説明

リニアイメージセンサ及びその駆動方式

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、リニアイメージセンサ及びその駆動方式に関し、特に電子シャッター機構を備えたものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年のシリコンLSI技術の進歩にともない、半導体基板上に1次元アレイ状に配設した多数の光検出器と、該光検出器の内部の信号電荷を転送する電荷結合素子(Charge Coupled Device : CCD)とを組み合わせてなるリニアイメージセンサが実用化されている。ここで上記光検出器には、PN接合を利用したフォトダイオードやショットキーバリアダイオードなどが用いられており、上記リニアイメージセンサは、その検出波長の違いによって、可視イメージセンサ,赤外線イメージセンサなどと呼ばれており、その中には光検出器での信号電荷の飽和を防ぐために開発された、電子シャッター機構を有するものもある。
【0003】図15はこのような電子シャッター機構を備えた従来の赤外線リニアイメージセンサを説明するための図であり、図15(a) は該センサを構成する素子のレイアウトの概略を示す平面図である。
【0004】図において、200は赤外線リニアイメージセンサで、P型シリコン基板9上に1次元アレイ状に配列された赤外線検出器(以下光検出器とも言う。)1と、上記赤外線検出器1の両側にその配列方向と平行に配置されたCCD12及びオーバフロードレイン13とを有している。また上記個々の赤外線検知器1とCCD12との間には上記赤外線検出器1からCCD12への電荷転送を制御するためのトランスファーゲート(TG)4が、上記個々の赤外線検知器1とオーバフロードレイン13との間には赤外線検出器1からオーバフロードレイン13への電荷転送を制御するためのシャッターゲート(SG)15が配設されている。そしてこれらのトランスファーゲート4及びシャッターゲート15を構成するトランジスタのゲートは制御クロックを与えるための入力端子It ,Is に接続されている。
【0005】ここで上記CCD12は上記赤外線検出器1で発生した信号電荷を上記検知器1の配列方向に転送する電荷転送回路を構成しており、この回路の出力側には出力アンプ8が接続されている。また上記オーバフロードレイン13は外部から正電位にバイアスされていて、上記検知器1で発生した信号電荷がここに掃き出されるようになっている。
【0006】次に上記リニアイメージセンサ200の断面構造を説明する。図15(b) は図15(a) のXVb−XVb線断面図であり、図中、10は上記赤外線検出器1を構成する PtSi/Siショットキーバリアダイオードで、上記P型シリコン基板9上に選択的に形成された白金シリサイド層1aと、該層1aと接触してショットキ接合を形成するP型シリコン領域9aとからなっており、また上記P型シリコン領域9aの周囲には、該領域9a周縁部での上記光検出器1からのリーク電流が抑制されるよう、N型不純物領域からなるガードリング11が形成されている。またこのガードリング11及び上記白金シリサイド層1aは上記赤外線検出器1の電荷蓄積領域となっている。
【0007】上記赤外線検出器1のP型シリコン領域9aの両側には、それぞれCCDチャネルを構成するN型不純物領域12d及び上記オーバフロードレイン13であるN型不純物拡散領域が上記P型シリコン領域9aから所定間隔離して形成されている。またこのN型不純物領域12d上にはゲート絶縁膜10aを介してポリシリコンからなるCCD転送ゲート12aが形成されており、これはCCD12に転送クロックを与える入力端子Ic に接続されている。
【0008】また上記ガードリング11とCCDチャネル12dとの間、及びガードリング11とオーバフロードレインであるN型不純物領域13との間には、それぞれ所定濃度のP型不純物領域4b及び15bが形成され、その上には上記ゲート絶縁膜10aを介してポリシリコンからなるゲート電極4a,15aが形成されており、これにより上記トランスファーゲート4及びシャッターゲート15としてのトランジスタが構成されている。これらのトランジスタは、上記N型不純物領域4b及び15bの濃度の変化により、その特性,ここではオン状態でのポテンシャルレベルやオフ状態のポテンシャルレベルが変化するため、その濃度はこれらのポテンシャルレベルが両ゲートのトランジスタで一致するよう設定されている。
【0009】次に従来の赤外線リニアイメージセンサの動作について説明する。図16はこのイメージセンサの電荷読出サイクル(Xr)におけるトランスファーゲートとシャッターゲートの動作を、また図17は電荷読出動作中における図15のXVb−XVb線に沿ったポテンシャル分布の変化を示しており、これらの図を用いて電荷読出動作について説明する。
【0010】まず、トランスファーゲート4の駆動クロックCLt が立ち上がると(t=Ta0)、このゲートが開き、つまり図17(f) に示すように該ゲート4のポテンシャルレベルがオフレベルEtoffからオンレベルEton に低下し、それまでに光検出器10内で蓄積された信号電荷Cs2がN型不純物領域4bを通ってCCDチャネル12d内に転送される。その後上記駆動クロックCLt が立ち下がると(t=Ta1)、図17(a) に示すようにゲート4のポテンシャルレベルはもとのレベルEtoffに戻り、上記ゲート4は閉じる。この時赤外線検出器1のポテンシャルレベルEidは上記トランスファーゲート4のオンレベルEton (エネルギーレベルψt )にリセットされることとなる。
【0011】すなわち、上記トランスファーゲート4を開けると、フローティング状態であった白金シリサイド層1aがこれよりポテンシャルレベルの低いCCDチャネル12dとつながることとなり、これにより信号電荷Cs2が該白金シリサイド層1aから該ゲート4を介してCCDチャネル12dへ向かって移動し、その後上記ゲート4を閉じると、上記白金シリサイド層1aは上記CCDチャネル12dと切り離され、もとのフローティング状態となり、この移動した電荷分だけ上記白金シリサイド層1aが充電されることとなり、またこの際の電荷の移動は赤外線検出器1のポテンシャルレベルが上記トランスファーゲート4の低下したポテンシャルレベルEton と一致するまで行われるからである。
