リップ溝形鋼接合構造及び架台
【課題】リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易で、且つ、接合位置の微調整が可能なリップ溝形鋼接合構造を提供する。
【解決手段】リップ溝形鋼接合構造は、形鋼内幅がNで溝15の幅がWであるリップ溝形鋼10と、座体21を備える第一接合部材1と、雄ネジ(ボルト50)及び雌ネジ(雌ネジ部35)による締結により、座体との間でリップ片11を挟持する第二接合部材40とを具備する。座体は、短辺の長さがWより短い仮想長方形から、隣り合わない一対の第一角部A1が切り欠かれた形状の外形を有し、切り欠かれた一対の第一角部において、対向する点を結んだ第一対角線の長さは何れもNより短く、他の一対の第二角部A2の頂点を結んだ第二対角線の長さはNより長い。座体の回転により一対の第二角部が、リップ溝形鋼の一対の側面部12の内表面17にそれぞれ当接し、係止される。
【解決手段】リップ溝形鋼接合構造は、形鋼内幅がNで溝15の幅がWであるリップ溝形鋼10と、座体21を備える第一接合部材1と、雄ネジ(ボルト50)及び雌ネジ(雌ネジ部35)による締結により、座体との間でリップ片11を挟持する第二接合部材40とを具備する。座体は、短辺の長さがWより短い仮想長方形から、隣り合わない一対の第一角部A1が切り欠かれた形状の外形を有し、切り欠かれた一対の第一角部において、対向する点を結んだ第一対角線の長さは何れもNより短く、他の一対の第二角部A2の頂点を結んだ第二対角線の長さはNより長い。座体の回転により一対の第二角部が、リップ溝形鋼の一対の側面部12の内表面17にそれぞれ当接し、係止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合するための接合構造、及び、該接合構造を用いた架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リップ溝形鋼(「リップ付き溝形鋼」と称されることもある)は、断面コ字形の開端を内側に屈曲させた断面形状を有する形鋼である。従来、壁や屋根の下地材等とするために、リップ溝形鋼同士を縦横に組み付ける場合、或いは、リップ溝形鋼に他の部材を支持させる場合、リップ溝形鋼の側面または背面に孔をあけて、別のリップ溝形鋼または他の部材と連結するためのL字形やT字形の連結具の一面とボルト及びナットで締結し、連結具の他の面を介して別のリップ溝形鋼または他の部材と接合するのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、このような接合構造の場合、リップ溝形鋼に多くの孔を穿設する必要があり、手間や時間を要するものであった。また、いったん穿設された孔の位置は変更できないため、接合位置の微調整ができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易で、且つ、接合位置の微調整が可能な接合構造、及び、該接合構造を用いた架台の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるリップ溝形鋼接合構造は、
「長軸方向に延びる溝を挟んだ一対のリップ片、それぞれの前記リップ片と垂直な一対の側面部、及び、それぞれの前記側面部と垂直で前記リップ片と対向する背面部を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の前記側面部の内表面間の距離がNで前記溝の幅がWであるリップ溝形鋼と、
該リップ溝形鋼の内側で平坦面を前記リップ片の内表面に当接させる座体を備える第一接合部材と、
前記リップ片の外表面に当接させる当接部、及び、前記リップ溝形鋼の接合対象物を支持させる対象物支持部を備える第二接合部材とを具備し、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結されることにより、前記座体と前記当接部との間に前記リップ片が挟持されており、
前記座体は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形の隣り合わない一対の第一角部及び隣り合わない他の一対の第二角部の内、一対の前記第一角部において、対向する二点を結んだ第一対角線の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の前記第二角部の頂点を結んだ第二対角線の長さがNより長い形状を呈する係止部を備えており、
一対の前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している」ものである。
【0006】
「前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結される」態様としては、第一接合部材において座体と一体的に雌ネジ部を設け、第二接合部材の当接部に設けた孔に通したボルトと螺合させる形態、第一接合部材において座体と一体的にボルト軸部を設け、これを第二接合部材に設けた孔に通した上でナットと螺合させる形態、及び、第一接合部材において座体に設けた孔及び第二接合部材において当接部に設けた孔に通したボルトを、ナットと螺合させる形態を挙げることができる。
【0007】
「第二接合部材」としては、L字形、T字形、コ字形など、当接部と対象物支持部とが異なる面で構成される形態の他、同一面をなす平板の一部が当接部を構成し、他の部分が対象物支持部を構成する形態等、種々の形態を採用可能である。
【0008】
上記構成では、座体の外形の元となる仮想長方形の短辺の長さが、リップ溝形鋼の溝幅Wより短いため、座体の長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態で、リップ溝形鋼の溝を介して座体をリップ溝形鋼の内側に挿入することができる。仮に、座体をリップ溝形鋼の内側に位置させるために、リップ溝形鋼の長軸方向の端部(小口)から座体を挿入しなければならないとすると、第一接合部材及び第二接合部材の複数組を一つのリップ溝形鋼に取り付ける場合、その作業手順を非常に厳密に行うことが必要となる。なぜなら、一つのリップ溝形鋼に第一接合部材を介して既に連結された第二接合部材と第二接合部材との間には、後から座体をリップ溝形鋼の内側に位置させることができないからである。これに対し、上記構成の本発明では、座体を溝側からリップ溝形鋼に挿入できるため、リップ溝形鋼に他の部材を接合する作業手順の自由度が高く、接合される部材を後から追加することも容易である。
【0009】
そして、長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態で、リップ溝形鋼の内側に挿入された座体は、第一接合部材と第二接合部材とを締結する雄ネジ及び雌ネジ(以下、「雌雄ネジ」と総称することがある)により、回転させられる。その際、切り欠かれた一対の第一角部における第一対角線の長さは、何れもリップ溝形鋼の一対の側面部の内表面間の距離N(以下、「形鋼内幅N」と称することがある)より短いため、リップ溝形鋼の側面部の内表面(以下、「形鋼内側面」と称することがある)に、第一角部は当接しない。一方、第二角部の頂点を結んだ第二対角線は形鋼内幅Nより長いため、第二角部が形鋼内側面に当接し座体を係止させる。従って、第二角部は、雌雄ネジによって第一接合部材と第二接合部材とを締結する際の、座体の“回り止め”として作用する。これにより、座体と第二接合部材とを、雌雄ネジによって強固に締結することができる。
【0010】
なお、一対の第一角部における「対向する二点を結んだ第一対角線」とは、一対の第一角部の一方の切り欠き上のある点と、その点と仮想長方形の中心点とを通る直線が他方の第一角部の切り欠きと交わる点とを結ぶ直線を指している。
【0011】
また、長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態の座体が、雌雄ネジによる締結に伴って回転する際に、先に形鋼内側面に近付く角部を第一角部とすれば、先に形鋼内側面に近付く角部が第二角部である場合に比べて、座体においてリップ片と当接する面積が大きくなるため、好適である。
【0012】
本発明では、第一接合部材及び第二接合部材を、リップ溝形鋼の溝を介して締結する構成であるため、従来とは異なり、両者の締結のために、リップ溝形鋼の側面部や背面部にボルトを通す孔を穿設する必要がない。これにより、第一接合部材及び第二接合部材を介して、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易である。また、第一接合部材及び第二接合部材は、リップ溝形鋼の溝に沿ってスライドさせてから締結することができる。これにより、第一接合部材及び第二接合部材を介して、リップ溝形鋼に接合される部材の接合位置を、容易に微調整することができる。
【0013】
ここで、本発明の上記構成とは異なり、座体の長辺の長さを形鋼内幅Nと一致させることにより、長辺の両端点によって座体を回り止めさせる構成も想到し得る。しかしながら、その場合は、座体の長辺の長さを形鋼内幅Nに正確に一致させる必要があるため、座体を精密に加工することが必要となる。また、リップ溝形鋼には、サイズの異なる多くの種類が存在するところ、その種類ごとに“専用”の座体を多種類製造しなくてはならないという問題が生じる。これに対し、本発明では、座体の対角線(第二対角線)上にある一対の第二角部で回り止めさせる構成であるため、リップ溝形鋼のサイズに合わせて精密に座体を加工する必要がないという利点がある。また、同一サイズの座体を、ある程度の範囲内であれば異なるサイズのリップ溝形鋼に対して使用できる。すなわち、本発明では、座体に許容されるサイズの範囲が広いという利点を有する。
