説明

リガンド結合温熱療法サセプタおよびその作成方法

【解決手段】 温熱療法に適用した際に増強した加熱能を示す磁性ナノ粒子を、そうしたナノ粒子を複合体化する幾つかの戦略として記述した。複合体化ナノ粒子の利用方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書は2007年11月13日に出願された米国仮出願第61/013,412号の米国特許法119条(e)の下における優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によってその全体が取り込まれるものである。
【0002】
本発明は、治療用ナノ粒子組成物、およびより具体的には温熱療法用のリガンド結合ナノ粒子およびそのような粒子の作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
例えば癌および病原体に基づく疾患等の疾病の標準的な治療は、侵襲的でしばしばほんのささやかな成功のための外傷性治療過程に終わる有害な副作用(例えば、正常細胞への毒性、通常の身体機能の崩壊)を伴うであろう治療を含む。癌の標準的な治療は、例えば、放射線および/または化学療法等の全身的治療に先んじて行われる手術を含む局所的治療を典型的に含む。それら技術はいつも有効というわけではなく、有効だとしても、それらは特定の欠陥によって特徴付けられる。例えば、手術による治療は外観の損傷をもたらし、影響された組織の不完全な除去は癌再発のより重大なリスクを伴う。放射線療法および化学療法は患者の身体を疲弊させる可能性があり、再発に対して完全に効果的ではない。
【0004】
他の1例として、病原体に基づく疾患の治療は、最初の段階として広域抗生物質の投与をしばしば含む。この行為はウイルス性病原体に対しては無効であり、食物の適切な消化に必要な腸内の良性の腸内細菌叢をしばしば排除し、良性細菌が再度増殖するまでの間、胃腸障害を引き起こす。他の例では、抗生物質耐性病原菌は抗生物質治療に反応しない。さらに、ウイルス性疾患治療のために設計した治療法はしばしば侵入するウイルスそのもののみを標的としている。ウイルスのさらなるコピーを生産するためにウイルスが侵入して感染した細胞は生存したままとなる。従って、抗生物質治療によって疾患の進行は停止するのではなく、ただ遅延するだけである。
【0005】
標準的な治療に代わるものは免疫療法であり、癌を含む様々なヒト疾患の治療に急速に広まっているアプローチである。抗原結合能、分子構造、および特異性等の変化した特性を有する抗体、抗体フラグメント、およびペプチドが作製可能であることで、ヒト中での免疫原性反応を軽減するためにマウス抗体のキメラ化およびヒト化において進展があり、治療でのそれらの利用が広がった。さらに、ファージディスプレイ技術、リボソームディスプレイ法、およびDNAシャフリングによって、リガンドのターゲティングでの利用において高いアフィニティおよび低い免疫原性を有する抗体フラグメントおよびペプチドの発見が可能となった。それらの進歩はとりわけ、特異的な抗原結合能および最小限の免疫反応を伴う特異性を有する免疫療法の方法設計を可能とした。
【0006】
免疫療法は少なくとも3つの種類に分かれる:(1)成長受容体を標的とする抗体によってサイトカイン経路を乱す、または補体または抗体依存的な細胞毒性を誘導する;(2)抗体に結合した毒、放射性核種、またはサイトカインによって攻撃能力を直接的に与えた抗体;(3)毒を含む免疫リポソームと結合した、または免疫的細胞エフェクターと結合して攻撃能力を間接的に与えた抗体(二重特異性抗体)。毒または放射性核種の輸送に依存する免疫療法の難点は、それら薬剤が常に活性を有することである。そのため、非腫瘍細胞への障害および免疫療法に伴う毒性の問題の可能性がある。例えば、癌細胞は通常、表面に発現する抗原を血流中へ放出し、それらが免疫療法剤の標的となる。その結果、癌細胞ではなく放出された抗原と抗体との相互作用によって、病変組織への到達前に多くの抗体に基づいた治療法は希釈され、従って病変組織に輸送される実際の用量は減少する。
【0007】
それらおよび他の関連する理由から、疾患治療のための代替的および改善された技術、特に既存技術よりも侵襲性および患者に対する外傷性が低い技術を提供することが望ましい。また、病変組織、病原体、または身体中の他の望ましくない物質等の標的部位でのみ有効で、不都合な副作用を最小化して有効性を改善する治療法を提供することが望ましい。さらには、患者による遵守を促すために、1回または非常に少ない治療回数で実施可能な技術を提供することが望ましい。
【0008】
温熱療法は、即座の壊死(典型的には「温熱切除(thermo−ablation)」と言及される)および/または細胞中の熱ショック反応(古典的な加温療法(hyperthermia))を誘導して細胞内の一連の生化学的変化を介した細胞死を引き起こすことから、癌および他の疾患の治療法として有望である。約40℃〜約46℃の温度は病変細胞に不可逆な障害を引き起こすことができ、正常細胞は約46.5℃までの温度への曝露において生存可能なため、病変組織中の細胞の温度を約40℃と約46℃との間まで上昇させることで正常で健康な組織に障害をもたらすことなく病変細胞を選択的に破壊する治療の選択肢を提供することができる。さらに、46℃以上の温度は即座に温熱切除応答(thermo−ablative response)を引き起こすことにより、癌および他の疾患の治療に有効である。しかし、正常組織の最小量がそのような温度に曝露されることを保証するためには、正確で的確なターゲティングが必要である。
【0009】
紫外線、X線、ガンマ、ベータ、アルファ、中性子等の電離放射線、または化学療法と併用して細胞または病変組織へ温熱療法を適用するとしばしば、電離放射線または化学療法の用量の相加的な組み合わせから期待されるよりも著しく大きな、増強された細胞毒性効果をもたらす。例えば、温熱療法と併用した場合、その温熱療法もまた致死量以下で行われた場合であったとしても、併用しなかった場合には致死量以下の用量での化学療法剤または電離放射線のいずれかに対して、細胞は高レベルの感受性を示す。熱または電離放射線のいずれかの用量による障害性の副作用を最小化または回避できるため、そうした併用療法は優れた臨床的な可能性を有している。
【0010】
温熱療法の有益な効果は、温熱療法剤(すなわち、サセプタ)の病変細胞、組織、または病原体への適切なターゲティングによってさらに増加させることができる。
【0011】
一部の温熱療法システムは、患者の深部に位置する腫瘍の領域的な加熱のエネルギーを調整するために、位相同期輪状配列システム(annular phased array systems:APAS)等、マイクロ波または高周波(radio frequency:RF)の加温療法を採用している。それらの技術は、組織導電率および高灌流組織のそれの不均質性によって制限される。典型的な課題は正常組織中の「ホットスポット」とそれに付随する病変組織中での用量不足、および所望の領域へ到達させる熱用量の十分な精度での測定の困難さである。後者は、再現可能および予測可能な治療後の患者の便益を確保するために必要な規定の臨床プロトコルの開発を妨げる。それら全ての要因は、そうした温熱療法システムによる特定領域の選択的な加熱を非常に困難にしている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願明細書に記述する発明はリガンド結合粒子に関するものであり、特定の実施形態では、リガンド結合粒子は温熱療法剤とすることができる。
【0013】
様々な実施形態のリガンド結合粒子は、単一の磁性領域を形成するアミノ官能性ナノ粒子;アミノ官能性ナノ粒子と結合した少なくとも1つのリンカー;およびアミノ官能性ナノ粒子またはリンカーと共有結合した少なくとも1つのリガンドを含むことができる。いくつかの実施形態では、リンカーは二官能基性化合物である。他の実施形態では、リンカーは、ハロアルキル、エポキシド、ビニルヘテロクムレン、エポキシプロペン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせから選択した1若しくはそれ以上のサブユニットを有するマルチサブユニット組成物とすることができる。さらに他の実施形態では、リンカーは1若しくはそれ以上の親水性サブユニットを含むことができ、特定の実施形態では、リンカーは化学的に異なる化合物の混合物とすることができる。例えば、特定の実施形態では、リンカーは少なくとも1つのジエポキシド、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)エポキシエーテル、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、少なくとも1つのエピクロルヒドリン、またはそれらの組み合わせを含むことができ、および一部では、リンカーはエピクロルヒドリンおよびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの混合物を含むことができる。
【0014】
さらなる実施形態のリンカーは、アミン、チオール、ヒドラジン、アジド、ジスルフィド、スルホン酸、カルボン酸、マレイミド、またはそれらの組み合わせから選択した1若しくはそれ以上の末端反応性基を含むことができ、他の実施形態では、リガンド結合粒子の末端基の反応性は置換または付加の化学反応に基づくものとすることができる。特定の実施形態では、カルボン酸はポリ(エチレングリコール)エーテルをベースとしたカルボン酸とすることができ;アジドは5−アジド−2ニトロベンズアミドとすることができ;ジスルフィドは3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミドとすることができ;マレイミドは1,2−ジアシルエテンまたは3−マレイミジルプロピオンアミドとすることができる。
【0015】
様々な実施形態でのアミノ官能性粒子は基礎構造を含み、前記基礎構造は少なくとも1つのリンカー、少なくとも1つのリガンド、および少なくとも1つのキレート剤、またはそれらの組み合わせを含む。
【0016】
特定の実施形態では、リガンドは抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、リガンドは、チオールまたはアミンから選択した基の取り込みによって修飾でき、特定の実施形態では、リガンドはN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテートで修飾することができる。
【0017】
いくつかの実施形態に従って、リガンド結合粒子はさらに生体適合性コーティングを含むことができる。特定の実施形態では、アミノ官能性ナノ粒子の表面が生体適合性コーティングを形成する。
【0018】
様々な実施形態のリガンド結合粒子は温熱療法剤とすることができる。
【0019】
他の実施形態のリガンド結合粒子は、官能性磁性ナノ粒子、および官能性磁性ナノ粒子に結合した少なくとも1つのリンカーを含み、前記リガンド結合粒子の比吸収率(specific absorption rate:SAR)は20nm nanomag(登録商標)−D−spio粒子の少なくとも5倍以上である。特定の実施形態では、リガンド結合粒子は官能性磁性ナノ粒子またはリンカーと共有結合したリガンドをさらに有するものである。
【0020】
様々な実施形態では、本発明の1態様のリガンド結合粒子の有効量を被験者へ投与する工程を含む、被験者で疾患を治療する方法を提供する。
【0021】
本発明の他の実施形態は、アミノまたはニトロ基を有する単一の磁性領域を形成する粒子を官能化する工程と、官能性粒子をリンカーと接触する工程と、リガンド結合粒子を形成するためにリガンドを粒子またはリンカーと共有結合する工程とを含むリガンド結合粒子の調製方法を含む。特定の実施形態では、官能化する工程は約7〜約9のpHにて行う。他の実施形態では、リガンド結合粒子の調製方法は、水性緩衝溶液によってリガンド結合粒子を洗浄する追加工程を含む。いくつかの実施形態では、洗浄する工程は約5〜約8のpHにて行う。さらに他の実施形態では、リガンド結合粒子の調製方法は、リガンド結合粒子を滅菌する工程を含む。いくつかの実施形態に従って、リガンド結合粒子を形成するためにリガンドを粒子またはリンカーと共有結合する工程は、官能性粒子をリンカーと接触する工程から12時間以内に行う。
【0022】
いくつかの実施形態に従ったリガンド結合粒子は10〜80nmの大きさの範囲である。
