リグノフェノール系複合成形品の製造方法
【課題】 被成形原料に対するバインダーたるリグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体の配合量を増やすことなく、成形品の強度向上、さらに吸湿,吸水時の厚さ膨張を抑制することのできるリグノフェノール系複合成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形する。
【解決手段】 フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリグノフェノール誘導体が有する粘結性やそのメチロール化物が有する熱硬化性により成形されるリグノフェノール系複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具等の木工製品や合板,パーティクルボード等の木質材料には、接着剤や塗料として化石資源を原料とする多くの合成樹脂が使用されているが、化石資源使用量の減量化や木質材料のリサイクル化という観点より、それら原料の持続性資源への転換が望まれている。こうしたなか、相分離系変換システムにより木質系資源から変換・分離されるリグノフェノール誘導体は、(1)従来の工業リグニン(リグニンスルフォン酸等)に比較して淡色で、加熱により溶融し冷却固化時に粘結性を示し、(2)またアセトン,エチルアルコール等の有機溶剤に可溶であり、(3)さらに付加フェノールの選択によりそのフェノール活性の制御が可能等の特性を有していて、これらの特性を活用した複合材料がいくつか提案されてきた(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−278904号公報
【特許文献2】特開2004−75751公報
【特許文献3】特開平2004−123918号公報
【0004】
特許文献1にはセルロース系成形材料(被成形原料)とフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料に濃酸を添加して得られるリグノフェノール誘導体を含有する成形体が開示されている。リグノフェノール誘導体により被成形原料の一体性が向上するとし、またリグノフェノール誘導体はリグノフェノール誘導体親和性の溶媒により成形体から容易に抽出され、成形体と分離可能になっている。
特許文献2にはリグニンから誘導されたリグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体をマトリックスとすることで、フィラーなどの分散材を集合させて複合材料にする一方、前記誘導体を物理化学的処理により構造変換させマトリックスを脱複合可能にする複合化技術が開示されている。
特許文献3にはリグニン由来区分とガラス材料との複合化する技術及び一旦得られたこの複合化材料を脱複合化する技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1〜3に係るリグノフェノール誘導体のバインダー作用によって強度が付与された成形体が得られるが、十分な性能を発揮するリグノフェノール系成形体を作製するにはかなりのリグノフェノール誘導体の配合量を要した。さらに本発明者等が吸湿性のファイバーや粉状体を被成形原料とした成形品の製造研究を行ったところ、十分な抗吸水能や抗吸水膨張率を得るためには、相当量のリグノフェノール誘導体の添加が必要であった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するもので、被成形原料に対するバインダーたるリグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体の配合量を増やすことなく、成形品の強度向上、さらに吸湿,吸水時の厚さ膨張を抑制することのできるリグノフェノール系複合成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形することを特徴とするリグノフェノール系複合成形品の製造方法にある。
請求項2の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1で、バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体とすることを特徴とする。
請求項3の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1又は2で、バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて、前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又は前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物とすることを特徴とする。
請求項4の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1〜3で、無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とすることを特徴とする。
【0008】
請求項1〜3等の発明のごとく、被成形原料にリグノフェノール誘導体等のバインダーを添加し、さらに無機塩を添加して成形することによって、リグノフェノール誘導体等のバインダー単独に比べてリグノフェノール系複合成形品の耐水性や曲げ強度等の物性を向上させることができる。
請求項4の発明のごとく、無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とすると、安価にして水に溶解しイオン化させ易いので、リグノフェノール系複合成形品の製造を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るリグノフェノール系複合成形品(以下、単に「複合成形品」という。)の製造方法について詳述する。
複合成形品の製造方法は例えば次のように行われる。まず被成形原料とバインダーと無機塩が準備される。
【0010】
被成形原料はバインダーの添加があって成形可能になる本複合成形品の主たる原料である。被成形原料はそれだけでは成形加工性がないが、リグノフェノール誘導体等のバインダーが有する粘結性や熱硬化性により成形が図られることとなる。その種類,材質を問わない。二種以上の混合物でもよい。被成形原料には例えばセルロースやヘミセルロース等とリグニンを含有する植物資源の木材等のリグノセルロース系素材、紙,ダンボール等のセルロースを主体としたセルロース系素材、さらにガラス素材や砂,砕砂などがある。被成形原料は複合成形品としての成形性を鑑みると、粉状体又は線状体からなる形態のものが好ましい。ここでいう粉状体は粉体のみならず粒状体やチップ状体のものを含む。線状体は細い線状の物体で、例えば天然及び人造の繊維ファイバーやリグノセルロースを解繊してなるセルロースファイバー等がある。粉状体又は線状体からなる被成形原料には粉状体からなる被成形原料や線状体からなる被成形原料のみならず、粉状体又は線状体を主とする被成形原料が含まれる。前記リグノセルロース系素材,セルロース系素材の粉状体や前記繊維ファイバー,セルロースファイバーの線状体の被成形原料にあっては、本発明によって単に強度向上にとどまらず、当該原料を使用したときにこれまで問題視されてきた吸湿や吸水時の厚さ膨張を抑制できる複合成形品が得られることから一層好ましいものとなる。
【0011】
バインダーは(1)フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体(以下、単に「リグノフェノール誘導体」という。)、(2)リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体、(3)リグノフェノール誘導体のメチロール化物、(4)リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物、(5)として(1)から(4)の少なくとも2以上組合わせた混合物、のうちのいずれかをいう。
