説明

リング状パッキンの装着用治具

【課題】リング状パッキンを装着部に均一な伸張状態で装着するための装着用治具を提供すること。
【解決手段】装着用治具1の一端にリング状パッキン2のリング内に挿入される挿入部10を形成し、他端にリング状パッキン2を装着する土手によって形成された装着部の面積よりも大きな断面積を有してリング状パッキン2を拡張する拡張部11を形成し、一端と他端との間に断面積を連続して増加する柱部12を形成する。これにより、挿入部10にあるリング状パッキン2を、柱部12を介して拡張部11に移動させて徐々に拡張し、拡張された状態のリング状パッキン2を装着部に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機器の防水のために用いられるリング状パッキンを装着部に装着するための装着用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種機器における携帯用電話機にあっては、外部メモリ、電子カメラ、イアホンなどを適宜に使用することがある。そのため、携帯用電話機にはこれらの外部機器用のコネクタが設けられている。一方、携帯用電話機は屋外で使用されて雨に当ったり、水没させてしまったりするので、コネクタ部分に防水機構を施して内部の電気回路などの電子部品を保護している。この防水機構は、コネクタ部分を蓋で覆うと同時に装着されたリング状パッキンを圧縮するものが用いられている。
【0003】
このようにして確実な密封状態を得るためには、リング状パッキンが均一に伸張されて装着させていることが重要である。リング状パッキンが部分的に過度に伸張されているとその部分に隙間を生じてしまい確実な密封状態が得られない。一方、リング状パッキンが部分的に十分に伸張されず径の太いところにおいては、この部分が装着部の正常な位置からはみ出してしまい蓋を浮き上がらせてしまうなどの弊害を生じさせる。
【0004】
従来においては、下記の特許文献1(特開平7−266221号公報)に開示されているように、リング状パッキンに相当するOリングが局部的に伸ばされたり、ねじられた状態で取り付けられたりしないようにした技術が提案されている。これは、加圧盤の底面に形成した直視できないOリング取付溝にOリングを嵌合させるものである。
【0005】
すなわち、この特許文献1に開示された技術は、局部的な伸びなどを生じさせないために加圧盤の底面に対向させて取付プレートを配置し、取付プレートの上面にOリング取付溝と同一径のOリング嵌合溝を設けたものである。Oリング取付溝にOリングを取り付けるには、Oリング嵌合溝にOリングを配置して加圧盤を下げて取付プレートを押圧し、Oリング嵌合溝からOリング取付溝にOリングを移して取り付けるようにしたものである。
【特許文献1】特開平7−266221号公報(段落[0006]〜段落[0012])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リング状パッキンを土手によって形成される装着部に装着する場合は、リング状パッキンが土手の外側に装着されるので、リング状パッキンを一旦大きく伸ばす必要がある。そのため、上記特許文献1に開示されたOリング嵌合溝とOリング取付け溝を向かい合わせてOリングを移行させるような従来技術を適用することができない。
【0007】
従って、リング状パッキンを土手によって形成される装着部に装着する場合には、手作業によってリング状パッキンを伸ばしながら装着部に装着する方法をとらざるを得ない。そのため、リング状パッキンを均一な伸張状態で装着することが困難であった。特に、径の小さいリング状パッキンを用いている場合は好ましい状態で装着することが極めて難しかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、各種機器の防水のために用いられる土手によって形成された装着部にリング状パッキンを均一な伸張状態で装着する装着用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係るリング状パッキンの装着用治具の発明は、リング状パッキンを装着部に装着するためのリング状パッキンの装着用治具において、リング状パッキンのリング内に挿入される挿入部を一端に形成し、前記リング状パッキンを装着する土手によって形成された装着部の面積よりも大きな断面積を有して該リング状パッキンを拡張する拡張部を他端に形成し、前記一端と他端との間に断面積を連続して増加する柱部を形成してなることを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に係るリング状パッキンの装着用治具の発明は、前記他端の端面には、前記土手の内側に形成される凹部に嵌合する突出部を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項3に係るリング状パッキンの装着用治具の発明は、前記挿入部、柱部及び拡張部は断面を円形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述した解決手段により以下に述べるとおりの優れた効果を奏する。
