説明

リアクトル

【課題】一対のJ字型鉄心を用いるリアクトルを冷却する際に、磁気ギャップから冷却器への振動伝播を抑制することである。
【解決手段】リアクトル10は、J字型鉄心を対向させて環状形状とするリアクトルコア12と、これに配置される一対のコイル50,52を含む。リアクトル10の4方の隅部に設けられる4つの保持ステイ部について、第1ギャップ部40に近い保持ステイ部64と第2ギャップ部42に近い保持ステイ部62の剛性を、第1ギャップ部40に遠い保持ステイ部60と第2ギャップ部42に遠い保持ステイ部66の剛性よりも小さくする。冷却器80に接触するように配置される一対のコイル50,52の共通の冷却面82の側には、第1ギャップ部40に遠い保持ステイ部60と第2ギャップ部42に遠い保持ステイ部66を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに係り、特に、それぞれ異なる長さの2つの脚部を有する一対の鉄心を用いるリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置の昇圧回路等に用いられるリアクトルは、環状に形成したリアクトルコアにコイルを巻回したものを用いることができる。
【0003】
例えば、特許文献1において、従来技術のリアクトルは、一対のU字型鉄心を用い、一対の鉄心の脚部がそれぞれ対向する端面の空隙に合わせて、一対のコイルのボビンが重複するように配置され、そのコイルのボビン重複のため、鉄心の脚部が太くできず、銅損が多く温度上昇が大きくなることを指摘している。そこで、一対のコイルのボビンを重複配置しないようにし、一対のJ字型鉄心を用いることが開示されている。ここで、J字型鉄心とは、異なる長さの2つの脚部を有する鉄心のことで、同じ形状のJ字型鉄心を互いにその端面を対向するように配置することで、環状形状のリアクトルを形成できる。
【0004】
特許文献2には、電磁機器としてのリアクトルについて、柱状をなす中脚コアと、中脚コアを中心にして設けられるコイルと、コイルの外周面をその一部を除いて覆い一方に開口するU形コアと、これらの上下両端を覆う上蓋コアと下蓋コアを備える構造が開示される。ここでは、U形コアの開口側に位置するコイルの外周面の一部に近接して冷却部材が配置される。
【0005】
特許文献3には、リアクトルとして、コイルと、コイルの内側および外側に充填された磁性粉末混合樹脂のコアと、これらを収納するケースと、コアに埋設された冷却用の冷媒導入管と冷媒排出管を有する構成が開示されている。ここでは、冷媒導入管と冷媒排出管に冷媒を流し、リアクトルと冷媒との間で熱交換が行われる。
【0006】
特許文献4には、リアクトルの取付構造として、対向し合うコイル巻回部を有して閉ループ状に形成されるコアと、コイル巻回部に形成されるコイルと、コイルが形成されたコアの下方に配置されるベースと、コイルが形成されたコアの上方に配置される押え板と、コイルが形成されたコアを挟んで、ベースと押え板とを連結する非磁性体のセラミック製の連結ボルトとを有することが開示されている。ここでは、連結ボルトは、コアの閉ループ状の内側で、コアとコイルとの隙間に配置される。
【0007】
特許文献5には、電気自動車のトランスにおける水冷式冷却器として、コイルが巻回される環状鉄心を縦置きとして、その上下部にそれぞれ、内部に長さ方向に延びる複数の冷却水路が配置される中空押出形材の扁平管が配置され、複数の冷却水路に冷却水を循環させて環状鉄心を冷却する構成が述べられている。
【0008】
特許文献6には、リアクトルの固定構造として、ギャップを設けて配置される複数のブロックコアを含んで環状とするコア体と、コア体に接続されてコア体を外部構造体に取り付ける板ばねで、L字形状に平板が曲げられ剛性が方向によって異なる板ばねを含むことが開示されている。ここでは、ブロックコアの配列方向に振動が最も大きいので、板ばねの剛性が小さい方向とブロックコアの配列方向に対し傾斜させて、コア体に生じた振動を減衰させることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実用新案登録第3096267号明細書
【特許文献2】特開2009−260014号公報
【特許文献3】特開2007−335833号公報
【特許文献4】特開2009−188033号公報
【特許文献5】特開平7−192933号公報
【特許文献6】特開2009−26952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リアクトルを外部に取り付けて保持することを考えると、特許文献1のJ字型鉄心を用いる場合には、振動源となる磁気ギャップの位置が、リアクトルの4隅から見て等距離ではないところとなるので、保持部の配置次第では、偏った振動が外部に伝播しやすくなることが生じる。特に、冷却のために、リアクトルを冷却器に接触させると、その振動が冷却器に伝播することが考えられる。