【0012】
(1)リグノフェノール誘導体:
リグノフェノール誘導体はリグニンのフェニルプロパン単位の側鎖α位に、フェノール誘導体がC−C結合で導入されたものである。リグノセルロース系材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体として分離抽出する方法には各種方法があるが、ここではその一例を述べる。木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去することによりリグノセルロース系材料中のリグニンにフェノール誘導体を収着する。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を混合しセルロース分を濃酸に溶解させる。この際、フェノール誘導体に溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体と濃酸が接触する界面において酸と接触し、その結果生じたリグニン側鎖α位のカチオンをフェノール誘導体が攻撃し、リグノフェノール誘導体が生成する。この後反応液に過剰の水を加えて反応を停止し、不溶区分を水洗、中和、遠心分離等により回収して、リグノフェノール誘導体が得られる。なお、当方法に用いられるフェノール誘導体は、1価のフェノール、2価のフェノール等を用いることができ、1価のフェノールは、例えばフェノール、クレゾールなど、2価のフェノールはカテコール、レゾルシノール等を挙げることができる。
本実施形態では、リグノフェノール誘導体(ヒノキリグノクレゾール(以下、「LC」という。)、ブナリグノクレゾール(以下、「LLC」という。))を次のようにして得た。アセトンにて脱脂したヒノキ及びブナ木粉(20mesh pass)に、所定量のp-クレゾールのアセトン溶液を添加後、撹拌乾燥することによりp-クレゾールを収着した。2種の収着木粉に72%の硫酸を加え、常温にて1時間攪拌して相分離を行い、得られた試料のアセトン可溶分をエーテル中に滴下し、析出沈殿物(リグノフェノール誘導体)を得た。
【0013】
(2)アルカリ処理誘導体(二次機能変換体):
アルカリ処理誘導体は(1)のリグノフェノール誘導体をアルカリ溶液に溶解させた後、加温処理し、続いて酸性にして析出させた後、中性になるまで水洗し乾燥させて得られたものである。リグノフェノール誘導体はそのアルカリ溶液を加温することにより、側鎖α位に結合したフェノール誘導体のフェノール性水酸基が解離し、生じたフェノキシドイオンは立体的に可能な場合には隣接側鎖β位を攻撃する。これにより側鎖β位のアリールエーテル結合は開裂し、リグノフェノール誘導体は低分子化され、さらに導入フェノール核にあったフェノール性水酸基がリグニン母体へと移動する。アルカリ処理によりリグノフェノール誘導体は低分子化されるが、そのフェノール性はほぼ維持される。
本実施形態では、LCを0.5NのNaOH溶液に溶解し、その溶液をフッ素樹脂製の密閉容器に入れ、電気炉により140℃で所定時間加温することによりアルカリ処理し、その後、塩酸にて酸性(pH2)にし、析出沈殿物を水洗、濾過してヒノキリグノクレゾールのアルカリ処理誘導体(以下、「LC−2dr」という。)を得た。
【0014】
(3),(4)リグノフェノール誘導体のメチロール化物とアルカリ処理誘導体のメチロール化物:
メチロール化物はリグノフェノール誘導体若しくはアルカリ処理誘導体のフェノール性水酸基のオルト位またはパラ位に架橋性のメチロール基を付加したものである。
本実施形態では、LC及びLC−2drを0.2NのNaOH溶液に溶解し、所定量のホルムアルデヒド溶液を加え、窒素雰囲気下60℃で60〜100分間撹拌しながら加温後、0.5Nの塩酸にて酸性(pH2)にし、析出沈殿物を水洗、濾過してヒノキリグノクレゾールのメチロール化物(以下、「ML」という。)及びヒノキリグノクレゾールのアルカリ処理誘導体のメチロール化物(ML−2dr)のメチロール化物を得た。図1はLC,LLC,LC−2dr,ML,ML−2drの製造方法を示す概略フロー図、図2は(2)のアルカリ処理方法と(3),(4)のメチロール化処理方法を簡略フロー図示したものである。
こうして得た(1),(2)の物性値を表1に示す。平均分子量はGPC(ゲル濾過クロマトグラフィ−)により、結合クレゾール量、フェノール性水酸基量及び脂肪族性水酸基量は1H-NMR、相転移温度はTMA(熱機械分析)により測定した。なお、ML,ML−2drのメチロール基量は約4.0〜4.5wt%である。
【0015】
【表1】
【0016】
無機塩は無機の酸成分と無機の塩基成分が結合してできた塩で、炭素以外の非金属元素又は炭素を含まない酸基(但し炭酸は除く)が無機の塩基と結合してできた塩である。この無機塩に関しては、NaCl,CaCl2,KCl,Na2SO4,(NH4)3PO4等のごとく無機酸と無機塩基の中和によって生じる塩であればいかなるものでもよい。NaCl等の正塩の他、NaHCO3等の酸性塩やMgCl(OH)等の塩基性塩を用いることもできる。また単塩の他、KMgCl3等の複塩や錯イオンを含む錯塩を用いることができる。ただ、リグニン直鎖の保護、危険性やコスト、水への溶解度等を鑑みれば塩化ナトリウム,塩化カリウム等のアルカリ金属塩や塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩が好ましく、中性塩がより好ましい。またアルカリ金属,アルカリ土類金属の塩化物でない無機塩がより好ましい。焼却時のダイオキシン対策を必要としないからである。例えばリン酸二水素カルシウム,リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩などである。
本実施形態では塩化ナトリウム,塩化カルシウム,リン酸二水素カルシウム等を用いている。
【0017】
本複合成形品の製造方法は、リグノフェノール誘導体、リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体、リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又はリグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩の水溶液を撹拌しながら添加した後、これを乾燥させ、その後、金型に注入し加熱加圧処理して複合成形品を成形する。加熱処理することにより、リグノフェノール誘導体等のバインダーが軟化,溶融し、冷却固化時に粘結性を生じたり、メチロール化物では熱硬化するので、これを利用して種々の形状の複合成形品を作製できる。また加圧処理することにより、被成形原料間の密着性を向上させると共にバインダーの流動性を高めて成形品の性能を向上させることができる。
例えば被成形原料に木粉を用い、バインダーにリグノフェノール誘導体を用いた複合成形品は、これまでは図3の従来法の操作により成形されてきたが、本発明の製法(本法)では、木粉にリグノフェノール誘導体を収着した後、水溶液として無機塩を添加する。LC等収着木粉に、この無機塩水溶液を滴下撹拌しながら添加し、次いで、これを乾燥させて熱圧成形することにより耐水性,強度の向上が図られた複合成形品を得る。被成形原料にリグノフェノール誘導体等をバインダーとして添加し、さらに無機塩の水溶液を添加することによって、複合成形品の曲げ強さや吸水時の膨潤率等の性能が改善される。
