説明

リスニングエリア表示装置及びそのプログラム

【課題】本発明は、聴取者の要求を考慮して、客観的なリスニングエリアを提示できるリスニングエリア表示装置を提供する。
【解決手段】リスニングエリア表示装置1は、聴取者が要求する音響品質を示す要求音響品質を記憶する初期条件記憶部12と、リスニングエリア規定関数を記憶するリスニングエリア規定関数データベース13と、選択ルールに基づいて、リスニングエリア規定関数を選択するリスニングエリア規定関数選択部14と、リスニングエリア規定関数ごとの音響物理量を寄与率で重み付けた重み付き音響物理量の総和を位置ごとの評価点として算出するリスニングエリア音響物理量算出部16と、評価点が閾値以上となるリスニングエリアを算出するリスニングエリア算出部17と、リスニングエリアを表示するリスニングエリア表示部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネルの音響信号を再生した音場(再生音場)の各位置で、音響品質を評価した結果である評価点が、予め設定された閾値以上になる領域をリスニングエリアとして表示するリスニングエリア表示装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ステレオ、5.1チャンネルサラウンド等に代表されるマルチチャンネル音響システムが普及している。従来のマルチチャンネル音響システムでは、コンテンツが、スピーカ配置の中心点に代表されるスウィートスポット(以下、SS:SweetSpot)で、ミキシング及び編集されている。このため、マルチチャンネル音響システムでは、SSにおける音響品質が最良であり、多くの場合、他の受聴点における音響特性が考慮されていない。
【0003】
一方、テレビ番組、映画等のコンテンツは、家庭団らんといった複数で視聴する場合が多い。このため、音声、音楽、風景音等で構成されるコンテンツを聴取する場合、SS1点だけでなく、一定のクオリティー(音響品質)が保たれるリスニングエリアを確保する必要がある。
【0004】
そこで、音像定位の安定性やずれの少なさに基づいて、リスニングエリアを、SS1点からその周囲までに拡大する発明が提案されている(特許文献1参照)。
また、聴取者の位置を検出するセンサーをスピーカに設け、ターンテーブルによりリスナーの位置にスピーカの音放射軸を合わせることで、何れの聴取点でもスピーカの指向性による特性劣化を解消して、リスニングエリアを拡大する発明が提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載の発明では、SS以外の聴取点でも、SSとほぼ同等の音響品質を確保することができる。
【0005】
ここで、テレビ番組、映画等のコンテンツ制作時又は視聴時、リスニングエリアの音響品質を客観的に評価、提示できることが望まれる。これによって、聴取者は、このリスニングエリアを基準として、音響品質が良好な聴取点でコンテンツを聴取でき、より高品質な音声を楽しむことができる。このように、リスニングエリアの音響品質を客観的に評価、提示することも重要であり、これを実現したサラウンドモニタ装置が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53−9501号公報(特許第1347707号公報)
【特許文献2】特開平8−19099号公報
【特許文献3】特開平5−304700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1,2に記載の発明は、前記したようにリスニングエリアを客観的に提示する機能が備わっていない。
また、特許文献3に記載の発明は、スピーカに取り囲まれた、スピーカ配置の中心点のみで音響特性を算出している。このため、特許文献3に記載の発明では、SS以外の聴取点における音響特性を客観的に提示することができない
【0008】
ここで、聴取者が要求するクオリティー(音響品質)やコンテンツを聴取する室環境は、一定であるとは限られない。しかし、聴取者の要求や室環境を考慮して、客観的にリスニングエリアを提示する手法は、未だ提案されていない。
【0009】
そこで、本発明は、聴取者の要求を考慮して、一定の音響品質が保たれるリスニングエリアを客観的に提示できるリスニングエリア表示装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係るリスニングエリア表示装置は、マルチチャンネルの音響信号を再生した音場の各位置で、音響品質を評価した結果である評価点が、予め設定された閾値以上になる領域をリスニングエリアとして表示するリスニングエリア表示装置であって、信号入力部と、コンテンツ種類入力部と、初期条件記憶部と、関数データベースと、関数選択部と、音響物理量算出部と、リスニングエリア算出部と、リスニングエリア表示部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、リスニングエリア表示装置は、信号入力部によって、音響信号が入力される。また、リスニングエリア表示装置は、コンテンツ種類入力部によって、音響信号が属するコンテンツの種類が入力される。
このコンテンツの種類としては、例えば、「クラシックコンサート」、「ジャズ」、「ロック」、「ポップス」等の音楽のジャンルがあげられる。また、コンテンツの種類は、「ドラマ」、「自然紀行番組」、「旅番組」等、その音響信号が用いられる放送番組のジャンルとしてもよい。
【0012】
また、リスニングエリア表示装置は、初期条件記憶部によって、聴取者が要求する音響品質である要求音響品質が少なくとも含まれる初期条件を、予め記憶する。
