説明

リアルタイムPCRのプライマー設計方法

【課題】 リアルタイムPCRにおけるプライマー設計方法を提供する。
【解決手段】 プライマーの設計条件に基づいて既知のプライマー検索アルゴリズムを利用してプライマーセットを検索し、検索したプライマーセットを、スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示し、更に、絞込み条件によって絞り込まれたプライマーセットを、スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアルタイムPCR (以下、RT-PCRと表記する。)におけるプライマーの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の発現量を比較する手段の一つとして、細胞内のmRNA蓄積量を定量する方法が広く用いられている。mRNAの蓄積量を測定する方法として近年RT-PCRが広く利用される。RT-PCRを用いてmRNAの蓄積量を測定する一般的な手順を説明する。異なる条件下で育成したサンプル、もしくは同一の条件下で育成した且つ異なる系列のサンプルを用意し、目的とする組織からmRNAを抽出する。抽出したmRNAをテンプレートとして目的となる遺伝子特異的なプライマーセット及び、2本鎖に結合し発色する蛍光色素を含む条件でPCRを行う。反応と並行して反応液中の蛍光強度を測定することにより、2本鎖構造の核酸の数を測定する。増加した蛍光強度から、増幅産物量を定量する。
【0003】
PCRは非常に高感度であるため、理論的には、数コピーのテンプレートからでも増幅が可能である。抽出したmRNAにゲノムDNAが混入している場合、ゲノムDNAをテンプレートとした増幅も起きる。従って、PCR産物には、mRNAをテンプレートとしたものとゲノムDNAをテンプレートとしたものの両者が含まれる。そのため、正確なmRNA量を測定できない。
【0004】
図1を参照してテンプレートの種類とPCR産物の長さの関係を説明する。真核生物を用いた実験系では、目的の遺伝子がスプライシングされる場合、異なるエキソン上にそれぞれのプライマーを設計する。ゲノムDNA101は、イントロン102とエキソン103を有し、センス鎖側のプライマー104を右向き矢印、ナンセンス鎖側のプライマー105を左向き矢印で表現する。ゲノムDNA 101をテンプレートとした場合、PCR産物106はイントロンの部分を含む。mRNA110をテンプレートとした場合、PCR産物111はイントロンの部分を含まないのでゲノムDNAをテンプレートとした場合よりも長さが短い。PCR産物の長さからゲノムDNAをテンプレートとした増幅産物とmRNAをテンプレートとした増幅産物を区別することができる。このためイントロン部分を挟んだエキソン上にプライマーを設計する方法が必要となる。
【0005】
また、測定したmRNA量を異なるサンプル間で比較するとき、検量線を作成する必要がある。理論上、PCRにおける温度サイクルが1サイクル異なる場合、テンプレート量は2倍異なる。しかし実際には、実験条件、標的となる塩基配列、プライマー配列により、実験ごとに異なる。そこでプライマーの標的となる塩基配列のみを含むPCR産物を調製し、標的となる塩基配列のみを含むDNAの希釈系列をテンプレートとして用いることで検量線を作成し、異なるサンプル間でのmRNA量を比較する方法がとられている。このため、mRNA量を測定するプライマーの標的となる塩基配列のみを含むテンプレートを作成するためのプライマーを設計する方法が必要である。
【0006】
【特許文献1】特開2001−245697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RT-PCRを用いた実験では、実験を支援するツールとしてイントロンを挟んだ位置にプライマーを設計する機能が必要となる。この機能を実現するに当たり、以下3つの条件を満たしている必要がある。
(1)既知の研究により目的となる遺伝子のゲノム塩基配列及びmRNA塩基配列が決定されていること。(2)実験により測定可能な長さのイントロンを挟むエキソン上で、スプライシングサイトを含まない位置にプライマーを設計できること。(3)設計したプライマーの情報を、検量線作成用及び定量用としてわかりやすく表示し、比較検討しやすいこと。
【0008】
本発明の目的は、上記3つの条件のうち、2及び3を解決し、リアルタイムPCRのプライマーを簡単に設計することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリアルタイムPCRのプライマー設計方法は、
標的となる遺伝子の塩基配列データを入力する塩基配列データ入力ステップと、
上記塩基配列データにスプライシング情報が含まれるか否かを判定する判定ステップと、
該判定ステップにてスプライシング情報が含まれていないと判定したときにスプライシング情報を取得するスプライシング情報取得ステップと、
イントロンを挟んだエキソンの位置にプライマーを設計するためのプライマーの設計条件を入力するプライマー設計条件入力ステップと、
上記プライマーの設計条件に基づいて既知のプライマー検索アルゴリズムを利用してプライマーセットを検索するプライマーセット検索ステップと、
上記検索したプライマーセットを、上記スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示する表示ステップと、
上記表示されたプライマーセットを絞り込むための条件を入力する絞込み条件入力ステップと、
上記絞込み条件によって絞り込まれたプライマーセットを、上記スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示するステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、リアルタイムPCRのプライマーを簡単に設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施する場合の一形態を、図面を参照して具体的に説明する。図2は、本発明によるRT-PCRプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。本例のRT-PCRプライマー設計装置は、標的となる遺伝子の塩基配列データ及びスプライシング情報を有するファイル 200 、プライマー設計のパラメータ入力画面、及び、設計したプライマーの情報を表示するための表示装置 201 、キーボード及びマウスを含む入力手段202、設計したプライマー情報を有するファイル203、中央処理装置 204 、及び、各種のプログラムを格納するプログラムメモリ 205 を備える。
【0012】
プログラムメモリ205には、検索プログラム 206 及び、描画プログラム 207 が格納されている。検索プログラム206 は、スプライシング情報の算出処理を行うスプライシング情報算出処理プログラム 208 及びプライマー設計処理、即ち、プライマー配列を検索するプライマー配列検索プログラム 209 を備える。描画プログラム 207 は、テンプレートとして選択するファイルを入力するための画面を表示するファイル選択プログラム 210 、プライマー設計のパラメータ(条件)を入力するための画面を表示するパラメータ入力プログラム 211 、プライマー検索結果を絞り込む画面を表示する再検索画面表示プログラム 212 、及び、mRNA量測定用のプライマーの詳細情報画面を表示する詳細情報表示プログラム 213を備える。プライマー設計処理はウイザード形式で実行される。これらのプログラムが実行されると、ダイアログ形式の画面が表示される。本例のプライマー設計装置により処理を開始すると、先ず、ファイル選択プログラム 210が実行され、図3の画面が表示される。
【0013】
図3は、ファイル選択プログラム 210が実行されるときに表示されるファイルを選択するための画面の例を示す。この画面は、アノテーション情報を持つファイルをテンプレートとして用いることを選択するためのラジオボタン 300 と、アノテーション情報を持たないファイルをテンプレートとして用いることを選択するためのラジオボタン 301を有する。アノテーション情報を持つファイルとして、ここでは、公共の遺伝子データベースのファイルを挙げる。アノテーション情報を持たないファイルとして、例えば、ユーザが用意したゲノムDNA及びmRNAの塩基配列データがある。ユーザは、どちらか一方のラジオボタンを選択する。選択したフィールドは、入力可能な状態となり、選択しなかったフィールドは、入力不可の状態になる。
【0014】
ボタン 300を選択すると、公共の遺伝子データベースのファイルのリストを表示するボタン 303 がクリック可能となる。ボタン 303をクリックし、ファイルを選択すると、選択したファイルのパスがテキストボックス 302 に表示される。
【0015】
ボタン 301を選択すると、ゲノムDNA塩基配列のファイルのリストを表示するボタン 305 及びmRNA塩基配列のファイルのリストを表示するボタン 307がクリック可能となる。ボタン 305、307をクリックし、ファイルを選択すると、選択したファイルのパスがテキストボックス 304、306に表示される。尚、テキストボックス302、304、306にユーザが直接パスを入力してもよい。
