説明

リアクトル冷却装置

【課題】温度上昇が大きくなり易い高発熱部であるコイルを備えるリアクトルを効率的に冷却する。
【解決手段】リアクトル冷却装置10は、コア2およびコイル3を有するリアクトル1と、隣接する少なくとも2つのコイル2の周囲に設けられ、リアクトル1を冷却する冷却媒体が流れる冷却媒体流路5とを備え、隣接する2つのコイル3で挟まれている冷却媒体流路5の断面積は、隣接する2つのコイル2で挟まれていない冷却媒体流路5の断面積よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア及びコイルを有するリアクトルの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリの電圧をスイッチのオンオフによって昇圧する昇圧コンバータが車両には備えられている。昇圧コンバータには、鉄心等の磁性体であるコアに、銅線等のコイルを巻き付けたリアクトルが用いられている。このリアクトルにおいては、高周波化、高リップル電流化等により小型化を図っている。そして、リアクトルのコイルを効率的に冷却する技術が開示されている(例えば、特許文献4、6を参照)。
【特許文献1】特許第3692714号公報
【特許文献2】特開平5−190359号公報
【特許文献3】特許第2645459号公報
【特許文献4】特開2006−41353号公報
【特許文献5】特開2004−273657号公報
【特許文献6】特開平11−288819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高周波化、高リップル電流化等によりリアクトルの小型化を図る反面、発熱密度が高くなり、各部の保証温度を保持することが困難となる。特に、高発熱部であるコイルの温度上昇が大きくなる。リアクトルの温度が、保証温度の上限値近傍となった場合には、出力を制限してリアクトルの発熱を抑えることが一般的となる。出力を制限しない場合、リアクトルの温度が上昇することになるため、リアクトルを効率的に冷却することが望まれる。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、リアクトルを効率的に冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、上述した課題を解決するために、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、コアおよびコイルを有するリアクトルと、隣接する少なくとも2つの前記コイルの周囲に設けられ、前記リアクトルを冷却する冷却媒体が流れる冷却媒体流路とを備え、隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路の断面積は、隣接する2つの前記コイルで挟まれていない前記冷却媒体流路の断面積よりも大きいリアクトル冷却装置である。
【0006】
冷却媒体流路を流れる冷却媒体の流量は、冷却媒体流路の断面積に比例して大きくなる。上記リアクトル冷却装置において、隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路の断面積は、当該コイルで挟まれていない冷却媒体流路の断面積よりも大きい。したがって、隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路を流れる冷却媒体の流量は、当該コイルで挟まれていない冷却媒体流路を流れる冷却媒体の流量よりも大きい。隣接する2つのコイルで挟まれている箇所は、当該コイルで挟まれていない箇所よりも高温度になり易い。冷却媒体流路を流れる冷却媒体の流量が大きくなれば冷却媒体の冷却効果が促進されるため、隣接する2つのコイルで挟まれている箇所をより冷却することができ、リアクトルを効率的に冷却することができる。
【0007】
また、上記リアクトル冷却装置において、前記冷却媒体流路に接続され、前記冷却媒体
流路に前記冷却媒体を供給する冷却媒体供給流路を更に備え、隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、前記冷却媒体供給流路から前記冷却媒体流路への前記冷却媒体が流入する方向とは略同一方向であるようにしてもよい。隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、前記冷却媒体供給流路から前記冷却媒体流路への前記冷却媒体が流入する方向とが略同一方向である場合、冷却媒体流路内における冷却媒体の圧力損失が少ないため、冷却媒体は隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路を流れ易くなる。その結果、隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路を流れる冷却媒体によって当該コイルをより冷却することができ、リアクトルを効率的に冷却することができる。
【0008】
また、上記リアクトル冷却装置において、前記冷却媒体流路に接続され、前記冷却媒体流路から前記冷却媒体が排出される冷却媒体排出流路を更に備え、隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、前記冷却媒体流路から前記冷却媒体排出流路への前記冷却媒体が排出される方向とは略同一方向であるようにしてもよい。隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、冷却媒体流路から冷却媒体排出流路への冷却媒体が排出される方向とが略同一方向である場合、冷却媒体流路内における冷却媒体の圧力損失が少ないため、冷却媒体は隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路を流れ易くなる。その結果、隣接する2つのコイルで挟まれている冷却媒体流路を流れる冷却媒体によって当該コイルをより冷却することができ、リアクトルを効率的に冷却することができる。