【0013】
即ち、本願の請求項1に係る発明のリング状パッキンの装着用治具によれば、リング状パッキンのリング内に挿入部を挿入することにより、リング状パッキンは装着用治具の一端側に取付けられ、その後、他端方向に移動させることにより徐々に均一に拡張させることができるようになる。
【0014】
そして、他端を装着部に当てた状態において、拡張部に位置されたリング状パッキンは装着部の面積よりも大きく拡張されているので、そのまま土手の外側から装着される。従って、リング状パッキンは装着部に伸張にむらのない状態で装着されるので、全域に亘って均一な圧縮状態となって装着部における密封が確実となる。また、部分的に過度な圧縮状態を生じないので経年変化によって密封状態の劣下を生じない。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明のリング状パッキンの装着用治具によれば、突出部を土手の内側の凹部に嵌合させることにより装着用治具と加圧蓋とを一体にできるので、リング状パッキンを装着用治具で拡張させてから加圧蓋の装着部に装着する連続的な作業が容易となる。
【0016】
また、本願の請求項3に係る発明のリング状パッキンの装着用治具によれば、リング状パッキンは挿入部、柱部及び拡張部を移動させて拡張される際に、これら挿入部、柱部及び拡張部の断面が円形状であるために均一に伸張させることが容易となる。その結果、装着部に装着されるリング状パッキンは伸張状態にむらがなくなり密封状態が確実なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一実施の形態を例示するものであって、本発明をこの実施の形態に特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は実施例におけるリング状パッキンのリング内に挿入部を挿入した状態の装着用治具を示す斜視図、図2は実施例に適用されるコネクタ部が隣接して2個設けられている携帯用電話機を示す斜視図、図3は図2におけるリング状パッキンを用いて密封するコネクタ部分を示す斜視図、図4は図3におけるコネクタ部分を覆う加圧蓋を示す斜視図、図5は実施例における装着用治具と加圧蓋とを一体にした状態を示す斜視図、図6は実施例における装着用治具と加圧蓋とを一体にした状態を示す側面図、図7は図6のA−A線断面図である。
【0019】
図1は装着用治具1を示し、この装着用治具1は全体的に円柱状に形成され、リング状パッキン2のリング内に挿入させるために一端に形成された挿入部10と、リング状パッキン2を拡張する太さで他端に形成された拡張部11と、挿入部10と拡張部11との間で断面積が連続して増加する形状で形成された柱部12とから構成されている。
【0020】
図2はリング状パッキン2を適用した携帯用電話機3を示すが、このリング状パッキン2の装着個所は携帯用電話機3の側面に設けられたコネクタ部4を覆う加圧蓋5である。
【0021】
コネクタ部4は、図3に詳しく示されているように、楕円状に形成されたコネクタ用凹部40と、コネクタ用凹部40内に配置されたコネクタ41と、コネクタ用凹部40の外側に形成されたガイド用孔42とから構成されている。コネクタ部4は常時、加圧蓋5で覆われているが、加圧蓋5を取外すことによってコネクタ41に外部機器を接続することができるようになっている。
【0022】
加圧蓋5は合成樹脂材からなり、図4に詳しく示されているように、裏面に設けられコネクタ用凹部40に嵌合される楕円状の土手50と、土手50の外周面に形成されたリング状パッキン2を位置させるための溝51と、ガイド用孔42に挿入されるガイド用ピン52とから構成されている。ここで、土手50と溝51とによってリング状パッキン2を装着するための装着部53が形成されている。
【0023】
また、ガイドピン52の先端には、ガイド用孔42の底に形成された凹部分(図示せず)に係合する膨出部54が形成されている。更に、土手50には複数個所に係止爪55が形成され、コネクタ用凹部40には係止爪55を係合させるための係合用切り欠き43が形成されている。
【0024】
装着用治具1における他端の端面には、図1及び図5〜図7で示すように、土手50で囲まれて形成される加圧蓋側凹部56に嵌合される突出部13が設けられている。
【0025】
次に、上述した本発明の実施例による装着用治具1を用いてリング状パッキン2を装着部53に装着する手順を説明する。
【0026】
まず、図5〜図7で示すように、加圧蓋5は加圧蓋側凹部56に突出部13を嵌合して装着用治具1と一体にする。そして、挿入部10の先端部をリング状パッキン2のリング内に挿入する。その後、リング状パッキン2を均一に伸張させながら柱部12を移動させ拡張部11へと至らしめる。拡張部11に至ったリング状パッキン2は更に移動させると装着用治具1から外れて土手50へと移る。土手50に移ったリング状パッキン2は収縮して溝51に位置される。
【0027】
