説明

リヤカメラ付き自動車

【課題】乗員により視認可能な表示部と、この表示部に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラRの撮影映像を前記表示部に表示可能であるリヤカメラ付き自動車において、車体後方を照らす照明手段を高輝度のものに変更したり或いは照明手段の設置個数を増やしたりしなくても、夜間におけるリヤカメラの撮影映像を前記表示部に明確に表示させて視認性を高めることを可能とする。
【解決手段】表示制御装置Cが、ライトの点灯時には消灯時よりも表示部Mの輝度を低くする輝度低減制御手段Cbと、後退操作がなされている間は前記輝度低減制御手段Cbを無効とする輝度低減無効化手段RSとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に車体後方視界を撮影するリヤカメラと、乗員により視認可能な表示部と、この表示部に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラの撮影映像を前記表示部に表示可能であるリヤカメラ付き自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポジションライトの点灯時には、カーナビゲーション装置の表示部の輝度(例えば液晶用バックランプの明るさ)を消灯時よりも低く制御して、夜間において表示部が必要以上に明るくなり過ぎないようにしたものが知られている(下記の特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−58218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、後退操作に伴い前記表示部にリヤカメラの撮影映像が表示される場合であっても、ポジションライトの点灯時には消灯時よりも表示部が暗くなるように制御されていたので、元々が昼間に比べ夜間の方が見づらいリヤカメラの撮影映像が更に見づらくなる問題があった。
【0005】
そこでこの問題を解決するために、車体後方を照らす照明手段の照度を高めるべく、例えば照明手段のLEDを特別に高輝度のものに変更したり、或いはLEDの設置個数を増やしたりする等が考えられるが、その場合には、材料コストが嵩むばかりか、信頼性試験等で工数、費用が更に嵩む、といった別の問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、従来の上記問題を簡単な構造で解決したリヤカメラ付き自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、車体後方視界を撮影するリヤカメラと、乗員により視認可能な表示部と、この表示部に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラの撮影映像を前記表示部に表示可能である、リヤカメラ付き自動車において、前記表示制御装置が、ライトの点灯時には消灯時よりも前記表示部の輝度を低くする輝度低減制御手段と、前記後退操作がなされている間は前記輝度低減制御手段を無効とする輝度低減無効化手段とを備えたことを特徴とし、また請求項2の発明は、車体後方視界を撮影するリヤカメラと、乗員により視認可能な表示部と、この表示部に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラの撮影映像を前記表示部に表示可能である、リヤカメラ付き自動車において、前記表示制御装置が、前記後退操作がなされていない場合には前記表示部の輝度をライトの消灯時よりも点灯時の方が低くなるよう制御し、また前記後退操作がなされている場合で且つライトの点灯時には、前記後退操作がなされていない場合で且つライトの点灯時よりも前記表示部の輝度が高くなるよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員による後退操作中は、表示部にリヤカメラの撮影映像を表示できるようにしたリヤカメラ付き自動車であって、ライトの点灯時には消灯時よりも前記表示部の輝度が低減制御されるものにおいて、後退操作がなされている場合で且つライトの点灯時には、後退操作がなされていない場合で且つライトの点灯時よりも前記表示部の輝度を高くして表示画面を明るく表示できるようにしたので、車体後方を照らす照明手段を特別に高輝度のものに変更したり或いは照明手段の設置個数を増やしたりしなくても、夜間におけるリヤカメラの撮影映像を表示部に明確に表示させて視認性を高めることが可能となり、これにより、材料コスト節減に寄与することができる上、信頼性試験等で工数、費用が嵩む不都合も回避することができる。
【0009】
また特に請求項1の発明によれば、ライトの点灯時には消灯時よりも表示部の輝度を低くする輝度低減制御手段を後退操作時に一時的に無効とする輝度低減無効化手段を備えるので、現行品に対し単に輝度低減無効化手段を追加するだけで容易且つ低コストで対策可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】自動車の車体後部の一例を示す斜視図
【図2】運転席からインストルメントパネルを見た正面図
【図3】本発明の実施例に係る制御ブロック図
【図4】液晶モニターの輝度制御の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0012】
先ず、図1〜図3において、自動車Vの車体後端部には、自動車Vの後退時に車体後方視界を撮影するリヤカメラRが設けられ、更にテールライトや自動車Vの後退時に車体後方を照らす照明手段としてのバックライトLが設けられる。
