説明

リサイクルされた封止フィルムを用いた太陽電池モジュールの製造方法

【課題】ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを用いて太陽電池モジュールを製造するに際し、リサイクルされたフィルムを用いて、新品のフィルムを用いて製造されたのと同等の性能を有する太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを太陽電池セルと保護部材との間に配置し、引き続き加熱して樹脂を溶融させてから冷却することによって太陽電池セルを封止する太陽電池モジュールの製造方法において、前記封止フィルムの少なくとも一部が、リサイクルされたフィルムであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルされた封止フィルムを用いた太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールにおいては、通常、外部の悪影響から保護するために光電性の半導体素子(以下、太陽電池セルという)を透明部材で覆っている。太陽電池セルは、ガラス板などの透明板と、バックシートとの間に接着性を有する封止材を用いて封止されている。
【0003】
太陽電池セルは極めて破損しやすいため、特許文献1または特許文献2に開示されているように、架橋剤入りのエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)や硬化性注型樹脂をベースとする架橋性の樹脂が封止材としてしばしば使用される。これらの樹脂は硬化していない状態では、気泡を含むことなく太陽電池セルを包囲するような低い粘度に調整することができる。また、硬化剤または架橋剤を用いて架橋させることによって、所定レベル以上の力学的強度を示す接着層が得られる。しかしながら、EVAを用いて製造した太陽電池モジュールは、EVAの加水分解又は熱分解によって生じる酢酸によって金属成分の腐食が起こるという問題点を有している。また、EVAの場合は、フィルムを溶融させて架橋反応を進行させるときの温度が、融点よりもかなり高く、溶融粘度が低くなるため、ガラス端部より樹脂が流れ出し、ラミネート装置やガラス面を汚してしまうという製造過程上の問題も有している。一方、硬化性注型樹脂を用いて製造した太陽電池モジュールは、樹脂の硬化を制御することが困難であるため、太陽電池セルの埋め込みが困難であり、実際には殆ど採用されていない。また、いくつかの注型樹脂は数年後に気泡を形成したり、または剥離する場合がある。
【0004】
また、特許文献3などに記載されているように、熱可塑性樹脂であるポリビニルブチラール(PVB)に可塑剤を加えたフィルムも封止材として使用される。PVBは酸成分を生じる原因となる酢酸ユニットを少量しか含有しておらず、EVAに比べて金属成分の腐食を起こし難いという利点がある。また、PVBは流動開始温度での粘性が高いので、ガラス端部から樹脂が流れ出て装置やガラス面を汚す心配が少ない。また、力学的な観点から見ても、PVB樹脂からなるフィルムはガラスに対する接着性に優れており、太陽電池モジュール用の封止フィルムとして好適である。
【0005】
一方、環境保護の観点から、合わせガラスのリサイクルが求められている。合わせガラスをリサイクルする方法としては、種々の方法が知られており、また、リサイクルされたポリビニルブチラール樹脂の用途についても種々提案されている。
【0006】
特許文献4には、合わせガラスの表面のガラスを破砕して回収されるガラス破砕片が付着した中間膜を有機溶剤に浸漬し、ガラス破砕片と樹脂分を分離する方法が記載されている。このような方法を用いることにより、使用済み合わせガラスに含まれる中間膜から、簡単な操作で、多量のエネルギーを必要とせず、経済的に、高品質な樹脂を回収することができるとされている。
【0007】
特許文献5には、一対のガラス板間に中間膜が配置されて形成される合わせガラスを粉砕し、ガラス片が付着した中間膜を得る工程、該中間膜を水に浸漬し、該中間膜に、水との速度差が1.8m/sec以上となるように剪断力を付与する工程を包含する、合わせガラス用中間膜の再生方法が記載されている。このような方法によれば、不要となった合わせガラスの中間膜よりガラスを完全に除去することができるので、中間膜を回収することができ、従って、この中間膜を再利用することができるとされている。
【0008】
特許文献6には、熱可塑性ポリアミド組成物であって、A.約20重量%〜約95重量%のポリビニルブチラール(PVB)を含む5〜30重量%の易流動性の強靭化剤と、B.10〜45重量%のガラス繊維と、C.補足的に、融点が約230℃未満、数平均分子量が少なくとも5,000である85〜25重量%のポリアミドとを含むことを特徴とする組成物が記載されている。このとき、強靭化剤(A)に含まれるPVBが、純PVB、バージン可塑化PVB、屑PVB、エッジ・トリムPVB、およびその混合物からなる群から選択されることも記載されている。
【0009】
特許文献7には、ポリ塩化ビニル、無機フィラー及びポリビニルブチラールを含む塩化ビニルポリマー組成物であって、ポリビニルブチラールが該組成物の約0.5〜約4重量%である塩化ビニルポリマー組成物が記載されている。このとき、ポリビニルブチラールが再生ポリビニルブチラールであることも記載されている。
【0010】
特許文献8には、2枚の透光性基板間に熱可塑性樹脂からなる中間膜が配設されて形成された合わせガラスを破砕する工程、透光性基板の破片が付着した中間膜を混練して透光性基板の粒子が分散した樹脂組成物を得る工程、及び該樹脂組成物を成形する工程、を包含する散光性合わせガラス用中間膜の製造方法が記載されている。このような方法によれば、不要となった合わせガラスを破砕し、次いでガラス片が付着した中間膜を混練してガラス粒子が分散した樹脂組成物を成形するので、不要となった合わせガラスの中間膜を有効に利用して散光性の中間膜及び合わせガラスを製造することができ、またその製造方法も簡単であり、得られる製品の品質のバラツキも少ないものであるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭58−23870号公報
【特許文献2】特開平6−177412号公報
【特許文献3】特開2006−13505号公報
【特許文献4】特開2003−160688号公報
【特許文献5】特開平5−309655号公報
