説明

リパーゼ変異体

本発明は、変異体リパーゼ、好ましくは親リパーゼにおいて定義される1又は複数の領域に突然変異を導入することにより得られる低められた臭気生成傾向を有する変異体を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、リパーゼ変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景:
リパーゼは、例えば布及び他の織布から脂質又は脂肪しみを除去するための洗剤酵素として、パン及び他のベークド製品のための生地への添加物として有用である。従って、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)(別名ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、EP258068号及びEP305216号)に由来するリパーゼは、商品名Lipolase(商標)(NOVO Nordisk A/Sの製品)としての洗剤使用のために市販されている。WO0060063号は、洗剤溶液において特に良好な第一洗浄性能を有するT.ラヌギノサスの変異体を記載する。WO9704079号、WO9707202号及びWO0032758号はまた、T. ラヌギノサスリパーゼの変異体を開示する。
【0003】
いくつかの出願においては、臭気生成短鎖脂肪酸の形成を最少にすることに興味を示している。従って、リパーゼを有する洗濯洗剤が時々、牛乳により汚された布に結合される残留臭気を除去することが知られている(EP430315号)。WO02062973号は、リパーゼ変異体を開示し、ここで臭気発生がC−末端延長の結合により低められた。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約:
本発明者は、リパーゼの一定の領域/位置における突然変異の導入により、リパーゼの性質又は特徴を改良することが可能であることを見出した。
好ましい態様においては、本発明は、洗剤への使用のための改良された性質を有するリパーゼに関する。例えば、本発明は、親リパーゼにおいて同定される1又は複数の領域への突然変異の導入により得られる、臭気発生への低められた傾向を有する変異体を供給する。もう1つの好ましい態様においては、本発明は、親リパーゼに比較して、C−末端延長の結合を伴わないで臭気発生についての低められた可能性を有するリパーゼ変異体を供給する。
【0005】
好ましい観点においては、本発明は、本発明のリパーゼ変異体をコードするDNA配列、前記DNA配列を有する発現ベクター、及び前記DNA配列又は発現ベクターを含む形質転換された宿主細胞に関する。
もう1つの観点においては、本発明は、本発明のリパーゼ変異体の生成方法を提供する。
【0006】
配列表:
配列番号1は、サーモミセス・ラヌギノサスからのリパーゼをコードするDNA配列を示す。
配列番号2は、サーモミセス・ラヌギノサスからのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、アブシジア・レフレキサ(Absidia reflexa)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号4は、アブシジア・コリムベフェラ(Absidia corymbefera)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、リズムコル・ミエヘイ(Rhizmucor miehei)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
【0007】
配列番号6は、リゾパス・オリザエ(Rhizopus oryzae)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号8は、アスペルギラス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号10は、フサリウム・ヘテロポラム(Fusanum heterosporum)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
【0008】
配列番号11は、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzea)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号12は、ペニシリウム・カメムベルチ(Penicilliumum camemberill)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号13は、アスペルギラス・フォエチダス(Aspergillus foetidus)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号14は、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号15は、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzea)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
配列番号16は、ランデリナ・ペニサポラ(Landerina penisapora)からのリパーゼのアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
発明の特定の記載:
親リパーゼ
いずれかの適切な親リパーゼが使用され得る。好ましい態様においては、親リパーゼは菌類リパーゼであり得る。もう1つの好ましい態様においては、親リパーゼは、セクション“相同性及び一列整列”において定義されるように、配列番号2で示されるT. ラヌギノサスリパーゼの配列に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の相同性を有するアミノ酸配列を有するリパーゼであり得る。
【0010】
