説明

リファイナープレート

【課題】 高強度で耐摩耗性に優れたリファイナープレートを提供する。
【解決手段】 リグノセルロース材のメカニカルリファイナーのためのリファイナープレートであって、前記リファイナープレートが、
バーと溝とを有する摩砕表面を備え、前記バーの各々が前縁部を含む上部セクションと、プレートの基板における根元を含む下部セクションとに区分され、
前記バーの上部セクションが、狭い幅と5°未満のドラフト角を有し、
前記バーの下部セクションが、上部セクションの狭い幅よりも広い幅と、前記バーの少なくとも片側の側壁に少なくとも5°のドラフト角を有することを特徴とするリファイナープレート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩砕(リファイニング)ディスクと、摩砕ディスクに使用するプレートセグメントとに関し、特に、ディスクの摩砕エレメントまたはセグメントを規定するバーと溝の形状に関する。前記プレートセグメントは、例えば、摩砕機に使用されて、全ての範囲のコンシステンシー(高、低および中コンシステンシー)のリグノセルロース材を分散・離解し、摩砕し得る。さらに、本発明は、ディスクリファイナー、コニカルリファイナー、二重ディスクリファイナー、二重コニカルリファイナー、円筒リファイナー、二重円筒リファイナーなどの多岐にわたる構造のリファイナー装置に適用可能である。
【0002】
リグノセルロース材、例えば、木材チップや鋸屑や他の木材または植物繊維材は、繊維材を形成する繊維ネットワークから繊維を分離するメカニカルリファイナーによって摩砕される。リグノセルロース材用のディスクリファイナーには、摩砕ディスクまたはディスクセグメントが取り付けられ、これらは、ディスクを形成するように配列されている。上記ディスクは、また、「プレート」とも称される。リファイナーには二枚のディスクが相対して取り付けられ、一方のディスクが他方のディスクに対して回転するようになっている。摩砕すべき繊維材は、一方のディスクにある中央入口から導入され、二枚の摩砕ディスクの間にあるギャップに流入する。ディスクの一方または両方が回転するにつれて、繊維材は、遠心力の作用によってギャップの中を外側に放射状に移動し、ディスクの半径方向外周部から外部に流出する。
【0003】
ディスクの相対する表面は、バーと溝を有する円環状の部分を備える。溝は、セルロース材がディスク表面の間の半径方向に広がる面に沿って移動するための通路を提供する。セルロース材は、また、溝からおよびバーを超えて半径方向の面から外側に移動する。セルロース材がバーを超えて移動するに連れて、セルロース材は相対するディスクの交差バーの間に構成される摩砕ギャップに流入する。バーの交差により、摩砕ギャップ中のセルロース材に力が加わるので、セルロース材中の繊維を分離する作用が生じ、繊維の壁に塑性変形を生じさせる。摩砕ギャップ中で力が繰り返し加わることによって、セルロース材は、摩砕され、繊維が離解・摩砕された状態であるパルプに転化される。
【0004】
バーの前縁部が交差すると、セルロース材はバーの間に「挟み込まれた」状態になる。挟み込みとは、前縁面と相対する交差バーの端部がオーバーラップするときに前縁面と端部によって加えられる力の行為を意味する。バーが相対するディスク上で交差すると、交差するバーの二つの前縁面の間に瞬時的にオーバーラップが生じる。このオーバーラップによって、瞬時的な交差角が形成され、この交差角は、バーの前縁部が及ぼすセルロース材の挟み込みおよび/または被覆能力に重要な影響を与える。
【0005】
図1は、従来の高性能、低コンシステンシー用リファイナープレート14の幾つかのバー10と溝12とを断面で示す。これらのバー10は、一般に、バー高さ/バー幅の比が大きく、ドラフト角がゼロ、もしくはほぼゼロであるという特徴を有する。ドラフト角は、バーの前縁面または後縁面(側壁)16とプレート軸に平行なライン18との間で形成される角である。リファイナープレート14は、17−4PHステンレス鋼合金グループから得られるような単一合金から形成し得る。17−4PH合金から形成されたリファイナープレートは、他の金属合金で形成されたリファイナープレートに比較して、バー高さ/バー幅の比を大きくし易いという特徴がある。バー高さ/バー幅の比がこのように大きいと、バー幅が狭く、バーの根元のコーナーが鋭くなる結果となる。17−4PH合金で形成されたプレートは、高強度を有し、損傷し難いバーを備えるという特徴を有する。