【特許文献6】特表2006−509846号公報
【特許文献7】特表平9−504818号公報
【特許文献8】特開平5−32434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを用いて太陽電池モジュールを製造するに際し、リサイクルされたフィルムを用いて、新品のフィルムを用いて製造されたのと同等の性能を有する太陽電池モジュールを製造する方法を提供することを目的とするものである。また、それにより、製造コストを低減するとともに、環境への負荷を低減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを太陽電池セルと保護部材との間に配置し、引き続き加熱して樹脂を溶融させてから冷却することによって太陽電池セルを封止する太陽電池モジュールの製造方法において、前記封止フィルムの少なくとも一部が、リサイクルされたフィルムであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法を提供することによって解決される。
【0014】
このとき、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物をガラスから剥離して回収し、それを溶融成形することによって前記リサイクルされたフィルムを得ることが好ましい。そして、前記樹脂組成物を溶媒で膨潤させた状態でガラスから剥離して回収し、それを乾燥してから溶融成形することがより好ましい。太陽電池モジュール、自動車用合わせガラス及び建築用合わせガラスからなる群から選択される少なくとも1種のガラス製品を原料として用いることが好適な実施形態である。ガラスから剥離して回収した樹脂組成物に、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び接着性調整剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加してから溶融成形することも好ましい。そして、自動車用合わせガラスを原料として用いる場合は、ガラスから剥離して回収した樹脂組成物を水洗してアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量を低くするか、回収した樹脂組成物に接着性向上剤を添加してから、溶融成形することによって前記リサイクルされたフィルムを得ることがより好ましい。
【0015】
前記リサイクルされたフィルムを、太陽電池セルの受光面の反対側に配置することが好ましい。前記リサイクルされたフィルムと太陽電池セルとの間に、リサイクルされていない新品の封止フィルムを配置することも好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。前記太陽電池セルが、アモルファスシリコン太陽電池セル、結晶シリコン太陽電池セル及び化合物系太陽電池セルからなる群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。前記太陽電池モジュールが、スーパーストレートタイプ又はサブストレートタイプであることも好ましい。
【0016】
また、上記課題はポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物をガラスから剥離して回収し、それを溶融成形することを特徴とする太陽電池モジュール用封止フィルムの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法によれば、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを用いて太陽電池モジュールを製造するに際し、リサイクルされたフィルムを用いて、新品のフィルムを用いて製造されたのと同等の性能を有する太陽電池モジュールを製造することができる。それにより、製造コストを低減することができるとともに、環境への負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法は、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを太陽電池セルと保護部材との間に配置し、引き続き加熱して樹脂を溶融させてから冷却することによって太陽電池セルを封止するものである。
【0019】
本発明で用いられる封止フィルムは、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなるフィルムである。該ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドとの反応によってアセタール化して得られる樹脂であればよく、特に限定されない。
【0020】
ポリビニルアセタールの原料とするポリビニルアルコールは特に限定されない。ポリビニルアルコールは通常、ビニルエステル単量体を重合し、得られたポリビニルエステルをけん化することによって得られる。ビニルエステル単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが例示される。その中で、(入手が容易である)点から、酢酸ビニルが好ましい。
【0021】
フィルムの物性を著しく低下させない範囲であれば、ビニルエステル単量体に他の単量体を共重合させてもよい。そのような単量体として、例えば、エチレン;プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンまたはその塩またはその4級塩などの(メタ)アクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル;(メタ)アクリロニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物、マレイン酸およびその塩またはそのエステルまたはその無水物;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルなどのカルボン酸イソプロペニルエステルなどが挙げられる。ポリビニルエステル中の該単量体単位の含有量は、ビニルエステル単量体単位の数に対する該単量体単位の数の割合が、通常20モル%未満であり、好ましくは10モル%未満である。
【0022】
