説明

リサイクルタイルカーペット及びその製造方法

【課題】短時間で、低コストでリサイクルタイルカーペットを製造する事を可能にするリサイクルタイルカーペット及びその製造方法を提供すると共に販売されたリサイクルタイルカーペットが付与されたランク付けのエコマークに相応しいものであるか否かを検証できる仕組みを内蔵するリサイクルタイルカーペットを提供する事を目的とする。
【解決手段】カーペット層2と基布層3と裏打ち層4の3層からなるタイルカーペット1であって、当該裏打ち層4は、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の造粒材5が相互に接合7されて一体化されているシート状物質6で構成されているリサイクルタイルカーペット1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルタイルカーペット及びその製造方法に関するものであり、特には、使用済みのタイルカーペットから分離回収された当該タイルカーペットの一部を構成する裏打ち層を有効に活用して、再使用可能なリサイクルタイルカーペットを提供するものであると共に、当該リサイクルタイルカーペットの製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
タイルカーペットが広く使われるようになって20数年が経過し、更新の時期を迎えている。一方、廃棄物の処理は年々困難になってきており、特に塩化ビニール樹脂系製品は燃やした場合ダイオキシン発生の問題を伴い、その廃棄は一層困難であるため、回収した使用済みのタイルカーペットの再利用が社会的課題となってきている。
タイルカーペットの再利用技術としては、例えば、特許文献1〜2記載の技術がある。
これらの技術は、カーペット層を実質的に刈り取って除去することにより得られた廃材の表面または裏面に表面化粧樹脂層を形成するものである。
【0003】
しかし、カーペット層の刈り取り工程が必要となるためコストアップの原因となる。
また、特許文献3〜5に記載されている回収タイルカーペットを微細に粉砕し、比重分離法等によりカーペット層と塩化ビニール裏打ち層を分離する方法も一般に行われているが、常温で柔らかいタイルカーペットを粉砕するには多くのエネルギーを必要とし、粉砕時の騒音も大きい。
【0004】
更に、特許文献6には、マイナス30℃以下に冷凍することにより容易に破砕出来る裏打ち層を用いたタイルカーペットを作ろうということも提案されているが、既に市場に出回っている軟質塩化ビニールを裏打ち層とするタイルカーペットに適用するには冷凍温度を極度に低くする必要がある。
【0005】
これらの技術はいずれもタイルカーペットの塩化ビニール裏打ち層は、混ざり物が少ない状態で回収できれば再利用できると言う発想に基づいている。従って、ループパイル糸を主として構成するナイロン繊維は取り除いて廃棄するか、もしくは焼却すると言うことが前提であり、刈り取ったり、微粉砕してでもタイルカーペットから除去すると言う考え方であった。しかし、これらの方法では粉砕されたタイルカーペットの毛屑を完全に除去するには至らず、回収された塩化ビニール裏打ち層に混入して、その品質を低下させる原因となっている。
これらの問題を解決するために、本発明者等は先に特許文献7の技術を特許出願した。
【0006】
この技術は塩化ビニール裏打ち層を効率良く回収して再利用することには成功したが、塩化ビニール裏打ち層以外は塩化ビニールコンパウンドがこびりついたカーペット層と基布層が一体になっており、この基布層を構成する例えば、ポリエステル系繊維及びループパイル糸を構成する例えばナイロン繊維糸を再利用するには更にカーペット繊維を分離回収する必要があった。
また、タイルカーペットの製造時には、耳バリが大量に発生するが、この耳バリは、形状が特異であるために文献7でも解決は難しかった。
【0007】
この耳バリは、タイルカーペットの寸法精度を上げるために、一旦カーペット層と塩化ビニール裏打ち層を貼り合せた広幅長尺のシートを作り、タイルカーペットの形状のパンチで打ち抜く時に発生する生産工程上に大量に発生する副生物である。
また、特許文献8は本願の発明者らが出願し、既に特許されているものであるが、塩化ビニール裏打ち材の再利用を念頭に開発した技術である。
