リアクトル
【課題】 大型化することなく損失を低減した、ヨークにギャップを有するリアクトルを得る。
【解決手段】 夫々ギャップを有する第1磁脚2aおよび第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、夫々第1磁脚2a又は第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層巻線の第1コイル4および第2コイル5とを備えたリアクトル1であって、第1コイル4の第1層巻線と第2コイル5の第2層巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第2層巻線と第2コイル5の第1層巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第1層および第2層巻線のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイル4の第1層および第2層巻線を俵積みし、且つ第2コイル5の第1層および第2層巻線を俵積みしたものである。
【解決手段】 夫々ギャップを有する第1磁脚2aおよび第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、夫々第1磁脚2a又は第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層巻線の第1コイル4および第2コイル5とを備えたリアクトル1であって、第1コイル4の第1層巻線と第2コイル5の第2層巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第2層巻線と第2コイル5の第1層巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第1層および第2層巻線のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイル4の第1層および第2層巻線を俵積みし、且つ第2コイル5の第1層および第2層巻線を俵積みしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に接続または組み込まれる、ヨークにギャップを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置に接続または組み込まれるリアクトルは、電力変換装置を系統電源や太陽電池などの電圧源に接続するために用いられる。電圧型の電力変換装置を他の電圧源と直接接続すると、その電位差によって大きな電流が流れ、電力変換装置が破損したり、電圧源に異常が発生したりする。そこで、電圧型の電力変換装置は、リアクトルを介して電圧源と接続される。従って、リアクトルの巻線には、電力変換装置が発生する高周波電流が流れる。
【0003】
一般に、電力変換装置に接続または組み込まれるリアクトルのヨークを構成する磁性体には、磁気飽和を防止するためにギャップを設けることで、このギャップ近傍のヨークからの磁束漏れが増加する。
【0004】
従来のエアギャップ付きリアクトル素子では、この磁束漏れの影響で巻線での渦電流損失が増加するのを防止するために、エアギャップの近傍に巻線を設けない巻線レスエリアを設けている。この巻線レスエリアは、ヨークの各磁脚の巻線を、同じ巻数で並列に接続された外側の巻線1と内側の巻線2とに分けて、内側の巻線2を巻線1より細い線径とすることにより、確保されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008―210998号公報(第6―7頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエアギャップ付きリアクトル素子では、巻線レスエリアを設けるために内側の巻線2を細い線径としてする必要がある。巻線に高周波電流が流れると表皮効果によって有効な巻線の導体断面積が減少するので、このように細い線径の巻線ではジュール損失が大幅に増大するという問題があった。
【0007】
また、前記細い線径の巻線のジュール損失が許容値になるように、巻線の導体断面積を大きく設計すると、リアクトル素子が大幅に大型化するという問題があった。
【0008】
また、前記表皮効果の影響を低減するにはリッツ線を用いることが有効であるが、リッツ線は同じ導体断面積の単線より線径が大きいので、大型化を伴わないと適用ができないという問題があった。
【0009】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、大型化することなく損失を低減した、ヨークにギャップを有するリアクトルを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るリアクトルは、第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、第1コイルの第1層の巻線と第2コイルの第2層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第2層の巻線と第2コイルの第1層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第1層および第2層の巻線のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みし、且つ第2コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、このように構成されるので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の大きな電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1の図1の断面Sにおける断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図4】従来のリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図5】従来の巻線の整列巻きを説明するための説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る図6の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面および各層巻線の接続の状態を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図11】この発明の実施の形態5に係る図10の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図14】この発明の実施の形態6に係る図13の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図15】この発明の実施の形態7に係るリアクトルの巻線対の接続の状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1を示すリアクトル1の斜視図を示す。積層された鋼板にて形成されるループ状のヨーク2には、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bが設けられている。第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bは、ヨーク2が飽和することを防止するために設けられるものである。第1コイル4は第1磁脚2aを取り囲むように配置され、第2コイル5は第2磁脚2bを取り囲むように配置されている。第1コイル4と第2コイル5との間には、例えば絶縁紙、絶縁フィルム、成型された樹脂板、または注入されたエポキシ樹脂などの所定の絶縁機能を有したコイル間絶縁体6が設けられている。
【0014】
図2は、図1中の断面Sを、同図中の白抜き矢印の側から見た断面図である。図2の上側を「A側」、下側を「B側」とする。第1コイル4は2層の巻線を有するコイルで、ヨーク2に近い内側に第1層の巻線4L1が、その外側に第2層の巻線4L2が、それぞれ配置されている。同様に、第2コイル5は2層の巻線を有するコイルで、ヨーク2に近い内側に第1層の巻線5L1が、その外側に第2層の巻線5L2が、それぞれ配置されている。ヨーク2と第1層の巻線4L1との間、およびヨーク2と第1層の巻線5L1との間には、それぞれ層間絶縁体7が設けられている。この層間絶縁体7は、例えば絶縁紙、絶縁フィルム、成型された樹脂板、または注入されたエポキシ樹脂などの所定の絶縁機能を有するものであればよい。また、第2層の巻線4L2と第2層の巻線5L2との間には、前述のコイル間絶縁体6が設けられている。
【0015】
第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との間には層間絶縁体7を設けておらず、第1層の巻線4L1の線間の凹部に合わせて第2層の巻線4L2を巻いていく、所謂、俵積みがなされている。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との間にも層間絶縁体7を設けておらず、第1層の巻線5L1の線間の凹部に合わせて第2層の巻線5L2を巻いていく、所謂、俵積みがなされている。
【0016】
図3は、この発明の実施の形態1におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続状態を説明するための回路図である。リアクトル1は、第1コイル4のA側および第2コイル5のA側で高周波を発生させる電源8に接続されている。第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第2層の巻線5L2とは、B側で電気的に直列にコイル間接続されて第1の回路10を構成している。同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第1層の巻線5L1とは、B側で電気的に直列にコイル間接続されて第2の回路20を構成している。また、第1コイル4の第1層の巻線4L1および第2層の巻線4L2の前記コイル間接続がなされていない側(A側)の端部は、層間接続されて外部の電気回路(図3では電源8)との接続部となっている。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1および第2層の巻線5L2の前記コイル間接続がなされていない側(A側)の端部は、層間接続されて外部の電気回路(図3では電源8)との別の接続部となっている。つまり、第1の回路10と第2の回路が電気的に並列に電源8に接続されている。
【0017】
ここで、この発明のリアクトルの作用および効果を説明する前に、対比のため、別の従来のギャップ付きリアクトルについて、図4および5にて説明する。
【0018】
図4は、従来のリアクトルの第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態の一例を示す回路図であり、図5は、従来の巻線の整列巻きを説明するための説明図である。第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2とはB側で電気的に直列に層間接続されて第1の回路10を構成し、同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2とはB側で電気的に直列に層間接続されて第2の回路20を構成している。また、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第1層の巻線5L1とはA側でコイル間接続されて高周波を発生する電源8の一方の端子に、同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第2層の巻線5L2とはA側でコイル間接続されて電源8の他方の端子に接続されている。つまり、第1の回路10と第2の回路が電気的に並列に接続されおり、第1コイル4および第2コイル5は、それぞれB側で内側の第1層から外側の第2層へと折り返す構造となっている。そのため、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2のA側の端部間、および第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2のA側の端部間には、それぞれ電源8の全電圧が印可されるので高電圧となる。
【0019】
このように従来のリアクトルの一例では、第1コイル4および第2コイル5のそれぞれ第1層と第2層との巻線間に高電圧が印加されるので、第1層と第2層との間に層間絶縁体7、例えば層間紙などを設ける必要がある。層間絶縁体7を設けると、第1層の巻線の線間の凹部に合わせて第2層の巻線を巻いていく、所謂、俵積みをおこなうことはできず、図5に示すように、第1層の巻線の凸部に合わせて第2層の巻線を巻いていく、所謂、整列巻きとなっていた。このように整列巻きにすると、俵積みに比べて線材の充填率が低下するので、大型化することなく、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減するために、より線径の大きな巻線、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができなかった。
【0020】
尚、リッツ線とは、細いエナメル線などを複数本撚り合せることによって導体を細分化して導体表面積を大きくした線のことであり、高周波電流の表皮効果によって導体の実質の通電断面が減少してジュール損失が増えるのを防止する機能を有するものである。導体の細分化により、単に単線の導体径を大きくすることによる表面積の増加(電線の周長の増加)より大きな表面積の増加を得ることができるので、同じ径の単線に比べて高周波領域でのジュール損を大幅に低減できる。また、細分化された細線が捻回されているので、リッツ線外部からの磁束の影響による渦電流損失の増加も低減できる。リッツ線は、このように導体が細分化されているので、同じ導体断面の単線と比較してすれば、線径が大きくなる。
【0021】