【0014】
加えて、座体の対角線上にある一対の第二角部で回り止めさせる構成であることから、長辺の両端点で回り止めさせる場合と比べて、長辺が短い小サイズの座体であっても、形鋼内側面に当接させ係止させることができる。このことからも、座体に許容されるサイズの範囲が広いと言うことができる。
【0015】
本発明にかかるリップ溝形鋼接合構造は、上記構成に加え、
「前記リップ溝形鋼は、前記側面部と前記リップ片との間に内表面の曲率半径がRのアール部を備え、
前記座体は、前記係止部と、前記係止部から前記平坦面に至る逃がし部とを備え、
該逃がし部は、横断面の外形が前記第一角部切欠形状を呈する一方で、前記平坦面に前記仮想長方形を設定した場合の一対の前記第二角部のそれぞれが、その頂点を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部を備え、
前記係止部における前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している」ものとすることができる。
【0016】
通常のリップ溝形鋼は金属板を折り曲げ成形したものであり、側面部とリップ片との間に、湾曲したアール部が存在する(側面部と背面部との間にも、同様にアール部が存在するのが通常である)。本構成では、座体が係止部と逃がし部とを備えており、リップ片の内表面と当接する平坦面側が逃がし部となっている。そして、リップ溝形鋼のアール部の内表面の曲率半径をRとしたとき、逃がし部は、平坦面における第二角部が、その頂点を中心とする半径Rの球状の切り欠きより大きく切り欠かれた第二角切欠部を備えている。かかる構成により、平坦面をリップ片の内表面に当接させた状態で座体を回転させたとき、座体がアール部と干渉することが回避され、係止部の第二角部が形鋼内側面に当接する。従って、座体がリップ片の内表面に対して浮き上がった状態となることなく、リップ片の内表面に座体がぴったりと当接した状態で、第一接合部材と第二接合部材とを強固に接合することができる。
【0017】
次に、本発明にかかる架台は、
「上記に記載のリップ溝形鋼接合構造を備える架台であって、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼からなるフレーム部と、
該フレーム部を構成するリップ溝形鋼と、前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって接合された、前記フレーム部と交差する方向に延びるリップ溝形鋼からなる脚部と、
一端側が、前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に、前記フレーム部における前記脚部との接合位置より離れた位置で連結され、他端側が、前記脚部を構成するリップ溝形鋼に、前記脚部における前記フレーム部との接合位置より離れた位置で連結された、長尺のアーム部と、
前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に前記第一接合部材を介して連結された前記第二接合部材からなり、架台に載置する接合対象物を支持する載置部とを具備する」ものである。
【0018】
上述のように、本発明のリップ溝形鋼接合構造では、リップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易であるため、架台に載置する接合対象物を、第一接合部材及び第二接合部材を介して、フレーム部のリップ溝形鋼に容易に支持させることができる。また、上述のように、本発明のリップ溝形鋼接合構造では、リップ溝形鋼に接合される部材の接合位置を、微調整することが容易であるため、架台に載置する接合対象物がフレーム部に支持される位置を、容易に微調整することができる。
【0019】
また、脚部の上端側をフレーム部と接合するための、第一接合部材と第二接合部材との接合角度、及び、脚部の下端側とフレーム部とを接合するアーム部の角度により、脚部が立脚する接地面に対するフレーム部の角度を容易に変化させることができる。これにより、架台に載置する接合対象物の種類及び用途、架台の設置場所などの範囲が、極めて広いという利点を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の効果として、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易で、且つ、接合位置の微調整が可能なリップ溝形鋼接合構造、及び、該リップ溝形鋼接合構造を用いた架台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造の分解斜視図である。
【図2】第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の(a)斜視図、(b)平面図、(c)底面図、及び、(d)展開図である。
【図3】仮想長方形の長辺の長さLの説明図である。
【図4】仮想長方形の短辺の長さSの説明図である。
【図5】仮想長方形を元にした、第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の座体の外形決定の説明図である。
【図6】長辺の長さLの異なる座体について、形鋼内側面に当接する状態の説明図である。
【図7】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の(a)平面図、(b)正面図、(c)Y−Y線断面図、(d)斜視図、及び、(e)平坦面をリップ溝形鋼の内表面に当接させ係止部の第二角部を形鋼内側面に当接させた状態の断面図である。
【図8】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の他の例の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)斜視図である。
【図9】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の更に他の例の(a)斜視図、(b)展開図、及び、(c)係止部の横断面の外形決定の説明図である。
【図10】架台の側面図である。
【図11】(a)図10におけるZ範囲の拡大図、及び、(b)図10の架台における載置部近傍の平面図である。
【図12】他の形態の第一接合部材の(a)斜視図、(b)平面図、及び、(c)底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態であるリップ溝形鋼接合構造(以下、単に「接合構造」と称することがある)について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0023】
第一実施形態の接合構造は、長軸方向に延びる溝15を挟んだ一対のリップ片11、それぞれのリップ片11と垂直な一対の側面部12、及び、それぞれの側面部12と垂直でリップ片11と対向する背面部13を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の側面部12の内表面17間の距離(形鋼内幅)がNで溝15の幅がWであるリップ溝形鋼10と、リップ溝形鋼10の内側で、平坦面20をリップ片11の内表面に当接させる座体21を備える第一接合部材1と、リップ片11の外表面に当接させる当接部41、及び、リップ溝形鋼10の接合対象物を支持させる対象物支持部42を備える第二接合部材40とを具備し、第一接合部材1及び第二接合部材40が雌ネジ部35とボルト50によって締結されることにより、座体21と当接部41との間にリップ片11が挟持されている。ここで、座体21は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形Xの隣り合わない一対の第一角部A1及び隣り合わない他の一対の第二角部A2の内、一対の第一角部A1において対向する二点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の第二角部A2の頂点を結んだ第二対角線Dの長さがNより長い形状を呈する係止部を備えている。そして、第一実施形態の接合構造では、座体21の一対の第二角部A2が、リップ溝形鋼10の一対の側面部12の内表面17(形鋼内側面17)に、それぞれ当接している。
【0024】
より詳細に説明すると、第二接合部材40は二つの面部からなる断面L字形であり、一方の面部がリップ溝形鋼10のリップ片11の外表面に当接させる当接部41であり、他方の面部がリップ溝形鋼10の接合対象物を支持させる対象物支持部42である。当接部41及び対象物支持部42には、それぞれ孔部46,47が貫通して穿設されている。
【0025】
第一接合部材1は、図1,2に示すように、座体21と雌ネジ部35とからなる。ここで、第一実施形態の座体21は、その全体が係止部を構成している例である。座体21は、平板部30と、平板部30の一対の辺から同一方向に延設された一対の曲折片31を有し、断面コ字形を呈している。また、平板部30において、曲折片31が突出している側とは反対側の面が平坦面20であり、この平坦面20をリップ溝形鋼10のリップ片11の内表面に当接させる。
【0026】