この要求音響品質は、聴取者が重視する音響的な質を示すものであり、心理量とも呼ばれる。この要求音響品質としては、例えば、「包み込まれ感」、「拡がり感」、「明瞭感・明確な音像定位」があげられる。
【0013】
また、リスニングエリア表示装置は、関数データベースによって、音響信号の音響物理量を算出する複数の関数と、関数の寄与率とを、予め記憶する。そして、リスニングエリア表示装置は、関数選択部によって、コンテンツの種類及び要求音響品質に対応する関数が予め設定された選択ルールに基づいて、関数データベースに記憶された関数を選択する。
この選択ルールは、コンテンツの種類及び要求音響品質と、関数との対応関係を示すものであり、例えば、主観評価実験を繰り返すことで求められる。
【0014】
また、リスニングエリア表示装置は、音響物理量算出部によって、音場の各位置において、信号入力部に入力された音響信号から、関数選択部が選択した関数ごとの音響物理量を算出し、関数ごとの音響物理量を関数の寄与率で重み付けた重み付き音響物理量を算出し、重み付き音響物理量の総和を評価点として算出する。
この評価点は、音響信号が再生された再生音場の各位置において、聴取者が要求する音響品質をスコア化したものである。
【0015】
また、リスニングエリア表示装置は、リスニングエリア算出部によって、評価点算出部によって算出された評価点が閾値以上となる位置を結んだ領域を、リスニングエリアとして算出する。すなわち、リスニングエリア表示装置は、再生音場でスコアが一定以上の領域を、聴取者が要求する音響品質を満たすリスニングエリアとして算出する。そして、リスニングエリア表示装置は、リスニングエリア表示部によって、リスニングエリア算出部によって算出されたリスニングエリアを表示する。
【0016】
また、本願第2発明に係るリスニングエリア表示装置は、関数データベースが、音響物理量として、両耳間相互相関度、両耳間時間差・強度差、残響時間、残響感、ラウドネス、ラフネス、シャープネス、LE(lateral efficiency)、及び、音声明瞭度・楽音明瞭度を算出する関数が、それぞれ記憶されることを特徴とする。
かかる構成によれば、リスニングエリア表示装置は、音響特性の測定で一般的な音響物理量を用いて、リスニングエリアを算出することができる。
【0017】
また、本願第3発明に係るリスニングエリア表示装置は、内装材ごとに吸音率を予め記憶する吸音率データベースをさらに備え、初期条件記憶部が、初期条件として、さらに、音響信号を再生する音響システムが配置された室の内装材を記憶し、音響物理量算出部が、初期条件記憶部の内装材に対応する吸音率を吸音率データベースから読み出すと共に、吸音率を用いて、音響物理量を算出することを特徴とする。
かかる構成によれば、リスニングエリア表示装置は、室環境の1つである吸音率を音響物理量に反映させることができる。
【0018】
また、本願第4発明に係るリスニングエリア表示装置は、初期条件記憶部が、初期条件として、さらに、音響システムが備える全てのスピーカ位置を記憶し、リスニングエリア算出部が、全てのスピーカ位置のパターンであるスピーカ配置パターンごとに、リスニングエリアを算出し、リスニングエリア表示部が、スピーカ配置パターンごとに、リスニングエリアを表示することを特徴とする。
かかる構成によれば、リスニングエリア表示装置は、各スピーカ配置パターンでのリスニングエリアの相違を客観的に把握することができる。
【0019】
なお、本願第1発明において、前記した初期条件記憶部及び関数データベースを備えるコンピュータを、信号入力部、コンテンツ種類入力部、関数選択部と、音響物理量算出部と、リスニングエリア算出部と、リスニングエリア表示部として機能させるためのリスニングエリア表示プログラムによって実現することもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、聴取者が要求する音響品質を満たす領域をリスニングエリアとして算出するので、聴取者の要求を考慮して、一定の音響品質が保たれるリスニングエリアを客観的に提示することができる。
【0021】
本願第2発明によれば、音響特性の測定により得られた関数データベースによる音響物理量を用いるので、リスニングエリア表示装置の汎用性を向上させることができる。
本願第3発明によれば、室環境の1つである吸音率を音響物理量に反映させるため、室環境も考慮して、リスニングエリアを客観的に提示することができる。
本願第4発明によれば、各スピーカ配置パターンでのリスニングエリアの相違を客観的に把握できるため、リスニングエリア表示装置の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るリスニングエリア表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態において、音響システムの設置環境を説明する図である。
【図3】(a)はスピーカの仰角を示す線種を説明する図であり、(b)〜(d)は、それぞれ、本発明の実施形態におけるスピーカ配置パターンを示す図である。
【図4】本発明の実施形態において、SSから右方向での距離と評価点との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態において、SSから後方向での距離と評価点との関係を示すグラフである。
【図6】図3(b)のスピーカ配置パターン(8ch−A)におけるリスニングエリア表示の一例を示す図である。
【図7】図3(c)のスピーカ配置パターン(8ch−B)におけるリスニングエリア表示の一例を示す図である。