【0012】一方赤外線検出器1では、シャッターゲート5が開くまでの期間(Ta1<t<Ta2)は、図17(b) に示すように赤外線の入射量に応じて信号電荷Cs1が蓄積される。そしてシャッターゲート5の駆動クロックCLs が立ち上がると(t=Ta2)、このゲート5が開き、つまり図17(c) に示すように該ゲート5のポテンシャルレベルがオフレベルEsoffからオンレベルEson に低下し、それまでに光検出器10内で蓄積された信号電荷Cs1がN型不純物領域15bを通ってオーバフロードレインのN型不純物領域13内に掃き出される。その後上記駆動クロックCLs が立ち下がると(t=Ta3)、ゲート5 のポテンシャルレベルはもとのレベルEsoffに戻り、上記ゲート5は閉じる(図17(d) )。この時赤外線検出器1のポテンシャルレベルEidは上記トランスファーゲート4の開閉動作の場合と同様、上記シャッターゲート5のオンレベルEson (エネルギーレベルψs)にリセットされることとなる。このリセットレベルψs は上記リセットレベルψt と一致している。
【0013】その後赤外線検出器1では、トランスファーゲート4が開くまでの期間(Ta3<t<Ta4),つまりシャッター時間(Xs)の間は、図17(e) に示すように赤外線の入射量に応じて信号電荷Cs2が蓄積され、さらにこの間(Xs)に蓄積された電荷Cs2は、トランスファーゲート4の駆動クロックCLt のパルス期間(Ta4≦t<Ta5)内にCCDチャネル12へ転送される(図1717(f) )。その後は順次電荷読出サイクル(Xr )にて、図17(a) 〜(f) により説明したように光検出器1からCCD12への電荷読出を行う。
【0014】この電荷読出サイクル(Xr )の期間中、上記CCD12は、光検出器1からの信号電荷Cs の転送動作を行っており、以下その電荷転送動作を図18〜図20を用いて説明する。
【0015】図18は図15のリニアイメージセンサのCCD転送ゲートの構造及び該転送ゲートとその駆動クロックとの接続関係を示しており、また図19は上記図1616のトランスファーゲート4及びシャッターゲート5の駆動クロックCLt 及びCLs の波形に加えて、CCD12の3相駆動クロックφ1 〜φ3 の波形を示す図、図20はCCD12内で、ある光検出器からの信号電荷がその隣の光検出器に対応する位置まで運ばれる様子を示す図である。
【0016】図18に示すようにCCD12は、3相駆動CCDで、つまり1つの光検出器1に対応して3つの転送ゲート12a〜12cを有するもので、ここでは転送ゲート12aの位置にトランスファーゲート4が配置されており、光検出器1の信号電荷をCCDチャネル12dの転送ゲート12a直下部分に流し込むようになっている。また各光検出器1とオーバーフロードレイン13との間にはシャッターゲート15が配置されている。
【0017】上記転送ゲート12aの直下の領域のみにポテンシャル井戸が形成されている期間(Ta0≦t<Ta1)と同期して、上記トランスファーゲート入力It に駆動クロックCLt のパルスを印加すると、図17(a) で説明したように、各光検出器1に対応する第1転送ゲート12aのポテンシャル井戸内に信号電荷A〜Cが読み出される(図20参照)。そして上記駆動クロックCLt の立ち下がり(t=Ta1)と同時に電荷転送動作が開始される。
【0018】すなわち上記CCD駆動信号φ1 〜φ3 は、それぞれ位相が120度づつ異なっているため、図20に示すように第1転送期間(Ta1≦t<t1 )では、第1及び第2転送ゲート12a,12bの下にポテンシャル井戸ができ、次の第2転送期間(t1 ≦t<t2 )では、第2転送ゲート12bの直下のみに、またさらに次の第3転送期間(t2 ≦t<t3 )には第2及び第3転送ゲート12b,12cの下にポテンシャル井戸ができ、このようにしてさらに第4及び第5転送期間(t3 ≦t<t4 ),(t4 ≦t<t5 )が経過すると、信号電荷A〜Dは光検出器1つ分だけ転送されることとなる。そしてCCD12はこのような転送動作を、トランスファーゲート4の駆動クロックCLt の次の立ち上がりまで繰り返して転送動作を終える。
【0019】ところがこのような電子シャッター機構を有するリニアイメージセンサ200では、トランスファーゲート4の開閉動作の際にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψt と、シャッターゲート15の開閉の際にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψs とが少しでも異なると、正確な赤外線量を検知することができないという問題点がある。つまり上記電荷読み取り時の検出器リセットレベルψt はトランスファーゲートトランジスタの特性によって決まり、また電荷掃き出し時の検出器リセットレベルψs はシャッターゲートトランジスタの特性によって決まるため、ウェハプロセス上のばらつきによって両方のトランジスタ特性がわずかでも異なると、CCD12への電荷転送の場合とオーバーフロードレイン13への電荷掃き出しの場合とで、光検出器1のリセットレベルに差が生じ、信号電荷の読み残しや余分な読み出しが生じるという問題点があった。
【0020】以下この問題点を図21及び図22を用いて詳しく説明する。図21(a) 〜(f) 及び図22(a) 〜(f) はそれぞれ図17(a) 〜(f) に対応するタイミングのポテンシャル分布を示しており、図21に示すように、電荷掃き出し時にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψs が電荷転送時にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψt より低い場合、図21(c) に示すようにシャッターゲート5が動作すると蓄積電荷Cs1の他に電荷C0 が余分に掃き出されてしまい、その後トランスファーゲート4が動作して電荷の読出を行う際、図21(f) に示すようにトランスファーゲート4の導通時のレベルEton とシャッターゲート5の導通時のレベルEson との差,つまりエネルギー差(ψt −ψs )以下の小さい蓄積レベルの信号電荷Cs3は読み出すことができないという問題点があった。
【0021】また逆に図22に示すように電荷掃き出し時にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψs が電荷転送時にリセットされる赤外線検出器1のポテンシャルレベルψt より高い場合、図22(c) に示すようにシャッターゲート5が動作すると、蓄積電荷Cs1の一部Cs5しか掃き出されず、電荷Cs4が残ってしまい、その後トランスファーゲート4が動作して電荷の読出を行う際には、トランスファーゲート4の導通時のレベルEton とシャッターゲート5の導通時のレベルEson との差、つまりエネルギー差(ψt −ψs )分の電荷Cs4を信号電荷Cs2の他に余分に読み出してしまい、信号のコントラストが低下するという問題点があった。
【0022】そこで本件発明者はこのような問題点を解決した、改良型のリニアイメージセンサをすでに開発しており、以下このリニアイメージセンサについて説明する。
