説明

リレー式ファインダー光学系

【目的】ファインダー光学系の高さを小さくしてカメラの小型化を図る。
【構成】撮影レンズ系1の後方で、光束を折り曲げる第一反射面2の上方に近接して第二反射面5を設ける。第二反射面5の後方に位置する2枚の反射面と第二結像レンズ系7と観察光学系8は、第二反射面5の有効反射領域の下端を含む第一平面Bと上端を含む第二平面Cとの間のスペース内を、光束の光軸が通過するように置く。反射光学系6の2枚の反射面で光路をZ字状に折り曲げる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カメラ特に銀塩写真用カメラのファインダー光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラに用いられているTTL方式のファインダー光学系の一例として、電子カメラに用いられている特開平1−134440号公報や特開平2−100008号公報に記載されたものがある。特開平1−134440号公報に記載されたファインダー光学系では、撮影レンズ系を通過した被写体の光束が、撮影光路に対して進退可能な第一反射面で撮影光路に直角に反射されて、撮影レンズ系に対して撮影画面と同一の距離にある第一結像面で結像されるようになっている。しかも、第一反射面と第一結像面の間に第二及び第三反射面を設けることで光路を折り曲げて光路長が長くなるようにし、第三反射面で曲げられた光束が撮影レンズ系の光軸と直交し且つ離れる方向に進むようになっている。そして、この光束は第一結像面で結像された後、第四反射面で撮影レンズ系の光軸と略平行な方向に反射されて接眼レンズ系を通過するが、第四反射面以降、第二結像レンズ系及び接眼レンズ系は一直線上に並べられた構成になっている。このファインダー光学系を備えたカメラでは、撮影レンズ系の最後面から撮影画面までの距離が長いために、第一反射面と第一結像面の間でファインダー光学系の光路を曲げないと撮影レンズ系の光軸から第一結像面までの距離が長くなって、ファインダー光学系の高さ即ち撮影画面の短辺方向(通常、撮影画面の短辺方向に撮影光学系とファインダー光学系が並べられている)の高さが大きくなり、カメラ本体の大型化を招くことになるわけである。
【0003】又、特開平2−100008号公報に記載されたファインダー光学系では、同様に第一反射面で反射された被写体の光束は第一結像面で結像された後、第二及び第三反射面で折り曲げられて光束が撮影レンズ系の光軸と垂直な方向に遠ざかる向きに進み、その後三枚の反射面で折り曲げられることで、第二反射面から出る光束とほぼ同一の高さ位置まで撮影レンズ系の光軸に近づけられ、しかも撮影レンズ系の光軸とほぼ平行な光束となって接眼レンズ系を通過することになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述の従来技術のうち前者の構成では、第二及び第三反射面で光路を折り曲げるようにしても、第三反射面で撮影レンズ系の光軸から遠ざかる方向に光束が曲げられるために、ファインダー光学系の高さが大きくなる。そのため、カメラ本体の小型化を図る点では不十分な構成であることに変わりはない。しかも、第四反射面以降の光学系では、撮影レンズ系の光軸と略平行に、第二結像レンズ系及び接眼レンズ系を直線上に配列してあるために、第四反射面から接眼レンズ系までの距離が長くなる。そのため、この光学系をそのまま銀塩写真用カメラに採用すると、撮影光学系に色分解プリズムが配設されない分だけ撮影光学系の後方の光路長が短くなり、ファインダー光学系だけがカメラ本体の後方から突出することになる。そのため、この点からも、このファインダー光学系の構成ではカメラの小型化は達成され得ないことになる。又、後者の構成においても、第三反射面で反射される光束が撮影レンズ系の光軸から遠ざかる向きに曲げられるため、ファインダー光学系の高さが大きくなり、カメラ本体が大型化するという前者と同様の欠点がある。