ビニルエステル単量体を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。また、該重合は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物やその他の連鎖移動剤の存在下で行っても良い。
【0023】
こうして得られるポリビニルエステルのけん化反応には、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、その中でもメタノールを溶剤とし、苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便である。本発明で用いられるリサイクルされるポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコールのけん化度には特に限定されないが、分解によって酸が発生するのを抑制するためには、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。
【0024】
こうして得られるポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させてアセタール化することにより、ポリビニルアセタール樹脂が得られる。
【0025】
前記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが例示される。炭素数1〜12のアルデヒドが好ましく、炭素数1〜6の飽和脂肪族アルデヒドがより好ましく、炭素数1〜4の飽和脂肪族アルデヒドがさらに好ましい。その中でも、得られる封止フィルムの耐貫通性とガラスに対する接着性の点から、ブチルアルデヒドが特に好ましい。アルデヒドは1種類を用いても良いし、複数種を用いても良い。さらに、分子内に複数個のアルデヒド基を有する化合物やアルデヒド基以外の官能基を有するアルデヒドを、全アルデヒドの総重量の20重量%以下の範囲で併用しても良い。
【0026】
ポリビニルアルコールをアルデヒドとの反応によってアセタール化させる方法は特に限定されない。反応に用いられる溶媒は特に限定されず、水、エタノール、イソプロパノールなどを用いることができる。反応に用いられる触媒は特に限定されず、酢酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸;硝酸、硫酸、塩酸、炭酸などの無機酸のいずれも用いることができる。この中で、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が、反応後に行う得られる樹脂の洗浄が容易であることから好ましく用いられる。
【0027】
本発明で用いられる封止フィルムを構成する樹脂組成物に含まれる可塑剤は、通常ポリビニルアセタール樹脂に用いられるものであれば、特に限定されない。このような可塑剤が含まれることによって、得られる封止フィルムが柔軟でかつ強靭なものになる。そのような可塑剤として、例えば、ジ−(2−ブトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEA)、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBES)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBEES)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼライン酸エステル、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタル酸エステル、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタル酸エステル、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)などが挙げられる。この中でも、封止操作時に真空ラミネータ内での可塑剤の揮発を抑制するためには、可塑剤の分子中の炭素数及び酸素数の和が28よりも大きいものが好ましく用いられる。そのような可塑剤としては、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバシン酸エステル(DBEES)、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)などが例示される。可塑剤は1種類のものを用いてもよいし、複数種のものを用いてもよい。
【0028】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムの少なくとも一部が、リサイクルされたフィルムであることが重要である。これによって、製造コストを低減することができるとともに、環境への負荷を低減することができる。本発明において、リサイクルされたフィルムとは、リサイクル原料に含まれる樹脂組成物をマテリアルリサイクル(材料リサイクル)することによって得られたフィルムをいう。
【0029】
前記リサイクル原料は、ポリビニルアセタール樹脂、又は該樹脂を含む樹脂組成物を含むものであれば、特に限定されず用いることができる。中でも、太陽電池モジュール、自動車用合わせガラス及び建築用合わせガラスからなる群から選択される少なくとも1種のガラス製品であることが好ましい。また、該ガラス製品を製造するプロセスで発生する不良品等であっても構わない。
【0030】
リサイクル原料がガラス製品である場合には、付着した樹脂組成物をガラスから剥離する前に、例えば市販の合わせガラス破砕機などによりガラス製品を破砕する方法や、ガラス切断機で適当な大きさに切断する方法などを採用して、ガラス製品を予め小さくしておいてもよい。また、片面が樹脂フィルムや金属箔などからなるバックシートで構成される場合には、バックシートを切断又は剥離してから、樹脂組成物をガラスから剥離することが好ましい。
【0031】
樹脂組成物が付着したガラスから、樹脂組成物を剥離する方法は特に限定されない。例えば、ガラスから樹脂組成物をフィルム状のまま剥離する方法、ガラスに付着した樹脂組成物を機械的に剥離する方法、樹脂組成物を加熱溶融させてガラスから除去する方法などが挙げられる。さらに、剥離して得られた樹脂組成物に付着した少量のガラスを、剥離用薬液を用いて除去してもよい。
【0032】