ここで、木粉にリグノフェノール誘導体等のアセトン溶液(又はTHF(テトラヒドロフラン)溶液)と同時に無機塩水溶液を添加したり、木粉に無機塩水溶液を添加した後にリグノフェノール誘導体等のアセトン溶液(又はTHF溶液)を添加してもよいが、リグノフェノール誘導体等のバインダーが木粉へ均一分散しなくなるので、木粉にリグノフェノール誘導体を収着した後に、無機塩水溶液を添加するのがより好ましい。被成形原料に木粉等のリグノセルロース系素材を用いた場合の前記熱圧成形(加熱加圧成形)に係る加熱温度は、160℃〜200℃が好ましい。160℃はリグノフェノール誘導体やアルカリ処理誘導体の相転移温度(熱溶融温度)や被成形原料である木材等の物性より妥当と考えられる下限温度である。一方、木材等のリグノセルロース系材料は約120℃より含有するヘミセルロース成分の分解が始まる等の報告はあるが、大きく変質が始まる温度は200℃前後とされている。また前記加圧の範囲は5MPa〜50MPa、より好ましくは10MPa〜20MPaの範囲である。この範囲より低い場合は圧力の効果が不十分となり成形品の物性が極端に低下し、一方、この範囲を越えると、被成形原料が木粉等のリグノセルロース系素材の場合には被成形原料自体が熱流動する可能性が高まるからである。
【0018】
次に、具体的な複合成形品の製造方法の実施例を述べ、それらの評価試験結果について併せて説明する。
【実施例】
【0019】
[LC等の収着木粉の調製]
前記(1)〜(4)のバインダーを作製すると共に、被成形原料として木粉を準備した。そして所定量の木粉にバインダーたるリグノフェノール誘導体のアセトンやTHF等の15%溶液の所定量を滴下しながら攪拌し、リグノフェノール誘導体等を均一に木粉等中に添加分散させた。例えばリグノフェノール誘導体配合量10%の収着木粉は、22.5gの絶乾木粉に15%濃度のリグノフェノール誘導体のアセトン溶液16.7gを滴下しながら攪拌することにより調製し、その他の配合量の収着木粉は表2に従い調製した。なお、リグノフェノール誘導体のメチロール化物では溶剤にTHFを使用した。
【0020】
【表2】
【0021】
[複合成形品の熱圧成形]
乾燥し溶媒を除去した収着木粉等を金型に均一に入れ、所定圧力・温度・時間熱圧締することにより成形した。例えばヒノキ木粉(20mesh pass)に所定量のLC等のアセトン溶液を添加、撹拌、乾燥して調製したLC等収着木粉をステンレス製金型に採り、温度180℃、圧力15MPaで30分間熱圧締して複合成形品を調製した。その際、複合成型品の物性の向上を目的として一部のLC収着木粉に所定量のCaCl2又はNaClの水溶液を下記[無機塩の添加]により添加した。なお、作製した試験片は、物性等の試験まで、温度20℃・湿度65%の恒温恒湿室内に静置して養生した。
【0022】
[無機塩の添加]
前記収着木粉に所定濃度の無機塩水溶液の所定量を滴下しながら攪拌し、乾燥することにより実施した。なお添加量は、配合したリグノフェノール誘導体中の水酸基量に対するCa2+やNa+の量として表示した。例えばリグノクレゾール配合量10%、無機塩量Ca2+として0.3/OHの場合は、22.5gの絶乾木粉に15%濃度のリグノクレゾール(水酸基量12.8%)のアセトン溶液16.7gを滴下しながら攪拌することにより調製した収着木粉に、0.88gのCaCl2・2H2Oを15gの蒸留水に溶かして滴下攪拌して添加後、乾燥し熱圧成形により得た。
【0023】
[評価試験]
複合成形品の曲げ強さの測定は、スパン長さ50mm、荷重速度2mmにて行い、吸水性試験は20℃の恒温室内で試験体を水面下3cmに24時間静置し、その前後の重量及び厚さを測定することにより行った。
吸水率={(W−W0)/W0}×100 … (1)
吸水厚さ膨潤率={(D−D0)/D0}×100 … (2)
ここで、W0:吸水前の重量 W:吸水後の重量
D0:吸水前の厚さ D:吸水後の重量
【0024】
(a)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が曲げ強さに及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の曲げ強さと、無機塩を添加することによる複合成形品の曲げ強さ変化とを測定した。その測定結果を図4に示す。図中、LCは被成形原料とリグノクレゾールのみの成形品、LC NaはLCにNaClを添加した成形品、LC CaはLCにCaCl2・2H2Oを添加した成形品を示し、またLC Na(0.3/OH)或いはLC Ca(0.3/OH)はLC配合量10%の複合成形品を調整する際、配合LC中のOH基量に対して、Na+(Ca2+)が0.3モルとなるようNaCl(CaCl2)を添加し、熱圧成形して調製した複合成形品を示す(図5〜図7も同様)。曲げ強さはNaCl添加複合成形品で17.1MPa、CaCl2添加複合成形品で19.1MPaで、無添加複合成形品の1.7〜2倍程度の強度を示している。
この試験結果から、(1)リグノフェノール誘導体の配合量が5%,10%,15%,20%と増加するに伴い曲げ強さが高くなること、(2)無機塩を添加することにより曲げ強さが高くなり、リグノフェノール誘導体配合量10%で無機塩を添加したものの曲げ強さは、リグノフェノール誘導体配合量15%(無機塩無添加)のもの以上の曲げ強さがあることが判った。
【0025】
(b)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が比重に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の比重と、無機塩を添加することによる複合成形品の比重変化とを測定した。その測定結果を図5に示す。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い比重が高くなること、(2)無機塩を添加することにより比重が高くなることが示された。尚、LLC,LC−2drについても同様の結果を得た。
【0026】
(c)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水率に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の吸水率と、無機塩を添加することによる複合成形品の吸水率変化とを測定した。その測定結果を図6に示す。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い吸水率が低下すること、(2)無機塩を添加することにより吸水率が低下し、Ca塩を添加するとその効果が特に大きくなり、リグノフェノール誘導体配合量20%(無機塩無添加)のものと同等の性能発揮することが認められた。尚、LLC,LC−2drについても同様の性能発揮することが認められた。
【0027】
(d)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の吸水厚さ膨潤率と、無機塩を添加することによる複合成形品の吸水率厚さ膨潤率変化とを測定した。その測定結果を図7に示す。吸水厚さ膨潤率はNaCl添加複合成形品で24.1%、CaCl2添加複合成形品で8.4%で、CaCl2添加複合成形品ではLC20%配合の無添加複合成形品の結果を上回る値となった。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い吸水厚さ膨潤率が低下すること、(2)無機塩を添加することにより吸水厚さ膨潤率が低下し、Ca塩を添加するとその効果が目立って大きくなり、リグノフェノール誘導体配合量20%(無機塩無添加)のもの以上の性能発揮することが認められた。
【0028】
(e)無機塩の添加が複合成形品の曲げ強さに及ぼす影響:
無機塩の添加量に対する複合成形品の曲げ強さを測定した。その測定結果を図8に示す。図8中、横軸の無機塩添加量は配合リグノフェノール誘導体中の水酸基に対するモル比で、CaはCaCl2・2H2Oを添加したLC配合量10%の複合成形品、NaはNaClを添加したLC配合量10%の複合成形品に関するものである(図9も同様)。
この試験結果から、(1)無機塩の添加量増加に伴い、概ね曲げ強さが高くなること、(2)Ca塩の添加では少量の添加でも効果が大きいことが確認された。
【0029】
(f)無機塩の添加が複合成形品の吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