【図8】図3(d)のスピーカ配置パターン(8ch−C)におけるリスニングエリア表示の一例を示す図である。
【図9】図1のリスニングエリア表示装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[リスニングエリア表示装置の構成]
図1を参照して、本発明の実施形態に係るマルチチャンネル音響リスニングエリア表示装置(以後、単に「リスニングエリア表示装置」と略記)の構成について、説明する。
リスニングエリア表示装置1は、マルチチャンネルの音響信号を再生した音場(再生音場)の各位置で、音響品質を評価した結果である評価点が、予め設定された閾値以上になる領域をリスニングエリアとして表示するものである。
【0024】
このため、リスニングエリア表示装置1は、信号入力部10と、コンテンツメタデータ入力部(コンテンツ種類入力部)11と、初期条件記憶部12と、リスニングエリア規定関数データベース(関数データベース)13と、リスニングエリア規定関数選択部(関数選択部)14と、リスニングエリア規定関数代入変数データベース(吸音率データベース)15と、リスニングエリア音響物理量算出部(音響物理量算出部)16と、リスニングエリア算出部17と、リスニングエリア表示部18とを備える。
【0025】
信号入力部10は、マルチチャンネル(例えば、ステレオ、5.1チャンネルサラウンド)の音響信号が入力されると共に、この音響信号をリスニングエリア規定関数選択部14に出力するものである。
【0026】
本実施形態では、トランスポートストリーム(TS)に多重化された音響信号(音声信号)が分離されて、信号入力部10に入力される。以後、音響信号は、クラシックコンサートを収録した音楽番組の音声信号であることとする。
【0027】
コンテンツメタデータ入力部(コンテンツ種類入力部)11は、音響信号の種類が属するコンテンツの種類が入力されると共に、このコンテンツの種類をリスニングエリア規定関数選択部14に出力するものである。このコンテンツの種類としては、例えば、「クラシックコンサート」、「ジャズ」、「ロック」、「ポップス」等の音楽のジャンルがあげられる。また、コンテンツの種類は、「ドラマ」、「自然紀行番組」、「旅番組」等、その音響信号が用いられる放送番組のジャンルとしてもよい。
【0028】
本実施形態では、このTSに多重化された電子番組ガイド(メタデータ)が分離されて、コンテンツメタデータ入力部11に入力される。この場合、コンテンツメタデータ入力部11は、この電子番組ガイドから放送番組のジャンルを、コンテンツの種類として抽出する。以後、コンテンツの種類は、「クラシックコンサート」であることとする。
【0029】
初期条件記憶部12は、後記する初期条件を予め記憶するメモリ、ハードディスク等の記憶装置である。この初期条件は、マウス、キーボード等のユーザインタフェース(不図示)によりオペレータ(聴取者)が手動で入力し、初期条件記憶部12に記憶される。ここで、初期条件は、例えば、スピーカ位置と、スピーカ数と、スピーカ指向性と、音響システム設置環境と、算出時間間隔と、動画フレームレートと、音源種類と、要求音響品質とがパラメータとして含まれる。
【0030】
<初期条件の説明>
以下、初期条件に含まれるパラメータを具体的に説明する。
スピーカ数は、音響システムに含まれるスピーカの総数を示すパラメータである。
スピーカ位置は、音響システムに含まれる各スピーカの位置を示すパラメータである。このスピーカ位置は、SSからスピーカまでの距離と、予め設定した基準高さを0°とした仰角と、右方向を0°とした方位角とで表現される。
スピーカ指向性は、各スピーカの指向性(例えば、単一指向性、双指向性、超指向性等)を示すパラメータである。
【0031】
音響システム設置環境は、音響システムが設置された室の環境を示すパラメータである。この室の環境には、室の大きさ(面積及び容積)と、室の形状と、内装材の種類と、家具の配置とが含まれる。ここで、内装材の種類は、床、壁及び天井それぞれの内装材の種類を示す。
【0032】
算出時間間隔は、リスニングエリアを算出する時間間隔を示すパラメータである。
動画フレームレートは、リスニングエリアをリアルタイム表示(例えば、モニタでの動画表示)する際のフレームレートを示すパラメータである。
音源種類は、音源の種類を示すパラメータであり、コンテンツの種類と同意である。この音源種類は、管理上の都合で設定される情報であり、必須ではない。
【0033】
要求音響品質は、聴取者が要求する音響品質を示すパラメータである。言い換えるなら、この要求音響品質は、聴取者が重視する音響的な質を示すものであり、心理量とも呼ばれる。この要求音響品質としては、例えば、「包み込まれ感」、「拡がり感」、「明瞭感・明確な音像定位」があげられる。以下、要求音響品質は、「包み込まれ感」であることとする。
【0034】
<音響システム設置環境の説明>
以下、図2を参照して、初期条件として設定される音響システム設置環境の一例を説明する。
具体的には、室rmは、容積が32.4m、面積が13m、形状が3.6m×3.6mの正方形(8畳間)、床及び壁の内装材が石膏ボード、天井の内装材が岩綿吸音板であるとする。
また、室rmには、テレビボードfu1,タンスfu2等の家具が配置されている。
【0035】
また、室rmは、SSである中心ceを基準として、同心円状に8個のスピーカspが配置されている(図3(b)参照)。例えば、スピーカsp1〜sp5は、予め設定した基準高さ(聴取者の頭部推定高さ)に対する仰角が0°となるように、テレビボードfu1又はスタンド(不図示)の上に配置される。
【0036】