樹脂組成物をガラスから剥離して回収する際に、該樹脂組成物を溶媒で膨潤させた状態でガラスから剥離することが好ましい。このようにすることによって、樹脂組成物がガラスから剥離し易くなる。膨潤させるために用いられる溶媒は特に限定されないが、水又は水と水溶性有機溶媒(アルコール、アセトンなど)の混合溶媒が好適なものとして例示される。中でも、樹脂組成物から可塑剤が流出するのを防ぐためには、水又は水とアルコールの混合溶媒が好ましく、特に水が好ましい。膨潤速度を上げるために、界面活性剤を添加しても良い。また、ガラスとフィルムとの接着性を低下させるため、アルカリ(土類)金属塩を添加しても良いが、その場合、膨潤工程の後に水で洗浄する工程を追加することが好ましい。膨潤させる工程における温度は特に制限されないが、通常10〜100℃であることが好ましい。樹脂組成物をガラスから剥離させる工程では、水温を50℃以下とすることが好ましい。
【0033】
溶媒で膨潤させた状態でガラスから剥離して回収した樹脂組成物を、乾燥してから溶融成形することが好ましい。乾燥させることによって、溶融成形時の発泡や分解が防止でき、透明なフィルムを得ることができる。乾燥する方法は、特に限定されず、室温における風乾、熱風乾燥、オーブン中における加熱乾燥などの方法が例示される。
【0034】
リサイクル原料から回収した封止フィルムをそのまま用いてもよい。しかしながら、回収した樹脂組成物を溶融成形することによってリサイクルされたフィルムを得ることが好ましい。このようにすることによって、物性が均一なリサイクルされたフィルムを得ることができる。溶融成形の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、押出機を用いる方法が好適である。押出時の樹脂温度は150〜250℃であることが好ましい。樹脂温度が250℃を超えると、ポリビニルアセタール樹脂が分解を起こし、樹脂組成物中の揮発性物質の含有量が多くなるおそれがある。樹脂温度が230℃以下であることがより好ましい。また、樹脂温度が150℃未満でもやはり揮発性物質の含有量が多くなるおそれがある。樹脂温度が180℃以上であることがより好ましい。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧することにより揮発性物質を除去することが好ましい。
【0035】
フィルムを溶融成形する際に、回収した樹脂組成物に対し、可塑剤などの添加剤又はポリビニルブチラール樹脂を目的の含有量となるように添加してから溶融成形することが好ましい。こうすることによって、得られるフィルムの物性を調整することができる。このようにして含有量が調整される添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び接着性調整剤などが挙げられる。
【0036】
また、フィルムを溶融成形する前に、回収した樹脂組成物における可塑剤などの添加剤の含有量を予め減少させることもできる。こうすることによって、得られるフィルムの物性を調整することができる。このようにして含有量が調整される添加剤として、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び接着性調整剤が挙げられる。これらの添加剤の含有量を減少させる方法としては、回収した樹脂組成物を、溶媒を用いて洗浄して添加剤を抽出し除去する方法などが挙げられる。
【0037】
上記のようにして得られるリサイクルされたフィルム中の可塑剤の含有量は特に限定されないが、強度と柔軟性に優れる点から、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、15〜60重量部であることが好ましく、20〜40重量部であることがより好ましい。
【0038】
リサイクルされたフィルム中に含まれる酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが例示される。その中でもフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0039】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。この中で、酸化防止性能と着色低減性能に優れる点から、アルキル置換フェノール系化合物が特に好ましい。
【0040】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(C12〜15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などが挙げられる。
【0041】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが例示される。
【0042】
リサイクルされたフィルム中の酸化防止剤の含有量は、通常、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部である。これらの酸化防止剤は1種類のものを用いてもよいし、複数種のものを用いてもよい。
【0043】
リサイクルされたフィルム中に含まれる紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。リサイクルされたフィルム中の紫外線吸収剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、0.001〜5重量部であることが好ましく、0.01〜1重量部であることがより好ましい。これら紫外線吸収剤は1種類のものを用いてもよいし、複数種のものを用いてもよい。
【0044】
溶融成形してリサイクルされたフィルムを得る際に、樹脂組成物に含まれる接着性調整剤の含有量を調整することが好ましい。このようにすることによって、リサイクルされたフィルムのガラスなどに対する接着性を調整することができる。また、リサイクル原料に含まれる樹脂組成物のガラスなどに対する接着性の高低にかかわらず、太陽電池モジュールにおいて好ましい接着性を有する封止フィルムを得ることができるので、剥離などが起こりにくい太陽電池モジュールを製造することができる。接着性調整剤には、含有量が多いほど接着性が低くなるものと、含有量が多いほど接着性が高くなるものがある。前者として、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が例示される。このようなアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、例えば、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ヘキサン酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸のカリウム塩やナトリウム塩のようなカルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩;塩酸、硝酸、硫酸、燐酸などの無機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などが例示される。後者として、シランカップリング剤や、シリカなどの無機酸化物の微粒子などが例示される。