【0008】
然しながら、使用済みタイルカーペットから分離して得られた塩ビ製の裏打ち層は、他の使用済みタイルカーペットから得られた同様の裏打ち層と適宜混合させて、一旦加熱溶融させた後に、タイルカーペットの裏打ち層として再使用する事がおこなわれている。
処で、係る回収された塩ビ製の裏打ち層を加熱溶融させる為に、複雑な工程を必要とする同時に、相当のエネルギーを消費することになるので、当該再生タイルカーペットの製造コストは高くならざるを得なかった。
【0009】
更に、行政では使用済みタイルカーペットの再資源化を促進する目的で、ポストコンシューマーリサイクル材を再生タイルカーペットに再使用することを進めており、ポストコンシューマーリサイクル材を含有する再生タイルカーペットにはエコマークを付与する事を認めている。その上、再生タイルカーペットに含まれるポストコンシューマーリサイクル材の含有量に応じて、エコマークのランク付けも行なわれている。
【0010】
一方、タイルカーペットの製造工程では工程ロスの形で発生するリサイクル材も混入する事が可能であり、又、他の商品の製造工程で発生するリサイクル材も再生タイルカーペットの裏打ち材に混合使用して、有利なエコマークのランク付けを求める製造事業者も出現するようになり、販売後の再生タイルカーペットが付与されたエコマークランク付けに相応しいものであるか否かを検証する必要であるとの声も生まれてきた。
本発明はこれらの必要性の声に応える事を目的としている。
【0011】
即ち、形態において、再生タイルカーペットの裏打ち層がシートの積層品ではなく、複数の造粒材が相互に接合されて一体化されているシート状物質である事により一目で違いが分かる様に構成されている事である。
又、再生タイルカーペットの断面を計測する事によって、ポストコンシューマーリサイクル材の含有量が計測検証できる事を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−220281号公報
【特許文献2】特開2000−220282号公報
【特許文献3】実開昭59032581号公報 1頁
【特許文献4】実開昭59032582号公報 1頁
【特許文献5】特開平8―312117号公報 2頁 段落0005
【特許文献6】特開平9073197号公報 3頁 段落0018
【特許文献7】特願2002−320421号(特開2005−144076)
【特許文献8】特許第4126340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、上記した従来の問題を解決し、短時間で、低コストでリサイクルタイルカーペットを製造する事を可能にするリサイクルタイルカーペット及びその製造方法を提供すると共に販売されたリサイクルタイルカーペットが、付与されたランク付けのエコマークに相応しいものであるか否かを検証できる仕組みを内蔵したリサイクルタイルカーペットを提供する事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記した目的を達成するため、基本的に以下に記載されたような構成を採用するものである。
即ち、本発明に於ける第1の態様としては、少なくともカーペット層と基布層と塩ビ裏打ち層の3層からなるタイルカーペットであって、当該裏打ち層は、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の造粒材が相互に接合されて一体化されているシート状物質で構成されている事を特徴とするリサイクルタイルカーペットである。
【0015】
