説明

リコペルシコン・エスクレンタム種のゲノムを含むトマトフルーツを有するトマトペースト、ソース、ケチャップ

【課題】トマト植物(tomato plant;トマト植物体)に付いた状態で自然に乾燥する(dehydrate;水分を取り除く)ことにより水分量が減少した果実を有するトマト植物を育てるための方法と、その方法の生産物である水分量が減少したトマトを提供する。
【解決手段】野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンタム種のゲノムを含むトマト果実を有するトマトペースト、ソース、ケチャップであって、前記トマト果実は、トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を有し、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められることを特徴とするトマトペースト、ソース、ケチャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンタム種のゲノムを含むトマトフルーツを有するトマトペースト、ソース、ケチャップに関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥された(dehydrated;脱水された)トマト生成物は、トマト業界の重要な部分を成している。
トマト・ペースト、ケチャップ及び他の被処理トマト生成物の産生は、乾燥エネルギーの要求とするステップ(the energy-requiring steps of dehydration)に依存している。
「日干しにした(“sun-dried”)」トマト生成物の産生は、太陽又は乾燥炉のカット・トマト果実を乾燥することから成る。
【0003】
成熟したトマト果実の乾燥分含有量は、ほぼ5〜10%で変動することができ(デーヴィス、ジェイ.エヌ.(Davies,J.N.)及びホブソン、ジー.イー.(Hobson,G.E.) 1981 トマト果実の成分環境、栄養及び遺伝子型の影響 食品化学及び栄養のCRC 重要な見直し15:205〜280頁(The constituents of tomato fruit- the influence of environment, nutrition and genotype. CRC Critical Review15:205〜280頁)、主に果実サイズに依存する。
通常、処理トマト栽培種は、ほぼ近似の94〜95%のより高い水分量を有する成熟した果実を生産する。
新鮮な10〜20グラムの、より小さい、「チェリー」型トマト果実は、しばしば固形分(乾燥重量)の高い濃縮物であるため、ほぼ90%(10%の乾燥重量)の減少する水濃縮を有する。
【0004】
通常、トマト果実開発段階は前転換期にある段階として分類されることができ、それは初期の果実が熟れて成熟する段階、転換期にある段階及び後の更年か老境にかかった段階まで果実栽培の初期から成る。
一旦果実が充分に熟すと、組織分裂並びに「オーバーライピング」(overripening;過成熟)及び続いて起こる果実中での腐敗に関連した特性に貢献している病原により、組織分裂が起こる(グリアソンデー(Grierson, D.)及びカダーエー.エー.(Kader A.A.) 1986, 果実の成熟及び品質(Fruit ripening and quality)、アサトン ジェイ.ジー.(Atherton, J.G.)及びルディッヒ、ジェイ.(Rudich,J.)編集:トマト作物、 チャップマン及びホール(Chapman and Hall)ロンドン 241〜280頁)。
【0005】
葡萄液果(ブドウ)からのレーズンの産生は、乾燥プロセスがロウのようなクチクラ(waxy cuticle;ロウのような外皮)による水の拡散によって起こる周知のプロセスである(マーチン、アール.ジェイ.エル.(Martin, R.J.L.)及びスコット、ジーエル.(Scott, GL.) 1957 サルタナ葡萄(Sultana grapes)の乾燥に含まれる物理的条件 オーストラリア農業調査ジャーナル(Australian Journal of Agricultural Research) 8: 444-459頁)。
全部の葡萄液果のために、概して、乾燥過程(例えばソーダ浸漬法)は、液果のさまざまな浸漬処理(dipping treatment)によって、援助(assisted)される(ヌーリー、エフ.エス(Nury、F.S.)、ブレック、ジェイ.イー.(Brekke、J.E.)、そして、ボリン、エイチ.アール.(Bolin, H.R.) 1973 果実 バン アドスデン、ダブリュ.ビー.(Van Arsdel, W.B.)、コプリー、エム.ジェイ.(Copley, M.J.)、モーガン、エーエル.(Morgan, Al.)編集: 食品乾燥(Food Dehydration)エブ パブリシング社(Avi Publishing Co)、ウェストポート、コネティカット 第2巻、(Westport, Conn Vol. 2) 158〜198頁)。