親リパーゼは、酵母ポリペプチド、例えばカンジダ(Candida)、クルイベロミセス(Kiuyveromyces)、ピチア(Pichia)、サッカロミセス(Saccharomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharornyces)又はヤロウィア(Yarrowia)ポリペプチド;又はより好ましくは糸状菌ポリペプチド、例えばアクレモニウム(Acremonium)、アスペルギラス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureobasidium)、クリプトコーカス(Cryptococcus)、フィロバシジウム(Filobasidium)、ヒューミコラ(Humicola)、マグナポルテ(Magnaporthe)、ムコル(Mucor)、マイセリオプソラ(Myceliophthora)、ネオカリマスフィックス(Neocallimastix)、ネウロスポラ(Neurospora)、パエシロミセス(Paecilomyces)、ペニシリウム(Penicillium)、シゾフィラム(Schizophyllum)、タラロミセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladium)又はトリコダーマ(Trichoderma)ポリペプチドであり得る。
【0011】
好ましい観点においては、親リパーゼは、リパーゼ活性を有する、サッカロミセス・カリスベルゲンシス(Saccharomyces carisbergensis)、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ジアスタチカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロミセス・ドウグラシ(Saccharomyces douglasii)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kiuyveri)、サッカロミセス・ノルベンシス(Saccharamyces norbensis)又はサッカロミセス・オビホルミス(Saccharomyces oviformis)ポリペプチドである。
【0012】
もう1つの好ましい観点においては、親リパーゼは、アスペルギラス・アキュレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギラス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギラス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギラス・ホエチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギラス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギラス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、アスペルギラス・フルビゲンシス(Aspergillus furbigensis)、フサリウム・バクトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クロックウェレンズ(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearium)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レチキュラタム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusariumu roseum)、フサリウム・サムブシウム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロサム(Fusarium torulosaum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フサリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、ヒュミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)(別名ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa))、ムコル・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオプラソ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ネウロスポラ・クラサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、トリコダーマ・ハルジアナル(Trichoderma harzianum)、トリコダーマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコダーマ・ロンジブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコダーマ・レセイ(Trichoderma reesei)、又はトリコダーマ・ビリデ(Trichoderma viride)ポリペプチドである。
【0013】
もう1つの好ましい観点においては、親リパーゼは、サーモミセスリパーゼである。
より好ましい観点においては、親リパーゼは、サーモミセス・ラヌギノサスリパーゼである。さらにより好ましい態様においては、親リパーゼは、配列番号2のリパーゼである。
【0014】
変異体リパーゼ
本発明のリパーゼ変異体は、親リパーゼに比較して、
a)領域Iにおける少なくとも2つの置換;
b)領域IIにおける少なくとも1つの置換;
c)領域III における少なくとも1つの置換;及び
d)領域IVにおける少なくとも1つの置換、
から成る群から選択された少なくともも3個の置換を含んで成り、そしてリパーゼ活性を有する。
【0015】
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、サーモミセスリパーゼ、より好ましくはT.ラヌギノサスリパーゼの変異体、及びさらにより好ましくは、配列番号2で示されるT. ラヌギノサスリパーゼである。好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0016】