【0011】
このように、一対のJ字型鉄心を用いるリアクトルには、課題が残されている。本発明の目的は、一対のJ字型鉄心を用いて、磁気ギャップから冷却器への振動伝播を抑制できるリアクトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るリアクトルは、それぞれ異なる長さの2つの脚部を有する一対の鉄心について、一方側の鉄心の2つの脚部の長い方の脚部と、他方側の鉄心の2つの脚部の短い方の脚部とを対向させてその対向隙間を第1ギャップ部とし、一方側の鉄心の2つの脚部の短い方の脚部と、他方側の鉄心の2つの脚部の長い方の脚部とを対向させてその対向隙間を第2ギャップ部として組み合わせ、環状形状を形成するリアクトルコアと、リアクトルコアの環状形状において、第1ギャップ部に巻回される第1のコイルと、第2ギャップ部に巻回される第2のコイルの一対のコイル部と、リアクトルを外部に取り付けるためにリアクトルの4方の隅部に設けられる4つの保持ステイ部であって、第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の剛性が、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の剛性よりも小さい4つの保持ステイ部と、を備え、第1のコイルの外周面と第2のコイルの外周面のうちでリアクトルコアの環状形状を形成する面に平行な面を共通の冷却面としてリアクトルを外部に取り付けるときに、冷却面側に第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部とを配置することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るリアクトルにおいて、外部に取り付ける際に、リアクトルコアは、環状形状を形成する面を上下方向に沿った面として配置され、一対のコイルの冷却面は、上下方向に沿った面に平行に配置され、保持ステイ部は、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有し、第1ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るリアクトルにおいて、第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の板厚は、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の板厚よりも薄いことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係るリアクトルにおいて、一対のコイルは、第1のコイルと第2のコイルとが、軸方向に沿って互いに重複しないように軸方向の位置をずらしてリアクトルコアに配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、リアクトルは、それぞれ異なる長さの2つの脚部を有するJ字型鉄心を対向させて環状形状とするリアクトルコアを用いる。そして、リアクトルを外部に取り付けるためにリアクトルの4方の隅部に設けられる4つの保持ステイ部について、第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の剛性を、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の剛性よりも小さくし、剛性の大きい保持ステイ部を冷却面側に配置する。このように、リアクトルは、振動源となる磁気ギャップから遠いところに配置される保持ステイ部を用いて冷却面側に取り付けられる。これによって、振動を冷却器に伝播することを抑制できる。
【0017】
また、リアクトルにおいて、外部に取り付ける際に、リアクトルコアは、環状形状を形成する面を上下方向に沿った面として配置するときは、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有し、第1ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有する。このように、保持ステイ部の高さを変えることで、振動源となる磁気ギャップから遠いところに配置されるように、リアクトルを冷却面側に取り付けることができる。
【0018】
また、リアクトルにおいて、第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の板厚は、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の板厚よりも薄いので、冷却器への振動伝播を効果的に抑制することができる。