手短に言えば、この方法で、液果は2、3秒の間の華氏約200度の温度でのカ性ソーダ(水酸化ナトリウム)の0.2〜0.3%の溶液に浸漬されて、それから乾燥の前に冷水できれいにされる。
クチクラ全体の水蒸気の蒸散がより速い割合で進むことができるために、浸漬の目的は液果クチクラを改質することである。
【0006】
葡萄の様に、トマトは液果として植物学上分類されて、果実表皮上のロウのようなクチクラ(waxy cuticle)を有する(ベーカー、イー.エー.(Baker, E.A.)、ブコバック、エム.ジェイ.(Bukovac、M.J.)及びハント、ジー.エム.(Hunt, G.M.)1982 果実栽培及び開発に関するトマト・クチクラの組成 カトラー、デー.エフ.(Cutler, D.F.)、アルヴィン、ケー.エル.(Alvin, K.L.)、プライス、シー.イー.(Price, C.E.)編集:植物クチクラ(The Plant Cuticle)アカデミック・プレス、ロンドン、33〜44頁)。
しかし、それらが熟した後、つるに残る場合、トマトは一般に分解を経る。
トマトの場合、収穫された果実は、乾燥割合を増やすために一般に半分にカットされる。
あるいは、果実全部は、流体移動を容易にするために突き通される場合がある(オジメルクベ ピー.シー.(Ojimelukwe P.C.) 1994、アスコルビン酸貯留上のプロセシング方法及びトマト生成物の官能的性質の効果(Effects of processing methods on ascorbic acid retention and sensory)ジェイ フ−ド 科学 テクノロジー(J. Food Sci Technol.)31: 247-248頁)。
スライスまたは突き通されたトマト果実の乾燥を、太陽又は非太陽エネルギー入力に基づく乾燥炉のさまざまな種類において起こることができる。
【0007】
気象状況に依存し、厳しい気象が損失に繋がるため、太陽乾燥には欠点がある。
同様に、エネルギーの消費が、乾燥炉の使用する際の欠点である。
天日乾燥及び乾燥器乾燥は食品品質が低下する場合がある。
例えば、人間の食物のトマトの大きな栄養的な貢献のうちの1つである、アスコルビン酸のレベルは、かなり太陽乾燥又は乾燥器乾燥に応じて減少する(オジメルクベ ピー.シー.(Ojimelukwe P.C.) 1994、アスコルビン酸貯留上のプロセシング方法及びトマト生成物の官能的性質の効果(Effects of processing methods on ascorbic acid retention and sensory characteristics of tomato products)ジェイ フ−ド 科学 テクノロジー(J. Food Sci Technol.)31: 247-248頁)。
さらに、乾燥過程の前にトマト果実を半分に切る必要は、全部の乾燥したトマト果実の産生を、考慮に入れていない。
【0008】
リコペルシコン(Lycopersicon)類、例えばリコペルシコン・ヒルスツム(L. hirsutum)がそれらの遺伝子のメイキャップの範囲内で含むことができる属の野生種は、リコペルシコン・エスクレンタム(L. esculentum)種の範囲内で一般にない特性を表した。
これらの遺伝形質は、培養されたリコペルシコン・エスクレンタムへ移されることができる。
例えば、ショ糖蓄積の遺伝形質は、(リコペルシコン・ヒルスツム(L. hirsutum)、リコペルシコン・クルニエブスキ(L. chrniliewskii)及びリコペルシコン・ペルビアヌニ(L. peruvianuni)を含む)亜属エリオペルジコン(Subgenus Eriopersicon)及びこの形質(trait;特性)の成熟した果実に存在する分子的遺伝学的技術と同様に、古典的な遺伝子の繁殖方法を使用して、リコペルシコン・エスクレヌイニ(L. esculenuini)に転送する(シャファー、エー.エー.(Schaffer,A.A.)、ペトレイコブ エム.(Petreikov, M.)、ムロン、ディー.(Miron, D.)、フォゲルマン、エム.(Fogelman, M.)、スピエゲルニアン、エム.(Spiegelnian, M.)、ベネイ−モッシュ、ゼット.(Bnei-Moshe, Z.)、シェン、エス(Shen, S.)、グラノット、ディー.(Granot, D.)、ハダス、アール(Hadas, R.)、ダイ、エヌ.(Dai, N.)、レヴィン、アイ(Levin, I.)バー、エム.(Bar, M.)、フリードマン、エム(Friedman, M.)、ピロウスキー(Pilowsky, M.)、ギルボア、エヌ(Gilboa, N.)、そして、チェン、エル.(Chen, L. 1999)トマト果実を開発する際の含水炭素含有量の改質(Modification of carbohydrate content in developing tomato fruit)ホートサイエンス(Hortscience) 34:12〜14頁)。