【0023】
様々な実施形態では、アミノまたはニトロ基を有する単一の磁性領域を形成する粒子を官能化する工程と、官能性粒子をリンカーと接触する工程と、リガンド結合粒子を形成するためにリガンドを粒子またはリンカーと共有結合する工程とを含む処理によって調製した温熱療法用ナノ粒子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の本質および利点のより完全な理解のために、以下の詳細な記述を添付図と関連付けて参照すべきである。
【図1】図1は、本発明の実施形態に従ったサセプタ複合体を図示したものである。
【図2】図2は、サセプタ複合体の調製のための4つの合成戦略を図示したものである。
【図3】図3は、25nm(黒)、50nm(濃灰色)、70nm(淡灰色)の直径を有し、アミノ官能性粒子(II)のサイズ分布のグラフである。
【図4】図4は、200Hzでの平均直径70nmを有する磁性粒子の室温における単位体積当たりの磁化率のインピーダンス分光法データを描いたグラフである。
【図5】図5aは、粒子表面に結合したウサギ抗ヤギ抗体と相互作用可能な2次ヤギ抗ウサギ抗体の2つの可能な方法の概略図である。 図5bは、ウサギ抗ヤギが適切な配置である場合にのみ、ヤギ抗マウス抗体はウサギ抗ヤギ抗体複合体と相互作用可能であることの概略図である。
【図6】図6は、結合した全ての抗体を、図2に図示した戦略を用いて調製した抗体結合粒子の鉄1mg当たりの免疫活性と比較して描いた棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特定の処理、組成物、または記述した方法論は変更ができるため、本発明はそれらに限定されない。また、記述に用いた用語は特定の型または実施形態のみを記述する目的のものであって、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0026】
ほかに定義しない限り、本願明細書で用いる全ての技術的および科学的用語は当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本願明細書に記述したものと類似または同等のあらゆる方法が、本発明の実施例の実施または試験で使用可能であるにもかかわらず、好ましい方法はここに記述するものである。
【0027】
本願明細書で言及する全ての刊行物および参考文献は参照によって取り込まれる。本願明細書中の何物も、先行発明という理由によってそれらの開示に本発明が先行するに値しない事の承認として解釈すべきではない。
【0028】
本願明細書および添付の請求項中で用いる場合、文脈が明らかにそうでないと述べていない限り、単数形の「a」、「an」、および「the」は複数形への言及を含む。
【0029】
本願明細書で用いる場合、「約」という用語は、それと共に用いる数字の数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。従って、約50%とは40%〜60%の範囲を意味する。
【0030】
本発明の治療用ナノ粒子組成物と共に「投与する」を本願明細書で用いる場合、標的組織中または上へ直接治療物を投与すること、または患者へ治療物を投与することで治療物が標的とする組織にインパクトを与えることを意味する。治療物の「投与」は2〜3例を挙げると、注射、注入、または他の既存技術といずれかの方法の組み合わせによって達成することができる。それら組み合わせる技術は、限定するわけではないが、加熱、放射線、および超音波を含む。
【0031】
本願明細書で用いる場合「交番磁界」または「AMF(alternating magnetic field)」という用語は、その場のベクトルが周期的に方向を変化させ、典型的には正弦曲線、三角形、長方形または類似した形状のパターンとなる磁場であって、周波数が約80kHz〜約800kHzの範囲であるものに言及するものである。AMFはまた、静磁場に加えることで結果として得られる磁場ベクトルのAMF成分のみが方向を変化させるようにすることもできる。AMFは交流電場を伴い、実際は電磁気である。
【0032】
本願明細書で用いる場合「抗体」という用語は特定の抗原に反応性の免疫グロブリン分子への言及を含み、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の両方を含む。
【0033】
本願明細書で用いる場合「病変組織」という用語は、骨、肺、血管、神経、結腸、卵巣、乳、および前立腺癌等のあらゆる種類の固形腫瘍に関連する組織または細胞に言及するものである。病変組織という用語はまた、AIDSに影響された組織または細胞等の免疫系の組織または細胞;細菌性、ウイルス性、寄生性、または真菌性等の病原体を有する疾患、病原体を有する疾患の例はHIV、結核、およびマラリアを含む;肥満等のホルモン関連疾患;血管系疾患;多発性硬化症等の中枢神経系疾患;および有害な血管形成、再狭窄アミロイドーシス、毒、臓器移植に伴う反応副生成物、および他の異常な細胞または組織増殖等の望ましくない物体にもまた言及する。
【0034】
本願明細書で用いる場合、組成物の「有効量」または「治療有効量」とは、所望の効果を達成するために計算した所定量である。
【0035】
本願明細書で用いる場合「エネルギー源」とは、治療物中の潜在的な放射能源を活性化する目的で治療物へAMF以外の形態でエネルギーを伝達可能な機器に言及するものである。
【0036】
本願明細書で用いる場合「加温療法(hyperthermia)」とは、40℃〜60℃の温度まで組織を加熱することに言及するものである。
【0037】
「インパクト」という用語は、治療を提供、適用、投与する患者の組織、細胞、または領域の外観、形態、特性および/または物理的特性の変化を伝えるために用いる。
【0038】
本願明細書で用いる場合「兆候(indication)」という用語は、癌等の病状に伴う病状または症状に言及するものである。例えば、疲労または発熱は病的状態にある患者の兆候である。
【0039】
「リガンド」という用語は、分子を特異的に標的とする化合物に言及するものである。
【0040】
「選択的な」または「選択的に」とは、続いて記述する構造、イベント、または状況が起こるまたは起こらないこと、およびイベントが生じる事例および生じない事例を記述が含むことを意味する。
【0041】
本願明細書で用いる場合「標的」とは、不活性化、破裂、崩壊、または破壊が望まれる物質に言及するものである。例えば、病変組織は治療の標的とすることができる。
【0042】
「組織」という用語は、特定の機能の実行において一体となる同様に専門化した細胞のあらゆる集合に言及するものである。
【0043】
その最も基本的な形態において本発明は本願明細書にて、温熱療法での使用のためのリガンド結合粒子に関して記述している。本発明の様々な実施形態は、粒子、少なくとも1つのリンカーまたは架橋化合物、および少なくとも1つのリガンドを含む。
【0044】
様々な実施形態の粒子は磁性粒子であり、他の実施形態では粒子は交番磁界(alternating magnetic field:AMF)または他のエネルギー源中に設置した場合に熱を発生可能な磁性粒子である。そうした粒子は磁性エネルギー感受性粒子または「サセプタ」として言及し、温熱療法の提供に有用である。
【0045】
本願明細書で用いる場合「サセプタ」および「ターゲティングしていないサセプタ(untargeted susceptor)」と言う用語は、特定の細胞種、分子、または他の標的と相互作用するよう修飾していないサセプタに言及するものである。対称的に、「ターゲティングしたサセプタ」、「リガンド結合」粒子またはサセプタ、および「サセプタ複合体(susceptor conjugates)」は、例えばサセプタに共有結合した抗体を用いて特定の標的と相互作用するよう修飾してある。ターゲティングしていないサセプタはそのようなターゲティング機構を含まない。
【0046】
図1は本発明の実施形態に従ったサセプタ複合体100を図示したものである。サセプタ複合体100は磁性エネルギー感受性粒子またはサセプタ142を含む。このサセプタはサセプタ142を完全または部分的に被覆するコーティング144を含むことができる。例えば、限定するわけではないが、抗体等の少なくとも1つのターゲティングリガンド140が、サセプタ142の外側部分に位置することができる。ターゲティングリガンド140は、細胞または病変組織の種類等の特定の標的を探し出して結合するように選択することができる。サセプタ142がAMF等のエネルギー源に曝露された場合に、サセプタ142中で熱が発生する。特にコーティング144が例えば高分子材料等のように高粘度を有する場合、コーティング144はサセプタ142の加熱特性を増強する。
【0047】
サセプタについて具体的に言及すると、AMF中に設置した場合にサセプタが生成する熱は、サセプタの磁性材料がAMFに反応して振動することによるエネルギー損失を表す。磁場のサイクル当たりに発生する熱量およびエネルギー損失に関与するメカニズムは、サセプタ材料および適用する磁場の両方の具体的特性に依存する。本発明の実施形態では、サセプタは単一の磁性領域を形成する。
【0048】
いくつかの態様に従って、AMFまたは他のエネルギー源に曝した場合、サセプタはキュリー温度と呼ばれる固有の温度まで加熱する。キュリー温度は、サセプタの磁性材料の強磁性体から常磁性体への可逆的な遷移が生じる温度である。この温度以下では適用したAMF中で磁性材料は熱を発生するが、キュリー温度以上では磁性材料が常磁性体であり磁性領域はAMFに無反応である。従って、キュリー温度以上でAMFに曝露された場合、磁性材料は熱を発生しない。磁性材料がキュリー温度以下まで冷却すると、材料は磁気特性を回復してAMFを適用した場合の加熱を再開する。このサイクルはAMFへの曝露中ずっと繰り返される。そのように、サセプタの磁性材料は加熱温度を自身で制御することができる。本発明の実施形態では、磁性材料は約40℃〜約150℃のキュリー温度を有するように選択することができる。
【0049】
サセプタがどの温度まで加熱するのかは、様々な要因の中でも、サセプタ材料の磁気特性、磁界の特性、および標的部位の冷却能力に依存する。サセプタ材料およびAMF特性の選択は、特定の標的のタイプに対する治療効率を最適化するように調整することができる。材料組成、サイズ、および形状等のサセプタの多くの態様は、加熱特性に直接的に影響し、それらの特徴は所望の加熱特性を達成するために調整することができる。例えば、温熱療法に利用するサセプタのサイズは、サセプタを利用する特定の適用(すなわち、達成すべき温度)、およびサセプタを構成する材料に依存する。
【0050】
サセプタの大きさは、例えばリンカーおよびリガンドを含む「サセプタ複合体」の全体の大きさもまた決定する。様々な実施形態では、サセプタの大きさは約0.1nm〜約250nmである。サセプタ複合体の大きさは、兆候、サセプタおよびサセプタ複合体を構成する材料、投与経路、および使用方法にもまた依存する。いくつかの実施形態では、例えば静脈注射により患者へ投与するサセプタまたはサセプタ複合体は、治療組成物の濃度増加および血流中での長い滞留時間を達成するために、細網内皮系(reticuloendothelial system:RES)による摂取、およびそれに続いては肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、および骨髄への分布を回避することが望ましい。RESによる摂取をうまく回避するためには、サセプタまたはサセプタ複合体の直径は約30nm以下であり、特にサセプタが磁鉄鉱(Fe)を含む実施例ではサセプタ複合体の直径は約8nmと約20nmとの間であろう。そうしたサセプタ複合体のサセプタは適用するAMF中での加熱のために十分な磁気モーメントを保持しつつ、RESによる治療組成物の摂取の回避を可能とする。いくつかの実施形態では、約8nm以上の直径を有する強磁性体サセプタが温熱療法への適用に適切である。他の実施形態では、例えばコバルト等の他の元素が磁鉄鉱サセプタ中に含まれる。第2の元素の含有は、そのようなサセプタを含むサセプタおよびサセプタ複合体の大きさの範囲を小さくすることを可能とする。例えば、コバルトは磁鉄鉱より小さいものの、磁鉄鉱より大きな磁気モーメントを有しており、治療組成物の大きさを減少しつつ、コバルト含有磁鉄鉱サセプタの全体の磁気モーメントに貢献するであろう。
【0051】
