説明

リニアモータ式テーブル装置

【課題】高さ寸法を抑制することで、小型化及び省スペース化を図るとともに、移動テーブルを弾性変形させることで、そのインターフェース取付部に対し、リニアモータ機構の磁気吸引力を低減して作用させることが可能なリニアモータ式テーブル装置を提供する。
【解決手段】基台2、直動案内装置4、移動テーブル6、リニアモータ機構8を備え、直動案内装置には、ガイドレール40とスライダ42とが設けられたテーブル装置Aであって、移動テーブルには、移動対象物を載置するためのインターフェースを取り付ける取付部6wが、当該移動テーブルの一部に切り欠き6sを形成して設けられており、当該切り欠きを形成することで、移動テーブルは、弾性変形可能に構成され、少なくともリニアモータ固定子80からリニアモータ可動子82に対して作用させる吸引力の当該移動テーブルに対する作用を、弾性変形して吸収している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、製造や検査などで各種の製品を移動するテーブル装置に関し、特に移動テーブルを往復移動及び所定位置で停止させるための位置決め機構として、リニアモータ機構が搭載されたリニアモータ式テーブル装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、製造や検査などで各種の製品を移動させるテーブル装置が知られている。この場合、かかるテーブル装置において、各種の製品を載置したテーブルを往復移動させるとともに、所定の位置で停止させるための位置決め機構としては、例えば、ボールねじ機構、ベルト機構及びリニアモータ機構などを適用することができ、これら各種の位置決め機構を搭載したテーブル装置が実用されている。
【0003】
図3(a),(b)には、位置決め機構としてリニアモータ機構を搭載したリニアモータ式テーブル装置の一例が示されており、かかるテーブル装置Cは、基台2と、当該基台2に配設された一対の直動案内装置4と、当該直動案内装置4に案内されて往復移動する移動テーブル6とを備えている。
【0004】
この場合、各直動案内装置4には、所定方向(基台2の長手方向(図3(b)の左右方向))へ直線状に延出したガイドレール40と、当該ガイドレール40に沿って往復移動可能なスライダ42とが設けられている。そして、このように構成されたテーブル装置Cによれば、移動テーブル6は、直動案内装置4に案内されながら、位置決め機構としてのリニアモータ機構8によって往復移動可能となるとともに、所定の位置で停止可能となる。すなわち、かかるテーブル装置Cにおいて、移動テーブル6は、スライダ42を介してガイドレール40に沿って往復移動可能となるとともに、所定の位置で停止可能となるように構成されている。
【0005】
図3(a),(b)に示す構成において、テーブル装置Cには、2つの直動案内装置4(2本のガイドレール40)が平行を成して配設されている。この場合、2本のガイドレール40にそれぞれ2つずつ、合計4つのスライダ42が設けられているとともに、当該4つのスライダ42に1つの移動テーブル6が架設されている。
【0006】
また、かかるテーブル装置Cにおいて、リニアモータ機構8は、一対の直動案内装置4間に、具体的には、平行して配設された2本のガイドレール42の間に、磁性体より成るヨークと当該ヨークの上に前記ガイドレール42の延出方向に沿って所定間隔を空けて延設された複数の永久磁石とを有するリニアモータ固定子80と、鉄芯などのコアに対してコイルを巻き付けたコア付きの複数の電機子(図示しない)が設けられたリニアモータ可動子82とを備えている。なお、リニアモータ可動子82は、リニアモータ固定子80と対向するように、移動テーブル6に取り付けられている。
【0007】
この場合、リニアモータ固定子80の永久磁石は、当該リニアモータ固定子80のリニアモータ可動子82に対する対向面(固定子磁極面(図3(a),(b)の上側の面))80aの磁極が、交互にN極若しくはS極となるようにヨーク上に固定され、ヨークは、固定子取付部2bへ固定されている。なお、固定子取付部2bは、基台2に対し、2本のガイドレール40が配設される2つのガイドレール配設面2a間に、所定の幅(図3(a)の左右方向の距離)、所定の長さ(図3(b)の左右方向の距離)、及び所定の深さ(図3(a)の上下方向の距離)で凹設されている。
【0008】
また、リニアモータ可動子82は、当該リニアモータ可動子82のリニアモータ固定子80に対する対向面(図3(a),(b)の下側の面)82aを成す複数の電機子(図示しない)の先端面が、各固定子磁極面80aと所定の間隔を空けて対向するように可動子取付部6bへ固定されている。なお、可動子取付部6bは、移動テーブル6の基台2に対する対向面(底面(図3(a),(b)の下側の面))6aに対し、当該底面6aに固定された4つのスライダ42で囲まれた部分に、所定の幅(図3(a)の左右方向の距離)、所定の長さ(図3(b)の左右方向の距離)、及び所定の深さ(図3(a)の上下方向の距離)で凹設されている。
【0009】
このようなリニアモータ機構8によれば、リニアモータ可動子82の電機子(図示しない)に電流を流すことで、当該電機子にフレミングの左手の法則に基づいて磁力が発生し、対向するリニアモータ固定子80との間に反発力及び吸引力を交互に作用させることができる。これにより、リニアモータ可動子82に対し、所定の推進力を与えることができる。この結果、移動テーブル6を当該リニアモータ可動子82とともにスライダ42を介してガイドレール40に沿って滑らかに往復移動させることができるとともに、電機子への電流の供給を停止することで、移動テーブル6を所定の位置で停止させることができる。
【0010】
しかしながら、図3(a),(b)に示すような構成を成すリニアモータ機構8の場合、移動テーブル6に対して、非常に高い推進力を与えることができる一方で、リニアモータ可動子82の電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80との間には、当該推進力を与えるため、磁力による強力な反発力及び吸引力が生じる。この場合、例えば、かかるリニアモータ可動子82の電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80との間の吸引力は、移動テーブル6に対して推進力を与えるために作用すると同時に、当該移動テーブル6自体を吸引するためにも作用する。
【0011】
