一方側の末端(すなわち、一方側の非コイル部15aの末端)に接続された金属箔16aが封入され、当該ランプ本体10の他方側の封止部12bには、当該フィラメント13の他方側の末端(すなわち、他方側の非コイル部15bの末端)に接続された金属箔16bが封入されている。本実施形態において、金属箔16a,16bは、モリブデン箔である。
【0018】
本ランプ1において、このような2つのランプ本体10は、平行に配置され、当該2つのランプ本体10の端部は碍子部20a,20bにより支持されている。本実施形態において、碍子部20a,20bは、セラミック製であり、円板状に形成されている。
【0019】
一方側の碍子部20aには、一方側の2つの封止部12aが封入されている。そして、これら一方側の封止部12aに封入された2つの金属箔16aは、碍子部20a内において、導電性の金属線(不図示)により接続されている。
【0020】
また、他方側の碍子部20bには、他方側の2つの封止部12bが、封入されている。この他方側の碍子部20b内においては、図4及び図5に示すように、封止部12bに封入された各金属箔16bに、導電性の金属線である外部リード棒17が接続されている。本実施形態において、この外部リード棒17は、モリブデン線である。そして、この碍子部20bからは、外部リード棒17を絶縁性材料からなる外皮により被覆して形成されるリード線18が2つ延び出している。
【0021】
このような本ランプ1は、図1から図6に示すように、管部11の外表面11aを覆う過熱防止部30a,30bを備えている。本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、碍子部20a,20bと同様に、セラミック製であり、円板状に形成されている。
【0022】
図4から図6に示すように、過熱防止部30bには、管部11の外径と略等しい径の貫通穴31が形成され、当該貫通穴31bに当該管部11が挿通されている。そして、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aの周方向全域を覆っている。
【0023】
また、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aのうち、フィラメント13のコイル部14より末端側の部分を覆うように設けられている。すなわち、一方側の過熱防止部30aは、フィラメント13のコイル部14と、一方側の封止部12aと、の間に設けられている。同様に、他方側の過熱防止部30bは、フィラメント13のコイル部14と、他方側の封止部12bと、の間に設けられている。
【0024】
このような本ランプ1は、2つのリード線18のうち一方を電源の陽極に接続し、他方を当該電源の陰極に接続して、フィラメント13に電流を流すことにより、発光する。すなわち、管部11内において、通電されたフィラメント13は発熱して、光を発する。ランプ本体10は、このフィラメント13の発熱及び発光によって加熱される。
【0025】
ここで、本ランプ1は、上述の過熱防止部30a,30bを備えているため、ランプ本体10のうち、特に封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0026】
すなわち、本ランプ1においては、過熱防止部30a,30bが管部11と一体的に設けられているため、当該過熱防止部30a,30bが設けられていない場合に比べて、ランプ本体10の熱容量を増加させることができている。具体的には、フィラメント13から管部11に伝達された熱は、当該管部11の温度上昇のみならず、過熱防止部30a,30bの温度上昇にも費やされる。
【0027】
このため、フィラメント13に電流を流し始めた後の、封止部12a,12bの温度上昇を、過熱防止部30a,30bが設けられていない場合に比べて、緩やかにすることができるとともに、当該封止部12a,12bが到達する温度を低く維持し、過熱を防止することができる。
【0028】
また、過熱防止部30a,30bは、管部11に設けられているため、当該過熱防止部30a,30bによって、当該管部11から封止部12a,12bへの熱伝導を効果的に遮断することができる。
【0029】
すなわち、ランプ本体10のうち、フィラメント13を収容している管部11は、当該フィラメント13の発熱及び発光によって、封止部12a,12bに比べて優先的に加熱される。そして、管部11に受け止められた熱は、次に、当該管部11から封止部12a,12bへと伝達されることとなる。
【0030】
ここで、本ランプ1においては、管部11の一部と、封止部12a,12bと、の間に過熱防止部30a,30bが設けられているため、当該管部11の一部から当該封止部12a,12bへの熱伝導は、当該過熱防止部30a,30bによって妨げられる。
【0031】
特に、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aの周方向全域と接触しているため、当該管部11から封止部12a,12bへの熱伝導を確実に遮断することができる。この結果、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0032】