リコペルシコンの野生種は、しかしながら、培養されたプラントの値に貢献することができる表現されていない遺伝形質のソースとして又、役立つことができる(ベルナッチ、ディー.(Bernacchi, D.)、ベック-ブーン、ティー.(Beck-Bunn, T.)、エシェッド ワイ.(Eshed, Y.)、ロペス、ジェイ.(Lopez, J.)、ペティアード、ブイ.(Petiard, V.)、ウリング、ジェイ.(Uhlig, J.)、ザニール、ディー.(Zaniir, D.)及びタクスレイ、エス.(Tanksley S.) 1998 トマトの発育の進んだ戻し交配QTL解析(Advanced backcross QTL analysis in tomato) リコペルシコン ヒルスツムからの農学の重要性の形質のためのQTLsの確認 定理 適用(dentification of QTLs for traits of agronomic importance from Lycopersicon hirsutum. Theor. Appl.) ジェネット(Genet.) 97 : 381〜397頁)。
【0009】
(発明の開示)
本発明は、トマト植物(tomato plant;トマト植物体)に付いた状態で自然に乾燥する(dehydrate;水分を取り除く)ことにより水分量が減少した果実を有するトマト植物を育てるための方法と、その方法の生産物である水分量が減少したトマトを提供するものである。
【0010】
果実の腐食に繋がる分解プロセス(degeradative process)を伴うことなく、つるに付いたまま自然に乾燥する形質を有するトマト品種の改良は、トマト産業のさまざまな要素にとって、非常に貴重である。
それは、ペースト、ソース、ケチャップの生産コスト及びエネルギー消費の削減に貢献し得る。
それは、高品質の乾燥トマト製品及び(レーズンのような)半乾燥トマト製品の生産に貢献し得る。
輸送される物の体積が減少するので、トマト果実の運搬の改良にも貢献し得る。
減少した水分量には、細菌性腐敗(microbial spoilage)への耐性に貢献する可溶固形分濃度(soluable solids concentration)の増加を伴うので、トマト果実の貯蔵能力を改良することができる。
【0011】
そこで、本発明の好ましい実施態様によると、少なくとも一つのリコペルシコン・エスカレンタム植物をリコペルシコン種と交配させハイブリッド種を産生する段階と、ハイブリッド種の第一世代を回収する段階と、そのハイブリッド種の第一世代から植物を生長させる段階と、最新ハイブリッド世代の植物を授粉させる段階と、その最新ハイブリッド世代により産生された種を回収する段階と、最新ハイブリッド世代の種から植物を生長させる段階と、通常の成熟時期を過ぎても、植物をつるに残したままにする段階と、熟した果実の延長された保存期間と果実表皮のしわにより示される果実中水分の減少量を調べる段階とを含む果実中水分の減少したトマトを産生するトマト植物を育てる方法が提供される。
【0012】
本発明の好ましい実施態様によると、種を授粉させる段階と、種を回収する段階と、植物を生長させる段階は、少なくとも一度は繰り返される。
【0013】
更に、本発明の好ましい実施態様によると、授粉段階は、自己授粉(self pollination)を含む。
【0014】
尚も更に、本発明の好ましい実施態様によると、授粉段階は、リコペルシコン・エスカレンタム植物との戻し交配を含む。
【0015】
また、本発明の好ましい実施態様によると、リコペルシコン種植物は、リコペルシコン・ヒルスツム植物である。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によると、その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、その交配した植物を生長させる段階と、非交配リコペルシコンからの果実と比較して乾燥重量%が増加したトマト果実を有する植物を選択する段階とを更に含む。
前記交配段階と選択段階は、少なくとも一度は繰り返されてもよい。
その交配は有性交配又は無性交配のどちらを含んでもよい。