この発明の実施の形態1では、上述の従来のリアクトルの一例と異なり、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との対向する部分の間には電位差が発生しないので、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との間に層間絶縁体7を必要としない。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との対向する部分の間にも電位差が発生しないので、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との間に層間絶縁体7を必要としない。このように層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述の俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができジュール損を低減できる。絶縁された細線を束ねた線などを用いた場合には、前記細線の絶縁部があるため太くなるが、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線での線材の渦電流損を低減できる。
【0022】
また、径が小さな絶縁された細線を束ねた線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因する渦電流損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。更に、細線の束を撚ったリッツ線と呼ばれる線を使う場合には、各素線間の循環電流損も低減できる。
【0023】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0024】
ところで、この発明の実施の形態1では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、コイル間絶縁体6を用いる必要がある。一方、上述の従来のリアクトルでは、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間は同電位となるため、第1コイル4と第2コイル5の間にはコイル間絶縁体6を挿入する必要が無い。しかしながら、この発明の実施の形態1では、前記従来のリアクトルと比較して層間絶縁体7を2個減らすことができるので、必要とするコイル間絶縁体6と層間絶縁体7との総数は、この発明の実施の形態1の方が1個少なくなる。この差は、後述のように、第1コイル4および第2コイル5の巻線の層の数が多くなるほど大きくなっていく。つまり、この発明では、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、より径の大きな電線を巻線として利用できるようになり、損失低減の効果がより顕著になると言える。
【0025】
以上より、この発明に係るリアクトル1では、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、第1磁脚2aを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイル4と、第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイル5とを備えたリアクトル1であって、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイルの第2層の巻線5L2とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第2層の巻線4L2と第2コイルの第1層の巻線5L1とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2を俵積みし、且つ第2コイル5の第1層および第2層の巻線5L1、5L2を俵積みしたので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の小さな線を束ねた電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【0026】
また、この発明に係るリアクトル1では、第1コイル4の最外層より1つ内側の層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線とを直列にコイル間接続し、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との別の接続部とし、第1コイル4の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、且つ第1コイル4と第2コイル5との間にコイル間絶縁体6を設けたので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の大きな電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【0027】
また、例えばリッツ線のように細線を捻回した電線により巻線を構成したので、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0028】
尚、上述の説明では、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との別の接続部としたが、前記接続部と前記別の接続部を入れ替えても良いことは言うまでもない。
【0029】
また、この発明の実施の形態1では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0030】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。また、図7は、図6の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図1〜3に示した実施の形態1とは、リアクトル1が第1コイル4のA側および第2コイル5のB側で電源8に接続されていること、第1コイル4の第1層の巻線4L1のB側と第2コイル5の第2層の巻線5L2のA側とが電気的に直列にコイル間接続されていること、第1コイル4の第2層の巻線4L2のB側と第2コイル5の第1層の巻線5L1のA側とが電気的に直列にコイル間接続されていこと、および第2コイル5の第1層の巻線5L1および第2層の巻線5L2のB側の端部が層間接続されていることが異なっている。
【0031】
このように各巻線を接続すると、第1コイル4の最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイル5の最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向するように配置できる。それ以外の構成は実施の形態1と同じなので説明を省略する。
【0032】
図2および3に示す実施の形態1の各巻線の接続パターンでは、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のB側の端部と第2コイル5の巻線5L2のB側の端部との電位差はほぼ零であるが、同じようにコイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のA側の端部と第2コイル5の巻線5L2のA側の端部との電位差は、リアクトル1の両端の電圧(直列接続された2個の巻線の両端にかかる電圧、つまり電源8の電源電圧)に等しいことが分かる。一方、この実施の形態2の図6および7に示す各巻線の接続パターンでは、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のA側の端部と第2コイル5の巻線5L2のA側の端部との電位差は、アクトル1の両端の電圧の1/2(直列接続された1個の巻線の両端にかかる電圧)であることが分かる。同様に、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のB側の端部と第2コイル5の巻線5L2のB側の端部との電位差もリアクトル1の両端の電圧の1/2(直列接続された1個の巻線の両端にかかる電圧)であることが分かる。
【0033】
コイル間絶縁体6に要求される絶縁耐力は、第1コイル4および第2コイル5の最外層の巻線間の最高の電位差で決定されるので、図6に示す実施の形態2の各巻線の接続パターンを用いることで、図3に示す実施の形態1の各巻線の接続パターンに比べて、要求される絶縁耐力を半分にすることができる。これによりコイル間絶縁体6をより薄くでき、その分をヨーク2の小型化に用いれば、磁路長が短くなり、ヨーク2での渦電流損およびヒステリシス損、つまり鉄損を低減できる。また、その分を第1コイル4もしくは第2コイル5またはその両方の最内層の巻線の導体断面積の増大に用いれば、巻線でのジュール損失の低減が可能となる。
【0034】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面ならびに第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の接続の状態を示す説明図である。この実施の形態3では、第1コイル4および第2コイル5において巻線を俵積みする方法について説明する。
【0035】
図8において、コイルは第1コイル4の2層の巻線4L1、4L2と、第2コイルの2層の巻線5L1、5L2から成る。各コイルで俵積みする場合、第1コイル4において第2層の巻線4L2を第1層の巻線4L1より1ターン少なく巻回する。同様に、第2コイル5において第2層の巻線5L2を第1層の巻線5L1より1ターン少なく巻回する。更に、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第2層の巻線5L2とを接続部9aを介して接続して第1の回路10(図中、白塗りの巻線が相当)を形成する。同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第1層の巻線5L1とを接続部9bを介して接続して第2の回路20(図中、灰色塗りの巻線が相当)を形成する。これらの第1の回路10と第2の回路20とを電源8に並列に接続する。図8では、第1層の巻線4L1および5L1がそれぞれ6ターン、第2層の巻線4L2および5L2がそれぞれ5ターンであるので、前記第1の回路10および前記第2の回路20はともに合計11ターンになる。
【0036】
また、第1コイル4および第2コイル5は、それぞれループ状のヨーク2の磁脚3aおよび磁脚3bを囲むように配置されているので、接続部9aおよび9bによる各巻線の接続は上記ループの外で行うように構成し、組み立てを容易としている。
【0037】
通常、整列巻きの場合には第1層の巻線と第2層の巻線が同じターン数になるが、俵積みの場合には、巻回の層が進むに連れて、同じコイルの隣り合う層の巻線のターン数が1ターンずつ増減する積み方とすることが好ましい。
【0038】
また、図8では、第1コイル4と第2コイル5の総ターン数を同じとしたが、第1の回路10と第2の回路20とで総ターン数が同じとなれば、第1コイル4と第2コイル5の総ターン数が異なっても良い。このように第1の回路10と第2の回路20とで総ターン数を同じとすることで、第1の回路10および第2の回路20のインダクタンスがより揃い、第1の回路10および第2の回路20の電流が同じになるので、循環電流損が零になり損失を低減できる。
【0039】
尚、図8では第1層の巻線と第2層の巻線でターン数を1ターン変えたが、1ターンでなくとも良く、また第1コイル4と第2コイル5とをそれぞれ2層の巻線で構成したが、さらに層数が大きいN層のコイルでも良い。要は、第1の回路10と第2の回路20のターンが同じであれば同様な効果が得られる。
【0040】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面図である。実施の形態3では、第1コイル4および第2コイル5において巻線を俵積みするときに、第1コイル4の巻線と第2コイル5の巻線との間で接続部9a、9bを用いたが、この実施の形態4では、接続部9a、9bを用いること無く、巻線を連続巻きにて俵積みする方法について説明する。
【0041】
図8で示した実施の形態3の第1コイル4および第2コイル5の各層のターン数および各層の巻線間の接続パターンを維持したままでは、全ての巻線を連続巻きすることはできない。そこで、仮に、前記接続パターンの維持を考慮せずに、前記各層のターン数のみを維持して連続巻きをする場合について検討する。
【0042】
まず、第1コイル4の第1層の巻線4L1を巻回し、次ぎに第2コイル5の第1層の巻線5L1を連続巻回して第1の回路10を構成する。この第1の回路10の巻回終了部分を電源8との接続部とする。続いて第1コイル4の第2層の巻線4L2を巻回し、次ぎに第2コイル5の第2層の巻線5L2を巻回して第2の回路20を構成する。この第2の回路20の巻回終了部分と第1の回路10の巻回開始部分を接続して電源8との接続部とする。このとき、第1の回路10のターン数は巻線4L1と巻線5L1との合計の6+6=12ターンとなり、第2の回路20のターン数は巻線4L2と巻線5L2との合計の5+5=10ターンとなる。従って、第1の回路10のターン数が第2の回路20に比べて2ターン多くなる。ここで第1の回路10および第2の回路20を電源8に並列に接続すると、前記ターン数の差に起因して第2の回路20に多く電流が流れ、循環電流損が発生する。
【0043】
この循環電流損が発生するという問題を避けるため、実施の形態4では、図9に示すように巻回する。まず第1コイル4の第1層の巻線4L1を図9と同様に巻回し、次ぎに第2コイル5の第1層の巻線5L1を図9に示した例より1ターン少なく巻回して第1の回路10(図中、灰色塗りの巻線が相当)を構成する。この第1の回路10の巻回終了部分を電源8との接続部とする。続いて第1コイル4の第2層の巻線4L2を図8と同様に巻回し、次ぎに第2コイル5の2層目の巻線5L2を図8に示した例より1ターン多く巻回して第2の回路20(図中、白塗りの巻線が相当)を構成する。この第2の回路20の巻回終了部分と第1の回路10の巻回開始部分を接続して電源8との接続部とする。この第2コイル5の2層目の巻線5L2の1ターン多く巻回する分のためのスペースは、上述の第2コイル5の第1層の巻線5L1で1ターン少なく巻回することで出来た空きスペースを利用する。従って、図9に示すように、第2コイル5の第2層の巻線5L2は、第1層の巻線5L1と並んで配置される部分と、前記第1層の外周に位置する部分とを有している。
【0044】
このように連続巻きを行うと、第1の回路10のターン数は6+5=11ターンとなり、第2の回路20のターン数は5+5+1=11ターンとなるので、第1の回路10と第2の回路20のターン数を等しくでき、回路間のターン数差に起因した循環電流損の発生を防止できる。また、連続巻きをおこなうことで、図8に示した接続部9aおよび9bを省略できるので部品点数が削減でき、且つこれらを組み立てる工程を省略できる。
【0045】
尚、図9では、第2コイル5の各層の巻線のターン数を調整することで、第1の回路10のターン数と第2の回路20のターン数とを同じとしたが、第1コイル4の各層の巻線のターン数で調整しても良いことは言うまでもない。
【0046】
実施の形態5.