なお、図2では、8個のスピーカspのうち、予め設定した基準高さ(聴取者の頭部推定高さ)に対する仰角が0°となる5個のスピーカsp1〜sp5のみを図示した。
また、中心ceがSSであると説明したが、本発明では、中心ceがSSでなくともよい。
【0037】
ここで、スピーカの配置パターンについて説明する。
図3では、一点鎖線が仰角45°を示し、二点鎖線が仰角30°を示し、実線が仰角0°を示し、破線が仰角−30°を示している(図3(a)参照)。また、図3では、当該仰角で配置されるスピーカspを当該仰角に対応する線上に黒丸で図示した。なお、図3では、仰角や方位各の単位“°”を省略している。
【0038】
スピーカsp1は、図3(b)に示すように、仰角0°、方位角30°、距離2mの位置に配置される。また、スピーカsp2〜スピーカsp5は、仰角0°及び距離2mで、方位角90°,150°,225°,315°の位置にそれぞれ配置される。さらに、スピーカsp1〜スピーカsp5以外、2個のスピーカspが仰角45°で配置され、残り1個のスピーカspが仰角−30°で配置される。
【0039】
また、スピーカspは、図3(c)又は図3(d)のように配置することもできる。
図3(c)に示すように、SSの頭上(仰角90°)にスピーカspを1個配置してもよい。この他、1個のスピーカspが仰角45°で配置され、5個のスピーカspが仰角0°で配置され、残り1個のスピーカspが仰角−30°で配置される。
また、図3(d)に示すように、仰角30°にスピーカspを1個配置してもよい。この他、2個のスピーカspが仰角45°で配置され、4個のスピーカspが仰角0°で配置され、残り1個のスピーカspが仰角−30°で配置される。
【0040】
以後、全てのスピーカ位置(図3では8個のスピーカ位置)のパターンをスピーカ配置パターンと呼び、図3(b)のスピーカ配置パターンを「8ch−A」と呼び、図3(c)のスピーカ配置パターンを「8ch−B」と呼び、図3(d)のスピーカ配置パターンを「8ch−C」と呼ぶ。
なお、図3では、各スピーカspの距離を2mとして説明したが、本発明は、これに限定されない。また、本発明は、全てのスピーカspを同一距離に配置する必要もない。
【0041】
図1に戻り、リスニングエリア表示装置1の説明を続ける。
リスニングエリア規定関数データベース(関数データベース)13は、音響信号の音響物理量を算出する複数のリスニングエリア規定関数(関数)と、リスニングエリア規定関数の寄与率(以下、単に「寄与率」と略記)と、平滑化係数(変形例を参照)とを格納するデータベースである。
【0042】
この音響信号の音響物理量として、例えば、両耳間相互相関度(IACC)、両耳間時間差・強度差、残響時間(RT:reverberation time)、残響感(リバーブ)、ラウドネス、ラフネス、シャープネス、LE、及び、音声明瞭度・楽音明瞭度があげられる。すなわち、リスニングエリア規定関数は、それぞれ、両耳間相互相関度、両耳間時間差・強度差・強度差、残響時間、残響感、ラウドネス、ラフネス、シャープネス、LE、及び、音声明瞭度・楽音明瞭度を算出する関数である。
なお、リスニングエリア規定関数は、一般的なものであるため、詳細な説明を省略する(参考文献:図解入門よくわかる最新音響の基本と仕組み、株式会社 秀和システム)。
【0043】
寄与率は、コンテンツの種類ごとに、各リスニングエリア規定関数が評価点に寄与する度合いを示す値である。言い換えるなら、この寄与率は、選択されたリスニングエリア規定関数の組み合わせに応じた、各リスニングエリア規定関数の重みである。例えば、SSから右に1メートルの位置において、残響時間とLEとの組み合わせの場合、残響時間の寄与率が30%であり、LEの寄与率が70%である。
【0044】
なお、寄与率は、重回帰分析又は主成分分析によって求めることができる。例えば、重回帰分析は参考文献「原因をさぐる統計学、共分散構造分析入門、株式会社講談社」に記載され、主成分分析は参考文献「因子分析−その理論と方法−、朝倉書店」に記載されている。
ここで、SSから左に1メートルの位置というように、SSからの距離が同じでも方向が違う場合、残響時間の寄与率が50%、LEの寄与率が50%というように、寄与率の値が異なる場合がある。
また、リスニングエリア規定関数データベース13は、新たなリスニングエリア規定関数を、ユーザインタフェースによりオペレータが手動で追加することができる。
【0045】
リスニングエリア規定関数選択部(関数選択部)14は、予め設定された選択ルールに基づいて、リスニングエリア規定関数データベース13に記憶されたリスニングエリア規定関数を選択するものである。ここで、リスニングエリア規定関数選択部14は、下記の表1のように、この選択ルールが記述された選択ルールテーブルを予め記憶している。
なお、表1では、クラシックコンサートを「クラシック」と略記し、両耳間時間差・強度差を「両耳間時間差」と略記し、明瞭感・明確な音像定位を「明瞭感」と略記した。
【0046】
【表1】

【0047】
<選択ルール及びリスニングエリア規定関数の選択>
以下、選択ルール及びリスニングエリア規定関数の選択を具体的に説明する。
表1の選択ルールテーブルは、コンテンツの種類が「クラシックコンサート」で要求音響品質が「包み込まれ感」の場合、残響時間及びLEを算出する関数が、リスニングエリア規定関数として選択されることを示す。
また、この選択ルールテーブルは、コンテンツの種類が「クラシックコンサート」で要求音響品質が「広がり感」の場合、ラウドネス及び両耳間相互相関度を算出する関数が、リスニングエリア規定関数として選択されることを示す。
