説明

リアシ―トバック廻りの車体構造

【発明の詳細な説明】
<産業上の利用分野> この発明は、リアシートバック廻りの車体構造(以下、単に「車体構造」という)に関する。
<従来の技術> 従来の車体構造は、第3図に示すように、真ん中のシートバックセンタ1a、左右両側のシートバックサイド1b及び下部のシートバックロア1cの各部材を接続してなるリアシートバック1が、シートバックサイド1bの端部をホイルハウスインナ2に掛けるようにして車幅方向で車幅全体に亘って配され、このリアシートバック1が、リアシートバック1の上端部に接続するパーセル3と共に、図示せぬトランクルームと車室との境を形成しており、さらにリアシートバック1の後部、つまりトランクルーム側にリアショックアブブラケット4が左右対称にして設けられた構造となっている。また、リアシートバック1には、ハーネス5やシートベルト6を通すための通孔が複数設けられているが、これらの通孔にはウレタンスポンジのような目張り部材7が施されている。尚、車体構造は左右対称なので図中には半分だけを表している。(実開昭62−192952号公報参照)
<発明が解決しようとする課題> しかし、このような車体構造の場合には、リアシートバック1自体にそれ程遮音性がないため、トランクルームA側からの外部音が有効に遮音されず、車室B内の静謐性について不十分な点があった。
また、このような車体構造では、リアショックアブブラケット4の強度、特に路面突上げ力に対する強度を確保するために溶接スポットの点数増やすとか、あるいは何らかの補強部材を付加するとかの処置が必要であった。
そこで、この発明では、トランクルーム側からの外部音の遮音と、リアショックアブブラケットの補強とを一挙になし得るような車体構造の提供を目的としている。
<課題を解決するための手段> このような目的を達成するために、トランクルーム内のリアショックアブブラケットに対応する前後位置に、リアシートバックに準じた高さを有する略垂直な鉄製の隔壁を車幅方向全面にわたって設け、且つ該隔壁が隔壁の上端部から後方へ曲折形成されてパーセルに対向した状態となる上面隔壁を一体的に有すると共に、前記隔壁の側端部をリアショックアブブラケットの略車両前後中央部から車体側部にかけて固着し、且つ上面隔壁の後端部をリヤウエスト部に固着することとしている。
<作用> このような車体構造によると、高遮音性を有する鉄製の隔壁によりトランクルーム側からの外部音が有効に遮音されて車室内の静謐性が改善し、しかもこのような機能を持つ隔壁が同時にリアショックアブブラケットの補強にも、あたかも大きな補強フランジを設けたような状態になって働き、リアショックアブブラケット上面の路面突上げ力に対する強度が大きく向上する。したがって、この車体構造によると、車室内の静謐性の改善と同時に、従来行われていたリアショックアブブラケットの補強処理を不要化でき一挙両得となる。
<実 施 例> 以下、この発明による車体構造の実施例を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明では、上述した従来例と共通する部分及び各実施例に共通する部分には同一符号を付すにとどめ重複する説明は省略するものとする。
この車体構造では、リアシートバック1の後方のトランクルームA内におけるリアショックアブブラケット4に対応する位置に、略垂直な隔壁10が設けられており、該隔壁10とリアシートバック1との間に適宜の間隔が空いた状態となっている。
隔壁10は、トランクルームA側からの外部音を有効に遮音するためのもので、高遮音性を有する鉄で作られており、リアシートバック1の高さに準じた高さで且つ車幅方向全面にわたるようにされるもので、更にこの隔壁10は上端部から後方へ曲折形成されてパーセル3に対向した状態となる上面隔壁10eを一体的に有している。
また、隔壁10の周縁には接続用のフランジ11が曲折・形成されており、このフランジ11を介して、隔壁10の側端部がリアショックアブブラケット4の略車両前後中央部(上面及び側面の略車両前後中央部)、及びホイルハウスインナ2の表面から、隣接する車体側部にかけて溶接(固着)されている。更に、隔壁10の下端部のフランジ11はリアフロア12にも溶接されている。加えて、上面隔壁10eの後端部は車幅方向に沿って形成された閉断面リヤウエスト部15に溶接(固着)されている。
このように、隔壁10の端部を固着させることにより、特にリアショックアブブラケット4については、あたかも大きな補強フランジを表面に直交状態で形成した状態になり、路面突上げ力に対する強力な補強がなされた状態になる。
リアシートバック1と隔壁10とで囲われた部分に空間Sが形成されることになるが、この空間Sは各種の電子ユニット13、14等の収納場所として有効に利用され、さらにこのように空間Sに各種の電子ユニット13、14等を統合配置することによりハーネス経路の単純化をも図るようにしている。
<発明の効果> この発明に係る車体構造は、以上説明してきた如く、リアシートバックの後部に高遮音性を有する鉄製の隔壁をリアシートバックの高さに準じた高さで且つ車幅方向全面に亘って設け且つ、この隔壁の側端部をリアショックアブブラケットの略車両前後中央部に固着するようにしているので、高遮音性の隔壁によりトランクルーム側からの外部音が有効に遮音されて車室内の静謐性が改善し、しかもこのような機能を持つ隔壁が同時にリアショックアブブラケットの補強に強力に働き、リアショックアブブラケット上面の路面突上げ力に対する強度が大きく向上することになり、車室内の静謐性の改善と同時に、従来行われていたリアショックアブブラケットの補強処理を不要化することができるという一挙両得の効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明による車体構造の概略部分斜視図、
第2図は、第1図中の矢示II−II線に沿う概略断面図、そして
第3図は、従来の車体構造の概略部分斜視図である。
1……リアシートバック
3……パーセル
4……リアショックアブブラケット
10……隔壁
10e……上面隔壁
15……リアウエスト部
A……トランクルーム
B……車室

【特許請求の範囲】
【請求項1】車幅方向に配されたリアシートバックの上端部から後方へ向けてパーセルが形成されており、且つ該パーセルの後端部には閉断面のリヤウエスト部が車幅方向に沿って形成されており、リアシートバック後方のトランクルーム内にリアショックアブブラケットが配されているリアシートバック廻りの車体構造において、前記トランクルーム内のリアショックアブブラケットに対応する前後位置に、リアシートバックに準じた高さを有する略垂直な鉄製の隔壁を車幅方向全面にわたって設け、且つ該該隔壁が隔壁の上端部から後方へ曲折形成されてパーセルに対向した状態となる上面隔壁を一体的に有すると共に、前記隔壁の側端部をリアショックアブブラケットの略車両前後中央部から車体側部にかけて固着し、且つ上面隔壁の後端部をリヤウエスト部に固着したことを特徴とするリアシートバック廻りの車体構造。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【特許番号】第2530030号
【登録日】平成8年(1996)6月14日
【発行日】平成8年(1996)9月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−294932
【出願日】平成1年(1989)11月15日
【公開番号】特開平3−157278
【公開日】平成3年(1991)7月5日
【出願人】(999999999)日産自動車株式会社
【参考文献】
【文献】実開昭55−101663(JP,U)