さらに、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、管部11の外表面11aのうち、フィラメント13のコイル部14より末端側の部分を覆うように設けられているため、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止できている。
【0033】
すなわち、フィラメント13のうち、コイル部14は、非コイル部15a,15bに比べて発熱量及び発光量が大きい。このため、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分は、他の部分に比べて、当該コイル部14によって急激に加熱される。
【0034】
したがって、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分よりも封止部12a,12bに近い部分に過熱防止部30a,30bを設けることにより、当該封止部12a,12bの過熱を特に効果的に防止することができる。
【0035】
具体的に、本実施形態においては、図1から図5に示すように、過熱防止部30a,30bは、管部11のうち、非コイル部15a,15bが収容されている部分に設けられている。
【0036】
したがって、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分から封止部12a,12bへの熱伝導を確実に防止することができる。この結果、封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0037】
また、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、発熱するコイル部14から封止部12a,12bへの光を遮るよう管部11の径方向外側に張り出した形状で形成されている。すなわち、過熱防止部30a,30bは、円板状に形成されて、ひさしのように管部11の外表面の周方向全域に立設されている。
【0038】
このため、発熱及び発光に伴うコイル部14から封止部12a,12bへの輻射は、過熱防止部30a,30bによって、遮断される。したがって、フィラメント13のコイル部14からの輻射による封止部12a,12bの温度上昇を効果的に抑制し、当該封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。また、本実施形態において、過熱防止部30a,30bは、耐熱性に優れたセラミック製であるため、上述の効果を確実に発揮することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る加熱装置(以下、「本装置」という。)について説明する。本実施形態においては、本装置が上述の本ランプ1を加熱源として用いたインラインヒータとして実現される例について説明する。
【0040】
図7は、本ランプ1を含むランプ組立体2の側面図である。図8は、図7に示すランプ組立体2を含む本装置の側面図である。
【0041】
図7に示すように、ランプ組立体2は、本ランプ1と、二重管部40と、を備えている。二重管部40は、本ランプ1が収容される内筒部41と、加熱の対象となる流体が流れる外筒部42と、を有している。この二重管部40を構成する材料は、少なくとも内筒部41が本ランプ1の発する光を透過する材料で構成されていれば特に限られないが、本実施形態において、当該二重管部40は、その全体が石英ガラス製であり、内筒部41と外筒部42とは一体的に形成されている。
【0042】
また、本実施形態において、本ランプ1は、過熱防止部30a,30bが内筒部41と接触するよう当該内筒部41に収容される。すなわち、図7に示すように、本ランプ1の過熱防止部30a,30bの外径は、内筒部41の内径よりも僅かに小さくなっている。そして、内筒部41内に載置された本ランプ1は、過熱防止部30a,30bを介して内筒部41の内面41aと接触している。
【0043】
このため、フィラメント13の発熱及び発光に伴って本ランプ1の管部11から過熱防止部30a,30bに伝達された熱を、内筒部41の内面41aを介して二重管部40に速やかに伝達することができる。
【0044】
すなわち、過熱防止部30a,30bを介して管部11から二重管部40への放熱を効率よく行うことができる。したがって、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。また、本ランプ1のランプ本体10は、内筒部41内において過熱防止部30a,30bにより支持されることにより、当該内筒部41の径方向中心付近に配置される。
【0045】
さらに、本実施形態において、本ランプ1は、封止部12a,12bが二重管部40の外に突出するよう、内筒部41に収容される。すなわち、図7に示すように、本ランプ1の一方側の封止部12a及び碍子部20aは内筒部41の一方端から外に露出し、当該本ランプ1の他方側の封止部12b及び碍子部20bもまた、当該内筒部41の他方端から外に露出している。
【0046】
このため、本ランプ1の封止部12a,12bを、二重管部40外の空気によって冷却することができる。したがって、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0047】