【0006】
ドラフト角がゼロ、狭いバー、そして溝が深いという従来の高性能プレートは、バーの根元20の箇所で過度、かつ耐え得ない応力が生じるおそれがある。バーの損傷、例えば、根元のバーの切断は、特に、プレートが17−4PH合金グループ以外の材質から形成された場合に生じる恐れがある。高強度17−4PH合金で形成されたプレートは、摩耗作用を有する摩砕環境に曝されると、過度に摩耗され、運転寿命が短くなり易いという特徴がある。17−4PH合金以外で形成されたプレートは、この使用合金材が脆い材質であることから、バーと溝のパターン設計に制約が生じ易いという特徴がある。
【0007】
高くて狭いバーには過度な応力が生じるので、従来の高性能バーと溝パターンを有するプレートは、高耐摩耗性ステンレス鋼では実用上形成し得ない。優れた摩耗特性を有するステンレス鋼は、性能要求が厳しくないリファイナープレート設計を行うのには使用されている。しかし、17−4PH合金の強靱性と他のステンレス鋼合金の耐摩耗性とを結合した合金を開発する試みは、これまで成功していない。好適な合金を発見または開発する努力が続けられているにもかかわらず、高性能リファイナープレートパターンは、エネルギー吸収ポテンシャルが不適切である材料(17−4PH以外)で形成すると、依然として壊れ続けている。
【0008】
図2は、別の一つの従来の高性能、低コンシステンシー用リファイナープレート22の断面図である。同断面図は、プレート22のバー24と溝26とを示す。ドラフト角28は、例えば、5°で、これは大きなドラフト角と考えられる。ドラフト角が大きいということは、ドラフト角が小さい、例えば、5°未満のドラフト角のバーに比較して、より多量の材料で形成されたバーとなる結果になる。バーの広い根元部分には、より多量の材料が存在する。
【0009】
大きいドラフト角を有するバーは、バー材料の重量が大きいので、バーの慣性モーメントが大きくなる。バー重量が増加し、慣性が大きくなると、バーの破損に対する抵抗性が向上する。ドラフト角が大きいと、適用可能なバー高さ/バー幅の比が小さくなり、従って、バー端部として取り得る長さも小さくなる。バー高さ/バー幅の比が小さくなり、端部長さも小さくなると、結果として、次のことが一般に生じる。すなわち、エネルギー効率の低下、最適性に劣る繊維品質の発現、および流体処理能力の低下が生ずるが、これらは、プレートの稼働寿命の間に溝の開口領域が、ドラフト角が大きいことによって、非線形的に狭くなるからである。また、ドラフト角が大きいと、バーの前縁部の「鋭さ」が減少し、このことは、プレートの稼働寿命の間に得られるコンシステンシー上の品質に負の影響を与える恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のタイプのプレートだけを形成するのに現在使用されている広範囲の合金材料、例えば、17−4PH合金以外の合金材料で形成し得る高性能リファイナープレートおよびこのプレートを設計する技術に対する長年のニーズが存在していた。さらに、高性能リファイナープレートだけに通常見出される摩砕特性と、向上した耐摩耗性による長い稼働寿命との双方を提供するリファイナープレートに対する長年のニーズが存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、高強度(例えば、一般に高性能プレートに見出されるような高強度)を有するバーを備えた、高耐摩耗性材料から形成されるリファイナープレートを提供するための新規な設計技法が開発された。高耐摩耗性材料は通常リファイナープレートに使用されているが、これらの機能は、17−4PH合金で形成された従来の高性能プレートには存在しない傾向がある。高性能リファイナープレートのために本明細書に開示の設計技法は、17−4PH合金以外の合金で形成されるプレートに適用可能である。本明細書に開示の設計技法を使用することによって、高耐摩耗性を備え、かつ上記の従来のリファイナープレートよりバーの破損の程度が少ないリファイナープレートを設計し得る。
【0012】