本発明の実施形態で使用するサセプタは適切な磁気モーメントおよびサイズを提供するあらゆる数の材料を含むことができる。サセプタの材料組成物は特定の標的に基づいて選択する。例えば、実施形態でのサセプタは、限定するわけではないが、酸化鉄粒子およびFeCo/SiO粒子を含む。標的へ伝達される全熱量と同じく、自己制御式のキュリー温度はサセプタ材料と直接的に関連しているため、サセプタ組成物は異なる標的の種類に応じて設計する。標的の組成および患者の体内での位置に基づいた固有の加熱および冷却能力を考慮すると、それぞれの標的の種類の所望の加熱を達成するためにはそうした調整が必要であろう。例えば、血液供給が貧弱で比較的に隔離された患者の領域中に位置する腫瘍は、主要な血管近傍に位置する腫瘍と比較して、有効な温熱療法のためにより低いキュリー温度のサセプタ材料を必要とする。血流中に位置する標的は同様に特異的なキュリー温度を有するサセプタ材料を必要とする。そのように、磁鉄鉱に加えて、様々な実施形態のサセプタは、例えば、コバルト、鉄、希土類金属およびそれに類するもの、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0052】
サセプタ材料の選択では、比吸収率(specific absorption rate:SAR)もまた考慮する。所与の材料のSARは、RF磁場に曝露した場合に材料が吸収する高周波(radio frequency:RF)エネルギーの率として記述される。例えば、Ferrotec Corp.(ニューハンプシャー州Nashua)から入手可能な直径約110nmのシリーズEMG700およびEMG1111酸化鉄粒子は、1,300のOerstedt束密度および150kHzの周波数で、粒子1グラム当たり約310ワットのSARを有する。Inframat Corp.(コネチカット州Willington)から入手可能なFeCo/SiO粒子等の他の粒子は、同様の磁場条件下で粒子1グラム当たり約400ワットのSARを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、サセプタはコーティングを含む。適切なコーティング材は、限定するわけではないが、合成および生体高分子、共重合体およびポリマーブレンド、および無機物を含む。コーティング材として合成高分子を使用する実施形態では、それらコーティングは、例えば、アクリレート、シロキサン、スチレン、酢酸塩、アルキレン、グリコール、アルキレン、酸化アルキレン、パリレン、乳酸、グリコール酸、およびそれらの組み合わせを含み、特定の実施形態では、それらコーティングはヒドロゲルポリマー、ヒスチジン含有ポリマー、およびヒドロゲルポリマーおよびヒスチジン含有ポリマーの組み合わせを含む。さらなる実施形態は、例えば、多糖、ポリアミノ酸、タンパク質、脂質、グリセロール、脂肪酸、およびそれらの組み合わせ等の生体高分子を含むコーティング材を包含し、他の実施形態では、コーティング材として使用する生体材料は、ヘパリン、ヘパリン硫酸、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、セルロース、デキストラン、アルギン酸塩、澱粉、炭水化物、およびグリコサミノグリカンを含む。タンパク質コーティング材を使用する実施例では、それらタンパク質は、細胞外マトリックスタンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、アルブミン、およびゼラチンを含む。さらに他の実施形態では、生体コーティング材は適切な合成高分子材料と組み合わせて使用する。
【0054】
本発明の他の実施形態は、限定するわけではないが、金属、金属合金、および例えばヒドロキシアパタイト等のセラミックス、炭化ケイ素、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、フェライト、ホスホン酸塩、元素周期表の第4族元素の酸化物等の無機コーティング材を有するサセプタを含む。他の実施形態では、無機コーティング材は、生体または合成高分子もまた含む複合コーティングの成分である。
【0055】
サセプタが生体適合性の磁性材料から形成されるいくつかの実施形態では、サセプタ自体の表面が生体適合性コーティングとして働く。他の実施形態では、コーティング材はサセプタを生体適合性にする役目を果たすことができる。さらに他の実施形態では、コーティング材は、例えば、トランスフェクションによる細胞中へのサセプタの輸送を促進することができる。トランスフェクション剤と呼ばれるそれらコーティング材は、例えば、プラスミド、ウイルス、ファージ等のベクター、バイロンまたはウイルスコート、プリオン、ポリアミノ酸、カチオン性リポソーム、両親媒性物質、非リポソーム脂質、またはそれらのあらゆる組み合わせを含む。他の実施形態では、生体適合性コーティング材は、トランスフェクション剤と有機および/または無機物質との混合物とすることができる。そうした実施形態では、コーティング材および/またはトランスフェクション剤の組み合わせは、特定の種類の細胞または病変組織および患者体内中の特定の位置に従って調整できる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、リンカーはサセプタまたはサセプタのコーティングに共有結合する。いくつかの実施形態では、リンカーはサセプタの外側表面へ接触および結合しつつ、リガンドと共有結合することでリガンドをサセプタの外側表面へ付着させる二官能基性化合物とすることができる。他の実施形態では、リンカーはサセプタの外側表面に結合して、サセプタによる細網内皮系(reticuloendothelial system:RES)の回避を促進する。例えば、当該技術分野で「ペグ化」として知られる処理を通したポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)リンカーによるサセプタへの官能化は、RESによる検出および摂取の回避に有効であり、EPR(Eenhanced permeability and retention)効果を介して腫瘍の変化した血管系の透過を促進して、腫瘍間質へのサセプタの好ましい蓄積をもたらす結果となる。
【0057】
リンカーが短いかまたは長いか、堅いかまたは柔軟性があるか、疎水性かまたは親水性かに依存して、リンカーは最終的な複合体の特性に影響する。様々な実施形態のリンカーは疎水性または親水性の有機物、無機物、または化学的に異なる化合物の混合を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、アルキル、アルケン、アルキン、ハロアルキル、エポキシド、ビニル、またはヘテロクムレン化合物を含むことができ、他の実施形態では、リンカーはマルチサブユニット化合物を含む。それら実施形態のリンカーは、マルチサブユニット化合物中のサブユニットの数および/または種類によって限定されず、例えば、エポキシプロペン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびそれらに類するもの、およびそれらの組み合わせを含むことができる。さらに他の実施形態では、リンカーは1若しくはそれ以上のエピクロルヒドリン、ジエポキシド、またはそれらの組み合わせを含む。本発明の実施形態によって包含されるリンカーの例は、限定するわけではないが、ポリ(エチレングリコール)エポキシエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、およびエピクロルヒドリンおよびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの混合物を含む。
【0058】
様々な実施形態のリンカーは、1若しくはそれ以上の末端反応性基をさらに含む。末端反応性基の種類は、特定の種類のサセプタを特定の種類のリガンドへ共有結合するため、特定のリガンドとの共有結合を形成するため、またさもなければサセプタをそうしたリガンドへ結合するために必要な反応化学の種類に依存して変化する。特定の実施形態では、末端基の反応性は置換または付加化学に基づくことができる。例となる末端反応性基は、限定するわけではないが、カルボン酸、アミン、ヒドラジン、アジド、チオール、ジスルフィド、スルホン酸、ビニル、1,2−ジアシルエチレンおよび誘導体、およびそれらの組み合わせを含むことができ、特定の実施形態では、末端反応性基は、アミン、チオール、またはカルボン酸部分とすることができる。いくつかの実施形態では、カルボン酸末端基はポリ(エチレングリコール)エーテルをベースとしたカルボン酸とすることができ、アジド末端基は5−アジド−2−ニトロベンズアミドとすることができ、ジスルフィド末端基は3−(2−ピリジリチオ)プロピオンアミドとすることができ、1,2−ジアシルエテン末端基はマレイミドまたは3−マレイミジルプロピオンアミドとすることができる。
【0059】
本発明の実施形態のリガンドは選択した標的に対してサセプタが選択的に確かに付着する、または結合するように選択する。いくつかの実施形態では、リガンドは細胞上の癌または疾患マーカーのターゲティングを可能にする。他の実施形態では、リガンドは患者の特異的な種類の生体物質のターゲティングを促進する。様々な実施形態は、限定するわけではないが、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体フラグメント、単糖類、炭水化物、グリカン、サイトカイン、ケモカイン、ヌクレオチド、レクチン、脂質、受容体、ステロイド、神経伝達物質、クラスター表記/分化(Cluster Designation/Differentiation:CD)マーカー、インプリントしたポリマー、およびそれらの組み合わせ等のリガンドを含む。特定の実施形態では、タンパク質リガンドは、例えば、細胞表面タンパク質、膜タンパク質、プロテオグリカン、糖タンパク質、ペプチド、およびそれらに類するものを含み;ヌクレオチドリガンドは、例えば、1本鎖ヌクレオチド、2本鎖ヌクレオチド、相補的ヌクレオチド、およびポリヌクレオチド断片を含み;脂質リガンドは、例えば、リン脂質、糖脂質、およびそれらに類するものを含む。他の実施形態では、リガンドは抗体または抗体フラグメントである。
【0060】
本発明の実施形態において有用な抗体は特定の種類の抗体に限定されない。いくつかの実施形態において有用な抗体は遺伝的に改変した、例えばキメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)およびヘテロ結合抗体(例えば二重特異性抗体)である。抗体は、Fab’、F(ab’)、Fab、FvおよびrIgG、および組み換え1本鎖Fvフラグメント(single chain Fv fragments:scFv)等の抗原結合能を有するフラグメントを含む抗原結合形態もまた含む。それらフラグメントは当該技術分野で周知であり、例えば、Pierce Catalog and Handbook、1994〜1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,III and Kuby,J.,Immunology,3.sup.rd Ed,W.H.Freeman&Co,New York(1998)で容易に見付けられる。他の実施形態の抗体は、限定するわけではないが、Kostelny et al. J.Immunol.148:1547(1992),Pack and Pluckthun Biochemistry 31:1579(1992),Hollinger et al.supra,(1993),Gruber et al.,J.Immunol.5368(1994),Zhu et al.Protein Sci 6:781(1997)、Hu et al.Cancer Res.56:3055(1996),Adams et al.Cancer Res,53:4026(1993)、およびMcCartney et al.Protein Eng.8:301(1995)等に記述されている2価または二重特異性分子を包含する。
【0061】