又、本発明に於ける第2の態様としては、リサイクルタイルカーペットの製造方法であって、当該製造方法は、基布層と当該基布層に糸条が植設されているカーペット層を有する長尺状のカーペット原反を用意する工程と、使用済みタイルカーペットから塩ビ樹脂裏打ち層を分離する工程と、使用済みタイルカーペットから分離した当該裏打ち層から塩ビ樹脂を主成分とする造粒材を製造する工程と、当該カーペット原反の当該基布層に於ける当該カーペット層が形成されていない面上に、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の当該造粒材と塩ビ系合成樹脂を主成分とするペースト状接合材とからなる裏打ち層材料をシート状に成型して張り合わせ加熱硬化する工程と、から構成されている事を特徴とするリサイクルタイルカーペットの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、基本的には上記した様な技術構成を採用しているので、従来のタイルカーペットのリサイクル方法に於ける様に、一旦使用済みタイルカーペットから分離した塩ビ樹脂からなる裏打ち層を他の使用済みタイルカーペットから同様に分離した塩ビ樹脂からなる裏打ち層を混合して、加熱溶融させ、それによって得られた再生塩ビ系合成樹脂をカレンダーロール等のシート化工程でシート状にして、タイルカーペットの裏打ち層として再利用すると言う工程は採用せず、使用済みタイルカーペットから分離した塩ビ樹脂からなる裏打ち層から適宜の形状と大きさを有する造粒材を形成し、当該造粒材を適宜の接合性を有する塩ビ系合成樹脂からなるペーストと混合して、各工程での処理は容易で短時間処理が可能であると同時に、消費エネルギーも少なくてするので、処理時間の短縮と消費エネルギーの低減によって、低コストでリサイクルタイルカーペットを製造できると言う効果を有するものである。
更に、販売されたリサイクルタイルカーペットが付与されたランク付けのエコマークに相応しいものであるか否かを検証できる仕組みを内蔵するリサイクルタイルカーペットを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明に係るリサイクルタイルカーペットの一具体例の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るリサイクルタイルカーペットの製造方法の一具体例の構成を示す側面図である。
【図3】図3は、本発明に係るリサイクルタイルカーペットの製造方法の他の具体例の構成を示す側面図である。
【図4】図4は、本発明に係るリサイクルタイルカーペットに於ける、ポストコンシューマーリサイクル材含有量を検証する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る当該リサイクルタイルカーペットの具体的な態様に於ける構成の例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
即ち、図1は本発明の第1の態様にかかる当該リサイクルタイルカーペットの一具体例の構成の例を示す断面図であって、少なくともカーペット層2と基布層3と裏打ち層4の3層からなるタイルカーペット1であって、当該裏打ち層4は、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の造粒材5が相互に接合7されて一体化されているシート状物質6で構成されているリサイクルタイルカーペット1が示されている。
【0019】
従来のリサイクルタイルカーペットでは、回収したタイルカーペットから分離された塩ビ系合成樹脂を主成分とする種々雑多の裏打ち層4を一箇所に集積した上で、加熱、溶融させて一旦塩ビ系合成樹脂として再生した後、当該再生後の塩ビ系合成樹脂を、加熱溶融状態の間に、例えば、コーター、圧延ローラ、或は適宜の膜状押し出し機等を使用して、適宜の基布に新規のパイル糸が植設された、新規に作成したカーペット原反の当該パイル糸群が形成されていない面上に層状に塗布する方法が実行されていたが、本願発明に於いては、使用済みタイルカーペットから回収した当該塩ビ系合成樹脂からなる裏打ち層4を、溶融し再生するのではなく、当該塩ビ系合成樹脂からなる裏打ち層4から、直接適宜の大きさや形状を有する塊状の造粒材5を作り出し、当該造粒材5を当該裏打ち層4として使用するものである。
【0020】
その結果、本発明では、従来の方法に比べて、工程数が減少すると共に、エネルギーの消費も少ない事から、生産コストが大幅に低減される他、廃棄物の減少に大いに貢献する事が出来る。
一方、本発明のリサイクルタイルカーペットでは、裏打ち層に多数の塊状の造粒材を適宜の接合材を介して一体化した構造が採用されているので、当該造粒材とその接合部7或いは間隙部8に介在している当該接合材9とが相互に協同して適度のクッション性と適度の伸張性を発揮する事が可能であるので、当該タイルカーペットとしての風合いや設計の自由度更には耐久性の向上が可能となる。