【0009】
また、上記リアクトル冷却装置において、前記冷却媒体流路は、絶縁性の積層チューブであり、前記コイルと接するように配置されていてもよい。上記積層チューブは絶縁性であるため、積層チューブとコイルとの間に他の絶縁部材を設ける必要が無く、コイルと接するように絶縁性の積層チューブをコイルの周囲に設けることができ、リアクトル冷却装置の小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るリアクトル冷却装置によれば、リアクトルを効率的に冷却することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第一の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施例に係るリアクトル冷却装置10が備えるリアクトル1の上面図である。リアクトル1は、鉄心等のU字型のコア2に、銅線等のコイル3A、3Bを巻き付けて構成されている。より詳細には、リアクトル1は、2つのコア2の端部を対向させて当接し、コア2の湾曲していない直線部分にコイル3A、3Bを巻き付けることにより構成されている。
【0013】
図2は、本実施例に係るリアクトル冷却装置10の断面図である。コア2には、コア2とコイル3A、3Bとを絶縁するためのボビン4が装着されている。コイル3A、3Bの周囲には、リアクトル1を冷却するための冷却媒体(冷却液)が流れる冷却媒体流路5が設けられている。冷却媒体流路5の内部を冷却媒体が流れることにより、コイル3A、3Bと冷却媒体との間で熱交換が行われ、リアクトル1の冷却が行われる。
【0014】
冷却媒体流路5には、冷却媒体流路5に冷却媒体を供給するための冷却媒体供給流路6が接続されており、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5に冷却媒体が供給される。す
なわち、冷却媒体流路5と冷却媒体供給流路6とは連通しており、冷却媒体供給流路6を流れる冷却媒体は冷却媒体流路5に流入する。
【0015】
冷却媒体流路5には、冷却媒体流路5から冷却媒体を排出するための冷却媒体排出流路7が接続されており、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7に冷却媒体が排出される。すなわち、冷却媒体流路5と冷却媒体排出流路7とは連通しており、冷却媒体流路5を流れる冷却媒体は冷却媒体排出流路7に流入する。
【0016】
冷却媒体流路5、冷却媒体供給流路6及び冷却媒体排出流路7は、絶縁性の積層チューブであり、液体や気体を輸送するための管状成形体あるいは管状空間を有する成形体である。積層チューブを冷却媒体流路5として使用した場合、コイル3A、3Bと接するように積層チューブをコイル3A、3Bの周囲に配置することが可能となる。なお、冷却媒体供給流路6は、図示しないポンプと接続されており、ポンプを駆動させることにより、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5に冷却媒体が供給され、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7に冷却媒体が排出される。
【0017】
図2に示す太矢印は、冷却媒体が冷却媒体供給流路6、冷却媒体流路5及び冷却媒体排出流路7を流れる方向を示している。図2では、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5へ冷却媒体が流入する方向は縦方向であり、コイル3A、3Bの配列方向は横方向である。したがって、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5へ冷却媒体が流入する方向は、コイル3A、3Bの配列方向と交差している。
【0018】
図2に示すように、コイル3A、3Bの間には冷却媒体流路5が設けられている。図2では、コイル3A、3Bとで挟まれている冷却媒体流路5は、縦方向に伸長している。したがって、コイル3A、3Bとで挟まれている冷却媒体流路5の伸長方向は、コイル3A、3Bの配列方向と交差している。また、図2では、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5内における冷却媒体の流れる方向は縦方向である。ここで、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5内における冷却媒体の流れる方向と、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5へ冷却媒体が流入する方向とは略同一方向である。略同一方向である場合、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5内における冷却媒体の流れる方向と、冷却媒体供給流路6から冷却媒体流路5へ冷却媒体が流入する方向とが異なる場合と比較して、冷却媒体流路5内を流れる冷却媒体の圧力損失が減少する。したがって、冷却媒体は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れ易くなり、コイル3A、3Bを効率的に冷却することができる。
