説明

リボンケーブル

【課題】 優れた接着性と曲げ性とを併せ持ち、さらに、微小スペースでの2次元曲げ性に加えて3次元的曲げ性をも有し、したがって、配線時の省スペース化を実現できるリボンケーブルを提供することにある。
【解決手段】 内層シースに外層シースより曲げ硬さの低い樹脂を、外層シースに内層シースより表面接着強度の高い樹脂をそれぞれ配して2重シースケーブルとし、さらに、内層シースが露出してなる高屈曲性ケーブル群を、リボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に存在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップマウンター等の産業用ロボットにおいて、主として可動部に用いられるリボンケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットに使用されるケーブルとしては、ポリ塩化ビニル(以下、PVC)またはポリウレタン(以下、PU)を押出し被覆してなる単層シースのリボンケーブルが用いられていた。
元々、リボンケーブルには、良好な曲げ性(曲げ易さ)と安定な接着性とが要求される。しかし、PVC単層シースのリボンケーブルでは、曲げ性には優れているが、接着性に乏しいものが多く、他方PU単層シースのリボンケーブルでは、上記のことと逆のことが言える。
さらに、リボンケーブルの配線に際しては、3次元的曲げ性も要求されるが、従来のリボンケーブルは長手方向に沿って全ての側面が接着固定されているため、配線に際しては、2次元的にしか曲げることが出来ず、それも多大の配線スペースを要する、という欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の第一の課題は、優れた接着性と曲げ性とを併せ持つリボンケーブルを提供することにある。
さらに、本発明の第二の課題は、微小スペースでの2次元曲げ性に加えて3次元的曲げ性をも有し、したがって、配線時の省スペース化を実現できるリボンケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の課題は、内層シースに外層シースより曲げ硬さの低い樹脂を、外層シースに内層シースより表面接着強度の高い樹脂をそれぞれ配して2重シースケーブルとすることにより達成される。
さらに、本発明の第二の課題は、内層シースが露出してなる高屈曲性ケーブル群がリボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に存在させることにより達成される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、以下のような顕著な効果が奏される。
(1) 内層シースに外層シースより曲げ硬さの低い樹脂を、外層シースに内層シースより表面接着強度の高い樹脂をそれぞれ配した2重シースケーブルがリボン化されているので、優れた接着性と曲げ性とが同時に得られる。
(2) 該内層シースをリボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に露出させることにより、該露出部では選択的に高屈曲性ケーブル群が存在することになる。その結果、該露出部の高屈曲性ケーブル群を2次元または3次元的に自在に屈曲させ得るので、配線時の省スペース化が実現される。
【実施例】
【0006】
以下、本発明のリボンケーブルについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るリボンケーブルの好ましい一例を示す平面図である。
図2は、図1のA−A線に沿う横断面図である。
図3は、図1のB−B線に沿う横断面図である。
図1〜図3において、(1)は2重シースの内層シース、(2)は2重シースの外層シース、(3)は隣接するシース(2)同士の接着部、(4)はシース(1)で被覆されたケーブル線である。
上記リボンケーブルにおいて特徴的なことは、内層シース(1)に外層シース層(2)より曲げ硬さの低い樹脂が、外層シース(2)に内層シース(1)より表面接着強度の高い樹脂がそれぞれ配された2重シースケーブルを構成単位としてリボンケーブルを得、その際、内層シース(1)の露出部がリボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に存在していることに在る。
これにより、外層シース(2)同士は表面接着強度が強く、また内層シース(1)露出部は曲げ硬さが低い、という両特性を併せ持ったリボンケーブルとすることができる。また、内層シースの露出部では、各ケーブル(4)が接着フリー状態にあるので、微小スペース下でも2次元または3次元的屈曲配線が自在となる。
【0007】
ここで、2重シースの内層シース(1)を構成する材料としては、PVCが好ましいが、押出し被覆に適した樹脂の中で外層シースより曲げ硬さの低い樹脂を適宜使用すればよい。また、2重シースの外層シース(2)を構成する材料としては、PUが好ましいが、押出し被覆に適した樹脂の中で内層シースより表面接着強度の強い樹脂である限り、特に制約されることはない。また、ケーブル線(4)としては、導体に絶縁体を押出し被覆してなる電線の撚り線、該撚り線にさらにテープ巻きやシールドを施したもの、あるいは光ファイバ束等、用途に応じて適宜採用される。