図3(a),(b)に示す構成において、リニアモータ可動子82の電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80とは、垂直方向(同図の上下方向)に対向しているため、上述したような移動テーブル6自体に対する吸引力が継続して作用した場合、その吸引力及び継続の程度によっては、当該移動テーブル6が垂直方向(同図の同方向)に撓み、局部的に変形してしまう場合がある。
【0012】
すなわち、リニアモータ可動子82の電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80との間に吸引力が生じると、当該リニアモータ可動子82がリニアモータ固定子80の方向(図3(a),(b)の下方向)へ吸引される。この場合、リニアモータ可動子82は、移動テーブル6の可動子取付部6bへ固定されているため、かかる移動テーブル6は、可動子取付部6b及びその近傍がリニアモータ可動子82とともに、リニアモータ固定子80の方向(図3(a),(b)の下方向)へ吸引されてしまう。
【0013】
この結果、移動テーブル6は、可動子取付部6b及びその近傍がリニアモータ固定子80の方向(図3(a),(b)の下方向)へ凸状に撓んで変形する場合がある。このように、移動テーブル6が撓んで変形した場合、例えば、移動対象物(例えば、製造や検査の対象となるワークなど)を載置するためのインターフェース(図示しない)が取り付けられる取付部(IF取付部(図3(a),(b)の上側の面))6wの平面精度や、当該移動テーブル6自体の直進安定性などが悪化してしまう。
【0014】
このような状態においては、当該IF取付部6wに対して各種のインターフェースなどを取り付けた場合であっても、当該インターフェースがガタつき、当該インターフェースに載置したワークに対する製造や検査などへの不都合が生じてしまう。
【0015】
なお、かかるテーブル装置Cにおいては、リニアモータ機構8のリニアモータ固定子80とリニアモータ可動子82とを接触させることのないよう、固定子取付部2bの深さ(図3(a),(b)の上下方向の距離)、直動案内装置4(ガイドレール40及びスライダ42)の高さ(同図の同方向の距離)、及び可動子取付部6bの深さ(同図の同方向の距離)の各寸法公差を管理している。
【0016】
そして、リニアモータ機構8により生じる磁気吸引力によって、リニアモータ可動子82がリニアモータ固定子80と接触してしまう程、移動テーブル6が変形した場合、例えば、リニアモータ可動子82と可動子取付部6bとの間に高さ調整部材(シム(図示しない))を介在させることにより、あるいは、介在させたシムを再加工することにより、リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80との接触を回避させることができる。この場合、シムは、その高さが、上記各部材の寸法公差に基づいて、リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80との接触を回避させることが可能な所定の高さに設定されている。
【0017】
しかしながら、このような対処法においては、まず、移動テーブル6をテーブル装置Cから一旦取り外し、さらに当該移動テーブル6からリニアモータ可動子82を取り外した上で、シム(図示しない)の挿入作業や加工作業を行う必要があり、非常に手間と時間を要してしまう。
【0018】
そこで、このような不都合を解消するための方策として、例えば、特許文献1には、リニアモータ機構のリニアモータ固定子とリニアモータ可動子とを、図3(a),(b)に示す構成のように、その固定子磁極面と電機子とが垂直方向に対向する構成ではなく、これらを水平方向に対向させたリニアモータ機構を搭載したテーブル装置が一例として開示されている。
【0019】
かかるテーブル装置は、基台の2つのガイドレール配設面を高くし、当該2つのガイドレール配設面の間に凹設する固定子取付部の深さを大きくして構成されている。そして、リニアモータ固定子は、固定子取付部の底部ではなく、対向する2つの内壁部へ固定子磁極面が相互に対向するように、それぞれ取り付けられている。
一方、リニアモータ可動子は、固定子取付部の内壁部に取り付けられたリニアモータ固定子の固定子磁極面と所定の間隔を空け、非接触状態で対向可能となるように、2つの電機子がリニアモータ可動子の側面にそれぞれ取り付けられて構成されている。
【0020】
このような構成のテーブル装置によれば、リニアモータ可動子の電機子とリニアモータ固定子との間に生じる吸引力は、垂直方向には作用せず、水平方向にのみ作用する。ただし、固定子取付部の一方の内壁部に取り付けられたリニアモータ固定子と、これと対向するリニアモータ可動子の一方の電機子との間に生じる吸引力、並びに固定子取付部の他方の内壁部に取り付けられたリニアモータ固定子と、これと対向するリニアモータ可動子の他方の電機子との間に生じる吸引力とは、同一の大きさで且つ反対方向へ作用するため、双方の吸引力を相殺させることができる。
【0021】
なお、この場合、リニアモータ可動子の電機子とリニアモータ固定子との間には、上述した吸引力だけでなく、反発力も生じる。しかしながら、上述した吸引力の場合と同様に、かかる反発力は、垂直方向に対しては作用せず、水平方向に対しても相殺させることができる。
【0022】
このため、移動テーブルには、垂直方向の吸引力及び反発力のみならず、結果として、水平方向の吸引力及び反発力も作用しない。これにより、移動テーブルが垂直方向及び水平方向のいずれにも撓むことはなく、例えば、移動テーブルのIF取付部の平面精度の悪化や、当該移動テーブル自体の直進安定性の悪化などを有効に回避することができる。
【特許文献1】特開平11−266577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、かかるテーブル装置においては、リニアモータ固定子の固定子磁極面とリニアモータ可動子の電機子とが水平方向に対向配置されているため、当該リニアモータ固定子とリニアモータ可動子とを取り付けるスペースを当該テーブル装置の高さ方向(垂直方向)にある程度確保し、その固定子磁極面と電機子との対向面積を確保する必要がある。
【0024】
このため、かかるテーブル装置は、図3(a),(b)に示すようなリニアモータ固定子80とリニアモータ可動子82とが、垂直方向に対向配置されて構成されたリニアモータ機構8を搭載したテーブル装置Cと比べて、その高さ寸法(垂直方向の距離)が大きくなってしまう。