【0019】
図2では、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7へ冷却媒体が排出される方向は縦方向である。したがって、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7へ冷却媒体が排出される方向は、コイル3A、3Bの配列方向と交差している。ここで、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5内における冷却媒体の流れる方向と、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7へ冷却媒体が排出される方向とは略同一方向である。略同一方向である場合、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5内における冷却媒体の流れる方向と、冷却媒体流路5から冷却媒体排出流路7へ冷却媒体が排出される方向とが異なる場合と比較して、冷却媒体流路5内を流れる冷却媒体の圧力損失が減少する。したがって、冷却媒体は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れ易くなり、コイル3A、3Bを効率的に冷却することができる。
【0020】
図2において、点線aで示す冷却媒体流路5の幅は、点線bで示す冷却媒体流路5の幅よりも広くなっている。すなわち、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5の断面積は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない冷却媒体流路5のうち同方向に設けられている冷却媒体流路5の断面積よりも大きい。そのため、コイル3Aとコイ
ル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない冷却媒体流路5のうち同方向に設けられている冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量より大きい。
【0021】
コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない冷却媒体流路5を流れている冷却媒体は、主にコイル3A又はコイル3Bの何れかを冷却することになるが、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れている冷却媒体は、コイル3A及びコイル3Bの両方を冷却することになる。すなわち、コイル3A及びコイル3Bが発熱する場合、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている箇所の温度は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない箇所の温度よりも高くなる。したがって、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れている冷却媒体の温度は、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない冷却媒体流路5を流れている冷却媒体の温度よりも上昇する傾向にある。
【0022】
冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量を大きくした場合、コイル3A、3Bに対する冷却媒体の冷却効果は促進される。本実施例では、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量を大きくすることで、リアクトル1を効率的に冷却することが可能となる。また、冷却媒体流路5に積層チューブを用いることにより、コイル3A、3Bの近傍に冷却媒体流路5を配置することが可能となる。そして、コイル3A、3Bの近傍に配置されている冷却媒体流路5に冷却媒体を流すことで、コイル3A、3Bと冷却媒体との間の熱抵抗を小さくすることができ、効率の良い熱伝達が実現できる。
【0023】
例えば、冷却媒体流路5が絶縁性でない場合、コイル3A、3Bと冷却媒体流路5との間に絶縁性の部材を設けることにより、コイル3A、3Bと冷却媒体流路5とを絶縁する必要がある。冷却媒体流路5に積層チューブを用いることにより、コイル3A、3Bと接するように冷却媒体流路5を配置することが可能となる。本実施例のように、冷却媒体流路5として絶縁性の積層チューブを用いた場合、コイル3A、3Bと冷却媒体流路5との間に絶縁性の部材を設ける必要性がなくなり、リアクトル冷却装置10を小型化することが可能となる。
【0024】
ここで、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5の断面積と、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれていない冷却媒体流路5のうち同方向に設けられている冷却媒体流路5の断面積との比率は、コイル3A、3Bの温度上昇率や、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている箇所の温度上昇率などを考慮して決定すればよい。すなわち、コイル3A、3Bの温度上昇率や、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている箇所の温度上昇率を実験又はシミュレーションにより求めておき、上記比率を決定すればよい。