無性交配は、体細胞交雑(somatic cell hybridization)を含んでもよい。
【0017】
更に、本発明の好ましい実施態様によると、その方法は、所望の特性を有するトマト果実を有する植物を繁殖させる段階を更に含む。
その繁殖段階は、栄養繁殖であっても種による繁殖であってもよい。
【0018】
本発明の好ましい実施態様によると、本発明は、その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、その交配した植物を生長させる段階と、乾燥の兆候を示す前に熟したトマト果実を収穫する段階と、その果実を植物から取り除いた後に乾燥させることのできる段階とを更に含む。
【0019】
本発明の好ましい実施態様によると、トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を特徴とするトマト果実をも提供され、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥は、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められる。
【0020】
本発明の好ましい実施態様によると、表皮のしわを得るように果実を乾燥できる未処理の表皮を特徴とするトマト果実が提供され、その乾燥は、概して細菌性腐敗を伴わない。
【0021】
(発明を実施するための最良な形態)
トマト植物に付いたまま自然に乾燥し、水分が減少した果実を有するトマトを育てる方法について以下に説明する。
【0022】
トマト植物を飼育する方法は、第1のハイブリッド種を産生する野生のリコペルシコン種植物を有する少なくとも一つのリコペルシコン・エスクレンツム植物を含む。
リコペルシコン・エスクレンツム植物の果実はそれから熟することができ、ハイブリッド型(F1)種が回収される。
回収されたF1種は、それから植えられ、F1植物が育てられた後、自己授粉が可能となる。
自己増殖は少なくとも一つの追加の世代のために続けられてもよく、または、F1植物はリコペルシコン・エスクレンツム親植物(L. esculentum parental plant)へ交配することができる。
自己交配及び戻し交配された世代からの果実は、果実色の変化によって定まる通常の成熟時期を過ぎても、つるに付いた状態でいることが可能であり、天然乾燥の存在が選別される(be screened)。
果実が通常の赤い熟した収穫段階の後にも、つるに残ることができる際、天然乾燥又は水分の減少量は果実表皮にしわを生成することによって示される。
【0023】
自己交配された世代のいずれの植物も、マイクロ伝播(micropropagation)のようなまたは有性繁殖法(sexual propagation method)による栄養繁殖方法用に伝播されることができる。
植物は、また、果実中水分量の減少以外の特性を取り入れる品種を作るために他のリコペルシコン・エスクレンツム栽培種によって交配することができる。
品種は、それから生長するか有性繁殖法によって伝播されることができる。
【0024】
また、自己交代された世代のいずれの植物も、少なくとも一つの世代のためのリコペルシコン・エスクレンツムへ戻し交配(back crossed)してもよい。
最後の戻し交配世代の果実は、成熟の通常の点を過ぎてつるに残ることができる。
果実表皮でしわを生成することによって証明されたように、乾燥の外観は、果実中水分量の減少を示す。
この形質のために選ばれる植物は、それから種ベースの伝播によってか、又は、生長的に(vegetatively)伝播されることができる。
選択された植物は、それからまた、果実中水分量の減少以外の特性を取り入れる品種をつくるために他のリコペルシコン・エスクレンツム栽培種によって交配することができる。
品種は、それからまた、生長するか有性繁殖法によって伝播されることができる。
【0025】
以下に実施例を、ここで参照し、それらは本発明を例示する。
【0026】
(例1)
リコペルシコン・エスクレンツム育成系統(bleeding line)1630(種内雑種の産生を単純化するために用いるボルカニ・インスティテュート雄性不稔(Volcani Institute male sterile )育成系統)の植物は、リコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)の花粉によって授粉された。
ハイブリッドFI植物は、育てられて、自己に授粉を許容し、F2種を生成する。
F2種は、蒔かれて、350の植物についてスクリンハウスにおいて育てられて、自己授粉を可能にする。
果実を生産した各々の個体植物からの熟した果実は、高い可溶固形分(soluble solids)の特性を含んだ系統を保証するために、可溶固形分を個々に(屈折計で)分析された。