本発明の実施形態のリガンドは、当該技術分野で周知のあらゆるマーカーまたは抗原に結合するよう調製することができる。マーカーの選択は選択する標的に依存して変化するが、本発明の実施形態において有用なマーカーは、限定するわけではないが、細胞表面マーカー、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)ファミリー、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)ファミリーの1員、抗イディオタイプmABの1種、ガングリオシドミミックの1種、クラスター表記/分化(cluster designation/differentiation:CD)抗原、上皮細胞増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)ファミリーの1員、細胞接着分子の1種、MUC−タイプのムチンファミリーの1員、癌抗原(cancer antigen:CA)、マトリックスメタロプロテイナーゼ、糖タンパク質抗原、メラノーマ関連抗原(melanoma associated antigen:MAA)、タンパク質分解酵素、カルモジュリン、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)受容体ファミリーの1員、血管新生マーカー、T細胞に認識されるメラノーマ抗原(melanoma antigen recognized by T cells:MART)抗原、メラノーマ抗原をコードする遺伝子(melanoma antigen encoding gene:MAGE)ファミリーの1員、前立腺膜特異的抗原(prostate membrane specific antigen:PMSA)、小細胞性肺癌抗原(small cell lung carcinoma antigen:SCLCA)、T/Tn抗原、ホルモン受容体、癌抑制遺伝子抗原、細胞周期調節因子抗原、癌遺伝子抗原、癌遺伝子受容体抗原、増殖マーカー、細胞外マトリックスの分解に関わるタンパク質分解酵素、悪性形質転換の関連因子、アポトーシス関連因子、およびヒト癌抗原(carcinoma antigen)を含む。例えば、乳癌の特異的マーカーは、限定するわけではないが、MUC−タイプのムチンファミリー、上皮細胞増殖因子受容体(epithelial growth factor recepter:EGFR)、癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)、ヒト癌抗原、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)抗原、メラノーマ抗原(melanoma antigen:MAGE)、ファミリー抗原、T/Tn抗原、ホルモン受容体、増殖因子受容体、クラスター表記/分化(Cluster designation/differentiation:CD)抗原、腫瘍抑制遺伝子産物、細胞周期調節因子、癌遺伝子産物、癌遺伝子受容体、増殖マーカー、接着分子、細胞外マトリックスの分解に関わるタンパク質分解酵素、悪性形質転換の関連因子、アポトーシス関連因子、ヒト癌抗原、糖タンパク質抗原、DF3、4F2、MGFM抗原、乳癌抗原CA15−3、カルポニン、カテプシン、CD31抗原、増殖性細胞核抗原10(proliferating cell nuclear antigen 10:PC10)、およびpS2等の細胞表面抗原から選択することができる。
【0062】
他の1実施形態では、リガンドの標的を患者の免疫系の疾患と関連する抗原とすることができる。例えば、マーカーまたはリガンドの標的とするマーカーは、例えば、T細胞またはB細胞等の生きた標的を含むように選択することができ、リガンドは例えば、タンパク質、サイトカイン、ケモカイン、感染性微生物、およびそれらに類するもの等の免疫系疾患に関連した標的へのアフィニティを有する。
【0063】
さらに他の1実施形態では、リガンドは病原体を有する状態に関連する抗原を標的とすることができる。病原体は、例えば、細菌、ウイルス、微生物、真菌、寄生生物、またはプリオン等の疾患を引き起こすあらゆる病原体を含む。この実施形態のリガンドは、細胞マーカーまたは病原体に関連したマーカーまたは感染細胞上の標的に相当するマーカーまたは複数のマーカーへのアフィニティを有する。例えばリガンドは、限定するわけではないが、Escherichia coliまたはBacillus anthracisを含む細菌;限定するわけではないが、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus:CMV)、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein−Barr virus:EBV)、B型肝炎ウイルス等の肝炎ウイルス、HIV、HIV−1、HIV−2等のヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス6型等のヘルペスウイルスを含むウイルス;限定するわけではないが、トリパノソーマ・クルージ、キネトプラスト、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、またはSchistosoma bruceiを含む寄生生物;または、限定するわけではないが、アスペルギルス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、リゾムコールを含む真菌状態(fungus condition)等の病原体自体を標的とするよう選択できる。
【0064】
本発明の特定の実施形態では、抗体または抗体フラグメントと変性剤との反応によって修飾抗体を作製可能である。例えば、例えばN−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide:NHS)といったアミン反応性変性剤を利用して部位非特異的に有機部分を抗体へ結合可能である。本発明の他の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントのジスルフィド結合(例えば、鎖間のジスルフィド結合)の還元によって修飾ヒト抗体または抗原結合フラグメントを調製する。還元した抗体または抗原結合フラグメントは次に、抗体をリンカーへ共有結合させるためにチオール反応性変性剤と反応させる。本発明の態様の、抗体の特定の部位に結合した有機部分を含む修飾ヒト抗体または抗原結合フラグメントは、逆タンパク質分解(Fisch et al.Bioconjugate Chem.3:147 153(1992);Werlen et al.Bioconjugate Chem.5:411 417(1994);Kumaran et al.,Protein Sci.6(19)2233 2241(1997);Itoh et al.,Bioorg.Chem.,24(1):59 68(1996);Capellas et al.,Biotechnol.Bioeng.,56(4):456 463(1997))およびHermanson Bioconjugate Techniques,Academic Press:カリフォルニア州San Diego(1996)に記述の方法等の適切な方法を用いて調製可能である。
【0065】
さらに他の1実施形態では、リガンドは望ましくない状態に関する細胞または組織を標的とすることができる。そうした望ましくない状態は疾患と関連することもあるが、正常な状態でもまた存在する可能性がある。リガンドは望ましくない状態に関するタンパク質または他の抗原、または望ましくない状態に関する生体分子経路に関連する他の分子を直接標的とすることができる。例えば、低密度リポタンパク質(low density lipoprotein:LDL)上のアポリポタンパク質Bは動脈硬化症治療の標的分子として利用でき、また胃抑制ポリペプチド受容体は肥満治療の標的とすることができる。さらなる例は、ホルモン関連疾患に関する標的であって、標的はホルモン自体またはホルモン生産に関連するホルモンまたはシグナリングペプチドであるところのホルモン関連疾患に関する標的、および病変組織に関連した抗原またはペプチドが標的である癌以外の病変組織、または癌以外の病変組織の堆積物に関連したタンパク質またはペプチドに向けたリガンドを含む。
【0066】
さらなる実施形態では、リガンドは臓器移植後の臓器拒絶に関連する抗原またはタンパク質を標的とすることができる。それら実施形態での標的は移植臓器の特定の種類に依存して変化し、例えばT細胞またはB細胞等の免疫細胞を含む。
【0067】
さらなる実施形態では、リガンドは患者中の毒を標的とすることができる。それら毒は、限定するわけではないが、細菌毒素、植物毒素、昆虫毒、動物性毒素、およびヒトが生産する毒素等の生物が生産するあらゆる毒を含む。
【0068】
本発明の実施形態のリガンドのさらなる例は米国特許出願第10/696,399号に見ることができ、その全体はこの参照によって本願明細書に取り込まれる。
【0069】
特定の実施形態のリガンドはサセプタ、サセプタに結合したコーティング、またはサセプタ表面に結合したリンカーに共有結合することができる。いくつかの実施形態では、リガンドがリンカーまたはコーティングに共有結合する能力を増強するためにリガンドを修飾することができ、実施例は修飾の種類によって限定されない。例えば、特定の実施形態では、リガンドはチオールで修飾できる。修飾リガンドの調製方法は当該技術分野で周知であり、市販されている。
【0070】
本発明のさらなる実施形態は、リガンド結合粒子または「サセプタ複合体」の調製方法を含む。サセプタ複合体の様々な調製方法の概要は図2に提供しており、それら方法は粒子(I)を調製する工程と、粒子にアミノ基を導入する(II)工程と、例えば、粒子(III、V、VII、およびXI)を形成するために、上述したようにアミノ官能性粒子(II)にリンカーを反応させる工程と、リガンド結合粒子またはサセプタ複合体(IV、VI、VIII、およびX)を形成するためにリンカー上の第2の官能基をリガンドと反応させる工程とを含む。図2に提供および本願明細書に記述した概要のあらゆる工程に対して当該技術分野で周知の様々な変更を加えることができ、または1若しくはそれ以上の工程を他の同等の工程で置換することができる。それら変更は本発明の範囲中に包含される。例えば、粒子または「サセプタ」はチオールまたは他の反応基を導入することができ、または1種類以上のリンカーまたはリガンドをサセプタへ共有結合するように様々な工程を組み合わせることができる。本発明の他の実施形態では、疾患治療用サセプタにリンカーまたはリガンドの有効量を結合するために、結合の非結合領域に対する具体的な比率についてサセプタを最適化する。さらなる実施形態では、サセプタ複合体を洗浄および/または滅菌する工程を方法に含める。洗浄および/または滅菌する工程は精密濾過または当該技術分野で周知の他のそのような方法を含む。
【0071】
本発明の他の実施形態は、単一の磁性領域を形成する粒子にアミノまたはニトロ基を導入する工程と、官能性粒子をリンカーと接触させる工程と、リガンド結合粒子を形成するようにリガンドを粒子またはリンカーへ共有結合する工程とを含むリガンド結合粒子の調製方法を含む。
【0072】
さらに他の実施形態は、本発明のサセプタまたはサセプタ複合体を用いた疾患治療方法を含む。サセプタ複合体を用いて治療できる疾患は広範囲の疾患を包含し、疾患のマーカーの入手可能性によってのみ限定される。ターゲティングしていないサセプタの利用はそれらマーカーの入手可能性によって限定されない。従って、既知のまたは将来発見されるあらゆる疾患は実施形態の方法に包含される。例えば、1実施形態では、リガンドが癌細胞を標的としたサセプタ複合体を患者へ投与して、サセプタ複合体が癌細胞へ接着または結合し、交番磁界(alternating magnetic field:AMF)に患者を曝露する。AMFによってサセプタが生じる熱は即座にまたは時間をかけて癌細胞を破壊(すなわち、アポトーシスを誘導する)またあるいは不活性化する。さらに、サセプタが生じた熱および/またはアポトーシスは、例えば、その存在があらゆる残存癌細胞に対する免疫反応を刺激可能なHSP70等の熱ショックタンパク質の生産および放出を促す。それら刺激された免疫反応は癌および他の疾患の将来の進行から個体を保護するようにも働く。
【0073】
本発明の他の実施形態では、改変した表面電荷および粒子サイズが疾患治療でのサセプタまたはサセプタ複合体の有効性に寄与する。例えば、本発明の1態様では、ナノ粒子のクリアランスを減少させるようにサセプタの表面電荷を改変する。本発明の1実施形態では、所望の表面電荷およびゼータ電位を提供するためにサセプタ表面の多くの部分を官能化する。他の1実施形態では、例えば、スルホ−NHS−アセテート等のサセプタ表面の選択的官能化を可能とするブロッキング剤を用いて表面電荷およびゼータ電位を微調整する。
【0074】