【0019】
また、リアクトルにおいて、一対のコイルは、第1のコイルと第2のコイルとが、軸方向に沿って互いに重複しないように軸方向の位置をずらしてリアクトルコアに配置される。これによって、コイルの径方向に沿ったリアクトルの寸法を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態のリアクトルの構成を示す正面図、上面図、左側面図、右側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のリアクトルを用いて冷却装置付きリアクトル装置である。
【図3】本発明に係る実施の形態のリアクトルを用いて冷却器付きリアクトル装置の分解図である。
【図4】他の構成のリアクトルの構成を説明する図である。
【図5】別の構成のリアクトルコアとコイルの組合せを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、車両用電源装置に用いられるリアクトル、リアクトル装置について説明するが、車両用以外の用途の電源装置であってもよい。また、リアクトルコアであるJ字型鉄心として、1つの鉄心材がJ字型に曲がった形状を有するものとして説明するが、これを複数のコア材を組み合わせてJ字形状を形成するものとしてもよい。例えば、3つの直線状のIコアを組み合わせてJ字型としてもよく、1つのU字型コアの2つの脚部のうち1つにさらにI字コアを組み合わせてJ字型としてもよい。
【0022】
J字型鉄心は、磁性粉末を成形された圧粉磁心として説明するが、電磁鋼板を所定の形状に打ち抜いたものとしてもよい。また、リアクトルを保持するケースを電源装置ケースとして説明するが、リアクトルを収納するリアクトルケースであってもよい。また、以下で述べる材質、寸法、形状は説明のための一例であって、用途等に応じ適当に変更が可能である。
【0023】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0024】
図1は、リアクトル10の正面図、上面図、左側面図、右側面図である。ここでは、リアクトル10の構成要素ではないが、リアクトル10の冷却面82を説明するため、冷却器80が図示されている。なお、以下では、鉄心にコイルを巻回し、ケースに取り付ける保持部を有するものをリアクトルと呼び、保持部を用いてリアクトルをケース等に取り付けたものをリアクトル装置と呼ぶことにする。図1には、各図の対応関係が分かるように、直交するXYZ方向を示した。ここで、Z方向が上下方向、XY平面がリアクトル10においてリアクトルコア12が環状形状を形成する面に平行な面である。以下の図でも、必要に応じ、このXYZ方向を示した。
【0025】
リアクトル10は、ハイブリッド車両、電気自動車等に搭載される車両用電源装置の昇圧回路に用いられるもので、電源装置のケースの中に保持部を介して配置される。
【0026】
リアクトル10は、リアクトルコア12と、リアクトルコア12を樹脂で被覆するモールド部14と、モールド部の外周に巻回される一対のコイル50,52と、モールド部14の4隅から突き出る4つの保持ステイ部60,62,64,66を含んで構成される。
【0027】
リアクトルコア12は、一対の鉄心20,30を組み合わせて環状形状とした磁性体である。一対の鉄心20,30のそれぞれは、長さが異なる2つの脚部を有し、平面形状でJ字型を有する。図1では、この2つの鉄心20,30を区別するため、T1,T2として示してある。かかる鉄心20,30としては、磁性粉末を成形してJ字型とした圧粉磁心が用いられる。
【0028】
T1を一方側の鉄心20として、一方側の鉄心20は、長い方の脚部22と、短い方の脚部24と、これらを結ぶ胴部21とを有する。T2を他方側の鉄心30として、他方側の鉄心30は、長い方の脚部32と、短い方の脚部34と、これらを結ぶ胴部31とを有する。一方側の鉄心20と他方側の鉄心30について、それぞれの胴部21,31の長さは同じで、長い方の脚部22,32の長さは同じで、短い方の脚部24,34の長さは同じである。つまり、一方側の鉄心20と他方側の鉄心30とは、互いに同じ外形を有している。
【0029】
リアクトルコア12は、一方側の鉄心20の長い方の脚部22と、他方側の鉄心30の短い方の脚部34とを対向させ、一方側の鉄心20の短い方の脚部24と、他方側の鉄心30の長い方の脚部32とをそれぞれ対向させて、環状形状としている。ここで、一方側の鉄心20の長い方の脚部22と、他方側の鉄心30の短い方の脚部34とが対向する隙間を第1ギャップ部40とし、一方側の鉄心20の短い方の脚部24と、他方側の鉄心30の長い方の脚部32とが対向する隙間を第2ギャップ部42として、図1では、第1ギャップ部40がG1、第2ギャップ部42がG2として示されている。第1ギャップ部40と第2ギャップ部42には適当な非磁性体が挿入され、リアクトルコア12における磁気ギャップとなる。