【0023】図23は改良型のリニアイメージセンサを説明するための図であり、図23(a) は該センサを構成する素子のレイアウトの概略を示す平面図、図23(b) は図23(a) のXXIII b−XXIII b線断面図である。図において、300はこの改良型のリニアイメージセンサで、このセンサ300では、オーバフロードレイン3及びCCD12を共に光検出器1列の片側に配置し、しかもオーバフロードレイン3と光検出器1との間にCCD12が位置するようにしている。またこのためシャッターゲート5はCCD12とオーバフロードレイン3との間に配設し、光検出器1からオーバフロードレイン3への電荷の掃き出しをCCD12を介して行うようにしている。なお、5bは上記CCD12の転送チャネル12bとオーバフロードレイン3のN型不純物領域との間に形成されたP型不純物領域、5aは該領域上にゲート絶縁膜10aを介して形成されたポリシリコンゲートで、これらは上記シャッターゲートトランジスタを構成している。その他の構成は図15に示すリニアイメージセンサと同一である。
【0024】次に動作について図24ないし図26を用いて説明する。図24は上記リニアイメージセンサ300のCCD転送ゲートの構造及び該転送ゲートとその駆動クロックとの接続関係を、また図25はこのリニアイメージセンサの電荷読出動作中における図23(a) のXXIII b−XXIII b線に沿ったポテンシャル分布の変化を示しており、また図26はこのリニアイメージセンサの各ゲートに印加する信号の波形図であり、これらの図を用いて電荷読出動作について説明する。
【0025】まず、トランスファーゲート4の駆動クロックCLt が立ち上がると(t=Ta0)、このゲート4が開き、つまり該ゲート4のポテンシャルレベルがオフレベルEtoffからオンレベルEton に低下し、それまでに光検出器1内で蓄積された信号電荷Cs がN型不純物領域4bを通ってCCDチャネル12d内に転送される(図25(f) )。その後上記駆動クロックCLt が立ち下がると(t=Ta1)、ゲート4のポテンシャルレベルはもとのレベルEtoffに戻り、上記ゲート4は閉じる。この時赤外線検出器1のポテンシャルレベルEidは図15R>5のセンサ200の場合と同様の理由で上記トランスファーゲート4のオンレベルEton (エネルギーレベルψt)にリセットされることとなる。
【0026】これと同時に、CCD12では電荷転送動作が開始され、その後転送期間(Xt )が経過するまでの期間(Ta1<t<Tb2)中、図25(a) に示すように赤外線検出器1では電荷の蓄積が、またCCD12では電荷転送動作が行われる。その後さらに赤外線検出器1ではシャッターゲート5が開くまでの期間(Tb2≦t<Tb3)は、図25(b) に示すように赤外線の入射量に応じて信号電荷Ce が蓄積される。そしてシャッターゲート5の駆動クロックCLs 及びトランスファーゲート4の駆動クロックCLt が立ち上がると(t=Tb3)、この両ゲート5,4が開き、つまり図25(c) に示すように該ゲート5,4のポテンシャルレベルがそれぞれオフレベルEsoff,EtoffからオンレベルEson ,Eton に低下し、それまでに光検出器1内で蓄積された信号電荷Ce がCCD12のチャネル12bを通ってオーバフロードレインのN型不純物領域3内に掃き出される。
【0027】その後上記両駆動クロックCLs ,CLt が立ち下がると(t=Tb4)、両ゲート5,4のポテンシャルレベルはもとのレベルStoff,Etoffに戻り、上記両ゲート5,4は閉じる(図25(d) )。この時赤外線検出器1のポテンシャルレベルEidはシャッターゲート5のオンレベルEson とは関係なく、上記トランスファーゲート4の開閉動作の場合と同様、上記トランスファーゲート4のオンレベルEton (ψt )にリセットされることとなり、電荷読出時と電荷掃出時とで赤外線検出器1のポテンシャルレベルが変動することはない。
【0028】その後赤外線検出器1では、トランスファーゲート4が開くまで,つまりシャッター時間(Xs )が経過するまでの期間(Tb4<t<Tb5)は、図25(e) に示すように赤外線の入射量に応じて信号電荷Cs が蓄積され、さらにこの間に蓄積された電荷Cs は、トランスファーゲート4の駆動クロックCLt のパルス期間(Tb5≦t<Tb6)内にCCDチャネル12へ転送される(図25(f) )。その後上記駆動クロックCLt が立ち下がると(t=Tb6)、CCD12では電荷転送を開始する(図25(g) )。そして順次電荷読出サイクル(Xr )にて図25(a) 〜(g) により説明したように光検出器1からCCD12への電荷読出を行う。
【0029】ここで以上の動作を行うためには素子各部のポテンシャルレベルが、トランスファーゲート(Eton)、CCDチャネル(Ecc)、シャッターゲート(Eson )、オーバーフロードレイン(Eod)の順に深くなっていくように設定する必要があるが、素子各部のP型およびN型不純物領域の不純物濃度を制御するなどの方法によって容易に実現できる。
【0030】なお、上記改良型のリニアイメージセンサのように光検出器の信号電荷をCCDを介してオーバフロードレイン等に引き抜くという考え方は、特開昭62−200761号公報や特開昭60−120555号公報に開示されており、例えば特開昭62−200761号公報には固体撮像素子において、一次元アレイ状の光検出器の片側に電荷転送部を、さらに光検出器からみて電荷転送部の向こう側にオーバフロードレインを配置し、光検出器の信号電荷を電荷転送部を介してオーバフロードレインに掃き出すようにしたものが、また特開昭60−120555号公報には固体撮像装置において、一次元アレイ状の光検出器の両側にCCDレジスタを、さらに該両レジスタの外側にそれぞれダミーシフトレジスタを配置し、光検出器の残留電荷をCCDシフトレジスタを介してダミーシフトレジスタに引き抜くようにしたものが示されている。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】上記説明した改良型のリニアイメージセンサでは、赤外線検出器1に蓄積された信号電荷Ce を、CCD12を通してオーバフロードレイン3に掃き出すようにしているため、CCD転送中に電荷掃き出し動作を行おうとすると、転送中の信号電荷と掃き出された電荷とが混ざり合う場合があり、CCD12の転送動作中はシャッターゲート5を導通させることができず、このためCCD転送期間と電荷掃き出し期間とを別々の時間帯に設定しているが、この場合シャッター時間(Xs)が電荷読出サイクル(Xr)における電荷転送期間(Xt)経過後の短い時間に制限されてしまい、特に赤外線の入射量が少ない場合には、十分な信号電荷の蓄積に支障をきたすという問題点があった。
【0032】この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、電荷読み出し時と電荷掃き出し時とで検出器のリセットレベルがシフトすることなく、完全な電子シャッター動作を行うことができ、しかもシャッター時間を電荷読出サイクル中の任意の時間に設定することができ、赤外線の入射量が少ない場合であっても十分な信号電荷の蓄積を行うことができるリニアイメージセンサ及びその駆動方式を得ることを目的とする。