このように、かかるテーブル装置においては、その高さ寸法の拡大が必須要件となり、当該高さ寸法の拡大は、その拡大の程度によって、テーブル装置全体の小型化及び省スペース化を図る上で、ボトルネックとなってしまう。
【0025】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、高さ寸法を抑制することで、小型化及び省スペース化を図るとともに、移動テーブルを弾性変形させることで、そのインターフェース取付部に対し、リニアモータ機構の磁気吸引力を低減して作用させること、さらには、当該吸引力の作用を完全に排除することが可能なリニアモータ式テーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
このような目的を達成するために、本発明のリニアモータ式テーブル装置は、基台と、当該基台に設けられた直動案内装置と、当該直動案内装置に案内されて往復移動可能な移動テーブルと、当該移動テーブルを往復移動及び所定の位置で停止させるためのリニアモータ機構とを備えている。この場合、直動案内装置には、所定方向に延出するガイドレールと、前記移動テーブルが固定され、当該ガイドレールに沿って往復移動するスライダとが設けられている。また、リニアモータ機構は、ガイドレールに沿って基台に延設されたリニアモータ固定子と、当該リニアモータ固定子と所定の間隔を空けて対向して移動テーブルに固定されたリニアモータ可動子とを備え、リニアモータ固定子からリニアモータ可動子に対し、反発力及び吸引力を交互に作用させて推進力を与えることで、前記移動テーブルを往復移動させている。
【0027】
かかるリニアモータ式テーブル装置において、移動テーブルには、移動対象物を載置するためのインターフェースを取り付ける取付部が、当該移動テーブルの一部に切り欠きを形成して設けられており、当該切り欠きを形成することで、移動テーブルは、弾性変形可能に構成され、少なくとも前記吸引力の当該移動テーブルに対する作用を、弾性変形して吸収している。
【0028】
また、移動テーブルは、リニアモータ可動子を固定するための可動子テーブルと、移動対象物を載置するためのインターフェースを取り付けるための取付部が設けられた取付部テーブルとに分割して構成されているとともに、これらを所定の間隔を空けて非接触状態に組み合わせて構成されており、当該可動子テーブルは、前記吸引力を弾性変形して吸収している。
【発明の効果】
【0029】
本発明のリニアモータ式テーブル装置によれば、高さ寸法を抑制することができるとともに、移動テーブルを弾性変形させ、そのインターフェース取付部に対し、リニアモータ機構の磁気吸引力を低減して作用させることができる。この結果、装置の小型化及び省スペース化を図りながら、当該インターフェース取付部において、かかる磁気吸引力が作用することによって生じる当該吸引力方向への変位を大幅に低減させることができ、さらには、当該インターフェース取付部を完全に変位させないことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置の基本的な構成は、上述した従来のリニアモータ式テーブル装置C(図3(a),(b))と同様であるため、当該テーブル装置Cと同一若しく類似の構成については、図面上で同一の符号を付して、その説明を省略若しくは簡略化する。
【0031】
図1(a),(b)には、本発明の第1実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置(以下、単にテーブル装置Aという)が示されている。かかるテーブル装置Aには、基台2と、当該基台2に設けられた直動案内装置4と、当該直動案内装置4に案内されて往復移動可能な移動テーブル6と、当該移動テーブル6を往復移動及び所定の位置で停止させるためのリニアモータ機構8とが備えられている。また、直動案内装置4には、所定方向に延出するガイドレール40と、移動テーブル6が固定され、当該ガイドレール40に沿って往復移動するスライダ42とが設けられている。
【0032】
図1(a),(b)に示す構成において、テーブル装置Aには、直動案内装置4として、2本のガイドレール40が、当該テーブル装置Aの長手方向(図1(b)の左右方向)へ直線状に延出して基台2のガイドレール配設面2a上に平行して配設されており、当該ガイドレール40には、各ガイドレール40に沿って往復移動可能なスライダ42が2つずつ、合計4つ設けられている。この場合、テーブル装置Aには、一例として、各ガイドレール40の2つのスライダ42に固定されるとともに、2本のガイドレール40にスライダ42を介して跨った状態で、1つの移動テーブル6が設けられている。
【0033】
なお、直動案内装置4として配設するガイドレール40の本数は、特に限定されず、例えば、1本のみであってもよいし、3本以上であってもよい。また、各ガイドレール40に設けるスライダ42の数は、特に限定されず、例えば、1つのみであってもよいし、3つ以上であってもよい。さらに、複数のガイドレール40を配設する場合、各ガイドレール40に設けるスライダ42の数は、全てのガイドレール40において同数でなくともよい。
【0034】
また、図1(a),(b)に示す構成において、直動案内装置4としては、軌道溝を転動可能な複数の転動体(玉)を備えた直動軸受が一例として適用されている。かかる直動軸受においては、ガイドレール40(例えば、両側面40s,40t)とスライダ42(例えば、その凹部においてガイドレール40の両側面40s,40tと対向する内側両側面42s,42t)には、複数の玉(図示しない)を循環させる軌道溝(図示しない)が対向して形成され、スライダ42には、複数の玉を循環させる転動体通路(図示しない)が形成されている。なお、転動体通路は、前記軌道溝とそれぞれ平行に延出してスライダ42の両端(スライダ42の移動方向両端)で貫通している。また、スライダ42は、その両端にそれぞれ固定されるエンドキャップ(図示しない)を含んでおり、各エンドキャップには、前記軌道溝と転動体通路とを相互に連通させる循環路(図示しない)が設けられている。
【0035】
この場合、スライダ42をガイドレール40に沿って移動させると、スライダ42とガイドレール40の軌道溝間の玉(図示しない)は、スライダ42の移動方向とは逆方向に転動した後、エンドキャップの循環路を経由して転動体通路にそれぞれ送り込まれる。そして、当該転動体通路をスライダ42の移動方向に進んだ後、エンドキャップの循環路を経由して再び前記軌道溝間に送り込まれ、ここを転動する。このように各玉が循環することにより、スライダ42はガイドレール40に沿って滑らかに移動することができる。
