説明

リチウムイオン二次電池パック

【課題】 比較的少ない重量、容積で対振動性が高く且つ空気による冷却も可能なリチウムイオン二次電池パックを提供すること。
【解決手段】 組電池3を固定する発泡性充填材24を組電池3の角部と下ケース2間に使用し、リチウムイオン二次電池パック内に空気の流路を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池を用いたリチウムイオン二次電池パックに関し、特に大容量化に適した耐震構造及び放熱構造を有するリチウムイオン二次電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器、特に携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、ビデオカメラなどの携帯用情報機器の発達や普及に伴い、小型、軽量で、かつエネルギー密度が高い二次電池の需要が大きく伸張し、なお、高性能化の検討がなされている。このような二次電池として特にリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の一般的な構造は、リチウム−コバルト複合酸化物などの正極活物質粉末、導電性粉末、及びバインダからなる正極活物質層をアルミニウム箔からなる正極集電体表面に形成してなる正極と、炭素系の負極活物質粉末、及びバインダからなる負極活物質層を銅箔からなる負極集電体表面に形成してなる負極を、多孔質のフィルムからなるセパレータを介して重ね、電解液を含浸し発電素子としたものである。
【0004】
小型化、軽量化のために、電解液を高分子電解質に替えたリチウムイオンポリマー電池が用いられ、また発電素子を封入する外装材としてアルミニウムなどの金属箔と高分子フィルムからなるラミネートフィルムが用いられている。
【0005】
図5は従来のラミネートフィルムを外装に用いた二次電池の一例を示す斜視図である。図5において、発電素子をラミネートフィルム13により封入してリチウムイオン電池が構成され、発電素子の正極に接続された正極タブ14と負極に接続された負極タブ15をそれぞれラミネートフィルムより突出させて設けている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
図8は従来のラミネート型リチウムイオン二次電池パック内部の分解斜視図である。従来、ラミネート型リチウムイオン二次電池の組電池のケースへの装着については、図8に示すように組電池3の周囲を弾性体10、11、12で覆い、組み込む構造が主流であった(例えば特許文献2、図5参照)。
【0007】
しかし、近年のラミネート型リチウムイオン二次電池を搭載する装置の多様化から、例えば、業務用電動機器のように高い機械的強度(10G程度を数十時間加える程度)を要求されながら同時に、使用時に流れる大電流による電池の発熱を抑制するよう要求されるような用途も出てきており以下のような問題があった。
【0008】
図6はラミネート型リチウムイオン二次電池の組電池の部分断面図であり、図7はラミネート型リチウムイオン二次電池の組電池の平面図である。通常、隣接する電池同士を粘着材などで固定されたラミネート型リチウムイオン二次電池に振動を加えると、図6に示すように電池内部で電極積層体16が電解液中に浮いているような状態となり、電極積層体16のエッジ部と絞り加工を施したラミネート外装材のエンボスの角部17が擦れあうことになる。振動が弱い場合、加震時間が短い場合には問題が無いが、加速度が大きい場合や長時間の振動にさらされる場合にはラミネート外装材の絶縁性の低下からくる腐食や機械的破壊により、図7に示す外装体の側面部および底面部において稜18の中央部付近から漏液を起こす事があった。
【0009】
また、このようなラミネート外装材の脆弱性の課題を解決するために、従来は積層方向にある一定以上の加重を加えて電池同士または電池内の積層された電極が動かないように加圧する必要があった。図9は従来の電池パックの斜視図である。図9に示されるように、ラミネート型リチウムイオン単電池を積層した組電池(単電池積層体)3を剛性のある金属板32で挟み込み、ボルトまたはナット33等で締め付けたりしていた(例えば特許文献3、図1参照)。また図8のように弾性体を用いる場合には、弾性体を厚くし(5.0〜7.0mm程度)元の厚みの1/2程度まで大きく圧縮してケース内に入れ込み積層方向の加重を得る方法があった。また、加重を掛ける方法以外には電池パックのケース内の組電池全体を樹脂で封止する方法もあった(例えば特許文献4参照)。
【0010】
しかし、図8で示される組電池の周囲を弾性体で覆い組み込む構造や、図9で示される組電池を金属板等で挟み込む構造においては電池パック内で組電池が占める部分以外にも比較的広い空間を必要とし小型化に不向きであり、また、組電池全体を樹脂で封止する方法や、組電池を金属板等で挟み込む構造の場合には全体の重量が増し、ラミネート型リチウムイオン二次電池の軽量性という特性を生かせなかった。また、空気による組電池の冷却を考慮した場合、組電池の周囲全体を弾性体で覆い組み込む構造や、組電池全体を樹脂で封止する方法は不向きであった。さらに、組電池の周囲を弾性体で覆い組み込み大きく圧縮する構造では、緩衝材となる弾性体の反発力により、電池パックのケース表面が変形するなどの不具合を生じる可能性もあった。
【0011】
【特許文献1】特開2005−129234号公報
【特許文献2】特開2004−139924号公報
【特許文献3】特開2005−116427号公報
【特許文献4】特開2003−162989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような状況にあって、本発明の課題は、比較的少ない体積および重量で対振動性および空気冷却性のよいリチウムイオン二次電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明のリチウムイオン二次電池パックは、ラミネート型リチウムイオン二次電池からなる少なくとも一個の単電池から構成される組電池をケースに収納したリチウムイオン二次電池パックにおいて、前記組電池と前記ケース間に前記組電池の上下面を全面に亘り覆い、側面を部分的に覆う弾性体と、前記組電池の側面の角部に発泡性充填材を有し、前記ケースに前記組電池の側面の中央部との間に空間を保ち、前記組電池を保持するリブを設けたことを特徴とする。
【0014】
また、前記発泡性充填材を組電池の側面の角部において前記リブにより仕切られた各辺の1/4〜1/3の部分に接するように充填してもよい。
【0015】
また、前記側面を部分的に覆う弾性体を前記リブ上に設けてもよい。