雌ネジ部35は、座体21に一体化されている。具体的には、座体21は、平板部30の中心に貫通して穿設された孔部34を備えており、孔部34と同心に平板部30に溶接されたナットによって雌ネジ部35が構成されている。ここで、本実施形態の雌ネジ部35が本発明の「雌ネジ」に相当し、これに螺合させるボルト50が本発明の「雄ネジ」に相当する。
【0027】
なお、雌ネジ部35は、平板部30において平坦面20とは反対側の面に形成されており、曲折片31の高さは雌ネジ部35の高さより大きく設定されている。これにより、雌ネジ部35にボルト50を螺合させた状態の第一接合部材1を、一対の曲折片31によって作業台上や地面に接地させた場合、その姿勢が安定して作業性が良い。
【0028】
上記構成の第一接合部材1の座体21は、その外形が、以下の2つの関係式1,2を共に満たす仮想長方形Xを元にして決定される。ここで、Lは仮想長方形Xの長辺の長さであり、Sは仮想長方形Xの短辺の長さである。
関係式1:(N2−W2)1/2<L<N
関係式2:(N2−L2)1/2<S<W
【0029】
これらの関係式1,2について、以下説明する。座体において、切り欠かれていない第二角部A2を形鋼内側面17に当接させることから、長辺の長さLはN未満である。一方、座体は溝15を介してリップ溝形鋼10に挿入されるため、短辺の長さSはW未満でなければならない。そのため長辺の長さLは、図3に示すように、距離がWの二本の平行な直線と、これらの直線間の中央線上に中心が位置する直径Nの円との交点P1及びP2間の距離より大である必要がある。第二対角線の長さをNより大にするためである。ここで、P1とP2との距離は、(N2−W2)1/2である(三平方の定理)。以上より、関係式1が導出される。
【0030】
関係式1を満たすLとして、図4(a)〜(c)にそれぞれ示す長さを例示することができる。それぞれの場合について、短辺の長さSは、距離がLの二本の平行な直線と、これらの直線間の中央線上に中心が位置する直径Nの円との交点P3及びP4間の距離より大である必要がある。第二対角線の長さをNより大にするためである。従って、Lが定まれば、P3とP4との距離は(N2−L2)1/2として定まる。以上より、関係式2が導出される。
【0031】
このように、座体の外形の元となる仮想長方形Xのサイズは、所定の許容範囲を有するため、座体のサイズの自由度が高い。次に、仮想長方形Xを元にした座体の外形の決定について説明する。図5(a)に示すように、関係式1を満たす長さLの長辺と、関係式2を満たす長さSの短辺を有する仮想長方形Xについて、長辺方向をリップ溝形鋼10の長軸方向に一致させた状態から、雌雄ネジによる締結に伴って回転する際に、先に形鋼内側面17に近付く一対の角部を第一角部A1とし、他の一対の角部を第二角部A2とする。この仮想長方形Xの対角線をDとする。なお、図5(a)は、座体及びその元となる仮想長方形Xをリップ溝形鋼10のリップ片11側から見た場合であって、座体が右ネジによって回転させられる場合を図示している。これは、座体の外形及びその回転を説明する他の図でも同様である。
【0032】
一対の第一角部A1は、図5(b)に示すように、仮想長方形Xと中心点を同一とする直径Nの円と、仮想長方形Xとの交点より内側で切り欠く。これにより、切り欠かれた一対の第一角部A1において、対向する頂点を結んだ二本の第一対角線D1,D2の長さは、それぞれNより短くなる。ここで、二本の第一対角線D1,D2の長さは同一であっても、相違していても良い。なお、第一角部A1の一方の切り欠き上の任意の点と、これに対向する他方の第一角部A1の切り欠き上の点とを結ぶ第一対角線は無数存在するが、何れもその長さはNより短い。
【0033】
このようにして外形が決定された座体21aは、図5(c)に示すように、長辺方向をリップ溝形鋼10の長軸方向に一致させた状態で、溝15を介してリップ溝形鋼10内に挿入する。その際、第二接合部材40の当接部41の孔部46にボルト50を挿通し、その軸部を座体21aと一体化された雌ネジ部35に螺合させておくことができる。そして、ボルト50を締結方向に回転させると、これに伴って、座体21aは矢印方向に回転する。
【0034】
一対の第一角部A1間の二本の第一対角線D1,D2の長さは、何れも形鋼内幅Nより短いため、図5(d)に示すように、第一角部A1は形鋼内側面17に当接しない。更に座体21aを回転させると、一対の第二角部A2間の第二対角線の長さは、仮想長方形Xの対角線Dに等しく形鋼内幅Nより長いため、図6(a)に示すように、第二角部A2が形鋼内側面17に当接し、座体21aのこれ以上の回転が規制される。座体21aには雌ネジ部35が一体化されているため、雌ネジ部35の回転も規制される。従って、この状態でボルト50を雌ネジ部35に対して螺進させることにより、第一接合部材1と第二接合部材40とを強固に締結することができる。その結果、リップ溝形鋼10のリップ片11が、第一接合部材1の座体21aと第二接合部材40の当接部41との間に挟持された状態で、第二接合部材40がリップ溝形鋼10に留め付けられる。このとき、座体21aは、一対の曲折片31が突出している側とは反対側の平坦面20でリップ片11の内表面に当接しているため、座体21aとリップ片11とが当接する面積が大きく、当接部41との間でリップ片11を挟持する連結状態が安定する。
【0035】
上記と同様に、座体21aよりLが長い座体21bが一対の第二角部A2で形鋼内側面17に当接し係止された様子を図6(b)に、座体21aよりLが短い座体21cが一対の第二角部A2で形鋼内側面17に当接し係止された様子を図6(c)に示す。このように、本実施形態では、第二対角線上に位置する一対の第二角部A2で、座体を形鋼内側面17に当接させる構成であるため、座体のサイズの自由度が高い。なお、図6(a)の座体21aにおけるLは図4(a)の長辺Lと同一長さであり、図6(b)の座体におけるLは図4(b)の長辺Lと同一長さであり、図6(c)の座体におけるLは図4(c)の長辺Lと同一長さの場合を例示している。
【0036】
一対の第一角部A1が切り欠かれた外形の座体21は、図2(d)に示した展開図のように、平板を、平板部30における一対の第一角部A1の切り欠き線33を延長した線に沿って切断し、その後に曲折片31を折り曲げ成形することにより、簡易に製造することができる。
【0037】
上記のように、第一接合部材1を介してリップ溝形鋼10に留め付けられた第二接合部材40において、対象物支持部42に他の部材(接合対象物)を支持させれば、他の部材をリップ溝形鋼10に接合することができる。例えば、接合対象物を別のリップ溝形鋼10とし、第二接合部材40の対象物支持部42と他の第一接合部材1の座体21との間で、別のリップ溝形鋼10のリップ片11を挟持するように連結することにより、リップ溝形鋼10同士を接合することができる。また、本実施形態の接合構造により縦横に接合されて壁下地を構成するリップ溝形鋼10に、更に第一接合部材1を介して連結された第二接合部材40に、棚板、配電盤などを収容するボックス、照明器具を吊り下げる吊りボルトを支持させることにより、これらの接合対象物(棚板、ボックス、吊りボルト)をリップ溝形鋼10に接合することができる。
【0038】
次に、第二実施形態の接合構造について、図7乃至図9を用いて説明する。第一実施形態の接合構造との相違は、第一接合部材1における座体の形状である。第二実施形態における座体22aは、側面部12とリップ片11との間に内表面の曲率半径がRのアール部14を備えるリップ溝形鋼10を使用するリップ溝形鋼接合構造に、好適な例である。以下では、第一実施形態の接合構造と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
座体22aは、係止部25と、係止部25から平坦面20に至る逃がし部26とを備えている。すなわち、座体はRより大きい厚さを有し、厚さ方向において平坦面20側が逃がし部26に、残部が係止部25になっている(図7(b)参照)。係止部25では、図7(c)に横断面図を示すように、任意の横断面の外形が、仮想長方形Xの一対の第一角部A1が、対向する頂点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるように切り欠かれた形状(第一角部切欠形状)で、且つ、一対の第二角部A2を結んだ第二対角線の長さ(仮想長方形の対角線の長さD)がNより長い形状となっている。
【0040】
逃がし部26は、第一角部A1については、係止部25と同様に、任意の横断面の外形において、対向する頂点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるように切り欠かれた形状(第一角部切欠形状)となっている。一方、第二角部A2については、図7(a)に平面図(平坦面20側から見た図)を示すように、平坦面20に仮想長方形Xを設定した場合の一対の第二角部A2のそれぞれが、その頂点A2’を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部28を備えている。
【0041】
かかる構成により、図7(e)に示すように、リップ溝形鋼10の内側に位置させた座体22aを、平坦面20がリップ片11の内表面に当接した状態で回転させた際、逃がし部26の第二角部A2は、第二角切欠部28が形成されていることにより、リップ溝形鋼10のアール部14と干渉しない。一方、係止部25の第二角部A2は形鋼内側面17に当接し、座体22aのこれ以上の回転が規制される。これにより、座体22aの平坦面20がリップ片11の内表面にぴったりと当接した状態で、第一接合部材1と第二接合部材40とを強固に締結することができる。なお、座体22aには、タップを用いたネジ切りにより雌ネジ部35bが形成されている。