【0045】
リサイクル原料が自動車用合わせガラスである場合には、回収した樹脂組成物を水洗してアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量を低くすることが好ましい。また、回収した樹脂組成物に、接着性向上剤、すなわち接着性調整剤のうち、含有量が多いほど接着性が高くなるものを添加してから溶融成形することも好ましい。ここで、これらの両操作を併用してもよい。このようにすることによって、ガラスに対する接着性が低い自動車用合わせガラスから回収した樹脂組成物の接着性を向上させ、太陽電池モジュールにおいて望まれる接着性を有するものとすることができる。これによって、ガラスや太陽電池セルに対する封止フィルムの接着性が向上するので、剥離が起こりにくい信頼性の高い太陽電池モジュールを製造することができる。接着性向上剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのシランカップリング剤;シリカなどの無機酸化物の微粒子などが好ましく用いられる。接着性向上剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なり、また得られる太陽電池モジュールが使用される場所によっても異なるが、得られるフィルムのガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummel test;WO03/033583A1等に記載)において、3〜10に調整することが好ましく、7〜10に調整することがより好ましい。
【0046】
本発明で用いられるリサイクルされたフィルムは、機能性無機化合物として、例えば、光反射材料、光吸収材料、熱伝導性改良材料、電気特性改良材料、ガスバリア性改良材料、力学物性改良材料など種々の材料を含んでいてもよい。
【0047】
本発明に用いられる封止フィルムは、ラミネート工程での脱気性を高めるため、表面に凹凸を設けることが好ましい。凹凸を設ける方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えば、押出機の押出条件を調整することによりメルトフラクチャー構造を設ける方法、押出したフィルムにエンボス構造を付与する方法などが挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる封止フィルムの厚みは、特に制限はないが、0.2〜2.28mmであることが好ましい。0.2mmより薄い場合は太陽電池セルや機能性ユニットの周りの空間を十分に封止することができないおそれがある。厚みは0.3mm以上であることがより好ましい。2.28mmより厚い場合はフィルム自体のコストが高くなり、またラミネート工程のサイクルタイムも長くなるおそれがある。厚みは1.5mm以下であることがより好ましい。このような厚みの封止フィルムを複数枚用いても良い。
【0049】
本発明で製造される太陽電池モジュールは、太陽電池セルが封止材中に封止されているものである。このような太陽電池モジュールは、封止フィルムを太陽電池セルと保護部材との間に配置し、引き続き加熱して封止フィルムを溶融させてから冷却することによって、太陽電池セルを封止材で覆って封止することにより製造される。封止フィルムは、太陽電池セルの片面又は両面に配置される。
【0050】
本発明で用いられる太陽電池セルは、特に限定されず、種々のタイプのものを用いることができる。結晶型セルや薄膜型セルなどが挙げられる。結晶型太陽電池セルとしては、単結晶シリコンセル、多結晶シリコンセルなどの結晶シリコン太陽電池セルが挙げられ、薄膜型セルとしては、アモルファスシリコン太陽電池セル、アモルファスシリコン薄膜と多結晶シリコン薄膜との積層物などの多層薄膜シリコン太陽電池セル、CIS系、CIGS系、CdTe系、GaAs系などの化合物系太陽電池セル、有機太陽電池セルなどが挙げられる。この中で、アモルファスシリコン太陽電池セル、結晶シリコン太陽電池セル、化合物系太陽電池セルが好ましい。
【0051】
本発明で用いられる保護部材は、太陽電池セル及び封止材を保護するための部材であり、表面保護部材と裏面保護部材がある。表面保護部材には、太陽光をなるべく効率よく入射させて太陽電池セルに集光するために、ガラス板や樹脂板などの透明基板が用いられる。裏面保護部材には、電池内部への水分侵入などを防止するために、硬質カバープレート又はバックシートなどが用いられる。硬質カバープレートとしては、ガラス板や樹脂板などが用いられる。ここで用いられるガラス板は、特に限定されず、フロートガラス、強化ガラス、網入りガラスなどが例示される。ガラスの厚さは特に限定されないが、1〜10mmであることが好ましく、2〜6mmであることがより好ましい。バックシートとしては、耐候性に優れ、透湿度の低いものが好ましく用いられ、ポリエステル系樹脂フィルムやフッ素系樹脂フィルムが好適に用いられる。また、それらのフィルムの積層物や、それらのフィルムに無機化合物が積層されたものを用いることもできる。本発明で用いられるバックシートは、ポリビニルアセタールフィルムとのラミネート体において、例えば、180℃剥離試験での剥離強度が5N/cm以上であることが好ましく、7N/cm以上がより好ましく、10N/cm以上であることがさらに好ましい。
【0052】
いわゆるスーパーストレートタイプの太陽電池モジュールでは、ガラス板などの表面保護部材の裏面側に太陽電池セルが装着されて一体となっている。また、いわゆるサブストレートタイプの太陽電池モジュールでは、裏面保護部材の表面側に太陽電池セルが装着されて一体となっている。太陽電池モジュールの構造が、いわゆるスーパーストレートタイプ又はサブストレートタイプであることが、樹脂組成物を分離するのが容易であることから好ましい。