【0030】
モールド部14は、一方側の鉄心20の第1ギャップ部40に向かい合う端面と第2ギャップ部42に向かい合う端面を露出しながら全体を樹脂で覆う一方側の鉄心モールドと、他方側の鉄心30の第1ギャップ部40に向かい合う端面と第2ギャップ部42に向かい合う端面を露出しながら全体を樹脂で覆う他方側の鉄心モールドの2つの総称である。換言すれば、一方側の鉄心20も、他方側の鉄心30も、磁気ギャップとなるところを除いて、樹脂でモールドされている。モールド部14の樹脂は、耐熱性と電気絶縁性を有する適当なプラスチック樹脂を用いることができる。
【0031】
一対のコイル50,52は、リアクトルコア12の環状形状において、第1ギャップ部40に巻回される第1のコイル50と、第2ギャップ部42に巻回される第2のコイル52で構成される。第1のコイル50と第2のコイル52は、適当なボビンに絶縁導線を所定の巻数で巻回したもので、互いに直列接続されて、等価回路的には、リアクトルコア12を鉄心として巻回された1つのコイルである。第1のコイル50と第2のコイル52とは巻数が同じである。
【0032】
ここで、第1のコイル50は第1ギャップ部40を覆うように配置され、第2のコイル52は第2ギャップ部42を覆うように配置されるが、第1のコイル50の軸方向外周部と、第2のコイル52の軸方向外周部とが、軸方向に沿って互いに重複するように配置される。なお、軸方向に沿って互い重複する構成の意義については、図5を用いて後述する。
【0033】
保持ステイ部60,62,64,66は、リアクトル10を外部のケースに取り付けて保持するために、モールド部14の4隅から突き出る4つの保持部である。保持ステイ部60,62,64,66は、適当な金属板の一方端をモールド部14に埋め込み、他方端をモールド部14から露出するようにしたものを用いることができる。
【0034】
ここで、4つの保持ステイ部60,62,64,66を区別するために、図1では、S11,S12,S21,S22として示した。S11は、リアクトルコア12の一方側の鉄心20の第1ギャップ部40側に設けられる保持ステイ部60である。これを第11ステイと呼ぶことにする。S11は、第11の意味である。同様に、S12は、一方側の鉄心20の第2ギャップ部42側に設けられる保持ステイ部62であり、これを第12ステイと呼ぶ。S21は、他方側の鉄心30の第1ギャップ部40側に設けられる保持ステイ部64であり、これを第21ステイと呼ぶ。S22は、他方側の鉄心30の第2ギャップ部42側に設けられる保持ステイ部66であり、これを第22ステイと呼ぶ。
【0035】
ここで、第1ギャップ部40に近いS21である保持ステイ部64の板厚と、第2ギャップ部42に近いS12である保持ステイ部62の板厚は、第1ギャップ部40に遠いS11である保持ステイ部60の板厚と、第2ギャップ部42に近いS22である保持ステイ部66の板厚よりも薄い。図1の側面図には、S12である保持ステイ部62の板厚が、S22である保持ステイ部66の板厚よりも薄いことが示されている。
【0036】
つまり、磁気ギャップ部に近い保持ステイ部62,64の剛性は、磁気ギャップ部から遠い保持ステイ部60,66よりも剛性が小さく設定される。剛性を小さくするには、上記のように板厚を薄くする他に、撓みやすい形状とすることでもよい。例えば、保持ステイ部62,64のモールド部14における根元部の幅を、保持ステイ部62,64のモールド部14における根元部の幅よりも狭くするものとしてもよい。
【0037】
上記構成のリアクトル10について、冷却器80を用いて冷却できるように取り付ける様子を図2、図3を用いて説明する。図1にも示されるように、第1のコイル50の外周面と第2のコイル52の外周面のうちでリアクトルコア12の環状形状を形成する面に平行な面が、共通の冷却面82として用いられる。冷却器80は、この共通の冷却面82に接触するように配置される。
【0038】
図2は、冷却器80を共通の冷却面82に接触するように、リアクトル10をケース90に取り付けた冷却器付きリアクトル装置100を正面から見た斜視図である。図3は、図2の分解斜視図である。
【0039】
ケース90は、ベース78と、ベース78の上に上下方向に延びる4つの保持柱70,72,74,76を含んで構成される。4つの保持柱70,72,74,76は、リアクトル10を、リアクトルコア12の環状形状を形成する面を上下方向に沿った面として、取り付けて配置するときに用いられる取付部材である。
【0040】