本発明の設計技法は、リファイナープレートのバーが、上部セクションと下部セクションの二つの区分を備えていると見なすものである。摩砕バーの上部セクションは摩砕作用を提供する。バーの下部セクションは、セルロース材が摩砕プレートの間を輸送される通路を提供する溝を規定する。バーの上部セクションの設計目的は、高性能摩砕を行うことである。バーの下部セクションの設計目的は、バーに強度を与えることである。バーの上部セクションは、好ましくは、高性能プレートのバー設計を模し、そのようなプレートのバー、例えば、幅が狭く、ドラフト角がゼロまたは小さいバーのプレートの性能を達成するようにすべきである。上部セクションに対する設計目的を達成するため、バーの頂部と上部セクションの領域は、バー幅が狭く、ドラフト角が小さくまたはゼロで、上の端部、例えば、コーナーが鋭いようにし得る。バーの下部セクションの領域に対する設計目的を達成するため、バーの幅を増加し、例えば、ドラフト角を大きくし、バーの根元でコーナーを緩やかな半径とすることによって、バーの根元の鋭いコーナーを避けるようにし得る。バーの下部セクションの設計としては、バーの破損に対して十分耐性があるようにし、例えば、リファイナープレートの底部では比較的厚さを大きくするとともに緩やかな曲面の根元とするのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図3と図4は、それぞれ、バーの上部セクションの作用目的がバーの下部セクションの作用目的とは別個である技法を使用して設計されたリファイナープレート30の4本のバーと3本の溝で示される入口と出口とを示す断面図である。バーの上部セクションと下部セクションの設計目的は、前記の通りである。図3に示されるバー31と32および溝34と36への入口は、リファイナープレート上のバーと溝の部分の半径方向内側の部分にある。図4に示されるバーと溝の出口は、バーと溝の部分の半径方向外側の部分にある。各リファイナープレートは、プレートの面の同心円環状部分に配置された一組または複数組のバーと溝の部分を備え得る。バー31と32は、同様な断面形状を有し得る。バーの一つの31は、他のバー32に対する鏡像の形とし得る。
【0014】
各バー31と32は、2つの別個のセクションを備える。すなわち、(i)上部の摩砕セクション42と(ii)下部の強度セクション44とである。バーの上部セクション42は、ラインKSとバーの上端の間にある。バーの下部セクション44は、ラインKSの下にある。一方のバーの深さ(隣の溝34)は、反対側のバー深さ(隣の溝36)より大きい。上部のバーセクション42は、一般にすべてのバーについて同一で、断面は長方形とし得る。例えば、各バーの上部セクションは、狭く、小さなドラフト角、例えば、1°または2°未満と、鋭い上端部52とを備えるのが好ましい。各バーの下部セクション44(ラインKSの下)は、特に根元50(深溝34の隣)で比較的幅が広く、根元のコーナー半径が、例えば、0.030インチ以上で、ドラフト角が大きく、例えば、少なくとも隣の溝36である一方の側壁では、例えば、5°以上である。
【0015】
バーの下部セクション44は、広くて浅い溝36と狭くて深い溝34とを交互とする溝を規定する。図3と図4に示されるバーは、遷移部(KS)の下では非対称形の側壁を備える。各バーは、隣接バーの同様な側壁の反対側に大きなドラフト角を有する側壁を備える。また、各バーは、同様な側壁と隣接する側壁の反対側に小さなドラフト角を有する側壁を備える。隣接したバーは、互いの鏡像とし得る。
【0016】
以下の式は、前記の設計目的と技法が、リファイナープレートのバー根元で生ずる応力を制限するためにどのように適用されるかを示す。以下の方程式を使用すれば、バーに加えられる相対応力をバー高さに関して計算し得る。
【0017】
【数1】

式中、Mは、モーメント、すなわち、トルクで、バー垂直軸に直角でプレートに平行な方向に加えられる。力(F)は、バー深さ(zz)が0であるバーの上端部に適用してバーに生じる応力を計算する目的のために加えられる。モーメント(M)は、力(定数して扱われる)とバー深さとの関数で、zzはバーの頂部で0で、バーの根元の深さで最大である。パラメーター(y)は、バーの中点(バー深さに沿った)で、バー軸と整合している。パラメーター(w)は、バーの幅である。パラメーターIは、バー質量の面積慣性モーメント(第二慣性モーメント)である。パラメーターσは、力(F)によってバーに加えられる曲げ応力である。
【0018】