【0053】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法においては、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムが太陽電池セルと保護部材の間に配置される。封止フィルムは、太陽電池セルの受光面側、すなわち太陽電池セルと表面保護部材との間に配置されてもよいし、太陽電池セルの受光面の反対側、すなわち太陽電池セルと裏面保護部材との間に配置されてもよい。また、太陽電池セルの両側に配置されてもよい。封止フィルムは太陽電池セルの片側につき、1枚だけ配置してもよいし、複数枚を重ねて配置してもよい。本発明のリサイクルされた封止フィルムとともに、新品の封止フィルムを併用することもできる。
【0054】
太陽電池セルが結晶型セルの場合は、封止フィルムは、ガラス板などの表面保護部材と太陽電池セルとの間、及び太陽電池セルと裏面保護部材との間に配置される。また、太陽電池セルが薄膜型セルの場合で、スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールの場合、封止フィルムは、太陽電池セルと裏面保護部材との間に配置される。また、サブストレートタイプの太陽電池モジュールの場合は、封止フィルムは太陽電池セルと表面保護部材との間に配置される。こうして得られた積層体に対して、補強基板などを積層するための接着剤層として、封止フィルムを使用することもできる。
【0055】
本発明に用いられるリサイクルされたフィルムを配置する場所は特に限定されない。太陽電池セルと表面保護部材との間でも、太陽電池セルと裏面保護部材との間でも配置することができるが、太陽電池セルの受光面の反対側に配置することが好ましい。リサイクルされることによって、封止フィルムに異物の混入による不透明個所や濁りなどが生じる場合があるとともに、長期使用時に着色することも懸念されるためである。
【0056】
結晶セルの場合はリサイクルされたフィルムを受光面の反対側である太陽電池セルと裏面保護部材との間に配置することが好ましい。スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールの場合は、通常通り、太陽電池セルと裏面保護部材との間に配置することが好ましい。この場合、太陽電池セルの裏面に反射膜を設けることにより、リサイクルされたフィルムと太陽電池セルが直接接しないようにする方法などが好ましく採用される。サブストレートタイプの太陽電池モジュールの場合に、表面保護部材と太陽電池セルとの間に用いることもできるが、使用方法によっては好ましくない場合がある。但し、サブストレートタイプの太陽電池モジュールの場合、太陽電池セルが装着された基板の裏面側にさらにバックシートなどを設ける場合には、太陽電池セルが装着された基板とバックシートとの間にリサイクルされたフィルムを配置することが好ましい。
【0057】
また、前記リサイクルされたフィルムと太陽電池セルの間に、リサイクルされていない新品の封止フィルムを配置することが好ましい。このように配置することによって、リサイクルされたフィルムに含まれるおそれのある異物などが、直接太陽電池セルに触れることを防止することができ、太陽電池モジュールの信頼性を向上させることができる。
【0058】
本発明の製造方法においては、封止フィルムを太陽電池セルと保護部材の間に配置した後、引き続き加熱して樹脂を溶融させる。これにより、太陽電池セルを封止材で覆って封止する。加熱して樹脂を溶融させる方法は特に限定されないが、真空ラミネーター装置、真空バッグ、真空リング、ニップロールを用いる方法などが例示される。また、仮圧着後に、オートクレーブに投入する方法も付加的に行うことができる。
【0059】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば、太陽電池モジュールの製造に用いられる公知の装置を使用し、0.01〜300ミリバールの圧力下、通常100〜200℃、特に好ましくは130〜160℃の温度でラミネートされる。真空バッグ又は真空リングを用いる方法は、EP1235683B1などに記載されており、例えば約200ミリバールの圧力下、130〜145℃でラミネートされる。
【0060】
ニップロールを用いる場合、例えば、可塑剤を含むポリビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮圧着した後、さらに流動開始温度に近い温度で仮圧着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30〜70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50〜120℃に加熱した後、再度ロールで圧着して接着又は仮接着させる方法が挙げられる。
【0061】
仮圧着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、製造する太陽電池モジュールの厚さや構成にもよるが、例えば、約10〜15バールの圧力下、130〜145℃の温度で約2時間実施される。
【0062】
本発明の製造方法においては、加熱して樹脂を溶融させた後、冷却することによって太陽電池セルを封止する。冷却する方法としては、室温下での放置、冷風による冷却などが例示される。
【0063】
本発明の太陽電池モジュールは、公知のフレームやジャンクションボックス、シーリング剤、取り付け治具、架台、反射防止膜、太陽熱を利用した設備、雨樋構造などと組み合わせることが可能である。
【0064】
本発明の製造方法によって製造される太陽電池モジュールは、種々の用途に用いることができる。窓、壁、屋根、サンルーム、防音壁、ショーウィンドー、バルコニー、手すり壁などの部材として、または会議室などの仕切りガラス部材などとして使用でき、家電製品として使用することもできる。
【0065】
本発明の太陽電池モジュールの製造方法により、全て新品のポリビニルブチラール及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを用いたものと遜色のない太陽電池モジュールを、リサイクルされたフィルムを用いて製造することができ、これにより製造コストを低減することができる。また、太陽電池モジュール、自動車用合わせガラス、建築用合わせガラスなどに使用され、大量に製造されているポリビニルブチラールフィルムを回収し、有効にリサイクルできるようになることで環境への負荷を低減することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0067】