【0042】
なお、図7では、係止部25の第二角部A2が、その頂点A2’を中心とする半径がRより大の球状に切り欠かれて、第二角切欠部28が形成されている場合を図示により例示した。第二角切欠部は、第二角部A2が頂点A2’を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠きより大きく切り欠かれたものであれば、切り欠き面が球面状のものに限定されない。例えば、図8に示すように、切り欠き面が平面状の第二角切欠部28bを備える座体22bとすることができる。
【0043】
また上記では、厚板状の座体22a,22bを例示したが、図9に示すように、平板部30及び曲折片31を備える断面コ字形の座体22cとすることもできる。この座体22cは、図9(b)に展開図を示すように、平板を、平板部30において一対の第二角部A2に相当する部分と、曲折片31となる部分とに跨るように、円形の刃物を用いて円弧状に打ち抜くことにより第二角切欠部28cを形成し、その後に曲折片31を折り曲げ形成することにより、簡易に製造することができる。すなわち、曲折片31において、平板部30に近い側は、第二角切欠部28cが形成されていることによりリップ溝形鋼10のアール部14との干渉が回避される逃がし部26であり、曲折片31において第二角切欠部28cのない自由端側は、形鋼内側面17と当接する係止部25である。なお、断面コ字形の座体22cにおいて、係止部25の横断面の外形は、図9(c)に示すように、曲折片31の外側の輪郭線に合わせた仮想長方形Xを元に決定される。この仮想長方形Xは、逃がし部26において平坦面20に設定される仮想長方形Xと同一寸法である。
【0044】
次に、上記の接合構造を用いた架台60について、図10,11を用いて説明する。架台60における第一接合部材1は、第一実施形態の接合構造で説明した第一接合部材であっても、第二実施形態の接合構造で説明した第一接合部材であっても良い。
【0045】
架台60は、第一接合部材1及び第二接合部材40によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼10からなるフレーム部61と、上端側で、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10と第一接合部材1及び第二接合部材40によって接合された、フレーム部61と交差する方向に延びるリップ溝形鋼10からなる脚部62と、一端側が、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10に、フレーム部61における脚部62との接合位置より離れた位置で第一接合部材1を介して連結され、他端側が、脚部62を構成するリップ溝形鋼10の下端側に第一接合部材1を介して連結された、長尺の第二接合部材40からなるアーム部63と、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10に第一接合部材1を介して連結された第二接合部材40からなり、架台60に載置する接合対象物70を支持する載置部64とを具備している。
【0046】
上記構成では、脚部62とフレーム部61とのなす角度、及び、脚部62の下端側をフレーム部61と接合するアーム部63の傾斜角度を、第一接合部材1及び第二接合部材40の接合角度によって容易に変化させることができる。これにより、脚部62が立脚する接地面に対するフレーム部61の角度を、容易に変化させることができる。
【0047】
また、図11(b)に示すように、載置部64を構成する第二接合部材40は、締結させる第一接合部材1を介して、リップ溝形鋼10の溝に沿ってスライドさせることができる。従って、第二接合部材40の対象物支持部42に支持させる接合対象物70(架台60に載置する対象物)が、フレーム部61に支持される位置を、容易に微調整することができる。
【0048】
なお、架台60に載置する接合対象物70は特に限定されないが、支持される位置を微調整できることが強く要請されるソーラーパネルや、支持される角度の調整が要請される看板や商品展示用ボードなどは、特に好適である。
【0049】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記では、第一接合部材1が雌ネジ部35を備える場合を例示したが、これに限定されず、図12に示すように、雄ネジ部36を備える第一接合部材とすることができる。雄ネジ部は座体に溶接することもできるが、この第一接合部材では、座体23の孔部34にボルトの軸部(雄ネジ部36)を挿通し、その状態をスナップリング55で保持させることにより、極めて簡易に雄ネジ部36を座体23に一体化させている。また、座体23の平板部30の一対の辺から同一方向に一対の曲折片31が延設されているが、座体23の外形の元になる仮想長方形Xの短辺の長さSを、上記の関係式2を満たす範囲で、ボルト頭部37の外径より僅かに大きい長さとしている。これにより、ボルト頭部37の回転は一対の曲折片31によって規制され、ボルトが座体23に対して回り止めされるため、雄ネジ部36とナット(図示しない)との螺合により、第一接合部材と第二接合部材40とをしっかり締結することができる。なお、図12(b)では、雄ネジ部36の図示を省略している。
【0051】
なお、座体は金属製とし、メッキ処理や防錆処理などの表面処理を施すことができる。また、リップ溝形鋼のサイズ、接合対象部材の種類や用途等に基づき要請される強度に応じて、樹脂材料で座体を形成することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 第一接合部材
10 リップ溝形鋼
11 リップ片
12 側面部
13 背面部
14 アール部
15 溝
21,21a,21b,21c,22a,22b,22c,23 座体
25 係止部
26 逃がし部
28,28b,28c 第二角切欠部
40 第二接合部材
41 当接部
42 対象物支持部
60 架台
61 フレーム部
62 脚部
63 アーム部
64 載置部
70 接合対象物
N 形鋼内幅(一対の側面部の内表面間の距離)
W 溝の幅
X 仮想長方形
A1 第一角部
A2 第二角部
A2’ 第二角部の頂点
D1,D2 第一対角線
D 第二対角線(仮想長方形の対角線)
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合するための接合構造、及び、該接合構造を用いた架台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リップ溝形鋼(「リップ付き溝形鋼」と称されることもある)は、断面コ字形の開端を内側に屈曲させた断面形状を有する形鋼である。従来、壁や屋根の下地材等とするために、リップ溝形鋼同士を縦横に組み付ける場合、或いは、リップ溝形鋼に他の部材を支持させる場合、リップ溝形鋼の側面または背面に孔をあけて、別のリップ溝形鋼または他の部材と連結するためのL字形やT字形の連結具の一面とボルト及びナットで締結し、連結具の他の面を介して別のリップ溝形鋼または他の部材と接合するのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、このような接合構造の場合、リップ溝形鋼に多くの孔を穿設する必要があり、手間や時間を要するものであった。また、いったん穿設された孔の位置は変更できないため、接合位置の微調整ができないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易で、且つ、接合位置の微調整が可能な接合構造、及び、該接合構造を用いた架台の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるリップ溝形鋼接合構造は、
「長軸方向に延びる溝を挟んだ一対のリップ片、それぞれの前記リップ片と垂直な一対の側面部、及び、それぞれの前記側面部と垂直で前記リップ片と対向する背面部を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の前記側面部の内表面間の距離がNで前記溝の幅がWであるリップ溝形鋼と、
該リップ溝形鋼の内側で平坦面を前記リップ片の内表面に当接させる座体を備える第一接合部材と、
前記リップ片の外表面に当接させる当接部、及び、前記リップ溝形鋼の接合対象物を支持させる対象物支持部を備える第二接合部材とを具備し、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結されることにより、前記座体と前記当接部との間に前記リップ片が挟持されており、
前記座体は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形の隣り合わない一対の第一角部及び隣り合わない他の一対の第二角部の内、一対の前記第一角部において、対向する二点を結んだ第一対角線の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の前記第二角部の頂点を結んだ第二対角線の長さがNより長い形状を呈する係止部を備えており、