【0033】
【課題を解決するための手段】この発明に係るリニアイメージセンサは、一次元アレイ配列の光検出器列とオーバフロードレインとの間に配置された電荷転送部を、上記光検出器1つに対して4つ以上の転送ゲートを有し、個々の光検出器からの信号電荷を上記光検出器配列方向へ転送する電荷結合素子と、上記各々の光検出器とこれに対応する4つ以上の転送ゲートのうちの特定の1つとの間に設けられ、光検出器から電荷結合素子への電荷転送を制御するトランスファーゲートと、上記特定の転送ゲートと電荷排出部との間に設けられ、電荷転送部から電荷排出部への電荷転送を制御するシャッターゲートとから構成し、上記4つ以上の転送ゲートを4相以上の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うようにしたものである。
【0034】この発明は上記リニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを5相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたものである。
【0035】この発明は上記リニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して4つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを4相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたものである。
【0036】この発明は上記リニアイメージセンサにおいて、上記各光検出器に対応する複数の転送ゲートを、該転送ゲート数以上の相数の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うようにしたものである。
【0037】この発明に係るリニアイメージセンサの駆動方式は、リニアイメージセンサの電荷転送回路として、一次元アレイ配列の光検出器の1つに対して4つ以上の転送ゲートを有する電荷結合素子を用い、上記4つ以上の転送ゲートに4相以上の駆動クロックを印加して光検出器からの信号電荷の転送動作を行うとともに、上記個々の光検出器とこれに対応する4つ以上の転送ゲートの特定の1つとの間に挿入されたトランスファーゲート、及び該特定の転送ゲートと電荷排出回路との間に挿入されたシャッターゲートを、それぞれ上記特定の転送ゲート両側の転送ゲートがオフしているタイミングで導通するようにし、これにより個々の光検出器からの信号電荷を電荷転送回路により転送すると同時に、該信号電荷を上記電荷転送回路を介して外部に排出するようにしたものである。
【0038】
【作用】この発明においては、一次元アレイ配列の光検出器列とオーバフロードレインとの間に配置された電荷転送部の電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して4つ以上の転送ゲートを有する構成とし、4相以上の駆動クロックを対応する転送ゲートに印加するようにしたから、電荷転送動作中に最低限隣接する3つの転送ゲートがすべて閉じた状態が発生することとなり、このため転送中の信号電荷と掃き出された電荷とが混ざり合うことなく、この真ん中の転送ゲートを通して光検出器から電荷排出部への電荷の掃き出しを行うことができる。つまり、電荷転送部での信号電荷の転送動作中に信号電荷の掃き出しを行うことができ、これによりシャッターゲートを開けるタイミングを電荷読出サイクル中の任意の時間に設定することができる。
【0039】またこの発明においては、さらに上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを5相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたので、信号電荷の転送動作における蓄積電荷の掃き出しに5つの転送ゲートのうち隣接する3つの転送ゲートを用いても、残りの2つを転送動作に用いることができ、光検出器からの信号電荷を転送ゲート2つ分によるポテンシャル井戸内に受け入れて、転送ゲート2つ分のポテンシャル井戸に対応した量の電荷を転送することができる。
【0040】この発明においては、上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して4つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを4相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたので、5相駆動の場合に比べて、転送ゲート及び駆動クロックを1つづつ少なくすることができ、CCD部分の構成の簡略化を図ることができる。
【0041】
【実施例】以下、この発明の実施例を図について説明する。図1はこの発明の一実施例による赤外線リニアイメージセンサの構成を示す平面図であり、従来の改良型リニアイメージセンサの説明に用いた図24に対応している。図において、2は第1〜第5の5相のクロック信号φ1 〜φ5 により駆動されるCCDで、1つの光検出器1に対して5つの第1〜第5転送ゲート2a〜2eを有しており、該各転送ゲートには対応するクロック信号が印加されるようになっている。そしてその他の構成は図2424に示した従来のリニアイメージセンサ300と同一であり、例えば上記トランスファーゲート4は第1転送ゲート2aと光検出器1との間に、またシャッターゲート5は第1転送ゲート2aとオーバフロードレイン3との間に配設されている。なお2fは上記CCD2のN型チャネル領域である。
【0042】次に図2〜図5を用いて動作について説明する。図2は電荷読出の際上記リニアイメージセンサの各ゲートに印加されるクロック信号を、また図3は電荷読出動作中の図1のIII −III 線断面に沿ったポテンシャル分布の変化を示しており、さらに図4は信号電荷がCCD中を転送される様子を、図5は電荷転送中に信号電荷が掃き出されるタイミングを示している。
【0043】まずCCD2の通常の電荷転送動作について説明する。上記CCD2の第1及び第2転送ゲート2a,2bの下側にのみポテンシャル井戸が形成されている期間中(Ta0≦t<Ta1)に、トランスファーゲート制御クロックCLt が立ち上がり(t=Ta0)、図3(f) のようにトランスファーゲート4が開くと、赤外線検出器1内に蓄積された信号電荷Cs が上記ポテンシャル井戸内に流れ込み、その後上記制御クロックCLt が立ち下がると(t=Ta1)、図3(g) のようにトランスファーゲート4が閉じ、その後図4に示すようにこの信号電荷Cs の転送が開始される。なお、図4では各光検出器1からそれぞれに対応する第1及び第2転送ゲート2a,2bのポテンシャル井戸に転送された電荷をA〜Dで示している。