(太陽電池モジュールからの樹脂組成物(a)の回収)
原料として用いたスーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、ガラス板に装着された太陽電池セルと、アルミ箔入りバックシートからなる裏面保護部材とが、ポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止材で封止されたものである。この太陽電池モジュールのバックシートに適当な大きさに切り口を入れ、これを室温の水に24時間浸して該封止材に吸水させた。その後、これを水から取り出して、該バックシートを剥離した。さらに水に浸して充分に吸水させてから、太陽電池セルから、ポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物(a)を剥離し回収した。
【0068】
(自動車用合わせガラスからの樹脂組成物(b)の回収)
ポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなるフィルムを中間膜として有する自動車用合わせガラス(フロントガラス)を−18℃に冷却し、ガラスを破砕した。ガラスの付着した該フィルムを、50℃の水中に3日間浸漬した後、該フィルムを伸縮させて表面に付着したガラスを取り除き、ポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物(b)を剥離し回収した。
【0069】
(リサイクルされたフィルム(1)及び(2)の製造)
上記のようにして回収した樹脂組成物(a)を、真空乾燥機(30℃)によって乾燥させ、細かく切断した後、4サンプルを取って、可塑剤の含有量を測定した。可塑剤はトリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)のみであり、含有量の平均値は27.2重量%であった。押出機中で、樹脂100重量部に対し、可塑剤として、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)1.11重量部、紫外線吸収剤として、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チヌビン326)を0.1重量部、及び、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05重量部を添加し、溶融成形して、厚さ0.76mmのフィルムを作成した。このようにして作成したフィルムを調湿して水分量を0.45重量%に調整してリサイクルされたフィルム(1)を得た。また、同様の方法により、厚さ0.38mmのフィルムを作成した後、調湿して水分量を0.45重量%に調整し、リサイクルされたフィルム(2)を得た。
【0070】
(リサイクルされたフィルム(3)の製造)
上記の方法で回収した樹脂組成物(b)を3日間水に浸漬させた後に乾燥し、細かく切断した後、4サンプルを取って、可塑剤の含有量を測定した。可塑剤はトリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)のみであり、含有量の平均値は26.4重量%であった。押出機中で、樹脂100重量部に対し、可塑剤として、トリエチレングリコール−ジ(2−エチルヘキサノエート)2.22重量部、紫外線吸収剤として、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(チヌビン326)を0.1重量部、酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.05重量部、及び、接着性向上剤として、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン0.5重量部を添加し、溶融成形して、厚さ0.76mmのフィルムを作成した。このようにして作成したフィルムを調湿して水分量を0.45重量%に調整してリサイクルされたフィルム(3)を得た。
【0071】
実施例1
(太陽電池モジュールの作成)
ガラス基板の裏面にセルが装着され、その裏面に反射膜が設けられたアモルファスシリコン太陽電池セルと、3mm厚のフロートガラスの間に、上記で得られたリサイクルされたフィルム(1)を配置し、真空ラミネーターを用いて、スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールを作成した。
【0072】
(太陽電池モジュールの評価)
こうして得られた太陽電池モジュールの耐久性試験を行った。温度85℃、湿度85%RHの条件で、1000時間処理する前後の発電効率を測定した。また、処理後の太陽電池モジュールにおける封止材の剥離及び配線の腐食について、目視で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0073】
実施例2
厚さ3mmの表面保護ガラスと結晶シリコン太陽電池セルの間には、新品の0.38mm厚のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルム2枚を重ねて配置した。また、該太陽電池セルとバックシートとの間には、セル側に新品の0.38mm厚のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルム1枚を配置し、該封止フィルムと厚さ3mmの裏面フロートガラスとの間には、上記で得られたリサイクルされたフィルム(2)1枚を配置した。それから、通常の配線を施して、真空ラミネーターを用いて太陽電池モジュールを作成し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0074】
実施例3
CIGS系太陽電池セルが設置されたガラス基板の太陽電池セル側の面と厚さ3mmの表面保護ガラスとの間には、新品の0.76mm厚のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなるフィルムを配置し、CIGS系太陽電池セルが設置されたガラス基板の太陽電池セルとは反対側の面と、表面処理したPET系バックシートとの間には、上記で得られたリサイクルされたフィルム(1)を配置した。それから、通常と同様の配線を施し、真空ラミネーターを用いて圧着し、太陽電池モジュールを作成し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0075】