【0013】
また車室には、自動車Vの位置や進路を地図と共に表示可能なカーナビゲーション装置CNが設置される。このカーナビゲーション装置CNは、地図データを予め記憶した記憶手段や、その地図データや衛星からの位置情報等を用いて自車の位置を検出する位置測定手段を含む電子制御ユニットECUを有しており、その電子制御ユニットECUには、前席乗員が視認可能な表示部としての液晶モニターMや、そのモニター用バックランプMLが接続される。
【0014】
この電子制御ユニットECUは、液晶モニターMに乗員の指定する映像(例えばナビ映像、テレビ映像、DVD映像等)を任意且つ選択的に表示させることができる。そして、カーナビゲーション装置CNは、液晶モニターMに表示させるべき映像を乗員が電子制御ユニットECUに対し指定入力するための操作部Sを備えている。
【0015】
また電子制御ユニットECUには、乗員による後退操作(例えばシフトレバーLEに対するリバースシフト操作)を検出してリバース信号を出力する後退操作検出センサS1や、自動車Vのポジションライトの点灯を検出してポジションライト信号を出力するライト点灯センサS2が接続される。
【0016】
また、電子制御ユニットECUは、後退操作検出センサS1に回路1を介して接続される映像切換制御部Caを備えており、その映像切換制御部Caは、後退操作検出センサS1からのリバース信号に基づいてリヤカメラRの撮影映像を優先的に液晶モニターMに表示可能である。従って、カーナビゲーション装置CNの起動中において、その電子制御ユニットECUは、液晶モニターMにナビ映像、テレビ映像、DVD映像の何れかを表示させている場合でも、乗員による後退操作の実行中は、前記映像切換制御部Caがリバース信号に基づきリヤカメラRの撮影映像を液晶モニターMに表示する。
【0017】
また電子制御ユニットECUは、ライト点灯センサS2に回路2を介して接続される輝度低減制御部Cbを備えており、その輝度低減制御部Cbは、本発明の輝度低減制御手段として機能する。そして、カーナビゲーション装置CNが起動していて液晶モニターMにナビ映像、テレビ映像、DVD映像の何れかを表示させている場合において、前記ポジションライト信号が出力される場合(即ちポジションライトの点灯時)には、前記輝度低減制御部Cbは、ポジションライト信号が出力されない場合(消灯時)よりも液晶モニターMの輝度(図示例ではバックランプMLの照度)を低く制御する。これにより、ポジションライトが点灯する夜間において液晶モニターMが必要以上に明るくなり過ぎないようになっている。
【0018】
以上のカーナビゲーション装置CNの構成は、従来公知のリヤカメラ付き自動車のカーナビゲーション装置の基本構成と同様であるが、本実施例では更に、乗員の後退操作によりリバース信号が出力されている間は前記輝度低減制御部Cbを無効とする輝度低減無効化手段を備えている。
【0019】
この輝度低減無効化手段として、図示例では電子制御ユニットECUの外部に設置される外付けのリレー手段が採用される。即ち、この外付けの輝度低減無効化手段は、ライト点灯センサS2と電子制御ユニットECU(特に輝度低減制御部Cb)との間を接続する回路2の途中に介装される常閉型のリレースイッチRSで構成される。
【0020】
このリレースイッチRSのリレーコイルRScは、電子制御ユニットECUと後退操作検出センサS1との間を接続する回路1に介装され、後退操作検出センサS1が後退操作を検出してリバース信号を出力するのに応じて励磁動作してリレー接点RStを開くことにより、ライト点灯信号が電子制御ユニットECU(特に輝度低減制御部Cb)に出力されないようにする。
【0021】
かくして、後退操作検出センサS1が後退操作を検出してリバース信号を出力している間は、リレースイッチRSが作動して回路2を遮断するため、ライト点灯センサS2がライト点灯信号を出力しても、電子制御ユニットECUの輝度低減制御部Cbが無効状態におかれる。このため、後退操作がなされている場合で且つポジションライトの点灯時には、後退操作がなされていない場合で且つポジションライトの点灯時よりも液晶モニターMの輝度を高く制御して表示画面を明るく表示できるから、夜間におけるリヤカメラRの撮影映像を液晶モニターMに明確に表示させて視認性を高めることが可能となる。
【0022】
而して、本実施例において、前記電子制御ユニットECU及びリレースイッチRSは、互いに協働して本発明の表示制御装置Cを構成する。
【0023】
次に前記実施例の作用について説明する。カーナビゲーション装置CNが起動していて液晶モニターMにナビ映像、テレビ映像、DVD映像の何れかを表示させている場合において、ドライバーの点灯操作によりポジションライト信号が出力されると、電子制御ユニットECUの輝度低減制御部Cbは、ポジションライト信号が出力されない場合(消灯時)よりも液晶モニターMのバックランプの照度を低く制御する。これにより、ポジションライトが点灯する夜間において液晶モニターMが必要以上に明るくなり過ぎないようになっている。
【0024】
またドライバーが後退操作すると、これを検出した後退操作検出センサS1から出力されるリバース信号に基づき電子制御ユニットECUの映像切換制御部Caが作動して、リヤカメラRの撮影映像を、カーナビゲーション装置CNの作動状態に関係なく液晶モニターMに表示するので、ドライバーはリヤカメラRの撮影映像を見ながら後退操作を行うことができる。
【0025】