一対の前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している」ものである。
【0006】
「前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結される」態様としては、第一接合部材において座体と一体的に雌ネジ部を設け、第二接合部材の当接部に設けた孔に通したボルトと螺合させる形態、第一接合部材において座体と一体的にボルト軸部を設け、これを第二接合部材に設けた孔に通した上でナットと螺合させる形態、及び、第一接合部材において座体に設けた孔及び第二接合部材において当接部に設けた孔に通したボルトを、ナットと螺合させる形態を挙げることができる。
【0007】
「第二接合部材」としては、L字形、T字形、コ字形など、当接部と対象物支持部とが異なる面で構成される形態の他、同一面をなす平板の一部が当接部を構成し、他の部分が対象物支持部を構成する形態等、種々の形態を採用可能である。
【0008】
上記構成では、座体の外形の元となる仮想長方形の短辺の長さが、リップ溝形鋼の溝幅Wより短いため、座体の長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態で、リップ溝形鋼の溝を介して座体をリップ溝形鋼の内側に挿入することができる。仮に、座体をリップ溝形鋼の内側に位置させるために、リップ溝形鋼の長軸方向の端部(小口)から座体を挿入しなければならないとすると、第一接合部材及び第二接合部材の複数組を一つのリップ溝形鋼に取り付ける場合、その作業手順を非常に厳密に行うことが必要となる。なぜなら、一つのリップ溝形鋼に第一接合部材を介して既に連結された第二接合部材と第二接合部材との間には、後から座体をリップ溝形鋼の内側に位置させることができないからである。これに対し、上記構成の本発明では、座体を溝側からリップ溝形鋼に挿入できるため、リップ溝形鋼に他の部材を接合する作業手順の自由度が高く、接合される部材を後から追加することも容易である。
【0009】
そして、長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態で、リップ溝形鋼の内側に挿入された座体は、第一接合部材と第二接合部材とを締結する雄ネジ及び雌ネジ(以下、「雌雄ネジ」と総称することがある)により、回転させられる。その際、切り欠かれた一対の第一角部における第一対角線の長さは、何れもリップ溝形鋼の一対の側面部の内表面間の距離N(以下、「形鋼内幅N」と称することがある)より短いため、リップ溝形鋼の側面部の内表面(以下、「形鋼内側面」と称することがある)に、第一角部は当接しない。一方、第二角部の頂点を結んだ第二対角線は形鋼内幅Nより長いため、第二角部が形鋼内側面に当接し座体を係止させる。従って、第二角部は、雌雄ネジによって第一接合部材と第二接合部材とを締結する際の、座体の“回り止め”として作用する。これにより、座体と第二接合部材とを、雌雄ネジによって強固に締結することができる。
【0010】
なお、一対の第一角部における「対向する二点を結んだ第一対角線」とは、一対の第一角部の一方の切り欠き上のある点と、その点と仮想長方形の中心点とを通る直線が他方の第一角部の切り欠きと交わる点とを結ぶ直線を指している。
【0011】
また、長辺方向をリップ溝形鋼の長軸方向に一致させた状態の座体が、雌雄ネジによる締結に伴って回転する際に、先に形鋼内側面に近付く角部を第一角部とすれば、先に形鋼内側面に近付く角部が第二角部である場合に比べて、座体においてリップ片と当接する面積が大きくなるため、好適である。
【0012】
本発明では、第一接合部材及び第二接合部材を、リップ溝形鋼の溝を介して締結する構成であるため、従来とは異なり、両者の締結のために、リップ溝形鋼の側面部や背面部にボルトを通す孔を穿設する必要がない。これにより、第一接合部材及び第二接合部材を介して、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易である。また、第一接合部材及び第二接合部材は、リップ溝形鋼の溝に沿ってスライドさせてから締結することができる。これにより、第一接合部材及び第二接合部材を介して、リップ溝形鋼に接合される部材の接合位置を、容易に微調整することができる。
【0013】
ここで、本発明の上記構成とは異なり、座体の長辺の長さを形鋼内幅Nと一致させることにより、長辺の両端点によって座体を回り止めさせる構成も想到し得る。しかしながら、その場合は、座体の長辺の長さを形鋼内幅Nに正確に一致させる必要があるため、座体を精密に加工することが必要となる。また、リップ溝形鋼には、サイズの異なる多くの種類が存在するところ、その種類ごとに“専用”の座体を多種類製造しなくてはならないという問題が生じる。これに対し、本発明では、座体の対角線(第二対角線)上にある一対の第二角部で回り止めさせる構成であるため、リップ溝形鋼のサイズに合わせて精密に座体を加工する必要がないという利点がある。また、同一サイズの座体を、ある程度の範囲内であれば異なるサイズのリップ溝形鋼に対して使用できる。すなわち、本発明では、座体に許容されるサイズの範囲が広いという利点を有する。
【0014】
加えて、座体の対角線上にある一対の第二角部で回り止めさせる構成であることから、長辺の両端点で回り止めさせる場合と比べて、長辺が短い小サイズの座体であっても、形鋼内側面に当接させ係止させることができる。このことからも、座体に許容されるサイズの範囲が広いと言うことができる。
【0015】
本発明にかかるリップ溝形鋼接合構造は、上記構成に加え、
「前記リップ溝形鋼は、前記側面部と前記リップ片との間に内表面の曲率半径がRのアール部を備え、
前記座体は、前記係止部と、前記係止部から前記平坦面に至る逃がし部とを備え、
該逃がし部は、横断面の外形が前記第一角部切欠形状を呈する一方で、前記平坦面に前記仮想長方形を設定した場合の一対の前記第二角部のそれぞれが、その頂点を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部を備え、
前記係止部における前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している」ものとすることができる。
【0016】
通常のリップ溝形鋼は金属板を折り曲げ成形したものであり、側面部とリップ片との間に、湾曲したアール部が存在する(側面部と背面部との間にも、同様にアール部が存在するのが通常である)。本構成では、座体が係止部と逃がし部とを備えており、リップ片の内表面と当接する平坦面側が逃がし部となっている。そして、リップ溝形鋼のアール部の内表面の曲率半径をRとしたとき、逃がし部は、平坦面における第二角部が、その頂点を中心とする半径Rの球状の切り欠きより大きく切り欠かれた第二角切欠部を備えている。かかる構成により、平坦面をリップ片の内表面に当接させた状態で座体を回転させたとき、座体がアール部と干渉することが回避され、係止部の第二角部が形鋼内側面に当接する。従って、座体がリップ片の内表面に対して浮き上がった状態となることなく、リップ片の内表面に座体がぴったりと当接した状態で、第一接合部材と第二接合部材とを強固に接合することができる。
【0017】
次に、本発明にかかる架台は、
「上記に記載のリップ溝形鋼接合構造を備える架台であって、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼からなるフレーム部と、
該フレーム部を構成するリップ溝形鋼と、前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって接合された、前記フレーム部と交差する方向に延びるリップ溝形鋼からなる脚部と、
一端側が、前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に、前記フレーム部における前記脚部との接合位置より離れた位置で連結され、他端側が、前記脚部を構成するリップ溝形鋼に、前記脚部における前記フレーム部との接合位置より離れた位置で連結された、長尺のアーム部と、
前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に前記第一接合部材を介して連結された前記第二接合部材からなり、架台に載置する接合対象物を支持する載置部とを具備する」ものである。
【0018】
上述のように、本発明のリップ溝形鋼接合構造では、リップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易であるため、架台に載置する接合対象物を、第一接合部材及び第二接合部材を介して、フレーム部のリップ溝形鋼に容易に支持させることができる。また、上述のように、本発明のリップ溝形鋼接合構造では、リップ溝形鋼に接合される部材の接合位置を、微調整することが容易であるため、架台に載置する接合対象物がフレーム部に支持される位置を、容易に微調整することができる。
【0019】
また、脚部の上端側をフレーム部と接合するための、第一接合部材と第二接合部材との接合角度、及び、脚部の下端側とフレーム部とを接合するアーム部の角度により、脚部が立脚する接地面に対するフレーム部の角度を容易に変化させることができる。これにより、架台に載置する接合対象物の種類及び用途、架台の設置場所などの範囲が、極めて広いという利点を有する。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の効果として、リップ溝形鋼同士またはリップ溝形鋼に他の部材を接合する作業が容易で、且つ、接合位置の微調整が可能なリップ溝形鋼接合構造、及び、該リップ溝形鋼接合構造を用いた架台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造の分解斜視図である。