変異体リパーゼは、次の親生物の1つに由来するか又はそれらから得られる遺伝子によりコードされる親リパーゼの変異体であり得る:カンジダ、クルイベロミセス、ピチア、サッカロミセス、シゾサッカロミセス又はヤロウィア、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィロバシジウム、ヒューミコラ、マグナポルテ、ムコル、マイセリオプソラ、ネオカリマスフィックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、ピロマイセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ。
【0017】
好ましい観点においては、変異体リパーゼは、次の親生物の1つに由来するか又はそれらから得られる遺伝子によりコードされる親リパーゼに対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する:カンジダ、クルイベロミセス、ピチア、サッカロミセス、シゾサッカロミセス又はヤロウィア、アクレモニウム、アスペルギラス、アウレオバシジウム、クリプトコーカス、フィロバシジウム、ヒューミコラ、マグナポルテ、ムコル、マイセリオプソラ、ネオカリマスフィックス、ネウロスポラ、パエシロミセス、ペニシリウム、ピロマイセス、シゾフィラム、タラロミセス、サーモアスカス、チエラビア、トリポクラジウム又はトリコダーマ。
【0018】
好ましい観点においては、変異体リパーゼは、変異体サッカロミセス・カリスベルゲンシス、サッカロミセス・セレビシアエ、サッカロミセス・ジアスタチカス、サッカロミセス・ドウグラシ、サッカロミセス・クルイベリ、サッカロミセス・ノルベンシス又はサッカロミセス・オビホルミスである。好ましい態様においては、変異体リパーゼは、サッカロミセス・カリスベルゲンシス、サッカロミセス・セレビシアエ、サッカロミセス・ジアスタチカス、サッカロミセス・ドウグラシ、サッカロミセス・クルイベリ、サッカロミセス・ノルベンシス又はサッカロミセス・オビホルミスに由来するか又はそれらから得られる遺伝子によりコードされる親リパーゼに対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
【0019】
親リパーゼは、次の親生物の1つに由来するか又はそれから得られる遺伝子によりコードされる親リパーゼの変異体であり得る:アスペルギラス・アキュレアタス、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・フミガタス、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカス、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー、アスペルギラス・オリザエ、アスペルギラス・フルビゲンシス、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クロックウェレンズ、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス、フサリウム・ベネナタム、ヒュミコラ・インソレンス、サーモミセス・ラヌギノサス(別名ヒューミコラ・ラヌギノサ)、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプラソ・サーモフィラ、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、トリコダーマ・ハルジアナル、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ、又はトリコダーマ・ビリデ。
【0020】
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、次の親生物の1つに由来するか又はそれらから得られる遺伝子によりコードされる親リパーゼに対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する:アスペルギラス・アキュレアタス、アスペルギラス・アワモリ、アスペルギラス・フミガタス、アスペルギラス・ホエチダス、アスペルギラス・ジャポニカス、アスペルギラス・ニジュランス、アスペルギラス・ニガー、アスペルギラス・オリザエ、アスペルギラス・フルビゲンシス、フサリウム・バクトリジオイデス、フサリウム・セレアリス、フサリウム・クロックウェレンズ、フサリウム・クルモラム、フサリウム・グラミネアラム、フサリウム・グラミナム、フサリウム・ヘテロスポラム、フサリウム・ネグンジ、フサリウム・オキシスポラム、フサリウム・レチキュラタム、フサリウム・ロゼウム、フサリウム・サムブシウム、フサリウム・サルコクロウム、フサリウム・スポロトリキオイデス、フサリウム・スルフレウム、フサリウム・トルロサム、フサリウム・トリコセシオイデス、フサリウム・ベネナタム、ヒュミコラ・インソレンス、サーモミセス・ラヌギノサス(別名ヒューミコラ・ラヌギノサ)、ムコル・ミエヘイ、ミセリオプラソ・サーモフィラ、ネウロスポラ・クラサ、ペニシリウム・プルプロゲナム、トリコダーマ・ハルジアナル、トリコダーマ・コニンギ、トリコダーマ・ロンジブラキアタム、トリコダーマ・レセイ、又はトリコダーマ・ビリデ。
【0021】
もう1つの好ましい観点においては、親リパーゼは、サーモミセスリパーゼである。
より好ましい観点においては、親リパーゼは、サーモミセス・ラヌギノサスリパーゼである。さらにより好ましい態様においては、親リパーゼは、配列番号2のリパーゼである。
【0022】
領域及び置換の同定
下記領域I〜領域IVにおいて言及される位置は、配列番号2におけるアミノ酸残基の位置である。異なったリパーゼにおけるその対応する(又は相同の)位置を見出すためには、“相同性及び一列整列”に記載される方法が使用される。
【0023】
領域Iにおける置換
領域Iは、N末端残基E1を取り囲むアミノ酸残基から成る。この領域においては、複数の陽性アミノ酸により親リパーゼのアミノ酸を置換することが好ましい。リパーゼ変異体は、領域Iにおいては少なくとも2つの置換、例えば領域Iにおいて3,4,5又は6個の置換を含むことができる。
次の位置に対応するアミノ酸残基が領域Iにより包含される:2〜11及び223〜239。次の位置が特に興味ある対象である:1、4、8、11、223、227、229、231、233、234、236。
【0024】
特に、次の置換が同定されている:X1N/*、 X4V, X227G、X231R及びX233R。
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
最も好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2のアミノ酸を有するリパーゼの変異体である。