異種間のF2植物のうちの25だけは、自由に果実を生産した。
熟した際に、3つのF2植物はそれらの(10ブリックス(Brix)を越える)高糖含有量に基づいて選ばれた。
例えば、F2−82の果実は、新鮮な果実のグラム重量当たり71mgの可溶性糖を有し、本願明細書において下で記載されている方法によって定まるショ糖、グルコース及びフルクトースを含んでいた。
F3種は蒔かれ、そして、(F2−24、F2−82及びF2−134と呼ばれる)これらの3つのF2から選択されたものの各々のF3植物の10の植物が育てられ、そして、通常の熟成及び収穫段階を過ぎても、果実はつるに付けたままにした。
熟したときに、これらのF3植物からの果実は一般に黄色であり、通常の成熟段階の後でさえ赤くならなかった。
F3植物の中の一つの植物(F3−203−10(F2−134に由来する))は果実乾燥の徴候の特性を示し、果実表皮でしわになることによって立証された。
【0027】
増殖プログラム(pedigree breeding program)は、選択システムとして、赤く熟した段階の後に果実表皮でしわを生成することによって証明されるような果実乾燥の兆候を使用する水分量の減少したトマトを得るために開発された。
この増殖ストラテジ(breeding strategy)はF4世代まで自己増殖F3−203−10からなり、そして、BC1F4個体群を生産するために4つの追加の世代のために自己交配されている生成物については、系統L−27に生育しているリコペルシコン・エスクレンツムに戻し交配する。
この個体群(系統901,903)と商用のトマト栽培種(cv.F139及びcv.BR124)との間の交配から誘導される植物と同様に、この個体群の系統は、全てが熟した果実表皮の中でしわが生成することによって証明されたように、果実乾燥の形質を示した植物を生産した。
ハイブリッド植物の形質の存在は、形質が遺伝できることを示して、優先種遺伝因子によって支配して、増殖プログラムの世代の初期に選択されることができる。
【0028】
(例2)
成熟した果実(71mgの可溶性糖(果実の新しいグラム重量につきショ糖、グルコース及びフルクトースから成る))の高い可溶性糖レベルによって特徴づけられた1つの植物(F2.82)からの花粉(Pollen)は、2つの基準(2つの戻し交配F1(BC−F1)個体群の産生のための産業基型トマト(増殖系統A701及び699))に授粉するために用いた。
各々の2つのハイブリッドからの100のBC−F2植物は育てられ、果実乾燥(果実表皮の中でしわが生成することによって立証される)の兆候の存在が、これらのF2個体群から植物の果実中に見られた。
これは、選択プログラムの初期でさえ、形質が植物の大集団なしで選択されることができることを示す。
【0029】
(実験3)
発育の進んだ系統の後代の果実が果実にしわの生成によって証明されたように、つる上の乾燥物に特性を示した実験1に記載されている系統から誘導し、圧搾される液汁及び表された液汁のブリックス値はデジタル屈折計(アタゴ(Atago)モデルX-1)で測定された。
以下の表は、いくつかの部分的に乾燥されたトマト果実(約15g、チェリーのサイズ)の特性ブリックス値を示す。
部分的に、しわが生成されるときに、果実は収穫されたが、十分に乾燥状態にならなかった。
この実験の結果は、果実乾燥の形質及びブリックス値の増加が選択可能な受け継がれた形質であることを示す。
1465−3と桜の栽培種F139との間のF1のハイブリッドであったように、親から選択されたもの(1465−3自身(self))は部分的に乾燥された。
これは、形質が少なくとも部分的にその遺伝パターンの優先種であることを示す。
同様に、F2個体群(1730)からの3つの代表的な植物から選択されたものは、しわが生成する果実の形質を示して、選択方法が、F2個体群を分離する際に使われることができることを示すF1(1465−3 × F139)自身に由来した。
【0030】
表1は、果実のしわが視覚的に観察可能であるときに、部分的に乾燥された段階でつるから収穫されたトマト果実のブリックス値を示す。果実サイズは、チェリートマト・サイズであった(約10〜15g)。
[表1]
トマト植物 クロス 世代 ブリックス値
1630-1+2 1465-3自身 BC2F2 19.2
1631-1 1465-3 × cv.139 BC3F1 17.4
1730-3 1631-2自身 BC3F2 22.4
1730-4 1631-2自身 BC3F2 29.0
1730-5 1631-2自身 BC3F2 11.1
【0031】
(実験4)
