リポソームを用いた酵素免疫測定技術LELIA(Liposome−basedEnzyme−LinkedImmunoAssay)
【課題】ELISA(Enzyme−Linked ImmunoSorbent Assay)法に比べてバックグランド値を低く抑え、かつ測定限界を下げることが可能なリポソームを用いた新規な酵素免疫測定技術LELIA(Liposome−based Enzyme−Linked ImmunoAssay)を提供する。
【解決手段】液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに、前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
【解決手段】液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに、前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームを用いた酵素免疫測定技術LELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、血中に含まれる抗体を検出するための診断用組換えプロテオリポソームに関する技術を開発した(特許文献1)。しかし、この技術は、リポソームを構成する二重膜に結合・貫通するドメインを有するタンパク質をベースとしたものであり、膜結合能を持たないタンパク質や、抗体の測定には用いることができなかった。
一方、微量のサンプルを測定するための技術として、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法が知られている。ELISA法には、大きく分けて、固相に吸着させた抗原または一次抗体を測定する直接吸着法と、固相に吸着させた抗体を用いて抗原を一次抗体で認識させるサンドイッチ法とがある。
直接吸着法では、抗原を含む溶液サンプルを固相(プレート)に接触させ、プレート表面に抗原(を含む物質)を固定し固相化しておく。次に、抗原を認識する一次抗体を含むサンプルを添加して、抗原と一次抗体とを結合させる。次いで、一次抗体を認識する酵素標識二次抗体を反応させて、抗原と一次抗体と酵素標識二次抗体とを結合させる。最後に、基質を加えて、酵素によって反応させることで、反応物を測定する。この方法によれば、抗原の有無あるいは一次抗体の濃度を測定できる。
また、サンドイッチ法では、予めプレート表面に抗原に反応する抗体を固定し固相化しておく。ここに抗原を含むサンプルを添加して、抗体と抗原とを結合させる。次いで、抗原を認識する一次抗体を含むサンプルを添加して、抗原と一次抗体とを結合させ、抗原を二種類の抗体でサンドイッチする。次に、一次抗体を認識する酵素標識二次抗体を反応させて、抗原と一次抗体と酵素標識二次抗体とを結合させる。最後に、基質を加えて、酵素によって反応させることで、反応物を測定する。この方法によれば、抗原の濃度を測定できる。
上記のELISA法は、研究用途のみならず、環境分析、食品分析、臨床診断などにも用いられている。例えば、血中インスリンの測定法(非特許文献1)や、CRF(Corticotropin Releasing Factor(副腎皮質刺激ホルモン放出因子))の測定法(非特許文献2)には、ELISA法が応用されている。これらのデータによれば、インスリンの測定限界は 0.07 mU//L(0.42 pmol/L)であり、CRFの測定限界は 0.33 ng/mL である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2007/094395
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mercodia AB [online] [retrieved on 2011-08-03] Retrieved from the Internet: <URL: http://www.funakoshi.co.jp/data/datasheet/MRD/10-1132-01.pdf>
【非特許文献2】PHOENIX PHARMACEUTICALS, INC [online] [retrieved on 2011-08-03] Retrieved from the Internet: <URL:http://www.phoenixpeptide.com/catalog/product_info.php?products_id=4247>
【非特許文献3】Kanta Tsumoto, et al, Colloids and surfaces B: Biointerfaces 68(2009) 98-105
【非特許文献4】McBride, J. D. and Cooper, M. A. J. Nanobiotechnology 2008, 6:5.
【非特許文献5】Helica Biosystems, Inc., [online] [retrieved on 2011-08-16] Retrieved from the Internet:<URL: http://www.helica.com>
【非特許文献6】Ala-Kleme, T., Maekinen, P., Ylinen, T., Vaere, L., Kulmala, S., Ihalainen, P. and Peltonen, J. Anal. Chem. 2006, 78, 82-88.
【非特許文献7】Zlatanovic, S., Mirkarimi, L. W., Sigalas, M. M., Bynum, M. A., Chow, E., Robotti, K. M., Burr, G. W., Esener, S. and Grot, A. Sensors and Actuators B: Chemical 2009, 141, 13-19.
【非特許文献8】Chang, Y. S., Wu, C. H., Chang, R. J. and Shiuan, D. J. Biochem. Biophys. Methods 1994, 29, 321-329.
【非特許文献9】Hou, S. Y., Chen, H. K., Cheng, H. C. and Huang, C. Y. Anal. Chem. 2007, 79, 980-985.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ELISA法は多くの応用を備えた有用な方法であるが、バックグラウンド値が高く、S/N比が低いため、測定限界を十分に下げられないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ELISA法に比べてバックグランド値を低く抑え、かつ測定限界を下げることが可能なリポソームを用いた新規な酵素免疫測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうして、上記課題を達成するための第一の発明に係る酵素免疫測定法は、(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を共有結合させて、被験物質結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記被験物質結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の被験物質結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記被験物質結合リポソームと前記被験物質を認識する一次抗体を反応させて、被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(5)被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(6)液相中において、前記被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(7)前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(8)溶液を添加し、前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(9)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
第一の発明によれば、リポソーム表面に結合された被験物質を直接法(一次抗体のみによって、直接に被験物質を認識させる)によって、検出・測定できる。
【0007】
また、第二の発明に係る酵素免疫測定法は、(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を認識する抗体を共有結合させて、抗体結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記抗体結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の抗体結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記抗体結合リポソームと前記被験物質を含有するサンプルとを共存させて、前記抗体と被験物質とを結合させ、抗体・被験物質結合リポソームとする被験物質結合工程、(5)前記抗体・被験物質結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く被験物質洗浄工程、(6)液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(7)抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(8)液相中において、前記抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(9)前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(10)溶液を添加し、前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(11)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
第二の発明によれば、リポソーム表面に結合される抗体が認識する被験物質をサンドイッチ法(この抗体と一次抗体によって、被験物質をサンドイッチする)によって検出・測定できる。
上記第一の発明、及び第二の発明は、単に被験物質を定量するだけではなく、この他にも、被験物質の同定・検出・識別・探索などにも有用である。このため、本発明において、「測定」とは、単に被験物質の定量のみに留まらず、被験物質の同定・検出・識別・探索などの意味を含んで理解されるものである。
【0008】
糖含有脂質薄膜利用リポソームとは、リポソームを構成する脂質に糖を含有させた状態で薄膜をつくった後、この薄膜に緩衝液を加え、穏やかにボルテックスして製造したものを意味する。さらに、所定の大きさよりも小さいものを除くために、遠心・膜ろ過などの処理を行うことが好ましい。このリポソームは、本発明者を含む者によって開発された。具体的には、非特許文献3に記載の方法によって製造できる。糖含有脂質薄膜利用リポソームに含まれる糖は、フルクトース、マンノース、グルコース、及びガラクトースからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面には、抗体または被験物質が共有結合によって固定される。従来のELISA法では、非共有結合によって、抗体などを固相化していたので、操作中に外れてしまう可能性があった。一方、本願発明では、共有結合によって、より強力に固定化されるので、抗体または被験物質が外れてしまう可能性が低くなり、精密な測定が行える。
被験物質または、抗体をリポソームに共有結合させるには、アミノ基、チオール基、糖鎖、NHSエステルなどに結合するクロスカップリング試薬を用いることができる。そのような試薬として、市販されているもの(例えば、クロスリンカーとして市販されているもの(http://www.funakoshi.co.jp/shiyaku/entry/3577.php))を用いることができる。
また、本発明においては、結合工程及び洗浄工程に使用する溶液は、界面活性剤を含有しないものであることが好ましい。そのような溶液として、PBS(Phosphate Buffered Saline)を用いることができる。PBSは、生化学の実験において必須と言えるものであり、常備されている溶液であるため、特殊な試薬を用いる必要がない。また、いずれかの工程で界面活性剤を含有する溶液を用いてしまうと、完全に界面活性剤取り除くことが非常に困難であり、持ち越し(キャリーオーバー)によるアーチファクトが生じるおそれがある。更に、脂質膜であるリポソームを用いる試験系においては、できるだけ界面活性剤を用いない方が、安定した試験結果を得やすい。従来のELISA法では、界面活性剤を含有する溶液が常用され(例えば、PBST(Phosphate Buffered Saline with Tween or Triton))、常に界面活性剤の持ち越しによる影響を考慮しなければならなかった。このような理由から、界面活性剤を用いない本発明の試験系は、非常に有用なものと言える。
【0009】
また、被験物質は、低分子物質、高分子物質、ウイルス粒子、菌体を含めリポソームに結合可能な全ての物質であることが好ましい。リポソームに結合させる抗体が認識する被験物質、または被験物質として具体的には、次のようなものが例示される。サイトカイン(例えば、インターロイキン(2、3、6、10など)、インターフェロン(α、β、γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシンc-kit、c-fms、EGF、PDGF、VEGF、TGF-β、BMP、アクチビン、GM-CSF、LIF、NGF、Fas、CD40、IL-8など)、アポトーシス関連因子(例えば、Fas、p53など)、転写調節因子(例えば、Pax6、Pax8など)、腫瘍マーカー(例えば、CEA(大腸癌、胃癌、膵癌マーカー)、CA19-9(膵癌、胆嚢癌、胆管癌、卵巣癌、子宮内膜癌マーカー)、AFP(肝細胞癌マーカー)、CA125(卵巣癌マーカー)など)、神経伝達物質(アセチルコリン、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、ドーパミン、セロトニン、グリシン、GABAなど)、ホルモン(下垂体ホルモン放出ホルモン、下垂体ホルモン放出抑制ホルモン、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(因子)(CRH、CRF)、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、セレクチン、ガストリン、コレシストキニン、インスリン、グルカゴン、レプチン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、テストステロン、エストラジオール、チロキシン、など)、ウイルス(HIV(1、2型)、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E型)、インフルエンザウイルス(A、B型)、水疱性口内炎ウイルス、セムリキーフォレストウイルス、ホウルプラークウイルスなど)、細菌(Helicobacter pylori、Legionlla pneumophila、Mycoplasma pneumoniae、Chlamidia pneumoniaeなど)、血漿リポタンパク質(高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)など)などが挙げられる。感染防御・免疫系については、fMet-Ler-Phe、補体、抗原などが挙げられ、輸送タンパクについては、LDL、HDL、トランスフェリン、トランスコバラミン、卵黄タンパク、マクログロブリン、IgG、IgAなどが挙げられ、糖タンパクについては、Gal、Man/GlcNAc、GlcNAc、Man-6-Pなどが挙げられ、植物レクチンについては、コンカナバリンA、PHA、リシンなどが挙げられ、毒素については、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、エンドトキシンなどが挙げられる。また、アゴニスト(A)およびアンタゴニスト(AG)として、サクシニルコリン(A)、ニコチン(A)、d−ツボクラリン(AG)、ガラミン(AG)、ヘキサメトニウム(AG)、αブンガロトキシン(AG)、カルバコール(A)、ピロカルビン(A)、カルバコール(A)、ピレンゼピン(AG)、アトロピン(AG)、スコポラミン(AG)、フェニレフリン(A)、クロニジン(A)、プラゾシン(AG)、フェノキシベンザミン(AG)、ヨヒンビン(AG)が、イソプロテレノール(A)、ドブタミン(A)、サルブタモール(A)、プロプラノロール(AG)、プラクトロール(AG)、ブトキサミン(AG)、アポモルヒネ(A)、SKF38393(A)、アポモルヒネ(A)、リスライド(A)、SCH23390(AG)、cis-フルペンチキソール(AG)、スルピリド(AG)、スピペロン(AG)、ハロペリドール(AG)、ムシモール(A)、バクロフェン(A)、ビククリン(AG)、ストリキニーネ(AG)、2-メチルヒスタミン(A)、4-メチルヒスタミン(A)、イソプロミジン(A)、メピラミン(AG)、ジフェンドラミン(AG)、メチアミド(AG)、シメチジン(AG)、メチルセルジド(AG)、LSD(AG)、ケタンセリン(AG)、モルヒネ(A)、ケトシクラゾシン(A)、ダイノルフィン(A)、[D-Ara2, D-Leu5]エンケファリン(A)、β-エンドルフィン(A)、ナロキソン(AG)、Mr2266(AG)、ICI154129(AG)などが挙げられる。
【0010】
また、これらの他にも、現在ELISA法としてキットが製造・販売されている物質、例えばMesothelin、Cardiotrophin-1、心血管関連因子、プロスタグランジン、sRANKL、2-Methoxyestradiol、MMP、イムノグロブリン(IgM、IgG、IgA、IgD、IgE)、Xenin25、肥満関連因子(アディポネクチン、レプチン、レジスチン)、生理活性ペプチド(Copeptin、Maxadilan)、GFAP、MIC-1、GSTA、心疾患関連因子(LVVへモルフィン、アンジオテンシン、アルドステロン、ブラジキニン)、Osteoprotegrin、プラスミノーゲン活性化因子(PAI-1、uPA、tPA)、クロモグラニン、アディポネクチン、CRP、βIG-H3、Podocalyxin、アミロイドA、アンギオテンシン、RIG-1、ブラジキニン、TL1A、Omentin1、MxA、Calprotectin、NF-kB、プロテインA、インスリン、Hsc70、Hsp90、cAMP、Sclerostin、各種アレルゲン(Birch pollen allergen, Cat allergen, Cockroach allergen, Dog allergen, Equine allergen, Fugi allergen, Mite allergen, Mouse allergen, Rat allergen, Short ragweed pollen allergen, Timothy pollen allergen, Peanut allergen)、Hsp/抗Hsp抗体、β-Amyloid、ミオグロビン、抗ピロリ菌抗体、ヘパラナーゼ、リン酸化タンパク質、ステロイドホルモン、プロテインキナーゼインヒビター、ヒアルロン酸、前立腺分泌性タンパク質、GHRF、可溶性CD147、NPY、アポトーシス関連因子(Fas、CD178、Cytochrome c、p53、Perforin、TRAIL、TRAIL R1、TRAIL R2、TRAIL R3、TRAIL R4、CD25、CD141、CD31、CD44、CD54、CD106、sCD138、CD95、CD178)、天然毒素(Cylindrosper mopsin、Okadaic acid、TTX)、アルブミン、細胞増殖因子(EGF、FGF、IGF、TGF、NGF、BDNF、VEGF、G-CSF、GM-CSF、PDGF、EPO、TPO、HGF)、プリオンタンパク質、血液関連因子(α1-acid glycoprotein、α2-HS-glycoprotein、Antithrombin、Apolipoprotein、BNP、Factor X、Ferritin)、環境ホルモン(ビスフェノールA、アルキルフェノール、フタル酸エステル、ベンゾピレン)、農薬(ジウロン、イソプロツロン、ペンタクロロフェノール、ジクロロフェノキシ酢酸、アトラジン、トリアジン、アラクロールなど)、抗生物質(サルファメサジン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、AOZ、ジェンタマイシン、トリクロサンなど)などが例示される。
【0011】