図9に示す実施の形態4では、図8に示した実施の形態3の巻線の接続パターンと異なる巻線の接続パターンを用いて、全ての巻線を連続巻きにて巻回する方法について説明した。この実施の形態5では、図8に示した実施の形態3の巻線の接続パターンを維持したままで、連続巻きを導入する方法について説明する。
【0047】
巻線の巻回のときに、第1の回路10の巻線用の一方の電線と、第2の回路の巻線用の他方の電線とを最初に分離すれば、図8で示した実施の形態3の巻線の接続パターンで、部分的な連続巻きが可能である。まず前記一方の電線を用いて、第1コイル4の第1層の巻線4L1を巻回する。次ぎに前記他方の電線を用いて、第2コイル5の第1層の巻線5L1を巻回する。続いて、前記一方の電線で第2コイル5の第2層の巻線5L2を巻回して第1の回路10を構成する。その後、前記他方の電線で第1コイル4の第2層の巻線4L2を巻回して第2の回路20を構成する。次に第1の回路10の巻回開始部分と第2の回路20の巻回開終了部分とを接続して電源8との接続部とし、第1の回路10の巻回開終了部分と第2の回路20の巻回開始部分とを接続して電源8との接続部とする。
【0048】
このような工程で巻回作業を行えば、部分的ではあるが連続巻きが可能となり、図9に示す接続部9aおよび9bを省略できるので部品点数が削減でき、且つこれらを組み立てる工程を省略できる。
【0049】
実施の形態6.
以上の実施の形態では、第1コイル4および第2コイル5が2層の例を示したが、この実施の形態6では、さらに大きなインダクタンスを得るためにターン数を増やす場合について説明する。
【0050】
図10は、この発明の実施の形態6におけるリアクトルの第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。図12は、図11の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図13は、この発明の実施の形態6におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面図である。図10〜12に示す例では、第1コイル4の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線4L1、第2層の巻線4L2、第3層の巻線4L3、第4層の巻線4L4、の4層の巻線構造となっている。また第2コイル5の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線5L1、第2層の巻線5L2、第3層の巻線5L3、第4層の巻線5L4、の4層の巻線構造となっている。
【0051】
図10に示すように、第1コイルの第1層の巻線4L1、第2コイルの第2層の巻線5L2、第1コイルの第3層の巻線4L3および第2コイルの第4層の巻線5L4を電気的に直列に接続して第1の回路10を構成し、第1コイルの第2層の巻線4L2、第2コイルの第1層の巻線5L1、第1コイルの第4層の巻線4L4、および第2コイルの第3層の巻線5L3を電気的に直列に接続して第2の回路20を構成する。
【0052】
続いて、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図11では電源8)との接続部とし、第2コイル5の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図11では電源8)との接続部とする。
【0053】
第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数で、図10〜12の例ではN=2である)としたとき、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数は等しくなるように巻回されている。また、第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路の巻線20の合計ターン数とは等しくし、ターン数差に起因する循環電流損が発生しない構成としている。このような電気的接続は、例えば図11に示す具体的な結線で実現することができる。
【0054】
このように構成すると、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線が同電位となる。例えば、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2、第1コイル4の第3層の巻線4L3と第4層の巻線4L4、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2、第2コイル5の第3層の巻線5L3と第4層の巻線5L4がそれぞれ同電位となる。そのため、図13に示すように、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間に層間絶縁体7を設ける必要がなくなり、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線を俵積みすることが可能となる。
【0055】
尚、図10〜12に示した例では、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数を完全に等しくしたが、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線との間(nは、1〜Nまでの正の整数)の電位差が、巻線の絶縁被覆で耐えられる電位差に相当する程度に抑えられる場合には前記ターン数を完全に一致させる必要は無い。
【0056】
このように同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間の層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述のように俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0057】
また、径が小さな絶縁された細線を束ね、単線と同じ導体断面積とした線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0058】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0059】
ところで、この発明では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、図5に示した従来のリアクトルでは不要なコイル間絶縁体6を用いる必要がある。しかしながら、この発明の実施の形態6の接続パターンでは、第1コイル4および第2コイル5の層の数が多くなるほど、省略できる層間絶縁体7の枚数が多くなっていくので、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、上述の効果が顕著になる。
【0060】
以上より、この発明に係るリアクトルは、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、第1磁脚2aを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイル4と、第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイル5とを備えたリアクトルであって、第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線と第2コイル5の第(2×n)層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第(2×n)層の巻線と第2コイル5の第(2×n−1)層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、第2コイル5の第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、n=1の場合は第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線とヨーク2との間に、n≠1の場合は第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線と第(2×n−2)層の巻線との間に層間絶縁体7を設けたので、使用する層間絶縁体7の枚数を低減でき、隣り合う層の巻線を俵積みすることが可能となる。これにより、巻線の充填率が高まり、その分、径の大きな電線を巻線として採用できるので、大型化することなく損失を低減した、ヨーク2にギャップを有するリアクトル1を得ることができる。
【0061】
また、この発明に係るリアクトルは、第1コイル4の任意のN個の層の巻線と第2コイル5の任意のN個の層の巻線とが全て直列に接続された第1の回路10と、前記第1コイル4の任意のN個の層以外の巻線と前記第2コイル5の任意のN個の層以外の巻線とが全て直列に接続された第2の回路20とを有し、第1の回路10と第2の回路20とは並列に接続され、且つ第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路20の巻線の合計ターン数とを同じとしたので、巻線にターン数差に起因する循環電流が流れず、ターン数差に起因する循環電流損を低減できる。
【0062】
尚、この発明の実施の形態6では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0063】
実施の形態7.
実施の形態6では、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第2コイル5の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路との別の接続部としたが、この実施の形態6では、前記別の接続部を、第1コイル4の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続した部分に設けている。
【0064】
図13は、この発明の実施の形態7におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。図14は、図13の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図13および14では、第1コイル4の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線4L1、第2層の巻線4L2、第3層の巻線4L3、第4層の巻線4L4、の4層の巻線構造となっている。また第2コイル5の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線5L1、第2層の巻線5L2、第3層の巻線5L3、第4層の巻線5L4の4層の巻線構造となっている。
【0065】
図13に示すように、第1コイルの第1層の巻線4L1、第2コイルの第2層の巻線5L2、第2コイルの第3層の巻線5L3および第1コイルの第4層の巻線4L4を電気的に直列に接続して第1の回路10を構成し、第1コイルの第2層の巻線4L2、第2コイルの第1層の巻線5L1、第2コイルの第4層の巻線5L4、および第1コイルの第3層の巻線4L3を電気的に直列に接続して第2の回路20を構成する。
【0066】
続いて、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図13では電源8)との接続部とし、第1コイル4の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図13では電源8)との別の接続部とする。
【0067】
第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数で、図13および14の例ではN=2である)としたとき、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数は等しくなるように巻回している。また、第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路の巻線20の合計ターン数とは等しくし、ターン数差に起因する循環電流損が発生しない構成としている。このような電気的接続は、例えば図14に示す具体的な結線で実現することができる。
【0068】
このように構成すると、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線が同電位となる。例えば、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2、第1コイル4の第3層の巻線4L3と第4層の巻線4L4、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2、第2コイル5の第3層の巻線5L3と第4層の巻線5L4がそれぞれ同電位となる。そのため、図14に示すように、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間に層間絶縁体7を設ける必要がなくなり、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線を俵積みすることが可能となる。
【0069】
尚、図13および14では、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数を完全に等しくしたが、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線との間(nは、1〜Nまでの正の整数)の電位差が、巻線の絶縁被覆で耐えられる電位差に相当する程度に抑えられる場合には前記ターン数を完全に一致させる必要は無い。
【0070】
このように同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間の層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述のように俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0071】
また、同じ導体断面積の単線より径が小さな絶縁された細線を束ね、単線と同じ導体断面積とした線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0072】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0073】
ところで、この発明では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、図5に示した従来のリアクトルでは不要なコイル間絶縁体6を用いる必要がある。しかしながら、この発明の実施の形態7の接続パターンでは、第1コイル4および第2コイル5の層の数が多くなるほど、省略できる層間絶縁体7の枚数が多くなっていくので、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、上述の効果が顕著になる。
【0074】
また、この実施の形態7の各巻線の接続パターンを用いると、第1コイル4の最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイル5の最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向するように配置できる。このようにコイル間絶縁体6を挟んで対向する2つの巻線の高電位側の端部を同方向とすることで、前記2つの巻線の高電位側の端部が異なる方向である場合と比較して、前記2つの巻線間の最高の電位差を低減できる。これによりコイル間絶縁体6をより薄くでき、その分をヨーク2の小型化に用いれば、磁路長が短くなり、ヨーク2での渦電流損およびヒステリシス損である鉄損を低減できる。また、その分を第1コイル4もしくは第2コイル5またはその両方の最内層の巻線の断面積の増大に用いれば、巻線でのジュール損失の低減が可能となる。
【0075】
尚、この発明の実施の形態7では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0076】
実施の形態7.