【0016】
処理を中止する場合は、キャンセルボタン 308 を、続行する場合は次の処理に進むボタン 309 を押下する。
【0017】
ボタン 300が選択されている場合に、ボタン309を押下すると、パラメータ入力プログラム 211が実行され、図4の画面が表示される。ボタン301が選択されている場合に、ボタン309を押下すると、スプライシング情報算出処理プログラム208が実行され、スプライシング情報が取得される。こうしてスプライシング情報が取得されてから、パラメータ入力プログラム 211が実行され、図4の画面が表示される。
【0018】
尚、ここでは、公共の遺伝子データベースのファイルには、スプライシング情報が含まれ、ユーザが用意したゲノムDNA及びmRNAの塩基配列データには、スプライシング情報が含まれていないと仮定している。しかしながら、公共の遺伝子データベースのファイルにスプライシング情報が含まれない場合もあり、ユーザが用意したゲノムDNA配列データ及びmRNAの塩基配列データからスプライシング情報を求める場合もある。
【0019】
図4は、パラメータ入力プログラム 211が実行されるときに表示されるプライマー設計の条件(パラメータ)を入力するための画面の例を示す。この画面は、スプライシング情報を表示するフィールド 400 、プライマーの検索条件を入力するフィールド 410 、PCR産物の条件を入力するフィールド 420 、設計のオプションを指定するフィールド 430 を含む。フィールド400には、遺伝子名401とスプライシング情報が模式図で表示される。スプライシング情報は、模式的に表示されたmRNA塩基配列402、全長403、イントロン番号404、エキソン番号405及び、スプライシングによって除かれるイントロン配列の長さ406、及び、スプライシングによる結合位置407 を含む。
【0020】
フィールド410には、設計するプライマーの長さと値幅411、Tm値412、GC含量413及び、プライマーの3’末端がGまたはCであるもののみ対象とするオプションを指定するチェックボックス414を含む。フィールド420は、設計したプライマーによるPCR産物の長さと値幅421、PCR産物の長さの違いの最小値[ ゲノムDNAをテンプレートとした場合のPCR産物の長さ − mRNAをテンプレートとした場合のPCR産物の長さ ]を入力するテキストボックス422、及び、イントロンの比率の最小値[ イントロンの長さ / mRNAをテンプレートとした場合のPCR産物の長さ ×100]を入力するテキストボックス423を有する。ユーザは、2つのテキストボックス422、423の一方を入力する。
【0021】
フィールド430は、各プライマーを設計する左右両側のエキソン番号を指定するチェックボックス431と、エキソンの間に挟むイントロン番号を指定するチェックボックス432を含む。2つのチェックボックス431、432の両方を同時に選択することも可能である。複数のエキソン番号及びイントロン番号を入力する場合には、番号の間に「,」を挿入すればよい。また、画面には、図3のデータ入力画面に戻るボタン 441 及び、次の処理に進むボタン442 を含む。ボタン442を押下した場合、プライマー配列検索プログラム209 が実行される。プライマー配列検索プログラム209 の実行中に図5に示す画面が表示される。
【0022】
図5は、再検索画面表示プログラム 212が実行されるときに表示される検索結果を絞り込むための条件を入力するための画面の例を示す。この画面は、検索されたプライマーセットの総数を表示するテキストボックス 500 、検索されたセンス鎖側のプライマー総数を表示するテキストボックス 501 、検索されたナンセンス鎖側のプライマー総数を表示するテキストボックス 502 、表示する結果を絞り込むためのパラメータを入力するフィールド 503 、プライマーの組み合わせの中で最も条件に一致しているプライマーのみを表示するオプションを指定するチェックボックス 504 を含む。フィールド 503には、Tm値、GC含量、及び、プライマーの長さの各範囲を含む。
画面は、更に、リフレッシュボタン505、図4のプライマー設計の条件を指定するダイアログ画面に戻るためのボタン 506 及び、次の処理に進むボタン 507 を含む。フィールド503に絞込みの条件を入力した後、リフレッシュボタン505を押下すると、条件に一致したプライマー情報のみが抽出され、テキストボックス500、501、502の値に反映させる。ボタン507をクリックすると、詳細情報表示プログラム 213 が実行され、図6に示す画面が表示される。