【0044】以下この転送動作を、上記CCD駆動クロックが5相である、つまり各クロックφ1 〜φ5 の位相が順次72°(2π/5)づつ遅らせてあるため、信号電荷を1つの光検出器1から次の光検出器1に対応する位置まで転送するための期間を第1〜第10の転送期間に分けて説明する。
【0045】まず、第1転送期間(Ta1≦t<t1 )には、上記第1及び第2転送ゲート2a,2bの下側に形成されていたポテンシャル井戸が第3転送ゲート2cの下側に広がり、その次の第2転送期間(t1 ≦t<t2 )には第1転送ゲート2aの下側のポテンシャル井戸が消失するため、赤外線検出器1からCCD2に転送された信号電荷A〜Dは、上記両転送期間中に転送ゲート1つ分移動することとなる。
【0046】さらに続く第3転送期間(t2 ≦t<t3 )及び第4転送期間(t3 ≦t<t4 )でも上記と同様にして信号電荷A〜Dがまた転送ゲート1つ分移動し、その後このような信号電荷の移動が第5及び第6転送期間、第7及び第8転送期間、さらに第9及び第10転送期間にそれぞれ転送ゲート1つ分づづ行われ、これによって信号電荷A〜Dが光検出器1一つ分の距離転送されることとなる。
【0047】上記CCD2はこのような転送動作を繰り返すことにより、信号電荷を順次出力アンプ8を介して外部に出力する。
【0048】次に、このような電荷転送動作中にシャッター動作,つまり赤外線検出器1から信号電荷を掃き出す動作について図3及び図5を用いて説明する。図3(a) 〜(g) はそれぞれシャッター動作が行われる転送期間(tn0≦t≦tn7)において、図1のIII −III 線に沿ったポテンシャル分布を示しており、特に図3(a) は第1転送ゲート2aにポテンシャル井戸が形成されている期間(tn0<t<tn1)を、また図3(b) はシャッター動作が行われる第4転送期間の1つ前の第3転送期間(tn3≦t<Tc2)を示している。ここで第4転送期間(Tc2≦t<Tc3)は、通常の電荷転送動作中には第1転送ゲート2aとその両側の第5,第2転送ゲート2e,2bの下側にはポテンシャル井戸が形成されない期間である。
【0049】上記電荷転送中にシャッター動作を行う転送サイクルでは、上記第4転送期間に第1転送ゲート2aの駆動クロックφ1 及びトランスファーゲート制御クロックCLtを、シャッターゲート制御クロックCLs とともに立ち上げ(t=Tc2)、これにより図3(c) に示すようにトランスファーゲート4及びシャッターゲート5のポテンシャルレベルをそれぞれEton ,Eson まで下げる同時に、第1転送ゲート2aのポテンシャルレベルを転送井戸の形成時のレベルEccまでさげる。これにより赤外線検出器1内に蓄積されていた信号電荷Ceが図5に示すように第1転送ゲート2aの下側のポテンシャル井戸を通過してオーバフロードレイン3に掃き出される。
【0050】そして上記制御クロックCLt およびCLs が立ち下がると(図3(d) )、赤外線検出器1,CCD2およびオーバフロードレイン3が分離され、その後は赤外線検出器1では信号電荷の蓄積が行われ、またCCD2では信号電荷が順次第1転送ゲート2aを通過して転送されることとなる。図3(e) はこのような動作中のある時間(t=t7 )におけるポテンシャル分布を示している。
【0051】そしてトランスファーゲート4の制御クロックCLt が立ち上がると(t=Ta4)、図3(f) のようにトランスファーゲート4が開き、赤外線検出器1内に蓄積された信号電荷Cs が上記第1及び第2転送ゲート2a,2bのポテンシャル井戸内に流れ込み、その後上記制御クロックCLt が立ち下がると(t=Ta5)、図3(g) のようにトランスファーゲート4が閉じ、以後CCD2では上述したようにこの信号電荷Cs の転送が開始される。
【0052】このように本実施例では、一次元アレイ配列の光検出器1列とオーバフロードレイン3との間に配置された電荷転送部のCCD2を、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲート2a〜2eを有する構成とし、5相の駆動クロックφ1 〜φ5 を対応する転送ゲートに印加するようにしたので、電荷転送動作中に隣接する3つの転送ゲートがすべて閉じた状態が発生することとなり、このためこの真ん中の第1転送ゲート2aを通して光検出器1からオーバフロードレイン3への電荷の掃き出しを、この電荷とCCD2の転送電荷とが混ざり合うことなく行うことができる。つまり、電荷転送部での信号電荷の転送動作中に信号電荷の掃き出しを行うことができ、これによりシャッターゲートを開けるタイミングを電荷読出サイクル中の任意の時間に設定することができる。
【0053】また上記電荷結合素子2を、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲート2a〜2eを有し、これらの転送ゲートを5相の駆動クロックφ1 〜φ5 により制御して電荷転送を行う構成としたので、信号電荷の転送動作において転送ゲート1つ分の余裕ができることとなり、つまりこれを転送動作に用いることができることとなり、光検出器からの信号電荷を転送ゲート2つ分によるポテンシャル井戸内に受け入れることができ、転送電荷の量を2倍にすることができる。
【0054】さらに信号電荷読み出し時と電荷掃き出し時との検出器リセットレベルの変動を防止することができる。つまり電荷蓄積時には、赤外線検出器1のポテンシャルレベルEidはトランスファーゲート4のポテンシャルレベルEton にリセットされ、また電荷掃き出し時にはトランスファーゲート4およびシャッターゲート5に正電圧が印加され、図3(c) のようにトランスファーゲート4及びシャッターゲート5のポテンシャルレベルがともにレベルEton ,Eson まで下がり、信号電荷Cs はCCDチャネル12を通過してオーバーフロードレイン3へと転送されるが、この場合も、検出器のポテンシャルレベルEidはトランスファーゲート4のポテンシャルレベルEton にリセットされる。したがって、検出器のリセットレベルはトランスファーゲート4のトランジスタの特性によってのみ決まり、電荷読み出し時でも掃き出し時でも常にエネルギーレベルψT となり、ウェハプロセスのばらつきによって両レベルがシフトすることなく、完全な電子シャッター動作が行える。
【0055】なお上記実施例では、CCDとして5相駆動のものを示したが、これは電荷転送量が少なくてよい場合には、構造が簡単な4相駆動のものを用いてもよい。