図15は、この発明の実施の形態7におけるリアクトルの第1コイルの巻線対および第2コイルの巻線対の接続の状態を説明するための説明図である。第1コイル4および第2コイル5の各層の巻線の数およびその接続状態以外は、上述の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0077】
図15において、第1コイル4(図示せず)を構成する各層の巻線を、内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とし、第2コイル5(図示せず)を構成する各層の巻線を、内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とする。また、第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を第1コイル4の第n巻線対とし、第2コイル5の第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、第2コイル5の第n巻線対とする。このとき、第1コイル4の第n巻線対のいずれか一方の巻線、および第2コイル5の第n巻線対のいずれか一方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第1の回路10(図示せず)を構成する。第1コイル4の第n巻線対の前記一方と対をなす他方の巻線、および第2コイル5の第n巻線対の前記一方と対をなす他方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第2の回路20(図示せず)を構成する。
【0078】
図15では、電源8との接続部の側に、第1コイル4の第1層の巻線4L1および第2層の4L2にて構成された第1コイル4の第1巻線対を配置し、電源8との別の接続部の側に、第2コイル5の第(2×N−1)層の巻線5L2N−1および第(2×N)層の5L2Nにて構成された第2コイル5の第N巻線対を配置しているが、順番はこれに限るものでは無い。また、各巻線対の前記一方の巻線と他方の巻線は、ほぼ等しいターン数を有している。
【0079】
第1の回路10の合計ターン数と第2の回路20の合計ターン数は同じに構成されており、第1の回路10と第2の回路20とは、前期接続部および別の接続部にて並列に接続される。また、図示していないが、第1コイル4の第n巻線対の前記一方の巻線と前記他方の巻線とは、少なくとも一部の巻線対で俵積みされており、同様に、第2コイル5の第n巻線対の前記一方の巻線と前記他方の巻線とは、少なくとも一部の巻線対で俵積みされている。
【0080】
また、n=1の場合は、第1コイル4の第1巻線対とヨーク2との間および第2コイル5の第1巻線対とヨーク2との間に、n≠1の場合は、第1コイル4の第n巻線対と第(n−1)巻線対との間および第2コイル5の第n巻線対と第(n−1)巻線対との間に、それぞれ層間絶縁体7(図示せず)を設けている。
【0081】
このような構成とすることで、使用する層間絶縁体7を削減できるのみならず、巻線を俵積みできるので巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0082】
また、並列接続される第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路20の巻線の合計ターン数とを同じとしたので、巻線にターン数差に起因する循環電流が流れず、ターン数差に起因する循環電流損を低減できる。
【符号の説明】
【0083】
1 リアクトル、2 ヨーク、2a 第1磁脚、2b 第2磁脚、3a 第1ギャップ、3b 第2ギャップ、4 第1コイル、4L1 第1層の巻線、4L2 第2層の巻線、4L3 第3層の巻線、4L4 第4層の巻線、4L2n−1 第(2×n−1)層の巻線、4L2n 第(2×n)層の巻線、4L2N−1 第(2×N−1)層の巻線、4L2N 第(2×N)層の巻線、4P1 第1巻線対、4Pn 第n巻線対、4PN 第N巻線対、5 第2コイル、5L1 第1層の巻線、5L2 第2層の巻線、5L3 第3層の巻線、5L4 第4層の巻線、5L2n−1 第(2×n−1)層の巻線、5L2n 第(2×n)層の巻線、5L2N−1 第(2×N−1)層の巻線、5L2N 第(2×N)層の巻線、5P1 第1巻線対、5Pn 第n巻線対、5PN 第N巻線対、6 コイル間絶縁体、7 層間絶縁体、8 電源、9a 接続部、9b 接続部、10 第1の回路、20 第2の回路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に接続または組み込まれる、ヨークにギャップを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置に接続または組み込まれるリアクトルは、電力変換装置を系統電源や太陽電池などの電圧源に接続するために用いられる。電圧型の電力変換装置を他の電圧源と直接接続すると、その電位差によって大きな電流が流れ、電力変換装置が破損したり、電圧源に異常が発生したりする。そこで、電圧型の電力変換装置は、リアクトルを介して電圧源と接続される。従って、リアクトルの巻線には、電力変換装置が発生する高周波電流が流れる。
【0003】
一般に、電力変換装置に接続または組み込まれるリアクトルのヨークを構成する磁性体には、磁気飽和を防止するためにギャップを設けることで、このギャップ近傍のヨークからの磁束漏れが増加する。
【0004】
従来のエアギャップ付きリアクトル素子では、この磁束漏れの影響で巻線での渦電流損失が増加するのを防止するために、エアギャップの近傍に巻線を設けない巻線レスエリアを設けている。この巻線レスエリアは、ヨークの各磁脚の巻線を、同じ巻数で並列に接続された外側の巻線1と内側の巻線2とに分けて、内側の巻線2を巻線1より細い線径とすることにより、確保されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008―210998号公報(第6―7頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエアギャップ付きリアクトル素子では、巻線レスエリアを設けるために内側の巻線2を細い線径としてする必要がある。巻線に高周波電流が流れると表皮効果によって有効な巻線の導体断面積が減少するので、このように細い線径の巻線ではジュール損失が大幅に増大するという問題があった。
【0007】
また、前記細い線径の巻線のジュール損失が許容値になるように、巻線の導体断面積を大きく設計すると、リアクトル素子が大幅に大型化するという問題があった。
【0008】
また、前記表皮効果の影響を低減するにはリッツ線を用いることが有効であるが、リッツ線は同じ導体断面積の単線より線径が大きいので、大型化を伴わないと適用ができないという問題があった。
【0009】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、大型化することなく損失を低減した、ヨークにギャップを有するリアクトルを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るリアクトルは、第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、第1コイルの第1層の巻線と第2コイルの第2層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第2層の巻線と第2コイルの第1層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第1層および第2層の巻線のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みし、且つ第2コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みしたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、このように構成されるので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の大きな電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るリアクトルの斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1の図1の断面Sにおける断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図4】従来のリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図5】従来の巻線の整列巻きを説明するための説明図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る図6の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面および各層巻線の接続の状態を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図11】この発明の実施の形態5に係る図10の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係るリアクトルの図1の断面Sに相当する部分の断面図である。
【図13】この発明の実施の形態6に係るリアクトルの各層巻線の接続の状態を説明するための回路図である。
【図14】この発明の実施の形態6に係る図13の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。
【図15】この発明の実施の形態7に係るリアクトルの巻線対の接続の状態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1を示すリアクトル1の斜視図を示す。積層された鋼板にて形成されるループ状のヨーク2には、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bが設けられている。第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bは、ヨーク2が飽和することを防止するために設けられるものである。第1コイル4は第1磁脚2aを取り囲むように配置され、第2コイル5は第2磁脚2bを取り囲むように配置されている。第1コイル4と第2コイル5との間には、例えば絶縁紙、絶縁フィルム、成型された樹脂板、または注入されたエポキシ樹脂などの所定の絶縁機能を有したコイル間絶縁体6が設けられている。
【0014】
図2は、図1中の断面Sを、同図中の白抜き矢印の側から見た断面図である。図2の上側を「A側」、下側を「B側」とする。第1コイル4は2層の巻線を有するコイルで、ヨーク2に近い内側に第1層の巻線4L1が、その外側に第2層の巻線4L2が、それぞれ配置されている。同様に、第2コイル5は2層の巻線を有するコイルで、ヨーク2に近い内側に第1層の巻線5L1が、その外側に第2層の巻線5L2が、それぞれ配置されている。ヨーク2と第1層の巻線4L1との間、およびヨーク2と第1層の巻線5L1との間には、それぞれ層間絶縁体7が設けられている。この層間絶縁体7は、例えば絶縁紙、絶縁フィルム、成型された樹脂板、または注入されたエポキシ樹脂などの所定の絶縁機能を有するものであればよい。また、第2層の巻線4L2と第2層の巻線5L2との間には、前述のコイル間絶縁体6が設けられている。
【0015】
第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との間には層間絶縁体7を設けておらず、第1層の巻線4L1の線間の凹部に合わせて第2層の巻線4L2を巻いていく、所謂、俵積みがなされている。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との間にも層間絶縁体7を設けておらず、第1層の巻線5L1の線間の凹部に合わせて第2層の巻線5L2を巻いていく、所謂、俵積みがなされている。
【0016】
図3は、この発明の実施の形態1におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続状態を説明するための回路図である。リアクトル1は、第1コイル4のA側および第2コイル5のA側で高周波を発生させる電源8に接続されている。第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第2層の巻線5L2とは、B側で電気的に直列にコイル間接続されて第1の回路10を構成している。同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第1層の巻線5L1とは、B側で電気的に直列にコイル間接続されて第2の回路20を構成している。また、第1コイル4の第1層の巻線4L1および第2層の巻線4L2の前記コイル間接続がなされていない側(A側)の端部は、層間接続されて外部の電気回路(図3では電源8)との接続部となっている。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1および第2層の巻線5L2の前記コイル間接続がなされていない側(A側)の端部は、層間接続されて外部の電気回路(図3では電源8)との別の接続部となっている。つまり、第1の回路10と第2の回路が電気的に並列に電源8に接続されている。