標準バー設計と新しいバー設計との比較を、応力について行い、本発明の設計目的の概念を証明した。バー形状については2つのオプション、すなわち、(i)5°のドラフト角を備える通常のバーと、(ii)バー上部の摩砕セクション(zz=0〜zs)に対しては小さなドラフト角で、バー下部(zz=zs〜z(根元))に対しては相当程度大きなドラフト角を備えるバー形状(図3と図4とを参照のこと)を比較した。
以下の計算は、図3と図4に示されるバーと溝の設計が正しいことを示す。
【0019】
【数2】

パラメーターWnewは、バーの幅(w)を決定するために使用され、上式でWnewが決定される。パラメーターwoは、バーの頂部のバー幅である。さらに、σ1は、従来のバー設計(図2を参照のこと)における根元での応力を表す。σ2は、図3と図4に示されるバー設計の摩砕セクションでの応力を表し、σ3は、バーの深さに沿って一定の応力を有するバー設計(以下に記載)の強度付与部分での応力を表す(以下の議論を参照のこと)。上記の計算により、3タイプのブレードにおける最大応力の比が得られる。σ2/σ1とσ3/σ1の比は、1未満であり、従って、最大応力は、図3と図4に示されるバー設計に対しては、標準のドラフト角のバー設計に比較して、等しいか低く、理想的なバー断面であることが示される。
【0020】
理想的なバー形状は、この議論の目的に対しては、バーの頂部から根元まで、または少なくとも遷移線(KS)から根元まで一定の応力を有するバーであるということである。理想的なバーは、バーに生ずる応力が(zz>zsに対して)一定に保持するようにバー幅を増大するバー側壁に対応する曲面形状を備える。理想的なバー形状は、以下の式で規定し得る。
【0021】
【数3】

上式は、バーに生ずる応力が、バーの深さ(zz)に沿って、または少なくともZSから根元までずっと一定である理想的なバーの下部に対するバー幅を決定するための方法の例の一つである。上記の例では、ZSは、ZZ=1.4bで起こる。この場合、bは、バーの頂部でのバー幅である。好ましいのは、上部セクションと下部セクションとの間のバー境界(平均のZS)が、バー幅の1.4倍の20%以内、そして好ましくは5%以内のバー頂部からの距離とすることである。製造バラツキ、特に、鋳造バラツキがあることから、バーパターンにおける特定のポイントでの実際のZSは、実質的に20%超にも変わり得る。前記の平均のZSは、摩砕セクションのすべてのバーに対する平均ZSであって、バーが鋳造後にさらに機械加工された後の平均ZSに基づく。同様に、図3と図4に示されるバーは、バーの頂部で0.065単位のバー幅(b)を有し、KSは、バーの頂部の下0.091単位の位置であるから、KSはbの1.4倍である。
【0022】
zsを超えるバーの頂部からの距離に対するすべてのバー設計で生ずる応力は、次のように計算し得る。
【0023】
【数4】

未知の一定のファクターをすべて1に設定して、提唱されたバー設計の深さに対する相対応力を誘導し得る。図5のグラフに示されるのがそれである。
【0024】
図5は、上記で議論されたバー設計の比較を提供するグラフである。同グラフで、σ1は、従来のバー設計(図2を参照のこと)における深さに沿った(zz=1.5〜4、zzはバー深さ/バー幅の比)応力を表す。σ3は、図3と図4に示されるバー設計における応力を表し、σ5は、バーの深さに沿って一定の応力を有する理想的なバー形状のバーにおける応力を表す。理想的なバー形状に対する応力は、破線ラインであり、KSから根元まで一定である。図3と図4に示されるバーの応力は比較的均一である。従来のバーにおける応力は、KS近くでは小さく、根元(zz=4)に向かって指数的に増大する。従って、バーはそれらの根元で破損し易い。理想的なバーと図3と4に示されるバーに対する根元での応力は、従来のバーの応力であるσ1より実質的に小さい。
【0025】
図5のグラフは、上記の目的で設計されたバー、特に、下部セクションを強度目的で設計し、上部セクションを摩砕目的で設計されたバーでは、標準バー設計の最大応力(σ1)を超えず、一方では、zz=0からzz=zsまでのバーに対して高性能の摩砕セクションを提供し得る。提案されたバー設計は、高性能バー設計の特徴と高耐摩耗設計の特徴とが結合され、従って、より脆い合金の使用が可能となる。
溝領域に生ずる損失(下式のAloss)は、次のように決定し得る。
【0026】
【数5】