そして、このような後退操作中には、リレースイッチRSが作動して回路2を遮断するため、ライト点灯検出センサS2がライト点灯信号を出力しても、電子制御ユニットECUの輝度低減制御部Cbが無効状態におかれる。このため、後退操作がなされている場合で且つポジションライトの点灯時には、後退操作がなされていない場合で且つポジションライトの点灯時よりも液晶モニターMの輝度を高く(図示例ではポジションライトの消灯時と同等の輝度に)制御して、表示画面を明るく表示できる。従って、車体後方を照らすバックライトLを高輝度のものに変更する等しなくても、夜間におけるリヤカメラRの撮影映像を液晶モニターMに明確に表示させて視認性を高めることが可能となる。
【0026】
以上の制御手順をフローチャートで示すと、図4のようになる。即ち、ステップS1でポジションライトが点灯中か否かが判断され、消灯中であれば、ステップS2に進んで液晶モニターMの輝度を昼間のドライバーの目に合わせた最大輝度(即ち減光解除状態)に制御する。またステップS1でポジションライトが点灯していると判断された場合には、ステップS3に進んで後退操作中か否かが判断される。そして後退操作中でなければ、ステップS4に進んで、液晶モニターMの輝度を従前のポジションライト点灯時と同様に減光制御し、また後退操作中であれば、ステップS2に進んで、液晶モニターMの輝度を最大輝度(即ち減光解除状態)に制御する。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0028】
例えば、前記実施例では、輝度低減無効化手段として機能するリレースイッチRSを外付け(即ち電子制御ユニットECUの外部に配設)したものを示したが、本発明では、電子制御ユニットECUの内部回路中に、輝度低減無効化手段として機能するリレー回路を内蔵させるようにしてもよく、この場合には、電子制御ユニットECUが本発明の表示制御装置を構成する。
【0029】
また前記実施例では、輝度低減無効化手段として機能する回路手段(リレースイッチRS、内部リレー回路)を備えるものを示したが、本発明では、このような回路手段に代えて、同様の機能効果を得るための制御プログラムを組み込んだマイクロコンピュータを電子制御ユニットECUに内蔵させてもよく、この場合も電子制御ユニットECUが本発明の表示制御装置を構成する。
【0030】
また前記実施例では、後退操作がなされている場合で且つポジションライトの点灯時には、後退操作がなされていない場合で且つポジションライトの点灯時よりも液晶モニターMの輝度を高く制御するに当たり、その輝度をポジションライトの非点灯時の液晶モニターMの輝度と同一輝度となるものが示されるが、本発明(請求項2)では、ポジションライトの非点灯時の液晶モニターMの輝度よりも多少低く制御したり或いは逆に多少高く制御したりできるよう前記制御プログラムを設定してもよい。
【0031】
また前記実施例では、ライトとしてのポジションライトの消灯・点灯に応じて液晶モニターMの輝度を切換制御するようにしたものを示したが、本発明では、ヘッドライトの消灯・点灯に応じて液晶モニターMの輝度を切換制御するようにしてもよい。
【0032】
また前記実施例では、表示部として、カーナビゲーション装置CNの表示部(液晶モニターM)を用いたものを示したが、本発明は、カーナビゲーション装置に限らず、乗員により視認可能な表示部を有する他の装置(例えばテレビ装置やDVD装置等)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
C・・・・表示制御装置
Cb・・・輝度低減制御手段
ECU・・表示制御装置としての電子制御ユニット
M・・・・表示部としての液晶モニター
R・・・・リヤカメラ
RS・・・輝度低減無効化手段としてのリレースイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後方視界を撮影するリヤカメラ(R)と、乗員により視認可能な表示部(M)と、この表示部(M)に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置(C)とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラ(R)の撮影映像を前記表示部(M)に表示可能である、リヤカメラ付き自動車において、
前記表示制御装置(C)は、ライトの点灯時には消灯時よりも前記表示部(M)の輝度を低くする輝度低減制御手段(Cb)と、前記後退操作がなされている間は前記輝度低減制御手段(Cb)を無効とする輝度低減無効化手段(RS)とを備えたことを特徴とする、リヤカメラ付き自動車。
【請求項2】
車体後方視界を撮影するリヤカメラ(R)と、乗員により視認可能な表示部(M)と、この表示部(M)に乗員の指定する映像を表示させる表示制御装置(C,ECU)とを有し、乗員による後退操作中はリヤカメラ(R)の撮影映像を前記表示部(M)に表示可能である、リヤカメラ付き自動車において、
前記表示制御装置(C,ECU)は、前記後退操作がなされていない場合には前記表示部(M)の輝度をライトの消灯時よりも点灯時の方が低くなるよう制御し、また前記後退操作がなされている場合で且つライトの点灯時には、前記後退操作がなされていない場合で且つライトの点灯時よりも前記表示部(M)の輝度が高くなるよう制御することを特徴とする、リヤカメラ付き自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126500(P2011−126500A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289675(P2009−289675)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(390005430)株式会社ホンダアクセス (205)