【0036】
なお、転動体は、スライダ42をガイドレール40に沿って滑らかに移動させることができれば、玉ではなく、例えば、ころなどでもよい。
また、直動案内装置4は、ガイドレール40に沿ってスライダ42を往復移動させることが可能な機構であればよく、その形式は特に限定されない。例えば、直動案内装置4の形式としては、上述した軌道溝(対向面)を転動可能な複数の転動体(玉やころ)を備えた直動軸受の他、カムフォロア、ローラフォロア及びすべり軸受、空気軸受等の静圧軸受などを任意に選択して適用することができる。
【0037】
なお、いずれの形式の直動案内装置4であっても、かかる直動案内装置4は、例えば、所定の高剛性素材を材料として形成することなどによって、非常に高い剛性を有して構成されている。特に、本実施形態に係る直動案内装置4において、スライダ42及びガイドレール40は、一例として、所定の高剛性素材を材料として形成され、垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に対し、非常に高い剛性を有するように構成されている。
【0038】
また、かかるテーブル装置Aにおいて、リニアモータ機構8には、リニアモータ固定子80とリニアモータ可動子82とが備えられており、リニアモータ固定子80を構成する複数の永久磁石は、基台2に平行して配設された2本のガイドレール42の間に、当該ガイドレール42の延出方向へ沿って所定間隔を空けてヨーク上に延設されている。
【0039】
この場合、リニアモータ固定子80としては、上面がN極若しくはS極となるように配置された永久磁石を用いたものが一例として適用されており、リニアモータ可動子82は、その先端面が前記永久磁石の磁極面(リニアモータ固定子80の固定子磁極面80a)に対する対向面(図1(a),(b)の下側の面)82aを成す複数の電機子(図示しない)を備えている。なお、電機子としては、例えば、鉄芯などのコアに対してコイルを巻き付けたコア付きのタイプと、かかるコアを有しないコア無しのタイプのいずれも適用することができる。一例として、本実施形態においては、電機子として吸引力の大きなコア付きのタイプが適用されている場合を想定する。
【0040】
図1(a),(b)に示す構成において、リニアモータ固定子80は、当該リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aの磁極が交互にN極若しくはS極となるように、固定子取付部2bへ等間隔を成して固定されている。
なお、固定子取付部2bの大きさ(幅(図1(a)の左右方向の距離)、長さ(図1(b)の左右方向の距離)、及び深さ(図1(a)の上下方向の距離))、形状及び位置などは、例えば、基台2の大きさなどに応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0041】
例えば、図1(a),(b)に示す構成において、固定子取付部2bは、一例として、基台2の両端部(図1(a)の左端部及び右端部)の長手方向(図1(b)の左右方向)に沿ってそれぞれ設けられた2つのガイドレール配設面2aの間に、直方体の凹状を成して形成されている。この場合、固定子取付部2bは、その幅が平行して配設された2本のガイドレール40間の距離(図1(a)の左右方向の距離)よりも若干小さく、その長さが基台2の長手方向の距離(図1(b)の左右方向の距離)と同一の大きさを成すとともに、その深さがリニアモータ固定子80の高さ(図1(a)の上下方向の距離)よりも若干小さな所定の大きさを成して形成されている。これにより、固定子取付部2bは、その内部に、ガイドレール42の延出方向へ沿って、且つ、その延出長さの全てに亘って、所定間隔(一例として、等間隔)を空けて多数のリニアモータ固定子80を収容することができる。なお、この場合、リニアモータ固定子80は、その高さと固定子取付部2bの深さとの差分に相当する大きさだけ、上部が固定子取付部2bよりも突出して、当該固定子取付部2bされている。
【0042】
ここで、リニアモータ固定子80の固定子取付部2bに対する固定方法は、例えば、テーブル装置Aの使用状態や使用目的などに応じて任意に設定されるため、特に限定しない。例えば、これらを締結部材(例えば、ねじやナットなど)により締結固定してもよいし、接着や溶接などにより接合固定させてもよい。また、締結固定や接合固定など複数の固定方法を組み合わせて、リニアモータ固定子80を固定子取付部2bに対して固定してもよい。
【0043】
なお、図1(a),(b)には、リニアモータ固定子80が基台2の固定子取付部2bへ固定された構成を一例として示しているが、例えば、基台2に対して固定子取付部2bを設けずに、リニアモータ固定子80を基台2の移動テーブル6に対する対向面(図1(a),(b)の上側の面)に直接固定する構成としてもよい。ただし、図1(a),(b)に示す構成のように、基台2に対して固定子取付部2bを設け、当該固定子取付部2bにリニアモータ固定子80を固定することで、テーブル装置Aの高さ寸法(図1(a),(b)の上下方向の距離)を抑えながら、リニアモータ固定子80のサイズ(具体的には、高さ寸法)を大きくすることが可能となる。
【0044】
また、図1(a),(b)に示す構成において、リニアモータ可動子82は、これを構成する図示しない複数のコア付きの電機子の先端面が、リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aに対する対向面(図1(a),(b)の下側の面)82aとなり、リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aと所定の間隔を空けて対向して、移動テーブル6の可動子取付部6bへ固定されている。
なお、可動子取付部6bの大きさ(幅(図1(a)の左右方向の距離)、長さ(図1(b)の左右方向の距離)、及び深さ(図1(a)の上下方向の距離))、形状及び位置などは、例えば、基台2の大きさなどに応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0045】