深く、広い溝の深さと幅を増大させることによって、溝全部を合わせた領域を調整し、バーの広い下部セクションと、これに交互する狭く、浅い溝とが占める領域を補償し得る。図3と図4に示される例では、深く、広い溝の深さは、0.325単位まで増大され、当該溝の幅は、入口で0.109単位まで、そして出口で0.139単位まで減少される(溝は、入口から出口では幅が増大する。プレートの半径が入口から出口では増大するからである)。これに交互する溝は、広く、浅いものであり、例えば、入口では0.219単位の深さ(z)で、出口では0.260単位の深さで、幅(上部セクションの幅)は入口では0.120単位で、出口では0.154単位である。バーは、広く、浅い溝の下部セクションでは、比較的幅広くなり、バー強度を増大させる。広く、浅い溝の底部の下で、バーは、少なくとも片側でプレート厚い部分で支持される。前記の深い溝は、広く、浅い溝の底部よりさらに比較的深く延びるようにして、リファイナープレートの流体処理能力の増大を図り得る。
【0027】
図6は、本明細書に開示の設計目的と技法を具現化するバーと溝とを備える例示的リファイナープレート70の斜視図である。リファイナープレートは、円環状の金属プレートでも、または他のパイ形状プレート部分と組み合わされて完全な円環状プレートを形成するパイ形状金属プレート部分でも差し支えない。リファイナープレートは、従来のメカニカルリファイナーのディスク上に設置し得る。バーと溝のパターンは、同心円環状の摩砕セクション72、74、および76に配置される。円環状摩砕セクションの各々では、溝は、深い溝と浅い溝とを交互にして配置される。深い溝は、バーの側壁で、すなわち、バーの一つの前縁面と隣接したバーの後縁面で規定し得る。この場合、側壁は小さなドラフト角を有し、溝は実質的に長方形の断面を有する。浅い溝は、隣接したバーの広い厚さに起因して一般に曲面の下部セクションを有し得る。円環状摩砕セクションの一つからの浅い溝は、一般に、半径方向に隣接した摩砕セクションからの浅い溝と整合し得る。同様に、円環状摩砕セクションの一つからの深い溝は、一般に、半径方向に隣接した摩砕セクションの深い溝と整合し得る。さらに、前記深い溝は、一般に従来の高性能リファイナープレートに見出される溝より広く、かつ深くし得る。バーの下部セクションの厚さを広くすると、開口領域はバーの間の溝では少なくなる。開口領域がこのように損失すると、溝がパルプ通す流体処理能力を減少する可能性がある。しかし、バーを広くすることに起因する開口領域の損失は、浅い溝と深い溝とを交互に配置することによって、少なくとも部分的には、補償し得る。
【0028】
原料セルロース材、例えば、木材チップや他のリグノセルロース材を摩砕するのは、少なくとも片側のディスクが回転するペアのディスクの上に相対して設置されたペアのリファイナープレートを備えるリファイナーで処理することによって行われる。これらのプレートの相対する表面は、図6に示されような溝とバーを備える摩砕ゾーンを有する。原料セルロース材が、相対する表面の間を移動すると、繊維は、摩砕セクションに生じる摩砕作用によって離解される。セルロース材は、摩砕プレートの間を移動し、同心円状の摩砕セクション76、74および72を通過し、摩砕ディスクの半径方向の周辺部から外に排出される。
【0029】
以上、本発明は、現在最も実用的で、好ましい態様であると考えられるものに関して記載されたけれども、本発明は、開示された態様に限定されることなく、特許請求の範囲に含まれる多岐にわたる修正や等価の配置も網羅するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来の高性能リファイナープレートのバーと溝の断面図である。
【図2】バーに大きなドラフト角を有する従来のリファイナープレートのバーと溝の断面図である。
【図3】本発明を使用して行われたリファイナープレート設計による4本のバーと3本の溝で示される入口と出口とをそれぞれ示す断面図である。
【図4】本発明を使用して行われたリファイナープレート設計による4本のバーと3本の溝で示される入口と出口とをそれぞれ示す他の断面図である。
【図5】本明細書で記載したバー設計で行われたリファイナープレートのバーに生じる応力を深さに沿って示すグラフである。