また、この選択ルールテーブルは、コンテンツの種類が「クラシックコンサート」で要求音響品質が「明瞭感・明確な音像定位」の場合、音声明瞭度・楽音明瞭度(例えば、D50やC80)、両耳間相互相関度、両耳間時間差・強度差及びラウドネスを算出する関数が、リスニングエリア規定関数として選択されることを示す。
【0048】
なお、選択ルールは、主観評価実験を繰り返して求めることができる。例えば、この主観評価実験では、評価者にクラシックコンサート等の音を聴取させて、評価者がその音から感受した音響印象の評価値を元に音響品質を求める。
ここで、主観評価実験により新たな選択ルール、つまり、コンテンツの種類及び要求音響品質と、関数との新たな対応関係が判明することがある。この場合、新たな選択ルールは、ユーザインタフェースによりオペレータが手動で追加する。
【0049】
まず、リスニングエリア規定関数選択部14は、信号入力部10から音響信号が入力されると共に、コンテンツメタデータ入力部11からコンテンツの種類「クラシックコンサート」が入力される。また、スニングエリア規定関数選択部14は、初期条件記憶部12から、要求音響品質「包み込まれ感」や、要求音響品質「包み込まれ感」に関わるリスニングエリア規定関数で必要となる情報(例えば、スピーカ数、家具の配置)等の初期条件を読み出す。
【0050】
そして、リスニングエリア規定関数選択部14は、選択ルールテーブルに基づいて、リスニングエリア規定関数データベース13から、コンテンツの種類「クラシックコンサート」、かつ、要求音響品質「包み込まれ感」に対応する残響時間及びLEを算出する関数を選択する。さらに、リスニングエリア規定関数選択部14は、リスニングエリア規定関数データベース13から、残響時間及びLEの組み合わせに応じた寄与率を選択する。
【0051】
その後、リスニングエリア規定関数選択部14は、入力された音響信号と、読み出した初期条件と、選択したリスニングエリア規定関数(残響時間及びLEを算出する関数)と、選択した寄与率(残響時間の寄与率及びLEの寄与率)とを、リスニングエリア音響物理量算出部16に出力する。
【0052】
リスニングエリア表示装置1の説明を続ける。
リスニングエリア規定関数代入変数データベース(吸音率データベース)15は、リスニングエリア規定関数に代入する変数を記憶するデータベースである。この変数は、例えば、室環境を示すものとして、内装材ごとの吸音率をあげることができる(参考文献「建築の音環境設計<新訂版>日本建築学会設計計画パンフレット、彰国社」)。
なお、吸音率等の変数は、ユーザインタフェースによりオペレータが手動で入力し、リスニングエリア規定関数代入変数データベース15に予め記憶される。
【0053】
リスニングエリア音響物理量算出部(音響物理量算出部)16は、音響信号から、リスニングエリア規定関数ごとに音響物理量を算出し、リスニングエリア規定関数ごとの音響物理量を寄与率で重み付けた重み付き音響物理量を算出し、重み付き音響物理量の総和を位置ごとの評価点として算出するものである。
【0054】
<評価点の算出>
以下、評価点の算出を具体的に説明する。
具体的には、リスニングエリア音響物理量算出部16は、リスニングエリア規定関数選択部14から、音響信号と、初期条件(例えば、スピーカ数、家具の配置)と、リスニングエリア規定関数と、寄与率とが入力される。そして、リスニングエリア音響物理量算出部16は、この初期条件に含まれる室の内装材(床、壁及び天井の内装材)に基づいて、リスニングエリア規定関数代入変数データベース15から、床、壁及び天井の内装材に対応する吸音率を読み出す。
【0055】
また、リスニングエリア音響物理量算出部16は、SSから右に1メートルの位置において、この吸音率と、初期条件に含まれる室の容積及び面積とを、残響時間を算出する関数(例えば、Eylingの計算式)に代入して、残響時間を算定する。さらに、リスニングエリア音響物理量算出部16は、この位置において、初期条件に含まれる音響システムの設置環境と、読み出した吸音率とを、LEを算出する関数に代入して、LEを算出する。
【0056】
そして、リスニングエリア音響物理量算出部16は、算出した残響時間にその寄与率を乗じて、重み付け残響時間を算出する。また、リスニングエリア音響物理量算出部16は、算出したLEにその寄与率を乗じて、重み付けLEを算出する。そして、リスニングエリア音響物理量算出部16は、重み付け残響時間と、重み付けLEとを総和して評価点を算出する。すなわち、リスニングエリア音響物理量算出部16は、下記の式(1)により、SSから右に1メートルの位置における評価点を算出する。
評価点=RTの値×RTの寄与率+LEの値×LEの寄与率 ・・・式(1)
【0057】
例えば、リスニングエリア音響物理量算出部16は、式(1)により、評価点=60と算出したこととする。そして、リスニングエリア音響物理量算出部16は、この位置と同様、再生音場(図2の室rm)の全位置で評価点を算出し、リスニングエリア算出部17に出力する。
【0058】
リスニングエリア表示装置1の説明を続ける。
リスニングエリア算出部17は、リスニングエリア音響物理量算出部16によって算出された評価点が予め設定した基準値(閾値)以上となる位置を結んだ領域を、リスニングエリアとして算出するものである。
【0059】
ここで、基準値は、60以上(LQ60)、70以上(LQ70)、80以上(LQ80)というように、段階的に設定してもよい。この場合、リスニングエリア算出部17は、リスニングエリア算出部17は、評価点が基準値60点以上となる位置を結んだ領域と、評価点が基準値70点以上となる位置を結んだ領域と、評価点が基準値80点以上となる位置を結んだ領域というように、基準値ごとにリスニングエリアを算出する。その後、リスニングエリア算出部17は、算出したリスニングエリアを、リスニングエリア表示部18に出力する。