例えば、図1(a),(b)に示す構成において、可動子取付部6bは、一例として、移動テーブル6の底面(同図の下側の面)6aの4つのスライダ42で囲まれた部分に対し、直方体の凹状を成して形成されている。この場合、可動子取付部6bは、その幅がリニアモータ可動子82の幅(図1(a)の左右方向の距離)よりも若干大きく、その長さが移動テーブル6の長さ(図1(b)の左右方向の距離)と同一の大きさを成して形成されている。
そして、可動子取付部6bの深さは、リニアモータ可動子82が固定された移動テーブル6を、4つのスライダ42に対して固定した状態において、リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aに対する対向面(図1(a),(b)の下側の面)82aを成す複数のコア付きの電機子(図示しない)の先端面が、リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aと所定の間隔を空けて対向して位置付けられる所定の大きさに設定されている。
【0046】
ここで、リニアモータ可動子82の可動子取付部6bに対する固定方法は、例えば、テーブル装置Aの使用状態や使用目的などに応じて任意に設定されるため、特に限定しない。例えば、これらを締結部材(例えば、ねじやナットなど)により締結固定してもよいし、接着や溶接などにより接合固定させてもよい。また、締結固定や接合固定など複数の固定方法を組み合わせて、リニアモータ可動子82の可動子取付部6bに対して固定してもよい。
【0047】
なお、図1(a),(b)には、リニアモータ可動子82が移動テーブル6の可動子取付部6bへ固定された構成を一例として示しているが、例えば、移動テーブル6に対して可動子取付部6bを設けずに、リニアモータ可動子82を移動テーブル6の底面6aに直接固定する構成としてもよい。ただし、図1(a),(b)に示す構成のように、移動テーブル6に対して可動子取付部6bを設け、当該可動子取付部6bにリニアモータ可動子82を固定することで、テーブル装置Aの高さ寸法(図1(a),(b)の上下方向の距離)を抑えながら、リニアモータ可動子82のサイズ(具体的には、高さ寸法)を大きくすることが可能となる。
【0048】
さらに、図1(a),(b)に示す構成において、リニアモータ可動子82が固定された移動テーブル6は、当該リニアモータ可動子82のコア付きの電機子(図示しない)が、リニアモータ固定子80の固定子磁極面80aと所定の間隔を空けて対向可能となるように、底面6aをスライダ42の上面(図1(a),(b)の上側の面)42aに当接させて、当該スライダ42へ固定されている。
【0049】
これにより、リニアモータ固定子80(具体的には、固定子磁極面80a)からリニアモータ可動子82(具体的には、コア付きの電機子(図示しない))に対し、磁気反発力及び磁気吸引力を交互に作用させて、当該リニアモータ可動子82に推進力を与えることができる。すなわち、リニアモータ可動子82が固定された移動テーブル6を、スライダ42を介してガイドレール40に沿って滑らかに往復移動させることができる。
【0050】
ここで、リニアモータ可動子82が固定された移動テーブル6とスライダ42との固定方法は、例えば、テーブル装置Aの使用状態や使用目的などに応じて任意に設定されるため、特に限定しない。例えば、これらを締結部材(例えば、ねじやナットなど)により締結固定してもよいし、接着や溶接などにより接合固定させてもよい。また、締結固定や接合固定など複数の固定方法を組み合わせて、かかる移動テーブル6とスライダ42とを固定してもよい。
【0051】
また、移動テーブル6には、移動対象物(例えば、製造や検査の対象となるワークなど)を載置するためのインターフェース(図示しない)を取り付ける取付部(IF取付部)6wが、当該移動テーブル6の一部に切り欠き6sを形成して設けられている。また一方で、当該切り欠き6sを形成することで、移動テーブル6は、弾性変形可能に構成され、少なくともリニアモータ固定子80からリニアモータ可動子82に対して作用させる吸引力のうち、対向面80a,82aに垂直な方向の力の当該移動テーブル6に対する作用を、弾性変形して吸収している。そして、移動テーブル6が弾性変形することによって、IF取付部6wの当該吸引力方向(図1(a),(b)の下向き)への変位を低減させている。
【0052】
なお、切り欠き6sの大きさ(幅(図1(a)の左右方向の距離)、長さ(図1(b)の左右方向の距離)、及び深さ(図1(a),(b)の上下方向の距離))、形状及び位置などは、例えば、移動テーブル6の大きさや、IF取付部6wの形状などに応じて任意に設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0053】
例えば、図1(a),(b)に示す構成において、切り欠き6sは、一例として、凹状部S1を移動テーブル6の中心部付近で交差させた平らな十字の凹状を成して形成されている。
この場合、凹状部S1のうち、ガイドレール40の長手方向に沿った方向の両端部分は、その幅(図1(a)の左右方向の距離)が基台2に平行して配設された各ガイドレール40に設けられたスライダ42の外側間の距離(同図の同一方向の距離)よりも若干大きく、所定の深さ(図1(a),(b)の上下方向の距離)の矩形の凹状を成して形成されている。
【0054】
これに対し、凹状部S1のうち、移動テーブル6の幅方向に沿った方向の両端部分は、その長さ(図1(b)の左右方向の距離)が移動方向に並んだ2つのスライダ42の外側間の距離(同図の同一方向の距離)よりも小さく、所定の深さ(図1(a),(b)の上下方向の距離)の矩形の凹状を成して形成されている。
これにより、移動テーブル6には、その底面6aとは反対側(図1(a)の上側)の四隅に1つずつ、合計4つのIF取付部6wが設けられている。
なお、凹状部S1を十字状とする代わりに、矩形状とし、IF取付部6wを1つの矩形枠状としてもよい。
【0055】
また、図1(a),(b)に示す構成においては、切り欠き6sとして、凹状部S1に加えて、4つのIF取付部6wに沿って、当該凹状部S1を所定の大きさ(幅、長さ及び深さ)で拡大する拡大凹状部S3,S4が形成されている。
【0056】