本装置3は、図8に示すように、このようなランプ組立体2と、当該ランプ組立体2を収容する筐体部50と、を備えている。なお、図8においては、筐体部50の側面を切断した本装置3を示している。
【0048】
本装置3においては、本ランプ1のフィラメント13に電流を流して発熱及び発光させるとともに、加熱の対象とする流体を、二重管部40の外筒部42内に流す。外筒部42の一方端である流入部42aから当該外筒部42の他方端である流出部42bに流れる流体は、内筒部41の外壁41bを介して、本ランプ1からの熱により温められる。
【0049】
ここで、例えば、本装置3によって、半導体や液晶の製造に用いられる薬液を加熱する場合には、室温程度の当該薬液を、比較的短時間で150℃程度まで加熱する必要がある。この場合、本ランプ1のフィラメント13には、加熱開始直後には比較的大きな電流を流して、当該フィラメント13を急激に発熱させる。したがって、内筒部41に収容された本ランプ1の温度は、加熱開始直後に急激に上昇する。
【0050】
ここで、本ランプ1は、上述のとおり、過熱防止部30a,30bを備えているため、この加熱開始直後における封止部12a,12bの温度の立ち上がりを緩やかに抑えることができるとともに、当該封止部12a,12bが到達する最高温度を300℃未満等、好ましい範囲内に抑えることができる。このように、本装置3においては、シンプル且つコンパクトな構造により、本ランプ1の封止部12a,12bの過熱を効果的に防止することができる。
【0051】
また、本装置3において、二重管部40から突出した封止部12a,12b及び碍子部20a,20bの少なくとも一方に冷却用の気体を吹き付ける構造を設けることにより、当該封止部12a,12bの過熱をより効果的に防止することができる。
【0052】
次に、本ランプ1及び本装置3の具体的な実施例について説明する。
【0053】
[実施例]
まず、本ランプ1として、図1から図6に示すような過熱防止部30a,30bを備えたハロゲンランプであって、リード線18が延び出ている碍子部20b側の封止部12bの1つに、熱電対(不図示)の一方端が金属箔16bと接続するよう封入されたハロゲンランプを独自に製造した。
【0054】
そして、本装置3として、この熱電対が接続された本ランプ1を二重管部40の内筒部41に収容した図8に示すようなインラインヒータを製造した。この本装置3には、二重管部40から突出した封止部12a,12b及び碍子部20a,20bに冷却用の空気を吹き付けるための冷却配管を筐体部50内に設けた。
【0055】
そして、本装置3を用いて、濃硫酸を、その温度が室温から160℃に到達するまで加熱した。すなわち、本装置3の流入部42a及び流出部42bを、耐薬品性のチューブを介して、濃硫酸を入れた貯留槽と接続した。また、この貯留槽には、濃硫酸の温度を測定するための温度センサーを設けた。
【0056】
そして、ポンプを用いて本装置3と貯留槽との間で濃硫酸を循環させるとともに、本ランプ1に通電して点灯させ、加熱を開始した。加熱開始後、本ランプ1の封止部12bの温度及び当該貯留槽内の濃硫酸の温度をそれぞれモニタリングした。
【0057】
加熱の対象となった濃硫酸の量は52.6Lであり、濃硫酸の循環流量は40L/分であった。本ランプ1の出力(すなわち、フィラメント13に対する印加電圧)は、測定された濃硫酸の温度に基づいてフィードバック制御された。
【0058】
第一の実施例においては、本装置3において、封止部12a,12b及び碍子部20a,20bに対する冷却空気の吹き付けは行わず、第二の実施例においては、25L/分の流量で当該冷却空気の吹き付けを行った。
【0059】
また、比較として、過熱防止部30a,30bを有しないハロゲンランプを加熱源として備えたインラインヒータ(以下、「比較装置」という。)を製造した。この比較装置においても、封止部には熱電対が封入された。ただし、ハロゲンランプの両端の封止部及び碍子は二重管部から突出せず、当該ハロゲンランプは、その全体が内筒部内に収容された。
【0060】
そして、この比較装置を用いて、上述の本装置3の場合と同様に、濃硫酸を、その温度が室温から160℃に到達するまで加熱し、封止部の温度をモニタリングした。比較例において加熱の対象となった濃硫酸の量は54Lであり、濃硫酸の循環流量は40L/分であった。また、比較例においては、上述の第二の実施例のような冷却空気の吹き付けは行わなかった。
【0061】
なお、第一の実施例、第二の実施例、及び比較例において用いられたハロゲンランプは、使用時における封止部の温度を300℃未満に維持することが推奨されるものであった。
【0062】
図9には、第一の実施例において測定された、封止部12bの温度及び濃硫酸酸の温度の経時的な変化を示す。図9において、横軸は、加熱開始(すなわち、本ランプ1のフィラメント13への通電開始)から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。図9において、破線は封止部12bの温度を示し、実線は濃硫酸の温度を示す。
【0063】
図9に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、264℃であった。すなわち、封止部12bの温度を、上限の300℃より十分に低く抑えることができ、当該封止部12bの過熱を防止することができた。