「リポソーム」とは、リン脂質(PL,phospholipid)を含有する脂質二重層を含み、内部に水相を備えた閉鎖小胞を意味する。リポソームの形態としては、脂質二重層が二層以上の複数に渡ってタマネギ状に重なった多重層リポソーム(MLV,multilamellar vesicle)と、脂質二重層が一層のリポソーム(UV, unilamellar vesicle)とに分けられる。UVは、粒子径によって、小さな一枚膜リポソーム(SUV,small unilamellar vesicle)と、大きな一枚膜リポソーム(LUV,large unilamellar vesicle)、巨大リポソーム(giant liposomeあるいはgiant vesicle (GV))に分類される。また、巨大リポソームには、脂質二重層が一層のもの(GUV, giant unilamellar vesicel)と脂質二重層が二層以上のもの(GMV, giant multilamellar vesicle)がある。本発明に用いられるリポソーム(糖含有脂質薄膜利用リポソーム)としては、GVを用いることが好ましい。GVを用いると、被験物質結合リポソームまたは抗体結合リポソームを調製したときに、被験物質または抗体がリポソームの全体に良好に配置されることから、後のデータのバラツキが少なくなるので好ましい。また、GVを用いると、低回転の遠心によって沈降させることができるので、好ましい。
本発明では、糖含有脂質薄膜利用リポソームを用いる。リポソームの基となる薄膜をつくるときに、糖を含有させることにより、従来には安定して製造することが困難であったGUVを安定して製造できる(非特許文献3)。また、GMVも大量に製造できる。
【0012】
リン脂質とは、リン酸と脂質とを含む物質を意味する。構成成分に応じて、グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質と、スフィンゴシン骨格を有するスフィンゴリン脂質とに分類される。グリセロリン脂質としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジン酸(PA)等を例示できる。また、スフィンゴリン脂質としては、例えばスフィンゴミエリンを例示できる。本発明に用いるリポソームは、上記各種リン脂質成分を任意の比で混合したものを用いることができる。例えば、DOPC、DOPGを主たる成分とすることができる。ただ、リポソームにタンパク質等を結合させるため、PEは必須である。
反応用の液相を提供する容器としては、チューブ(プラスチックチューブ、ガラスチューブを含む)、プレート(6穴、48穴、96穴、または384穴などのマイクロタイタープレート)などが使用できる。検出法としては、ラジオイムノアッセイ、ラジオレセプターアッセイ、酵素免疫測定、蛍光免疫測定、化学発光アッセイが挙げられる。
【0013】
本発明においては、第1の容器または/及び第2の容器の内壁面は、予め非特異的な吸着を防止するブロッキング剤によってブロッキング処理を行っておくことが好ましい。従来のELISA法では、抗原あるいは抗体を壁面に吸着させて固相化した後に行っていた(先にブロッキング処理を行ってしまうと、抗原あるいは抗体の吸着も阻害されてしまうため)。これに対し、本発明のLELIA法では、液相中に浮遊するリポソームを利用して反応を行わせるために、予め容器の内壁面全体をブロッキング処理できる。このため、バックグラウンドデータを十分に減少させられる。
容器の内壁面をブロッキング処理して、非特異的な吸着を減少させるためのブロッキング剤としては、生化学研究用の市販のものを使用できる。ブロッキング剤を用いることにより、抗原あるいは抗体に結合する物質の特異的結合が、より明確となるので好ましい。
洗浄工程には、容器の底および壁にリポソームを集積させる工程と、集積したリポソームに水溶液を加えて懸濁する工程があるが、集積させる工程には、例えば遠心集積法、磁性体封入リポソームとマグネットを用いた磁気集積法などが例示される。
酵素標識二次抗体に用いられる標識酵素としては、特に限定はなく、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素を用いることができる。酵素標識二次抗体を蛍光で検出する蛍光免疫測定の場合には、例えば、Cy3、Cy5、フルオレセイン(FITCなど)のような蛍光物質で二次抗体を標識したものが使用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、膜表面に抗体または被験物質を結合させた糖含有脂質薄膜利用リポソームを用いて、非特異的反応を軽減させることによってベースラインを十分に減少させ、従来には検出が不可能であった微量物質を特異的に測定する酵素免疫測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供できる。また、本発明によれば、反応を行う溶液中には、界面活性剤を添加することが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における測定法(LELIA法)のイメージを示す図である。この図では、被験物質3に反応する一次抗体5を測定する工程を示す。(A)〜(R)は、工程が進む順に示しており、各工程におけるチューブ1,1’,1''内の様子を示す模式図である。なお、チューブ1の上側に曲がった矢印で示す工程間の操作である(M)から(N)についてはチューブ1から別のチューブ1’に、(Q)から(R)については、チューブ1’から別のチューブ1''に溶液を移し替える操作を示している。それ以外の工程間の操作は、同じチューブを用いて実施されている。 (A)リポソーム2の表面に被験物質3を共有結合させた被験物質結合リポソームをチューブ1(第1の容器)に添加した様子を示す図、(B)チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを完全に取り除いた様子を示す図、(E)被験物質3に結合する一次抗体5を含む試料と緩衝液とを添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(F)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(I)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(J)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(M)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)(M)の液体を別のチューブ1’(第2の容器)に移し替えた様子を示す図、(O)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(P)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(Q)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈殿させた様子を示す図、(R)チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図である。
【図2】本発明における測定法(LELIA法)のイメージを示す図である。この図では、抗体4に結合する被験物質3を測定する工程を示す。(A)〜(U)は、工程が進む順に示しており、各工程におけるチューブ1,1’内の様子を示す模式図である。なお、チューブ1の上側に曲がった矢印で示す工程間の操作である(Q)から(R)についてはチューブ1から別のチューブ1’に溶液を移し替える操作を示している。それ以外の工程間の操作は、同じチューブを用いて実施されている。 (A)リポソーム2の表面に被験物質3を認識する抗体4を共有結合させた抗体結合リポソームをチューブ1(第1の容器)内に添加した様子を示す図、(B)チューブ1を遠心して、リポソーム2を沈澱させ、沈殿しないリポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、抗体結合リポソームを沈澱させ、沈殿しないリポソームを完全に取り除いた様子を示す図、(E)抗体4に結合する被験物質3と緩衝液とを添加して、リポソーム2を浮遊させた様子を示す図、(F)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させ、未結合の被験物質3を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、抗体・被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(I)抗体4に結合した被験物質3に反応する一次抗体5と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(J)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(M)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体6を取り除いた様子を示す図、(O)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(P)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(Q)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(R)(Q)の液体を別のチューブ1’に移し替えた様子を示す図、(S)チューブ1’を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(T)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(U)抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈殿させ、チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図である。
【図3】界面活性剤の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図4】ブロッキングの有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図5】酵素反応の前における容器交換の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図6】界面活性剤の有無によって、酵素反応の前における容器交換の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図7】hCRP結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗hCRP抗体(Goat anti-hCRP)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図8】hCRP結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図9】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/10000とし、被験物質であるhCRPの濃度を変化させたときに、hCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図10】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図11】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/5000とし、被験物質であるhCRPの濃度を変化させたときに、hCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図12】ヒトインスリン結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗ヒトインスリン抗体(Rabbit anti-insulin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図13】ヒトインスリン結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図14】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、被験物質であるヒトインスリンの濃度を変化させたときに、ヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図15】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/1000とし、一次抗体である抗インスリン抗体(Rabbit anti-inulin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図16】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図17】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/5000とし、一次抗体である抗Biotin抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を1 nM 〜 1 pM まで変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図18】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図19】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/1000とし、一次抗体である抗Biotin抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を10 pM 〜 0.1 pM まで変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図20】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、被験物質であるBiotinの濃度を変化させたときに、Biotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図21】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗ビオチン抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図22】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、下記実施形態によって限定されるものではなく、その要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶ。
図1には、LELIAの測定時のイメージを示した。なお、図1には、簡易のために液相(反応時の緩衝液など)の記載は省略してある(図2においても同じ)。
図1は、それぞれ、(A)リポソーム2の表面に被験物質3を共有結合させた被験物質結合リポソーム(共有結合工程)をチューブ1(第1の容器)に添加した様子を示す図(容器吸着工程)、(B)チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((B)−(D)は、本発明における「リポソーム洗浄工程」に該当)、(E)被験物質3に結合する一次抗体5を含む試料と緩衝液とを添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(一次抗体結合工程)、(F)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((F)−(H)は、本発明における「一次抗体洗浄工程」に該当)、(I)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(二次抗体結合工程)、(J)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((J)−(L)は、本発明における「二次抗体洗浄工程」に該当)、(M)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)(M)の液体を別のチューブ1’(第2の容器)に移し替えた様子を示す図(移送工程)、(O)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(P)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(Q)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈殿させた様子を示す図、(R)チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図(検出工程)である。
このLELIAによって、被験物質3の測定(同定・検出・識別・探索等を含む)を行える。
【0017】
図2には、別のスキームによるLELIAの測定時のイメージを示した。図2は、それぞれ、(A)リポソーム2の表面に被験物質3を認識する抗体4を共有結合させた抗体結合リポソーム(共有結合工程)をチューブ1(第1の容器)内に添加した様子を示す図(容器吸着工程)、(B)チューブ1を遠心して、リポソーム2を沈澱させ、沈殿しないリポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((B)−(D)は、本発明における「リポソーム洗浄工程」に該当)、(E)抗体4に結合する被験物質3と緩衝液とを添加して、リポソーム2を浮遊させた様子を示す図(被験物質結合工程)、(F)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させ、未結合の被験物質3を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、抗体・被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((F)−(H)は、本発明における「被験物質洗浄工程」に該当)、(I)抗体4に結合した被験物質3に反応する一次抗体5と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(一次抗体結合工程)、(J)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((J)−(L)は、本発明における「一次抗体洗浄工程」)、(M)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(二次抗体結合工程)、(N)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体6を取り除いた様子を示す図、(O)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(P)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図((N)−(P)は、本発明における「二次抗体洗浄工程」に該当)、(Q)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(R)(Q)の液体を別のチューブ1’に移し替えた様子を示す図(移送工程)、(S)チューブ1’を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(T)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(U)抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈殿させ、チューブ1’内の反応物8を分離・検出する様子を示す図(検出工程)である。このLELIAによっても、被験物質3の測定(同定・検出・識別・探索等を含む)を行える。
次に、図1および図2に示すLELIAを具体化した実施例について説明することによって、本実施形態を更に詳細に説明する。被験物質として、分子量約240のビオチン、分子量約5,800のヒトインスリン、分子量約130,000のヒトC反応性タンパク質を用いた。
<実験材料と方法>
【0018】
1.材料
リポソームを調製するためのリン脂質は、1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (DOPC)(NOF Corporation)、1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phospho-L-serine (DOPS) (NOF Corporation)、及び1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine (DOPE)(NOF Corporation)を用いた。
リポソーム膜結合用抗原は、Human C-Reactive Protein (hCRP)(Life Diagnostics, Inc.)、Insulin human(Roche Ltd.)あるいは6-(Biotinylamino)hexanonic acid N-hydroxysuccinimide ester (Biotin-AC5 -OSu)(DOJINDO LABORATORIES)を用いた。