その後、加圧蓋5は、加圧蓋側凹部56に突出部13が嵌合している状態を解除して装着用治具1から分離する。分離された加圧盤5は携帯用電話機3のコネクタ部4に取付けてこれを覆う。
【0028】
この加圧蓋5のコネクタ部4への取り付けは次のように行う。すなわち、ガイドピン52をガイド用孔42に挿入して加圧蓋5の位置決めを行ってから、加圧蓋5を強く押して膨出部54をガイド用孔42の底の凹部に係合させると同時に、係止爪55を係合用切り欠き44に係合させて行う。取り付け状態においては、装着部53に装着されたリング状パッキン2がコネクタ用凹部40の側壁との間で圧縮され、コネクタ用凹部40内への浸水を阻止するようになる。
【0029】
上述した本発明の実施例によれば、リング状パッキン2のリング内に挿入部10を装着することにより、リング状パッキン2は装着用治具1の一端側に取付けられ、その後、他端方向に移動させることにより徐々に均一に拡張される。そして、他端の端面を装着部53に当てた状態において、拡張部11に位置されたリング状パッキン2は装着部53の面積よりも大きく拡張されているので、そのまま装着部53の外側から収縮しながら装着される。従って、リング状パッキン2は装着部53に伸張にむらのない状態で装着されるので、全域に亘って均一に圧縮されてコネクタ部4を密封する。
【0030】
また、装着用治具1と加圧蓋5は突出部13を加圧蓋側凹部56に嵌合することにより一体となっている。そのため、リング状パッキン2は装着用治具1で拡張された後に連続して加圧蓋5の装着部53に装着される。特に、リングの径が小さいリング状パッキン2を装着する場合には、作業が容易となる。
【0031】
更に、挿入部10、柱部12及び拡張部11の断面が円形状であるため、リング状パッキン2は挿入部10から拡張部11への移動による拡張の際に均一に伸張させることが容易となる。そのため、装着部53に装着されたリング状パッキン2には伸張状態にむらを生じさせない。
【0032】
尚、本発明の実施例においては、挿入部10、柱部12及び拡張部11は断面を真円としたが、リング状パッキン2を均一に伸張させることが可能な範囲で楕円状であってもよい。
【0033】
尚、また、本発明の実施例においては、装着部53は加圧蓋5側に設けたものであるが、コネクタ部4側に設けたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施例におけるリング状パッキンのリング内に挿入部を挿入した状態の装着用治具を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に適用されるコネクタ部が隣接して2個設けられている携帯用電話機を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2におけるリング状パッキンを用いて密封するコネクタ部分を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3におけるコネクタ部分を覆う加圧蓋を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施例における装着用治具と加圧蓋とを一体にした状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施例における装着用治具と加圧蓋とを一体にした状態を示す側面図である。
【図7】図7は、図6のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 装着用治具
2 リング状パッキン
3 携帯用電話機
4 コネクタ部
5 加圧蓋
10 挿入部
11 拡張部
12 柱部
13 突出部
40 コネクタ用凹部
41 コネクタ
42 ガイド用孔
43 係合用切り欠き
50 土手
51 溝
52 ガイド用ピン
53 装着部
54 膨出部
55 径止爪
56 加圧蓋側凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状パッキンを装着部に装着するためのリング状パッキンの装着用治具において、
リング状パッキンのリング内に挿入される挿入部を一端に形成し、
前記リング状パッキンを装着する土手によって形成された装着部の面積よりも大きな断面積を有して該リング状パッキンを拡張する拡張部を他端に形成し、
前記一端と他端との間に断面積を連続して増加する柱部を形成してなることを特徴とするリング状パッキンの装着用治具。
【請求項2】
前記他端の端面には、前記土手の内側に形成された凹部に嵌合する突出部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリング状パッキンの装着用治具。
【請求項3】
前記挿入部、柱部及び拡張部は断面を円形状としたことを特徴とする請求項1に記載のリング状パッキンの装着用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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