サセプタまたはサセプタ複合体のリガンドの表面化学または多孔性は、サセプタまたはサセプタ複合体が標的細胞外に残存するように、またあるいは標的細胞内に入るように調整することもまたできる。標的細胞の外側または内側のいずれかに一旦結合したならば、サセプタまたはサセプタ複合体はAMFエネルギーを吸収することでエネルギーを与えられ、例えば加熱し、生じた熱は、例えば、伝達、伝導、放熱、または熱伝導機構の組み合わせによってコーティングまたはリンカーおよび格子間領域を標的細胞まで通り抜ける。熱に曝露された標的細胞は傷害を受け、特定の実施形態では、それら標的細胞は傷害が回復不能な程度まで傷害を受ける。特定の実施形態では、十分な量のエネルギーが標的細胞へ伝達された場合に、標的細胞は壊死、アポトーシス、または他の機構を介して死滅する。
【0075】
患者へ投与するサセプタまたはサセプタ複合体の量は変化させることができ、治療する疾患および病変組織の位置に依存させることができる。さらに、用量は投与形態に従って変化させることができる。例えば、もしサセプタまたはサセプタ複合体を、例えば腫瘍の内部または近傍領域へ局所的に、または全身的に投与するならば低用量が必要である。投与する用量は治療対象(例えば、年齢、体重、性別、健康状態、併用療法の種類およびもしある場合は治療頻度)の特性にさらに依存する。それらの情報を前提として、治療有効量を構成するサセプタまたはサセプタ複合体の量の決定は熟練者(例えば、臨床医)の範囲内である。具体的な投与経路および投与計画の選択は、最適な臨床反応を得るために当該技術分野で周知の方法に従ってそれら臨床医が調節または調整する。
【0076】
様々な投与経路を本発明の実施形態で熟慮しており、サセプタおよびサセプタ複合体はそれらが活性となるあらゆる経路で標準的方法にて投与可能である。例えば、限定するわけではないが、投与は、全身的、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、局所的、経皮的、経口、口腔、または眼球経路、または膣内、吸入、蓄積注射、またはインプラントによることが可能である。本発明の特定の実施形態のサセプタまたはサセプタ複合体の投与形態(単独または他の医薬品との組み合わせのいずれでも)は、限定するわけではないが、舌下、注入物質(短時間作用型、持続性薬剤、インプラント、および皮下または筋肉内注射するペレット形態を含む)、または膣クリームの利用、坐薬、ペッサリー、膣リング、肛門坐薬、子宮内避妊器具、およびパッチおよびクリーム等の経皮形態とすることが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、投与方法は、限定するわけではないが、血管注入、静脈注射、腹腔内注射、皮下注射、筋肉注射を含む。他の実施形態では、サセプタまたはサセプタ複合体は、限定するわけではないが、スポンジまたは他の医療用布によるすすぎ洗いとしての洗浄、洗浄(lavage)を含む週術期投与技術を用いて投与することができる。他の実施形態では、投与経路は、限定するわけではないが、加熱、放射線、および超音波を含む他の周知の技術と組み合わせた注射、または注入を含む。
【0077】
本発明の特定の実施形態の方法は医薬的に許容可能な賦形剤、媒体または担体を有する医薬組成物中でのサセプタまたはサセプタ複合体の製剤化をさらに含む。例えば、1実施形態では、サセプタまたはサセプタ複合体の分散または単離、サセプタまたはサセプタ複合体と医薬的に許容可能な賦形剤、媒体または担体、および選択的に、医薬組成物を製剤化するための他の原料との混合によって医薬組成物を調製する。
【0078】
本発明の態様のサセプタおよびサセプタ複合体を含む医薬製剤および適切な担体は、限定するわけではないが、錠剤、カプセル、カプセル(cachets)、ペレット、ピル、粉末および顆粒を含む個体剤型;限定するわけではないが、溶液、粉末、流体エマルジョン、流体懸濁液、半固体、軟膏、ペースト、クリーム、ゲルおよびゼリー、および泡を含む局所投与形態;限定するわけではないが、溶液、懸濁液、エマルジョン、および乾燥粉末を含む非経口剤型とすることが可能である。医薬的に許容可能な希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、滑剤、界面活性剤、疎水媒体、水可溶性媒体、乳化剤、緩衝液、保湿剤(humectants)、保湿剤、可溶化剤、防腐剤、およびそれらに類するものを有する製剤に有効成分を含ませるのが可能なこともまた当該技術分野で周知である。投与の手段および方法は当該技術分野で周知であり、当業者は指針として様々な薬理学的参考文献を参照可能である。例えば、Modern Pharmaceutics,Banker & Rhodes,Marcel Dekker,Inc.(1979);およびGoodman & Gilman’s‘The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,6th Edition,MacMillan Publishing Co.,New York(1980)を調べることができる。
【0079】
非経口投与経路について具体的に言及すると、本発明の特定の実施形態のサセプタおよびサセプタ複合体は注射(例えば、ボーラス注入または連続的な輸液)による非経口投与用に製剤化可能である。サセプタおよびサセプタ複合体は約15分〜約24時間にわたる皮下での連続的な輸液によって投与できる。注射用製剤は防腐剤を添加した単位剤型(例えば、アンプル剤またはマルチドーズ容器)とすることができる。製剤は懸濁液、溶液、または油性または水性媒体中のエマルジョン等の形態をとることが可能であり、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤等の製剤化剤を含むことが可能である。
【0080】
経口投与では、サセプタおよびサセプタ複合体は、それら化合物を当該技術分野で周知の医薬的に許容可能な担体と組み合わせて製剤化することが可能である。それら担体はサセプタおよびサセプタ複合体を、患者による経口摂取用の錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、およびそれらに類するものとして製剤化することを可能にする。経口投与用の医薬製剤は固体賦形剤の添加、選択的に得られた混合物の製粉、およびもし望むならば錠剤または糖衣錠のコアを得るために適切な助剤を添加した後の顆粒混合物の加工によって得ることが可能である。適切な賦形剤は、限定するわけではないが、限定するわけではないが、乳糖、蔗糖、マンニトール、およびソルビトールを含む糖等の充填剤、限定するわけではないが、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、じゃがいも澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone:PVP)等のセルロース調製物を含む。もし望むならば、限定するわけではないが、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム等のそれらの塩等の崩壊剤を添加することが可能である。
【0081】
糖衣錠のコアは適切なコーティングと共に提供可能である。この目的のためには、濃縮糖溶液を使用可能であり、同溶液は選択的に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または2酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合液を含むことが可能である。活性化合物の用量の異なる組み合わせを識別または示すために、錠剤または糖衣錠のコーティングへ染料または顔料を添加可能である。
【0082】
経口で使用可能な医薬製剤は、限定するわけではないが、ゼラチンで製造した押し込み型カプセル、およびグリセロールまたはソルビトール等の可塑剤およびゼラチンで製造した柔らかい密閉軟カプセルをさらに含む。押し込み型カプセルは、例えば乳糖等の充填剤、澱粉等の結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑剤、および選択的に安定化剤との混合物としてサセプタまたはサセプタ複合体を含むことが可能である。軟カプセルでは、サセプタまたはサセプタ複合体は脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコール等の適切な溶液中に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を選択的に添加できる。経口投与用の全ての製剤はそのような投与形態に適切な用量とすべきである。
【0083】
口腔投与経路では、サセプタまたはサセプタ複合体は、当該技術分野で周知の標準的技術を用いて錠剤またはトローチ剤として製剤化できる。
【0084】
吸入による投与では、サセプタまたはサセプタ複合体は、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、2酸化炭素、または他の適切なガス)を用いて加圧したパックまたは噴霧器からのエアロゾールスプレーまたは霧の形態で供給する。加圧エアロゾール投与の場合では、測定した量を供給するバルブの提供によって投与単位を測定可能である。例えば、吸入器または吸入器(insufflator)で使用するゼラチンのカプセルおよび薬包は、サセプタまたはサセプタ複合体および乳糖または澱粉等の適切な粉末ベースの粉末混合物を含むように製剤化可能である。
【0085】
本発明の他の態様のサセプタまたはサセプタ複合体は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリド等の標準的な坐薬基剤を含む保持浣腸または坐薬等の直腸用組成物にて製剤化可能である。
【0086】
サセプタまたはサセプタ複合体は持続性薬剤としてもまた製剤化可能である。それら長時間作用型製剤は、1実施形態では、インプラント(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与する。持続性薬剤注射は約1〜約6ヶ月またはそれ以上の間隔で投与可能である。そのように、サセプタまたはサセプタ複合体は適切な高分子または疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂によって、または例えば持続または制御放出を促すやや難溶性の塩等のやや難溶性の誘導体として製剤化する。
【0087】
経皮投与経路では、本発明の特定の実施形態のサセプタまたはサセプタ複合体は、硬膏剤または当該技術分野で周知の他の経皮治療システムに適用可能である。
【0088】
サセプタまたはサセプタ複合体の医薬組成は適切な固相またはゲル相の担体または賦形剤をさらに含む。それら担体または賦形剤の例は、限定するわけではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、2酸化ケイ素、糖、澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol:PEG)、ポリ乳酸(polylactic acid:PLA)、ポリ(D、L−グリコリド)(poly(D,L−glycolide):PLG)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(poly(lactide−co−glycolide):PLGA)、およびポリ(シアノアクリレート)(poly(cyanoacrylate):PCA)を含む。
【0089】
本発明の態様のサセプタおよびサセプタ複合体は、それらの組み合わせが本願明細書に記述する方法の目的とする効果の達成において望ましいまたは有利であると思われる場合には、例えば、アジュバント、プロテアーゼ阻害剤、または他の相性の良い薬剤または化合物等の他の有効成分と組み合わせて投与できる。
【0090】
患者へ一旦投与したならば、サセプタまたはサセプタ複合体の標的への輸送は、粒子の磁気特性に基づいて、病変組織領域において患者へ静磁場を適用することで促進できる。
【0091】
実施例
本願明細書で開示する発明をより効果的に理解せしめる目的で、以下に実施例を提供する。それら実施例は説明の目的のためだけのものであり、いかなる意味でも本発明を限定すると解釈すべきものではないと理解すべきである。
【実施例1】
【0092】
BNFサセプタの調製および特性解析