リポソーム膜結合用抗体は、Rabbit IgG to Human C-Reactive Protein (Rabbit anti-hCRP)(Good Biotech Corp.)、抗ヒトインスリンモノクローナル抗体(BALB/Cマウス)(Nippon Biotest Laboratories Inc.)あるいはAnti-Biotin in Rabbit, IgG fraction (Rabbit anti-Biotin)(Polysciences, Inc.)を用いた。
LELIAに使用するリガンド及び抗体は、hCRP、Insulin human(Roche Ltd.)、Biotin(Sigma-Aldrich Co.)、Goat anti-Human CRP (Goat anti-hCRP)(Bethyl Laboratories, Inc.)、Anti-Insulin, Rabbit Polyclonal(ABBIOTEC, LLC)、Goat anti-Biotin(Bethyl Laboratories, Inc.)、Anti-Rabbit IgG (H+L chain)-HRP(Medical & Biological Laboratories Co., Ltd.)及びAnti-Goat IgG-HRP(Medical & Biological Laboratories Co., Ltd.)を用いた。
【0019】
2.リポソームの調製
比較的小さな糖含有脂質薄膜利用巨大リポソーム(small giant vesicle; sGV)は、次のようにして調製した。クロロホルムに溶かしたリン脂質及びメタノールに溶かしたフルクトースの混合溶液(DOPC/DOPS/DOPE/Fructose = 1/5/4/10、クロロホルムとメタノールの量比2:1)を、減圧ボルテックス処理により除去して脂質薄膜を形成させた後、さらに1時間減圧を行い、薄膜状になったリン脂質に10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液を1ml加え、穏やかにボルテックスを行い、GVを調製した。次に、調製したリポソームを10μmのポリカルボネートメンブレンフィルターで加圧濾過し、sGVにした。また、sGV以外のリポソームを除去するために、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去し得られた沈殿物を10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液に懸濁し、再度遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。同様の操作を4回繰り返し、できるだけ均一なsGVを調製した。調製したsGV は、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
【0020】
3.リポソーム濃度の決定
リポソームの濃度はリン脂質濃度で表した。リン脂質濃度はリン脂質を過酸化水素と硫酸により湿式分解し、得られた分解液中の無機リンをFiske-Subbarow試薬により発色させた。まず、サンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4溶液に4mmolのH2SO4を加え、170℃で30分以上加熱し、空冷後、過酸化水素を6%となるように加え、170℃で30分間加熱した。次に、空冷したサンプル及びコントロールに、0.25N H2SO4/1.8mM (NH4)6Mo7O24・4H2O溶液を4.6ml加えてボルテックスを行い、さらに、発色試薬(10mM 1-Amino-2-naphthol-4-sulfonic Acid/4mM Na2SO3/15% Sodium Hydrogensulfite)を0.2ml加えてボルテックスを行った後、沸騰水中で10分間加熱した。そして、空冷したサンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4の吸光度を830nmで測定し、サンプル中のリン含量を決定した。
4.タンパク質濃度の決定
抗原及び抗体膜結合リポソームの作製における、タンパク質の濃度はBradford法によるタンパク質の定量で決定した。任意の量のタンパク質溶液、及びコントロールとして用いた2mg/mlのBSA 2、4、6、8μlに10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)で全体の体積を1.3mlに調製後、Bio-Rad Protein Assay(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を0.2ml加え、ボルテックスを行った。5分間室温で静置した後、吸光度を595nmで測定し濃度を決定した。
【0021】
<LELIAと結果>
I.基本操作条件
(1)緩衝液1
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応におけるTriton X-100の影響を検討した。ブロッキングは行ったが、容器の交換は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBSTあるいはPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSTあるいはPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、緩衝液がPBSTの場合は0.098、PBSの場合は0.076となり、Triton X-100の存在の有無で大差がなかった(図3)。
【0022】
(2)ブロッキング
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応におけるブロッキングの効果を検討した。界面活性剤の添加および容器の交換は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後、ブロッキングを行ったものと行っていないものをつくった。ブロッキングを行った場合は、3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートした。ブロッキングを行った場合は、ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、ブロッキングを行った場合と行わない場合、それぞれ0.082、0.273となり、ブロッキングした場合、sGVに対するhCRPの非特異的結合が低くなることが判った。また、緩衝液のみの値も、ブロッキングなしの場合0.905、ブロッキング有りの場合0.240と大きく低減された(図4)。
この結果より、ブロッキングは必須であることが判った。
【0023】
(3)容器(移送工程)
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応における容器交換の効果を検討した。ブロッキングは行ったが、界面活性剤の添加は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し、他方、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、容器交換無しの場合は0.144、容器交換有りの場合は0.103となり、緩衝液のみの値は、容器交換なしの場合0.218、容器交換有りの場合0.040と大きく低減された(図5)。
この結果より、酵素反応を行う前に容器交換して、移送工程を設けることが、極めて有効であることが判った。
【0024】
(4)緩衝液2
ここでは、ブロッキングおよび容器の交換を行った場合におけるCRPとsGVとの非特異的反応におけるTriton X-100の影響を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBSTあるいはPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSTあるいはPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
【0025】
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、緩衝液がPBSTの場合は0.097、PBSの場合は0.103となり、容器の交換を行っても、Triton X-100の存在の有無で大差がなかった(図6)。
上記(1)および(4)の結果より、緩衝液として、界面活性剤は不要であることが判った。このため、本発明では、界面活性剤を含有しないPBSを用いれば済む。PBSは、生化学の実験において必須と言えるものであり、常備されている溶液であるため、特殊な試薬を用いる必要がない。また、いずれかの工程で界面活性剤を含有する溶液を用いてしまうと、完全に界面活性剤取り除くことは非常に困難であり、後の工程では、界面活性剤の持ち越し(キャリーオーバー)によるアーチファクトが生じるおそれがある。更に、脂質膜であるリポソームを用いる試験系においては、できるだけ界面活性剤を用いない方が、安定した試験結果を得やすい。従来のELISA法では、界面活性剤を含有する溶液が常用され(例えば、PBST)、常に界面活性剤の持ち越しによる影響を考慮しなければならなかった。このような理由から、界面活性剤を用いない本発明の試験系は、非常に有用なものと言える。
【0026】
II.膜結合sGV
(1)hCRP
<方法> Dimethylsulfoxide(DMSO)に溶かしたsuccinimidyl 4-formylbenzoate (SFB)(Thermo Fisher Scientific, Inc.)とsGVとをモル比2:5になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたsuccinimidyl 4-hydrazinonicotinate acetone hydrazone (SANH) とhCRPとをモル比20:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾hCRPを調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾hCRPをSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾hCRPの濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾hCRPとをモル比4000:1になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、hCRP膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾hCRP、SFB修飾sGV 及びhCRP膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清のタンパク質量を測定した後、以下の式によりhCRP膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)= 1−[(hCRP膜結合sGVの遠心後の上清のタンパク質量−SFB修飾sGVの遠心後の上清のタンパク質量)/(SANH修飾hCRPの遠心後の上清のタンパク質量−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)のタンパク質量)]×100
<結果> 上述の測定の結果、hCRP膜結合sGVの結合率は98.5%であった。
【0027】
(2)Rabbit anti-hCRP 抗体
<方法> まず、作製するRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率を充分に高くするため、20mM MES/0.15M NaCl(pH5.8)に溶けているRabbit anti-hCRP抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行い、溶媒を置換した。次に、DMSOに溶かしたSFB とsGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと透析後のRabbit anti-hCRP抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体を調製した(共有結合工程)。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体とをモル比4000:1にとなるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVを作製した。その後、SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体、SFB修飾sGV 及びRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)=1−[(Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体の遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率は88.7%であった。
【0028】
(3)ヒトインスリン
<方法> Dimethylsulfoxide(DMSO)に溶かしたsuccinimidyl 4-formylbenzoate (SFB)(Thermo Fisher Scientific, Inc.)とsGVとをモル比2:5になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたsuccinimidyl 4-hydrazinonicotinate acetone hydrazone (SANH) とヒトインスリンとをモル比20:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾ヒトインスリンを調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾ヒトインスリンをSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾ヒトインスリンの濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾ヒトインスリンとをモル比4000:1になるように混合して27℃で6時間、加えて4℃で一晩反応を行った後、ヒトインスリン膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾ヒトインスリン、SFB修飾sGV 及びヒトインスリン膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりヒトインスリン膜結合sGVの結合率を求めた。ただ、ヒトインスリンにはトリプトファン残基がなく、チロシン残基の蛍光もSANHにエネルギー移動によって消光しているため、SANHの393nmにおける蛍光強度によって評価した。
結合率(%)= 1−[(ヒトインスリン膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾ヒトインスリンの遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、ヒトインスリン膜結合sGVの結合率は93.3%であった。
【0029】
(4)Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体
<方法> まず、作製するMouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVの結合率を充分に高くするため、20mM MES/0.15M NaCl(pH5.8)に溶けているMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行い、溶媒を置換した。次に、DMSOに溶かしたSFB とsGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと透析後のMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体を調製した(共有結合工程)。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体とをモル比4000:1にとなるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVを作製した。その後、SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体、SFB修飾sGV 及びMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)=1−[(Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体の遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVの結合率は96.4%であった。
【0030】
(5)Biotin
<方法> DMSOに溶かしたBiotin-AC5 -Osuと sGVとをモル比8:3になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、Slide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、サンプルに1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去して沈殿を10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)で懸濁してBiotin膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。作製したBiotin膜結合sGVは、そのままLELIAに直接供試した。
【0031】
(6)Rabbit anti-Biotin抗体
<方法> DMSOに溶かしたSFBと sGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと Rabbit anti-Biotin抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体を調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体をモル比4000:1になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体、SFB修飾sGV及び Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清のタンパク質量を測定した後、以下の式によりRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)= 1−[(Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの遠心後の上清の吸光度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の吸光度)/(SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体の遠心後の上清の吸光度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の吸光度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの結合率は94.9%であった。
【0032】
III.膜結合sGV-LELIA
(1)hCRP
hCRP膜結合sGVとGoat anti-hCRPとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したhCRP膜結合sGV(hCRP量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0033】
<結果> まず、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にし、Goat anti-hCRP抗体の濃度を10pM、50pM、100pM、500pMとした時のhCRP膜結合sGVの場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.081、0.306、0.644、1.614となり、Goat anti-hCRP抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、hCRP膜結合sGVとGoat anti-hCRP抗体が特異的に結合することが判った(図7)。
次に、Goat anti-hCRP抗体濃度を500pMと一定にし、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:100000、1:50000、1:20000、1:10000とした時の△Aは、それぞれ0.350、0.730、1.218、1.849となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図8)。