【0017】
ここで、この発明のリアクトルの作用および効果を説明する前に、対比のため、別の従来のギャップ付きリアクトルについて、図4および5にて説明する。
【0018】
図4は、従来のリアクトルの第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態の一例を示す回路図であり、図5は、従来の巻線の整列巻きを説明するための説明図である。第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2とはB側で電気的に直列に層間接続されて第1の回路10を構成し、同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2とはB側で電気的に直列に層間接続されて第2の回路20を構成している。また、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第1層の巻線5L1とはA側でコイル間接続されて高周波を発生する電源8の一方の端子に、同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第2層の巻線5L2とはA側でコイル間接続されて電源8の他方の端子に接続されている。つまり、第1の回路10と第2の回路が電気的に並列に接続されおり、第1コイル4および第2コイル5は、それぞれB側で内側の第1層から外側の第2層へと折り返す構造となっている。そのため、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2のA側の端部間、および第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2のA側の端部間には、それぞれ電源8の全電圧が印可されるので高電圧となる。
【0019】
このように従来のリアクトルの一例では、第1コイル4および第2コイル5のそれぞれ第1層と第2層との巻線間に高電圧が印加されるので、第1層と第2層との間に層間絶縁体7、例えば層間紙などを設ける必要がある。層間絶縁体7を設けると、第1層の巻線の線間の凹部に合わせて第2層の巻線を巻いていく、所謂、俵積みをおこなうことはできず、図5に示すように、第1層の巻線の凸部に合わせて第2層の巻線を巻いていく、所謂、整列巻きとなっていた。このように整列巻きにすると、俵積みに比べて線材の充填率が低下するので、大型化することなく、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減するために、より線径の大きな巻線、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができなかった。
【0020】
尚、リッツ線とは、細いエナメル線などを複数本撚り合せることによって導体を細分化して導体表面積を大きくした線のことであり、高周波電流の表皮効果によって導体の実質の通電断面が減少してジュール損失が増えるのを防止する機能を有するものである。導体の細分化により、単に単線の導体径を大きくすることによる表面積の増加(電線の周長の増加)より大きな表面積の増加を得ることができるので、同じ径の単線に比べて高周波領域でのジュール損を大幅に低減できる。また、細分化された細線が捻回されているので、リッツ線外部からの磁束の影響による渦電流損失の増加も低減できる。リッツ線は、このように導体が細分化されているので、同じ導体断面の単線と比較してすれば、線径が大きくなる。
【0021】
この発明の実施の形態1では、上述の従来のリアクトルの一例と異なり、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との対向する部分の間には電位差が発生しないので、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2との間に層間絶縁体7を必要としない。同様に、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との対向する部分の間にも電位差が発生しないので、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2との間に層間絶縁体7を必要としない。このように層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述の俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができジュール損を低減できる。絶縁された細線を束ねた線などを用いた場合には、前記細線の絶縁部があるため太くなるが、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線での線材の渦電流損を低減できる。
【0022】
また、径が小さな絶縁された細線を束ねた線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因する渦電流損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。更に、細線の束を撚ったリッツ線と呼ばれる線を使う場合には、各素線間の循環電流損も低減できる。
【0023】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0024】
ところで、この発明の実施の形態1では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、コイル間絶縁体6を用いる必要がある。一方、上述の従来のリアクトルでは、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間は同電位となるため、第1コイル4と第2コイル5の間にはコイル間絶縁体6を挿入する必要が無い。しかしながら、この発明の実施の形態1では、前記従来のリアクトルと比較して層間絶縁体7を2個減らすことができるので、必要とするコイル間絶縁体6と層間絶縁体7との総数は、この発明の実施の形態1の方が1個少なくなる。この差は、後述のように、第1コイル4および第2コイル5の巻線の層の数が多くなるほど大きくなっていく。つまり、この発明では、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、より径の大きな電線を巻線として利用できるようになり、損失低減の効果がより顕著になると言える。
【0025】
以上より、この発明に係るリアクトル1では、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、第1磁脚2aを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイル4と、第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイル5とを備えたリアクトル1であって、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイルの第2層の巻線5L2とを直列にコイル間接続し、第1コイルの第2層の巻線4L2と第2コイルの第1層の巻線5L1とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2を俵積みし、且つ第2コイル5の第1層および第2層の巻線5L1、5L2を俵積みしたので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の小さな線を束ねた電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【0026】
また、この発明に係るリアクトル1では、第1コイル4の最外層より1つ内側の層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線とを直列にコイル間接続し、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との別の接続部とし、第1コイル4の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、且つ第1コイル4と第2コイル5との間にコイル間絶縁体6を設けたので、巻線の充填率が高まり、表皮効果の影響を低減できる径の大きな電線を巻線として適用可能となるので、大型化することなく損失を低減した、電力変換装置に用いるリアクトルを得ることができる。
【0027】
また、例えばリッツ線のように細線を捻回した電線により巻線を構成したので、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0028】
尚、上述の説明では、第1コイル4の第1層および第2層の巻線4L1、4L2のコイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第2コイル5の最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との別の接続部としたが、前記接続部と前記別の接続部を入れ替えても良いことは言うまでもない。
【0029】
また、この発明の実施の形態1では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0030】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。また、図7は、図6の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図1〜3に示した実施の形態1とは、リアクトル1が第1コイル4のA側および第2コイル5のB側で電源8に接続されていること、第1コイル4の第1層の巻線4L1のB側と第2コイル5の第2層の巻線5L2のA側とが電気的に直列にコイル間接続されていること、第1コイル4の第2層の巻線4L2のB側と第2コイル5の第1層の巻線5L1のA側とが電気的に直列にコイル間接続されていこと、および第2コイル5の第1層の巻線5L1および第2層の巻線5L2のB側の端部が層間接続されていることが異なっている。
【0031】
このように各巻線を接続すると、第1コイル4の最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイル5の最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向するように配置できる。それ以外の構成は実施の形態1と同じなので説明を省略する。
【0032】
図2および3に示す実施の形態1の各巻線の接続パターンでは、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のB側の端部と第2コイル5の巻線5L2のB側の端部との電位差はほぼ零であるが、同じようにコイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のA側の端部と第2コイル5の巻線5L2のA側の端部との電位差は、リアクトル1の両端の電圧(直列接続された2個の巻線の両端にかかる電圧、つまり電源8の電源電圧)に等しいことが分かる。一方、この実施の形態2の図6および7に示す各巻線の接続パターンでは、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のA側の端部と第2コイル5の巻線5L2のA側の端部との電位差は、アクトル1の両端の電圧の1/2(直列接続された1個の巻線の両端にかかる電圧)であることが分かる。同様に、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向する第1コイル4の巻線4L2のB側の端部と第2コイル5の巻線5L2のB側の端部との電位差もリアクトル1の両端の電圧の1/2(直列接続された1個の巻線の両端にかかる電圧)であることが分かる。
【0033】
コイル間絶縁体6に要求される絶縁耐力は、第1コイル4および第2コイル5の最外層の巻線間の最高の電位差で決定されるので、図6に示す実施の形態2の各巻線の接続パターンを用いることで、図3に示す実施の形態1の各巻線の接続パターンに比べて、要求される絶縁耐力を半分にすることができる。これによりコイル間絶縁体6をより薄くでき、その分をヨーク2の小型化に用いれば、磁路長が短くなり、ヨーク2での渦電流損およびヒステリシス損、つまり鉄損を低減できる。また、その分を第1コイル4もしくは第2コイル5またはその両方の最内層の巻線の導体断面積の増大に用いれば、巻線でのジュール損失の低減が可能となる。
【0034】
実施の形態3.
