説明

リアカメラの表示装置

【課題】複数の制御部を利用することによって、リアカメラで撮影した映像を素早く表示する。
【解決手段】リアカメラの表示装置10は、車両の後方を撮影するリアカメラ11と、このリアカメラ11が撮影した映像を表示する表示部12と、リアカメラ11から映像信号Pを受信し、表示部12に映像を出力する第1の制御部13と、第1の制御部13よりも起動時間が早く、第1の制御部13と同様にリアカメラ11から映像信号Pを受信し、表示部12に映像を出力する第2の制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後方をリアカメラによって撮影し、撮影した映像を表示するリアカメラの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リアカメラの表示装置として、車両にリアカメラを搭載し、このリアカメラで撮影した映像を車室内に設けられたディスプレイに表示するものが知られている。
このような車両用リアカメラの表示装置は、運転席が視認することができない視界エリアの映像を提供するものである。
【0003】
なかでも、車両の後方を撮影するリアカメラだけでなく、車両の前方を撮影するフロントカメラも設けて、車両の停車位置により車両の前後方向いずれか一方の映像を表示させるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1の車両用映像表示装置は、エンジンが停止する直前に「車両が後退していた」と判断した場合には、エンジン始動後にリアカメラで撮影した映像を表示する。一方、エンジンが停止する直前に「車両が前進していた」と判断した場合、又は「車両が道路上に位置していた」と判断した場合には、エンジン始動後にフロントカメラで撮影した映像を表示する。
【0005】
しかし、特許文献1の車両用映像表示装置では、装置が起動してからディスプレイに表示するまでの応答時間について考慮していない。つまり、カメラで撮影した映像をエンジン始動後に素早く表示させるという思想はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−208722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、複数の制御部を使用することによって、リアカメラで撮影した映像をエンジン始動後に素早く表示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車両の後方を撮影するリアカメラと、このリアカメラが撮影した映像を表示する表示部と、前記リアカメラから映像信号を受信し、前記表示部に前記映像を出力する第1の制御部とを備えるリアカメラ表示装置において、前記第1の制御部よりも起動時間が早い第2の制御部を備え、この第2の制御部は、少なくとも前記第1の制御部が起動するまでの間、前記リアカメラから前記映像信号を受信し、前記表示部に前記映像を出力することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、第1の制御部は、自らが起動したと判断した場合には、第2の制御部が表示部に映像を出力しないように、第2の制御部に停止信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明では、車両用リアカメラの表示装置に、車両の後方を撮影するリアカメラと、このカメラが撮影した映像を表示する表示部と、リアカメラから映像信号を受信し、表示部に映像を出力する第1の制御部とを備える。また、第1の制御部よりも起動時間が早い第2の制御部を更に備え、この第2の制御部は、少なくとも第1の制御部が起動するまでの間、リアカメラから映像信号を受信し、表示部に映像を出力する。このため、表示部はリアカメラが撮影した映像を素早く表示することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、第1の制御部が起動した場合には、第2の制御部が表示部に映像を出力しないように、第1の制御部が第2の制御部に停止信号を送信する。この結果、第2の制御部は映像の制御を停止する。一方、第1の制御部はリアカメラから映像信号を受信し、表示部に映像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るリアカメラの表示装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る表示部を説明する図である。
【図3】本発明に係る第2の制御部の制御フローである。
【図4】本発明に係る第1の制御部の制御フローである。
【図5】本発明に係るマルチプレクサの制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