以上の結果より、hCRP膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗hCRP抗体を特異的に10pM程度の濃度まで検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0034】
(2)Rabbit anti-hCRP抗体
Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVとhCRPとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV(Rabbit anti-hCRP抗体量-sGV量 = 0.78μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したhCRP溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで5nMの濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0035】
<結果> まず、Goat anti-hCRP抗体の濃度を5nM、Goat anti-hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にし、hCRPの濃度を1pM、10pM、100pM、1nMとした時のRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.022、0.091、1.042、1.754となり、hCRP濃度依存的に△Aが増加することが示され、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVとhCRPが特異的に結合することが判った(図9)。
次に、hCRP濃度を1nM、Goat anti-hCRP抗体濃度を5nMと一定にし、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:100000、1:50000、1:20000、1:10000とした時の△Aは、それぞれ0.187、0.428、0.932、1.603となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図10)。
また、Goat anti-hCRP抗体濃度を5nM、Goat anti-hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、hCRPの濃度を0.1pM、1pM、10pM、30pMとした時の△Aは、それぞれ0.039、0.048、0.289、0.928となり、hCRPを1pMから10pMの濃度の範囲で検出できた(図11)。現在、hCRPの検出において、ELISAで20pMまでの検出感度の研究報告があり(非特許文献4)、また、1pM-80pMの範囲で検出可能なELISAキットが販売されている(非特許文献5)。その他に、電気化学ルミノ免疫学的試験によるhCRPの検出限界は2pMである(非特許文献6)。本LELIAはこれらと比較してほとんど同程度か、より高感度でhCRPを検出できた。
以上の結果より、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるhCRPを特異的に検出できることが判り、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0036】
(3)ヒトインスリン
ヒトインスリン膜結合sGVとRabbit 抗ヒトインスリンとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したヒトインスリン膜結合sGV(ヒトインスリン量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したRabbit 抗ヒトインスリン抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Rabbit IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0037】
<結果> まず、Rabbit抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:2000と一定にし、Rabbit抗ヒトインスリン抗体の濃度を0.2nM、0.5nM、1nM、2nMとした時のヒトインスリン膜結合sGVの場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.139、0.251、0.504、0.749となり、Rabbit抗ヒトインスリン抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、ヒトインスリン膜結合sGVとRabbit抗ヒトインスリン抗体が特異的に結合することが判った(図12)。
次に、Rabbit抗ヒトインスリン抗体濃度を1nMと一定にし、Rabbit抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:20000、1:10000、1:5000、1:2000、1:1000、1:500とした時の△Aは、それぞれ0.021、0.062、0.175,0.524、1.004、1.404となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図13)。
以上の結果より、ヒトインスリン膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗ヒトインスリン抗体を特異的に0.2nM程度の濃度まで検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0038】
(4)Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体
Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVとヒトインスリンとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGV(Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体量-sGV量 = 0.78μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したヒトインスリン溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したRabbit 抗ヒトインスリン 抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Rabbit IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0039】
<結果> まず、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:500、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、インスリンの濃度を0.1pg/ml、1pg/ml、10pg/ml、30pg/ml、100pg/mlとした時のMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.109、0.259、0.444、0.724、0.990となり、ヒトインスリン濃度依存的に△Aが増加することが示され、Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVとヒトインスリンが特異的に結合することが判った(図14)。
次に、ヒトインスリン濃度を10pg/ml、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:2000、1:1000、1:500、1:200とした時の△Aは、それぞれ0.050、0.229、0408、0.661となり、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体濃度依存的にΔAが増加することが示された(図15)。
また、ヒトインスリン濃度を10pg/ml、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:500と一定にし、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000、1:2000、1:1000、1:500とした時の△Aは、それぞれ0.058、0.160、0.374、0.805となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図16)。
現在、ヒトインスリンの検出において、ELISAで0.42 pmol/Lまでの検出感度の研究報告がある(非特許文献4)。ヒトインスリンの分子量は5,807であるので、0.42 pmol/Lは約2.4pg/mlに相当し、本LELIAはこの値と比較して、より高感度でヒトインスリンを検出できたことになる。
以上の結果より、Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるヒトインスリンを特異的に検出できることが判り、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0040】
(5)Biotin
Biotin膜結合sGVとGoat anti-Biotinとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したBiotin膜結合sGV(sGV量40nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量40nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意に希釈したGoat anti-Biotin抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0041】
<結果> まず、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を1pM、10pM、100pM、1nMとした時のBiotin膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.004、0.130、1.672、3.189となり、Goat anti-Biotin抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、Biotin膜結合sGVとGoat anti-Biotin抗体が特異的に結合することが判った(図17)。
次に、Goat anti-Biotin抗体濃度を20pMと一定にし、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000、1:5000、1:2000、1:1000とした時の△Aは、それぞれ0.119、0.265、0.499、0.666となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図18)。
また、Goat anti-Biotin抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を0.1pM、0.5pM、1pM、5pM、10pMとした時の△Aは、それぞれ0.000、0.007、0.012、0.146、0.305となり、Goat anti-Biotin抗体を1pMから5pMの濃度の範囲で検出できた(図19)。フォトニック結晶微小空洞センサーを用いた試験によりanti-Biotin抗体の検出限界が20pMであることが報告されており(非特許文献7)、本LELIAはより高感度でanti-Biotin抗体を検出することができた。
以上の結果より、Biotin膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗Biotin抗体を特異的に検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0042】
(6)Rabbit anti-Biotin抗体
Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVとBiotinとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV(Rabbit anti-Biotin抗体量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したBiotin溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-Biotin抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0043】
<結果> まず、Goat anti-Biotin抗体の濃度を10nM、Goat anti-Biotin抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Biotinの濃度を0fM、0.5fM、1fM、5fM、10fM、50fM、100fM、500fM、1pM、10pM、100pM、1nMとした時のRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.000、0.109、0.167、0.218、0.345、0.571、0.659、0.717、0.762、0.935、1.093、1.115となり、Biotin濃度依存的に△Aが増加することが示され、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVとBiotinが特異的に結合することが判った(図20)。
次に、Biotin濃度を10fM、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を0nM、0.4nM、2nM、10nMとした時の△Aは、それぞれ−0.001、0.028、0.079、0.345となり、Goat anti-Biotin抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図21)。
さらに、Biotin濃度を10fM、Goat anti-Biotin抗体濃度を5nMと一定にし、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000、1:5000、1:2000、1:1000とした時の△Aは、それぞれ0.073、0.151、0.395、0.522となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することも示された(図22)。
これらの結果より、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるBiotinを特異的に0.5fMの濃度で検出できることが判った。現在のELISAにおけるBiotinの検出限界は4pM である(非特許文献8)のに対して、本LELIAで約8000倍の感度を得ることができた。また、金ナノ粒子を用いたイムノアッセイではBiotinを0.1fMの濃度まで検出できることが報告されており(非特許文献9)、本LELIAはそれと比較してもほとんど同程度の検出感度である。以上のことから、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
このように本実施形態によれば、ELISA法に比べてバックグランド値を低く抑え、かつ測定限界を下げることが可能なリポソームを用いた新規な測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供できた。LELIAによれば、従来のELISA法に比べて感度良く、被験物質を定量・同定・検出・識別・探索することが可能であった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームを用いた酵素免疫測定技術LELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、血中に含まれる抗体を検出するための診断用組換えプロテオリポソームに関する技術を開発した(特許文献1)。しかし、この技術は、リポソームを構成する二重膜に結合・貫通するドメインを有するタンパク質をベースとしたものであり、膜結合能を持たないタンパク質や、抗体の測定には用いることができなかった。
一方、微量のサンプルを測定するための技術として、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法が知られている。ELISA法には、大きく分けて、固相に吸着させた抗原または一次抗体を測定する直接吸着法と、固相に吸着させた抗体を用いて抗原を一次抗体で認識させるサンドイッチ法とがある。
直接吸着法では、抗原を含む溶液サンプルを固相(プレート)に接触させ、プレート表面に抗原(を含む物質)を固定し固相化しておく。次に、抗原を認識する一次抗体を含むサンプルを添加して、抗原と一次抗体とを結合させる。次いで、一次抗体を認識する酵素標識二次抗体を反応させて、抗原と一次抗体と酵素標識二次抗体とを結合させる。最後に、基質を加えて、酵素によって反応させることで、反応物を測定する。この方法によれば、抗原の有無あるいは一次抗体の濃度を測定できる。
また、サンドイッチ法では、予めプレート表面に抗原に反応する抗体を固定し固相化しておく。ここに抗原を含むサンプルを添加して、抗体と抗原とを結合させる。次いで、抗原を認識する一次抗体を含むサンプルを添加して、抗原と一次抗体とを結合させ、抗原を二種類の抗体でサンドイッチする。次に、一次抗体を認識する酵素標識二次抗体を反応させて、抗原と一次抗体と酵素標識二次抗体とを結合させる。最後に、基質を加えて、酵素によって反応させることで、反応物を測定する。この方法によれば、抗原の濃度を測定できる。
上記のELISA法は、研究用途のみならず、環境分析、食品分析、臨床診断などにも用いられている。例えば、血中インスリンの測定法(非特許文献1)や、CRF(Corticotropin Releasing Factor(副腎皮質刺激ホルモン放出因子))の測定法(非特許文献2)には、ELISA法が応用されている。これらのデータによれば、インスリンの測定限界は 0.07 mU//L(0.42 pmol/L)であり、CRFの測定限界は 0.33 ng/mL である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2007/094395
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mercodia AB [online] [retrieved on 2011-08-03] Retrieved from the Internet: <URL: http://www.funakoshi.co.jp/data/datasheet/MRD/10-1132-01.pdf>
【非特許文献2】PHOENIX PHARMACEUTICALS, INC [online] [retrieved on 2011-08-03] Retrieved from the Internet: <URL:http://www.phoenixpeptide.com/catalog/product_info.php?products_id=4247>
【非特許文献3】Kanta Tsumoto, et al, Colloids and surfaces B: Biointerfaces 68(2009) 98-105
【非特許文献4】McBride, J. D. and Cooper, M. A. J. Nanobiotechnology 2008, 6:5.
【非特許文献5】Helica Biosystems, Inc., [online] [retrieved on 2011-08-16] Retrieved from the Internet:<URL: http://www.helica.com>
【非特許文献6】Ala-Kleme, T., Maekinen, P., Ylinen, T., Vaere, L., Kulmala, S., Ihalainen, P. and Peltonen, J. Anal. Chem. 2006, 78, 82-88.
【非特許文献7】Zlatanovic, S., Mirkarimi, L. W., Sigalas, M. M., Bynum, M. A., Chow, E., Robotti, K. M., Burr, G. W., Esener, S. and Grot, A. Sensors and Actuators B: Chemical 2009, 141, 13-19.
【非特許文献8】Chang, Y. S., Wu, C. H., Chang, R. J. and Shiuan, D. J. Biochem. Biophys. Methods 1994, 29, 321-329.