図8は、この発明の実施の形態3におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面ならびに第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の接続の状態を示す説明図である。この実施の形態3では、第1コイル4および第2コイル5において巻線を俵積みする方法について説明する。
【0035】
図8において、コイルは第1コイル4の2層の巻線4L1、4L2と、第2コイルの2層の巻線5L1、5L2から成る。各コイルで俵積みする場合、第1コイル4において第2層の巻線4L2を第1層の巻線4L1より1ターン少なく巻回する。同様に、第2コイル5において第2層の巻線5L2を第1層の巻線5L1より1ターン少なく巻回する。更に、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2コイル5の第2層の巻線5L2とを接続部9aを介して接続して第1の回路10(図中、白塗りの巻線が相当)を形成する。同様に、第1コイル4の第2層の巻線4L2と第2コイル5の第1層の巻線5L1とを接続部9bを介して接続して第2の回路20(図中、灰色塗りの巻線が相当)を形成する。これらの第1の回路10と第2の回路20とを電源8に並列に接続する。図8では、第1層の巻線4L1および5L1がそれぞれ6ターン、第2層の巻線4L2および5L2がそれぞれ5ターンであるので、前記第1の回路10および前記第2の回路20はともに合計11ターンになる。
【0036】
また、第1コイル4および第2コイル5は、それぞれループ状のヨーク2の磁脚3aおよび磁脚3bを囲むように配置されているので、接続部9aおよび9bによる各巻線の接続は上記ループの外で行うように構成し、組み立てを容易としている。
【0037】
通常、整列巻きの場合には第1層の巻線と第2層の巻線が同じターン数になるが、俵積みの場合には、巻回の層が進むに連れて、同じコイルの隣り合う層の巻線のターン数が1ターンずつ増減する積み方とすることが好ましい。
【0038】
また、図8では、第1コイル4と第2コイル5の総ターン数を同じとしたが、第1の回路10と第2の回路20とで総ターン数が同じとなれば、第1コイル4と第2コイル5の総ターン数が異なっても良い。このように第1の回路10と第2の回路20とで総ターン数を同じとすることで、第1の回路10および第2の回路20のインダクタンスがより揃い、第1の回路10および第2の回路20の電流が同じになるので、循環電流損が零になり損失を低減できる。
【0039】
尚、図8では第1層の巻線と第2層の巻線でターン数を1ターン変えたが、1ターンでなくとも良く、また第1コイル4と第2コイル5とをそれぞれ2層の巻線で構成したが、さらに層数が大きいN層のコイルでも良い。要は、第1の回路10と第2の回路20のターンが同じであれば同様な効果が得られる。
【0040】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面図である。実施の形態3では、第1コイル4および第2コイル5において巻線を俵積みするときに、第1コイル4の巻線と第2コイル5の巻線との間で接続部9a、9bを用いたが、この実施の形態4では、接続部9a、9bを用いること無く、巻線を連続巻きにて俵積みする方法について説明する。
【0041】
図8で示した実施の形態3の第1コイル4および第2コイル5の各層のターン数および各層の巻線間の接続パターンを維持したままでは、全ての巻線を連続巻きすることはできない。そこで、仮に、前記接続パターンの維持を考慮せずに、前記各層のターン数のみを維持して連続巻きをする場合について検討する。
【0042】
まず、第1コイル4の第1層の巻線4L1を巻回し、次ぎに第2コイル5の第1層の巻線5L1を連続巻回して第1の回路10を構成する。この第1の回路10の巻回終了部分を電源8との接続部とする。続いて第1コイル4の第2層の巻線4L2を巻回し、次ぎに第2コイル5の第2層の巻線5L2を巻回して第2の回路20を構成する。この第2の回路20の巻回終了部分と第1の回路10の巻回開始部分を接続して電源8との接続部とする。このとき、第1の回路10のターン数は巻線4L1と巻線5L1との合計の6+6=12ターンとなり、第2の回路20のターン数は巻線4L2と巻線5L2との合計の5+5=10ターンとなる。従って、第1の回路10のターン数が第2の回路20に比べて2ターン多くなる。ここで第1の回路10および第2の回路20を電源8に並列に接続すると、前記ターン数の差に起因して第2の回路20に多く電流が流れ、循環電流損が発生する。
【0043】
この循環電流損が発生するという問題を避けるため、実施の形態4では、図9に示すように巻回する。まず第1コイル4の第1層の巻線4L1を図9と同様に巻回し、次ぎに第2コイル5の第1層の巻線5L1を図9に示した例より1ターン少なく巻回して第1の回路10(図中、灰色塗りの巻線が相当)を構成する。この第1の回路10の巻回終了部分を電源8との接続部とする。続いて第1コイル4の第2層の巻線4L2を図8と同様に巻回し、次ぎに第2コイル5の2層目の巻線5L2を図8に示した例より1ターン多く巻回して第2の回路20(図中、白塗りの巻線が相当)を構成する。この第2の回路20の巻回終了部分と第1の回路10の巻回開始部分を接続して電源8との接続部とする。この第2コイル5の2層目の巻線5L2の1ターン多く巻回する分のためのスペースは、上述の第2コイル5の第1層の巻線5L1で1ターン少なく巻回することで出来た空きスペースを利用する。従って、図9に示すように、第2コイル5の第2層の巻線5L2は、第1層の巻線5L1と並んで配置される部分と、前記第1層の外周に位置する部分とを有している。
【0044】
このように連続巻きを行うと、第1の回路10のターン数は6+5=11ターンとなり、第2の回路20のターン数は5+5+1=11ターンとなるので、第1の回路10と第2の回路20のターン数を等しくでき、回路間のターン数差に起因した循環電流損の発生を防止できる。また、連続巻きをおこなうことで、図8に示した接続部9aおよび9bを省略できるので部品点数が削減でき、且つこれらを組み立てる工程を省略できる。
【0045】
尚、図9では、第2コイル5の各層の巻線のターン数を調整することで、第1の回路10のターン数と第2の回路20のターン数とを同じとしたが、第1コイル4の各層の巻線のターン数で調整しても良いことは言うまでもない。
【0046】
実施の形態5.
図9に示す実施の形態4では、図8に示した実施の形態3の巻線の接続パターンと異なる巻線の接続パターンを用いて、全ての巻線を連続巻きにて巻回する方法について説明した。この実施の形態5では、図8に示した実施の形態3の巻線の接続パターンを維持したままで、連続巻きを導入する方法について説明する。
【0047】
巻線の巻回のときに、第1の回路10の巻線用の一方の電線と、第2の回路の巻線用の他方の電線とを最初に分離すれば、図8で示した実施の形態3の巻線の接続パターンで、部分的な連続巻きが可能である。まず前記一方の電線を用いて、第1コイル4の第1層の巻線4L1を巻回する。次ぎに前記他方の電線を用いて、第2コイル5の第1層の巻線5L1を巻回する。続いて、前記一方の電線で第2コイル5の第2層の巻線5L2を巻回して第1の回路10を構成する。その後、前記他方の電線で第1コイル4の第2層の巻線4L2を巻回して第2の回路20を構成する。次に第1の回路10の巻回開始部分と第2の回路20の巻回開終了部分とを接続して電源8との接続部とし、第1の回路10の巻回開終了部分と第2の回路20の巻回開始部分とを接続して電源8との接続部とする。
【0048】
このような工程で巻回作業を行えば、部分的ではあるが連続巻きが可能となり、図9に示す接続部9aおよび9bを省略できるので部品点数が削減でき、且つこれらを組み立てる工程を省略できる。
【0049】
実施の形態6.
以上の実施の形態では、第1コイル4および第2コイル5が2層の例を示したが、この実施の形態6では、さらに大きなインダクタンスを得るためにターン数を増やす場合について説明する。
【0050】
図10は、この発明の実施の形態6におけるリアクトルの第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。図12は、図11の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図13は、この発明の実施の形態6におけるリアクトル1の図1の断面Sに相当する部分の断面図である。図10〜12に示す例では、第1コイル4の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線4L1、第2層の巻線4L2、第3層の巻線4L3、第4層の巻線4L4、の4層の巻線構造となっている。また第2コイル5の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線5L1、第2層の巻線5L2、第3層の巻線5L3、第4層の巻線5L4、の4層の巻線構造となっている。
【0051】
図10に示すように、第1コイルの第1層の巻線4L1、第2コイルの第2層の巻線5L2、第1コイルの第3層の巻線4L3および第2コイルの第4層の巻線5L4を電気的に直列に接続して第1の回路10を構成し、第1コイルの第2層の巻線4L2、第2コイルの第1層の巻線5L1、第1コイルの第4層の巻線4L4、および第2コイルの第3層の巻線5L3を電気的に直列に接続して第2の回路20を構成する。
【0052】
続いて、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図11では電源8)との接続部とし、第2コイル5の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図11では電源8)との接続部とする。
【0053】
第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数で、図10〜12の例ではN=2である)としたとき、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数は等しくなるように巻回されている。また、第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路の巻線20の合計ターン数とは等しくし、ターン数差に起因する循環電流損が発生しない構成としている。このような電気的接続は、例えば図11に示す具体的な結線で実現することができる。
【0054】
このように構成すると、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線が同電位となる。例えば、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2、第1コイル4の第3層の巻線4L3と第4層の巻線4L4、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2、第2コイル5の第3層の巻線5L3と第4層の巻線5L4がそれぞれ同電位となる。そのため、図13に示すように、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間に層間絶縁体7を設ける必要がなくなり、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線を俵積みすることが可能となる。
【0055】
尚、図10〜12に示した例では、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数を完全に等しくしたが、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線との間(nは、1〜Nまでの正の整数)の電位差が、巻線の絶縁被覆で耐えられる電位差に相当する程度に抑えられる場合には前記ターン数を完全に一致させる必要は無い。
【0056】
このように同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間の層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述のように俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0057】
また、径が小さな絶縁された細線を束ね、単線と同じ導体断面積とした線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0058】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0059】
ところで、この発明では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、図5に示した従来のリアクトルでは不要なコイル間絶縁体6を用いる必要がある。しかしながら、この発明の実施の形態6の接続パターンでは、第1コイル4および第2コイル5の層の数が多くなるほど、省略できる層間絶縁体7の枚数が多くなっていくので、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、上述の効果が顕著になる。
【0060】
以上より、この発明に係るリアクトルは、第1ギャップ3aを有する第1磁脚2aおよび第2ギャップ3bを有する第2磁脚2bを設けたループ状のヨーク2と、第1磁脚2aを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイル4と、第2磁脚2bを取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイル5とを備えたリアクトルであって、第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線と第2コイル5の第(2×n)層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第(2×n)層の巻線と第2コイル5の第(2×n−1)層の巻線とを直列にコイル間接続し、第1コイル4の第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、第2コイル5の第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、n=1の場合は第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線とヨーク2との間に、n≠1の場合は第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線と第(2×n−2)層の巻線との間に層間絶縁体7を設けたので、使用する層間絶縁体7の枚数を低減でき、隣り合う層の巻線を俵積みすることが可能となる。これにより、巻線の充填率が高まり、その分、径の大きな電線を巻線として採用できるので、大型化することなく損失を低減した、ヨーク2にギャップを有するリアクトル1を得ることができる。
【0061】
また、この発明に係るリアクトルは、第1コイル4の任意のN個の層の巻線と第2コイル5の任意のN個の層の巻線とが全て直列に接続された第1の回路10と、前記第1コイル4の任意のN個の層以外の巻線と前記第2コイル5の任意のN個の層以外の巻線とが全て直列に接続された第2の回路20とを有し、第1の回路10と第2の回路20とは並列に接続され、且つ第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路20の巻線の合計ターン数とを同じとしたので、巻線にターン数差に起因する循環電流が流れず、ターン数差に起因する循環電流損を低減できる。
【0062】
尚、この発明の実施の形態6では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0063】
実施の形態7.