【0060】
リスニングエリア表示部18は、リスニングエリア算出部17からリスニングエリアが入力され、そのリスニングエリアをグラフィック表示するものである。このリスニングエリア表示部18は、例えば、リスニングエリア表示装置1に接続されたモニタ(不図示)にリスニングエリアを表示する。
【0061】
<リスニングエリアの表示>
例えば、リスニングエリア表示部18は、各スピーカ配置パターンでのリスニングエリアの相違を把握するために、グラフィック表示を行うことができる。図4〜図8を参照して、スピーカ配置パターン(8ch−A、8ch−B、8ch−C)を3種類とした例で、リスニングエリアの表示を具体的に説明する(適宜図1参照)。
【0062】
なお、説明を簡易にするため、SSの右方向及び後方向に着目して説明する。
また、図4及び図5では、8ch−Aの評価点を実線で図示し、8ch−Bの評価点を破線で図示し、8ch−Cの評価点を一点鎖線で図示した。
【0063】
図4には、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cについて、SSの右方向、0cmから150cmまでの各位置で、リスニングエリア算出部17が算出した評価点を図示した。SSの右方向において、評価点がLQ80を満たすのは、8ch−Aで55cmの位置となり、8ch−Bで50cmの位置となり、8ch−Cで25cmの位置となる。従って、SSの右方向では、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cの順で、LQ80を満たすリスニングエリアが広くなる。
【0064】
また、図5には、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cについて、SSの後方向、0cmから150cmまでの各位置で、リスニングエリア算出部17が算出した評価点を図示した。SSの後方向において、評価点がLQ80を満たすのは、8ch−Aで70cmの位置となり、8ch−Bで30cmの位置となり、8ch−Cで51cmの位置となる。従って、SSの後方向では、8ch−A、8ch−C及び8ch−Bの順で、LQ80を満たすリスニングエリアが広くなる。
【0065】
従って、リスニングエリア表示部18は、図6〜図8のようにリスニングエリアをグラフィック表示する。8ch−Aの場合、リスニングエリア表示部18は、図6に示すように、5個のスピーカsp(仰角0°のみ図示)及び家具fu1,fu2が配置された室rmと共に、リスニングエリアをグラフィック表示する。この図6では、評価点がLQ80を満たす位置は、SSの右方向で55cm、SSの後方向で70cmとなっており、図4,図5のグラフと一致する。
【0066】
また、リスニングエリア表示部18は、図7に示すように、8ch−Bでのリスニングエリアをグラフィック表示する。この図7では、評価点がLQ80を満たす位置は、SSの右方向で50cm、SSの後方向で30cmとなっており、図4,図5のグラフと一致する。
【0067】
さらに、リスニングエリア表示部18は、図8に示すように、8ch−Cでのリスニングエリアをグラフィック表示する。この図8では、評価点がLQ80を満たす位置は、SSの右方向で25cm、SSの後方向で51cmとなっており、図4,図5のグラフと一致する。
【0068】
図6〜図8のように、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cでグラフィック表示を行うと、スピーカ配置パターンによって、リスニングエリアが異なることを容易に把握できる。つまり、リスニングエリア表示装置1は、室環境及び視聴形態に合ったリスニングエリアを選択するための、スピーカ配置パターンを決定する手段として利用できる。
【0069】
なお、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cのそれぞれについて、リスニングエリアを表示する場合、初期条件記憶部12に、各スピーカ配置パターンに対応した初期条件(スピーカ数、スピーカ位置)を予め記憶させておく。そして、リスニングエリア表示装置1は、各スピーカ配置パターンに対応した初期条件を用いて、リスニングエリアを算出、表示する。この場合、オペレータは、ユーザインタフェースによって、リスニングエリアを表示したいスピーカ配置パターンを手動で選択してもよい。
【0070】
また、リスニングエリア表示部18は、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cの全てで、評価点がLQ60,LQ70,LQ80を満たすリスニングエリアを、共通リスニングエリアとして表示してもよい。この場合、リスニングエリア算出部17は、8ch−A、8ch−B及び8ch−Cそれぞれのリスニングエリアを論理積(AND演算)することで、共通リスニングエリアを算出できる。これによって、リスニングエリア表示装置1は、全てのスピーカ配置パターンで共通する、良好なリスニングエリアを提示可能とし、その利便性を向上させることができる。
【0071】
さらに、音響物理量の種類によっては、時間経過と共に、音響信号に対する音響物理量が変化することがある。この場合、リスニングエリア算出部17は、初期条件の算出時間間隔ごとに音響信号を区切って、その区切ごとにリスニングエリアを算出する。そして、リスニングエリア表示部18は、コンテンツを再生しながら、初期条件記の動画フレームレートに従って、LQ80、LQ70、LQ60を満たすリスニングエリアを色別表示する。