図1に示されるように、リアカメラの表示装置10は、車両の後方を撮影するリアカメラ11と、このリアカメラ11が撮影した映像を表示する表示部12と、リアカメラ11から映像信号Pを受信し、表示部12に映像を出力する第1の制御部13と、第1の制御部13よりも起動時間が早く、第1の制御部13と同様にリアカメラ11から映像信号Pを受信し、表示部12に映像を出力する第2の制御部14とを備える。
【0015】
なお、リアカメラの表示装置10は、アクセサリ電源(ACC電源)から電源供給される。ACC電源はエンジンキーが「ACC位置」又は「ON位置」にあるときに供給され、「OFF位置」にあるときに停止される。
【0016】
リアカメラ11は、車両の後方の映像であって、運転席から視認することができない視界エリアを撮影する。撮影した映像は、映像信号Pとして第1の制御部13及び第2の制御部14に送信される。なお、この映像信号Pは、便宜上、リアカメラ11から第1の制御部に送信される映像信号P1(以下、第1の映像信号P1と記す。)と、リアカメラ11から第2の制御部に送信される映像信号P2(以下、第2の映像信号P2と記す。)とに区別して、以降説明する。
【0017】
表示部12は、多数の画素を縦横に配置した、例えば、液晶ディスプレイや有機EL等のモニター15(図2を参照。)を有し、リアカメラ11が撮影した映像が表示される。なお、表示部12は、リアカメラ11で撮影した映像だけでなく、ナビゲーションシステムの情報やテレビ番組等を表示することもできる。
【0018】
また、図2に示すように、表示部12は、2つの入力信号(第1の映像信号P1及び第2の映像信号P2)のうち1つの信号をモニター15に出力する。このため、表示部12は、第1の映像信号P1を出力するのか、それとも、第2の映像信号P2を出力するのかを切り換えるマルチプレクサ16を備える。なお、第1の制御部13がマルチプレクサ16を備えることもできる。
【0019】
第1の制御部13は、いわゆるメインボードであり、例えばナビゲーションシステムに組み込まれている。この第1の制御部13は、車載ネットワークの通信制御、映像機器及び音響機器の再生制御、外部記憶装置の読込み等、様々な制御を行う。このように第1の制御部13は多機能を制御するものであり、例えばWindows(登録商標) Automotive等の汎用OSを採用する。
【0020】
汎用OSによれば、様々なソフトウェアを共通してサポートすることができるため、低期間でかつ低コストで開発することができる。しかし、汎用OSは、必要に応じてカスタマイズすることができないため、特定のソフトウェアを他のソフトウェアよりも優先して制御することはできない。また、汎用OSによれば、ACC電源がON状態になってからソフトウェアが起動するまでの時間(以下、「起動時間」と記す。)が比較的に長くかかってしまう。
【0021】
従って、汎用OSを採用する第1の制御部13によれば、例えば、ACC電源がON状態になってから表示部12に第1の映像信号P1を出力するまでの時間は、比較的に長くなる。このため、表示部12は、第1の映像信号P1に基づく映像を素早く表示することができない。
【0022】
第2の制御部14は、いわゆるサブCPUであり、音響機器の音量調整等、特定の制御を行う。このように第2の制御部14はある程度限られた機能を制御するものであり、例えばITRON等の組み込み系OS(リアルタイムOSともいう。)を採用する。
【0023】
組み込み系OSによれば、限られたソフトウェアしかサポートできず、複雑な制御は行えないが、起動時間は比較的に短い。このため、組み込み系OSを採用する第2の制御部14によれば、例えば、ACC電源がON状態になってから表示部12に第2の映像信号P2を出力するまでの時間は、比較的に短い。従って、表示部12は、第2の映像信号P2に基づく映像を素早く表示することができる。
【0024】
なお、第1の制御部13及び第2の制御部14は、ともにシフトレバーの位置を検知するシフト位置センサ(図示しない)に接続されている。このため、シフト位置センサから入力されるシフト位置信号Sによって、車両が「前進する」のか、それとも「後退する」のかを判断することができる。第1の制御部13及び第2の制御部14は、例えば、シフトレバーが「リバース」の位置にあると判断した場合に、車両が「後退する」と判断して、シフトレバーがその他の位置にあると判断した場合に、車両が「前進する」と判断することができる。
【0025】
次に、図3を用いて、第2の制御部14の制御フローを説明する。
【0026】