無機塩の添加量に対する複合成形品の吸水厚さ膨潤率を測定した。その測定結果を図9に示す。
この試験結果から、無機塩の添加量増加に伴い吸水厚さ膨潤率が大幅に低下し、水分に対しての性能が向上することが確認された。またCa塩がNa塩より効果が大で、Ca塩の添加では少量の添加でも効果が大きいことがわかった。概して吸水厚さ膨潤率や前述の曲げ強さに対して、NaCl添加に比べCaCl2添加が効果が高いことは、後者の陽イオンが2価であることに起因すると考えられる。尚、LLC,LC−2drについても同様の効果が確認された。
【0030】
(g)バインダーの種類が曲げ強さに及ぼす影響:
LLC,LC−2dr,ML等のバインダーの違いによる複合成形品の曲げ強さ変化を測定した。その測定結果を図10に示す。無機塩配合量は配合LLC(又はLC−2dr、ML)中のOH基量に対して、Na+(Ca2+)が0.3モルとなるようNaCl(CaCl2)を添加している(図11も同様)。配合するリグノフェノール誘導体等のバインダー種類が変わっても、無機塩の添加により曲げ強さが向上することが確認された。
【0031】
(h)バインダーの種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
バインダーの違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図11に示す。配合するリグノフェノール誘導体等のバインダーの種類が変わっても、無機塩の添加により吸水厚さ膨潤率が低下することが確認された。
【0032】
(i)添加する無機塩の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
添加する無機塩の違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図12に示す。図中、CaCl2 0.3は、CaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加したLCの複合成形品、Ca(H2PO4)2 0.3は、Ca(H2PO4)2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加したLCの複合成形品、NaH2PO4 0.4は、LC中のOH基量に対してNa+が0.4モルとなるよう添加したLCの複合成形品を示す。添加する無機塩の種類が変わっても無機塩添加により、吸水厚さ膨潤率が低下し、また抗吸水能のあることが確認された。
【0033】
(j)被成形原料の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
被成形原料の違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図13に示す。図中、脱脂木粉はアセトンにて脱脂したヒノキ木粉22.5gにLC2.5gを配合した複合成形品、脱脂木粉Ca0.3は該LC配合に加えてCaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加した複合成形品、セルロースパウダーは市販セルロースパウダー22.25gにLC3.75gを配合した複合成形品、セルロースパウダーCa0.3は該LC配合に加えてCaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加した複合成形品を示す。
図13以外の図4〜図12のLCに関するグラフは全てヒノキ木粉(未脱脂)を被成形原料に使用したものである。ここでは脱脂木粉とセルロースパウダーを被成形原料にした複合成形品について、無機塩添加の効果を調べた。脱脂木粉,セルロースパウダーともに無機塩の添加により吸水厚さ膨潤率が低下し、また抗吸水能のあることが確認された。
【0034】
このように構成した複合成形品の製造方法によれば、被成形原料に対するリグノフェノール誘導体等のバインダー配合量を、特許文献1〜3等の従来技術に比べて少なくしながら、吸湿,吸水時の厚さ膨張を抑制すると共に曲げ強さ等の機械的強度を高めることができる。しかもその方法が成形時に無機塩を添加する一工程を加えるだけで極めて簡単にして、且つ無機塩がリグノフェノール誘導体等のバインダーに比べて安価であることから複合成形品の製造コストを下げることができる。無機塩をアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩とすると、無機塩がリグノフェノール誘導体等のバインダーに比べて格段に安価になり、さらに水に対する溶解性が良好にして複合成形品の製造を容易にする。また、リン酸二水素カルシウム,リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩などの塩化物でない無機塩を用いることによって、焼却時にダイオキシン対策を不要にできる。勿論、特許文献1等と同様、本複合成形品中のリグノフェノール誘導体等のバインダーを物理化学的処理によって構造変化させて、複合成形品から該リグノフェノール誘導体等のバインダーを容易に分離し、再利用化できる発明技術になっている。
【0035】
尚、本発明においては、前記具体的実施形態,実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】リグノフェノール誘導体等の製造方法を示す概略フロー図である。
【図2】アルカリ処理方法とメチロール化方法の簡略フロー図である。
【図3】本発明のリグノフェノール系複合成形品の製造方法を従来法と対比表示したフロー図である。
【図4】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図5】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が比重に及ぼす影響を示したグラフである。
【図6】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図7】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図8】無機塩の添加が複合成形品の曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図9】無機塩の添加が複合成形品の吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図10】バインダーの種類が曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図11】バインダーの種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図12】添加する無機塩の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図13】被成形原料の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明はリグノフェノール誘導体が有する粘結性やそのメチロール化物が有する熱硬化性により成形されるリグノフェノール系複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具等の木工製品や合板,パーティクルボード等の木質材料には、接着剤や塗料として化石資源を原料とする多くの合成樹脂が使用されているが、化石資源使用量の減量化や木質材料のリサイクル化という観点より、それら原料の持続性資源への転換が望まれている。こうしたなか、相分離系変換システムにより木質系資源から変換・分離されるリグノフェノール誘導体は、(1)従来の工業リグニン(リグニンスルフォン酸等)に比較して淡色で、加熱により溶融し冷却固化時に粘結性を示し、(2)またアセトン,エチルアルコール等の有機溶剤に可溶であり、(3)さらに付加フェノールの選択によりそのフェノール活性の制御が可能等の特性を有していて、これらの特性を活用した複合材料がいくつか提案されてきた(例えば、特許文献1〜3)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−278904号公報