【0072】
[リスニングエリア表示装置の動作]
図9を参照して、図1のリスニングエリア表示装置1の動作を説明する(適宜図9参照)。
【0073】
リスニングエリア表示装置1は、初期条件記憶部12、リスニングエリア規定関数データベース13及びリスニングエリア規定関数代入変数データベース15によって、初期条件等の情報が予め入力(記憶)される(ステップS1)。
【0074】
リスニングエリア表示装置1は、コンテンツメタデータ入力部11によって、コンテンツの種類が入力される(ステップS2)。
リスニングエリア表示装置1は、信号入力部10によって、マルチチャンネルの音響信号が入力される(ステップS3)。
【0075】
リスニングエリア表示装置1は、リスニングエリア規定関数選択部14によって、選択ルールに基づいて、リスニングエリア規定関数データベース13に記憶されたリスニングエリア規定関数を選択する(ステップS4)。
【0076】
リスニングエリア表示装置1は、リスニングエリア音響物理量算出部16によって、リスニングエリア規定関数ごとに音響物理量を算出し、リスニングエリア規定関数ごとの音響物理量を寄与率で重み付けた重み付き音響物理量を算出し、重み付き音響物理量の総和を位置ごとの評価点として算出する(ステップS5)。
【0077】
リスニングエリア表示装置1は、リスニングエリア算出部17によって、評価点が基準値以上となる位置を結んだ領域を、リスニングエリアとして算出する(ステップS6)。
リスニングエリア表示装置1は、リスニングエリア表示部18によって、リスニングエリア算出部17が算出したリスニングエリアをグラフィック表示する(ステップS7)。
【0078】
以上のように、本発明の実施形態に係るリスニングエリア表示装置1は、聴取者が要求する音響品質を満たす領域をリスニングエリアとして算出するので、聴取者の要求を考慮して、図6〜図8に示すように、リスニングエリアを客観的に提示することができる。
【0079】
また、リスニングエリア表示装置1は、音響特性の測定で一般的な残響時間等の音響物理量を用いるので、汎用性を向上させることができる。さらに、リスニングエリア表示装置1は、リスニングエリア規定関数代入変数データベース15に記憶された吸音率を残響時間に反映するため、吸音率等の室環境も考慮して、一定の音響品質が保たれるリスニングエリアを客観的に提示することができる。
【0080】
また、リスニングエリア表示装置1は、各スピーカ配置パターンでのリスニングエリアの相違を客観的に把握できるため、最適なスピーカ配置パターンを聴取者が選択しやすくなり、その利便性を向上させることができる。
【0081】
なお、本実施形態では、8チャンネルの例として説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、ステレオ(2チャンネル)、5.1チャンネル、22.2チャンネル等、何れのマルチチャンネル音響にも適用することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、音響信号及びコンテンツの種類をTSから抽出することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。すなわち、信号入力部10には、音響信号をそのまま入力することができる。この場合、コンテンツメタデータ入力部11には、コンテンツの種類を、ユーザインタフェースによりオペレータが手動で入力する。
【0083】
なお、本実施形態では、残響時間及びLEを例に評価点の算出を説明したが、本発明は、これに限定されない。すなわち、リスニングエリア音響物理量算出部16は、下記の式(2)により、様々な音響物理量から評価点を算出することができる。この式(2)では、Ansが音響物理量であり、αがその音響物理量を算出するリスニングエリア規定関数の寄与率であり、Ans,αの添え字(1,・・・,n、nは1以上の整数)が何個目の音響物理量及び寄与率であるかを示す。
評価点=Ans×α+・・・+Ans×α ・・・式(2)
【0084】
なお、本実施形態では、本発明に係るリスニングエリア表示装置1を独立した装置として説明したが、本発明では、初期条件記憶部12、リスニングエリア規定関数データベース13及びリスニングエリア規定関数代入変数データベース15を備えるコンピュータを、信号入力部10、コンテンツメタデータ入力部11、リスニングエリア規定関数選択部14、リスニングエリア音響物理量算出部16、リスニングエリア算出部17、リスニングエリア表示部18として機能させるプログラムによって実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布しても良く、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布しても良い。
【0085】
(変形例)
以下、本発明の変形例として、リスニングエリア音響物理量算出部16で評価点を算出する別の方法について説明する(適宜図1参照)。
【0086】
RTやLE等の音響物理量は、それぞれの桁、レンジや単位が異なるため、単に音響物理量に寄与率を乗じても、評価点のばらつきが出ることが考えられる。そこで、式(2)の計算において、各音響物理量の値が配点として平滑化(正規化)されるような項を追加する。すなわち、リスニングエリア音響物理量算出部16は、下記の式(3)に示すように、音響物理量Ans及び寄与率αに平滑化係数βを乗じて、評価点を算出する。
評価点=Ans×α×β+・・・+Ans×α×β ・・・式(3)
【0087】