【図6】図3と図4に示される設計目的と技法を具現化する例示的リファイナープレートパターンの斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10,24,31,32…バー、12,26,34,36…溝、14,22,70…リファイナープレート、16…後縁面、18…プレート軸に平行なライン、42…バーの上部摩砕セクション、44…バーの下部強度付与部分、50…バーの根元、52…上端部、72,74,76…摩砕セクション。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース材のメカニカルリファイナーのためのリファイナープレートであって、前記リファイナープレートが、
バーと溝とを有する摩砕表面を備え、前記バーの各々が前縁部を含む上部セクションと、プレートの基板における根元を含む下部セクションとに区分され、
前記バーの上部セクションが、狭い幅と5°未満のドラフト角を有し、
前記バーの下部セクションが、上部セクションの狭い幅よりも広い幅と、前記バーの少なくとも片側の側壁に少なくとも5°のドラフト角を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項2】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記バーが、上部セクションと下部セクションとの間に境界を有し、前記境界が、バーの上部セクションから、バーの前縁部に最も近いバーの幅の1.2〜1.6倍である境界までの距離にあることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項3】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記溝が、浅い溝と、浅い溝と交互する深い溝とから成ることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項4】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記深い溝が、実質的に長方形の断面を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項5】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記バーの各々が、第一側壁と、バーの反対側にある第二側壁とを有し、第一側壁が第二側壁より深く前記プレートまで延びていることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項6】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記側壁が、下部セクションにおいて2°未満のドラフト角を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項7】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記下部セクションが、5°未満のドラフト角を有する第二側壁を備えることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項8】
請求項1に記載のリファイナープレートにおいて、前記バーが相対する側壁を備え、バーの上部セクションが両側壁に1°未満のドラフト角を有し、バーの下部セクションが第一側壁に少なくとも5°のドラフト角と、相対する第二側壁に2°未満のドラフト角を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項9】
リグノセルロース材のメカニカルリファイナーのためのリファイナープレートであって、前記リファイナープレートが、
バーと溝とを有する摩砕表面を備え、前記バーの各々が第一側壁と、第一側壁に相対する第二側壁とを備え、そして各バーが前縁部を含む上部セクションと、プレートの基板における根元を含む下部セクションとに区分され、
前記バーの上部セクションが、狭い幅と前記側壁の各々に5°未満のドラフト角を有し、
前記バーの下部セクションが、上部セクションの狭い幅よりも広い幅と、前記第一側壁に少なくとも5°のドラフト角と前記第二側壁に2°以下のドラフト角を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項10】