【特許文献2】特開2004−75751公報
【特許文献3】特開平2004−123918号公報
【0004】
特許文献1にはセルロース系成形材料(被成形原料)とフェノール誘導体が添加されたリグノセルロース系材料に濃酸を添加して得られるリグノフェノール誘導体を含有する成形体が開示されている。リグノフェノール誘導体により被成形原料の一体性が向上するとし、またリグノフェノール誘導体はリグノフェノール誘導体親和性の溶媒により成形体から容易に抽出され、成形体と分離可能になっている。
特許文献2にはリグニンから誘導されたリグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体をマトリックスとすることで、フィラーなどの分散材を集合させて複合材料にする一方、前記誘導体を物理化学的処理により構造変換させマトリックスを脱複合可能にする複合化技術が開示されている。
特許文献3にはリグニン由来区分とガラス材料との複合化する技術及び一旦得られたこの複合化材料を脱複合化する技術が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1〜3に係るリグノフェノール誘導体のバインダー作用によって強度が付与された成形体が得られるが、十分な性能を発揮するリグノフェノール系成形体を作製するにはかなりのリグノフェノール誘導体の配合量を要した。さらに本発明者等が吸湿性のファイバーや粉状体を被成形原料とした成形品の製造研究を行ったところ、十分な抗吸水能や抗吸水膨張率を得るためには、相当量のリグノフェノール誘導体の添加が必要であった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するもので、被成形原料に対するバインダーたるリグノフェノール誘導体及び/又はその二次誘導体の配合量を増やすことなく、成形品の強度向上、さらに吸湿,吸水時の厚さ膨張を抑制することのできるリグノフェノール系複合成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形することを特徴とするリグノフェノール系複合成形品の製造方法にある。
請求項2の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1で、バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体とすることを特徴とする。
請求項3の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1又は2で、バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて、前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又は前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物とすることを特徴とする。
請求項4の発明たるリグノフェノール系複合成形品の製造方法は、請求項1〜3で、無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とすることを特徴とする。
【0008】
請求項1〜3等の発明のごとく、被成形原料にリグノフェノール誘導体等のバインダーを添加し、さらに無機塩を添加して成形することによって、リグノフェノール誘導体等のバインダー単独に比べてリグノフェノール系複合成形品の耐水性や曲げ強度等の物性を向上させることができる。
請求項4の発明のごとく、無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とすると、安価にして水に溶解しイオン化させ易いので、リグノフェノール系複合成形品の製造を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るリグノフェノール系複合成形品(以下、単に「複合成形品」という。)の製造方法について詳述する。
複合成形品の製造方法は例えば次のように行われる。まず被成形原料とバインダーと無機塩が準備される。
【0010】
被成形原料はバインダーの添加があって成形可能になる本複合成形品の主たる原料である。被成形原料はそれだけでは成形加工性がないが、リグノフェノール誘導体等のバインダーが有する粘結性や熱硬化性により成形が図られることとなる。その種類,材質を問わない。二種以上の混合物でもよい。被成形原料には例えばセルロースやヘミセルロース等とリグニンを含有する植物資源の木材等のリグノセルロース系素材、紙,ダンボール等のセルロースを主体としたセルロース系素材、さらにガラス素材や砂,砕砂などがある。被成形原料は複合成形品としての成形性を鑑みると、粉状体又は線状体からなる形態のものが好ましい。ここでいう粉状体は粉体のみならず粒状体やチップ状体のものを含む。線状体は細い線状の物体で、例えば天然及び人造の繊維ファイバーやリグノセルロースを解繊してなるセルロースファイバー等がある。粉状体又は線状体からなる被成形原料には粉状体からなる被成形原料や線状体からなる被成形原料のみならず、粉状体又は線状体を主とする被成形原料が含まれる。前記リグノセルロース系素材,セルロース系素材の粉状体や前記繊維ファイバー,セルロースファイバーの線状体の被成形原料にあっては、本発明によって単に強度向上にとどまらず、当該原料を使用したときにこれまで問題視されてきた吸湿や吸水時の厚さ膨張を抑制できる複合成形品が得られることから一層好ましいものとなる。
【0011】
バインダーは(1)フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体(以下、単に「リグノフェノール誘導体」という。)、(2)リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体、(3)リグノフェノール誘導体のメチロール化物、(4)リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物、(5)として(1)から(4)の少なくとも2以上組合わせた混合物、のうちのいずれかをいう。
【0012】
(1)リグノフェノール誘導体:
リグノフェノール誘導体はリグニンのフェニルプロパン単位の側鎖α位に、フェノール誘導体がC−C結合で導入されたものである。リグノセルロース系材料中のリグニンを、リグノフェノール誘導体として分離抽出する方法には各種方法があるが、ここではその一例を述べる。木粉等のリグノセルロース系材料にフェノール誘導体が溶解した溶媒を浸透させた後、溶媒を留去することによりリグノセルロース系材料中のリグニンにフェノール誘導体を収着する。次に、このリグノセルロース系材料に濃酸を混合しセルロース分を濃酸に溶解させる。この際、フェノール誘導体に溶媒和されたリグニンは、フェノール誘導体と濃酸が接触する界面において酸と接触し、その結果生じたリグニン側鎖α位のカチオンをフェノール誘導体が攻撃し、リグノフェノール誘導体が生成する。この後反応液に過剰の水を加えて反応を停止し、不溶区分を水洗、中和、遠心分離等により回収して、リグノフェノール誘導体が得られる。なお、当方法に用いられるフェノール誘導体は、1価のフェノール、2価のフェノール等を用いることができ、1価のフェノールは、例えばフェノール、クレゾールなど、2価のフェノールはカテコール、レゾルシノール等を挙げることができる。
本実施形態では、リグノフェノール誘導体(ヒノキリグノクレゾール(以下、「LC」という。)、ブナリグノクレゾール(以下、「LLC」という。))を次のようにして得た。アセトンにて脱脂したヒノキ及びブナ木粉(20mesh pass)に、所定量のp-クレゾールのアセトン溶液を添加後、撹拌乾燥することによりp-クレゾールを収着した。2種の収着木粉に72%の硫酸を加え、常温にて1時間攪拌して相分離を行い、得られた試料のアセトン可溶分をエーテル中に滴下し、析出沈殿物(リグノフェノール誘導体)を得た。