【実施例2】
【0025】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第二の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。本実施例に係るリアクトル冷却装置10と、上述の第一の実施例に係るリアクトル冷却装置10との相違点は、本実施例に係るリアクトル冷却装置10が複数のリアクトル1を備えている点である。他の構成および作用は、上述の第一の実施例と同様である。そこで、同一の構成要素については、上述の第一の実施例と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0026】
図3は、本実施例に係るリアクトル冷却装置10の断面図である。図3に示すように、コイル3A、3B、3C及び3Dが同方向(図3では横方向)に配列されるように、リアクトル1A及びリアクトル1Bが配置されている。
【0027】
図3において、点線cで示す冷却媒体流路5の幅は、点線dで示す冷却媒体流路5の幅
よりも広くなっている。そのため、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5、コイル3Bとコイル3Cとで挟まれている冷却媒体流路5、コイル3Cとコイル3Dとで挟まれている冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量は、コイル3A〜3Dによって挟まれていない冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量より大きい。このように、各コイル3間で挟まれている冷却媒体流路5を流れる冷却媒体の流量を大きくすることで、リアクトル1を効率的に冷却することが可能となる。
【0028】
図3では、冷却媒体流路5に接続される冷却媒体供給流路6と冷却媒体流路5に接続される冷却媒体排出流路7とは、対向して配置されている。図3に示す冷却媒体供給流路6及び冷却媒体排出流路7の配置位置は例示であり、冷却媒体供給流路6及び冷却媒体排出流路7を任意の位置に配置してもよい。
【0029】
例えば、コイル3Aとコイル3Bとで挟まれている冷却媒体流路5の直下位置に冷却媒体供給流路6を配置し、コイルCとコイルDとで挟まれている冷却媒体流路5の直下位置に冷却媒体排出流路7を配置してもよい。また、例えば、リアクトル1Aとリアクトル1Bとの間の冷却媒体流路5を中心軸として冷却媒体供給流路6と冷却媒体排出流路7とが対角となるように、冷却媒体供給流路6及び冷却媒体排出流路7を配置してもよい。
【0030】
さらに、図示しないが、本実施例のリアクトル冷却装置10は、3つ以上のリアクトル1を備えることも可能である。例えば、3相回路の昇圧コンバータシステムの場合は、リアクトル1を3つ備えているため、本実施例のリアクトル冷却装置10を使用することにより、複数のリアクトル1を近接して配置することが可能となる。
【実施例3】
【0031】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。図4は、本実施例に係るリアクトル冷却装置10の断面図である。本実施例に係るリアクトル冷却装置10は、コア2とコイル3A、3Bとを有するリアクトル1を覆うようにリアクトルケース11が形成されている。コア2、コイル3A、3B及びリアクトル1は、上述の第一の実施例に係るリアクトル冷却装置10と同様である。リアクトルケース11の上部は開口されており、開口された部分にはポッティング材が充填される。
【0032】
リアクトルケース11とコイル3A、3Bとの間には絶縁体であるボビン12が設けられており、ボビン12によりリアクトルケース11とコイル3A、3Bとの間が絶縁されている。コア2とコイル3A、3Bとの間には絶縁体であるボビン4が設けられており、ボビン4によりコア2とコイル3A、3Bとの間が絶縁されている。コイル3Aとコイル3Bとの間には、熱伝導性の冷却フィン13が設けられている。図4では図示しないが、コイル3Aと冷却フィン13との間には絶縁体であるボビン12が設けられ、ボビン12によりコイル3Aと冷却フィン13との間が絶縁される。また、図4では図示しないが、コイル3Bと冷却フィン13との間にも、ボビン12が設けられ、ボビン12によりコイル3Bと冷却フィン13との間が絶縁される。
【0033】
冷却フィン13はヒートシンク14と接しており、ヒートシンク14はリアクトル1の下に配置されている。ヒートシンク14の内部には、冷却媒体が貫流する内部流路15が設けられている。コイル3A、3Bの熱は、冷却フィン13を介してヒートシンク14に伝わり、ヒートシンク14の内部流路15を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0034】
図4では、冷却フィン13は、ヒートシンク14と接するようにヒートシンク14の上部に設けられているが、冷却フィン13の一部をヒートシンク14に埋設させてもよい。すなわち、ヒートシンク14の上部に窪みを設け、ヒートシンク14の上部に設けられた
窪みに冷却フィン13の一部を埋設させてもよい。冷却フィン13の一部をヒートシンク14に埋設させることにより、冷却フィン13からヒートシンク14への熱伝達を促進させることができる。
【0035】