【0021】
本発明に於いて使用される当該造粒材は、例えば、その粒径が1〜5mmである事が好ましく、又その形状は、特に限定されるものではないが、例えば、球体である事が望ましい。
更に、本発明に於ける当該造粒材5の製造方法は、特定されるものではないが、例えば、当該使用済みタイルカーペットから、当該タイルカーペットの上記した構成成分を分離処理中或は、分離終了後の塩ビ系合成樹脂からなる裏打ち層3の適宜の破断、破砕、切断等の機能を有する装置を使用して、直接適宜の大きさや形状を有する塊状の物体に形成するものである。
【0022】
本願発明に於いては、当該造粒材5を製造するに際しては、クラッシャー、ペレタイザー等が望ましく用いられるが限定するものではない。
一方、本発明に使用される当該接合材9としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、主として塩ビ系ペースト樹脂である。
本願発明に於いては、上記の方法により製造された複数個の当該造粒材5に、適宜の接合材9を添加して攪拌処理した後、当該接合材9が固化する以前に、新規に作成した広幅のカーペット原反の当該カーペット層2が形成されていない当該基布3の面上に、適宜の押し出し装置、コーター、圧延ローラ等シート化装置を使用して適宜の厚さのシート状物質を形成し、裏打ち層4として用意する。
【0023】
その後、当該新規に作成した広幅のカーペット原反の当該カーペット層2に適宜の加熱処理操作を行って、当該接合材9を固化させて、当該裏打ち層4を貼り合わせて、リサイクルタイルカーペット仕掛かりシートを形成する。
その後、当該裏打ち層4が形成された当該リサイクルタイルカーペット仕掛かりシートから、ビク抜きパンチを使用して適宜の寸法を有するリサイクルタイルカーペット1を打ち抜いて形成する。
【0024】
即ち、本願発明における当該リサイクルタイルカーペット1は、当該裏打ち層4を構成する当該シート状物質6は、当該複数個の造粒材5の相互接合部7若しくは当該造粒材間に形成される間隙部8内に接合材9が配置されており、全体として、固化一体化され、適度のクッション効果を発揮するものである。
【0025】
又、本発明に於いては、上記したシート化装置による方法の他、粘着性を抑止するテフロン(登録商標)製等のベルトコンベア上に造粒材を均一な厚さに敷き並べ、接合性を有する塩ビ系合成樹脂からなる流動性のあるペーストを振り掛けて均一厚さに調整し、ベルトコンベアの進行に伴って加熱器を経由し、ペーストをゲル化させることにより、造粒材が相互に接合されて一体化されているシート状物質を得る方法も考えられる。このシート状物質は、既に塩ビのゲル化温度に達しているので、同じく裏面をペースト処理されたカーペット原反と張り合わせることで容易にリサイクルタイルカーペット仕掛かりシートを得ることが出来る。この製造装置は造粒材からシート状物質を得るまでの工程が簡便でより設備費が少ないという効果がある。
【0026】
処で、本発明に於けるリサイクルタイルカーペットに於いては、行政上の要請から、実際に廃棄の対象となった、使用済みタイルカーペットが実際に活用されて当該リサイクルタイルカーペットとして再利用されているかを確認出来るシステムが要求されており、その為の一具体例として、販売されたリサイクルタイルカーペットが、付与されたランク付けのエコマークに相応しいものであるか否かを検証できる仕組みを内蔵する様に構成したものである。
【0027】
次に、本発明に於ける当該リサイクルタイルカーペットの製造方法の一具体例を、図2を参照して詳細に説明する。
即ち、本発明に係るリサイクルタイルカーペットの製造方法は、基本的には、以下に示す各工程から構成されるものである。
尚、図2に於いて、カーペット原反10は、矢印Aに沿って移動するものである。
【0028】
本発明に於いては、例えば、基布層3と当該基布層3に糸条11がパイル状に植設されているカーペット層2とから構成された長尺状のカーペット原反10を用意する工程と、
使用済みタイルカーペットから塩ビ樹脂裏打ち層を分離する工程と