すなわち、リアクトル10は、リアクトルコア12の環状形状を形成する面をXZ面として、ケース90に取り付けられる。そのとき、保持柱70,72,74,76は、それぞれ、リアクトル10の4つの保持ステイ部60,62,64,66を取り付けるための部材である。すなわち、保持柱70の頂面に保持ステイ部60が取り付けられ、保持柱72の頂面に保持ステイ部62が取り付けられ、保持柱74の頂面に保持ステイ部64が取り付けられ、保持柱76の頂面に保持ステイ部66が取り付けられる。
【0041】
冷却器80は、その1つの面が、一対のコイル50,52の共通の冷却面82に接触するように、ケース90に対し位置決めされて配置される。この場合、冷却面82はXZ面に平行な面であるので、冷却器80の1つの面がXZ面に平行となるようにして、その1つの面がリアクトル10の冷却面82に接触するように、冷却器80が配置される。図2、図3では冷却器80の配置部材の図示が省略されている。なお、冷却器80の配置部材とケース90とを一体化するものとしてもよい。
【0042】
リアクトル10について、リアクトルコア12の環状形状を形成する面をXZ面として図3のように配置するときは、4つの保持ステイ部60,62,64,66の配置は次のようになる。すなわち、冷却面82側に、第1ギャップ部40に遠い保持ステイ部60と、第2ギャップ部42に遠い保持ステイ部66が配置される。そして、冷却面82と反対側の正面側に、第1ギャップ部40に近い保持ステイ部64と、第2ギャップ部42に近い保持ステイ部62が配置される。
【0043】
また、4つの保持ステイ部60,62,64,66のZ方向に沿った位置である高さ位置が次のようになる。すなわち、第1ギャップ部40に遠い保持ステイ部60の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部42に遠い保持ステイ部66の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有する。また、第1ギャップ部40に近い保持ステイ部64の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部42に近い保持ステイ部62の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有する。このそれぞれの高さ位置に合わせて、4つの保持柱70,72,74,76の上下方向に沿った高さ位置が設定される。
【0044】
このように、保持柱70,72,74,76の各高さ位置を、保持ステイ部60,62,64,66が取り付けられるように設定し、保持柱70,76を冷却面82側に配置する。これによって、第1ギャップ部40、第2ギャップ部42から遠い保持ステイ部60,66を用いて、冷却面82側にリアクトル10を取り付けることができる。これによって、振動源となる第1ギャップ部40、第2ギャップ部42からの振動が冷却器80に伝播することを抑制できる。
【0045】
上記のように、保持ステイ部60,66の剛性は、保持ステイ部62,64の剛性よりも大きい。具体的には、図1から図3に示されるように、保持ステイ部60,66の板厚は、保持ステイ部62,64の板厚よりも厚い。これにより、第1ギャップ部40、第2ギャップ部42からの振動を冷却器80に伝播することをさらに効果的に抑制できる。
【0046】
上記では、リアクトル10の配置方法として、リアクトルコア12の環状形状を形成する面を上下方向に沿った面としている。具体的には、図1に示されるように、環状形状を形成する面をXZ面となるようにし、そのとき、第1ギャップ部40、第2ギャップ部42の面をXY面に平行とした。
【0047】
環状形状を形成する面をXZ面となる配置は、もう1つ、第1ギャップ部40、第2ギャップ部42の面をYZ面に平行とする方法がある。図4はそのようなリアクトル11の配置を示す図である。このリアクトル11は、一対のコイル50,52が配置されたリアクトルコア12を、図1の配置に対し、XZ平面で90度回転させた配置を有するものに相当する。
【0048】
このリアクトル11においても、冷却面82側に、第1ギャップ部40に遠い保持ステイ部60と、第2ギャップ部42に遠い保持ステイ部66が配置される。そして、冷却面82と反対側の正面側に、第1ギャップ部40に近い保持ステイ部64と、第2ギャップ部42に近い保持ステイ部62が配置される。このような配置とすることで、図1から図3に関連して説明した作用と効果を同様に発揮する。
【0049】
上記では、リアクトルコア12における2つのコイル50,52の配置について、軸方向に沿った位置が同じで、その意味で軸方向に沿って互いに重複するものとして説明した。J字型コアを用いる場合は、図5の構成を用いることができる。図5は、リアクトルコア13における2つのコイル51,53の配置が、軸方向に沿って互いに重複しないように、軸方向の位置をずらしてある。