【非特許文献9】Hou, S. Y., Chen, H. K., Cheng, H. C. and Huang, C. Y. Anal. Chem. 2007, 79, 980-985.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、ELISA法は多くの応用を備えた有用な方法であるが、バックグラウンド値が高く、S/N比が低いため、測定限界を十分に下げられないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ELISA法に比べてバックグランド値を低く抑え、かつ測定限界を下げることが可能なリポソームを用いた新規な酵素免疫測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こうして、上記課題を達成するための第一の発明に係る酵素免疫測定法は、(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を共有結合させて、被験物質結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記被験物質結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の被験物質結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記被験物質結合リポソームと前記被験物質を認識する一次抗体を反応させて、被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(5)被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(6)液相中において、前記被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(7)前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(8)溶液を添加し、前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(9)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
第一の発明によれば、リポソーム表面に結合された被験物質を直接法(一次抗体のみによって、直接に被験物質を認識させる)によって、検出・測定できる。
【0007】
また、第二の発明に係る酵素免疫測定法は、(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を認識する抗体を共有結合させて、抗体結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記抗体結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の抗体結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記抗体結合リポソームと前記被験物質を含有するサンプルとを共存させて、前記抗体と被験物質とを結合させ、抗体・被験物質結合リポソームとする被験物質結合工程、(5)前記抗体・被験物質結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く被験物質洗浄工程、(6)液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(7)抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(8)液相中において、前記抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(9)前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(10)溶液を添加し、前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(11)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して、酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする。
第二の発明によれば、リポソーム表面に結合される抗体が認識する被験物質をサンドイッチ法(この抗体と一次抗体によって、被験物質をサンドイッチする)によって検出・測定できる。
上記第一の発明、及び第二の発明は、単に被験物質を定量するだけではなく、この他にも、被験物質の同定・検出・識別・探索などにも有用である。このため、本発明において、「測定」とは、単に被験物質の定量のみに留まらず、被験物質の同定・検出・識別・探索などの意味を含んで理解されるものである。
【0008】
糖含有脂質薄膜利用リポソームとは、リポソームを構成する脂質に糖を含有させた状態で薄膜をつくった後、この薄膜に緩衝液を加え、穏やかにボルテックスして製造したものを意味する。さらに、所定の大きさよりも小さいものを除くために、遠心・膜ろ過などの処理を行うことが好ましい。このリポソームは、本発明者を含む者によって開発された。具体的には、非特許文献3に記載の方法によって製造できる。糖含有脂質薄膜利用リポソームに含まれる糖は、フルクトース、マンノース、グルコース、及びガラクトースからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面には、抗体または被験物質が共有結合によって固定される。従来のELISA法では、非共有結合によって、抗体などを固相化していたので、操作中に外れてしまう可能性があった。一方、本願発明では、共有結合によって、より強力に固定化されるので、抗体または被験物質が外れてしまう可能性が低くなり、精密な測定が行える。
被験物質または、抗体をリポソームに共有結合させるには、アミノ基、チオール基、糖鎖、NHSエステルなどに結合するクロスカップリング試薬を用いることができる。そのような試薬として、市販されているもの(例えば、クロスリンカーとして市販されているもの(http://www.funakoshi.co.jp/shiyaku/entry/3577.php))を用いることができる。
また、本発明においては、結合工程及び洗浄工程に使用する溶液は、界面活性剤を含有しないものであることが好ましい。そのような溶液として、PBS(Phosphate Buffered Saline)を用いることができる。PBSは、生化学の実験において必須と言えるものであり、常備されている溶液であるため、特殊な試薬を用いる必要がない。また、いずれかの工程で界面活性剤を含有する溶液を用いてしまうと、完全に界面活性剤取り除くことが非常に困難であり、持ち越し(キャリーオーバー)によるアーチファクトが生じるおそれがある。更に、脂質膜であるリポソームを用いる試験系においては、できるだけ界面活性剤を用いない方が、安定した試験結果を得やすい。従来のELISA法では、界面活性剤を含有する溶液が常用され(例えば、PBST(Phosphate Buffered Saline with Tween or Triton))、常に界面活性剤の持ち越しによる影響を考慮しなければならなかった。このような理由から、界面活性剤を用いない本発明の試験系は、非常に有用なものと言える。
【0009】
また、被験物質は、低分子物質、高分子物質、ウイルス粒子、菌体を含めリポソームに結合可能な全ての物質であることが好ましい。リポソームに結合させる抗体が認識する被験物質、または被験物質として具体的には、次のようなものが例示される。サイトカイン(例えば、インターロイキン(2、3、6、10など)、インターフェロン(α、β、γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、リンホトキシンc-kit、c-fms、EGF、PDGF、VEGF、TGF-β、BMP、アクチビン、GM-CSF、LIF、NGF、Fas、CD40、IL-8など)、アポトーシス関連因子(例えば、Fas、p53など)、転写調節因子(例えば、Pax6、Pax8など)、腫瘍マーカー(例えば、CEA(大腸癌、胃癌、膵癌マーカー)、CA19-9(膵癌、胆嚢癌、胆管癌、卵巣癌、子宮内膜癌マーカー)、AFP(肝細胞癌マーカー)、CA125(卵巣癌マーカー)など)、神経伝達物質(アセチルコリン、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、ドーパミン、セロトニン、グリシン、GABAなど)、ホルモン(下垂体ホルモン放出ホルモン、下垂体ホルモン放出抑制ホルモン、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(因子)(CRH、CRF)、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、セレクチン、ガストリン、コレシストキニン、インスリン、グルカゴン、レプチン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)、テストステロン、エストラジオール、チロキシン、など)、ウイルス(HIV(1、2型)、肝炎ウイルス(A、B、C、D、E型)、インフルエンザウイルス(A、B型)、水疱性口内炎ウイルス、セムリキーフォレストウイルス、ホウルプラークウイルスなど)、細菌(Helicobacter pylori、Legionlla pneumophila、Mycoplasma pneumoniae、Chlamidia pneumoniaeなど)、血漿リポタンパク質(高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)など)などが挙げられる。感染防御・免疫系については、fMet-Ler-Phe、補体、抗原などが挙げられ、輸送タンパクについては、LDL、HDL、トランスフェリン、トランスコバラミン、卵黄タンパク、マクログロブリン、IgG、IgAなどが挙げられ、糖タンパクについては、Gal、Man/GlcNAc、GlcNAc、Man-6-Pなどが挙げられ、植物レクチンについては、コンカナバリンA、PHA、リシンなどが挙げられ、毒素については、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、エンドトキシンなどが挙げられる。また、アゴニスト(A)およびアンタゴニスト(AG)として、サクシニルコリン(A)、ニコチン(A)、d−ツボクラリン(AG)、ガラミン(AG)、ヘキサメトニウム(AG)、αブンガロトキシン(AG)、カルバコール(A)、ピロカルビン(A)、カルバコール(A)、ピレンゼピン(AG)、アトロピン(AG)、スコポラミン(AG)、フェニレフリン(A)、クロニジン(A)、プラゾシン(AG)、フェノキシベンザミン(AG)、ヨヒンビン(AG)が、イソプロテレノール(A)、ドブタミン(A)、サルブタモール(A)、プロプラノロール(AG)、プラクトロール(AG)、ブトキサミン(AG)、アポモルヒネ(A)、SKF38393(A)、アポモルヒネ(A)、リスライド(A)、SCH23390(AG)、cis-フルペンチキソール(AG)、スルピリド(AG)、スピペロン(AG)、ハロペリドール(AG)、ムシモール(A)、バクロフェン(A)、ビククリン(AG)、ストリキニーネ(AG)、2-メチルヒスタミン(A)、4-メチルヒスタミン(A)、イソプロミジン(A)、メピラミン(AG)、ジフェンドラミン(AG)、メチアミド(AG)、シメチジン(AG)、メチルセルジド(AG)、LSD(AG)、ケタンセリン(AG)、モルヒネ(A)、ケトシクラゾシン(A)、ダイノルフィン(A)、[D-Ara2, D-Leu5]エンケファリン(A)、β-エンドルフィン(A)、ナロキソン(AG)、Mr2266(AG)、ICI154129(AG)などが挙げられる。
【0010】
また、これらの他にも、現在ELISA法としてキットが製造・販売されている物質、例えばMesothelin、Cardiotrophin-1、心血管関連因子、プロスタグランジン、sRANKL、2-Methoxyestradiol、MMP、イムノグロブリン(IgM、IgG、IgA、IgD、IgE)、Xenin25、肥満関連因子(アディポネクチン、レプチン、レジスチン)、生理活性ペプチド(Copeptin、Maxadilan)、GFAP、MIC-1、GSTA、心疾患関連因子(LVVへモルフィン、アンジオテンシン、アルドステロン、ブラジキニン)、Osteoprotegrin、プラスミノーゲン活性化因子(PAI-1、uPA、tPA)、クロモグラニン、アディポネクチン、CRP、βIG-H3、Podocalyxin、アミロイドA、アンギオテンシン、RIG-1、ブラジキニン、TL1A、Omentin1、MxA、Calprotectin、NF-kB、プロテインA、インスリン、Hsc70、Hsp90、cAMP、Sclerostin、各種アレルゲン(Birch pollen allergen, Cat allergen, Cockroach allergen, Dog allergen, Equine allergen, Fugi allergen, Mite allergen, Mouse allergen, Rat allergen, Short ragweed pollen allergen, Timothy pollen allergen, Peanut allergen)、Hsp/抗Hsp抗体、β-Amyloid、ミオグロビン、抗ピロリ菌抗体、ヘパラナーゼ、リン酸化タンパク質、ステロイドホルモン、プロテインキナーゼインヒビター、ヒアルロン酸、前立腺分泌性タンパク質、GHRF、可溶性CD147、NPY、アポトーシス関連因子(Fas、CD178、Cytochrome c、p53、Perforin、TRAIL、TRAIL R1、TRAIL R2、TRAIL R3、TRAIL R4、CD25、CD141、CD31、CD44、CD54、CD106、sCD138、CD95、CD178)、天然毒素(Cylindrosper mopsin、Okadaic acid、TTX)、アルブミン、細胞増殖因子(EGF、FGF、IGF、TGF、NGF、BDNF、VEGF、G-CSF、GM-CSF、PDGF、EPO、TPO、HGF)、プリオンタンパク質、血液関連因子(α1-acid glycoprotein、α2-HS-glycoprotein、Antithrombin、Apolipoprotein、BNP、Factor X、Ferritin)、環境ホルモン(ビスフェノールA、アルキルフェノール、フタル酸エステル、ベンゾピレン)、農薬(ジウロン、イソプロツロン、ペンタクロロフェノール、ジクロロフェノキシ酢酸、アトラジン、トリアジン、アラクロールなど)、抗生物質(サルファメサジン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、AOZ、ジェンタマイシン、トリクロサンなど)などが例示される。
【0011】
「リポソーム」とは、リン脂質(PL,phospholipid)を含有する脂質二重層を含み、内部に水相を備えた閉鎖小胞を意味する。リポソームの形態としては、脂質二重層が二層以上の複数に渡ってタマネギ状に重なった多重層リポソーム(MLV,multilamellar vesicle)と、脂質二重層が一層のリポソーム(UV, unilamellar vesicle)とに分けられる。UVは、粒子径によって、小さな一枚膜リポソーム(SUV,small unilamellar vesicle)と、大きな一枚膜リポソーム(LUV,large unilamellar vesicle)、巨大リポソーム(giant liposomeあるいはgiant vesicle (GV))に分類される。また、巨大リポソームには、脂質二重層が一層のもの(GUV, giant unilamellar vesicel)と脂質二重層が二層以上のもの(GMV, giant multilamellar vesicle)がある。本発明に用いられるリポソーム(糖含有脂質薄膜利用リポソーム)としては、GVを用いることが好ましい。GVを用いると、被験物質結合リポソームまたは抗体結合リポソームを調製したときに、被験物質または抗体がリポソームの全体に良好に配置されることから、後のデータのバラツキが少なくなるので好ましい。また、GVを用いると、低回転の遠心によって沈降させることができるので、好ましい。
本発明では、糖含有脂質薄膜利用リポソームを用いる。リポソームの基となる薄膜をつくるときに、糖を含有させることにより、従来には安定して製造することが困難であったGUVを安定して製造できる(非特許文献3)。また、GMVも大量に製造できる。
【0012】
リン脂質とは、リン酸と脂質とを含む物質を意味する。構成成分に応じて、グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質と、スフィンゴシン骨格を有するスフィンゴリン脂質とに分類される。グリセロリン脂質としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジン酸(PA)等を例示できる。また、スフィンゴリン脂質としては、例えばスフィンゴミエリンを例示できる。本発明に用いるリポソームは、上記各種リン脂質成分を任意の比で混合したものを用いることができる。例えば、DOPC、DOPGを主たる成分とすることができる。ただ、リポソームにタンパク質等を結合させるため、PEは必須である。
反応用の液相を提供する容器としては、チューブ(プラスチックチューブ、ガラスチューブを含む)、プレート(6穴、48穴、96穴、または384穴などのマイクロタイタープレート)などが使用できる。検出法としては、ラジオイムノアッセイ、ラジオレセプターアッセイ、酵素免疫測定、蛍光免疫測定、化学発光アッセイが挙げられる。
【0013】
本発明においては、第1の容器または/及び第2の容器の内壁面は、予め非特異的な吸着を防止するブロッキング剤によってブロッキング処理を行っておくことが好ましい。従来のELISA法では、抗原あるいは抗体を壁面に吸着させて固相化した後に行っていた(先にブロッキング処理を行ってしまうと、抗原あるいは抗体の吸着も阻害されてしまうため)。これに対し、本発明のLELIA法では、液相中に浮遊するリポソームを利用して反応を行わせるために、予め容器の内壁面全体をブロッキング処理できる。このため、バックグラウンドデータを十分に減少させられる。
容器の内壁面をブロッキング処理して、非特異的な吸着を減少させるためのブロッキング剤としては、生化学研究用の市販のものを使用できる。ブロッキング剤を用いることにより、抗原あるいは抗体に結合する物質の特異的結合が、より明確となるので好ましい。
洗浄工程には、容器の底および壁にリポソームを集積させる工程と、集積したリポソームに水溶液を加えて懸濁する工程があるが、集積させる工程には、例えば遠心集積法、磁性体封入リポソームとマグネットを用いた磁気集積法などが例示される。
酵素標識二次抗体に用いられる標識酵素としては、特に限定はなく、例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素を用いることができる。酵素標識二次抗体を蛍光で検出する蛍光免疫測定の場合には、例えば、Cy3、Cy5、フルオレセイン(FITCなど)のような蛍光物質で二次抗体を標識したものが使用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、膜表面に抗体または被験物質を結合させた糖含有脂質薄膜利用リポソームを用いて、非特異的反応を軽減させることによってベースラインを十分に減少させ、従来には検出が不可能であった微量物質を特異的に測定する酵素免疫測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供できる。また、本発明によれば、反応を行う溶液中には、界面活性剤を添加することが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における測定法(LELIA法)のイメージを示す図である。この図では、被験物質3に反応する一次抗体5を測定する工程を示す。(A)〜(R)は、工程が進む順に示しており、各工程におけるチューブ1,1’,1''内の様子を示す模式図である。なお、チューブ1の上側に曲がった矢印で示す工程間の操作である(M)から(N)についてはチューブ1から別のチューブ1’に、(Q)から(R)については、チューブ1’から別のチューブ1''に溶液を移し替える操作を示している。それ以外の工程間の操作は、同じチューブを用いて実施されている。 (A)リポソーム2の表面に被験物質3を共有結合させた被験物質結合リポソームをチューブ1(第1の容器)に添加した様子を示す図、(B)チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを完全に取り除いた様子を示す図、(E)被験物質3に結合する一次抗体5を含む試料と緩衝液とを添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(F)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(I)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(J)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(M)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)(M)の液体を別のチューブ1’(第2の容器)に移し替えた様子を示す図、(O)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(P)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(Q)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈殿させた様子を示す図、(R)チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図である。