【0064】
図10には、第二の実施例において測定された、封止部12bの温度及び濃硫酸の温度の経時的な変化を示す。図10において、横軸は、加熱開始から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。図10において、破線は封止部12bの温度を示し、実線は濃硫酸の温度を示す。
【0065】
図10に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、210℃であった。すなわち、封止部12a,12bに冷却空気を吹き付けることにより、封止部12bの温度を、第一の実施例に比べてさらに低く抑えることができた。
【0066】
図11には、比較例において測定された、封止部の温度の経時的な変化を示す。図11において、横軸は、加熱開始から経過した時間(秒)を示し、縦軸は、各時間で測定された温度(℃)を示す。
【0067】
図11に示すように、濃硫酸の温度が室温から160℃に到達するまでの間に、封止部12bが到達した最高温度は、388℃であった。すなわち、本ランプ1を用いない比較例においては、封止部の温度が上限の300℃を超えてしまい、当該封止部の過熱を防止することができなかった。
【0068】
また、第一の実施例に用いた本装置3及び比較装置について、点灯を開始してから、寿命により点灯しなくなるまで、連続的に使用できる時間を測定した。その結果、比較装置におけるハロゲンランプは、1890時間で点灯しなくなったのに対し、本装置3における本ランプ1は、8015時間もの間、連続的に点灯させることができた。すなわち、ハロゲンランプに過熱防止部30a,30bを設けることにより、当該ハロゲンランプの寿命を大幅に延長することができた。
【0069】
なお、本発明は、上述の例に限られない。例えば、過熱防止部30a,30bは、フィラメント13のコイル部14より末端側に設けられるものに限られない。すなわち、過熱防止部30a,30bは、その一部又は全部が、管部11のうち、コイル部14が収容されている部分の外表面を覆うように設けられてもよい。
【0070】
また、過熱防止部30a,30bの形状及び大きさは、上述の例に限られない。すなわち、ランプ本体10の長手方向から見た過熱防止部30a,30bの形状は上述のように円形に限られず、例えば、楕円形、多角形、面取りがされた多角形、ギヤや星型のような凹凸のある形状等、任意の形状とすることができる。
【0071】
また、過熱防止部30a,30bは、コイル部14から封止部12a,12bへの光を遮るよう管部11の径方向外側に張り出した形状のものに限られない。すなわち、過熱防止部30a,30bは、コイル部14からの輻射を遮るひさしのように張り出した形状のものに限られず、例えば、管部11の外表面11aを覆う薄い帯状のものとすることもできる。
【0072】
また、過熱防止部30a,30bは、セラミック製のものに限られず、例えば、金属製とすることができる。過熱防止部30a,30bを構成する金属としては、例えば、アルミニウムを用いることができる。なお、過熱防止部30a,30bを構成するセラミックとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニアのうち少なくとも一つを含有するものを好ましく用いることができる。
【0073】
また、過熱防止部30a,30bと管部11を確実に密着させるために、当該管部11の一部が挿通された当該過熱防止部30a,30bの貫通穴31において、当該過熱防止部30a,30bと当該管部11との間に耐熱性のシーリング材を注入してもよい。このシーリング材は、過熱防止部30a,30bと管部11との熱膨張率の差を打ち消す緩衝材としても用いることができる。
【0074】
また、過熱防止部30a,30bは、非繊維材料、非多孔性材料から構成されることが好ましい。すなわち、過熱防止部30a,30bは、例えば、非多孔性のセラミックから構成することができる。
【0075】
また、本ランプ1は、ランプ本体10を2つ有するものに限られない。すなわち、例えば、本ランプ1は、ランプ本体10を1つ有するものとすることもできる。この場合、ランプ本体10の一方端の碍子部20a及び他方端の碍子部20bのそれぞれからリード線18が延び出すこととなる。
【0076】
また、本装置3は、本ランプ1の封止部12a,12bが二重管部40の外に突出するよう配置されるものに限られない。すなわち、本装置3において、本ランプ1は、封止部12a,12bが二重管部40の外に突出することなく、当該本ランプ1の全体が当該二重管部40の内筒部41内に収容されてもよい。
【0077】
また、本装置3において、加熱の対象となる流体は特に限られないが、例えば、半導体や液晶の製造に用いられる硫酸、濃硫酸、塩酸、リン酸、アンモニア水、純水を好ましく加熱の対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本実施形態に係るランプの斜視図である。
【図2】本実施形態に係るランプの平面図である。
【図3】本実施形態に係るランプの側面図である。
【図4】本実施形態に係るランプのうち、図2に示す破線IVで囲まれた部分の断面図である。