【0025】
領域IIにおける置換
領域IIは、アシル鎖の片側及びアルコール部分の片側上で基質と接触してのアミノ酸残基から成る。この領域においては、より陽性アミノ酸又は低い疎水性のアミノ酸により親リパーゼのアミノ酸を置換することが好ましい。
リパーゼ変異体は、領域IIにおいては少なくとも1つの置換、例えば領域IIにおいて2、3、4、5又は6個の置換を含むことができる。
【0026】
次の位置に対応するアミノ酸残基が領域IIにより包含される:202〜211及び249〜269。次の位置が特に興味ある対象である:202、210、211、253、264、255、256。
特に、次の置換が同定されている:X202G、X210K/W/A、X255Y/V/A 及びX256K/R 及びX259G/M/Q/V。
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
最も好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2のアミノ酸を有するリパーゼの変異体である。
【0027】
領域III における置換
領域III は、柔軟な構造体を形成し、そして従って活性部位中への基質の入手を可能にするアミノ酸残基から成る。この領域においては、より陽性アミノ酸又は低い疎水性のアミノ酸により親リパーゼのアミノ酸を置換することが好ましい。
リパーゼ変異体は、領域III においては少なくとも1つの置換、例えば領域III において2、3、4、5又は6個の置換を含むことができる。
次の位置に対応するアミノ酸残基が領域III により包含される:82〜102。次の位置が特に興味ある対象である:83、86、87、9O、91、95、96、99。
【0028】
特に、次の置換が同定されている:X83T、 X86V 及び X90A/R。
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
最も好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2のアミノ酸を有するリパーゼの変異体である。
【0029】
領域IVにおける置換
領域IVは、表面に静電気的に結合するアミノ酸残基から成る。この領域においては、より陽性アミノ酸により親リパーゼのアミノ酸を置換することが好ましい。
リパーゼ変異体は、領域IVにおいては少なくとも1つの置換、例えば領域IVにおいて2、3、4、5又は6個の置換を含むことができる。
【0030】
次の位置に対応するアミノ酸残基が領域IVにより包含される:27及び54〜62。次の位置が特に興味ある対象である:27、56、57、58、60。
特に、次の置換が同定されている:X27R、X58N/AG/T/P 及び X60V/S/G/N/R/K/A/L。
好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2に対して少なくとも50%、 60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有する。
最も好ましい態様においては、変異体リパーゼは、配列番号2のアミノ酸を有するリパーゼの変異体である。
【0031】
他の位置でのアミノ酸
親リパーゼは任意には、追加の変更、他のアミノ酸の置換、例えば親リパーゼに比較して、特に10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下の変更を包含する。例は、親リパーゼの位置24,37, 38, 46, 74, 81, 83, 115, 127, 131, 137, 143, 147, 150, 199, 200, 203, 206, 211, 263,264, 265, 267及び269の1又は複数の位置に対する置換である。特定の態様においては、位置81, 147, 150, 227及び249に対応する位置の少なくとも1つにおいて置換が存在する。好ましい態様においては、少なくとも1つの置換が、X38R、 X81Q/E、X143S/C/N/D/A、X147M/Y、X150G/K、X227G 及びX249R/I/Lから成る群から選択される。
【0032】
変異体は、定義される領域I〜IV外の置換を包含し;定義される領域I〜IV外の置換の数は好ましくは、6以下、例えば5,4,3,2又は1つの置換である。
さらなる置換は例えば、当業界において知られている原理、例えばWO 92/05249号、WO 94/25577号、WO 95/22615号、WO 97/04079号、及びWO 97/07202号に記載される置換に従って製造され得る。
親リパーゼ変異体:
変異体リパーゼは、下記表1に列挙される置換を有する親リパーゼを含む(番号付けについては配列番号2を用いる):
【0033】
【表1】

【0034】
さらなる特定の態様においては、親リパーゼは配列番号2と同一であり、そして従って、表1の変異体は下記の通りであろう:
表2:配列番号2のいくつかの特定の変異体:
【0035】
【表2】

【0036】
アミノ酸修飾についての命名法
本発明のリパーゼ変異体の記載においては、次の命名法が参照を容易にするために使用される:
元のアミノ酸:位置:置換されるアミノ酸
この命名法によれば、例えば位置195でグリシンによるグルタミン酸の置換は、G195Eとして示される。同じ位置でのグリシンの欠失は、G195*として示され、そして追加のアミノ酸残基、例えばリシンの挿入は、G195GKとして示される。
特定のリパーゼが、他のリパーゼに比較して、“欠失”を含み、そして挿入がそのような位置で製造される場合、これは、位置36でのアスパラギン酸の挿入のためには*26Dとして示される。
複数の突然変異は+により分けられ、すなわちR170Y+G195Eは、それぞれアルギニン及びグリシンによりチロシン及びグルタミン酸を、位置170及び195で置換する突然変異を表す。
【0037】
X231は、記載される一列整列方法を適用する場合、位置231に対応する新ポリペプチドにおけるアミノ酸を示す。X231Rは、アミノ酸がRにより置換されることを示す。配列番号2に関しては、XはTであり、そして従って、X231Rは、Rによる位置231でのTの置換を示す。位置(例えば、231)でのアミノ酸がアミノ酸群、例えば“R及びP及びYから成る群から選択されたもう1つのアミノ酸により置換される場合、これはX231R/P/Yにより示されるであろう。
すべての場合、許容されるIUPAC一文字又は三文字アミノ酸略語が使用される。
【0038】
アミノ酸グループ分け