使用済みタイルカーペットから分離した裏打ち層4から塩ビ樹脂を主成分とする造粒材5を製造する工程と、
当該カーペット原反10の当該カーペット層2が形成されていない面上に、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の当該造粒材5と塩ビ系合成樹脂を主成分とするペースト状接合材9とからなる裏打ち層材料12を層状に塗布する工程と、
少なくとも当該層状に形成された裏打ち材料12を加熱処理する工程と
から構成されているものである。
【0029】
即ち、本発明に於ける最後の2工程は、当該カーペット原反10の当該カーペット層2が形成されていない面上に、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の当該造粒材5と塩ビ系合成樹脂を主成分とするペースト状接合材9をもちいて、基布層3を張り合わせ、裏面処理されたカーペット原反10を得た後に、それを加熱処理するものである。
【0030】
一方、本発明に於ける当該リサイクルタイルカーペット1の製造方法に於いては、当該造粒材5は、適宜の押し出し装置、コーター、圧延ローラ等シート化装置を使用して適宜の厚さのシート状物質を形成し、裏打ち層4として用意する。
その後、当該裏面処理されたカーペット原反を、加熱処理装置13を通過させて当該シート状物質6に適宜の加熱処理操作を行って、当該接合剤9をゲル固化させて、当該裏打ち層4を面処理されたカーペット原反に張り合わせ、リサイクルタイルカーペット仕掛かりシートを得る。
【0031】
その後、当該裏打ち層4が形成された当該リサイクルタイルカーペット仕掛かりシートから、ビク抜きパンチ21等により適宜の寸法に打ち抜いてリサイクルタイルカーペット1を形成する。
以下に、本発明に係る当該リサイクルタイルカーペットの製造方法についての他の具体例を、図3を参照して、詳細に説明する。
即ち、本具体例に於いては、特許第4126340号公報(特許文献8)に示された技術を用いて、使用済みカーペットタイルから塩ビからなる裏打ち層4を剥離分離した。
【0032】
本具体例に於いて、当該剥離分離した当該塩ビ裏打ち材4は回収収率70%を記録したので収量は3.5Kg/mであった。
この塩ビ裏打ち材4を適宜のクラッシャーに投入し、適宜のスクリーンを介して破砕したところ、粒径1.0〜1.5mmの造粒材5が得られた。
当該造粒材5は、適宜の一対の回転ローラ31、32の間に延展張設された、例えばテフロン(登録商標)コーティングされたコンベアベルト33上に設けられた適宜のホッパー部34内に供給され、当該ホッパー部34の底部に設けられた開口部35を介して当該コンベアベルト33上に所定の厚みを保持する様に供給される。
【0033】
より具体的には、当該ホッパー部34の底部は、予め当該コンベアベルト33の表面から適宜の高さに設定されており、当該高さは、最終製品である当該リサイクルタイルカーペット1が要求する当該裏打ち層4の高さが得られる様に適宜に選択されるものである。
当該ホッパー部34に続く当該コンベアベルト33の矢印Aで示されている進行方向側に、当該造粒材5の厚みを調整或いは規制する為のゲート部36或いは関板37を配置しておく事も望ましい。
更に、当該テフロン(登録商標)コーティングされたコンベア33上に供給された当該造粒材5は、当該コンベア33の移動に伴って当該矢印Aで示されている進行方向に沿って移動する間に、例えば、当該コンベア33の下部に設けられた振動器39とその上に配置されている支持板38により、当該造粒材5が細密充填になるよう振動を与えながら移動する様に構成されているものであっても良い。
【0034】
つまり、本具体例に於いては、当該造粒材5からなるシート状物質6は、当該関板37とゲート36によって厚さと巾がコントロールされながら、コンベア33と共に、接合材9を当該造粒材5に含浸させる為の流動性のペースト樹脂供給ゾーン40に進む。
本発明に於ける当該塩ビ樹脂を主体とする当該流動性のペースト樹脂の役割は、第一に当該造粒材を相互に接合する糊としての役割であり、第二は、当該シート状物質6の厚さと平滑さを確保する事である。