バイオナイズド・ナノフェライト(bionized nanoferrite:BNF)サセプタを、Gruttner et al.J.Magn.Magn.Mater.311:181(2006)中に記述されているコアシェル法(core−shell method)に従って高圧均質化(high−pressure homogenization:HPH)によって作製する。単分散酸化鉄水性懸濁液(25mg/ml)を500bar以上の圧力および70℃以上の温度下にて過剰量のデキストランと30分間ホモジナイズした。NdFeB永久磁石上の結晶化ディスク中での磁気沈降および脱イオン水での洗浄の後に50%(w/w)以上の鉄含量のBNFサセプタが得られた。サセプタの鉄含量を粒子濃度の重量測定法、および濃塩酸による酸化鉄の分解後の粒子懸濁液(Spectroquant(登録商標)−Kit、Merck)の鉄濃度の分光光度測定で測定した。
【0093】
BNFサセプタは改変したJosephoson methodでMW=526のポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル(Aldrich)およびエピクロルヒドリン(ACROS)を用いてpH11〜12にて室温下で24時間かけて架橋した。磁性による分離および脱イオン水での洗浄後、鉄濃度20〜25mg/mlのBNFサセプタ懸濁液を得た。サセプタは室温下で24時間のあいだアンモニアとの振盪でアミノ基を導入した。BNFサセプタは磁性による分離によって脱イオン水で3回洗浄し、0.22mm Millex−GP filters(Millipore)で濾過した。
【0094】
調製条件に従ってそれぞれ70〜100、40〜70、および20〜40nmの3つの異なる直径範囲で粒子サイズの狭い分布を有するBNFサセプタを得た。架橋およびアミノ化は最初の粒子径に影響しなかった。図3は光子相関分光法(photon correlation spectroscopy:PCS)によって測定した平均直径25nm(#0850684G)、50nm(#0840684G)、および70nm(#0440684G)の架橋およびアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)の3つのロットのサイズ分布を示している。
【0095】
インピーダンス分光法(inpedance spectroscopy:IS)による磁場中での体積磁化率の周波数依存の測定によって、BNFサセプタ懸濁液の磁性特性の予備的な評価を得た。磁性特性解析のために、0.1〜0.5mTの範囲の外部磁場の振幅にて磁場の周波数に基づいてBNFサセプタの体積磁化率をISによって測定した。図4は約200Hzで平均直径70nmを有する磁性粒子(#0440684G)の室温下での単位体積当たりの磁化率のインピーダンス分光法のデータを表す。約200Hzでのロット#0440684GのBNFサセプタの室温下での磁化率の虚数部の共振ピークは一般的なブラウン緩和特性に関連する期待値と一致する。サセプタ懸濁液の高い磁鉄鉱含有率ゆえに、対応する低周波の実際の磁化率は0.115の値を有する。それらの結果は、それら周波数および室温において、BNFサセプタが熱的に遮断された単一領域粒子のかなりの割合を含むことを示唆している。
【0096】
固定周波数15371kHzおよび様々な流束密度を有するAMFによる粒子の加熱を誘導することで、適切に改変したAMF熱量計中でBNFサセプタの比吸収率(specific absorption rate:SAR)を測定した。表1に示すとおり、ソレノイドコイル中で発生させたAMFによって粒子懸濁液を加熱した場合の、水中で測定した温度上昇率からサセプタの各種類のSAR値を計算した。適切な参照のブランク、水、またはリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)を用いて、SAR値を熱量計およびコイルの温度特性について修正し、鉄含量によって標準化した。表1にさらに示すとおり、BNFサセプタのSARデータは20nm nanomag(登録商標)−D−spio粒子の対応するデータよりも6〜7倍高い。それら結果は、抗腫瘍モノクローナル抗体に結合したBNFサセプタの有効濃度が癌細胞に到達し、それらが外部AMF源によって加熱を誘導された場合に、腫瘍反応の顕著な増加が生じるはずであることを示唆する。
【0097】
【表1】

【実施例2】
【0098】
BNFサセプタ表面への抗体の共有結合
モデル抗体であるウサギ抗ヤギIgGのBNFサセプタへの共有結合の様々な戦略を、ヤギ抗ウサギIgG−西洋ワサビペルオキシダーゼ(horse raddish peroxidase:HRP)およびヤギ抗マウスIgG−HRPを用いて評価した。抗体分子のアミノ基との反応に基づいた抗体結合の戦略を、スルフヒドリル基標識抗体を必要とするものと比較した。
【実施例3】
【0099】
ポリエチレングリコールのCOOH基を表面に有するBNFサセプタの合成およびウサギ抗ヤギIgGとの結合。
【0100】
5ミリグラム(26μmol)のN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(N−ethyl−N’−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride:EDC)および14μl(26μmol)のポリエチレングリコール600ジアシッドを1mlの0.5M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(2−(N−morpholino)ethanesulfonic acid:MES)緩衝液(pH=6.3)中で溶解して50℃で10分間インキュベートした。混合物を4mlのアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)(34.4mg鉄、48mg粒子)に添加し、Labquake(登録商標)mixer上で室温にて2時間振盪した。結果として得たBNF−PEG−COOHサセプタを磁性による分離によって脱イオン水で3回洗浄して、0.22mm Millex−GP filterで濾過して、5.3mg/mlの鉄濃度の5ml懸濁液(図2III)を得た。
【0101】
この懸濁液500マイクロリッターを125mlの0.5M MESバッファー(pH=6.3)中の0.6mg(3μmol)EDCおよび1.2mg(10μmol)N−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide:NHS)の溶液と混合して、室温で90分間振盪した。粒子をリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)(pH=7.4)にて洗浄と磁性による分離を2回行った後、100mlのウサギ抗ヤギIgG(400mg/ml)を添加した。混合物を3時間振盪して、PBS中のグリシン添加によって反応を終了し、磁性による分離によってPBSバッファーで3回洗浄して、2mg/mlの鉄濃度の抗体結合BNF−PEG−COOHサセプタ(図2IV)を1.2ml得た。
【実施例4】
【0102】
表面にANB基を有するBNFサセプタの合成およびウサギ抗ヤギIgGとの結合
N−5−アジド−2−ニトロベンゾイルオキシスクシンイミド(N−5−azido−2−nitrobenzoyloxysuccinimide:ANB−NOS)に関わる全ての反応は光遮断下で行った。炭酸溶液(pH=8.5)中のANB−NOS(1mMで1.5ml)を500μlのアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)(4.3mg鉄、6mg粒子)と混合して、室温で2時間振盪した。BNF−ANBサセプタはリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)(pH=7.4)での2回の洗浄と磁性による分離を行い、3.8mg/mlの鉄濃度の1ml懸濁液(図2V)を得た。100マイクロリッターのウサギ抗ヤギIgG(400mg/ml)をサセプタへ添加し、混合物を302nmの光に曝露しつつ2時間振盪した。反応はPBS中のグリシン添加によって停止し、次に2回のPBSバッファーによる洗浄と磁性による分離を行って、2.1mg/mlの鉄濃度の抗体結合BNF−ANBサセプタ(図2IV)の懸濁液1.2mlを得た。
【実施例5】
【0103】
ウサギ抗ヤギIgGのスルフヒドリル標識
ウサギ抗ヤギIgGを、N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(N−succinimidyl−S−acetylthioacetate:SATA)との反応と、それに続く製造者の使用説明書を用いたヒドロキシルアミンでの脱アセチル化によってスルフヒドリル基で標識した。500マイクロリッターのウサギ抗ヤギIgG(400mg/ml)およびジメチルホルムアミド(dimethylformamide:DMF)(4mg/ml)中の2mlのSATA溶液を室温で30分間インキュベートした。0.1M PBSバッファー、0.005M EDTA(5mg/100ml)中の20マイクロリッターのヒドロキシルアミン溶液を抗体溶液へ添加して室温で2時間インキュベートした。抗体は次にG25カラムで精製した。SH−標識ウサギ抗ヤギIgGの濃度を280nmの吸収測定で測定した。
【実施例6】
【0104】
表面に2−ピリジルジスルフィド基を有するBNFサセプタの合成およびスルフヒドリル標識ウサギ抗ヤギIgGとの結合
500マイクロリッターのアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)(4.3mg鉄、6mg粒子)を、500mlのPBSバッファーおよび800μlの20mM N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(N−succinimidyl 3−(2−pyridyldithio)propionate:SPDP)と混合した。混合物を室温で1時間振盪して、磁性による分離によってリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)での3回の洗浄を行って、4.1mg/mlの鉄濃度のBNF−SPDサセプタ(図2VII)懸濁液を1ml生産した。結合した2−ピリジルジスルフィド基の数は製造者の使用説明書を用いて測定した。PBS中の100マイクロリッターのBNF−SPDPサセプタ(図2VII)(4.1mg/ml鉄)およびPBS中の基準とするアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)(4.0mg/ml鉄)100mlのそれぞれを、PBS中の100mlの50mM ジチオスレイトール(dithiothreitol:DTT)溶液と共にインキュベートして室温で15分間振盪した。サセプタを次に15,000rpmで15分間遠心分離して、上清の343nmでの吸収を測定して記録した。BNF−SPDPサセプタの上清および基準とするアミノ官能性BNFサセプタの吸収の差異を用いて、343nmでの8080M−1cm−1のモル吸光係数を用いて2−ピリジルジスルフィド濃度を計算した。結果として得られたBNF−SPDPサセプタ(図2VII)表面の2−ピリジルジスルフィド基の濃度は37nmol/mg鉄であった。
【0105】
4.1mg/mlの鉄濃度の900マイクロリッターのBNF−SPDPサセプタ(図2VII)懸濁液を、PBS中の1mlのスルフヒドリル修飾ウサギ抗ヤギIgG(96μg/ml)と共に室温で3時間インキュベートして、磁性による分離によってPBSバッファーで3回洗浄し、結果として3.6mg/mlの鉄濃度を有する抗体結合BNF−SPDPサセプタ(図2VIII)の懸濁液1mlを得た。
【実施例7】
【0106】
表面にマレイミド基を有するBNFサセプタの合成およびスルフヒドリル標識ウサギ抗ヤギIgGとの結合
