説明

ランプ

【課題】内管の先端部に、該内管と外管との間にその間の間隔を一定に保持する帯板部を介在させて内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられたランプに関して、そのスペーサの帯板部が内管を透して放射される光を遮って生ずる影の濃さを薄くする。
【解決手段】内管3の先端部中央に突出した排気管7を穴10に挿し通して排気管7に取付支持されるスペーサSの中心板部8の周縁から突出して内管3の基端部3b方向へ延びるスペーサSの帯板部9、9…が、ランプ1の光軸Lに対して内管3の周方向に傾いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管もしくは発光フィラメントを収容する内管と、該内管を収容する外管とが、口金のベースに対して接着剤で固定された三重管型もしくは二重管型のランプに係り、特に、内管の先端部に、該内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられたランプに関する。
【背景技術】
【0002】
発光管と、該発光管を収容する内管と、該内管を収容する外管とから成る三重管型のメタルハライドランプや、発光フィラメントを収容する内管と、該内管を収容する外管とから成る二重管型のハロゲンランプは、その製造過程において、内管と該内管に被せる外管とを同心状に配置して双方の基端部を口金のベースに対して接着剤で固定する際に、外管に収容された内管に傾きが生じて、ランプの配光性が損なわれる製品不良を生ずるおそれがある。
【0003】
そこで、内管に傾きが生ずることを防止するために、図7に示す従来の三重管型のランプ71は、発光管72を収容する内管73と該内管を収容する外管74との間に介在してその間に一定の間隔を保持することにより、内管73を外管74に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサSXが、内管73の先端部73aに取り付けられている(特許文献1参照)。
【0004】
スペーサSXは、内管73の先端部73aの中央に突出した排気管(チップ管)75を円形穴77に挿し通して排気管75に取付支持される円形リング状の中心板部76と、該中心板部76の周縁から等間隔で突出して内管73の基端部73b方向へ延びた3本の帯板部78、78…とを具有し、これら各帯板部78の先端部には、その先端部を内側に向かって円弧状に突出するように湾曲させて、内管73の外面に当接する円弧面部79が形成されると共に、その先端側を外側に向かって半球状に膨出させて、外管74の内面に当接する球面突起80が形成されている。
【0005】
しかして、図7の如く内管73に外管74が被せられると、内管73の先端部73aに取り付けられたスペーサSXの帯板部78、78…が、内管73の円筒部の外面と外管74の円筒部の内面との間に挟まって、その間が一定の間隔に保持されることにより、内管73が外管74に対して同心状に支持された状態となるから、内管73の基端部73bと外管74の基端部74bとを口金81のベース82に対して接着剤で固定する際に、内管73に傾きが生ずることが防止される。
【0006】
しかしながら、図7のランプ71は、スペーサSXの帯板部78、78…が、その板幅面をランプの光軸Lに向けて、当該光軸Lと平行に沿うように内管73の基端部73b方向へ長く延びているため、その帯板部78、78…で、発光管72から内管73を透して放射される有効光の一部が遮られて、ランプの光利用効率が著しく低下すると同時に、品質クレーム要因となる照度ムラや影が生じるという問題があった。
【0007】
また、上記問題への対応策として、例えばスペーサSXの帯板部78、78…の長さを短くして、その先端部が内管73の先端部73a付近で内管73と外管74との間に挟まるようにすると、ランプ71を輸送運搬する際に生ずる振動や衝撃などにより、帯板部78、78…が内管73と外管74との間から抜け出て、スペーサSXの中心板部76が排気管75から抜け落ち、スペーサSXが内管73の先端部73aから脱落して、ランプ71の外観・体裁が損なわれ、品質クレームを生ずるおそれがある。
【0008】
そこで、本願出願人は、図8に示すように、内管73の先端部73aに取り付けるスペーサSYの帯板部98、98…の長さを、図7のスペーサSXの帯板部78よりも短くして、それら帯板部98、98…の先端部を内管73の先端部73a付近で内管73と外管74との間に介在させると同時に、その先端部が内管73と外管74との間から抜け出て、スペーサSYが内管73の先端部73aから脱落することを防止するために、スペーサSYの中心板部96の穴97に挿し通した排気管75の先端部75aを先太形状(ストッパ形状)に成形して、その排気管75からスペーサSYの中心板部96が抜け落ちることを阻止するランプ91を提案した(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、図8のランプ91と略同型のランプを試作して、当該ランプから生ずるスペーサSYの影を、図9の如く至近距離に投影して検証したところ、スペーサSYの帯板部98、98…の長さを短くしたことによって、各帯板部98の影98sの長さが著しく短いものとなるが、その影98sは色濃いものであるから、当該ランプを店舗照明として使用すると、店舗の床面や壁面の色がホワイト、オフホワイト、アイボリー等の明るい無地色であったときに、その床面や壁面に投影されるスペーサSYの帯板部98、98…の影98s、98s…が目立って、ランプの品質クレーム要因となるおそれがある。特に、帯板部98、98…の影98s、98s…は、放射状に延びているから、その影が色濃いものであると、目に留まりやすく、品質クレームを生ずるおそれが大である。