【0005】本発明は、このような課題に鑑みて、ファインダー光学系の高さを小さくできて、カメラ本体を小型化できるようにしたリレー式ファインダー光学系を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明によるリレー式ファインダー光学系について、図1及び図2に基づいて説明する。図1はファインダー光学系の配設位置を示すカメラの光学系の部分的な斜視図、図2は第一結像面及びその後方のファインダー光学系の構成例である。図1において、撮影レンズ系1の後方には、撮影レンズ系1を通過する被写体像の光束を撮影画面3に導くための光路に対して進退可能な第一反射面2が配設されている。第一反射面2の後方に位置する撮影画面3は横長の矩形に形成されている。第一反射面2の反射光路は撮影レンズ系1の光軸と直交する方向にあり、その光路上には、被写体像の第一結像面4と第一結像面4を通過した光束を反射させる第二反射面5とが順次配設されている。そして、第二反射面5で折り曲げられる光束の光路上には、図2に示すような2枚又はそれ以上の反射面から成る反射光学系6と、反射光学系6内又はその前後に位置する第二結像レンズ系7と、反射光学系6の後方に位置する観察光学系8が順次配設されている。
【0007】しかも、第二反射面5から観察光学系8の射出面に至るまでの光束の光軸が、第二反射面5の有効反射領域の下端を含み且つ撮影レンズ系1の光軸に平行な第一平面Bと、第二反射面5の有効反射領域の上端を含み且つ第一平面Bに平行な第二平面Cとの間に収められるように、第二結像レンズ系7,観察光学系8及び反射光学系6が配置されている。或いは、第二反射面5で反射されて観察光学系8の射出端に至るまでの光束が第一平面B及び第二平面Cの間に収められるようにしてもよい。
【0008】上述のような構成を有するファインダー光学系について更に説明すると、まず、第二反射面5を第一反射面2に対し高さ方向(撮影画面3の短辺方向)の近くに配置することで、撮影レンズ系1の光軸からファインダー光学系が遠く離れ過ぎないようにする。又、第二結像レンズ系7の結像倍率の絶対値を1より小さくすると、ファインダー光学系の中で第一結像面4の領域で最も光束が拡大されることになり、それに伴って、第二反射面5はファインダー光学系の他の光学要素と比較して最も大型になる。従って、第二反射面5の有効反射面よりも撮影レンズ系1の光軸から遠ざかる方向に他の光学系が突出するように配設されると、ファインダー光学系の高さがその分だけ大きくなり、カメラ本体の大型化を招くことになり、好ましくない。尚、有効反射面とは、第二反射面5を他の部材に固定するために隠れる部分を除いた、光束を反射させ得る領域をいう。又、これら他の光学要素の設置位置が逆に撮影光軸に近づき過ぎると、シャッター機構やフィルムローディング機構の設置スペースが侵され、これら機構が反対側に移動させられるために外向き方向のスペースが拡張され、やはりカメラ本体の大型化につながることになり、好ましくない。
【0009】そこで本発明では、図1において、撮影レンズ系1の光軸を通り撮影画面3の長辺と平行な面を基準面Aとし、第二反射面5の有効反射面に関し、基準面Aから最も近い部分(下端)を含み且つ基準面Aに平行な面を第一平面Bとし、基準面Aから最も遠い部分(上端)を含み且つ基準面Aに平行な面を第二平面Cとした場合、第一平面Bと第二平面Cとの間のスペースに第二結像レンズ系7及び観察光学系8が配設されるようにする。このようにすれば、ファインダー光学系の(撮影画面3の短辺方向の)高さが第二反射面5の位置付近に抑えられて小さくなり、小型化されたカメラを実現できる。又、銀塩写真用カメラにおいては、電子カメラと比較して、第二反射面5からカメラ本体後端までの距離が短い。そのため、ファインダー光学系が所定の光路長を確保しなければならないことを考慮すると、第二反射面5の後方に第二結像レンズ系7と観察光学系8を一直線状の光軸に沿って配設した場合、ファインダー光学系の光学要素がカメラ本体の後方に突出することになり、カメラ本体の小型化を達成することが困難になる。そこで、必要な光路長を確保した状態でファインダー光学系をコンパクトにするには、少なくとも2枚以上の反射面で光路を折り曲げることが必要である。そのため、本発明では、反射光学系6が第二反射面5と観察光学系8の間に配設されるように構成した。
【0010】又、第二反射面5から観察光学系8の最後面までの光路の光軸の方向ベクトルの成分について考えてみると、この光軸は反射光学系6によって複数回屈曲させられる。2枚の反射面によって屈曲される前後の光軸を夫々D1 ,D2 とすると、これらの各光軸D1 ,D2 は夫々別々の方向を向いており(同一方向を向いていてもよい)、このうち光軸D1 について説明すると、この光軸D1 の方向ベクトルを基準面Aに垂直な方向の成分Da と、基準面Aへの射影成分Db とに分解した場合、基準面Aに垂直な方向の成分Da より基準面Aへの射影成分Db の方が大きければ、この光軸D1 が撮影レンズ系1の光軸から著しく遠ざかることは防止できる。光軸D2 についても同様のことがいえる。従って、図1に示すB面とC面の間に挟まれた領域に、第二結像レンズ系7と観察光学系8と反射光学系6を収納するためには、反射光学系6による2枚又はそれ以上の反射面による屈曲前後の各々の光軸D1 ,D2 ,‥‥が、下記の条件を満たす状態で位置するように屈曲されることが必要である。即ち、光軸D1 ,D2 ,‥‥の方向ベクトルについて、基準面Aに垂直な方向の成分Da の最大値をαとし、基準面Aへの射影成分Db の最小値をβとすると、α<β (1)