まずステップST01において、第2の制御部14は、ACC電源がON状態であるか否かを判断する。つまり、ACC電源が供給されたか否かを判断する。ACC電源がON状態であると判断した場合には、次のステップST02に進む。一方、ACC電源がOFF状態であると判断した場合には、ステップST01の判断を繰り返し行う。
【0027】
ステップST02において、第2の制御部14が起動する。つまり、組み込み系OSが起動する。なお、第1の制御部13は、このときはまだ起動していない。第2の制御部14が起動したら、次のステップST03に進む。
【0028】
ステップST03において、第2の制御部14は、リアカメラ11から第2の映像信号P2を受信する。このとき、第1の制御部13はまだ起動していないため、リアカメラ11から第1の映像信号P1を受信しない。第2の制御部14が第2の映像信号P2を受信したら、次のステップST04に進む。
【0029】
ステップST04において、第2の制御部14は、シフト位置センサからシフト位置信号Sを受信する。そして、第2の制御部14は、シフト位置信号Sに基づいて車両が「後退する」か否かを判断する。車両が「後退する」と判断した場合には、次のステップST05に進む。一方、車両が「前進する」と判断した場合には、ステップST04の判定を繰り返し行う。
【0030】
なお、ステップST03とステップST04は逆であっても良い。つまり、第2の制御部14は、シフト位置信号Sに基づいて車両が後退するか否かを判断してから、第2の映像信号P2を受信しても良い。
【0031】
ステップST05において、第2の制御部14は、表示部12に第2の映像信号P2を送信する。このとき、第1の制御部13はまだ起動が完了していない。このため、第1の制御部13は、表示部12に第1の映像信号P1を送信することができない。しかし、表示部12は、第2の映像信号P2によりリアカメラが撮影した映像を表示することができる。
【0032】
ステップST06において、第2の制御部14は、第1の制御部13から停止信号Nを受信したか否かを判断する。停止信号Nを受信していなければ、ステップST05に戻り、第2の映像信号P2を引き続き送信する。一方、停止信号Nを受信していれば、次のステップST07に進む。
【0033】
ステップST07において、第2の制御部14は、第2の映像信号P2の送信を停止する。詳しくは後述するが、第2の制御部14が第2の映像信号P2の送信を停止したとき、第1の制御部13が表示部12に第1の映像信号P1を送信する。
【0034】
以上の制御によれば、例えば、エンジンを始動してすぐに後退して出る場合、エンジンをかけると第2の制御部14はすぐに起動して、リアカメラ11から第2の映像信号P2を受信する。更に、第2の制御部14はシフト位置信号Sを受信して、車両が後退すると判断した場合には、表示部12に第2の映像信号P2を送信する。このため、運転者は第1の制御部13の起動完了を待つ必要がなく、リアカメラ11が撮影した映像を素早く表示させることができる。従って、運転者はリアカメラ11が撮影した映像を確認しながら、車両を円滑に移動させることができる。
【0035】
次に、図4を用いて、第1の制御部13の制御フローを説明する。
【0036】
まずステップST11において、ACC電源がON状態となると、第1の制御部13が起動したか否かを自ら判断する。起動したと判断した場合には、次のステップST12に進む。起動していないと判断した場合には、起動が完了するまでステップST11の判断を繰り返し行う。
【0037】
ステップST12において、第1の制御部13は、リアカメラ11から第1の映像信号P1を受信する。受信が完了したら次のステップST13に進む。
【0038】
ステップST13において、第1の制御部13は、シフト位置センサからシフト位置信号Sを受信する。そして、第1の制御部13は、シフト位置信号Sに基づいて車両が「後退する」か否かを判断する。車両が「後退する」と判断した場合には、次のステップST14に進む。一方、車両が「前進する」と判断した場合には、ステップST14の判定を繰り返し行う。
【0039】
なお、ステップST12とステップST13は逆であっても良い。つまり、第1の制御部13は、シフト位置信号Sに基づいて車両が後退するか否かを判断してから、第1の映像信号P1を受信しても良い。
【0040】
ステップST14において、第1の制御部13は、表示部12に第1の映像信号P1を送信する。送信が完了したら次のステップST15に進む。
【0041】
ステップST15において、第1の制御部13は、第2の制御部14に停止信号Nを送信する。第2の制御部14は、停止信号Nを受信すると、表示部12に第2の映像信号P2を送信しない。このため、第2の制御部14は、例えば音響機器の音量調整等、第2の制御部14が通常行う制御のみを継続して行う。
【0042】