【図2】第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の(a)斜視図、(b)平面図、(c)底面図、及び、(d)展開図である。
【図3】仮想長方形の長辺の長さLの説明図である。
【図4】仮想長方形の短辺の長さSの説明図である。
【図5】仮想長方形を元にした、第一実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の座体の外形決定の説明図である。
【図6】長辺の長さLの異なる座体について、形鋼内側面に当接する状態の説明図である。
【図7】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の(a)平面図、(b)正面図、(c)Y−Y線断面図、(d)斜視図、及び、(e)平坦面をリップ溝形鋼の内表面に当接させ係止部の第二角部を形鋼内側面に当接させた状態の断面図である。
【図8】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の他の例の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)斜視図である。
【図9】第二実施形態のリップ溝形鋼接合構造に使用される第一接合部材の更に他の例の(a)斜視図、(b)展開図、及び、(c)係止部の横断面の外形決定の説明図である。
【図10】架台の側面図である。
【図11】(a)図10におけるZ範囲の拡大図、及び、(b)図10の架台における載置部近傍の平面図である。
【図12】他の形態の第一接合部材の(a)斜視図、(b)平面図、及び、(c)底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第一実施形態であるリップ溝形鋼接合構造(以下、単に「接合構造」と称することがある)について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0023】
第一実施形態の接合構造は、長軸方向に延びる溝15を挟んだ一対のリップ片11、それぞれのリップ片11と垂直な一対の側面部12、及び、それぞれの側面部12と垂直でリップ片11と対向する背面部13を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の側面部12の内表面17間の距離(形鋼内幅)がNで溝15の幅がWであるリップ溝形鋼10と、リップ溝形鋼10の内側で、平坦面20をリップ片11の内表面に当接させる座体21を備える第一接合部材1と、リップ片11の外表面に当接させる当接部41、及び、リップ溝形鋼10の接合対象物を支持させる対象物支持部42を備える第二接合部材40とを具備し、第一接合部材1及び第二接合部材40が雌ネジ部35とボルト50によって締結されることにより、座体21と当接部41との間にリップ片11が挟持されている。ここで、座体21は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形Xの隣り合わない一対の第一角部A1及び隣り合わない他の一対の第二角部A2の内、一対の第一角部A1において対向する二点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の第二角部A2の頂点を結んだ第二対角線Dの長さがNより長い形状を呈する係止部を備えている。そして、第一実施形態の接合構造では、座体21の一対の第二角部A2が、リップ溝形鋼10の一対の側面部12の内表面17(形鋼内側面17)に、それぞれ当接している。
【0024】
より詳細に説明すると、第二接合部材40は二つの面部からなる断面L字形であり、一方の面部がリップ溝形鋼10のリップ片11の外表面に当接させる当接部41であり、他方の面部がリップ溝形鋼10の接合対象物を支持させる対象物支持部42である。当接部41及び対象物支持部42には、それぞれ孔部46,47が貫通して穿設されている。
【0025】
第一接合部材1は、図1,2に示すように、座体21と雌ネジ部35とからなる。ここで、第一実施形態の座体21は、その全体が係止部を構成している例である。座体21は、平板部30と、平板部30の一対の辺から同一方向に延設された一対の曲折片31を有し、断面コ字形を呈している。また、平板部30において、曲折片31が突出している側とは反対側の面が平坦面20であり、この平坦面20をリップ溝形鋼10のリップ片11の内表面に当接させる。
【0026】
雌ネジ部35は、座体21に一体化されている。具体的には、座体21は、平板部30の中心に貫通して穿設された孔部34を備えており、孔部34と同心に平板部30に溶接されたナットによって雌ネジ部35が構成されている。ここで、本実施形態の雌ネジ部35が本発明の「雌ネジ」に相当し、これに螺合させるボルト50が本発明の「雄ネジ」に相当する。
【0027】
なお、雌ネジ部35は、平板部30において平坦面20とは反対側の面に形成されており、曲折片31の高さは雌ネジ部35の高さより大きく設定されている。これにより、雌ネジ部35にボルト50を螺合させた状態の第一接合部材1を、一対の曲折片31によって作業台上や地面に接地させた場合、その姿勢が安定して作業性が良い。
【0028】
上記構成の第一接合部材1の座体21は、その外形が、以下の2つの関係式1,2を共に満たす仮想長方形Xを元にして決定される。ここで、Lは仮想長方形Xの長辺の長さであり、Sは仮想長方形Xの短辺の長さである。
関係式1:(N2−W2)1/2<L<N
関係式2:(N2−L2)1/2<S<W
【0029】
これらの関係式1,2について、以下説明する。座体において、切り欠かれていない第二角部A2を形鋼内側面17に当接させることから、長辺の長さLはN未満である。一方、座体は溝15を介してリップ溝形鋼10に挿入されるため、短辺の長さSはW未満でなければならない。そのため長辺の長さLは、図3に示すように、距離がWの二本の平行な直線と、これらの直線間の中央線上に中心が位置する直径Nの円との交点P1及びP2間の距離より大である必要がある。第二対角線の長さをNより大にするためである。ここで、P1とP2との距離は、(N2−W2)1/2である(三平方の定理)。以上より、関係式1が導出される。
【0030】
関係式1を満たすLとして、図4(a)〜(c)にそれぞれ示す長さを例示することができる。それぞれの場合について、短辺の長さSは、距離がLの二本の平行な直線と、これらの直線間の中央線上に中心が位置する直径Nの円との交点P3及びP4間の距離より大である必要がある。第二対角線の長さをNより大にするためである。従って、Lが定まれば、P3とP4との距離は(N2−L2)1/2として定まる。以上より、関係式2が導出される。
【0031】
このように、座体の外形の元となる仮想長方形Xのサイズは、所定の許容範囲を有するため、座体のサイズの自由度が高い。次に、仮想長方形Xを元にした座体の外形の決定について説明する。図5(a)に示すように、関係式1を満たす長さLの長辺と、関係式2を満たす長さSの短辺を有する仮想長方形Xについて、長辺方向をリップ溝形鋼10の長軸方向に一致させた状態から、雌雄ネジによる締結に伴って回転する際に、先に形鋼内側面17に近付く一対の角部を第一角部A1とし、他の一対の角部を第二角部A2とする。この仮想長方形Xの対角線をDとする。なお、図5(a)は、座体及びその元となる仮想長方形Xをリップ溝形鋼10のリップ片11側から見た場合であって、座体が右ネジによって回転させられる場合を図示している。これは、座体の外形及びその回転を説明する他の図でも同様である。
【0032】
一対の第一角部A1は、図5(b)に示すように、仮想長方形Xと中心点を同一とする直径Nの円と、仮想長方形Xとの交点より内側で切り欠く。これにより、切り欠かれた一対の第一角部A1において、対向する頂点を結んだ二本の第一対角線D1,D2の長さは、それぞれNより短くなる。ここで、二本の第一対角線D1,D2の長さは同一であっても、相違していても良い。なお、第一角部A1の一方の切り欠き上の任意の点と、これに対向する他方の第一角部A1の切り欠き上の点とを結ぶ第一対角線は無数存在するが、何れもその長さはNより短い。
【0033】
このようにして外形が決定された座体21aは、図5(c)に示すように、長辺方向をリップ溝形鋼10の長軸方向に一致させた状態で、溝15を介してリップ溝形鋼10内に挿入する。その際、第二接合部材40の当接部41の孔部46にボルト50を挿通し、その軸部を座体21aと一体化された雌ネジ部35に螺合させておくことができる。そして、ボルト50を締結方向に回転させると、これに伴って、座体21aは矢印方向に回転する。
【0034】