実施の形態6では、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路との接続部とし、第2コイル5の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路との別の接続部としたが、この実施の形態6では、前記別の接続部を、第1コイル4の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続した部分に設けている。
【0064】
図13は、この発明の実施の形態7におけるリアクトル1の第1コイル4および第2コイル5の各層巻線の層間接続およびコイル間接続の状態を説明するための回路図である。図14は、図13の回路図の回路を実現する具体的な結線の一例を示す結線図である。図13および14では、第1コイル4の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線4L1、第2層の巻線4L2、第3層の巻線4L3、第4層の巻線4L4、の4層の巻線構造となっている。また第2コイル5の巻線は、ヨーク2側から第1層の巻線5L1、第2層の巻線5L2、第3層の巻線5L3、第4層の巻線5L4の4層の巻線構造となっている。
【0065】
図13に示すように、第1コイルの第1層の巻線4L1、第2コイルの第2層の巻線5L2、第2コイルの第3層の巻線5L3および第1コイルの第4層の巻線4L4を電気的に直列に接続して第1の回路10を構成し、第1コイルの第2層の巻線4L2、第2コイルの第1層の巻線5L1、第2コイルの第4層の巻線5L4、および第1コイルの第3層の巻線4L3を電気的に直列に接続して第2の回路20を構成する。
【0066】
続いて、第1コイル4の最内層である第1層の巻線と第2層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図13では電源8)との接続部とし、第1コイル4の最外層より一つ内側の層の巻線と最外層の巻線とを層間接続して外部の電気回路(図13では電源8)との別の接続部とする。
【0067】
第1コイル4および第2コイル5の巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数で、図13および14の例ではN=2である)としたとき、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数は等しくなるように巻回している。また、第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路の巻線20の合計ターン数とは等しくし、ターン数差に起因する循環電流損が発生しない構成としている。このような電気的接続は、例えば図14に示す具体的な結線で実現することができる。
【0068】
このように構成すると、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線が同電位となる。例えば、第1コイル4の第1層の巻線4L1と第2層の巻線4L2、第1コイル4の第3層の巻線4L3と第4層の巻線4L4、第2コイル5の第1層の巻線5L1と第2層の巻線5L2、第2コイル5の第3層の巻線5L3と第4層の巻線5L4がそれぞれ同電位となる。そのため、図14に示すように、同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間に層間絶縁体7を設ける必要がなくなり、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線を俵積みすることが可能となる。
【0069】
尚、図13および14では、第1コイル4および第2コイル5の同じ順番の層の巻線のターン数を完全に等しくしたが、第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線との間(nは、1〜Nまでの正の整数)の電位差が、巻線の絶縁被覆で耐えられる電位差に相当する程度に抑えられる場合には前記ターン数を完全に一致させる必要は無い。
【0070】
このように同じコイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n)層の巻線の間の層間絶縁体7を省略できる分だけ径の太い巻線を用いることができるのみならず、前述のように俵積みが可能となる分、巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0071】
また、同じ導体断面積の単線より径が小さな絶縁された細線を束ね、単線と同じ導体断面積とした線を巻線として用いることができる場合は、一層、高周波による表皮効果に起因するジュール損失の増加を防止できると共に、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍からの磁束漏れに起因した巻線での渦電流損失の増加を防止できる。
【0072】
尚、全ての巻線を、リッツ線にできない場合は、第1コイル4または第2コイル5の最も内側の層である第1巻線に用いることで、前記表皮効果の影響および前記磁束漏れの影響を低減できる。
【0073】
ところで、この発明では、第1コイル4の最外層の巻線と第2コイル5の最外層の巻線との間で電位差が発生するので、この間で絶縁を維持するのに十分な離隔距離を設けることが出来ない場合は、図5に示した従来のリアクトルでは不要なコイル間絶縁体6を用いる必要がある。しかしながら、この発明の実施の形態7の接続パターンでは、第1コイル4および第2コイル5の層の数が多くなるほど、省略できる層間絶縁体7の枚数が多くなっていくので、第1コイル4および第2コイル5の巻線に層の多いほど、上述の効果が顕著になる。
【0074】
また、この実施の形態7の各巻線の接続パターンを用いると、第1コイル4の最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイル5の最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体6を挟んで同方向で対向するように配置できる。このようにコイル間絶縁体6を挟んで対向する2つの巻線の高電位側の端部を同方向とすることで、前記2つの巻線の高電位側の端部が異なる方向である場合と比較して、前記2つの巻線間の最高の電位差を低減できる。これによりコイル間絶縁体6をより薄くでき、その分をヨーク2の小型化に用いれば、磁路長が短くなり、ヨーク2での渦電流損およびヒステリシス損である鉄損を低減できる。また、その分を第1コイル4もしくは第2コイル5またはその両方の最内層の巻線の断面積の増大に用いれば、巻線でのジュール損失の低減が可能となる。
【0075】
尚、この発明の実施の形態7では、ヨーク2の第1ギャップ3aおよび第2ギャップ3bの近傍に巻線レスエリアを設けていないが、層間絶縁体7を省くことと、巻線を俵積みすることに因って確保した空間を、巻線レスエリアとして用いても良い。
【0076】
実施の形態7.