ヒートシンク14に設けられている内部流路15の出入口には外部流路が接続されており、冷却媒体は外部流路からヒートシンク14の内部流路15に流入する。ヒートシンク14の内部流路15に流入した冷却媒体が外部流路に流入することにより、冷却媒体はヒートシンク14の内部流路15を貫流する。
【0036】
開口されたリアクトルケース11の上部からポッティング材を充填する際、リアクトルケース11内部におけるコイル3A、3B及び冷却フィン13等が存在していない空間をポッティング材が埋めることになる。ポッティング材は絶縁性であるため、ポッティング材をボビン12の代用部材とすることによりリアクトルケース11にボビン12を設けない構造としてもよい。
【0037】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例を可能な限り組み合わせて、本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例に適用してもよい。
【0038】
<変形例1>
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例を以下のように変形してもよい。本変形例では、図5に示すように、冷却フィン13に替えてヒートパイプ16をコイル3Aとコイル3Bとの間に設けるようにする。
【0039】
ヒートパイプ16は、菅状成形体又は菅状空間を有する成形体である。図5に示すように、コイル3A、3Bの配列方向が横方向である場合、ヒートパイプ16の長手方向(伸長方向)が縦方向となるように、複数のヒートパイプ16がコイル3Aとコイル3Bとの間に設けられる。すなわち、複数のヒートパイプ16の長手方向を同一方向に向けて並列させた場合のヒートパイプ16の配列方向と、コイル3A、3Bの配列方向とが交わるように、複数のヒートパイプ16がコイル3Aとコイル3Bとの間に設けられる。
【0040】
ヒートパイプ16の内部には冷却媒体が密閉された状態で封入されている。図5では図示しないが、コイル3Aとヒートパイプ16との間及びコイル3Bとヒートパイプ16との間には、絶縁体であるボビン12がそれぞれ設けられる。コイル3A、3Bの熱は、ヒートパイプ16及びヒートパイプ16内部の冷却媒体を介してヒートシンク14に伝わり、ヒートシンク14の内部流路15を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0041】
ヒートパイプ16は、冷却フィン13と比較して熱輸送量(熱伝達量)が大きい。そのため、ヒートパイプ16は、冷却フィン13と同等の熱輸送量を確保しつつ、冷却フィン13よりも薄くすることが可能となる。したがって、コイル3Aとコイル3Bとの間の距離を短くすることができ、リアクトル1、リアクトルケース11及びリアクトル冷却装置10の小型化を実現できる。
【0042】
図5では、複数のヒートパイプ16がコイル3Aとコイル3Bとの間に設けられているが、一つのヒートパイプ16をコイル3Aとコイル3Bとの間に設けるようにしてもよい。一つのヒートパイプ16をコイル3Aとコイル3Bとの間に設ける場合、内部に空間を有する板状又は直方体状のヒートパイプ16を用いればよい。
【0043】
また、ヒートパイプ16の一部をヒートシンク14に埋設させてもよい。すなわち、ヒートシンク14の上面に窪みを設け、ヒートシンク14の上面に設けられた窪みにヒート
パイプ16の一部を埋設させてもよい。ヒートパイプ16の一部をヒートシンク14に埋設させることにより、ヒートパイプ16からヒートシンク14への熱伝達を促進させることができる。
【0044】
<変形例2>
また、本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例を以下のように変形してもよい。本変形例では、図6に示すように、冷却フィン13に替えて冷却媒体が流れる中央冷却媒体流路17をコイル3Aとコイル3Bとの間に設けるようにする。この場合、コイル3A、3Bの熱は、中央冷却媒体流路17を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0045】
本変形例では、中央冷却媒体流路17とコイル3A、3Bとの間には、絶縁体であるボビン12(図示せず)をそれぞれ設けるが、ボビン12に替えてポッティング材によって中央冷却媒体流路17とコイル3A、3Bとの間を絶縁するようにしてもよい。
【0046】
また、中央冷却媒体流路17の出入口には外部流路が接続されており、冷却媒体は外部流路から中央冷却媒体流路17に流入する。中央冷却媒体流路17に流入した冷却媒体が外部流路に流入することにより、冷却媒体は中央冷却媒体流路17を貫流する。
【0047】
<変形例3>
また、本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例を以下のように変形してもよい。本変形例では、コイル3A、3Bの上部に金属製プレートを設けるようにする。金属製プレートは、板状の金属部材である。コイル3A、3Bの上部に金属製プレートを設ける場合、金属製プレートの平面がコイル3A、コイル3Bの上面と平行となるようにする。金属製プレートは、コイル3A、3Bの上面の全部を覆うように成形されたものでもよく、コイル3A、3Bの上面の一部を覆うように成形されたものでもよい。
【0048】
コイル3Aと金属製プレートとの間及びコイル3Bと金属製プレートとの間には、絶縁体であるボビン12やポッティング材を設けるようにする。金属製プレートの少なくとも一辺は、リアクトルケース11の内壁面に接続させる。金属プレートの少なくとも一辺をリアクトルケース11の内壁面に接続させることにより、コイル3A、3Bの熱は金属製プレートを介してリアクトルケース11に伝達される。これにより、リアクトル1の放熱性が向上し、リアクトル1を効率良く冷却することが可能となる。