本明細書においては、アミノ酸は、pH10でのそれらの電荷に従って、負に荷電された、正に電荷された、又は電荷的に中性であるとして分類される。従って、負のアミノ酸はE, D, C(システイン)及びY、特にE及びDである。正のアミノ酸は、R, K及びH、特にR及びKである。中性アミノ酸は、ジスルフィド架橋の一部を形成する場合、G, A,V, L, I, P, F, W, S, T, M, N, Q及びCである。同じグループ(負、正又は中性)におけるもう1つのアミノ酸による置換は、保存性置換と呼ばれる。
中性アミノ酸は、疎水性又は非極性(ジスルフィド架橋の一部としてG,A,V, L, I, P, F, W及び C)及び親水性又は極性(S, T, M, N, Q)に分けられ得る。
【0039】
アミノ酸同一性
2種のアミノ酸配列又は2種のヌクレオチド配列間の関係は、パラメーター“同一性”により説明される。
本発明に関しては、2種のアミノ酸配列の一列整列は、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0からのNeedleプログラムを用いることにより、決定される。そのNeedleプログラムは、Needleman, S.B. and Wunsch, C. D. (1970) J. MoI, Biol, 48, 443-453に記載される包括的一列整列アルゴリズムを包含する。使用される置換マトリックスは、BLOSUM62であり、ギャップ開放ペナルティーは10であり、そしてギャップ延長ペナルティーは0.5である。
【0040】
本発明のアミノ酸配列(“本発明の配列”、例えば配列番号2のアミノ酸1〜269)と、異なったアミノ酸配列(“外来性配列”)との間の同一性程度は、“本発明の配列”の長さ、又は最も短い“外来性配列”長さにより割り算された、2種の配列の一列整列における正確な適合の数として計算される。
【0041】
正確な適合は、“本発明の配列”及び“外来性配列”がオーバーラップの同じ位置で同一のアミノ酸残基を有する場合、存在する。配列の長さは、配列におけるアミノ酸残基の数である(例えば、配列番号2の長さは269である)。
上記方法は、同一性及び相同性の計算のために及び一列整列のために使用され得る。本発明においては、相同性及び一列整列は、下記のようにして計算された。
【0042】
相同性及び一列整列
本発明に関しては、相同性の程度は、当業界において知られているコンピュータープログラム、例えばGCGプログラムパケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1994, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711) (Needieman, S.B. and Wunsch. CD,, (1970), Journal of Molecular Bioiogy: 4S1443-45)に供給されるGAPにより、ポリペプチド配列比較について次の設定を有するGAPを用いて、適切に決定され得る:3.0のGAP創造ペナルティー及び0.1のGAP延長ペナルティー。
【0043】
本発明においては、アブシジア・レフレキサ(Absidia reflexa)、アブシジア・コリムベフェラ(Absidia corymbefera)、リズムコル・ミエヘイ(Rhizmucor miehei)、リゾパス・デフェマル(Rhizopus deiemar)、アスペルギラス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギラス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・ヘテロポラム(Fusanum heterosporum)、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzea)、ペニシリウム・カメムベルチ(Penicilliumum camemberill)、アスペルギラス・フォエチダス(Aspergillus foetidus)、サーモミセス・ラヌギサス(類似語:ヒューミコラ・ラヌギノサス)及びランデリナ・ペニサポラ(Landerina penisapora)のリパーゼ配列における対応する(又は相同の)位置が、図1に示される一列整列により定義されている。
【0044】
一列整列に示されないリパーゼ配列における相同位置を見出すためには、興味ある配列が図1に示される配列と共に一列整列される。新規配列は、GAPプログラムにより見出されるほとんどの相同配列に対するGAP一列整列を用いることにより、図1における本発明の一列整列に一列整列される。GAPは、GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version B1 August 1994, Genetics Computer 0 Group: 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711) (Needieman, S.B. and Wunsch, CD,, (1970), Journal of Moiecuiar Biology, 48, 443-45)に供給される。次の設定がポリペプチド配列比較のために使用される:3.0のGAP創造ペナルティー及び0.1のGAP延長ペナルティー。
【0045】
ハイブリダイゼーション
本発明はまた、(i)配列番号1のヌクレオチド178〜660、(ii)配列番号1のヌクレオチド178〜660に含まれるcDNA配列、(iii)(i)又は(ii)の副配列、又は(iv)(i)、(ii)又は(iii)の相補的鎖と、非常に低い、好ましくは低い、より好ましくは中位の、より好ましくは中位の高い、さらにより好ましくは高い、及び最も好ましくは非常に高い緊縮条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる、リパーゼ活性を有する単離されたポリペプチドにも関する(J. Sambrook, E.R Fritsch, and T. Ivianiatus, 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor, New York)。配列番号1の副配列は、少なくとも100個の連続したヌクレオチド又は好ましくは少なくとも200個の連続したヌクレオチドを含む。さらに、副配列は、リパーゼ活性を有するポリペプチドフラグメントをコードすることができる。
【0046】