以上の制御によれば、第1の制御部13は起動すると、表示部12に第1の映像信号を送信するとともに、第2の制御部14に停止信号Nを送信する。このため、表示部12は第1の映像信号P1を受信して、リアカメラ11が撮影した映像を表示させることができる。
【0043】
なお、第1の映像信号P1は多機能を制御する第1の制御部13より送信されるため、第1の映像信号P1に基づく映像表示には様々な機能を付加することができる。例えば、停止線を明確にするバックガイド線を映像に重畳して表示したり、映像内の障害物を検知して車両衝突の危険を通知したりすることができる。
【0044】
次に、図2を参照しつつ、図5を用いてマルチプレクサ16の制御を説明する。
まずステップST21において、マルチプレクサ16(図2を参照)は、第2の映像信号P2を受信したか否かを判断する。第2の映像信号P2を受信した場合には次のステップST22に進む。一方、第2の映像信号P2を受信していない場合にはステップST21の判断を繰り返し行う。なお、第2の映像信号P2を受信していないときは、例えば、ナビゲーションシステムの初期画面を表示するようにしても良い。
【0045】
ステップST22において、マルチプレクサ16は、モニター15(図2を参照)に受信した第2の映像信号P2を出力する。この結果、表示部12は、第2の映像信号P2によりリアカメラが撮影した映像を表示することができる。第2の映像信号P2を出力したら、次のステップST23に進む。
【0046】
ステップST23において、マルチプレクサ16は、第1の映像信号P1を受信したか否かを判断する。第1の映像信号P1を受信した場合にはステップST24に進む。一方、第1の映像信号P1を受信していない場合にはステップST22に戻り、引き続きモニター15に第2の映像信号P2を出力する。
【0047】
ステップST24において、マルチプレクサ16は、第2の映像信号P2よりも第1の映像信号P1を優先してモニター15(図2を参照)に出力する。この結果、表示部12は、第1の映像信号P1によりリアカメラが撮影した映像を表示することができる。なお、第1の制御部13は、第2の制御部14が表示部12に映像を出力しないように、停止信号Nを送信しても良い。具体的には、第1の制御部13は、第2の制御部14がマルチプレクサ16に第2の映像信号P2を送信しないように、停止信号Nを送信しても良い。このとき、マルチプレクサ16は、第1の映像信号P1のみ受信する。
【0048】
以上に説明したように、マルチプレクサ16は、第1の制御部13が起動するまでの間、具体的には、ACC電源がON状態になってから第1の制御部13が第1の映像信号P1を送信するまでの間、モニター15に第2の映像信号P2を出力する。このため、表示部12は、第2の映像信号によりリアカメラ11が撮影した映像を素早く表示することができる。従って、例えば、エンジンを始動してすぐに後退して出る場合、運転者はリアカメラ11が撮影した映像を素早く確認することができるため、車両を円滑に移動させることができる。
【0049】
なお、本実施例では、第1の制御部13が、第2の制御部14に停止信号Nを送信するが、停止信号Nを送信しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るリアカメラの表示装置は、リアカメラが撮影した映像を参考にして、車両を後進するのに好適である。
【符号の説明】
【0051】
10…リアカメラの表示装置、11…リアカメラ、12…表示部、13…第1の制御部、14…第2の制御部、P…映像信号、N…停止信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方を撮影するリアカメラと、このリアカメラが撮影した映像を表示する表示部と、前記リアカメラから映像信号を受信し、前記表示部に前記映像を出力する第1の制御部とを備えるリアカメラ表示装置において、
前記第1の制御部よりも起動時間が早い第2の制御部を備え、この第2の制御部は、少なくとも前記第1の制御部が起動するまでの間、前記リアカメラから前記映像信号を受信し、前記表示部に前記映像を出力することを特徴とするリアカメラ表示装置。
【請求項2】
前記第1の制御部は、自らが起動したと判断した場合には、前記第2の制御部が前記表示部に前記映像を出力しないように、前記第2の制御部に停止信号を送信することを特徴とする請求項1記載のリアカメラ表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201175(P2012−201175A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66370(P2011−66370)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)