【0049】
また、金属製プレートを冷却フィン13に接続させた状態で、コイル3A、3Bの上部に設けるようにしてもよい。この場合、金属製プレートをリアクトルケース11の内壁面に接続させない状態で、コイル3A、3Bの上部に設けるようにしてもよい。コイル3Aとコイル3Bとの間に設けられている冷却フィン13の一辺を金属製プレートに接続させることにより、コイル3A、3Bの熱は金属製プレートを介して冷却フィン13に伝わる。そして、コイル3A、3Bの熱は、冷却フィン13を介してヒートシンク14に伝わり、ヒートシンク14の内部流路15を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0050】
また、金属製プレートを冷却フィン13に接続させた場合、金属プレートの少なくとも一辺をリアクトルケース11の内壁面に接続させてもよい。金属プレートの少なくとも一辺をリアクトルケース11の内壁面に接続させた場合、コイル3A、3Bの熱は金属製プレートを介してリアクトルケース11にも伝達されることになる。
【0051】
<変形例4>
また、本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第三の実施例を以下のように変形してもよい。本変形例では、コイル3A、3Bの上部にヒートパイプ16を設けるようにする。ヒートパイプ16は、菅状成形体又は菅状空間を有する成形体である。ヒートパイプ
16の内部には冷却媒体が密閉された状態で封入されている。コイル3A、3Bの上部に複数のヒートパイプ16を設ける場合、ヒートパイプ16の長手方向がコイル3A、3Bの上面の広がり方向と平行となるようにする。
【0052】
コイル3A、3Bの上部に複数のヒートパイプ16を設ける場合、コイル3A、3Bの上面の全部を覆うように複数のヒートパイプ16を設けるようにしてもよいし、コイル3A、3Bの上面の一部を覆うように複数のヒートパイプ16を設けるようにしてもよい。コイル3Aとヒートパイプ16との間及びコイル3Bとヒートパイプ16との間には、絶縁体であるボビン12やポッティング材を設けるようにする。
【0053】
ヒートパイプ16の少なくとも一端は、リアクトルケース11の内壁面に接続させる。ヒートパイプ16の少なくとも一端をリアクトルケース11の内壁面に接続させることにより、コイル3A、3Bの熱はヒートパイプ16及びヒートパイプ16内部の冷却媒体を介してリアクトルケース11に伝達される。これにより、リアクトル1の放熱性が向上し、リアクトル1を効率良く冷却することが可能となる。
【0054】
また、一つのヒートパイプ16をコイル3A、3Bの上部に設けるようにしてもよい。一つのヒートパイプ16をコイル3A、3Bの上部に設ける場合、内部に空間を有する板状又は直方体状のヒートパイプ16を用いればよい。
【実施例4】
【0055】
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第四の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。本実施例に係るリアクトル冷却装置10と、上述の第三の実施例に係るリアクトル冷却装置10との相違点は、コイルA及びコイルBの側面に冷却媒体が流れる側面冷却媒体流路18が設けられている点である。他の構成および作用は、上述の第三の実施例と同様である。そこで、同一の構成要素については、上述の第三の実施例と同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図7に示すように、本実施例に係るリアクトル冷却装置10には、コイル3A、3Bの側面に冷却フィン13と平行するように側面冷却媒体流路18が設けられている。側面冷却媒体流路18には冷却媒体が流れており、コイル3A、3Bの熱は側面冷却媒体流路18を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0057】
側面冷却媒体流路18の出入口には外部流路が接続されており、冷却媒体は外部流路から側面冷却媒体流路18に流入する。側面冷却媒体流路18に流入した冷却媒体が外部流路に流入することにより、冷却媒体は側面冷却媒体流路18を貫流する。
【0058】
ヒートシンク14の内部流路15に接続する外部流路及び側面冷却媒体流路18に接続する外部流路は、単一の外部流路から分岐させてもよい。すなわち、冷却媒体を外部流路からヒートシンク14の内部流路15及び側面冷却媒体流路18に並列に流入させるようにしてもよい。
【0059】
また、ヒートシンク14の内部流路15の出口に接続する外部流路を側面冷却媒体流路18の入口に接続させてもよいし、側面冷却媒体流路18の出口に接続する外部流路をヒートシンク14の内部流路15の入口に接続させてもよい。すなわち、冷却媒体をヒートシンク14の内部流路15及び側面冷却媒体流路18に直列に流入させるようにしてもよい。
【0060】
<変形例>
本実施形態に係るリアクトル冷却装置10の第四の実施例を以下のように変形してもよ
い。本変形例では、図8に示すように、冷却フィン13に替えて冷却媒体が流れる中央冷却媒体流路17をコイル3Aとコイル3Bとの間に設けるようにする。コイル3A、3Bの熱は、中央冷却媒体流路17を流れる冷却媒体と熱交換される。
【0061】