この場合、拡大凹状部S3は、移動テーブル6の同一側(図1(a)の左側、若しくは右側)に、その移動方向(図1(b)の左右方向)へ並んだ2つのIF取付部6wに沿って直線状に1つずつ、合計2つ形成されている。かかる拡大凹状部S3は、その幅(図1(a)の左右方向の距離)が、移動テーブル6の底面6aの当該IF取付部6w側(同図の左側、若しくは右側)に位置するスライダ42の幅(同図の左右方向の距離)よりも小さく、その長さ(図1(b)の左右方向の距離)が、移動テーブル6の長さ(同図の同一方向の距離)と同一の大きさで、底面6a(別の捉え方をすれば、当該スライダ42の上面42a)まで達しない所定の深さ(図1(a)の上下方向の距離)の直方体の凹状を成して形成されている。
【0057】
また、拡大凹状部S4は、移動テーブル6の移動方向の同一側(図1(b)の左側、若しくは右側)にその移動方向と交差する方向(図1(a)の左右方向)へ並んだ2つのIF取付部6wに沿って直線状に1つずつ、合計2つ形成されている。かかる拡大凹状部S4は、その幅(図1(a)の左右方向の距離)が、移動テーブル6の幅(同図の同一方向の距離)と同一の大きさで、その長さ(図1(b)の左右方向の距離)が、移動テーブル6の底面6aの当該IF取付部6w側(同図の左側、若しくは右側)に位置するスライダ42の長さ(同図の左右方向の距離)よりも小さく、底面6a(別の捉え方をすれば、当該スライダ42の上面42a)当該スライダ42の上面42aまで達しない所定の深さ(図1(b)の上下方向の距離)の直方体の凹状を成して形成されている。
【0058】
なお、図1(a),(b)に示す構成においては、一例として、拡大凹状部S3と拡大凹状部S4とが、平面視#状を成すようにそれぞれ相互に交差している場合を想定している。
ここで、切り欠き6sを構成する凹状部S1、及び拡大凹状部S3,S4の大きさ(幅(図1(a)の左右方向の距離)、長さ(図1(b)の左右方向の距離)、及び深さ(図1(a),(b)の上下方向の距離))、形状及び位置などは、例えば、移動テーブル6の大きさや、IF取付部6wの形状などに応じて任意に設定されるため、特に限定しない。例えば、凹状部S1、及び拡大凹状部S3,S4は、平面視曲線状に形成してもよいし、断面視曲線状に形成してもよい。また、例えば、拡大凹状部S3は、移動テーブル6の長さよりも小さな長さで形成してもよいし、拡大凹状部S4は、移動テーブル6の幅よりも小さな幅で形成してもよい。
【0059】
また、例えば、拡大凹状部S3と拡大凹状部S4とは、平面視#状を成すようにそれぞれ相互に交差させ、当該拡大凹状部S3及び拡大凹状部S4で相互に囲まれた中央部を直方体の凹状に連続させて構成してもよい。さらに、例えば、拡大凹状部S3と拡大凹状部S4とは、各IF取付部6wに沿って、それぞれ平面視L字状を成して連結して構成してもよい。いずれの場合においても、拡大凹状部S3と拡大凹状部S4とは、その深さを同一としてよい。
なお、例えば、切り欠き6sとして、凹状部S1及び拡大凹状部S3のみを形成し、当該凹状部S1及び拡大凹状部S3を移動テーブル6の長さと同一の長さとしてもよい。若しくは、凹状部S1及び拡大凹状部S4のみを形成し、当該凹状部S1及び拡大凹状部S4を移動テーブル6の幅と同一の幅としてもよい。
さらに、例えば、凹状部S1を矩形状とし、IF取付部6wを1つの矩形枠状とし、拡大凹状部S3,S4は、IF取付部6wの内周に沿った直方体の凹状としてもよい。
【0060】
いずれの構成の切り欠き6sを形成する場合であっても、凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4の形成方法は特に限定されず、例えば、移動テーブル6の成形時に当該移動テーブル6と一体的に形成してもよいし、成形後の移動テーブル6に対して、切削加工などを施して形成してもよい。
【0061】
以上のように、移動テーブル6に対し、切り欠き6として凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4を形成することで、リニアモータ可動子82のコア付き電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80の固定子磁極面80aとの間で、当該リニアモータ可動子82に対して推進力を与えるための磁気吸引力が生じた場合であっても、移動テーブル6を容易に弾性変形させることができ、この結果、当該吸引力の移動テーブル6に対する作用を吸収させることができる。
【0062】
具体的に説明すると、本実施形態において、リニアモータ可動子82は、移動テーブル6の可動子取付部6bに固定され、リニアモータ固定子80と垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に対向している。
このため、リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80との間に磁気吸引力が生じた場合、かかる吸引力には、リニアモータ可動子82を介して移動テーブル6に対し、リニアモータ固定子80の方向(図1(a),(b)の下方向)、すなわち垂直方向の下向きの力が含まれる。
【0063】
上述したように、移動テーブル6には、切り欠き6sとして凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4が形成されているため、かかる吸引力が作用すると、移動テーブル6が弾性変形し、垂直方向の下向きに所定量だけ撓むことになる。
この場合、移動テーブル6のIF取付部6wは、当該移動テーブル6に対し、切り欠き6sとして凹状部S1を形成することによって設けられており、各IF取付部6wに沿って当該凹状部S1の大きさ(幅、長さ及び深さ)を拡大する拡大凹状部S3,S4が形成されている。
【0064】
このため、かかる吸引力は、移動テーブル6の可動子取付部6b及びその近傍に対して集中的に作用し、当該可動子取付部6b及びその近傍が弾性変形により、垂直方向の下向きに撓むことになる。別の捉え方をすれば、かかる吸引力が作用することによって、切り欠き6sの形状、すなわち、凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4の形状が変形されることで、当該吸引力が吸収される。
【0065】
この結果、移動テーブル6のIF取付部6wに対しては、かかる吸引力を大幅に低減して作用させることができる。これにより、かかる吸引力が作用することによる移動テーブル6のIF取付部6wの当該吸引力方向への変位、すなわち垂直方向の下向き(図1(a),(b)の下方向)への変位を大幅に低減させることができる。
また、拡大凹状部S3,S4は、移動テーブル6の上下方向の厚さが相対的に薄く、特に弾性変形能が高いため、ほぼこれらの近傍の部分が変形の大部分を占め、IF取付部6wや可動子取付部6b近傍の変形量を抑制することができる。