【0016】
また、前記組電池は複数の単電池を接着剤または粘着剤で固定され積層されてもよい。
【0017】
また、前記組電池の容量が1Ah以上18Ah以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明では、ケースと組電池間の一部を弾性体と発泡性充填材により固定することにより耐震性を向上させ且つ、組電池を完全に覆わないことにより空冷のための通路を確保し、比較的小さな容積と重量で耐震性と冷却性に優れたリチウムイオン二次電池パックを供給することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図3は本発明の実施の形態のリチウムイオン二次電池パックの製造途中工程を示す分解斜視図である。正極、負極、および電解質を有する発電素子を金属箔と樹脂からなるラミネートフィルムで封入してなるラミネート型リチウムイオン二次電池を複数積層して構成された組電池3を上下面の全面および側面を部分的に覆う弾性体4、5、6を介し蓋状の上ケース1と箱状の下ケース2からなるケースに収納された構成となっている。ここで上ケース1の一方の端部には空冷の為の吸気口7が、反対側の端部には排気口8が設けてある。
【0021】
組電池は、複数の単電池同士を両面粘着テープ、接着剤等で固定する。これは、ラミネート形電池の特徴である薄さを損なわずに組み電池を構成するのに適している。
【0022】
図4は本発明の実施の形態のリチウムイオン二次電池パックに用いられる下ケースの斜視図である。図4に示すように組電池を収める下ケース2には、組電池をケース内壁から距離をとって位置決めを行う為のリブ29が設けられており、そのリブは、図中斜線で示す空気の流路21を確保すべく中央部では一部が切り欠いてある。このとき、下ケース2のリブ29と組電池のラミネート外装材の表面が直接触れないように緩衝材となる弾性体4、5を間に挟んでおく。(図3参照)しかし、この緩衝材となる弾性体は、図8の従来例で示したほどの厚さは必要なく、おおよそ1.0〜2.0mm程度で十分であることが振動試験による比較実験により明らかになった。この為、緩衝材の使用量を削減出来、さらにケース変形などの可能性も低くなる。
【0023】
図1は本発明の実施の形態のリチウムイオン二次電池パックの製造途中工程を示す平面透視図であり、図2は図1のA−A線における断面図である。図1に示すように下ケース2に組電池3を組み込んだ後、発泡性充填材24を組電池3の4隅の側面の角部に注入する。このときの吐出量は発泡後、図7で示した角部における電池各辺の1/4〜1/3の範囲19に行き渡る量に管理される必要があることが振動試験による比較実験により明らかになったが、空気の流路とはリブ29で隔離される為、さほど厳密な管理を必要としない。また、図2に示すように、充填材は発泡性であるため、複雑な形状にも追従して発泡性充填材24が組電池3と下ケース2間を埋める。注入される発泡性充填材は、作業性の面および硬化時に発熱を伴わないことから一液性のウレタン系発泡充填材がよい。
【0024】
なお、一般的に1Ah未満の電池は容積、重量共に小さく、組電池としてよりも単電池の状態で電池パックを構成する場合も多く、また、このクラスの単電池の多くは比較的強固なAl缶ケースを持っている場合の方が多い為、あまり耐震性を考慮する必要性がない。また、現在想定している単電池の最大容量は18Ahである。
【0025】
以上のように、本発明により比較的少ない重量、容積で対振動性が高く且つ空気による冷却も可能な電池パックを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池パックの製造途中工程を示す平面透視図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池パックを示す分解斜視図。
【図4】本発明の実施形態のリチウムイオン二次電池パックに用いられる下ケースの斜視図。
【図5】従来のラミネートフィルムを外装に用いた二次電池の斜視図。
【図6】ラミネート型リチウムイオン二次電池の組電池の部分断面図。
【図7】ラミネート型リチウムイオン二次電池の組電池の平面図。
【図8】従来のラミネート型リチウムイオン二次電池パック内部の分解斜視図。
【図9】従来の電池パックの斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1 上ケース
2 下ケース
3 組電池
4、5、6 弾性体
7 吸気口
8 排気口
10、11、12 弾性体
13 ラミネートフィルム
14 正極タブ
15 負極タブ
16 電極積層体
17 エンボスの角部
18 稜
19 各辺の1/4〜1/3の範囲
21 空気の流路
24 発泡性充填材
29 リブ
30 組電池保護板
32 金属板
33 ボルトまたはナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート型リチウムイオン二次電池からなる少なくとも一個の単電池から構成される組電池をケースに収納したリチウムイオン二次電池パックにおいて、前記組電池と前記ケース間に前記組電池の上下面を全面に亘り覆い、側面を部分的に覆う弾性体と、前記組電池の側面の角部に発泡性充填材を有し、前記ケースに前記組電池の側面の中央部との間に空間を保ち、前記組電池を保持するリブを設けたことを特徴とするリチウムイオン二次電池パック。
【請求項2】
前記発泡性充填材を組電池の側面の角部において前記リブにより仕切られた各辺の1/4〜1/3の部分に接するように充填したことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池パック。
【請求項3】
前記側面を部分的に覆う弾性体を前記リブ上に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池パック。
【請求項4】
前記組電池は複数の単電池を接着剤または粘着剤で固定され積層されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池パック。
【請求項5】
前記単電池の容量が1Ah以上18Ah以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−235170(P2008−235170A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76535(P2007−76535)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】