一対の第一角部A1間の二本の第一対角線D1,D2の長さは、何れも形鋼内幅Nより短いため、図5(d)に示すように、第一角部A1は形鋼内側面17に当接しない。更に座体21aを回転させると、一対の第二角部A2間の第二対角線の長さは、仮想長方形Xの対角線Dに等しく形鋼内幅Nより長いため、図6(a)に示すように、第二角部A2が形鋼内側面17に当接し、座体21aのこれ以上の回転が規制される。座体21aには雌ネジ部35が一体化されているため、雌ネジ部35の回転も規制される。従って、この状態でボルト50を雌ネジ部35に対して螺進させることにより、第一接合部材1と第二接合部材40とを強固に締結することができる。その結果、リップ溝形鋼10のリップ片11が、第一接合部材1の座体21aと第二接合部材40の当接部41との間に挟持された状態で、第二接合部材40がリップ溝形鋼10に留め付けられる。このとき、座体21aは、一対の曲折片31が突出している側とは反対側の平坦面20でリップ片11の内表面に当接しているため、座体21aとリップ片11とが当接する面積が大きく、当接部41との間でリップ片11を挟持する連結状態が安定する。
【0035】
上記と同様に、座体21aよりLが長い座体21bが一対の第二角部A2で形鋼内側面17に当接し係止された様子を図6(b)に、座体21aよりLが短い座体21cが一対の第二角部A2で形鋼内側面17に当接し係止された様子を図6(c)に示す。このように、本実施形態では、第二対角線上に位置する一対の第二角部A2で、座体を形鋼内側面17に当接させる構成であるため、座体のサイズの自由度が高い。なお、図6(a)の座体21aにおけるLは図4(a)の長辺Lと同一長さであり、図6(b)の座体におけるLは図4(b)の長辺Lと同一長さであり、図6(c)の座体におけるLは図4(c)の長辺Lと同一長さの場合を例示している。
【0036】
一対の第一角部A1が切り欠かれた外形の座体21は、図2(d)に示した展開図のように、平板を、平板部30における一対の第一角部A1の切り欠き線33を延長した線に沿って切断し、その後に曲折片31を折り曲げ成形することにより、簡易に製造することができる。
【0037】
上記のように、第一接合部材1を介してリップ溝形鋼10に留め付けられた第二接合部材40において、対象物支持部42に他の部材(接合対象物)を支持させれば、他の部材をリップ溝形鋼10に接合することができる。例えば、接合対象物を別のリップ溝形鋼10とし、第二接合部材40の対象物支持部42と他の第一接合部材1の座体21との間で、別のリップ溝形鋼10のリップ片11を挟持するように連結することにより、リップ溝形鋼10同士を接合することができる。また、本実施形態の接合構造により縦横に接合されて壁下地を構成するリップ溝形鋼10に、更に第一接合部材1を介して連結された第二接合部材40に、棚板、配電盤などを収容するボックス、照明器具を吊り下げる吊りボルトを支持させることにより、これらの接合対象物(棚板、ボックス、吊りボルト)をリップ溝形鋼10に接合することができる。
【0038】
次に、第二実施形態の接合構造について、図7乃至図9を用いて説明する。第一実施形態の接合構造との相違は、第一接合部材1における座体の形状である。第二実施形態における座体22aは、側面部12とリップ片11との間に内表面の曲率半径がRのアール部14を備えるリップ溝形鋼10を使用するリップ溝形鋼接合構造に、好適な例である。以下では、第一実施形態の接合構造と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
座体22aは、係止部25と、係止部25から平坦面20に至る逃がし部26とを備えている。すなわち、座体はRより大きい厚さを有し、厚さ方向において平坦面20側が逃がし部26に、残部が係止部25になっている(図7(b)参照)。係止部25では、図7(c)に横断面図を示すように、任意の横断面の外形が、仮想長方形Xの一対の第一角部A1が、対向する頂点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるように切り欠かれた形状(第一角部切欠形状)で、且つ、一対の第二角部A2を結んだ第二対角線の長さ(仮想長方形の対角線の長さD)がNより長い形状となっている。
【0040】
逃がし部26は、第一角部A1については、係止部25と同様に、任意の横断面の外形において、対向する頂点を結んだ第一対角線D1,D2の長さがNより短くなるように切り欠かれた形状(第一角部切欠形状)となっている。一方、第二角部A2については、図7(a)に平面図(平坦面20側から見た図)を示すように、平坦面20に仮想長方形Xを設定した場合の一対の第二角部A2のそれぞれが、その頂点A2’を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部28を備えている。
【0041】
かかる構成により、図7(e)に示すように、リップ溝形鋼10の内側に位置させた座体22aを、平坦面20がリップ片11の内表面に当接した状態で回転させた際、逃がし部26の第二角部A2は、第二角切欠部28が形成されていることにより、リップ溝形鋼10のアール部14と干渉しない。一方、係止部25の第二角部A2は形鋼内側面17に当接し、座体22aのこれ以上の回転が規制される。これにより、座体22aの平坦面20がリップ片11の内表面にぴったりと当接した状態で、第一接合部材1と第二接合部材40とを強固に締結することができる。なお、座体22aには、タップを用いたネジ切りにより雌ネジ部35bが形成されている。
【0042】
なお、図7では、係止部25の第二角部A2が、その頂点A2’を中心とする半径がRより大の球状に切り欠かれて、第二角切欠部28が形成されている場合を図示により例示した。第二角切欠部は、第二角部A2が頂点A2’を中心とする半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠きより大きく切り欠かれたものであれば、切り欠き面が球面状のものに限定されない。例えば、図8に示すように、切り欠き面が平面状の第二角切欠部28bを備える座体22bとすることができる。
【0043】
また上記では、厚板状の座体22a,22bを例示したが、図9に示すように、平板部30及び曲折片31を備える断面コ字形の座体22cとすることもできる。この座体22cは、図9(b)に展開図を示すように、平板を、平板部30において一対の第二角部A2に相当する部分と、曲折片31となる部分とに跨るように、円形の刃物を用いて円弧状に打ち抜くことにより第二角切欠部28cを形成し、その後に曲折片31を折り曲げ形成することにより、簡易に製造することができる。すなわち、曲折片31において、平板部30に近い側は、第二角切欠部28cが形成されていることによりリップ溝形鋼10のアール部14との干渉が回避される逃がし部26であり、曲折片31において第二角切欠部28cのない自由端側は、形鋼内側面17と当接する係止部25である。なお、断面コ字形の座体22cにおいて、係止部25の横断面の外形は、図9(c)に示すように、曲折片31の外側の輪郭線に合わせた仮想長方形Xを元に決定される。この仮想長方形Xは、逃がし部26において平坦面20に設定される仮想長方形Xと同一寸法である。
【0044】
次に、上記の接合構造を用いた架台60について、図10,11を用いて説明する。架台60における第一接合部材1は、第一実施形態の接合構造で説明した第一接合部材であっても、第二実施形態の接合構造で説明した第一接合部材であっても良い。
【0045】
架台60は、第一接合部材1及び第二接合部材40によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼10からなるフレーム部61と、上端側で、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10と第一接合部材1及び第二接合部材40によって接合された、フレーム部61と交差する方向に延びるリップ溝形鋼10からなる脚部62と、一端側が、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10に、フレーム部61における脚部62との接合位置より離れた位置で第一接合部材1を介して連結され、他端側が、脚部62を構成するリップ溝形鋼10の下端側に第一接合部材1を介して連結された、長尺の第二接合部材40からなるアーム部63と、フレーム部61を構成するリップ溝形鋼10に第一接合部材1を介して連結された第二接合部材40からなり、架台60に載置する接合対象物70を支持する載置部64とを具備している。
【0046】
上記構成では、脚部62とフレーム部61とのなす角度、及び、脚部62の下端側をフレーム部61と接合するアーム部63の傾斜角度を、第一接合部材1及び第二接合部材40の接合角度によって容易に変化させることができる。これにより、脚部62が立脚する接地面に対するフレーム部61の角度を、容易に変化させることができる。
【0047】
また、図11(b)に示すように、載置部64を構成する第二接合部材40は、締結させる第一接合部材1を介して、リップ溝形鋼10の溝に沿ってスライドさせることができる。従って、第二接合部材40の対象物支持部42に支持させる接合対象物70(架台60に載置する対象物)が、フレーム部61に支持される位置を、容易に微調整することができる。
【0048】
なお、架台60に載置する接合対象物70は特に限定されないが、支持される位置を微調整できることが強く要請されるソーラーパネルや、支持される角度の調整が要請される看板や商品展示用ボードなどは、特に好適である。
【0049】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0050】