【0056】以下本発明の第2の実施例によるリニアイメージセンサとして、4相駆動CCDを用いたものについて説明する。図6〜図10は本発明の第2の実施例によるリニアイメージセンサを説明するための図であり、それぞれ上記第1実施例の説明に用いた図1〜図5に対応しており、図6は赤外線リニアイメージセンサの各素子のレイアウトを示しており、図7は電荷読出の際、上記リニアイメージセンサの各ゲートに印加されるクロック信号を、また図8は電荷読出動作中の図6のVIII −VIII 線断面に沿ったポテンシャル分布の変化を示しており、さらに図9は信号電荷がCCD中を転送される様子を、図10は電荷転送中に信号電荷が掃き出されるタイミングを示している。
【0057】この実施例では、電荷結合素子として、1つの光検出器1に対して第1〜第4の4つの転送ゲート20a〜20dを有し、4相駆動クロックφ1 〜φ4 により駆動される4相CCD20を用いており、その他の構成は上記第1の実施例と全く同一である。なお20eはCCD20のN型電荷転送チャネルである。
【0058】次に動作について説明する。まずCCD20の通常の電荷転送動作について説明する。上記CCD20の第1転送ゲート20aの下側にのみポテンシャル井戸が形成されている期間中(Ta0≦t<Ta1)に、トランスファーゲート制御クロックCLt が立ち上がり(t=Ta0)、図8(f) のようにトランスファーゲート4が開くと、赤外線検出器1内に蓄積された信号電荷Cs が上記ポテンシャル井戸内に流れ込み、その後上記制御クロックCLt が立ち下がると(t=Ta1)、図8(g) のようにトランスファーゲート4が閉じ、その後図9R>9に示すようにこの信号電荷Cs の転送が開始される。なお、図9では各光検出器1からそれぞれに対応する第1転送ゲート20aのポテンシャル井戸に転送された電荷をA〜Eで示している。
【0059】以下この転送動作を、上記CCD駆動クロックが4相である、つまり各クロックφ1 〜φ4 の位相が順次90°づつ遅らせてあるため、信号電荷を1つの光検出器1から次の光検出器1に対応する位置まで転送するための期間を第1〜第8の転送期間に分けて説明する。
【0060】まず、第1転送期間(Ta1≦t<t1 )には、上記第1転送ゲート20aの下側に形成されていたポテンシャル井戸が第2転送ゲート20bの下側に広がり、その次の第2転送期間(t1 ≦t<t2 )には第1転送ゲート20aの下側のポテンシャル井戸が消失するため、赤外線検出器1からCCD20に転送された信号電荷A〜Eは、上記両転送期間中に転送ゲート1つ分移動することとなる。
【0061】さらに続く第3転送期間(t2 ≦t<t3 )及び第4転送期間(t3 ≦t<t4 )でも上記と同様にして信号電荷A〜Eがまた転送ゲート1つ分移動し、その後このような信号電荷の移動が第5及び第6転送期間、さらに第7及び第8転送期間にそれぞれ転送ゲート1つ分づづ行われ、これによって信号電荷A〜Eが光検出器1一つ分に相当する距離転送されることとなる。
【0062】そして上記CCD20はこのような転送動作を繰り返すことにより、信号電荷を順次出力アンプ8を介して外部に出力する。
【0063】次に、このような電荷転送動作中でのシャッター動作,つまり赤外線検出器1から信号電荷を掃き出す動作について図8及び図10を用いて説明する。図8R>8(a) 〜(g) はそれぞれシャッター動作が行われる転送期間(tn0≦t≦tn7)において、図6のVIII −VIII 線に沿ったポテンシャル分布を示しており、特に図8(a) は第1転送ゲート2aにポテンシャル井戸が形成されている期間(tn0<t<tn1)を、また図8(b) はシャッター動作が行われる第4転送期間の1つ前の第3転送期間(tn3≦t<Td2)を示している。ここで第4転送期間(Td2≦t<Td3)は、通常の電荷転送動作中には第1転送ゲート2aとその両側の第4,第2転送ゲート20d,20bの下側にはポテンシャル井戸が形成されない期間である。
【0064】上記電荷転送中にシャッター動作を行う転送サイクルでは、上記第4転送期間に第1転送ゲート20aの駆動クロックφ1 及びトランスファーゲート制御クロックCLtを、シャッターゲート制御クロックCLs とともに立ち上げ(t=Td2)、これにより図8(c) に示すようにトランスファーゲート4及びシャッターゲート5のポテンシャルレベルをそれぞれオンレベルEton ,Eson まで下げると同時に、第1転送ゲート20aのポテンシャルレベルを転送井戸の形成時のレベルEccまでさげる。これにより赤外線検出器1内に蓄積されていた信号電荷Ceが図10に示すように第1転送ゲート20aの下側のポテンシャル井戸を通過してオーバフロードレイン3に掃き出される。
【0065】そして上記制御クロックCLt およびCLs が立ち下がると(t=Td3)、赤外線検出器1,CCD2およびオーバフロードレイン3が分離され(図8(d) )、赤外線検出器1では信号電荷Cs の蓄積が行われ、またCCD20では信号電荷が順次第1転送ゲート20aを通過して転送されることとなる。図8(e) はこのような動作中のある時間(t=t7 )におけるポテンシャル分布を示している。
【0066】そしてトランスファーゲート4の制御クロックCLt が立ち上がると(t=Ta4)、図8(f) のようにトランスファーゲート4が開き、赤外線検出器1内に蓄積された信号電荷Cs が上記第1転送ゲート2aのポテンシャル井戸内に流れ込み、その後上記制御クロックCLt が立ち下がると(t=Ta5)、図8(g) のようにトランスファーゲート4が閉じ、以後CCD20では上述したようにこの信号電荷Cs の転送が開始される。
【0067】このように本実施例では、一次元アレイ配列の光検出器1とオーバフロードレイン3との間に配置された電荷転送部のCCD20を、上記光検出器1つに対して4つの転送ゲート20a〜20dを有する構成とし、4相の駆動クロックφ1〜φ4 を対応する転送ゲートに印加するようにしたので、上記実施例と同様CCD20での信号電荷の転送動作中に信号電荷の掃き出しを、掃出電荷とCCD中の転送電荷との混ざり合いを招くことなく行うことができ、これによりシャッターゲートを開けるタイミングを電荷読出サイクル中の任意の時間に設定することができる。
【0068】また5相駆動CCDに比べて転送ゲートおよび駆動クロックが1つ少なくすることができ、構造の簡略化を図ることができるが、CCDの転送電荷容量が半減するというデメリットもあり、用途によっては5相以上のCCDを用いる方が有利である場合もある。
【0069】なお、上記各実施例では、各光検出器の転送ゲートの個数と、転送ゲートを駆動する駆動クロックの相数とが同一である場合について示したが、これは転送ゲートを、各光検出器の転送ゲート数より多い相数の駆動クロックにより駆動するようにしてもよい。