【0023】
図6は、詳細情報表示プログラム 213 が実行されるときに表示されるmRNA量測定用プライマー設計の詳細結果を表示する画面の例を示す。この画面は、プライマー情報を模式図で表示するフィールド 600 及び、フィールド600で選択したプライマーセットの詳細情報を表示するフィールド 610 を有する。フィールド600は、標的となる遺伝子のスプライシング情報を表示するフィールド601に加えて、プライマーセットの位置情報を表示するフィールド602を有する。プライマーセットは、一つのセンス鎖側のプライマーに対する複数のナンセンス鎖側のプライマーを1プライマーセットとして、扱う。プライマーセットの位置情報が一度に表示できない場合には、スクロールバー 603 によって表示範囲を移動させる。
【0024】
フィールド 602より、1セットのプライマーセットに相当する行を選択すると、そのプライマーセットの詳細情報がフィールド610に表示される。フィールド610には、プライマー名、プライマーの塩基配列、mRNA塩基配列上でプライマーの5’末端が相補的に結合する位置、プライマーの長さ、プライマーのTm、GC含量、mRNAをテンプレートとした場合とゲノムDNAをテンプレートとした場合のPCR産物の長さが表示される。
【0025】
フィールド610には、全てのプライマーセットを選択するためのチェックボックス 613と1組のプライマーセットを選択するためのチェックボックス 614 が含まれる。また、この画面は、さらに、全てのプライマーセットをチェックするためのボタン615 、検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマー設計に進むボタン 616 、前の処理に戻るボタン 617 、プライマー設計を終了し、選択したプライマーの情報をファイル203に出力するボタン 618 を含む。
【0026】
ボタン616は、チェックボックス 614が選択されている場合に、クリックすることができる。即ち、検量線作成用のテンプレートを調製する場合には、1組のプライマーセットを選択する。ボタン616をクリックすると、プライマー設計のパラメータに、チェックボックス 614によって選択された1組のプライマーセットで挟まれた領域を対象外とする条件を加えて、プライマー設計を行う。次に、図5の表示結果を絞り込むための画面が再び表示され、上述の手順で操作を行う。図5の画面のボタン 507 を押下すると、図7に示す、検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマーの結果を表示するための画面が表示される。
【0027】
図7は、検量線作成用テンプレートを調整するためのプライマー設計の結果を表示する画面の例を示す。この画面は、プライマー情報を模式図で表示するフィールド 700 及び、フィールド700で選択したプライマーセットの詳細情報を表示するフィールド 710 を有する。本例では、スプライシング情報を表示するフィールド701に、図6の画面のチェックボックス614にて選択した測定用プライマーセットの位置情報 703 が表示されている。また、画面は、全てのプライマーセットをチェックするボタン 713 、前の処理に戻るボタン 714 、プライマー設計を終了し、選択したプライマーの情報をファイル203に追加するボタン 715 を含む。フィールド 702より、1セットのプライマーセットに相当する行を選択し、ボタン715を押下すると、選択した検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマー設計の結果が、選択した測定用プライマー情報に追加され、図6の画面に戻る。
【0028】
図8は、本発明によるプライマー設計装置の処理の概略を示す。ステップS801にて、塩基配列データを入力し、ステップS802にて、入力された塩基配列データがスプライシング情報を持っているか否かを判定する。上述のように、図3のテンプレートとして公共の遺伝子データベースのファイルを用いることを選択するためのラジオボタン 300 がクリックされた場合には、塩基配列データはスプライシング情報を含むので、ステップS804に進む。図3のテンプレートとしてユーザが用意したゲノムDNA及びmRNAの塩基配列データを用いることを選択するためのラジオボタン 301がクリックされた場合には、塩基配列データはスプライシング情報を含まないから、ステップS803に進む。ステップS803にて、スプライシング情報を算出する処理を行う。ステップS803の詳細は、図9を参照して説明する。