少なくとも100個の長さのヌクレオチドの長いプローブに関しては、非常に低い〜非常に高い緊縮条件は、5×SSPE, 0.3%のSDS、200μg/mlの剪断され、そして変性されたサケの精子DNA、及び25%のホルムアミド(非常に低い及び低い緊縮性に関する)、35%のホルムアミド(中位及び中位の高い緊縮性に関する)、又は50%ホルムアミド(高い及び非常に高い緊縮性に関する)のいずれかでの42℃での、最適には12〜24時間の標準のサザンブロット方法に従ってのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションとして定義される。
【0047】
少なくとも100個のヌクレオチドの長いプローブに関しては、キャリヤー材料は最終的に、2×SSC、0.2%のSDSにより、好ましくは少なくとも45℃(非常に低い緊縮性)、より好ましくは少なくとも55℃(中位の緊縮性)、より好ましくは少なくとも60℃(中位の高い緊縮性)、さらにより好ましくは少なくとも65℃(高い緊縮性)及び最も好ましくは少なくとも70℃(非常に高い緊縮性)で、それぞれ15分間、3度洗浄される。
DNA配列、発現ベクター、宿主細胞、リパーゼの生成:
【0048】
本発明は、本発明のリパーゼをコードするDNA配列、前記DNA配列を有する発現ベクター、及び前記DNA配列又は発現ベクターを含む形質転換された宿主細胞を供給する。それらは、当業界において知られている方法により得られる。
本発明はまた、形質転換された宿主細胞を、リパーゼの形成のために助けになる条件下で培養し、そして得られるブイヨンからリパーゼを回収することによるリパーゼの生成方法を提供する。前記方法は、当業界において知られている原理に従って実施され得る。
【0049】
リパーゼ活性
中性pHでのトリブチリンに対するリパーゼ活性(LU)
リパーゼのための基質は、乳化剤としてアラビアガムを用いて、トリブチリン(グリセリントリブチレート)を乳化することにより調製される。pH7又は9及び30℃でのトリブチリンの加水分解に続いて、pH−安定滴定実験が行われる。1単位のリパーゼ活性(1LU)は、pH7で1分当たり1μモル酪酸を開放できる酵素の量に等しい。
【0050】
ベネフィットリスク(Benefit Risk)
悪臭についての低められた危険性に比較される性能を説明するベネフィットリスクは、下記に記載されるように、BR=RPavg/Rとして定義される。
使用:
本発明の酵素は、産業的使用に見出すことができ、例えば脂肪物質の除去のために洗剤組成物に含まれ得る。
【実施例】
【0051】
緩衝液及び基質として使用される化学物質は、少なくとも試薬品種の商品であった。
培地及び溶液:
製品 商品名
LAS: Surfac PS
ゼオライトA Wessalith P
【0052】
使用される他の成分は、標準の実験用試薬である。
材料:
製品 供給者
EMPA221 EMPA St. Galien, Lerchfeldstrasse 5, CH-9014 St. Gallen, Switzerland
【0053】
例1酵素の生成
リパーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを構成し、そして当業界の標準方法を用いて適切な宿主細胞を形質転換する。
発酵を、34℃の一定の培地温度及び1.2Lの開始体積を用いて、供給バッチ発酵として実施する。培地の初期pHは、6.5に設定される。pHが7.0に高められると、この値は、10%のH3PO4の添加を通して維持される。培地における溶解された酵素のレベルを、撹拌速度を変更し、そして1.0L空気/L培地/分の固定された通気速度を用いることにより調節する。供給物添加速度を、全供給バッチ相の間、一定レベルで維持する。
【0054】
バッチ培地は、炭素源としてのマルトースシロップ、窒素源としてのウレア及び酵母抽出物、及び微量金属及び塩の混合物を含む。供給バッチ相の間、連続して添加される供給物は、炭素源としてマルトースシロップを含み、ところが酵母抽出物及びウレアは、窒素の十分な供給を確保するために、添加される。
リパーゼの精製を、当業界において知られている標準方法の使用により、例えばEP0851913EP、例3に記載のように、発酵上清液を濾過し、そして続く疎水性クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーにより、実施することができる。
【0055】
例2相対的性能(RP)の計算のためのAMSA(自動機械応力アッセイ)
本出願の酵素変異体を、自動機械応力アッセイ(AMSA)を用いて試験する。AMSA試験により、大量の少体積の酵素−洗剤溶液の洗浄性能を試験することができる。AMSAプレートは、試験溶液のための多くのスロット、及びすべてのスロット開口に対して洗浄される布スワッチを強く絞る蓋を有する。洗浄時間の間、プレート、試験溶液、布及び蓋を、激しく振盪し、試験溶液と布とを接触し、そして機械的応力を適用する。さらなる説明のためには、WO02/42740号(特に“特定方法の態様”、23−24ページ)を参照のこと。洗剤試験溶液を含む容器は、金属プレートにおける円柱状の穴(6mmの直径、10mmの深さ)から成る。汚された布(試験材料)が金属プレートの上部に存在し、そして容器上のフタ及びシールとして使用される。もう1つの金属プレートが汚された布の上部に存在し、個々の容器からのいずれかのこぼれを回避する。汚された布と共に2つの金属プレートを、2mmの振動を伴って30Hzの振動数で上下に震動する。
【0056】
アッセイを、下記に特定される実験条件下で行なう:
【表3】

【0057】
クリーム−うこんスワッチを、100gのクリーム(38%の脂肪、Arla, Denmark)と共に5gのうこん(Santa Maria, Denmark)を、50℃で混合することにより調製し、その混合物をこの温度で約20分間、放置し、そして濾過し(50℃)、いずれかの末溶解粒子を除去する。混合物を20℃に冷却し、織られた綿スワッチEMPA221を、クリーム−うこん混合物に含浸し、そしてその後、室温で一晩、乾燥し、そして使用まで凍結する。クリーム−うこんスワッチの調製は、特許出願WO2006/125437号に開示する。
【0058】
酵素変異体の性能を、特定酵素変異体により洗浄される布サンプルの色彩の明るさとして測定する。明るさはまた、白色光により照らされる場合、布サンプルから反射される光の強度としても表され得る。布が汚れる場合、反射される光の強度は、きれいな布の強度よりも低い。従って、反射される光の強度が、酵素変異体の洗浄性能を測定するために使用され得る。