【図2】本発明における測定法(LELIA法)のイメージを示す図である。この図では、抗体4に結合する被験物質3を測定する工程を示す。(A)〜(U)は、工程が進む順に示しており、各工程におけるチューブ1,1’内の様子を示す模式図である。なお、チューブ1の上側に曲がった矢印で示す工程間の操作である(Q)から(R)についてはチューブ1から別のチューブ1’に溶液を移し替える操作を示している。それ以外の工程間の操作は、同じチューブを用いて実施されている。 (A)リポソーム2の表面に被験物質3を認識する抗体4を共有結合させた抗体結合リポソームをチューブ1(第1の容器)内に添加した様子を示す図、(B)チューブ1を遠心して、リポソーム2を沈澱させ、沈殿しないリポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、抗体結合リポソームを沈澱させ、沈殿しないリポソームを完全に取り除いた様子を示す図、(E)抗体4に結合する被験物質3と緩衝液とを添加して、リポソーム2を浮遊させた様子を示す図、(F)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させ、未結合の被験物質3を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、抗体・被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(I)抗体4に結合した被験物質3に反応する一次抗体5と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(J)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(M)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体6を取り除いた様子を示す図、(O)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(P)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(Q)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(R)(Q)の液体を別のチューブ1’に移し替えた様子を示す図、(S)チューブ1’を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(T)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(U)抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈殿させ、チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図である。
【図3】界面活性剤の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図4】ブロッキングの有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図5】酵素反応の前における容器交換の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図6】界面活性剤の有無によって、酵素反応の前における容器交換の有無によって、試験系への影響があるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図7】hCRP結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗hCRP抗体(Goat anti-hCRP)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図8】hCRP結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図9】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/10000とし、被験物質であるhCRPの濃度を変化させたときに、hCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図10】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるhCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図11】抗hCRP抗体(anti-hCRP)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/5000とし、被験物質であるhCRPの濃度を変化させたときに、hCRPを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図12】ヒトインスリン結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗ヒトインスリン抗体(Rabbit anti-insulin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図13】ヒトインスリン結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図14】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、被験物質であるヒトインスリンの濃度を変化させたときに、ヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図15】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/1000とし、一次抗体である抗インスリン抗体(Rabbit anti-inulin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図16】抗ヒトインスリンモノクローナル抗体結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるヒトインスリンを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図17】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/5000とし、一次抗体である抗Biotin抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を1 nM 〜 1 pM まで変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図18】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図19】Biotin結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体希釈率を1/1000とし、一次抗体である抗Biotin抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を10 pM 〜 0.1 pM まで変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図20】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、被験物質であるBiotinの濃度を変化させたときに、Biotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図21】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、一次抗体である抗ビオチン抗体(Goat anti-Biotin)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【図22】抗Biotin抗体(Rabbit anti-Biotin)結合sGVを用いたLELIAによって、酵素標識二次抗体(anti-IgG)の濃度を変化させたときに、被験物質であるBiotinを特異的にかつ濃度依存的に検出できるか否かを評価した試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、下記実施形態によって限定されるものではなく、その要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶ。
図1には、LELIAの測定時のイメージを示した。なお、図1には、簡易のために液相(反応時の緩衝液など)の記載は省略してある(図2においても同じ)。
図1は、それぞれ、(A)リポソーム2の表面に被験物質3を共有結合させた被験物質結合リポソーム(共有結合工程)をチューブ1(第1の容器)に添加した様子を示す図(容器吸着工程)、(B)チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させ、沈殿しない被験物質結合リポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((B)−(D)は、本発明における「リポソーム洗浄工程」に該当)、(E)被験物質3に結合する一次抗体5を含む試料と緩衝液とを添加して、被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(一次抗体結合工程)、(F)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((F)−(H)は、本発明における「一次抗体洗浄工程」に該当)、(I)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(二次抗体結合工程)、(J)チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((J)−(L)は、本発明における「二次抗体洗浄工程」に該当)、(M)緩衝液を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(N)(M)の液体を別のチューブ1’(第2の容器)に移し替えた様子を示す図(移送工程)、(O)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図、(P)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(Q)チューブ1’を遠心して、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈殿させた様子を示す図、(R)チューブ1’内の反応物8を分離して、検出する様子を示す図(検出工程)である。
このLELIAによって、被験物質3の測定(同定・検出・識別・探索等を含む)を行える。
【0017】
図2には、別のスキームによるLELIAの測定時のイメージを示した。図2は、それぞれ、(A)リポソーム2の表面に被験物質3を認識する抗体4を共有結合させた抗体結合リポソーム(共有結合工程)をチューブ1(第1の容器)内に添加した様子を示す図(容器吸着工程)、(B)チューブ1を遠心して、リポソーム2を沈澱させ、沈殿しないリポソームを取り除いた様子を示す図、(C)緩衝液を添加して、抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(D)再度、チューブ1を遠心して、抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((B)−(D)は、本発明における「リポソーム洗浄工程」に該当)、(E)抗体4に結合する被験物質3と緩衝液とを添加して、リポソーム2を浮遊させた様子を示す図(被験物質結合工程)、(F)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させ、未結合の被験物質3を取り除いた様子を示す図、(G)緩衝液を添加して、抗体・被験物質結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(H)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((F)−(H)は、本発明における「被験物質洗浄工程」に該当)、(I)抗体4に結合した被験物質3に反応する一次抗体5と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(一次抗体結合工程)、(J)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の一次抗体5を取り除いた様子を示す図、(K)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図、(L)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームを沈澱させた様子を示す図((J)−(L)は、本発明における「一次抗体洗浄工程」)、(M)一次抗体5を認識する酵素標識二次抗体6と緩衝液とを添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを浮遊させた様子を示す図(二次抗体結合工程)、(N)チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを沈澱させ、未結合の酵素標識二次抗体6を取り除いた様子を示す図、(O)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(P)再度、チューブ1を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図((N)−(P)は、本発明における「二次抗体洗浄工程」に該当)、(Q)緩衝液を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させた様子を示す図、(R)(Q)の液体を別のチューブ1’に移し替えた様子を示す図(移送工程)、(S)チューブ1’を遠心して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈澱させた様子を示す図、(T)酵素標識二次抗体6の酵素によって反応する基質7(反応物8)を添加して、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを浮遊させ、反応させる様子を示す図、(U)抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体リポソームを沈殿させ、チューブ1’内の反応物8を分離・検出する様子を示す図(検出工程)である。このLELIAによっても、被験物質3の測定(同定・検出・識別・探索等を含む)を行える。
次に、図1および図2に示すLELIAを具体化した実施例について説明することによって、本実施形態を更に詳細に説明する。被験物質として、分子量約240のビオチン、分子量約5,800のヒトインスリン、分子量約130,000のヒトC反応性タンパク質を用いた。
<実験材料と方法>
【0018】
1.材料
リポソームを調製するためのリン脂質は、1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (DOPC)(NOF Corporation)、1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phospho-L-serine (DOPS) (NOF Corporation)、及び1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine (DOPE)(NOF Corporation)を用いた。
リポソーム膜結合用抗原は、Human C-Reactive Protein (hCRP)(Life Diagnostics, Inc.)、Insulin human(Roche Ltd.)あるいは6-(Biotinylamino)hexanonic acid N-hydroxysuccinimide ester (Biotin-AC5 -OSu)(DOJINDO LABORATORIES)を用いた。
リポソーム膜結合用抗体は、Rabbit IgG to Human C-Reactive Protein (Rabbit anti-hCRP)(Good Biotech Corp.)、抗ヒトインスリンモノクローナル抗体(BALB/Cマウス)(Nippon Biotest Laboratories Inc.)あるいはAnti-Biotin in Rabbit, IgG fraction (Rabbit anti-Biotin)(Polysciences, Inc.)を用いた。
LELIAに使用するリガンド及び抗体は、hCRP、Insulin human(Roche Ltd.)、Biotin(Sigma-Aldrich Co.)、Goat anti-Human CRP (Goat anti-hCRP)(Bethyl Laboratories, Inc.)、Anti-Insulin, Rabbit Polyclonal(ABBIOTEC, LLC)、Goat anti-Biotin(Bethyl Laboratories, Inc.)、Anti-Rabbit IgG (H+L chain)-HRP(Medical & Biological Laboratories Co., Ltd.)及びAnti-Goat IgG-HRP(Medical & Biological Laboratories Co., Ltd.)を用いた。
【0019】
2.リポソームの調製
比較的小さな糖含有脂質薄膜利用巨大リポソーム(small giant vesicle; sGV)は、次のようにして調製した。クロロホルムに溶かしたリン脂質及びメタノールに溶かしたフルクトースの混合溶液(DOPC/DOPS/DOPE/Fructose = 1/5/4/10、クロロホルムとメタノールの量比2:1)を、減圧ボルテックス処理により除去して脂質薄膜を形成させた後、さらに1時間減圧を行い、薄膜状になったリン脂質に10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液を1ml加え、穏やかにボルテックスを行い、GVを調製した。次に、調製したリポソームを10μmのポリカルボネートメンブレンフィルターで加圧濾過し、sGVにした。また、sGV以外のリポソームを除去するために、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去し得られた沈殿物を10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液に懸濁し、再度遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。同様の操作を4回繰り返し、できるだけ均一なsGVを調製した。調製したsGV は、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
【0020】
3.リポソーム濃度の決定
リポソームの濃度はリン脂質濃度で表した。リン脂質濃度はリン脂質を過酸化水素と硫酸により湿式分解し、得られた分解液中の無機リンをFiske-Subbarow試薬により発色させた。まず、サンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4溶液に4mmolのH2SO4を加え、170℃で30分以上加熱し、空冷後、過酸化水素を6%となるように加え、170℃で30分間加熱した。次に、空冷したサンプル及びコントロールに、0.25N H2SO4/1.8mM (NH4)6Mo7O24・4H2O溶液を4.6ml加えてボルテックスを行い、さらに、発色試薬(10mM 1-Amino-2-naphthol-4-sulfonic Acid/4mM Na2SO3/15% Sodium Hydrogensulfite)を0.2ml加えてボルテックスを行った後、沸騰水中で10分間加熱した。そして、空冷したサンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4の吸光度を830nmで測定し、サンプル中のリン含量を決定した。
4.タンパク質濃度の決定
抗原及び抗体膜結合リポソームの作製における、タンパク質の濃度はBradford法によるタンパク質の定量で決定した。任意の量のタンパク質溶液、及びコントロールとして用いた2mg/mlのBSA 2、4、6、8μlに10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)で全体の体積を1.3mlに調製後、Bio-Rad Protein Assay(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を0.2ml加え、ボルテックスを行った。5分間室温で静置した後、吸光度を595nmで測定し濃度を決定した。
【0021】
<LELIAと結果>
I.基本操作条件
(1)緩衝液1
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応におけるTriton X-100の影響を検討した。ブロッキングは行ったが、容器の交換は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBSTあるいはPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSTあるいはPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、緩衝液がPBSTの場合は0.098、PBSの場合は0.076となり、Triton X-100の存在の有無で大差がなかった(図3)。
【0022】
(2)ブロッキング
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応におけるブロッキングの効果を検討した。界面活性剤の添加および容器の交換は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後、ブロッキングを行ったものと行っていないものをつくった。ブロッキングを行った場合は、3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートした。ブロッキングを行った場合は、ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、ブロッキングを行った場合と行わない場合、それぞれ0.082、0.273となり、ブロッキングした場合、sGVに対するhCRPの非特異的結合が低くなることが判った。また、緩衝液のみの値も、ブロッキングなしの場合0.905、ブロッキング有りの場合0.240と大きく低減された(図4)。
この結果より、ブロッキングは必須であることが判った。
【0023】
(3)容器(移送工程)
ここでは、CRPとsGVとの非特異的反応における容器交換の効果を検討した。ブロッキングは行ったが、界面活性剤の添加は行っていない。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し、他方、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、容器交換無しの場合は0.144、容器交換有りの場合は0.103となり、緩衝液のみの値は、容器交換なしの場合0.218、容器交換有りの場合0.040と大きく低減された(図5)。