7.5mmolのN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(N−ethyl−N’−(3−dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride:EDC)および7.7mmolのN−マレオイル−b−アラニンを125mlの0.5M 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(2−(N−morpholino)ethanesulfonic acid:MES)緩衝液(pH=6.3)に溶解して、50℃で10分間インキュベートした。混合物を500mlのアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)(4.3mg鉄、6mg粒子)に添加して室温で2時間振盪した。結果として得られたBNF−マレイミドサセプタ(図2IX)を磁性による分離によって脱イオン水で3回洗浄して、0.22mm Millex−GP filterで濾過することで鉄濃度4.0mg/mlの懸濁液1mlを得た。このBNF−マレイミドサセプタ懸濁液をリン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)中の1mlのスルフヒドリル修飾ウサギ抗ヤギIgG(96mg/ml)と共に室温で3時間インキュベートして、磁性による分離によってPBSバッファーで3回洗浄し、結果として鉄濃度3.8mg/mlの抗体結合BNF−マレイミドサセプタ(図2X)の懸濁液1mlを得た。
【実施例8】
【0107】
BNF−抗体サセプタ複合体の免疫活性試験
図2に描いた異なる抗体結合戦略の有効性を比較するために2段階のイムノアッセイを開発した。第1段階では、結合したウサギ抗ヤギIgGの総量を、HRP−標識ヤギ抗ウサギIgGを2次抗体として用いて明らかにした。この2次抗体はウサギ抗ヤギ粒子複合体と様々な方法で相互作用可能である。図5aはヤギ抗ウサギ2次抗体がBNFサセプタ表面に結合したウサギ抗ヤギ抗体と相互作用する2つの方法の概要を図示したものである。第2段階では、結合した免疫反応性のウサギ抗ヤギIgGの総量をHRP−標識ヤギ抗マウスIgGを用いて測定した。この2次抗体は、1次抗体が正しい配置で結合した場合にのみ、サセプタ表面に結合する。図5aは、ウサギ抗ヤギが適切な配置の場合にのみ、ヤギ抗マウス抗体がウサギ抗ヤギ抗体複合体と相互作用可能であることの概要を図示したものである。
【0108】
ウサギ抗ヤギIgG標識サセプタ(図2IV、VI、VIII、およびX)を、0.05%ポリソルベート20(Tween20)を含有する0.01M リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)(pH=7.4)で2回洗浄した。0.05%ポリソルベート20を含有する0.01M PBS(pH=7.4)1mlおよび1%ビス(トリメチルシリ)アセトアミド(bis(trimethylsily)acetamide:BSA)と共に室温にて2時間振盪することでサセプタをブロッキングした。0.05%ポリソルベート20を含有する0.01M PBS(pH=7.4)で3回洗浄した後、サセプタ懸濁液の鉄濃度を分析して、各懸濁液が同じ鉄濃度を有するように調整した。振盪機上でHRP−標識ヤギ抗ウサギIgGと共に2時間インキュベートした後、サセプタを23,000rpmで15分間遠心分離した。結合していないHRP−標識ヤギ抗ウサギIgGを含む上清200mlを、0.012% 30%過酸化水素を含有する2.2mM 1、2−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(1,2−phenylenediamine dihydrochloride:OPD)50mlと共に室温で10分間展開した。反応は50mlの1.8M硫酸の添加によって停止して、492nmの吸収を測定した。サセプタ表面に共有結合したウサギ抗ヤギIgGの量は、ウサギ抗ヤギIgG標識サセプタ(図2IV、VI、VIII、およびX)とのインキュベーション後の2次HRP−標識ヤギ抗ウサギIgGの消失をモニターすることで測定した。
【0109】
サセプタ表面の免疫反応性抗体の割合は、HRP−標識ヤギ抗マウスIgGを2次抗体として用いて、上述したものと同様の方法で測定した。結合したHRP−標識ヤギ抗マウスIgG2次抗体の量はサセプタ表面の免疫反応性の1次抗体分子のみに相当する。コントロールのアミノ官能性BNFサセプタ(図2II)と比較した場合、非特異的に結合したHRP−標識ヤギ抗ウサギおよびヤギ抗マウス抗体の量は無視できるほどわずかである。
【0110】
抗体標識BNFサセプタ(図2IV、VI、VIII、およびX)を得るための4つの異なる抗体−サセプタ結合戦略のイムノアッセイの結果比較を図6に示す。図6は、図2に図示した戦略を用いて調製した抗体結合サセプタの鉄1mg当たりの免疫活性と比較して、全ての結合した抗体を描いた棒グラフである。SPDPおよびマレイミドに基づいた結合法を用いてサセプタ表面に結合した抗体の総量は、表面のPEG−COOHまたはANB基を用いて結合した抗体と比較して28〜30%高い。PEG−COOHおよびANB−NOSに基づいた結合戦略がサセプタ表面のたった約24〜27%の免疫反応性抗体という結果になった一方で、SPDPおよびマレイミドに基づいた方法は共有結合した1次抗体の総量の66〜67%の免疫反応性抗体をもたらした。
【0111】
実験結果は、安定した高SAR磁性サセプタの生体適合性材料での合成が可能であることを示した。さらに、粒子の全体性およびコロイド安定性を保ちつつ、様々な技術を用いてサセプタへ抗体を結合することが可能である。
【実施例9】
【0112】
【実施例10】
【0113】
BNF−抗体サセプタ複合体の調製および特性解析
まず、2−イミノチオランを用いて、トラスツズマブをチオールへ変換する。次に、脱気リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)中の約2×10−5Mチオール基導入トラスツズマブの1〜2ml全量を、脱気PBS中のBNF−マレイミドサセプタ20ml(400mg)へ添加する。反応混合物を室温で少なくとも1時間振盪する。次に十分なN−エチルマレイミド(N−ethylmaleimide:NEM)を添加して、その試薬中で10mM溶液となるようにする。混合物を約40分間振盪して、次に約30分間磁性による分離を行う。上清を除去して、次の磁性による分離のために新鮮なバッファーを添加する。2若しくはそれ以上の回数洗浄して、次にサセプタ複合体を2mMメルカプトエタノールに再懸濁する。懸濁液を次に振盪して、連続的な洗浄を2若しくはそれ以上の回数続けて抗体付加サセプタ複合体をPBS中で再懸濁する。
【0114】
サセプタ複合体の最終懸濁液で鉄の分析を行った。測定した鉄濃度と、20mg/ml粒子標準(同じMixromodのロットからのもの)のそれとの比較によって、約20mg/mlのサセプタ複合体を得るための最終的な体積調節を首尾良く行った。
【0115】
比吸収率(Specific Absorption Rate:SAR)(鉄のW/g)は、FISO Techonologies UMI4 Universal Multichannel InstrumentとFISO Commander 2 Standard Edition、Techtronix TDS 2024Bによる較正曲線を用いて得た。
【0116】
サセプタ複合体の結合能は、Lindmo et al.が公表した方法である直接的な細胞結合アッセイを用いて測定した。標的抗原を発現した不死化ヒト腫瘍細胞を組織培養から採取した。細胞は洗浄して、反応チューブ中に過剰な抗原を提供するのに十分な細胞濃度、典型的には細胞上の抗原発現に従ってチューブ当たり2〜5千万にてブロッキングバッファー中に再懸濁した。細胞濃度を増加させた複数のマイクロチューブを準備した。少量、典型的には2μg以下のサセプタ−抗体複合体を各マイクロチューブに添加した。細胞およびサセプタ−抗体複合体を持続的に攪拌しながら4℃で4時間インキュベートした。5ミクロンのナイロンフィルターを用いて、結合していないサセプタ複合体を結合したものから分離した。結合した分量の鉄含量は、結合していない分量中の鉄を測定して、試験に加えた鉄の最初の量から差し引くことで計算した。結果は結合したサセプタ複合体の分量を、過剰量の抗原となる細胞濃度に対してプロットして報告した。サセプタ複合体の非特異的結合は、無関係の抗体に結合するサセプタ複合体を用いた同様のアッセイの実施によって測定した。
【0117】
結合試験の準備として、適切な培地を入れた96穴プレート中で、接着細胞(ING−1に対してはHT−29、ハーセプチンに対してはSKBR−3)をコンフルエントになるまで培養した。
【0118】
飽和結合実験のために、0〜1000mMの範囲の濃度の125−I標識リガンド(ING−1、ハーセプチン、またはBNF−サセプタ複合体)を96穴プレートの列方向に段階希釈(典型的には1:1または1:3)で、典型的なウェル当たりの最終体積が100μlとなるように準備した。平衡結合を達成するために、プレートを4℃または室温で(振盪あり、またはなしで)2〜20時間インキュベートした。結合後、100μlの洗浄バッファー(典型的には、1×PBS/0.1%BSA、またはマッコイ5a/10%FCS)でウェルを3回洗浄した。結合した計数対象は、100μlの0.1N NaOHで室温にて20〜30分間かけてウェルから剥離した。ストリッピング溶液をチューブへ移してガンマカウンター中で計数した。計数対象をGraphPad Prism中へ入れて、そこで非線形曲線フィッティングを実行して、BmaxおよびKd値を計算した。
【0119】
競合的結合実験では、96穴プレートの列方向に段階希釈で調製した0〜1000nMの範囲の濃度となる非標識リガンドを典型的な最終体積がウェル当たり100μlとした中で、125−I標識高特異性活性リガンド(trace−typical[trace]=0.1〜5.0nMとして)を非標識リガンドと混合した。プレートを4℃または室温にて(振盪あり、またはなしで)2〜20時間インキュベートして、平衡結合を達成した。結合後、100μlの洗浄バッファー(典型的には、1×PBS/0.1%BSA、またはマッコイ5a/10%FCS)でウェルを3回洗浄した。結合した計数対象は、100μlの0.1N NaOHで室温にて20〜30分間かけてウェルから剥離した。ストリッピング溶液をチューブへ移してガンマカウンター中で計数した。計数対象をGraphPad Prism中へ入れて、そこで非線形曲線フィッティングを実行して、EC50およびKi値を計算した。
【0120】
【表1】

【0121】
本発明は、その特定の好ましい態様への言及によってかなりの詳細まで記述したにもかかわらず、他の変形も可能である。従って、添付の請求項の精神および範囲は記述に限定されず、好ましい変形は本願明細書中に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の磁性領域を形成するアミノ官能性ナノ粒子;前記アミノ官能性ナノ粒子と結合した少なくとも1つのリンカー;および前記アミノ官能性ナノ粒子または前記リンカーと結合した少なくとも1つのリガンドを有する、リガンド結合粒子。
【請求項2】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記磁性ナノ粒子はバイオナイズド・ナノフェライト(bionized nanoferrite)を有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項3】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記磁性ナノ粒子は50%(w/w)以上の鉄含量を有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項4】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは二官能基性化合物である、リガンド結合粒子。
【請求項5】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは、ハロアルキル、エポキシド、ビニルヘテロクムレン、エポキシプロペン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせから選択される1若しくはそれ以上のサブユニットを有するマルチサブユニット組成物である、リガンド結合粒子。