【0013】
(2)アルカリ処理誘導体(二次機能変換体):
アルカリ処理誘導体は(1)のリグノフェノール誘導体をアルカリ溶液に溶解させた後、加温処理し、続いて酸性にして析出させた後、中性になるまで水洗し乾燥させて得られたものである。リグノフェノール誘導体はそのアルカリ溶液を加温することにより、側鎖α位に結合したフェノール誘導体のフェノール性水酸基が解離し、生じたフェノキシドイオンは立体的に可能な場合には隣接側鎖β位を攻撃する。これにより側鎖β位のアリールエーテル結合は開裂し、リグノフェノール誘導体は低分子化され、さらに導入フェノール核にあったフェノール性水酸基がリグニン母体へと移動する。アルカリ処理によりリグノフェノール誘導体は低分子化されるが、そのフェノール性はほぼ維持される。
本実施形態では、LCを0.5NのNaOH溶液に溶解し、その溶液をフッ素樹脂製の密閉容器に入れ、電気炉により140℃で所定時間加温することによりアルカリ処理し、その後、塩酸にて酸性(pH2)にし、析出沈殿物を水洗、濾過してヒノキリグノクレゾールのアルカリ処理誘導体(以下、「LC−2dr」という。)を得た。
【0014】
(3),(4)リグノフェノール誘導体のメチロール化物とアルカリ処理誘導体のメチロール化物:
メチロール化物はリグノフェノール誘導体若しくはアルカリ処理誘導体のフェノール性水酸基のオルト位またはパラ位に架橋性のメチロール基を付加したものである。
本実施形態では、LC及びLC−2drを0.2NのNaOH溶液に溶解し、所定量のホルムアルデヒド溶液を加え、窒素雰囲気下60℃で60〜100分間撹拌しながら加温後、0.5Nの塩酸にて酸性(pH2)にし、析出沈殿物を水洗、濾過してヒノキリグノクレゾールのメチロール化物(以下、「ML」という。)及びヒノキリグノクレゾールのアルカリ処理誘導体のメチロール化物(ML−2dr)のメチロール化物を得た。図1はLC,LLC,LC−2dr,ML,ML−2drの製造方法を示す概略フロー図、図2は(2)のアルカリ処理方法と(3),(4)のメチロール化処理方法を簡略フロー図示したものである。
こうして得た(1),(2)の物性値を表1に示す。平均分子量はGPC(ゲル濾過クロマトグラフィ−)により、結合クレゾール量、フェノール性水酸基量及び脂肪族性水酸基量は1H-NMR、相転移温度はTMA(熱機械分析)により測定した。なお、ML,ML−2drのメチロール基量は約4.0〜4.5wt%である。
【0015】
【表1】
【0016】
無機塩は無機の酸成分と無機の塩基成分が結合してできた塩で、炭素以外の非金属元素又は炭素を含まない酸基(但し炭酸は除く)が無機の塩基と結合してできた塩である。この無機塩に関しては、NaCl,CaCl2,KCl,Na2SO4,(NH4)3PO4等のごとく無機酸と無機塩基の中和によって生じる塩であればいかなるものでもよい。NaCl等の正塩の他、NaHCO3等の酸性塩やMgCl(OH)等の塩基性塩を用いることもできる。また単塩の他、KMgCl3等の複塩や錯イオンを含む錯塩を用いることができる。ただ、リグニン直鎖の保護、危険性やコスト、水への溶解度等を鑑みれば塩化ナトリウム,塩化カリウム等のアルカリ金属塩や塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩が好ましく、中性塩がより好ましい。またアルカリ金属,アルカリ土類金属の塩化物でない無機塩がより好ましい。焼却時のダイオキシン対策を必要としないからである。例えばリン酸二水素カルシウム,リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩などである。
本実施形態では塩化ナトリウム,塩化カルシウム,リン酸二水素カルシウム等を用いている。
【0017】
本複合成形品の製造方法は、リグノフェノール誘導体、リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体、リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又はリグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩の水溶液を撹拌しながら添加した後、これを乾燥させ、その後、金型に注入し加熱加圧処理して複合成形品を成形する。加熱処理することにより、リグノフェノール誘導体等のバインダーが軟化,溶融し、冷却固化時に粘結性を生じたり、メチロール化物では熱硬化するので、これを利用して種々の形状の複合成形品を作製できる。また加圧処理することにより、被成形原料間の密着性を向上させると共にバインダーの流動性を高めて成形品の性能を向上させることができる。
例えば被成形原料に木粉を用い、バインダーにリグノフェノール誘導体を用いた複合成形品は、これまでは図3の従来法の操作により成形されてきたが、本発明の製法(本法)では、木粉にリグノフェノール誘導体を収着した後、水溶液として無機塩を添加する。LC等収着木粉に、この無機塩水溶液を滴下撹拌しながら添加し、次いで、これを乾燥させて熱圧成形することにより耐水性,強度の向上が図られた複合成形品を得る。被成形原料にリグノフェノール誘導体等をバインダーとして添加し、さらに無機塩の水溶液を添加することによって、複合成形品の曲げ強さや吸水時の膨潤率等の性能が改善される。
ここで、木粉にリグノフェノール誘導体等のアセトン溶液(又はTHF(テトラヒドロフラン)溶液)と同時に無機塩水溶液を添加したり、木粉に無機塩水溶液を添加した後にリグノフェノール誘導体等のアセトン溶液(又はTHF溶液)を添加してもよいが、リグノフェノール誘導体等のバインダーが木粉へ均一分散しなくなるので、木粉にリグノフェノール誘導体を収着した後に、無機塩水溶液を添加するのがより好ましい。被成形原料に木粉等のリグノセルロース系素材を用いた場合の前記熱圧成形(加熱加圧成形)に係る加熱温度は、160℃〜200℃が好ましい。160℃はリグノフェノール誘導体やアルカリ処理誘導体の相転移温度(熱溶融温度)や被成形原料である木材等の物性より妥当と考えられる下限温度である。一方、木材等のリグノセルロース系材料は約120℃より含有するヘミセルロース成分の分解が始まる等の報告はあるが、大きく変質が始まる温度は200℃前後とされている。また前記加圧の範囲は5MPa〜50MPa、より好ましくは10MPa〜20MPaの範囲である。この範囲より低い場合は圧力の効果が不十分となり成形品の物性が極端に低下し、一方、この範囲を越えると、被成形原料が木粉等のリグノセルロース系素材の場合には被成形原料自体が熱流動する可能性が高まるからである。
【0018】
次に、具体的な複合成形品の製造方法の実施例を述べ、それらの評価試験結果について併せて説明する。
【実施例】
【0019】
[LC等の収着木粉の調製]
前記(1)〜(4)のバインダーを作製すると共に、被成形原料として木粉を準備した。そして所定量の木粉にバインダーたるリグノフェノール誘導体のアセトンやTHF等の15%溶液の所定量を滴下しながら攪拌し、リグノフェノール誘導体等を均一に木粉等中に添加分散させた。例えばリグノフェノール誘導体配合量10%の収着木粉は、22.5gの絶乾木粉に15%濃度のリグノフェノール誘導体のアセトン溶液16.7gを滴下しながら攪拌することにより調製し、その他の配合量の収着木粉は表2に従い調製した。なお、リグノフェノール誘導体のメチロール化物では溶剤にTHFを使用した。
【0020】
【表2】
【0021】
[複合成形品の熱圧成形]