を満たせばよい。これによって、反射光学系6によって光束が複数回屈曲させられても、基準面Aに垂直な方向には光軸D1 ,D2 ,‥‥は少しの距離しか移動しないので、第二反射面5から観察光学系8に至るまでの間に、撮影光軸から著しく遠ざかったり、近づいたりすることはない。
【0011】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例について説明する。本発明の第一実施例は上述した図2及び図3に示されており、図2は第一結像面4後方のファインダー光学系の構成を示す平面図であり、上述した構成例と同一の構成を有しているものである。図3は図2の構成の側面図である。尚、上述の構成例と同一又は同様の部材には同一の符号を用いるものとする。図1に示すように、撮影レンズ系1の後方に、被写体像の撮影光路に対して進退可能な第一反射面2が配設され、撮影レンズ系1の光軸と直交する第一反射面2の反射光路上には、被写体像の第一結像面4と第二反射面5が順次配設されている。そして、第二反射面5で折り曲げられた光路上に位置する後方の光学系は、第二反射面5の有効反射領域の下端を含む第一平面B及び上端を含む第二平面Cの間を光束又は光軸が通過するように、配設されている。即ち、反射光学系6は第三反射面10と第四反射面11の2枚の反射面から成っていて、第二反射面5からの光束の光軸を第一平面B及び第二平面C間のスペース内でZ字状に折り曲げるようになっている。又、両反射面10,11間には第二結像レンズ系7が配設され、第四反射面11の後方には観察光学系8が配設されている。これにより、必要な光路長は確保され、しかもファインダー光学系の光学要素は撮影光学系の後端を越えてカメラ本体の後方に突出することはない。
【0012】本実施例によるファインダー光学系はこのように構成されているから、カメラの撮影レンズ系1から入射された被写体像の光束は、第一反射面2で撮影レンズ系1の光軸と直交する方向に折り曲げられ、第一結像面4に結像される(図1参照)。その後、第二反射面5で第一平面B及び第二平面C間の方向に反射され、図2R>2に示すように第三反射面10で折り曲げられて第二結像レンズ系7を介して像がリレーされ、第四反射面11で再び折り曲げられて観察光学系8を通過して、観察されることになる。
【0013】以上のように本実施例では、撮影レンズ系1の光軸から離れる方向の光路はほぼ第一反射面2と第二反射面5の間だけであり、しかもこの距離は比較的短く設定してあるから、ファインダー光学系の高さ即ち撮影画面の短辺方向の高さを従来のこの種ファインダー光学系より短くすることができる。しかも、第一平面Bと第二平面Cの間にZ字上に光軸を折り曲げる反射光学系6が設けられているから、ファインダー光学系の全長もコンパクトにすることができて、カメラ本体の小型化を図ることができる。
【0014】次に本発明の第二実施例を図4及び図5により説明する。図4はファインダー光学系の第一結像面4及びその後方の光学系の構成を示す平面図であり、図5R>5は図4の側面図である。本実施例では、第二反射面5と観察光学系8との間に位置する反射光学系6として4枚の反射面が設けられており、第三反射面10及び第四反射面11と、第五反射面12及び第六反射面13によって、光束が2回Z字状に折り曲げられるようになっている。第二結像レンズ系7は第四反射面11と第五反射面12の間に配設されている。
【0015】本実施例では、第一結像面4の中心を通過する撮影画面3の短辺方向の直線に対して、観察光学系8を射出する光束の光軸の(撮影光軸方向に対する)ズレが小さく、又光束を2回Z字状に折り曲げることで、第二反射面5の後方に配設される各光学要素も上述の短辺方向の直線に対してより近接した位置に配設されることになるから、ファインダー光学系全体の長さが一層短くなり、よりコンパクトにすることができる。
【0016】次に、上述の各実施例におけるファインダー光学系の、第一結像面4より後方の光学系の数値例について述べる。尚、図6は第一及び第二実施例の光学系を、反射面を除いて光軸方向に展開した状態の構成図である。