この結果より、酵素反応を行う前に容器交換して、移送工程を設けることが、極めて有効であることが判った。
【0024】
(4)緩衝液2
ここでは、ブロッキングおよび容器の交換を行った場合におけるCRPとsGVとの非特異的反応におけるTriton X-100の影響を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBSTあるいはPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSTあるいはPBSで洗浄し、sGVあるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去してPBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。次に、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した。さらに、上清を除去してPBSTあるいはPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。反応後PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSTあるいはPBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した。同様の洗浄操作を4回行った後、PBSTあるいはPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した。
【0025】
<結果> hCRPの濃度を1 nM、抗hCRP抗体の濃度を5 nM、抗hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にした時の、hCRPのsGVと緩衝液との反応性の差ΔAは、緩衝液がPBSTの場合は0.097、PBSの場合は0.103となり、容器の交換を行っても、Triton X-100の存在の有無で大差がなかった(図6)。
上記(1)および(4)の結果より、緩衝液として、界面活性剤は不要であることが判った。このため、本発明では、界面活性剤を含有しないPBSを用いれば済む。PBSは、生化学の実験において必須と言えるものであり、常備されている溶液であるため、特殊な試薬を用いる必要がない。また、いずれかの工程で界面活性剤を含有する溶液を用いてしまうと、完全に界面活性剤取り除くことは非常に困難であり、後の工程では、界面活性剤の持ち越し(キャリーオーバー)によるアーチファクトが生じるおそれがある。更に、脂質膜であるリポソームを用いる試験系においては、できるだけ界面活性剤を用いない方が、安定した試験結果を得やすい。従来のELISA法では、界面活性剤を含有する溶液が常用され(例えば、PBST)、常に界面活性剤の持ち越しによる影響を考慮しなければならなかった。このような理由から、界面活性剤を用いない本発明の試験系は、非常に有用なものと言える。
【0026】
II.膜結合sGV
(1)hCRP
<方法> Dimethylsulfoxide(DMSO)に溶かしたsuccinimidyl 4-formylbenzoate (SFB)(Thermo Fisher Scientific, Inc.)とsGVとをモル比2:5になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたsuccinimidyl 4-hydrazinonicotinate acetone hydrazone (SANH) とhCRPとをモル比20:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾hCRPを調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾hCRPをSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾hCRPの濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾hCRPとをモル比4000:1になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、hCRP膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾hCRP、SFB修飾sGV 及びhCRP膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清のタンパク質量を測定した後、以下の式によりhCRP膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)= 1−[(hCRP膜結合sGVの遠心後の上清のタンパク質量−SFB修飾sGVの遠心後の上清のタンパク質量)/(SANH修飾hCRPの遠心後の上清のタンパク質量−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)のタンパク質量)]×100
<結果> 上述の測定の結果、hCRP膜結合sGVの結合率は98.5%であった。
【0027】
(2)Rabbit anti-hCRP 抗体
<方法> まず、作製するRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率を充分に高くするため、20mM MES/0.15M NaCl(pH5.8)に溶けているRabbit anti-hCRP抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行い、溶媒を置換した。次に、DMSOに溶かしたSFB とsGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと透析後のRabbit anti-hCRP抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体を調製した(共有結合工程)。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体とをモル比4000:1にとなるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVを作製した。その後、SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体、SFB修飾sGV 及びRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)=1−[(Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾Rabbit anti-hCRP抗体の遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVの結合率は88.7%であった。
【0028】
(3)ヒトインスリン
<方法> Dimethylsulfoxide(DMSO)に溶かしたsuccinimidyl 4-formylbenzoate (SFB)(Thermo Fisher Scientific, Inc.)とsGVとをモル比2:5になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたsuccinimidyl 4-hydrazinonicotinate acetone hydrazone (SANH) とヒトインスリンとをモル比20:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾ヒトインスリンを調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾ヒトインスリンをSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾ヒトインスリンの濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾ヒトインスリンとをモル比4000:1になるように混合して27℃で6時間、加えて4℃で一晩反応を行った後、ヒトインスリン膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾ヒトインスリン、SFB修飾sGV 及びヒトインスリン膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりヒトインスリン膜結合sGVの結合率を求めた。ただ、ヒトインスリンにはトリプトファン残基がなく、チロシン残基の蛍光もSANHにエネルギー移動によって消光しているため、SANHの393nmにおける蛍光強度によって評価した。
結合率(%)= 1−[(ヒトインスリン膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾ヒトインスリンの遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、ヒトインスリン膜結合sGVの結合率は93.3%であった。
【0029】
(4)Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体
<方法> まず、作製するMouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVの結合率を充分に高くするため、20mM MES/0.15M NaCl(pH5.8)に溶けているMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液中で一晩透析を行い、溶媒を置換した。次に、DMSOに溶かしたSFB とsGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと透析後のMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体を調製した(共有結合工程)。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体とをモル比4000:1にとなるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVを作製した。その後、SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体、SFB修飾sGV 及びMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清の蛍光強度を測定した後、以下の式によりMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)=1−[(Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVの遠心後の上清の蛍光強度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の蛍光強度)/(SANH修飾Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体の遠心後の上清の蛍光強度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の蛍光強度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVの結合率は96.4%であった。
【0030】
(5)Biotin
<方法> DMSOに溶かしたBiotin-AC5 -Osuと sGVとをモル比8:3になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、Slide-A-Lyzer MINI Dialysis Units(Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、サンプルに1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去して沈殿を10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)で懸濁してBiotin膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。作製したBiotin膜結合sGVは、そのままLELIAに直接供試した。
【0031】
(6)Rabbit anti-Biotin抗体
<方法> DMSOに溶かしたSFBと sGVとをモル比9:1になるように混合して27℃で3時間反応を行い、SFB修飾sGVを調製した。また、DMSOに溶かしたSANHと Rabbit anti-Biotin抗体とをモル比120:1になるように混合して27℃で1時間反応を行い、SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体を調製した。このようにして得られたSFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体をSlide-A-Lyzer MINI Dialysis Unitsを用いて、10mM MES-NaOH/100mM NaCl(pH4.7)緩衝液中で一晩透析を行った。透析後、SFB修飾sGV及びSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体の濃度決定を行い、SFB修飾sGVとSANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体をモル比4000:1になるように混合して27℃で3時間反応を行った後、1M Tris溶液を加えてpHを中性にし、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVを作製した(共有結合工程)。その後、SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体、SFB修飾sGV及び Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVを遠心し(19,500×g、20min、4℃)、その上清のタンパク質量を測定した後、以下の式によりRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの結合率を求めた。
結合率(%)= 1−[(Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの遠心後の上清の吸光度−SFB修飾sGVの遠心後の上清の吸光度)/(SANH修飾Rabbit anti-Biotin抗体の遠心後の上清の吸光度−10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)の吸光度)]×100
<結果> 上述の測定の結果、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVの結合率は94.9%であった。
【0032】
III.膜結合sGV-LELIA
(1)hCRP
hCRP膜結合sGVとGoat anti-hCRPとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したhCRP膜結合sGV(hCRP量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0033】
<結果> まず、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にし、Goat anti-hCRP抗体の濃度を10pM、50pM、100pM、500pMとした時のhCRP膜結合sGVの場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.081、0.306、0.644、1.614となり、Goat anti-hCRP抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、hCRP膜結合sGVとGoat anti-hCRP抗体が特異的に結合することが判った(図7)。
次に、Goat anti-hCRP抗体濃度を500pMと一定にし、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:100000、1:50000、1:20000、1:10000とした時の△Aは、それぞれ0.350、0.730、1.218、1.849となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図8)。
以上の結果より、hCRP膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗hCRP抗体を特異的に10pM程度の濃度まで検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0034】
(2)Rabbit anti-hCRP抗体
Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVとhCRPとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV(Rabbit anti-hCRP抗体量-sGV量 = 0.78μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したhCRP溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで5nMの濃度に希釈したGoat anti-hCRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0035】
<結果> まず、Goat anti-hCRP抗体の濃度を5nM、Goat anti-hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:10000と一定にし、hCRPの濃度を1pM、10pM、100pM、1nMとした時のRabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.022、0.091、1.042、1.754となり、hCRP濃度依存的に△Aが増加することが示され、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGVとhCRPが特異的に結合することが判った(図9)。
次に、hCRP濃度を1nM、Goat anti-hCRP抗体濃度を5nMと一定にし、Goat anti-hCRP抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:100000、1:50000、1:20000、1:10000とした時の△Aは、それぞれ0.187、0.428、0.932、1.603となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図10)。
また、Goat anti-hCRP抗体濃度を5nM、Goat anti-hCRP抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、hCRPの濃度を0.1pM、1pM、10pM、30pMとした時の△Aは、それぞれ0.039、0.048、0.289、0.928となり、hCRPを1pMから10pMの濃度の範囲で検出できた(図11)。現在、hCRPの検出において、ELISAで20pMまでの検出感度の研究報告があり(非特許文献4)、また、1pM-80pMの範囲で検出可能なELISAキットが販売されている(非特許文献5)。その他に、電気化学ルミノ免疫学的試験によるhCRPの検出限界は2pMである(非特許文献6)。本LELIAはこれらと比較してほとんど同程度か、より高感度でhCRPを検出できた。
以上の結果より、Rabbit anti-hCRP抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるhCRPを特異的に検出できることが判り、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0036】
(3)ヒトインスリン
ヒトインスリン膜結合sGVとRabbit 抗ヒトインスリンとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄後3% Block Ace(DS Pharma Biomedical Co., Ltd)を0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したヒトインスリン膜結合sGV(ヒトインスリン量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したRabbit 抗ヒトインスリン抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Rabbit IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダー(MULTISKAN JX、Thermo Fisher Scientific, Inc.)を用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0037】
<結果> まず、Rabbit抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:2000と一定にし、Rabbit抗ヒトインスリン抗体の濃度を0.2nM、0.5nM、1nM、2nMとした時のヒトインスリン膜結合sGVの場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.139、0.251、0.504、0.749となり、Rabbit抗ヒトインスリン抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、ヒトインスリン膜結合sGVとRabbit抗ヒトインスリン抗体が特異的に結合することが判った(図12)。
次に、Rabbit抗ヒトインスリン抗体濃度を1nMと一定にし、Rabbit抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:20000、1:10000、1:5000、1:2000、1:1000、1:500とした時の△Aは、それぞれ0.021、0.062、0.175,0.524、1.004、1.404となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図13)。