請求項9に記載のリファイナープレートにおいて、前記バーが、上部セクションと下部セクションとの間に境界を有し、前記境界が、バーの上部セクションから、バーの前縁部に最も近いバーの幅の1.2〜1.6倍である境界までの距離にあることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項11】
請求項9に記載のリファイナープレートにおいて、前記溝が、浅い溝と、前記浅い溝と交互する深い溝とから成ることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項12】
請求項11に記載のリファイナープレートにおいて、前記深い溝が、実質的に長方形の断面を有することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項13】
請求項9に記載のリファイナープレートにおいて、前記第一側壁が、各バーにある第二側壁より深く前記プレートまで延びていることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項14】
請求項9に記載のリファイナープレートにおいて、第一タイプのバーでは、前記第一側壁が前記第一タイプのものの前縁面であり、前記第二側壁が前記第一タイプのものの後縁面であり、そして
前記第一タイプのバーに隣接した第二タイプのバーでは、前記第一側壁が前記第二タイプのものの後縁面であり、前記第二側壁が前記第二タイプのものの前縁面であることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項15】
請求項14に記載のリファイナープレートにおいて、摩砕セクションのバーが、前記第一タイプのバーと前記第二タイプのバーとを交互にして構成されることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項16】
請求項9に記載のリファイナープレートにおいて、前記摩砕セクションが、前記プレート上に設けられた複数の同心円環状摩砕セクションの一つあることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項17】
リグノセルロース材のメカニカルリファイナーのためのリファイナープレートであって、前記リファイナープレートが、
バーと溝とを有する摩砕表面を備え、前記バーの各々が第一側壁と、第一側壁に相対する第二側壁とを備え、そして各バーが前縁部を含む上部セクションと、前記プレートの基板における根元を含む下部セクションとに区分され、
各バーの前記上部セクションが、狭い幅と前記側壁の各々に1°未満のドラフト角を有し、
バーの前記下部セクションが、上部セクションの狭い幅よりも広い幅と、前記側壁の第一側壁に少なくとも5°のドラフト角と前記側壁の第二側壁に2°以下のドラフト角を有し、各バーでは前記第一側壁が第一隣接バーの第一側壁に隣接し、前記第二側壁が第二隣接バーの第二側壁に隣接することを特徴とするリファイナープレート。
【請求項18】
請求項17に記載のリファイナープレートにおいて、前記バーが、上部セクションと下部セクションとの間に境界を有し、前記境界が、バーの上部セクションから、バーの前縁部に最も近いバーの幅の1.2〜1.6倍の範囲である境界までの距離にあることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項19】
請求項17に記載のリファイナープレートにおいて、前記溝が、隣接バーの第一側壁との間の浅い溝と、隣接バーの第二側壁との間の深い溝とから成ることを特徴とするリファイナープレート。
【請求項20】
請求項19に記載のリファイナープレートにおいて、前記深い溝が、前記浅い溝よりも狭いことを特徴とするリファイナープレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−190110(P2008−190110A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22707(P2008−22707)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(502075342)アンドリッツ インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】