本具体例に於いては、当該ペースト樹脂供給ゾーン40の構成は特に限定されるものでは無く、例えば、図3に示されている様に、当該接合材9である塩ビ樹脂からなるペースト状樹脂材料を所定のタンク部50に貯留させておき、当該タンク部50の下端部から適宜の液量調整部材、例えばバルブ或いは漏斗44を介して、所定の厚さの当該裏打ち材となるシート状物質6を形成するのに必要な量のペースト樹脂を当該造粒材5からなるシート状物質内に注入するものである。
【0035】
一方、流動性のペースト樹脂は殆どヴァージン原料であり、当該再生タイルカーペット10においてはカーペット原反についで高価なものであるから、第一と第二の役割を果たしさえすれば使用量は少なければ少ないほどコストダウンになる。
当実施例では、5Kg/mの使用済みタイルカーペットから、剥離分離技術で70%の回収率で得た塩ビ裏打ち材を全て利用して、ポストコンシューマーリサイクル材の含有率が出来るだけ高いタイルカーペットを再びタイルカーペットを製造する事を試みた。
【0036】
剥離分離技術で得られた塩ビ裏打ち材は3.5Kg/m、使用するカーペット原反は0.75Kg/mであった。
流動性のペースト樹脂は0.75〜2.75Kg/m使用した場合に、再生タイルカーペットのポストコンシューマーリサイクル材の含有量は70〜50%となるのであるが、今回は含有率50%実現を目標としたので、若干高価な再資源化タイルカーペットが得られた。
【0037】
その後、当該コンベア33上に搭載された当該接合材9を含む当該造粒材5からなるシート状物質6が、当該ペースト樹脂供給ゾーン40の川下に配置された第1の加熱ゾーン42に導入され、当該接着材として機能する当該ペースト状接合処理材9をゲル化する為の加熱処理が実行され、造粒材5によるシート状物質を形成する。
【0038】
より具体的には、当該ペースト状接合処理材のゲル化温度(160〜200℃)に設定された当該回転ローラ41の表面に当該造粒材5と当該接合材9とが混在されている当該シート状物質6の一表面を所定の長さを以って当接させ、一定の期間(1分〜5分)、つまり当該回転ローラ41が所定の回転角を移動する間、当該シート状物質6が当該回転ローラ41の回転に従って移動する間に所定の加熱処理操作が行われ、当該造粒材5の間の間隙部8或いは当該造粒材5相互の接合部の内部に存在している当該ペースト状接合処理材をゲル化させるものである。
【0039】
その後、当該裏面処理されたカーペット原反を、加熱処理装置42を通過させて当該シート状物質6に適宜の加熱処理操作を行って、当該接合剤9をゲル化させて、当該裏打ち層4を面処理されたカーペット原反に張り合わせ、リサイクルタイルカーペット仕掛かりシートを得る。
その後、当該コンベア33は、当該第1の加熱装置42を出た直後に、当該シート状物質6を保持したまま、急激に上方に進行方向を転換して、ローラ43に向けて上昇する。
【0040】
尚、上記したローラ43は、当該シート状物質6が当該ローラ43との接触時間を長くとり、ゲル化時間を短縮して、消費エネルギーを低減させる為に、前記した加熱ローラ41と同径の加熱ローラ構造である事が好ましい(第2加熱ゾーン55)。
その後、当該コンベア33は、該シート状物質6を保持したまま、当該ローラ43の表面に沿って急激に下方に進行方向を転換して、第2の加熱ローラ45からなる第2の加熱ゾーン46に向けて下降する様に移動する。
【0041】
第2の加熱ローラ45の役割は裏面処理されたカーペット原反と前工程41でゲル化したシート状物質とを密着張り合わせる事にある。
一方、当該コンベア33が、当該シート状物質6を搭載したまま下降する途中に於いて、前記したカーペット原反10と層状に重畳されて当該第3の加熱ゾーン46に供給されるものである。
本発明に於ける当該カーペット原反10の当該カーペット層2が形成されていない当該基布層3の一面に適宜のペースト状接合材47が塗布され、ゲル化済みである事が望ましい。
【0042】
本具体例では、当該コンベア33と一体的に移動する当該シート状物質の自由面48が、当該第3の加熱ゾーン46に到達する直前に、当該カーペット原反供給手段49から繰り出された当該カーペット原反10の当該ゲル化済みであるペースト状接合材47が塗布されている面と当接される様に構成されている。