【0050】
図1の構成と図5の構成を比較すると、図1の構成は、第1ギャップ部41、第2ギャップ部43の面に垂直な方向であるZ方向の寸法が、図5の構成に比べ小さくできる。Z方向を高さ方向とすれば、図1の構成は、図5の構成に比べ、リアクトルコアおよびリアクトルの高さを低くできる。
【0051】
一方、図5の構成は、第1ギャップ部41、第2ギャップ部43の面の延びる方向あるいはコイル51,53の径方向であるX方向の寸法が、図1の構成に比べ小さくできる。X方向を幅方向とすれば、図5の構成は、図1の構成に比べ、リアクトルコアおよびリアクトルの幅を小さくできる。
【0052】
リアクトルが電源装置等に配置されるときに、他の構成要素を含めた配置条件の下で、その高さ方向に制約があるときは、リアクトルの高さを低くできる図1の構成を用いることができる。電源装置等の配置条件の下で、その幅方向に制約があるときは、リアクトルの幅を小さくできる図5の構成を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るリアクトルは、電源装置に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
10,11 リアクトル、12,13 リアクトルコア、14 モールド部、20,30 鉄心、21,31 胴部、22,24,32,34 脚部、40,41 第1ギャップ部、42,43 第2ギャップ部、50,51,52,53 コイル、60,62,64,66 保持ステイ部、70,72,74,76 保持柱、78 ベース、80 冷却器、82 冷却面、90 ケース、100 リアクトル装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる長さの2つの脚部を有する一対の鉄心について、一方側の鉄心の2つの脚部の長い方の脚部と、他方側の鉄心の2つの脚部の短い方の脚部とを対向させてその対向隙間を第1ギャップ部とし、一方側の鉄心の2つの脚部の短い方の脚部と、他方側の鉄心の2つの脚部の長い方の脚部とを対向させてその対向隙間を第2ギャップ部として組み合わせ、環状形状を形成するリアクトルコアと、
リアクトルコアの環状形状において、第1ギャップ部に巻回される第1のコイルと、第2ギャップ部に巻回される第2のコイルの一対のコイル部と、
リアクトルを外部に取り付けるためにリアクトルの4方の隅部に設けられる4つの保持ステイ部であって、
第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の剛性が、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の剛性よりも小さい4つの保持ステイ部と、
を備え、
第1のコイルの外周面と第2のコイルの外周面のうちでリアクトルコアの環状形状を形成する面に平行な面を共通の冷却面としてリアクトルを外部に取り付けるときに、
冷却面側に第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部とを配置することを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載のリアクトルにおいて、外部に取り付ける際に、
リアクトルコアは、環状形状を形成する面を上下方向に沿った面として配置され、
一対のコイルの冷却面は、上下方向に沿った面に平行に配置され、
保持ステイ部は、
第1ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有し、
第1ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置は、第2ギャップ部に近い保持ステイ部の上下方向に沿った高さ位置と異なる高さ位置を有することを特徴とするリアクトル。
【請求項3】
請求項2に記載のリアクトルにおいて、
第1ギャップ部に近い保持ステイ部と第2ギャップ部に近い保持ステイ部の板厚は、第1ギャップ部に遠い保持ステイ部と第2ギャップ部に遠い保持ステイ部の板厚よりも薄いことを特徴とするリアクトル。
【請求項4】
請求項3に記載のリアクトルにおいて、
一対のコイルは、
第1のコイルと第2のコイルとが、軸方向に沿って互いに重複しないように軸方向の位置をずらしてリアクトルコアに配置されることを特徴とするリアクトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−231069(P2012−231069A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99519(P2011−99519)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】