【0070】次に本発明の第3の実施例によるリニアイメージセンサとして、各光検出器に対して転送ゲートが4つある電荷転送素子を8相の駆動クロックにより駆動するようにしたものについて説明する。図11〜図14はこの実施例のリニアイメージセンサを説明するための図であり、それぞれ上記第2実施例の説明に用いた図6R>6,図7,図9,図10に対応している。つまり図11は赤外線リニアイメージセンサの各素子のレイアウトを示しており、図12は電荷読出の際、上記リニアイメージセンサの各ゲートに印加されるクロック信号を、また図13は信号電荷がCCD中を転送される様子を、図14R>4は電荷転送中に信号電荷が掃き出されるタイミングを示している。なお電荷読出動作中の図11のX−X線断面に沿ったポテンシャル分布の変化は上記第2の実施例のもの(図8参照)と同一である。
【0071】この実施例では、図11に示すように電荷転送素子の駆動クロックとして8相駆動クロックφ1'〜φ8'を用い、一次元アレイ状に配列された光検出器のうち奇数番目の光検出器1の転送ゲート20a〜20dには第1〜第4の駆動クロックφ1'〜φ4'を、偶数番目の光検出器1′の転送ゲート20a′〜20d′には第5〜第8の駆動クロックφ5'〜φ8'を印加するようにしており、その他の構成は上記第2の実施例と全く同一である。
【0072】ここで、第1〜第8の駆動クロックφ1'〜φ8'は、CCD駆動パルスの周期がそれぞれ第2実施例の駆動クロックの2分の1となっており、また上記CCD駆動パルスの位相については順次45度づつ遅らせてある。言い換えるとクロックφ1'とφ5'、φ2'とφ6'、φ3'とφ7'、φ4'とφ8'を重合わせたものが、それぞれ上記第2実施例で用いた駆動クロックφ1 ,φ2 ,φ3 ,φ4 となっている。但し上記第1の駆動クロックφ1'と第5の駆動クロックφ5'とは、シャッターゲート制御クロックCLs が発生するタイミング(t=Td2)で同時に、光検出器1内の蓄積電荷を掃き出すためのパルスを発生するようになっている(図12参照)。
【0073】このような構成の第3の実施例では、CCD20の通常の電荷転送動作は図13に示すように、また電荷転送動作中でのシャッター動作については図14に示すように上記第2の実施例のリニアイメージセンサと全く同様に行われ、第2の実施例と同様の効果を奏する。
【0074】
【発明の効果】以上のように、この発明に係るリニアイメージセンサ及びその駆動方式によれば、一次元アレイ配列の光検出器列とオーバフロードレインとの間に配置された電荷転送部の電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して4つ以上の転送ゲートを有する構成とし、4相以上の駆動クロックを対応する転送ゲートに印加するようにしたので、電荷転送動作中に最低限隣接する3つの転送ゲートがすべて閉じた状態が発生することとなり、これにより転送中の信号電荷と掃き出された電荷とが混ざり合うことなく、この真ん中の転送ゲートを通して光検出器から電荷排出部への電荷の掃き出しを行うことができる。つまり、電荷転送部での信号電荷の転送動作中に信号電荷の掃き出しを行うことができ、これによりシャッターゲートを開けるタイミングを電荷読出サイクル中の任意の時間に設定することができる効果がある。
【0075】またこの発明によれば上記リニアイメージセンサにおいて、さらに上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを5相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたので、信号電荷の転送動作における蓄積電荷の掃き出しに5つの転送ゲートのうち隣接する3つの転送ゲートを用いても、残りの2つを転送動作に用いることができ、光検出器からの信号電荷を転送ゲート2つ分によるポテンシャル井戸内に受け入れて、転送ゲート2つ分のポテンシャル井戸に対応した量の電荷を転送することができる効果がある。
【0076】またこの発明によれば上記リニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子を、上記光検出器1つに対して4つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを4相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行う構成としたので、5相駆動の場合に比べて、転送ゲート及び駆動クロックを1つづつ少なくすることができ、CCD部分の構造の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例による赤外線リニアイメージセンサの構造を示す平面図である。
【図2】上記イメージセンサにおける5相駆動CCDの電荷読出動作を説明するための信号波形図である。
【図3】上記電荷読出動作中における図1のIII −III 線に沿ったポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図4】上記5相CCDの電荷転送動作中における電荷転送方向のポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図5】この電荷転送動作中における蓄積電荷の掃き出しタイミングを示すCCD部のポテンシャル分布図である。
【図6】この発明の第2の実施例による、4相駆動CCDを備えた赤外線リニアイメージセンサの構造を示す平面図である。
【図7】上記イメージセンサにおける4相駆動CCDの電荷読出動作を説明するための信号波形図である。
【図8】上記電荷読出動作中における図6のVIII −VIII 線に沿ったポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図9】上記4相CCDの電荷転送動作中における電荷転送方向のポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図10】この電荷転送動作中における蓄積電荷の掃き出しタイミングを示すCCD部のポテンシャル分布図である。
【図11】この発明の第3の実施例による、第2実施例のCCDを8相の駆動クロックにより駆動するようにした赤外線リニアイメージセンサの構造を示す平面図である。
【図12】このイメージセンサにおける8相駆動CCDの電荷読出動作を説明するための信号波形図である。
【図13】上記8相駆動CCDの電荷転送動作中における電荷転送方向のポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図14】この電荷転送動作中における蓄積電荷の掃き出しタイミングを示すCCD部のポテンシャル分布図である。
【図15】従来の電子シャッター機構を搭載した赤外線リニアイメージセンサの構成図であり、図15(a) は概略平面図、図15(b) はそのXVb−XVb線の断面図である。
【図16】このイメージセンサにおける電荷読出サイクルとシャッター時間との関係を示す波形図である。