当該第3の加熱ローラ45では、第1の加熱ゾーン42及び第2の加熱ゾーン55で成型されたシート状物質と当該カーペット原反10の当該ゲル化済みであるペースト状接合材47が塗布されている面とを接合するのであるが、第3の加熱ローラ45ではカーペット層を介して加熱処理が行なわれ、熱効率が損なわれる上に、当該カーペット原反10のペースト状接合材面は常温になっている。
【0043】
この第3の加熱ゾーン46の熱効率を改善する目的で予備加熱(比較的長い時間加熱する)を行う事が好ましい。
そして、本具体例では、当該コンベア33の移動に伴って移動する、当該シート状物質6と当該カーペット原反10とが重畳的に積層された状態で、当該第3の加熱ローラ45の表面に沿って、所定の長さ、及び所定の時間の間、当該第3の加熱ローラ45の表面に当接された状態で加熱温度(160〜200℃)、加熱時間(1分〜5分)の加熱処理を受ける事によって、当該シート状物質6と当該カーペット原反10とが接合されてリサイクルタイルカーペット仕掛かりシート1が形成する。
【0044】
その後、当該裏打ち層4が形成された当該リサイクルタイルカーペット仕掛かりシート1を回転冷却ドラム56に所定の間接触させて所定の温度にまで低下させた後、ビク抜きパンチ21等を使用して適宜の寸法を有するリサイクルタイルカーペット1に打ち抜いて完成する。
尚、本具体例に於ける第3の加熱ゾーン46に於いて、当該カーペット原反10の基布に張り合わされる当該接着剤シート47は、当該接着剤シート47の供給部100から所定の速度で引き出され、必要に応じて適宜の加熱装置121で加熱された後、適宜の貼り合せローラ122で当該カーペット原反10の基布面と張り合わされた構成を採用する事も可能である。
【0045】
更に、当該貼り合せローラ122と当該第3の加熱ローラ45との間に、例えば。赤外線加熱方式からなる追加の加熱装置123を設けておくことも望ましい。
一方、当該カーペット原反10の安定性が悪い場合には、例えばガラス繊維からなる不織布で構成された補助シートを当該カーペット原反10の基布面に予め添着させておくことが望ましい。
係る場合には、図3に示す様に、当該カーペット原反10供給装置49から引き出される当該カーペット原反10の基免に当該ガラス繊維からなる不織布を適宜のペースト樹脂を介して貼り合せ、適宜の例えば赤外線予備加熱装置124等を使用して当該両者を接合した後に、前記した貼り合せローラ122に供給されて当該接着剤シート47がその上に張り合わされるように構成する事も可能である。
【0046】
次に、本発明に於いて、販売されたリサイクルタイルカーペットが付与されたランク付けのエコマークに相応しいものであるか否かを検証できる仕組みの検証方法の具体例を以下に説明する。
即ち、リサイクルタイルカーペットから回収した塩ビ裏打ち材から製造した造粒材は既に、こげ茶色から黒色に近い色に着色されている。一方、ペースト状接合材は着色しなければ無色透明である。従って、着色された造粒材部分と無色透明であるペースト状接合材部分の面積比を写真測定し、相当数のサンプル数により比較すれば、裏打ち層中のリサイクルタイルカーペットから回収した塩ビ裏打ち材の含有量が計算でき、カーペット用原反(ヴァージン原料)、接合剤(ヴァージン原料)、ペースト状接合材(ヴァージン原料)、リサイクルタイルカーペットから回収した塩ビ裏打ち材から製造した造粒材(ポストコンシューマーリサイクル材)の比率より、既に市販されたエコカーペットの中のポストコンシューマーリサイクル材含有量が計算・検証できる。
【符号の説明】
【0047】
0:リサイクルタイルカーペット仕掛かりシート
1:リサイクルタイルカーペット
2:カーペット層
3:基布層
4:裏打ち層
5:造粒材
6:シート状物質
7:接合部
8:間隙部
9:接合剤
10:カーペット用原反
11:ループパイル糸
12:裏打ち層材料
13:加熱装置
20:ストレーナー
21:ビク抜きパンチポンチ
31、32:コンベア駆動ローラ
33:コンベア
34:ホッパー部
36:ゲート部
37:関板
35:開口部
38:支持板
39:振動器
40:ペースト樹脂供給ゾーン
41:第1の加熱回転ローラ
42:第1の加熱ゾーン
43:第2の加熱ローラ
44:漏斗
45:第3の加熱ローラ
46:第3の加熱ゾーン
47:接着材
48:シート状物質の自由面