【0010】
なお、スペーサSYの帯板部98の影98sが色濃いものとなるのは、その帯板部98がランプの光軸Lと平行に沿うように延びているために、図10の如く、光源となる発光管72のA点、B点およびC点から帯板部98に向かって放射される光が、夫々A、B、Cの各点と帯板部98の下端とを結ぶ線A’、線B’、線C’からスペーサSYの中心板部96にかけて帯板部98で遮られ、特に、線C’から中心板部96にかけてのゾーンZにおいて、A、B、Cの各点から放射される全ての光が帯板部98で遮られることとなるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】意匠登録第1318637号公報
【特許文献2】特開2010−15896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、内管の先端部に、該内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられたランプに関して、そのスペーサの帯板部が内管を透して放射される光を遮って生ずる影の濃さを薄くすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、発光管もしくは発光フィラメントを収容する内管の基端部と、その内管を収容する外管の基端部とが、口金のベースに対して接着剤で固定されると共に、内管の先端部に、該内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられ、該スペーサが、内管の先端部中央に突出した排気管を穴に挿し通して該排気管に取付支持される中心板部と、該中心板部の周縁から突出して内管の基端部方向へ延びる3本以上の帯板部とを具有するランプにおいて、前記帯板部が、ランプの光軸に対して前記内管の周方向に傾いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるランプは、内管の基端部方向へ延びるスペーサの帯板部が、ランプの光軸に対して内管の周方向に傾いているから、従来の如く帯板部がランプの光軸と平行に沿うように延びている場合に比べて、その帯板部が内管を透して放射される光を遮って生ずる影の濃さが全体的に希薄化されるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るランプの斜視図
【図2】実施例に係るランプに用いるスペーサの正面図
【図3】実施例に係るランプに用いるスペーサの平面図
【図4】実施例に係るランプに用いるスペーサの斜視図
【図5】実施例に係るランプから生ずるスペーサの影を概略的に表した図
【図6】本願発明のランプにおいてスペーサの帯板部の影が薄くなる原理を示す図
【図7】従来のランプを示す図
【図8】従来のランプを示す図
【図9】従来のランプから生ずるスペーサの影を概略的に表した図
【図10】従来のランプにおいてスペーサの帯板部の影が色濃いものとなる原理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るランプの実施形態は、発光管もしくは発光フィラメントを収容する内管の基端部と、その内管を収容する外管の基端部とが、口金のベースに対して接着剤で固定されると共に、内管の先端部に、該内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられており、該スペーサは、内管の先端部中央に突出した排気管を穴に挿し通して該排気管に取付支持される中心板部と、該中心板部の周縁から略等間隔で突出して内管の基端部方向へ延びる少なくとも3本ないし4本の帯板部とを具有している。
【0017】
そして、スペーサの帯板部が内管を透して放射される光を遮って生ずる影の濃さを希薄化させるために、該帯板部が、互いに向きを揃えて、ランプの光軸に対して内管の周方向に傾いており、その傾き角度は、約15°〜45°に選定されている。
【0018】
また、外管の基端部を口金のベースに固定する接着剤の劣化によってそのベースから脱落した外管をスペーサの帯板部の先端部に掛け止めて、外管の落下を阻止するために、スペーサの帯板部が、その先端部を外管の内面に圧接させるように付勢されると共に、スペーサの中心板部を取付支持する排気管の先端部が、中心板部の抜け落ちを阻止するストッパ形状を成している。
【実施例】
【0019】
図1に示す実施例のランプ1は、発光管2を収容する内管3の基端部3bと、内管3を収容する外管4の基端部4bとが、口金5のベース6に対して耐熱性接着剤で固定された三重管型メタルハライドランプであって、内管3の先端部3aに、内管3と外管4との間に介在してその間に一定の間隔を保持することにより内管3を外管4に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサSが取り付けられている。なお、発光管2は、透光性セラミックで形成され、内管3と外管4は、夫々その基端部3b、4b側が開口せられた円筒状の石英ガラス管と硬質ガラス管で形成され、スペーサSは、厚さ0.2mmのバネ用ステンレス鋼帯(SUS304−CSP)で形成されている。
【0020】
また、スペーサSは、内管3の先端部3aの中央に突出した排気管7を円形穴10に挿し通して排気管7に取付支持される円形リング状の中心板部8と、該中心板部8の周縁から90°間隔で突出して内管3の基端部3b方向へ延びる4本の帯板部9、9…とを具有している。
【0021】
そして、スペーサSの帯板部9、9…は、長さ約7〜12mm、幅約1.5〜3mmに形成されると共に、互いに向きを揃えて、ランプ1の光軸Lに対して内管3の周方向に傾いており、その傾き角度θは、約15°〜45°の範囲に選定されている。
【0022】