第二結像レンズ系7の焦点距離f=24.107mm観察光学系8の焦点距離f=27.5mm二次結像倍率は−0.421
【0017】r1 =∞(第一結像面4)
1 =73.899r2 =9.0637d2 =2.4021 n1 =1.83400 ν1 =37.16r3 =−48.8951d3 =1.1282r4 =−16.1215d4 =0.9412 n2 =1.72825 ν2 =28.46r5 =7.8026d5 =4.9807r6 =46.5701d6 =2.3925 n3 =1.77250 ν3 =49.66r7 =−21.1548d7 =27.8391r8 =22.4927d8 =6.1600 n4 =1.49260 ν4 =58.02r9 =−24.1401(非球面)
9 =25.4429r10=19.9501(非球面)
10=3.520 n5 =1.49260 ν5 =58.02r11=−90.0887d11=15.0000r12=∞(アイポイント)
【0018】非球面係数第9面P=1.0000 E=0.67618×10-4F=−0.62092×10-7第10面P=1.0000 E=−0.22539×10-4F=−0.62092×10-7
【0019】但し、上述の数値例において、r1 ,r2 ,r3 ,‥‥は各レンズ面の曲率半径、d1 ,d2 ,d3 ,‥‥は各レンズの肉厚又はレンズ間隔、n1 ,n2 ,n3 ,‥‥は各レンズの屈折率、ν1 ,ν2 ,ν3 ,‥‥は各レンズのアッベ数である。尚、上述の数値例における非球面形状は、上述の非球面係数を用いて次の式で表される。但し、光軸方向の座標をX、光軸と垂直な方向の座標をYとする。又、Pは円錐係数、Eは4次の項の非球面係数、Fは6次の項の非球面係数である。
X=(Y2 /r)/{1+√(1−PY2 /r2 )}+EY4 +FY6
【0020】
【発明の効果】上述のように、本発明に係るリレー式ファインダー光学系は、第二反射面で反射された光束の光軸が第二反射面の有効反射領域の下端と上端を夫々含む第一平面と第二平面との間に収められるように、第二結像レンズ系,観察光学系及び少なくとも2枚の反射面が配置されているから、光学系の高さをより小さくすることができて、ファインダー光学系の小型化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるファインダー光学系の原理を説明するための要部斜視図である。
【図2】本発明の原理の構成例を示すと共に第一実施例でもあるファインダー光学系の要部平面図である。
【図3】図2の構成の側面部である。
【図4】本発明の第二実施例の要部平面図である。
【図5】図4の構成の側面図である。
【図6】第一及び第二実施例の光学系を光軸方向に展開した図である。
【符号の説明】
1……撮影レンズ系、2……第一反射面、3……撮影画面、4……第一結像面、5……第二反射面、6……反射光学系、7……第二結像レンズ系、8……観察光学系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】物体側より順に撮影レンズ系と、該撮影レンズ系を通過した光束を二つの光路に分割する第一反射面と、該一方の反射光路上に撮影レンズ系によって形成される第一結像面と、該第一結像面を通過した光束を反射させる第二反射面と、第一結像面上の像を再結像させる第二結像レンズ系と、該第二結像レンズ系によって像が結像する第二結像面と、該第二結像面上の像を観察するための観察光学系と、前記第二反射面と観察光学系の間に設けられた少なくとも2枚の反射面と、が備えられたリレー式ファインダー光学系において、前記第二反射面から観察光学系の射出面に至るまでの光束の光軸が、前記第二反射面の有効反射領域の下端を含み且つ撮影レンズ系の光軸に平行な第一平面と、前記第二反射面の有効反射領域の上端を含み且つ第一平面に平行な第二平面との間に収められるように、前記第二結像レンズ系,観察光学系及び少なくとも2枚の反射面が配置されていることを特徴とするファインダー光学系。
【請求項2】前記第二反射面で反射されて観察光学系の射出端に至るまでの光束が前記第一平面及び第二平面の間に収められていることを特徴とする請求項1に記載のリレー式ファインダー光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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