例えば、平滑化係数βは、ある音響物理量の平均が0、分散が1となるような線形変換によって、音響物理量ごとに予め設定される。
これによって、リスニングエリア表示装置1は、評価点のばらつきを減少させて、より正確なリスニングエリアを提示することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 リスニングエリア表示装置
10 信号入力部
11 コンテンツメタデータ入力部(コンテンツ種類入力部)
12 初期条件記憶部
13 リスニングエリア規定関数データベース(関数データベース)
14 リスニングエリア規定関数選択部(関数選択部)
15 リスニングエリア規定関数代入変数データベース(吸音率データベース)
16 リスニングエリア音響物理量算出部(音響物理量算出部)
17 リスニングエリア算出部
18 リスニングエリア表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャンネルの音響信号を再生した音場の各位置で、音響品質を評価した結果である評価点が、予め設定された閾値以上になる領域をリスニングエリアとして表示するリスニングエリア表示装置であって、
前記音響信号が入力される信号入力部と、
前記音響信号が属するコンテンツの種類が入力されるコンテンツ種類入力部と、
聴取者が要求する音響品質である要求音響品質が少なくとも含まれる初期条件を、予め記憶する初期条件記憶部と、
前記音響信号の音響物理量を算出する複数の関数と、前記関数の寄与率とを、予め記憶する関数データベースと、
前記コンテンツの種類及び前記要求音響品質に対応する前記関数が予め設定された選択ルールに基づいて、前記関数データベースに記憶された関数を選択する関数選択部と、
前記音場の各位置において、前記信号入力部に入力された音響信号から、前記関数選択部が選択した関数ごとの音響物理量を算出し、前記関数ごとの音響物理量を当該関数の寄与率で重み付けた重み付き音響物理量を算出し、当該重み付き音響物理量の総和を前記評価点として算出する音響物理量算出部と、
前記音響物理量算出部によって算出された評価点が前記閾値以上となる位置を結んだ領域を、前記リスニングエリアとして算出するリスニングエリア算出部と、
前記リスニングエリア算出部によって算出されたリスニングエリアを表示するリスニングエリア表示部と、
を備えることを特徴とするリスニングエリア表示装置。
【請求項2】
前記関数データベースは、前記音響物理量として、両耳間相互相関度、両耳間時間差・強度差、残響時間、残響感、ラウドネス、ラフネス、シャープネス、LE、及び、音声明瞭度・楽音明瞭度を算出する前記関数が、それぞれ記憶されることを特徴とする請求項1に記載のリスニングエリア表示装置。
【請求項3】
内装材ごとに吸音率を予め記憶する吸音率データベースをさらに備え、
前記初期条件記憶部は、前記初期条件として、さらに、前記音響信号を再生する音響システムが配置された室の内装材を記憶し、
前記音響物理量算出部は、前記初期条件記憶部の内装材に対応する吸音率を前記吸音率データベースから読み出すと共に、当該吸音率を用いて、前記音響物理量を算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のリスニングエリア表示装置。
【請求項4】
前記初期条件記憶部は、前記初期条件として、さらに、前記音響システムが備える全てのスピーカ位置を記憶し、
前記リスニングエリア算出部は、前記全てのスピーカ位置のパターンであるスピーカ配置パターンごとに、前記リスニングエリアを算出し、
前記リスニングエリア表示部は、前記スピーカ配置パターンごとに、前記リスニングエリアを表示することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のリスニングエリア表示装置。
【請求項5】
マルチチャンネルの音響信号を再生した音場の各位置で、音響品質を評価した結果である評価点が、予め設定された閾値以上になる領域をリスニングエリアとして表示するために、聴取者が要求する音響品質である要求音響品質が少なくとも含まれる初期条件を予め記憶する初期条件記憶部と、音響信号の音響物理量を算出する複数の関数と、関数の寄与率とを予め記憶する関数データベースとを備えるコンピュータを、
前記音響信号が入力される信号入力部、
前記音響信号が属するコンテンツの種類が入力されるコンテンツ種類入力部、
前記コンテンツの種類及び前記要求音響品質に対応する前記関数が予め設定された選択ルールに基づいて、前記関数データベースに記憶された関数を選択する関数選択部、
前記音場の各位置において、前記信号入力部に入力された音響信号から、前記関数選択部が選択した関数ごとの音響物理量を算出し、前記関数ごとの音響物理量を当該関数の寄与率で重み付けた重み付き音響物理量を算出し、当該重み付き音響物理量の総和を前記評価点として算出する音響物理量算出部、
前記音響物理量算出部によって算出された評価点が前記閾値以上となる位置を結んだ領域を、前記リスニングエリアとして算出するリスニングエリア算出部、
前記リスニングエリア算出部によって算出されたリスニングエリアを表示するリスニングエリア表示部、
として機能させるためのリスニングエリア表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48310(P2013−48310A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185416(P2011−185416)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】