乾燥し溶媒を除去した収着木粉等を金型に均一に入れ、所定圧力・温度・時間熱圧締することにより成形した。例えばヒノキ木粉(20mesh pass)に所定量のLC等のアセトン溶液を添加、撹拌、乾燥して調製したLC等収着木粉をステンレス製金型に採り、温度180℃、圧力15MPaで30分間熱圧締して複合成形品を調製した。その際、複合成型品の物性の向上を目的として一部のLC収着木粉に所定量のCaCl2又はNaClの水溶液を下記[無機塩の添加]により添加した。なお、作製した試験片は、物性等の試験まで、温度20℃・湿度65%の恒温恒湿室内に静置して養生した。
【0022】
[無機塩の添加]
前記収着木粉に所定濃度の無機塩水溶液の所定量を滴下しながら攪拌し、乾燥することにより実施した。なお添加量は、配合したリグノフェノール誘導体中の水酸基量に対するCa2+やNa+の量として表示した。例えばリグノクレゾール配合量10%、無機塩量Ca2+として0.3/OHの場合は、22.5gの絶乾木粉に15%濃度のリグノクレゾール(水酸基量12.8%)のアセトン溶液16.7gを滴下しながら攪拌することにより調製した収着木粉に、0.88gのCaCl2・2H2Oを15gの蒸留水に溶かして滴下攪拌して添加後、乾燥し熱圧成形により得た。
【0023】
[評価試験]
複合成形品の曲げ強さの測定は、スパン長さ50mm、荷重速度2mmにて行い、吸水性試験は20℃の恒温室内で試験体を水面下3cmに24時間静置し、その前後の重量及び厚さを測定することにより行った。
吸水率={(W−W0)/W0}×100 … (1)
吸水厚さ膨潤率={(D−D0)/D0}×100 … (2)
ここで、W0:吸水前の重量 W:吸水後の重量
D0:吸水前の厚さ D:吸水後の重量
【0024】
(a)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が曲げ強さに及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の曲げ強さと、無機塩を添加することによる複合成形品の曲げ強さ変化とを測定した。その測定結果を図4に示す。図中、LCは被成形原料とリグノクレゾールのみの成形品、LC NaはLCにNaClを添加した成形品、LC CaはLCにCaCl2・2H2Oを添加した成形品を示し、またLC Na(0.3/OH)或いはLC Ca(0.3/OH)はLC配合量10%の複合成形品を調整する際、配合LC中のOH基量に対して、Na+(Ca2+)が0.3モルとなるようNaCl(CaCl2)を添加し、熱圧成形して調製した複合成形品を示す(図5〜図7も同様)。曲げ強さはNaCl添加複合成形品で17.1MPa、CaCl2添加複合成形品で19.1MPaで、無添加複合成形品の1.7〜2倍程度の強度を示している。
この試験結果から、(1)リグノフェノール誘導体の配合量が5%,10%,15%,20%と増加するに伴い曲げ強さが高くなること、(2)無機塩を添加することにより曲げ強さが高くなり、リグノフェノール誘導体配合量10%で無機塩を添加したものの曲げ強さは、リグノフェノール誘導体配合量15%(無機塩無添加)のもの以上の曲げ強さがあることが判った。
【0025】
(b)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が比重に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の比重と、無機塩を添加することによる複合成形品の比重変化とを測定した。その測定結果を図5に示す。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い比重が高くなること、(2)無機塩を添加することにより比重が高くなることが示された。尚、LLC,LC−2drについても同様の結果を得た。
【0026】
(c)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水率に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の吸水率と、無機塩を添加することによる複合成形品の吸水率変化とを測定した。その測定結果を図6に示す。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い吸水率が低下すること、(2)無機塩を添加することにより吸水率が低下し、Ca塩を添加するとその効果が特に大きくなり、リグノフェノール誘導体配合量20%(無機塩無添加)のものと同等の性能発揮することが認められた。尚、LLC,LC−2drについても同様の性能発揮することが認められた。
【0027】
(d)リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
リグノフェノール誘導体の配合量に対する複合成形品の吸水厚さ膨潤率と、無機塩を添加することによる複合成形品の吸水率厚さ膨潤率変化とを測定した。その測定結果を図7に示す。吸水厚さ膨潤率はNaCl添加複合成形品で24.1%、CaCl2添加複合成形品で8.4%で、CaCl2添加複合成形品ではLC20%配合の無添加複合成形品の結果を上回る値となった。(1)リグノフェノール誘導体の配合量増加に伴い吸水厚さ膨潤率が低下すること、(2)無機塩を添加することにより吸水厚さ膨潤率が低下し、Ca塩を添加するとその効果が目立って大きくなり、リグノフェノール誘導体配合量20%(無機塩無添加)のもの以上の性能発揮することが認められた。
【0028】
(e)無機塩の添加が複合成形品の曲げ強さに及ぼす影響:
無機塩の添加量に対する複合成形品の曲げ強さを測定した。その測定結果を図8に示す。図8中、横軸の無機塩添加量は配合リグノフェノール誘導体中の水酸基に対するモル比で、CaはCaCl2・2H2Oを添加したLC配合量10%の複合成形品、NaはNaClを添加したLC配合量10%の複合成形品に関するものである(図9も同様)。
この試験結果から、(1)無機塩の添加量増加に伴い、概ね曲げ強さが高くなること、(2)Ca塩の添加では少量の添加でも効果が大きいことが確認された。
【0029】
(f)無機塩の添加が複合成形品の吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
無機塩の添加量に対する複合成形品の吸水厚さ膨潤率を測定した。その測定結果を図9に示す。
この試験結果から、無機塩の添加量増加に伴い吸水厚さ膨潤率が大幅に低下し、水分に対しての性能が向上することが確認された。またCa塩がNa塩より効果が大で、Ca塩の添加では少量の添加でも効果が大きいことがわかった。概して吸水厚さ膨潤率や前述の曲げ強さに対して、NaCl添加に比べCaCl2添加が効果が高いことは、後者の陽イオンが2価であることに起因すると考えられる。尚、LLC,LC−2drについても同様の効果が確認された。
【0030】
(g)バインダーの種類が曲げ強さに及ぼす影響:
LLC,LC−2dr,ML等のバインダーの違いによる複合成形品の曲げ強さ変化を測定した。その測定結果を図10に示す。無機塩配合量は配合LLC(又はLC−2dr、ML)中のOH基量に対して、Na+(Ca2+)が0.3モルとなるようNaCl(CaCl2)を添加している(図11も同様)。配合するリグノフェノール誘導体等のバインダー種類が変わっても、無機塩の添加により曲げ強さが向上することが確認された。
【0031】
(h)バインダーの種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
バインダーの違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図11に示す。配合するリグノフェノール誘導体等のバインダーの種類が変わっても、無機塩の添加により吸水厚さ膨潤率が低下することが確認された。
【0032】
(i)添加する無機塩の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