49:カーペット原反供給手段
50:タンク部
55:第2の加熱ゾーン
56:冷却ドラム
120:接着材供給手段
121、123、124:加熱装置
122:貼り合せローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーペット層と基布層と塩ビ裏打ち層の3層からなるタイルカーペットであって、当該裏打ち層は、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の造粒材が相互に接合されて一体化されているシート状物質で構成されている事を特徴とするリサイクルタイルカーペット。
【請求項2】
当該裏打ち層を構成する複数の造粒材は、粒径1〜5mmである事を特徴とする請求項1に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項3】
当該裏打ち層を構成する複数の造粒材の形状は、塊状体である事を特徴とする請求項1又は2に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項4】
当該裏打ち層を構成する当該シート状物質は、当該複数個の造粒材の相互接合部若しくは当該造粒材間に形成される間隙部内に接合材が配置されている事を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項5】
当該接合材は、主として塩ビ系ペースト成樹脂である事を特徴とする請求項4に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項6】
当該接合材の色相は、当該少なくとも一つの造粒材の色相とは異なる様に構成されている事を特徴とする請求項5に記載のリサイクルタイルカーペット。
【請求項7】
リサイクルタイルカーペットの製造方法であって、当該製造方法は、
基布層と当該基布層に糸条が植設されているカーペット層を有する長尺状のカーペット原反を用意する工程と、
使用済みタイルカーペットから塩ビ樹脂裏打ち層を分離する工程と
使用済みタイルカーペットから分離した当該裏打ち層から塩ビ樹脂を主成分とする造粒材を製造する工程と、
当該カーペット原反の当該基布層に於ける当該カーペット層が形成されていない面上に、塩ビ系合成樹脂を主成分とする複数の当該造粒材と塩ビ系合成樹脂を主成分とするペースト状接合材とからなる裏打ち層材料をシート状に成型して張り合わせ加熱硬化する工程と、
から構成されている事を特徴とするリサイクルタイルカーペットの製造方法。
【請求項8】
使用済みタイルカーペットの当該塩ビ樹脂裏打ち層若しくは当該使用済みタイルカーペットから分離された塩ビ樹脂裏打ち層若しくは当該造粒材に着色処理を施す工程が付加されている事を特徴とする請求項7に記載のリサイクルタイルカーペットの製造方法。
【請求項9】
当該接合材に当該造粒材の色相とは異なる色相を付与する着色処理を施す事を特徴とする請求項8に記載のリサイクルタイルカーペットの製造方法。
【請求項10】
当該造粒材は、少なくともカーペット層と基布層と裏打ち層の3層からなる使用済みタイルカーペットから分離された当該裏打ち層を、適宜の大きさと適宜の形状を持つ複数個の塊状体に分割して形成されたものである事を特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載のリサイクルタイルカーペットの製造方法。
【請求項11】
当該造粒材と当該ペースト状接合材とを混合して形成された裏打ち材料を当該カーペット原反の基布層に於ける当該カーペット層が形成されていない面上に適宜の厚みを有するシート状物質を形成する事を特徴とする請求項7乃至10に記載のリサイクルタイルカーペットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−85681(P2012−85681A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232577(P2010−232577)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(507140117)株式会社資源化研究所 (7)
【Fターム(参考)】