ステップS804にて、図4の画面が表示される。この画面には、スプライシング情報を表示するフィールド400とプライマーの設計条件(パラメータ)を入力するためのフィールド410、420、430が含まれる。ステップS805にて、入力されたパラメータに基づいて、プライマー設計処理を行う。ステップS805の詳細は、図10を参照して説明する。ステップS806にて、検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマー設計を行うか否かを判定する。検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマー設計を行う場合には、ステップS807にて、図6の画面のチェックボックス614にて選択した測定用プライマーセットで挟まれた領域を処理の対象外として設定し、再びプライマー設計処理を行う。ステップS808にて、設計したプライマー情報をファイル203に出力し、処理を終了する。
【0029】
図9は、ステップS803のスプライシング情報を算出する処理の概略を示す。この処理は、スプライシング情報算出処理プログラム 208 によって実行される。ステップS901にて、ゲノムDNA及び、mRNA塩基配列データを入力する。ステップS902にて、塩基配列を文字配列として処理し、変数「DNA位置」及び変数「mRNA位置」に初期値0を代入する。エキソンの数をカウントする変数「exon番号」に初期値0を代入する。ステップS903にて、mRNA塩基配列の「mRNA位置」から10文字を文字列「検索配列」に代入する。ステップS904にて、ゲノムDNA塩基配列に対して一致する配列を「DNA位置」から検索する。スプライシングによるmRNA塩基配列は全てゲノムDNA塩基配列に含まれる。ステップS905にて、一致する配列が存在するか否かを判定する、一致する配列が存在しない場合は入力データが間違っているので、処理を終了する。一致する配列が存在する場合は、ステップS906にて、ゲノムDNA塩基配列の一致した文字の添字を一致位置とし、変数「exon開始位置」及び、「DNA位置」に代入する。この場合、エキソンが存在するので、「exon番号」をインクリメントする。ステップS907にて、「mRNA位置」及び「DNA位置」をインクリメントする。
【0030】
ステップS908〜ステップS910は、検索ループである。この検索ループでは、ゲノムDNA塩基配列の「DNA位置」番目の次の文字と、mRNA塩基配列の「mRNA位置」番目の次の文字を比較し、一致する場合には、ステップS909にて、「mRNA位置」及び「DNA位置」のインクリメントし、再度、一致するか否かを判定する。一致しなくなるまで比較を繰り返す。一致しなくなったら、エキソンの終了を意味するので、ステップS911に進む。
【0031】
ステップS911にて、「DNA位置」を変数「exon終了位置」に代入し、「exon番号」「exon開始位置」「exon終了位置」をスプライシング情報に追加する。
【0032】
ステップS912にて、「mRNA位置」がmRNA配列の最後であるか否かを判定する。「mRNA位置」がmRNA配列の最後でない場合には、ステップS903に戻る。「mRNA位置」がmRNA配列の最後である場合には、ステップS913にて、スプライシング情報を出力する。
【0033】
図10は、ステップS805の目的の領域からプライマーに適した配列を検索する処理の概略を示す。この処理は、プライマー配列検索プログラム209 によって実行される。ステップS1001にて、図4のフィールド410、420、430に入力されたプライマー設計の条件(パラメータ)を取得する。ステップS1002にて、パラメータ値が正当であるか否かを判定する。不正な値が入力された場合はステップS1003に進み、再入力を促す。パラメータが正当な場合は、ステップS1004にて、既存のプライマー検索アルゴリズムにパラメータを渡し、プライマーに適した配列の検索処理を行う。ステップS1005にて、検索結果より、センス鎖側のプライマーに対して、位置関係が条件と一致するナンセンス鎖側のプライマーを検索し、プライマーセットとしてグループ化する。ステップS1006にて、図6のフィールド602に、得られたプライマー情報を表示する。ステップS1007にて、表示する情報を絞り込むか否かを判定する。即ち、図5のリフレッシュボタン505がクリックされたか否かを判定する。絞り込む場合は、ステップS1008にて、図5のフィールド503に入力された条件に該当するプライマー情報の検索を行う。ステップS1009にて、図6のフィールド602に、該当するプライマーセットの詳細情報を表示し、ステップS1010にて、ユーザが選択したプライマーセットの情報を取得して処理を終了する。