添加する無機塩の違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図12に示す。図中、CaCl2 0.3は、CaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加したLCの複合成形品、Ca(H2PO4)2 0.3は、Ca(H2PO4)2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加したLCの複合成形品、NaH2PO4 0.4は、LC中のOH基量に対してNa+が0.4モルとなるよう添加したLCの複合成形品を示す。添加する無機塩の種類が変わっても無機塩添加により、吸水厚さ膨潤率が低下し、また抗吸水能のあることが確認された。
【0033】
(j)被成形原料の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響:
被成形原料の違いによる複合成形品の吸水厚さ膨潤率変化を測定した。その測定結果を図13に示す。図中、脱脂木粉はアセトンにて脱脂したヒノキ木粉22.5gにLC2.5gを配合した複合成形品、脱脂木粉Ca0.3は該LC配合に加えてCaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加した複合成形品、セルロースパウダーは市販セルロースパウダー22.25gにLC3.75gを配合した複合成形品、セルロースパウダーCa0.3は該LC配合に加えてCaCl2・2H2OをLC中のOH基量に対してCa2+が0.3モルとなるよう添加した複合成形品を示す。
図13以外の図4〜図12のLCに関するグラフは全てヒノキ木粉(未脱脂)を被成形原料に使用したものである。ここでは脱脂木粉とセルロースパウダーを被成形原料にした複合成形品について、無機塩添加の効果を調べた。脱脂木粉,セルロースパウダーともに無機塩の添加により吸水厚さ膨潤率が低下し、また抗吸水能のあることが確認された。
【0034】
このように構成した複合成形品の製造方法によれば、被成形原料に対するリグノフェノール誘導体等のバインダー配合量を、特許文献1〜3等の従来技術に比べて少なくしながら、吸湿,吸水時の厚さ膨張を抑制すると共に曲げ強さ等の機械的強度を高めることができる。しかもその方法が成形時に無機塩を添加する一工程を加えるだけで極めて簡単にして、且つ無機塩がリグノフェノール誘導体等のバインダーに比べて安価であることから複合成形品の製造コストを下げることができる。無機塩をアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩とすると、無機塩がリグノフェノール誘導体等のバインダーに比べて格段に安価になり、さらに水に対する溶解性が良好にして複合成形品の製造を容易にする。また、リン酸二水素カルシウム,リン酸二水素ナトリウム等のリン酸塩などの塩化物でない無機塩を用いることによって、焼却時にダイオキシン対策を不要にできる。勿論、特許文献1等と同様、本複合成形品中のリグノフェノール誘導体等のバインダーを物理化学的処理によって構造変化させて、複合成形品から該リグノフェノール誘導体等のバインダーを容易に分離し、再利用化できる発明技術になっている。
【0035】
尚、本発明においては、前記具体的実施形態,実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更した実施形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】リグノフェノール誘導体等の製造方法を示す概略フロー図である。
【図2】アルカリ処理方法とメチロール化方法の簡略フロー図である。
【図3】本発明のリグノフェノール系複合成形品の製造方法を従来法と対比表示したフロー図である。
【図4】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図5】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が比重に及ぼす影響を示したグラフである。
【図6】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図7】リグノフェノール誘導体の配合量及び無機塩添加が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図8】無機塩の添加が複合成形品の曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図9】無機塩の添加が複合成形品の吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図10】バインダーの種類が曲げ強さに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図11】バインダーの種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図12】添加する無機塩の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【図13】被成形原料の種類が吸水厚さ膨潤率に及ぼす影響を調べたグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形することを特徴とするリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体とする請求項1記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて、前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又は前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物とする請求項1又は2に記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項1】
フェノール誘導体が収着されたリグノセルロース系材料に酸を添加、混合することにより該リグノセルロース系材料中のリグニンがフェノール誘導体で誘導体化されたリグノフェノール誘導体を、被成形原料にバインダーとして添加し、さらに無機塩を添加した後、成形することを特徴とするリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体とする請求項1記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記バインダーを前記リグノフェノール誘導体に代えて、前記リグノフェノール誘導体のメチロール化物、又は前記リグノフェノール誘導体のアルカリ処理誘導体のメチロール化物とする請求項1又は2に記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記無機塩をアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリグノフェノール系複合成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−306946(P2006−306946A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−128998(P2005−128998)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年11月1日 日本木材学会中部支部主催の「2004年度 日本木材学会中部支部大会」において文書をもって発表
【出願人】(594156880)三重県 (58)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年11月1日 日本木材学会中部支部主催の「2004年度 日本木材学会中部支部大会」において文書をもって発表
【出願人】(594156880)三重県 (58)
【Fターム(参考)】
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