このような2重シースケーブルは並列状態で、長手方向に沿って接着されてリボン化される。接着手段としては、接着剤を使用した接着、熱融着、溶剤による溶着等、使用する外層シースの樹脂に合わせて表面接着強度が強くできる手段を適宜採用すればよい。押出し設備の新設が可能な場合、内層シース(1)を有するケーブル群を並列状態で一挙に外層シース(2)を押出し被覆してもよい。
本発明のリボンケーブルは、現実には、図1〜図3に示すように、内層シース(1)の露出部をリボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に存在させるような構造として配線される。通常、この露出部を得るにはシース(2)をリボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に剥ぎ取ればよい。剥ぎ取り作業自体は、請求項1に記載したリボンケーブルの製造時あるいは配線時に行ってもよい。
【0008】
次に、図1に示したリボンケーブルの製造方法の一例について述べる。
まず、リボンケーブルの使用用途に応じたケーブル線(4)を用意し、その外周に内層シース(1)を押出し被覆する。続いて、その外周に外層シース(2)を押出し被覆し、2重シースケーブルを作成する。次に、得られた2重シースケーブルの複数本を並列状態に揃えてから、長手方向に沿って隣接するシース(2)同士を接着加工する。この接着手段としては、融着加工が好ましく、その一態様を以下に挙げる。
まず、2重シースケーブルを2本並べて、該ケーブルの隣り合うシース(2)の表面同士を融着させる部分に、該シース(2)を構成する樹脂の溶融温度以上の温風を吹き付けて表面を溶融させる。つぎに、溶融させた表面と反対側の側面から外力を加えて2本の2重シースケーブル同士の溶融面を押し付けて張り合わせる。最後に、室温にて冷却して融着ケーブルを得る。つづいて、該融着ケーブルと新たに用意した1本の2重シースケーブルを並べ、同様にして融着加工を行う。これを必要本数に達するまで繰り返し行い、リボンケーブルとする。
得られたリボンケーブルに、長手方向に沿って内層シース(1)の露出部を間歇的に存在させる態様について、以下にその一例を挙げる。
まず、内層シース(1)を露出させる部分の両端の外層シース(2)のみに、径方向の切込みを1周回に亘って入れ、さらに該切込みの間の長手方向にも外層シース(2)のみに切込みを入れ、最後に該切込みを入れた外層シースのみを剥ぎ取って、図1に示すようなリボンケーブルを得る。切込みを入れる手段としては、カッターやレーザー加工機などによる切断手段が挙げられる。このような切込み具は、ケーブルの外径、肉厚、および剥ぎ取る長さ等に応じて、適宜選択すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0009】
本発明のリボンケーブルは、チップマウンター等の産業用ロボットにおける可動部の微小空間にも容易に配線されるが、同様に、微小空間での配線が要求される機具にも有効に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るリボンケーブルの一例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う横断面図である。
【図3】図1のB−B線に沿う横断面図である。
【符号の説明】
【0011】
1 2重シースの内層シース
2 2重シースの外層シース
3 外層シース同士の接着部
4 ケーブル線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列状態にあるケーブル群からなり、以下のa〜cの要件を具備することを特徴とするリボンケーブル。
a.各ケーブルは2重シースケーブルであること、
b.該2重シースケーブル群は並列状態で、隣接する外層のシースを介して接着加工されていること、
そして、
c.該2重シースケーブルの内層のシースは外層のシースに比べて曲げ硬さが低く他方、外層のシースは内層のシースに比べて表面接着強度が高いこと、
【請求項2】
該接着加工が融着加工である、請求項1に記載のリボンケーブル。
【請求項3】
該2重シースケーブルの内層のシースがポリ塩化ビニルからなる、請求項1または2に記載のリボンケーブル。
【請求項4】
該2重シースケーブルの外層のシースがポリウレタンからなる、請求項1〜3のいずれかに記載のリボンケーブル。
【請求項5】
該内層のシースが露出してなる高屈曲性ケーブル群が該リボンケーブルの長手方向に沿って間歇的に存在している、請求項1〜4のいずれかに記載のリボンケーブル。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のリボンケーブルの配線に際して、該リボンケーブルの長手方向に沿う所望の箇所で外層のシースを剥ぎ取って内層のシースを露出させ、この露出箇所の高屈曲性ケーブル群を2次元または3次元状に屈曲させることを特徴とするリボンケーブルの配線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−42343(P2007−42343A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223336(P2005−223336)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(000226932)日星電気株式会社 (98)
【Fターム(参考)】