つるからの除去の後、乾燥プロセスが起こることができるかどうか決定するための実験において、BCF3個体群からの赤い熟した果実は、上記のように収穫された後、残されて、温度調節のない実験台上の網状スクリーンで乾燥された。
ほぼ1ヵ月以後、果実は86.2%の乾燥重量に達して、概して、微生物の腐敗には至らなかった。
パーセント乾燥重量(Percent dry weight)は、60℃で24の一晩中、強制空気オーブン(forced air oven)の乾燥の後、乾燥器乾燥より前の果実の重量に対する重量パーセントとして算出された。
10の代表的な果実は、パーセント乾燥重量を算出するために用いた。
【0032】
更なる減衰なしで、この種の果実は、少なくとも5ヵ月間、制御されていない環境である5℃の室温で1年以上もの間、維持された。
これらの実験の結果は乾燥果実が乾燥(乾燥が始まる前に)のさまざまな段階で収穫されることができることを示し、果実のその乾燥はまた、つるから取り除いた後、継続することができる。
【0033】
(実験5)
乾燥プロセスの開発を特徴づけるために、果実の乾燥の形質を示した植物からの、14の赤い熟した果実のいずれが選ばれるかについて、実験が行なわれたが、それら自身のいずれもが、それ自身乾燥段階にまだ至っていなかった。
下記のように、赤く熟したときに、これらの果実のうちの7つは収穫され、そして、直ちに分析された。
追加の14日間で、他の7つの果実はつるに付けられたままにされ、次のように、しわになっている果実が観察された時、分析された。
【0034】
各々の果実は個々に重量を計測され、ブリックス値のために、果実液汁のサンプルが屈折計によって試験された。
上記の通りに、パーセント乾燥重量の計算のために、各々の果実の追加のサンプルは、新たに重量を測定され、それから乾燥器において乾燥した。
次のように、各々の果実の第3の部分が、個々の可溶性糖レベルの解析のために使われた。
【0035】
個体果実は収穫され、一部の果実表皮は80%のエチルアルコールに置かれて、酵素活性を止めて、可溶性糖を抽出するために70℃まで加熱された。
可溶性糖は、80%のアルコールの連続した変化において3度抽出され、それから蒸発された。
【0036】
糖はそれから再蒸留水に溶かされ、セルのかけら(cell debris)を除去するために、15分間エッフェンドルフ遠心管(eppendorf centrifuge tube)の5,000回転数/分で遠心分離され、高圧液体クロマトグラフィー(high Pressure Liquid Chromatography)(HPLC)分析に備えて、0.5mlのアリコート(aliquot;部分標本)が0.45ミクロンのフィルタに通過した。
HPLC分析は、製造業者の規定によればグルコース、フルクトース及びショ糖の分別のためのバイオラッド(BioRad)(リッチモンド(Richmond)、CA、USA)ファースト カーボハイドライト カラム(Fast Carbohydrate Column)を使用して実行された。
糖は、シグマ(Sigma)(セントルイス、MO、USA)から得られた糖のための基準のクロマトグラフの挙動によって識別されて量を定められた。
【0037】
この研究の結果は表2に示され、しわを生成する現象が、果実からの水の減少を伴い、ブリックス値及び個々の糖濃度の増加において、乾燥重量%の増加に至ることを示す。
果実当たりの乾燥分は、ほぼ同じままである。
これは、果実にしわを生成する現象並びに糖濃度及び乾燥分濃度の相伴う増加の現象が、果実乾燥分含有量の相伴う減量なく、果実を自然乾燥することの主要な1つであることを示した。
【0038】
[表2]
特色 熟した赤 しわの生成
新鮮な重量(グラム/果実) 16.63 12.20
乾燥重量% 12.53 17.89
ブリックス 11.51 14.57
糖(mg/gm fr w)
合計 66.4 86.4
ショ糖 3.8 6.1
グルコース 30.5 38.4
フルクトース 32.1 41.9
含水量(g/果実) 14.55 10.02
乾燥重量(g/果実) 2.08 2.18
糖(g/果実) 1.10 1.05
【0039】
まとめとして、本発明の方法については、トマト果実は、表皮のしわを得るために果実の乾燥を許容する非処理の表皮によって特徴づけられて得られることができ、これにより、乾燥は微生物の腐敗を概して伴わない。
本発明の別の態様において、トマト植物上のトマト果実は、自然乾燥能力によって特徴づけられて得られることができ、自然な乾燥が微生物の腐敗を概して伴わない通常の熟した収穫段階の後、果実が植物に残り得るときに、自然乾燥がトマト果実の表皮のしわによって定められる。
【0040】
あるいは、トマト果実が、例えば乾燥の間と後に表皮色を保持するのを助ける二酸化硫黄のような物質で処理されることができる点が留意され、例えば、それはレーズンのような乾燥果実で処理される。