【図17】このイメージセンサの電荷読出動作中における図15のXVb−XVb線に沿ったポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図18】上記従来の赤外線リニアイメージセンサにおける各部のゲート電極の配置を示す図である。
【図19】この赤外線リニアイメージセンサの電荷転送動作を行うための信号波形を示す図である。
【図20】この電荷転送動作中のCCD部におけるポテンシャル井戸の変化を示す図である。
【図21】従来のリニアイメージセンサにおける、トランスファーゲートのオン時のポテンシャルがシャッターゲートのものより高い場合の問題点を説明するためのポテンシャル分布図である。
【図22】図21の場合とは逆に、トランスファーゲートのオン時のポテンシャルがシャッターゲートのものより低い場合の問題点を説明するためのポテンシャル分布図である。
【図23】上記従来の赤外線リニアイメージセンサにおける問題点を解決した改良型の赤外線リニアイメージセンサを説明するための図であり、図23(a) は概略平面図、図23(b) はそのXXIII b−XXIII b線の断面図である。
【図24】この改良型赤外線リニアイメージセンサにおける各部のゲート電極の配置を示す図である。
【図25】このイメージセンサの電荷読出動作中における図23のXXIII b−XXIIIb線に沿ったポテンシャル分布の変化を示す図である。
【図26】このイメージセンサの電荷読出動作を行うための信号波形を示す図である。
【符号の説明】
1,1′ 赤外線検出器
1a 白金シリサイド層
2,20 CCD
2a〜2e 第1〜第5の転送ゲート
2f,20e CCD電荷転送チャネル
3 オーバフロードレイン
4 トランスファーゲート
4b トランスファーゲート用トランジスタのチャネル形成領域
5 シャッターゲート
5b シャッターゲート用トランジスタのチャネル形成領域
8 出力アンプ
9 P型シリコン基板
9a ダイオード形成用P型Si領域
10 ショットキダイオード
10a ゲート絶縁膜
11 ガードリング
20a〜20d,20a′〜20d′ 第1〜第4の転送ゲート
100,120 赤外線リニアイメージセンサ
Ce 掃出電荷
Cs 信号電荷
Eid 検出器ポテンシャルレベル
Ecc CCDポテンシャルレベル
Eod オーバーフロードレインポテンシャルレベル
Eson ,Esoff シャッターゲートのオン時,オフ時のポテンシャルレベル
Eton ,Etoff トランスファーゲートのオン時,オフ時のポテンシャルレベル
Ic CCD転送ゲート入力端子
Is シャッターゲート入力端子
It トランスファーゲート入力端子
φ1 〜φ5 、φ1'〜φ8' CCD駆動クロック
ψs シャッター動作によるリセットレベル
ψt トランスファー動作によるリセットレベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板上に1次元アレイ状に配列され、入射光を受けて信号電荷を発生する複数の光検出器と、該光検出器列の片側にこれと平行に配置され、各光検出器内に蓄積された信号電荷を転送する電荷転送部と、該電荷転送部の片側であって上記光検出器列と反対側に位置するよう配置され、上記各光検出器内の蓄積電荷を上記電荷転送部を介して受けて外部に排出する電荷排出部とを備えたリニアイメージセンサにおいて、上記電荷転送部を、上記光検出器1つに対して4つ以上の転送ゲートを有し、個々の光検出器からの信号電荷を上記光検出器配列方向へ転送する電荷結合素子と、上記各々の光検出器と、これに対応する4つ以上の転送ゲートのうちの特定の1つとの間に設けられ、光検出器から電荷結合素子への電荷転送を制御するトランスファーゲートと、上記特定の転送ゲートと電荷排出部との間に設けられ、電荷転送部から電荷排出部への電荷転送を制御するシャッターゲートとから構成し、上記各光検出器の転送ゲートを4相以上の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うようにしたことを特徴とするリニアイメージセンサ。
【請求項2】 請求項1記載のリニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子は、上記光検出器1つに対して5つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを5相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うものであることを特徴とするリニアイメージセンサ。
【請求項3】 請求項1記載のリニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子は、上記光検出器1つに対して4つの転送ゲートを有し、これらの転送ゲートを4相の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うものであることを特徴とするリニアイメージセンサ。
【請求項4】 請求項1記載のリニアイメージセンサにおいて、上記電荷結合素子は、上記各光検出器に対応する複数の転送ゲートを、該転送ゲート数以上の相数の駆動クロックにより制御して電荷転送を行うものであることを特徴とするリニアイメージセンサ。
【請求項5】 リニアイメージセンサを、その個々の光検出器からの信号電荷が電荷転送回路により転送されるとともに、該信号電荷が該電荷転送回路を介して電荷排出回路に送られて外部に排出されるよう駆動するリニアイメージセンサの駆動方式において、上記電荷転送回路として、光検出器1つに対して4つ以上の転送ゲートを有する電荷結合素子を用い、上記4つ以上の転送ゲートに4相以上の駆動クロックを印加して光検出器からの信号電荷の転送動作を行い、上記個々の光検出器とこれに対応する4つ以上の転送ゲートの特定の1つとの間に挿入されたトランスファーゲート、及び該特定の転送ゲートと電荷排出回路との間に挿入されたシャッターゲートを、それぞれ上記特定の転送ゲート両側の転送ゲートがオフしているタイミングで導通するようにしたことを特徴とするリニアイメージセンサの駆動方式。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図16】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図11】
image rotate


【図24】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【図19】
image rotate


【図20】
image rotate


【図21】
image rotate


【図22】
image rotate


【図23】
image rotate


【図25】
image rotate


【図26】
image rotate