【0034】
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】テンプレートの種類とPCR産物の長さの関係を説明するための図である。
【図2】本発明によるRT-PCRプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図3】データを入力するための画面の例を示す図である。
【図4】プライマー設計のパラメータを入力するための画面を示す図である。
【図5】表示結果を絞り込むための画面を示す図である。
【図6】測定用プライマーの結果を表示するための画面を示す図である。
【図7】検量線作成用のテンプレートを調製するためのプライマーの設計結果を表示するための画面を示す図である。
【図8】本発明による処理の概略を示すフローチャートである。
【図9】スプライシング情報を算出する処理を示すフローチャートである。
【図10】目的の領域からプライマーに適した配列を検索する処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
101…ゲノムDNA、102…イントロン、103…エキソン、104…センス鎖側プライマー、105…ナンセンス鎖側プライマー、106…PCR産物、110…mRNA、111…PCR産物、200…ファイル、201…表示装置、202…入力手段、203…ファイル、204…中央処理装置、205…プログラムメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的となる遺伝子の塩基配列データを入力する塩基配列データ入力ステップと、
上記塩基配列データにスプライシング情報が含まれるか否かを判定する判定ステップと、
該判定ステップにてスプライシング情報が含まれていないと判定したときにスプライシング情報を取得するスプライシング情報取得ステップと、
イントロンを挟んだエキソンの位置にプライマーを設計するためのプライマーの設計条件を入力するプライマー設計条件入力ステップと、
上記プライマーの設計条件に基づいて既知のプライマー検索アルゴリズムを利用してプライマーセットを検索するプライマーセット検索ステップと、
上記検索したプライマーセットを、上記スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示する表示ステップと、
上記表示されたプライマーセットを絞り込むための条件を入力する絞込み条件入力ステップと、
上記絞込み条件によって絞り込まれたプライマーセットを、上記スプライシング情報及び塩基配列と併せて視覚的に表示するステップと、
を有するリアルタイムPCRのプライマー設計方法。
【請求項2】
請求項1記載のリアルタイムPCRのプライマー設計方法において、
上記プライマーの設計条件は、イントロンの左右両側のエキソン番号又はエキソンの間に挟まれるイントロン番号を含むことを特徴とするリアルタイムPCRのプライマー設計方法。
【請求項3】
請求項1記載のリアルタイムPCRのプライマー設計方法において、
更に、検量線作成用のテンプレートを調製するためにプライマーを設計する設計ステップを有し、
該設計ステップは、選択された1組のプライマーセットを、塩基配列と併せて視覚的に表示する表示ステップと、
上記選択された1組のプライマーセットで挟まれた領域を処理の対象外として上記プライマーセット検索ステップを実行することと、
を含むことを特徴とするリアルタイムPCRのプライマー設計方法。
【請求項4】
請求項1記載のリアルタイムPCRのプライマー設計方法において、
上記表示ステップは、標的となる遺伝子のmRNA塩基配列を線図によって表示し、該mRNA塩基配列に沿って、イントロン番号、エキソン番号、スプライシングによって除かれるイントロン配列の長さ、及び、スプライシングによる結合位置を表示し、上記mRNA塩基配列に対応して、プライマーセットの位置情報を表示することを特徴とするリアルタイムPCRのプライマー設計方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のリアルタイムPCRのプライマー設計方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータに読み取り可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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