図15は、この発明の実施の形態7におけるリアクトルの第1コイルの巻線対および第2コイルの巻線対の接続の状態を説明するための説明図である。第1コイル4および第2コイル5の各層の巻線の数およびその接続状態以外は、上述の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0077】
図15において、第1コイル4(図示せず)を構成する各層の巻線を、内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とし、第2コイル5(図示せず)を構成する各層の巻線を、内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とする。また、第1コイル4の第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を第1コイル4の第n巻線対とし、第2コイル5の第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、第2コイル5の第n巻線対とする。このとき、第1コイル4の第n巻線対のいずれか一方の巻線、および第2コイル5の第n巻線対のいずれか一方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第1の回路10(図示せず)を構成する。第1コイル4の第n巻線対の前記一方と対をなす他方の巻線、および第2コイル5の第n巻線対の前記一方と対をなす他方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第2の回路20(図示せず)を構成する。
【0078】
図15では、電源8との接続部の側に、第1コイル4の第1層の巻線4L1および第2層の4L2にて構成された第1コイル4の第1巻線対を配置し、電源8との別の接続部の側に、第2コイル5の第(2×N−1)層の巻線5L2N−1および第(2×N)層の5L2Nにて構成された第2コイル5の第N巻線対を配置しているが、順番はこれに限るものでは無い。また、各巻線対の前記一方の巻線と他方の巻線は、ほぼ等しいターン数を有している。
【0079】
第1の回路10の合計ターン数と第2の回路20の合計ターン数は同じに構成されており、第1の回路10と第2の回路20とは、前期接続部および別の接続部にて並列に接続される。また、図示していないが、第1コイル4の第n巻線対の前記一方の巻線と前記他方の巻線とは、少なくとも一部の巻線対で俵積みされており、同様に、第2コイル5の第n巻線対の前記一方の巻線と前記他方の巻線とは、少なくとも一部の巻線対で俵積みされている。
【0080】
また、n=1の場合は、第1コイル4の第1巻線対とヨーク2との間および第2コイル5の第1巻線対とヨーク2との間に、n≠1の場合は、第1コイル4の第n巻線対と第(n−1)巻線対との間および第2コイル5の第n巻線対と第(n−1)巻線対との間に、それぞれ層間絶縁体7(図示せず)を設けている。
【0081】
このような構成とすることで、使用する層間絶縁体7を削減できるのみならず、巻線を俵積みできるので巻線の充填率が向上し、さらに径の太い巻線を用いることができる。これにより、大型化することなく、例えば導体断面積を増やした単線またはリッツ線などを用いることができ、電源8が発生する高周波電流による表皮効果に起因した巻線でのジュール損を低減できる。
【0082】
また、並列接続される第1の回路10の巻線の合計ターン数と第2の回路20の巻線の合計ターン数とを同じとしたので、巻線にターン数差に起因する循環電流が流れず、ターン数差に起因する循環電流損を低減できる。
【符号の説明】
【0083】
1 リアクトル、2 ヨーク、2a 第1磁脚、2b 第2磁脚、3a 第1ギャップ、3b 第2ギャップ、4 第1コイル、4L1 第1層の巻線、4L2 第2層の巻線、4L3 第3層の巻線、4L4 第4層の巻線、4L2n−1 第(2×n−1)層の巻線、4L2n 第(2×n)層の巻線、4L2N−1 第(2×N−1)層の巻線、4L2N 第(2×N)層の巻線、4P1 第1巻線対、4Pn 第n巻線対、4PN 第N巻線対、5 第2コイル、5L1 第1層の巻線、5L2 第2層の巻線、5L3 第3層の巻線、5L4 第4層の巻線、5L2n−1 第(2×n−1)層の巻線、5L2n 第(2×n)層の巻線、5L2N−1 第(2×N−1)層の巻線、5L2N 第(2×N)層の巻線、5P1 第1巻線対、5Pn 第n巻線対、5PN 第N巻線対、6 コイル間絶縁体、7 層間絶縁体、8 電源、9a 接続部、9b 接続部、10 第1の回路、20 第2の回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、
前記第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、
前記第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、
前記第1コイルの第1層の巻線と前記第2コイルの第2層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第2層の巻線と前記第2コイルの第1層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第1層および第2層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、
前記第1コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みし、
且つ前記第2コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みしたことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線と第2コイルの最外層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの最外層の巻線と前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部、または前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部のいずれか一方を、層間接続して外部の電気回路との接続部とし、
前記第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、
前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、
且つ前記第1コイルと前記第2コイルとの間にコイル間絶縁体を設けたことを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
第1コイルおよび第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、
第1コイルの第(2×n−1)層の巻線と第2コイルの第(2×n)層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第(2×n)層の巻線と前記第2コイルの第(2×n−1)層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、
前記第2コイルの第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、
n=1の場合は前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線とヨークとの間に、n≠1の場合は前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n−2)層の巻線との間に層間絶縁体を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル。
【請求項4】
第1コイルおよび第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、
第1コイルの任意のN個の層の巻線と第2コイルの任意のN個の層の巻線とが全て直列に接続された第1の回路と、
前記第1コイルの任意のN個の層以外の巻線と前記第2コイルの任意のN個の層以外の巻線とが全て直列に接続された第2の回路とを有し、
前記第1の回路と前記第2の回路とは並列に接続され、
且つ前記第1の回路の巻線の合計ターン数と前記第2の回路の巻線の合計ターン数とが同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項5】
第1コイルの最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイルの最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体を挟んで同方向で対向することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項6】
第1コイルの最も内側の層の巻線および第2コイルの最も内側の層の巻線は、細線を捻回した線にて形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項7】
第1の回路の巻線および第2の回路の巻線は、それぞれ連続巻きされていることを特徴とする請求項4記載のリアクトル。
【請求項8】
第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、
前記第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、
前記第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とし、
前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、前記第1コイルの第n巻線対とし、
前記第2コイルの第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、前記第2コイルの第n巻線対とし、
前記第1コイルの第n巻線対のいずれか一方の巻線、および前記第2コイルの第n巻線対のいずれか一方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第1の回路を構成し、
前記第1コイルの第n巻線対のいずれか一方と対をなす他方の巻線、および前記第2コイルの第n巻線対のいずれか一方と対をなす他方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第2の回路を構成し、
前記第1の回路の合計ターン数と前記第2の回路の合計ターン数とを同じに構成して前記第1の回路と前記第2の回路とを並列に接続し、
前記第1コイルの第n巻線対の一方の巻線と他方の巻線とを、少なくとも一部の巻線対で俵積みし、
前記第2コイルの第n巻線対の一方の巻線と他方の巻線とを、少なくとも一部の巻線対で俵積みし、
n=1の場合は、前記第1コイルの第n巻線対と前記ヨークとの間および前記第2コイルの第n巻線対と前記ヨークとの間に、n≠1の場合は、前記第1コイルの第n巻線対と第(n−1)巻線対との間および前記第2コイルの第n巻線対と第(n−1)巻線対との間に、それぞれ層間絶縁体を設けることを特徴とするリアクトル。
【請求項1】
第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、
前記第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、
前記第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、
前記第1コイルの第1層の巻線と前記第2コイルの第2層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第2層の巻線と前記第2コイルの第1層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第1層および第2層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部を層間接続して外部の電気回路との接続部とし、
前記第1コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みし、
且つ前記第2コイルの第1層および第2層の巻線を俵積みしたことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線と第2コイルの最外層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの最外層の巻線と前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部、または前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線の前記コイル間接続がなされていない側の端部のいずれか一方を、層間接続して外部の電気回路との接続部とし、
前記第1コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、
前記第2コイルの最外層より1つ内側の層の巻線および最外層の巻線を俵積みし、
且つ前記第1コイルと前記第2コイルとの間にコイル間絶縁体を設けたことを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
第1コイルおよび第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、
第1コイルの第(2×n−1)層の巻線と第2コイルの第(2×n)層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第(2×n)層の巻線と前記第2コイルの第(2×n−1)層の巻線とを直列にコイル間接続し、
前記第1コイルの第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、
前記第2コイルの第(2×n−1)層および第(2×n)層の巻線を俵積みし、
n=1の場合は前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線とヨークとの間に、n≠1の場合は前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線と第(2×n−2)層の巻線との間に層間絶縁体を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル。
【請求項4】
第1コイルおよび第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)としたとき、
第1コイルの任意のN個の層の巻線と第2コイルの任意のN個の層の巻線とが全て直列に接続された第1の回路と、
前記第1コイルの任意のN個の層以外の巻線と前記第2コイルの任意のN個の層以外の巻線とが全て直列に接続された第2の回路とを有し、
前記第1の回路と前記第2の回路とは並列に接続され、
且つ前記第1の回路の巻線の合計ターン数と前記第2の回路の巻線の合計ターン数とが同じであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項5】
第1コイルの最外層の巻線の高電位側の端部と第2コイルの最外層の巻線の高電位側の端部とが、コイル間絶縁体を挟んで同方向で対向することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項6】
第1コイルの最も内側の層の巻線および第2コイルの最も内側の層の巻線は、細線を捻回した線にて形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項7】
第1の回路の巻線および第2の回路の巻線は、それぞれ連続巻きされていることを特徴とする請求項4記載のリアクトル。
【請求項8】
第1ギャップを有する第1磁脚および第2ギャップを有する第2磁脚を設けたループ状のヨークと、
前記第1磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第1コイルと、
前記第2磁脚を取り囲むように配置される多層の巻線を有する第2コイルとを備えたリアクトルであって、
前記第1コイルおよび前記第2コイルの巻線を、それぞれ内側の層から第1層、第2層、・・・第(2×n−1)層、第(2×n)層(nは、1〜Nまでの正の整数)とし、
前記第1コイルの第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、前記第1コイルの第n巻線対とし、
前記第2コイルの第(2×n−1)層の巻線および第(2×n)層の巻線の対を、前記第2コイルの第n巻線対とし、
前記第1コイルの第n巻線対のいずれか一方の巻線、および前記第2コイルの第n巻線対のいずれか一方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第1の回路を構成し、
前記第1コイルの第n巻線対のいずれか一方と対をなす他方の巻線、および前記第2コイルの第n巻線対のいずれか一方と対をなす他方の巻線を、n=1〜Nまで任意の順番で直列に接続して第2の回路を構成し、
前記第1の回路の合計ターン数と前記第2の回路の合計ターン数とを同じに構成して前記第1の回路と前記第2の回路とを並列に接続し、
前記第1コイルの第n巻線対の一方の巻線と他方の巻線とを、少なくとも一部の巻線対で俵積みし、
前記第2コイルの第n巻線対の一方の巻線と他方の巻線とを、少なくとも一部の巻線対で俵積みし、
n=1の場合は、前記第1コイルの第n巻線対と前記ヨークとの間および前記第2コイルの第n巻線対と前記ヨークとの間に、n≠1の場合は、前記第1コイルの第n巻線対と第(n−1)巻線対との間および前記第2コイルの第n巻線対と第(n−1)巻線対との間に、それぞれ層間絶縁体を設けることを特徴とするリアクトル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図15】
【公開番号】特開2012−119617(P2012−119617A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270364(P2010−270364)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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