本変形例では、中央冷却媒体流路17とコイル3A、3Bとの間には、絶縁体であるボビン12(図示せず)をそれぞれ設けるが、ボビン12に替えてポッティング材によって中央冷却媒体流路17とコイル3A、3Bとの間を絶縁するようにしてもよい。
【0062】
中央冷却媒体流路17の出入口には外部流路が接続されており、冷却媒体は外部流路から中央冷却媒体流路17に流入する。中央冷却媒体流路17に流入した冷却媒体が外部流路に流入することにより、冷却媒体は中央冷却媒体流路17を貫流する。
【0063】
ヒートシンク14の内部流路15に接続する外部流路、側面冷却媒体流路18に接続する外部流路及び中央冷却媒体流路17は、単一の外部流路から分岐させてもよい。すなわち、冷却媒体を外部流路からヒートシンク14の内部流路15、側面冷却媒体流路18、中央冷却媒体流路17に並列に流入させるようにしてもよい。
【0064】
また、側面冷却媒体流路18の出口に接続する外部流路を中央冷却媒体流路17の入口に接続させ、中央冷却媒体流路17の出口に接続する外部流路をヒートシンク14の内部流路15の入口に接続させてもよい。すなわち、冷却媒体を側面冷却媒体流路18、中央冷却媒体流路17及びヒートシンク14の内部流路15に直列に流入させるようにしてもよい。
【0065】
なお、上述の第三の実施例に係るリアクトル冷却装置10における変形例1から変形例4を第四の実施例に係るリアクトル冷却装置10に適用してもよい。さらに、上述の第三の実施例に係るリアクトル冷却装置10における変形例1から変形例4を可能な限り組み合わせて第四の実施例に係るリアクトル冷却装置10に適用してもよい。
【0066】
上述の第一の実施例から第四の実施に係るリアクトル冷却装置10が備えるリアクトル1は、U字型のコア2及びコイル3A、3Bで構成されている例を示したが、本実施形態はこれに限定されず、他の形状のコア2でリアクトル1を構成してもよい。例えば、I字型のコア2及びコイル3でリアクトル1を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】第一の実施例に係るリアクトル冷却装置が備えるリアクトルの上面図である。
【図2】第一の実施例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図3】第二の実施例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図4】第三の実施例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図5】第三の実施例の変形例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図6】第三の実施例の変形例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図7】第四の実施例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【図8】第四の実施例の変形例に係るリアクトル冷却装置の断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1、1A、1B・・・・リアクトル
2・・・・コア
3、3A、3B、3C、3D・・・・コイル
4・・・・ボビン
5・・・・冷却媒体流路
6・・・・冷却媒体供給流路
7・・・・冷却媒体排出流路
10・・・・リアクトル冷却装置
11・・・・リアクトルケース
12・・・・ボビン
13・・・・冷却フィン
14・・・・ヒートシンク
15・・・・内部流路
16・・・・ヒートパイプ
17・・・・中央冷却媒体流路
18・・・・側面冷却媒体流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアおよびコイルを有するリアクトルと、
隣接する少なくとも2つの前記コイルの周囲に設けられ、前記リアクトルを冷却する冷却媒体が流れる冷却媒体流路とを備え、
隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路の断面積は、隣接する2つの前記コイルで挟まれていない前記冷却媒体流路の断面積よりも大きいリアクトル冷却装置。
【請求項2】
前記冷却媒体流路に接続され、前記冷却媒体流路に前記冷却媒体を供給する冷却媒体供給流路を更に備え、
隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、前記冷却媒体供給流路から前記冷却媒体流路への前記冷却媒体が流入する方向とは略同一方向である請求項1に記載のリアクトル冷却装置。
【請求項3】
前記冷却媒体流路に接続され、前記冷却媒体流路から前記冷却媒体が排出される冷却媒体排出流路を更に備え、
隣接する2つの前記コイルで挟まれている前記冷却媒体流路内における冷却媒体の流れる方向と、前記冷却媒体流路から前記冷却媒体排出流路への前記冷却媒体が排出される方向とは略同一方向である請求項1または2に記載のリアクトル冷却装置。
【請求項4】
前記冷却媒体流路は、絶縁性の積層チューブであり、前記コイルと接するように配置されている請求項1から3のいずれか1項に記載のリアクトル冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−218417(P2009−218417A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61271(P2008−61271)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】