【0066】
またこの際、かかる吸引力は、移動テーブル6の可動子取付部6b及びその近傍が弾性変形することによって吸収されるとともに、当該可動子取付部6b及びその近傍が垂直方向の下向きに撓んだ状態から、撓む前の元の状態へ戻るために、当該吸引力とは逆向き(垂直方向の上向き)に同一の大きさで作用する弾性力によって相殺される。
【0067】
なお、かかる吸引力によって移動テーブル6の可動子取付部6b及びその近傍が弾性変形し、垂直方向の下向きに所定量だけ撓んだ状態においては、当該吸引力は、スライダ42に対して、さらには、ガイドレール40に対して、垂直方向の下向きへ押圧する力(押圧力)としても作用する。しかしながら、スライダ42及びガイドレール40は、垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に対し、非常に高い剛性を有して構成されているため、かかる吸引力による押圧力を負荷することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置Aによれば、移動テーブル6に対して、切り欠き6sとして凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4を形成することで、当該リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80とを垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に対向配置した場合であっても、これらの間で生じる磁気吸引力が移動テーブル6のIF取付部6wに対して、垂直方向の下向き(図1(a),(b)の下方向)への変位を与えるなどの悪影響を排除することができる。
これにより、リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80とを垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)に対向配置することで、装置の高さ寸法(図1(a),(b)の上下方向の距離)を抑制することができ、装置の小型化及び省スペース化を図ることができる。
【0069】
なお、切り欠き6s(凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4)には、所定のカバーを設けてもよい。このようにカバーを設けることで、かかる吸引力が作用することによる移動テーブル6のIF取付部6wの垂直方向の下向き(図1(a),(b)の下方向)への変位を大幅に低減させながら、例えば、当該切り欠き6s(凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4)によるデッドスペースを縮小することができ、装置の有効スペースを拡張させることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、かかる吸引力の影響により、移動テーブル6のIF取付部6w(具体的には、その表面(図1(a),(b)の上側の面))の平面精度が悪化することもない。この結果、テーブル装置Aの組立後における追加作業によるコストの発生を抑制することができ、テーブル装置Aを低コストで製造することが可能となり、ひいては、当該テーブル装置Aを製造や検査などで用いる各種の製品を低コストで製造することが可能となる。
【0071】
なお、上述した本実施形態において、移動テーブル6は、1つの部材により一体的に構成したが(図1(a),(b))、例えば、図2に示す本発明の第2実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置Bのように、移動テーブル6を複数の部材による分割構成とするとともに、これらを非接触状態に組み合わせて構成してもよい。
【0072】
すなわち、移動テーブル6は、リニアモータ可動子82を固定するための可動子テーブル60と、移動対象物(例えば、製造や検査の対象となるワークなど)を載置するためのインターフェース(図示しない)を取り付けるIF取付部6wが設けられた取付部テーブル62とに分割し、これらを所定の間隔を空けて非接触状態に組み合わせて構成してもよい。
また、この場合、可動子テーブル60は、リニアモータ固定子80からリニアモータ可動子82に対して作用させる吸引力の移動テーブル6に対する作用を、弾性変形して吸収している。
【0073】
図2に示す構成において、切り欠き6sの拡大凹状部S3は、一例として、移動テーブル6の同一側(図2の左側、若しくは右側)に、その移動方向(図1(b)の左右方向に相当)へ並んだ2つのIF取付部6wに沿って直線状に1つずつ、合計2つ形成されている。
【0074】
かかる拡大凹状部S3は、その幅(図2の左右方向の距離)が、移動テーブル6の底面6aの当該IF取付部6w側(同図の左側、若しくは右側)に位置するスライダ42の幅(同図の左右方向の距離)よりも小さく、その長さ(図1(b)の左右方向の距離に相当)が、移動テーブル6の長さ(同図の同一方向の距離に相当)と同一の大きさを成している。そして、その深さ(図2の上下方向の距離)が、移動テーブル6の底面6aの上記IF取付部6w側(同図の左側、若しくは右側)に位置するスライダ42の上面42aまで達して、すなわち、凹状部S1から移動テーブル6の底面6aまでを貫通して形成されている。
【0075】
これにより、移動テーブル6は、拡大凹状部S3によって、リニアモータ可動子82を固定するための可動子テーブル60と、移動対象物(例えば、製造や検査の対象となるワークなど)を載置するためのインターフェース(図示しない)を取り付けるIF取付部6wが設けられた2つの取付部テーブル62とに分割された構成となる。そして、移動テーブル6は、1つの可動子テーブル60と、2つの取付部テーブル62とが、拡大凹状部S3に相当する大きさ(幅、長さ及び深さ)だけ間隔を空けて非接触状態に組み合わせて構成される。
【0076】
この場合、可動子テーブル60は、4つのスライダ42にそれぞれ跨って固定され、取付部テーブル62は、移動テーブル6の同一側(図2の左側、若しくは右側)に、その移動方向(図1(b)の左右方向に相当)へ並んだ2つのスライダ42に跨って固定されている。これにより、可動子テーブル60と取付部テーブル62とを組み合わせて構成された移動テーブル6を、スライダ42を介してガイドレール40に沿って滑らかに往復移動させることができる。