また、スペーサSは、中心板部8の円形穴10の周囲に沿って排気管7の外周部に当接させる4本の爪片11、11…が等間隔で形成されると共に、中心板部8の面内方向に沿って、その機械的強度を高めるための環状リブ12が形成され、帯板部9、9…の先端部には、外管4の内面に当接する球状突起13が形成されている。
【0023】
内管3の先端部3aに取り付けられたスペーサSの帯板部9、9…は、図1の如く、内管3に被せられた外管4で内管3側へ押圧されて、図4実線図示の状態から同図鎖線図示の如く弾性変形し、その弾性変形によって生ずる反発力により、球状突起13が形成された先端部を外管4の内面に圧接させるように付勢されている。
【0024】
また、内管3の先端部3aの中央に突出する排気管7は、その余長部分を酸水素バーナ等で焼き切ってチップオフした際に、加熱軟化状態となっている先端部7aを軸方向に圧し潰して図示のような先太形状に成形されることにより、その先端部7aが、スペーサSの中心板部8に形成された爪片11、11…の先端を係止して中心板部8の抜け落ちを阻止するストッパ形状を成している。
【0025】
以上の如く構成された実施例のランプ1は、当該ランプから至近距離に投影されるスペーサSの影が、図5に示すようなものとなり、その帯板部9、9…の影9s、9s…の濃さは、図9に示すスペーサSYの帯板部98、98…の影98s、98s…よりも薄いものとなっている。
【0026】
このようにスペーサSの帯板部9、9…の影9s、9s…が薄くなるのは、それら帯板部9、9…が、ランプ1の光軸Lに対して内管3の周方向に傾いていることにより、図6に示すように、光源となる発光管2のA点、B点およびC点から放射される光が帯板部9によって遮られるゾーンが、夫々A、B、Cの各点と帯板部9の板幅方向の両端とを結ぶ線A’−A”間、線B’−B”間および線C’−C”間の狭い角度範囲に止まり、A、B、Cの各点から放射される全ての光が帯板部9で遮られて色濃い影が生ずるゾーンZが、投影距離が少し長くなると消失してしまう網線図示の如き狭小かつ短小な範囲に止まるからである。
【0027】
したがって、ランプ1は、これを店舗照明として使用しても、店舗の床面や壁面に投影されるスペーサSの帯板部9、9…の影9s、9s…が目立って品質クレームを生ずるおそれはない。
【0028】
なお、本発明者の実験によれば、スペーサSの帯板部9、9…の傾き角度θを約15°以上とすれば、その帯板部9、9…の影9s、9s…の濃さを希薄化する十分な効果が得られることが確認された。
【0029】
また、実施例の如く、スペーサSの帯板部9、9…が、その先端部を外管4の内面に対して圧接させるように付勢されると共に、スペーサSの中心板部8を取付支持する排気管7の先端部7aが、中心板部8の抜け落ちを阻止するストッパ形状を成していれば、外管4の基端部4bを口金5のベース6に固定する接着剤の劣化によって外管4がベース6から脱落したときに、外管4の内面に先端部を圧接させたスペーサSの帯板部9、9…が、外管4の荷重を受けて外方へ押し拡げられて、帯板部9、9…の先端部と外管4の内面との間の摩擦力が増大し、外管4が帯板部9、9…の先端部に掛け止められた状態となって、その落下が阻止されることが確認された。更に、帯板部9、9…の傾き角度θを約45°以下とすれば、その帯板部9、9…の先端部に外管4が確実に掛け止められることが確認された。
【0030】
なお、実施例のスペーサSは、その帯板部9、9…が全体的に傾いているが、本発明は、これに限らず、帯板部9、9…が中心板部8の周縁に近い途中部分から先端部にかけて傾いている場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、発光管と該発光管を収容する内管と該内管を収容する外管とから成る三重管型ランプや、発光フィラメントを収容する内管と該内管を収容する外管とから成る二重管型ランプの品質性能と信頼性の向上に資するものである。
【符号の説明】
【0032】
1…ランプ
L…ランプの光軸
2…発光管
3…内管
4…外管
5…口金
6…口金のベース
7…排気管
S…スペーサ
8…中心板部
9…帯板部
10…円形穴
11…爪片
12…環状リブ
13…球状突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管もしくは発光フィラメントを収容する内管の基端部と、その内管を収容する外管の基端部とが、口金のベースに対して接着剤で固定されると共に、内管の先端部に、該内管を外管に対して同心状に支持する金属薄板製のスペーサが取り付けられ、該スペーサが、内管の先端部中央に突出した排気管を穴に挿し通して該排気管に取付支持される中心板部と、該中心板部の周縁から突出して内管の基端部方向へ延びる3本以上の帯板部とを具有するランプにおいて、前記帯板部が、ランプの光軸に対して前記内管の周方向に傾いていることを特徴とするランプ。
【請求項2】
前記帯板部が、前記中心板部の周縁から略等間隔で突出すると共に、互いに向きを揃えて前記内管の周方向に傾いている請求項1記載のランプ。
【請求項3】
前記帯板部の前記光軸に対する傾き角度が、約15°〜45°に選定されている請求項1又は2記載のランプ。
【請求項4】
前記帯板部が、その先端部を前記外管の内面に圧接させるように付勢されると共に、前記排気管の先端部が、前記中心板部の抜け落ちを阻止するストッパ形状を成している請求項1、2又は3記載のランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図5】
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【図9】
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