【図5】本実施形態に係るランプのうち、図3に示す破線Vで囲まれた部分の断面図である。
【図6】本実施形態に係るランプを図2に示すVI−VI線で切断した場合の断面図である。
【図7】本実施形態に係るランプ組立体の側面図である。
【図8】本実施形態に係る加熱装置の側面図である。
【図9】本実施形態に係る加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度及び濃硫酸の温度の経時変化の一例を示す説明図である。
【図10】本実施形態に係る加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度及び濃硫酸の温度の経時変化の他の例を示す説明図である。
【図11】過熱防止部を有しないハロゲンランプを備えた加熱装置を用いて濃硫酸を加熱した場合に測定された、封止部の温度の経時変化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ランプ、2 ランプ組立体、3 加熱装置、10 ランプ本体、11 管部、11a 管部の外表面、12 封止部、13 フィラメント、14 コイル部、15 非コイル部、16 金属箔、17 外部リード棒、18 リード線、20 碍子部、30 過熱防止部、31 貫通穴、40 二重管部、41 内筒部、42 外筒部、50 筐体部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル部を有するフィラメントが収容された管部と、
前記フィラメントの末端に接続された金属箔が封入された封止部と、
前記管部の外表面を覆う過熱防止部と、
を備えた
ことを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記過熱防止部は、前記管部の前記外表面のうち、前記フィラメントの前記コイル部より前記末端側の部分を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載されたランプ。
【請求項3】
前記過熱防止部は、発熱する前記コイル部から前記封止部への光を遮るよう前記管部の径方向外側に張り出した形状で形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載されたランプ。
【請求項4】
前記過熱防止部は、セラミック製である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載されたランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたランプを加熱源として備えた
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
前記ランプが収容される内筒部と、
加熱の対象となる流体が流れる外筒部と、
を有する二重管部を備え、
前記ランプは、前記過熱防止部が前記内筒部と接触するとともに、前記封止部が前記二重管部の外に突出するよう、前記内筒部に収容される
ことを特徴とする請求項5に記載された加熱装置。
【請求項1】
コイル部を有するフィラメントが収容された管部と、
前記フィラメントの末端に接続された金属箔が封入された封止部と、
前記管部の外表面を覆う過熱防止部と、
を備えた
ことを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記過熱防止部は、前記管部の前記外表面のうち、前記フィラメントの前記コイル部より前記末端側の部分を覆うように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載されたランプ。
【請求項3】
前記過熱防止部は、発熱する前記コイル部から前記封止部への光を遮るよう前記管部の径方向外側に張り出した形状で形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載されたランプ。
【請求項4】
前記過熱防止部は、セラミック製である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載されたランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたランプを加熱源として備えた
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
前記ランプが収容される内筒部と、
加熱の対象となる流体が流れる外筒部と、
を有する二重管部を備え、
前記ランプは、前記過熱防止部が前記内筒部と接触するとともに、前記封止部が前記二重管部の外に突出するよう、前記内筒部に収容される
ことを特徴とする請求項5に記載された加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−243760(P2009−243760A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90785(P2008−90785)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】
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