実施例4
ガラス基板の裏面にセルが装着され、その裏面に反射膜が設けられたアモルファスシリコン太陽電池セルと、3mm厚のフロートガラスの間に、上記で得られたリサイクルされたフィルム(3)を配置し、真空ラミネーターを用いて、スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールを作成し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0076】
実施例5
実施例1において、新品の厚さ0.38mmのポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムと、厚さ0.38mmのリサイクルされたフィルム(2)を、新品の封止フィルムが太陽電池セルの側に位置するように配置した以外は、実施例1と同様にして太陽電池モジュールを作成し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0077】
対照例1〜5
実施例1〜5において、全て新品のポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを用いた以外は、それぞれ実施例1〜5と同様にして太陽電池モジュールを作成し、評価を行った。対照例1が実施例1に、対照例2が実施例2に、対照例3が実施例3に、対照例4が実施例4に、対照例5が実施例5にそれぞれ対応する構成を有している。得られた結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例1〜5で得られた太陽電池モジュールについて、1000時間後の発電効率はいずれも80%以上を確保した。全て新品の封止フィルムを用いて作成した太陽電池モジュール(対照例1〜5)に対して、リサイクルされたフィルムを用いて作成した太陽電池モジュール(実施例1〜5)は全く遜色のない性能を示した。また、耐久性試験後においても、剥離や配線腐食は見られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物からなる封止フィルムを太陽電池セルと保護部材との間に配置し、引き続き加熱して樹脂を溶融させてから冷却することによって太陽電池セルを封止する太陽電池モジュールの製造方法において、前記封止フィルムの少なくとも一部が、リサイクルされたフィルムであることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物をガラスから剥離して回収し、それを溶融成形することによって前記リサイクルされたフィルムを得る請求項1記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物を溶媒で膨潤させた状態でガラスから剥離して回収し、それを乾燥してから溶融成形する請求項2記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
太陽電池モジュール、自動車用合わせガラス及び建築用合わせガラスからなる群から選択される少なくとも1種のガラス製品を原料として用いる請求項2又は3記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
ガラスから剥離して回収した樹脂組成物に、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤及び接着性調整剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加してから溶融成形する請求項2〜4のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項6】
自動車用合わせガラスを原料として用い、ガラスから剥離して回収した樹脂組成物を水洗してアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有量を低くするか、回収した樹脂組成物に接着性向上剤を添加してから、溶融成形することによって前記リサイクルされたフィルムを得る請求項5記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記リサイクルされたフィルムを、太陽電池セルの受光面の反対側に配置する請求項1〜6のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記リサイクルされたフィルムと太陽電池セルとの間に、リサイクルされていない新品の封止フィルムを配置する請求項1〜7のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
ポリビニルアセタール樹脂が、ポリビニルブチラール樹脂である請求項1〜8のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記太陽電池セルが、アモルファスシリコン太陽電池セル、結晶シリコン太陽電池セル及び化合物系太陽電池セルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜9のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記太陽電池モジュールが、スーパーストレートタイプ又はサブストレートタイプである請求項1〜10のいずれか記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項12】
ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む樹脂組成物をガラスから剥離して回収し、それを溶融成形することを特徴とする太陽電池モジュール用封止フィルムの製造方法。


【公開番号】特開2011−146647(P2011−146647A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8317(P2010−8317)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】