【0041】
本発明が特に本願明細書において記載されたことに限られていないことは、当業者によって認められる。
むしろ、本発明の範囲は、特許請求の範囲だけによって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンタム種のゲノムを含むトマト果実を有するトマトペースト、ソース、ケチャップであって、
前記トマト果実は、トマト植物に付いたまま自然乾燥する能力を有し、概して細菌性腐敗を伴わないその自然乾燥が、通常の熟した状態での収穫段階の後に植物に付いた状態のままにされたトマト果実表皮のしわにより定められる
ことを特徴とするトマトペースト、ソース、ケチャップ。
【請求項2】
野生のリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)種からの遺伝子移入を伴うリコペルシコン・エスクレンタム種のゲノムを含むトマト果実を有するトマトペースト、ソース、ケチャップであって、
前記トマト果実は、表皮のしわを得るように果実を乾燥できる未処理の表皮を特徴とし、その乾燥が、概して細菌性腐敗を伴わない
ことを特徴とするトマトペースト、ソース、ケチャップ。
【請求項3】
トマト植物の前記トマト果実は、
少なくとも一つのリコペルシコン・エスカレンタム植物をリコペルシコン・ヒルスツム(LA1777)と交配させハイブリッド種を産生する段階と、
ハイブリッド種の第一世代を回収する段階と、
そのハイブリッド種の第一世代から植物を生長させる段階と、
最新ハイブリッド世代の植物を授粉させる段階と、
その最新ハイブリッド世代により産生された種を回収する段階と、
最新ハイブリッド世代の種から植物を生長させる段階と、
通常の成熟時期を過ぎても、植物をつるに残したままにする段階と
熟した果実の延長された保存期間と果実表皮のしわにより示される、果実中水分の減少したハイブリッド植物を選択する段階と、
を有する方法により選択され、
前記方法はさらに、
その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、
その交配した植物を生長させる段階と、
非交配リコペルシコンからの果実と比較して乾燥重量%が増加したトマト果実を有する植物を選択する段階と、
を含む請求項1又は2に記載のトマトペースト、ソース、ケチャップ。
【請求項4】
前記種を授粉させる段階と、前記種を回収する段階と、前記植物を生長させる段階が、少なくとも一度は繰り返される請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記授粉段階が自己授粉を含む請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記授粉段階が、リコペルシコン・エスカレンタム植物との戻し交配を含む請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記交配段階と選択段階が、少なくとも一度は繰り返される請求項3記載の方法。
【請求項8】
前記交配が有性交配を含む請求項3記載の方法。
【請求項9】
前記交配が無性交配を含む請求項3記載の方法。
【請求項10】
前記無性交配が、体細胞交雑を含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
熟した果実の延長された保存期間と果実表皮のしわにより示される果実中水分の減少したトマト果実を有する植物を繁殖させる段階から更になる請求項3記載の方法。
【請求項12】
前記繁殖段階が、栄養繁殖段階を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記繁殖段階が、種による繁殖段階を含む請求項11記載の方法。
【請求項14】
その後代が果実中水分量の減少を示すハイブリッド種由来の植物を、リコペルシコン植物と交配させる段階と、
その交配した植物を生長させる段階と、
乾燥の兆候を示す前に熟したトマト果実を収穫する段階と、その果実を植物から取り除いた後に乾燥させることのできる段階とから更になる請求項3記載の方法。

【公開番号】特開2011−200239(P2011−200239A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−106718(P2011−106718)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2001−517862(P2001−517862)の分割
【原出願日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【出願人】(501476443)
【Fターム(参考)】