以上の結果より、ヒトインスリン膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗ヒトインスリン抗体を特異的に0.2nM程度の濃度まで検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0038】
(4)Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体
Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGVとヒトインスリンとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGV(Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体量-sGV量 = 0.78μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したヒトインスリン溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したRabbit 抗ヒトインスリン 抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Rabbit IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0039】
<結果> まず、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:500、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、インスリンの濃度を0.1pg/ml、1pg/ml、10pg/ml、30pg/ml、100pg/mlとした時のMouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.109、0.259、0.444、0.724、0.990となり、ヒトインスリン濃度依存的に△Aが増加することが示され、Mouse 抗ヒトインスリン モノクローナル抗体膜結合sGVとヒトインスリンが特異的に結合することが判った(図14)。
次に、ヒトインスリン濃度を10pg/ml、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:2000、1:1000、1:500、1:200とした時の△Aは、それぞれ0.050、0.229、0408、0.661となり、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体濃度依存的にΔAが増加することが示された(図15)。
また、ヒトインスリン濃度を10pg/ml、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体の希釈率を1:500と一定にし、Rabbit 抗ヒトインスリン抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000、1:2000、1:1000、1:500とした時の△Aは、それぞれ0.058、0.160、0.374、0.805となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図16)。
現在、ヒトインスリンの検出において、ELISAで0.42 pmol/Lまでの検出感度の研究報告がある(非特許文献4)。ヒトインスリンの分子量は5,807であるので、0.42 pmol/Lは約2.4pg/mlに相当し、本LELIAはこの値と比較して、より高感度でヒトインスリンを検出できたことになる。
以上の結果より、Mouse 抗ヒトインスリンモノクローナル抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるヒトインスリンを特異的に検出できることが判り、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0040】
(5)Biotin
Biotin膜結合sGVとGoat anti-Biotinとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを0.5ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したBiotin膜結合sGV(sGV量40nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量40nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意に希釈したGoat anti-Biotin抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加し遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加えて37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0041】
<結果> まず、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を1pM、10pM、100pM、1nMとした時のBiotin膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.004、0.130、1.672、3.189となり、Goat anti-Biotin抗体濃度依存的に△Aが増加することが示され、Biotin膜結合sGVとGoat anti-Biotin抗体が特異的に結合することが判った(図17)。
次に、Goat anti-Biotin抗体濃度を20pMと一定にし、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000、1:5000、1:2000、1:1000とした時の△Aは、それぞれ0.119、0.265、0.499、0.666となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図18)。
また、Goat anti-Biotin抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:1000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を0.1pM、0.5pM、1pM、5pM、10pMとした時の△Aは、それぞれ0.000、0.007、0.012、0.146、0.305となり、Goat anti-Biotin抗体を1pMから5pMの濃度の範囲で検出できた(図19)。フォトニック結晶微小空洞センサーを用いた試験によりanti-Biotin抗体の検出限界が20pMであることが報告されており(非特許文献7)、本LELIAはより高感度でanti-Biotin抗体を検出することができた。
以上の結果より、Biotin膜結合sGVを用いたLELIAにより、抗Biotin抗体を特異的に検出できることが判り、特異抗体検出における抗原膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
【0042】
(6)Rabbit anti-Biotin抗体
Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVとBiotinとの特異的反応におけるLELIAの有用性を検討した。
<方法> まず、サンプルチューブをPBS(pH7.2)で洗浄した後3% Block Aceを1 ml添加し、37℃で1時間インキュベートしてブロッキングを行った(ブロッキング処理)。ブロッキング後ブロッキング溶液を除去してPBSで洗浄し、作製したRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV(Rabbit anti-Biotin抗体量-sGV量 = 1μg-30nmol/100μl)サンプル、SFB修飾sGV(sGV量30nmol/100μl、コントロール)あるいは10mM HEPES-NaOH/100mM NaCl(pH7.5)緩衝液をそれぞれ100μl添加し、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った(容器吸着工程)。遠心後上清を除去してPBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(リポソーム洗浄工程)。次に、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したBiotin溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(被験物質結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(被験物質洗浄工程)。さらに、上清を除去してPBSで任意の濃度に希釈したGoat anti-Biotin抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(一次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(一次抗体洗浄工程)。最後に、上清を除去してPBSで任意に希釈したAnti-Goat IgG-HRP抗体溶液を50μl添加して懸濁し、37℃で1時間インキュベートした(二次抗体結合工程)。反応後PBSを0.5ml添加して遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、上清を除去した後、PBSを0.5ml添加して沈殿を懸濁し、再び遠心(19,500×g、20min、4℃)を行ってサンプルチューブを洗浄した(二次抗体洗浄工程)。同様の洗浄操作を4回行った後、PBS 0.5mlで沈殿を懸濁し、3% Block Aceで37℃、1時間ブロッキングしておいた別の新しいチューブにサンプルを移し(移送工程)、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行った。遠心後上清を除去し、基質溶液 [0.1M sodium citrate buffer(pH5.2)+o-phenylenediamine(1mg/ml)+0.02% H2O2] を100μl加え37℃で10分間インキュベートして発色させ、2N H2SO4を50μl加えて反応を止めた後、遠心(19,500×g、20min、4℃)を行い、マイクロプレートリーダーを用いて上清の492nmにおける吸光度(A492)を測定した(検出工程)。
【0043】
<結果> まず、Goat anti-Biotin抗体の濃度を10nM、Goat anti-Biotin抗体に対する二次抗体である抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Biotinの濃度を0fM、0.5fM、1fM、5fM、10fM、50fM、100fM、500fM、1pM、10pM、100pM、1nMとした時のRabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV の場合の反応性とSFB修飾sGVの場合の反応性の差△Aは、それぞれ0.000、0.109、0.167、0.218、0.345、0.571、0.659、0.717、0.762、0.935、1.093、1.115となり、Biotin濃度依存的に△Aが増加することが示され、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGVとBiotinが特異的に結合することが判った(図20)。
次に、Biotin濃度を10fM、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:5000と一定にし、Goat anti-Biotin抗体の濃度を0nM、0.4nM、2nM、10nMとした時の△Aは、それぞれ−0.001、0.028、0.079、0.345となり、Goat anti-Biotin抗体濃度依存的に△Aが増加することが示された(図21)。
さらに、Biotin濃度を10fM、Goat anti-Biotin抗体濃度を5nMと一定にし、Goat anti-Biotin抗体に対する抗IgG抗体の希釈率を1:10000、1:5000、1:2000、1:1000とした時の△Aは、それぞれ0.073、0.151、0.395、0.522となり、抗IgG抗体濃度依存的に△Aが増加することも示された(図22)。
これらの結果より、Rabbit anti-Biotin抗体膜結合sGV を用いたLELIAにより、リガンドであるBiotinを特異的に0.5fMの濃度で検出できることが判った。現在のELISAにおけるBiotinの検出限界は4pM である(非特許文献8)のに対して、本LELIAで約8000倍の感度を得ることができた。また、金ナノ粒子を用いたイムノアッセイではBiotinを0.1fMの濃度まで検出できることが報告されており(非特許文献9)、本LELIAはそれと比較してもほとんど同程度の検出感度である。以上のことから、リガンド検出における抗体膜結合sGVを用いたLELIAの有用性が明らかになった。
このように本実施形態によれば、ELISA法に比べてバックグランド値を低く抑え、かつ測定限界を下げることが可能なリポソームを用いた新規な測定技術であるLELIA(Liposome-based Enzyme-Linked ImmunoAssay)を提供できた。LELIAによれば、従来のELISA法に比べて感度良く、被験物質を定量・同定・検出・識別・探索することが可能であった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を共有結合させて、被験物質結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記被験物質結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の被験物質結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記被験物質結合リポソームと前記被験物質を認識する一次抗体を反応させて、被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(5)被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(6)液相中において、前記被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(7)前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(8)溶液を添加し、前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(9)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする酵素免疫測定法。
【請求項2】
(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を認識する抗体を共有結合させて、抗体結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記抗体結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の抗体結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記抗体結合リポソームと前記被験物質を含有するサンプルとを共存させて、前記抗体と被験物質とを結合させ、抗体・被験物質結合リポソームとする被験物質結合工程、(5)前記抗体・被験物質結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く被験物質洗浄工程、(6)液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(7)抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(8)液相中において、前記抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(9)前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(10)溶液を添加し、前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(11)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする酵素免疫測定法。
【請求項3】
前記容器の内壁面は、予め非特異的な吸着を防止するブロッキング剤によってブロッキング処理を行っておくことを特徴とする請求項1または2に記載の酵素免疫測定法。
【請求項4】
前記結合工程及び洗浄工程に使用する溶液は、界面活性剤を含有しないものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【請求項5】
前記リポソームが、一枚膜リポソームまたは多重層リポソームであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【請求項6】
前記被験物質は、低分子物質、高分子物質、ウイルス粒子、菌体を含む、前記リポソームに結合可能な全ての物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【請求項1】
(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を共有結合させて、被験物質結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記被験物質結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の被験物質結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記被験物質結合リポソームと前記被験物質を認識する一次抗体を反応させて、被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(5)被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(6)液相中において、前記被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(7)前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(8)溶液を添加し、前記被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(9)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする酵素免疫測定法。
【請求項2】
(1)糖含有脂質薄膜利用リポソームの表面に被験物質を認識する抗体を共有結合させて、抗体結合リポソームとする共有結合工程、(2)第1の容器中に前記抗体結合リポソームを添加して、容器の壁面に吸着させる容器吸着工程、(3)吸着不能の抗体結合リポソームを取り除くリポソーム洗浄工程、(4)液相中において、前記抗体結合リポソームと前記被験物質を含有するサンプルとを共存させて、前記抗体と被験物質とを結合させ、抗体・被験物質結合リポソームとする被験物質結合工程、(5)前記抗体・被験物質結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く被験物質洗浄工程、(6)液相中において、被験物質が結合した抗体・被験物質結合リポソームに前記被験物質を認識する一次抗体を反応させ、抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームとする一次抗体結合工程、(7)抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く一次抗体洗浄工程、(8)液相中において、前記抗体・被験物質・一次抗体結合リポソームに、前記一次抗体に結合する酵素標識二次抗体を添加して一次抗体と反応させ、抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームとする二次抗体結合工程、(9)前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームと液相とを分離して、不要な液相部分を取り除く二次抗体洗浄工程、(10)溶液を添加し、前記抗体・被験物質・一次抗体・酵素標識二次抗体結合リポソームを懸濁した後、この溶液を第2の容器に移す移送工程、および(11)酵素標識二次抗体の酵素による反応によって、検出可能となる基質を添加して酵素標識二次抗体によって反応させ、検出を行う検出工程を備えることを特徴とする酵素免疫測定法。
【請求項3】
前記容器の内壁面は、予め非特異的な吸着を防止するブロッキング剤によってブロッキング処理を行っておくことを特徴とする請求項1または2に記載の酵素免疫測定法。
【請求項4】
前記結合工程及び洗浄工程に使用する溶液は、界面活性剤を含有しないものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【請求項5】
前記リポソームが、一枚膜リポソームまたは多重層リポソームであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【請求項6】
前記被験物質は、低分子物質、高分子物質、ウイルス粒子、菌体を含む、前記リポソームに結合可能な全ての物質であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の酵素免疫測定法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2013−61325(P2013−61325A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−182041(P2012−182041)
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(508045815)株式会社リポソーム工学研究所 (2)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月21日(2012.8.21)
【出願人】(508045815)株式会社リポソーム工学研究所 (2)
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