【0059】
色の測定を、洗浄された布サンプルの像を捕獲するために使用される専門平台スキャナー(PFU DL2400 pro)により行う。走査を、200dpiの解像度、及び24ビットの出力カラーデプト(output color depth)により行った。正確な結果を得るために、スキャナーは時折、kodak反射IT8標的物により構成される。
【0060】
走査された像から光強度についての値を得るために、特別に企画されたソフトフェアを用いる(Novozymes Color Vector Analyzer)。そのプログラムは、像から24ビット画素値を再生し、そして赤、緑及び青(RGB)についての値に、それらを転換する。強度値(Int)を、ベクターとしてRGB値を一緒に加え、そして次に、得られるベクターの長さを計ることにより計算する:
【0061】
【数1】

【0062】
変異体の洗浄性能(P)を、下記式に従って計算する:
P=Int(v)-Int(r)
式中、Int(v)は、酵素により洗浄された布表面の光強度値であり、そして
Int(r)は、酵素なしで洗浄された布表面の光強度値である。
【0063】
相対的性能の評点を、定義に従ってAMSA洗浄の結果として与える:
相対的性能の評点(RP)は、参照酵素に対する試験される酵素変異体の性能(P)を要約する:
RP=P(試験酵素)/P(参照酵素)
RPavgは、すべての4種の酵素濃度(0.125、0.25、0.5、1.0mg ep/l)で参照酵素に比較しての平均の相対的性能を示す:
RPavg=avg(RP(0.125)、RP(0.25)、RP(0.5)、RP(1.0))
【0064】
変異体は、それが参照よりも良好に遂行する場合、改良された洗浄性能を示すと見なされる。
本発明においては、参照酵素は、置換T231R+N233Rを有する配列番号2のリパーゼである。
【0065】
例3危険因子(Risk Factor)の計算のためのGC(ガスクロマトグラフィー)
リパーゼ洗浄されたスワッチからの酪酸開放を、次の方法を用いて、固相マイクロ抽出ガスクロマトグラフィー(SPME-GC)により測定した。1mg/lのリパーゼを含む、表3における特定された溶液により洗浄された4種の布片(直径5mm)をガスクロマトグラフ(GC)バイアルに移した。サンプルを、Stabilwax−DA w/Integra−Guardカラム(30m、0.32mmID及び0.25μmのdf)及びCarboxen PDMS SPME繊維(75μm)を備えたVarian 3800GC上で分析した。個々のサンプルを40℃で10分間プレインキュベートし、続いて、布片上のヘッドスペースにおけるSPME繊維により20分間サンプリングした。続いて、サンプルをカラム上に注入した(インジェクター温度=250℃)。カラム流=2mlのヘリウム/分。カラムオーブン温度グラジエント:0分=40℃、2分=40℃、22分=240℃、32分=240℃。酪酸を、FID検出により検出し、そして酪酸の量を、酪酸標準曲線に基づいて計算した。
【0066】
リパーゼ変異体の危険性能臭気(Risk Performance Odour)Rは、リパーゼ変異体により洗浄されたスワッチからの開放される酪酸の量と、置換T231R+N233Rを有する、配列番号2のリパーゼ(参照酵素)により洗浄されたスワッチからの開放される酪酸の量との間の比であり、ここで両値は、非リパーゼにより洗浄されたスワッチからの開放される酪酸の量について補正されている。変異体の危険性(R)は、下記式に従って計算される:
【0067】
臭気=ブランクのために補正された1mgの酵素タンパク質/lで発生された、測定されたμgでの酪酸
〔α試験酵素〕=〔臭気試験酵素〕−〔ブランク〕
〔α参照酵素〕=〔臭気参照酵素〕−〔ブランク〕
R=α試験酵素参照酵素
変異体は、R因子が1よりも低い場合、参照に比較して、低められた臭気を示すと見られる。
【0068】
例4280nmでの吸光度に対する活性(LU)
280nmでの吸光度に対するリパーゼの活性を、次のアッセイにより決定する:
LU/A280
リパーゼの活性を、上記セクションのリパーゼ活性におけるようにして決定する。280nmでのリパーゼの吸光度を測定し(A280)、そして比LU/A280を計算する。相対的LU/A280を、参照酵素のLU/A280により割り算された変異体のLU/A280として計算する。本発明においては、参照酵素は、置換T231R+N233Rを有する、配列番号2のリパーゼである。
【0069】
例5BR−ベネフィットリスク
したがって、悪臭についての低められた危険性を比較しての性能を説明するベネフィットリスク因子は下記のとおりに定義される:
BR=RPavg/R
変異体は、BR因子が1よりも高い場合、改良された洗浄性能及び低められた臭気を示すと見なされる。
【0070】
上記方法を適用すると、次の結果が得られた:
【表4】

表4における参照リパーゼ及び変異体7及び8は、WO2000/060063号に記載される。
【0071】
例6BR−ベネフィットリスク
ベネフィットリスクを、表5に列挙される変異体について測定した。ベネフィットリスク因子が、例5に記載される同じ手段で測定され、そしてすべての列挙される変異体について、1以上であることが見出された。
【表5】

【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
【表8】

参照リパーゼは、WO2000/060063号に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1−1】図1−1は、リパーゼの一列整列を示す。
【図1−2】図1−2は、リパーゼの一列整列を示す。
【図1−3】図1−3は、リパーゼの一列整列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)領域Iにおける少なくとも2つの置換;
b)領域IIにおける少なくとも1つの置換;
c)領域III における少なくとも1つの置換;及び
d)領域IVにおける少なくとも1つの置換、
から成る群から選択された少なくとも3個の置換(番号付けについては配列番号2を用いる)を含んで成り、そしてリパーゼ活性を有する親リパーゼの変異体。
【請求項2】
前記親リパーゼの領域Iにおける少なくとも2つの置換が、位置231及び233(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する位置でのアミノ酸の置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項3】