【0077】
なお、移動テーブル6は、拡大凹状部S4を凹状部S1から底面6a(スライダ42の上面42a)まで達する深さ(図2の上下方向の距離)で形成することによって分割構成とするとともに、当該拡大凹状部S4に相当する大きさ(幅、長さ及び深さ)だけ間隔を空けて非接触状態に組み合わせて構成してもよい。
さらに、移動テーブル6は、拡大凹状部S3及び拡大凹状部S4の双方によって分割し、これらに相当する大きさ(幅、長さ及び深さ)だけ間隔を空けた非接触状態に組み合わせて構成してもよい。
【0078】
以上のように、移動テーブル6を可動子テーブル60と取付部テーブル62とに分割して構成するとともに、これらを所定間隔を空けて非接触状態に組み合わせて構成することで、リニアモータ可動子82のコア付き電機子(図示しない)とリニアモータ固定子80の固定子磁極面80aとの間で、当該リニアモータ可動子82に対して推進力を与えるための磁気吸引力が生じた場合であっても、移動テーブル6の可動子テーブル60のみを容易に弾性変形させることができ、この結果、当該吸引力の移動テーブル6に対する作用を吸収させることができる。
【0079】
すなわち、かかる吸引力は、移動テーブル6の取付部テーブル62に対しては及ばず、当該吸引力が当該取付部テーブル62に作用することを完全に排除することができる。この結果、取付部テーブル62に設けられたIF取付部6wに対し、かかる吸引力が作用することを完全に排除することができる。このため、移動テーブル6(取付部テーブル62)のIF取付部6wは、かかる吸引力方向(垂直方向の下向き(図1(a),(b)の下方向))へ変位することがない。
【0080】
なお、上述した第1実施形態に係るテーブル装置A、及び第2実施形態に係るテーブル装置Bにおいて、リニアモータ可動子82に対して推進力を与えるため、当該リニアモータ可動子82とリニアモータ固定子80との間には、垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)の下向きへの磁気吸引力の他、垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)の上向きへの磁気反発力も作用する。
【0081】
この場合であっても、第1実施形態及び第2実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置A,Bのように、移動テーブル6に対して、切り欠き6sとして凹状部S1及び拡大凹状部S3,S4を形成するだけで、上述した吸引力の場合と同様に、移動テーブル6のIF取付部6wに対して作用するかかる反発力を、大幅に低減、若しくは完全に排除させることができる。この結果、移動テーブル6のIF取付部6wのかかる反発力方向(垂直方向の上向き(図1(a),(b)の上方向))への変位を、上述した磁気吸引力の場合と同様に大幅に低減、若しくは完全に排除させることができる。
【0082】
なお、この場合、移動テーブル6自体の重量や、当該移動テーブル6のIF取付部6wに付加される各種のインターフェースの重量などが垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)の下向きへ作用するため、例えば、かかる反発力が当該IF取付部6wに対して垂直方向(図1(a),(b)の上下方向)の上向きに変位を与えるほど作用することは、上述した吸引力の場合と比較して極めて少ない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置の構成例を示す図であって、(a)は、正面図、(b)は、側面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係るリニアモータ式テーブル装置の構成例を示す正面図。
【図3】従来のリニアモータ式テーブル装置の構成例を示す図であって、(a)は、正面図、(b)は、側面図。
【符号の説明】
【0084】
2 基台
4 直動案内装置
6 移動テーブル
6s 切り欠き
6w インターフェース取付面
8 リニアモータ機構
40 ガイドレール
42 スライダ
80 リニアモータ固定子
82 リニアモータ可動子
A リニアモータ式テーブル装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、当該基台に設けられた直動案内装置と、当該直動案内装置に案内されて往復移動可能な移動テーブルと、当該移動テーブルを往復移動及び所定の位置で停止させるためのリニアモータ機構とを備えており、直動案内装置には、所定方向に延出するガイドレールと、前記移動テーブルが固定され、当該ガイドレールに沿って往復移動するスライダとが設けられ、リニアモータ機構は、ガイドレールに沿って基台に延設されたリニアモータ固定子と、当該リニアモータ固定子と所定の間隔を空けて対向して移動テーブルに固定されたリニアモータ可動子とを備え、リニアモータ固定子からリニアモータ可動子に対し、反発力及び吸引力を交互に作用させて推進力を与えることで、前記移動テーブルを往復移動させるリニアモータ式テーブル装置であって、
移動テーブルには、移動対象物を載置するためのインターフェースを取り付ける取付部が、当該移動テーブルの一部に切り欠きを形成して設けられており、当該切り欠きを形成することで、移動テーブルは、弾性変形可能に構成され、少なくとも前記吸引力の当該移動テーブルに対する作用を、弾性変形して吸収していることを特徴とするリニアモータ式テーブル装置。
【請求項2】
移動テーブルは、リニアモータ可動子を固定するための可動子テーブルと、前記取付部が設けられた取付部テーブルとに分割して構成されているとともに、これらを所定の間隔を空けた非接触状態に組み合わせて構成されており、当該可動子テーブルは、前記吸引力の作用を弾性変形して吸収していることを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ式テーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−75666(P2008−75666A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252020(P2006−252020)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】