例えば、上記では、第一接合部材1が雌ネジ部35を備える場合を例示したが、これに限定されず、図12に示すように、雄ネジ部36を備える第一接合部材とすることができる。雄ネジ部は座体に溶接することもできるが、この第一接合部材では、座体23の孔部34にボルトの軸部(雄ネジ部36)を挿通し、その状態をスナップリング55で保持させることにより、極めて簡易に雄ネジ部36を座体23に一体化させている。また、座体23の平板部30の一対の辺から同一方向に一対の曲折片31が延設されているが、座体23の外形の元になる仮想長方形Xの短辺の長さSを、上記の関係式2を満たす範囲で、ボルト頭部37の外径より僅かに大きい長さとしている。これにより、ボルト頭部37の回転は一対の曲折片31によって規制され、ボルトが座体23に対して回り止めされるため、雄ネジ部36とナット(図示しない)との螺合により、第一接合部材と第二接合部材40とをしっかり締結することができる。なお、図12(b)では、雄ネジ部36の図示を省略している。
【0051】
なお、座体は金属製とし、メッキ処理や防錆処理などの表面処理を施すことができる。また、リップ溝形鋼のサイズ、接合対象部材の種類や用途等に基づき要請される強度に応じて、樹脂材料で座体を形成することもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 第一接合部材
10 リップ溝形鋼
11 リップ片
12 側面部
13 背面部
14 アール部
15 溝
21,21a,21b,21c,22a,22b,22c,23 座体
25 係止部
26 逃がし部
28,28b,28c 第二角切欠部
40 第二接合部材
41 当接部
42 対象物支持部
60 架台
61 フレーム部
62 脚部
63 アーム部
64 載置部
70 接合対象物
N 形鋼内幅(一対の側面部の内表面間の距離)
W 溝の幅
X 仮想長方形
A1 第一角部
A2 第二角部
A2’ 第二角部の頂点
D1,D2 第一対角線
D 第二対角線(仮想長方形の対角線)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向に延びる溝を挟んだ一対のリップ片、それぞれの前記リップ片と垂直な一対の側面部、及び、それぞれの前記側面部と垂直で前記リップ片と対向する背面部を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の前記側面部の内表面間の距離がNで前記溝の幅がWであるリップ溝形鋼と、
該リップ溝形鋼の内側で平坦面を前記リップ片の内表面に当接させる座体を備える第一接合部材と、
前記リップ片の外表面に当接させる当接部、及び、前記リップ溝形鋼の接合対象物を支持させる対象物支持部を備える第二接合部材とを具備し、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結されることにより、前記座体と前記当接部との間に前記リップ片が挟持されており、
前記座体は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形の隣り合わない一対の第一角部及び隣り合わない他の一対の第二角部の内、一対の前記第一角部において、対向する二点を結んだ第一対角線の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の前記第二角部の頂点を結んだ第二対角線の長さがNより長い形状を呈する係止部を備えており、
一対の前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している
ことを特徴とするリップ溝形鋼接合構造。
【請求項2】
前記リップ溝形鋼は、前記側面部と前記リップ片との間に内表面の曲率半径がRのアール部を備え、
前記座体は、前記係止部と、前記係止部から前記平坦面に至る逃がし部とを備え、
該逃がし部は、横断面の外形が前記第一角部切欠形状を呈する一方で、前記平坦面に前記仮想長方形を設定した場合の一対の前記第二角部の頂点それぞれから、半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部を備え、
前記係止部における前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している
ことを特徴とする請求項1に記載のリップ溝形鋼接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリップ溝形鋼接合構造を備える架台であって、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼からなるフレーム部と、
該フレーム部を構成するリップ溝形鋼と、前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって接合された、前記フレーム部と交差する方向に延びるリップ溝形鋼からなる脚部と、
一端側が、前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に、前記フレーム部における前記脚部との接合位置より離れた位置で連結され、他端側が、前記脚部を構成するリップ溝形鋼に、前記脚部における前記フレーム部との接合位置より離れた位置で連結された、長尺のアーム部と、
前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に前記第一接合部材を介して連結された前記第二接合部材からなり、架台に載置する接合対象物を支持する載置部と
を具備することを特徴とする架台。
【請求項1】
長軸方向に延びる溝を挟んだ一対のリップ片、それぞれの前記リップ片と垂直な一対の側面部、及び、それぞれの前記側面部と垂直で前記リップ片と対向する背面部を備えることにより、コ字形の開端が内側に屈曲した断面形状を呈し、一対の前記側面部の内表面間の距離がNで前記溝の幅がWであるリップ溝形鋼と、
該リップ溝形鋼の内側で平坦面を前記リップ片の内表面に当接させる座体を備える第一接合部材と、
前記リップ片の外表面に当接させる当接部、及び、前記リップ溝形鋼の接合対象物を支持させる対象物支持部を備える第二接合部材とを具備し、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材が雄ネジ及び雌ネジによって締結されることにより、前記座体と前記当接部との間に前記リップ片が挟持されており、
前記座体は、横断面の外形が、短辺の長さがWより短い仮想長方形の隣り合わない一対の第一角部及び隣り合わない他の一対の第二角部の内、一対の前記第一角部において、対向する二点を結んだ第一対角線の長さがNより短くなるよう切り欠かれた第一角部切欠形状を呈すると共に、一対の前記第二角部の頂点を結んだ第二対角線の長さがNより長い形状を呈する係止部を備えており、
一対の前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している
ことを特徴とするリップ溝形鋼接合構造。
【請求項2】
前記リップ溝形鋼は、前記側面部と前記リップ片との間に内表面の曲率半径がRのアール部を備え、
前記座体は、前記係止部と、前記係止部から前記平坦面に至る逃がし部とを備え、
該逃がし部は、横断面の外形が前記第一角部切欠形状を呈する一方で、前記平坦面に前記仮想長方形を設定した場合の一対の前記第二角部の頂点それぞれから、半径Rの球状に切り欠かれた仮想切り欠き以上の大きさに切り欠かれた第二角切欠部を備え、
前記係止部における前記第二角部が、前記リップ溝形鋼の一対の前記側面部の内表面にそれぞれ当接している
ことを特徴とする請求項1に記載のリップ溝形鋼接合構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリップ溝形鋼接合構造を備える架台であって、
前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって縦横に接合された複数のリップ溝形鋼からなるフレーム部と、
該フレーム部を構成するリップ溝形鋼と、前記第一接合部材及び前記第二接合部材によって接合された、前記フレーム部と交差する方向に延びるリップ溝形鋼からなる脚部と、
一端側が、前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に、前記フレーム部における前記脚部との接合位置より離れた位置で連結され、他端側が、前記脚部を構成するリップ溝形鋼に、前記脚部における前記フレーム部との接合位置より離れた位置で連結された、長尺のアーム部と、
前記フレーム部を構成するリップ溝形鋼に前記第一接合部材を介して連結された前記第二接合部材からなり、架台に載置する接合対象物を支持する載置部と
を具備することを特徴とする架台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−113350(P2013−113350A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258723(P2011−258723)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(311014130)眞和興業株式会社 (1)
【出願人】(311009594)株式会社T.M.D (1)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(311014130)眞和興業株式会社 (1)
【出願人】(311009594)株式会社T.M.D (1)
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