前記親リパーゼの領域Iにおける少なくとも2つの置換が、位置231及び233(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する位置でのアミノ酸のRの置換を含んで成る請求項2記載のリパーゼ変異体。
【請求項4】
前記変異体リパーゼが、配列番号2に対して少なくとも、80%、 85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項5】
前記親リパーゼが、配列番号2のアミノ酸配列を有するリパーゼである請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項6】
前記リパーゼがさらに、配列番号2の位置4及び/又は位置227に対応する位置における置換を含んで成る請求項2記載のリパーゼ変異体。
【請求項7】
前記リパーゼが、X4V及びX227G(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する置換を有する請求項6記載のリパーゼ変異体。
【請求項8】
前記親リパーゼの領域IIにおける少なくとも1つの置換が、位置202, 210, 211, 255及び256(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する置換における置換から成る群から選択された置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項9】
前記親リパーゼにおける少なくとも1つの置換が、X202G、X210K、X211L、X255Y/V、及び X256K(番号付けについては配列番号2を用いる)から成る群から選択される請求項8記載のリパーゼ変異体。
【請求項10】
前記親リパーゼの領域III における少なくとも1つの置換が、位置83、86及び90(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する位置における置換から成る群から選択された置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項11】
前記親リパーゼにおける少なくとも1つの位置が、X83T、X86V及びX90A/R(番号付けについては配列番号2を用いる)から成る群から選択される請求項10記載のリパーゼ変異体。
【請求項12】
前記親リパーゼの領域IVにおける少なくとも1つの置換が、位置27、58及び60(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する位置における置換から成る群から選択された置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項13】
前記親リパーゼの領域IVにおける少なくとも1つの置換が、X27R、X58N/A/G/P/T 及び X60S/V/G/N/R/K/A/L(番号付けについては配列番号2を用いる)から成る群から選択された置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項14】
前記リパーゼ変異体がさらに、位置81、147、150、227及び249(番号付けについては配列番号2を用いる)に対応する位置における置換から成る群から選択された親リパーゼにおける少なくとも1つの置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項15】
前記リパーゼ変異体がさらに、X81Q/E、X147M/Y、X150G 及びX249R/I/L(番号付けについては配列番号2を用いる)から成る群から選択された少なくとも1つの置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項16】
前記リパーゼが、下記置換群:
a) T231R + N233R +I255Y
b) I202G + T231R + N233R
c) I86V + L227G + T231R + N233R + P256K
d) Q4V + S58N + V6OS + T231R + N233R
e) S58N + V60S + I90R + T231R + N233R
f) I90A + T231R + N233R + I255V
g) S58N + V60S + I86V + A150G + L227G + T231R + N233R + P256K
h) S58N + V60S + L147M + F211L + T231R + N233R
i) Q4V + S58A + V6OS + S83T + I86V + A150G + E210K + L227G + T231R + N233R + P256K
j) S58N + V60S + I86V + A150G + L227G + T231R + N233R + P256K、
から選択された置換を含んで成る請求項1記載のリパーゼ変異体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項記載のリパーゼ変異体をコードするDNA配列。
【請求項18】
請求項17記載のDNA配列を有する発現ベクター。
【請求項19】
請求項17記載のDNA配列を含む形質転換された宿主細胞。
【請求項20】
請求項19記載の形質転換された宿主細胞を、リパーゼ変異体の生成の助けになる条件下で培養し、そして得られるブイヨンからリパーゼ変異体を回収することを含んで成る、リパーゼ変異体の生成方法。
【請求項21】
変異体Q4V、S58N/A/G/P/T、I9OR 又は Q249I/Lの少なくとも1つを含んで成る配列番号2の変異体。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【公表番号】特表2009−523455(P2009−523455A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551567(P2008−551567)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/060841
【国際公開番号】WO2007/087508
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(500175602)ノボザイムス,インコーポレイティド (26)
【Fターム(参考)】