【請求項6】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは1若しくはそれ以上の親水性サブユニットを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項7】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは化学的に異なる化合物の混合物を有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項8】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは、少なくとも1つのジエポキシド、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)エポキシエーテル、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、少なくとも1つのエピクロルヒドリン、またはそれらの組み合わせを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項9】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーはエピクロルヒドリンおよびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項10】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記アミノ官能性粒子は基礎構造を有し、前記基礎構造は少なくとも1つのリンカー、少なくとも1つのリガンド、少なくとも1つのキレート剤、またはそれらの組み合わせを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項11】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リンカーは、アミン、チオール、ヒドラジン、アジド、ジスルフィド、スルホン酸、カルボン酸、マレイミド、またはそれらの組み合わせから選択される1若しくはそれ以上の末端反応性基を有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項12】
請求項11記載のリガンド結合粒子において、末端基の反応性は置換または付加化学に基づくものである、リガンド結合粒子。
【請求項13】
請求項11記載のリガンド結合粒子において、前記カルボン酸はポリ(エチレングリコール)エーテルを基とするカルボン酸である、リガンド結合粒子。
【請求項14】
請求項11記載のリガンド結合粒子において、前記アジドは5−アジド−2ニトロベンズアミドである、リガンド結合粒子。
【請求項15】
請求項11記載のリガンド結合粒子において、前記ジスルフィドは3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミドである、リガンド結合粒子。
【請求項16】
請求項11記載のリガンド結合粒子において、前記マレイミドは1,2−ジアシルエテンまたは3−マレイミジルプロピオンアミドである、リガンド結合粒子。
【請求項17】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リガンドは抗体である、リガンド結合粒子。
【請求項18】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リガンドはチオールまたはアミンから選択される基の取り込みによって修飾されるものである、リガンド結合粒子。
【請求項19】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記リガンドはN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテートによって修飾されるものである、リガンド結合粒子。
【請求項20】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、このリガンド結合粒子は、さらに、
生体適合性コーティングを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項21】
請求項20記載のリガンド結合粒子において、前記アミノ官能性ナノ粒子の表面は前記生体適合性コーティングを形成するものである、リガンド結合粒子。
【請求項22】
請求項1記載のリガンド結合粒子において、前記粒子は温熱療法剤である、リガンド結合粒子。
【請求項23】
リガンド結合粒子であって、
官能性磁性ナノ粒子と、
前記官能性磁性ナノ粒子と結合した少なくとも1つのリンカーとを有し、
前記リガンド結合粒子の比吸収率(specific absorption rate:SAR)は20nm nanomag(登録商標)−D−spio粒子と比較して少なくとも5倍高いものである、
リガンド結合粒子。
【請求項24】
請求項23記載のリガンド結合粒子において、このリガンド結合粒子は、さらに、
前記官能性磁性ナノ粒子または前記リンカーに結合したリガンドを有するものである、リガンド結合粒子。
【請求項25】
被験者の疾患を治療する方法であって、請求項1記載のリガンド結合粒子の有効量を前記被験者に投与する工程を有する方法。
【請求項26】
リガンド結合粒子を調製する方法であって、
(i)アミノ基またはニトロ基を有する単一の磁性領域を形成する粒子を官能化する工程と、
(ii)当該官能性粒子をリンカーと接触させる工程と、
(iii)前記粒子または前記リンカーにリガンドを結合させ、リガンド結合粒子を形成する、前記結合させる工程と
を有する方法。
【請求項27】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記単一の磁性領域を形成するナノ粒子はバイオナイズド・ナノフェライトを有するものである、方法。
【請求項28】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記単一の磁性領域を形成するナノ粒子は、50%(w/w)以上の鉄含量を有するものである、方法。
【請求項29】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーは二官能基性化合物である、方法。
【請求項30】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーは、ハロアルキル、エポキシド、ビニルヘテロクムレン、エポキシプロペン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、またはそれらの組み合わせから選択される1若しくはそれ以上のサブユニットを有するマルチサブユニット組成物である、方法。
【請求項31】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーは1若しくはそれ以上の親水性サブユニットを有するものである、方法。
【請求項32】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーは化学的に異なる化合物の混合物を有するものである、方法。
【請求項33】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーは少なくとも1つのジエポキシド、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)エポキシエーテル、少なくとも1つのポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテル、少なくとも1つのエピクロルヒドリン、またはそれらの組み合わせを有するものである、方法。
【請求項34】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーはエピクロルヒドリンおよびポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルの混合物を有するものである、方法。
【請求項35】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リンカーはアミン、チオール、ヒドラジン、アジド、ジスルフィド、スルホン酸、カルボン酸、マレイミド、またはそれらの組み合わせから選択される1若しくはそれ以上の末端反応性基を有するものである、方法。
【請求項36】
請求項35記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、末端基の反応性は置換または付加化学に基づくものである、方法。
【請求項37】
請求項35記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記カルボン酸はポリ(エチレングリコール)エーテルを基とするカルボン酸である、方法。
【請求項38】
請求項35記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記アジドは5−アジド−2ニトロベンズアミドである、方法。
【請求項39】
請求項35記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記ジスルフィドは3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミドである、方法。
【請求項40】
請求項35記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記マレイミドは1,2−ジアシルエテンまたは3−マレイミジルプロピオンアミドである、方法。
【請求項41】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リガンドは抗体である、方法。
【請求項42】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リガンドはチオールまたはアミンから選択される基の取り込みによって修飾されるものである、方法。
【請求項43】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リガンドはN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテートによって修飾されるものである、方法。
【請求項44】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記官能化する工程は約7〜約9のpHにおいて実施されるものである、方法。
【請求項45】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、この方法は、さらに、
前記リガンド結合粒子を水性緩衝溶液で洗浄する追加の工程を有するものである、方法。
【請求項46】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、この方法は、さらに、
前記リガンド結合粒子を滅菌する追加の工程を有するものである、方法。
【請求項47】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記洗浄する工程は約5〜約8のpHにおいて実施されるものである、方法。
【請求項48】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記粒子または前記リンカーにリガンドを結合させ、リガンド結合粒子を形成する、前記結合させる工程は、前記官能性粒子を前記リンカーと接触させる工程から12時間以内に実施されるものである、方法。
【請求項49】
請求項26記載のリガンド結合粒子を調製する方法において、前記リガンド結合粒子のサイズは10〜80nmである、方法。
【請求項50】
(i)単一の磁性領域を形成する粒子を、アミノ基またはニトロ基によって官能化する工程と、
(ii)当該官能性粒子をリンカーと接触させる工程と、
(iii)前記粒子または前記リンカーとリガンドを結合させ、リガンド結合粒子を形成する、前記結合させる工程と
を有する方法によって調整される温熱療法用ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519342(P2011−519342A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538228(P2010−538228)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086855
【国際公開番号】WO2009/076673
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(510165611)
【Fターム(参考)】