説明

リン含有デンドリマー類、それらの製造方法、並びにアクチニド及びランタニドを抽出するためのデンドリマー類の使用

【課題】金属抽出、特にランタニド及び最も詳しくはアクチニドのような金属類の抽出の分野で極めて有利な性能特性を有する新規のリン含有デンドリマー類の提供。
【解決手段】本発明は、核、少なくとも1つの世代、及び完全に又は部分的に同一又は異なる単位から成る外部層を有しする新規のリン含有デンドリマーに関するものであり、前記単位は次式(I)を満足する:
【化1】


(式中、R及びRは、同一でも又は異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である)。
これらのデンドリマー類は、アクチニド及びランタニドを含む水溶液からそれらを抽出するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、新規のデンドリマー類、それらの製造方法、並びにアクチニド及びランタニドのような金属類の抽出のためのデンドリマー類の使用である。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、ランタニド及び最も詳しくはアクチニドのような金属類の抽出に有用な特性を有するリン含有官能基を包含するデンドリマー類に関する。
【0003】
従って、これら新規のデンドリマー類は、アクチニドのような金属類の抽出に使用ができるが、これらの金属類は、使用済み核燃料再処理設備又は使用済み核燃料溶解溶液から発生する水性流出物のような水溶液の中に存在している。
【背景技術】
【0004】
デンドリマー類は、樹木形成プロセスにより中心核の周りに組み合わされるモノマーから成る高分子である。
【0005】
従って、図1は、次の部分を有する1つの特定のデンドリマーの概略構造を示している:
− 単原子からでも、或いは1個の基(例えばNH)を形成する原子の定義された集合体、複素環、又は大員環さえからでも形成されて、図1の参照番号1で表示されている核(又は中央層);
− 核から外周部へ広がる1つ以上の世代であり、各々、第1世代、第2世代、及び第3世代を表す参照番号2、3、4により図の中で表示され、各世代は、第1世代について言えば核に、その他の世代について言えば前の世代に共有結合された単位の集合体から成る;及び
− 参照番号5で表示される外部層であって、最終世代の単位に共有結合された外周部単位を含み、通常、前記外周単位が官能性をデンドリマー分子に付与する。
【0006】
そのような分子を得るために2つのタイプの合成方法を利用することが可能である:
− デンドリマーの多官能化表面で益々増大する数の分子をグラフト化することにより核から外周部へ起こる発散(divergent)合成;及び
− 最終段階の過程で多官能核へ付着するデンドロンと呼ばれるデンドリマーフラグメントを使って外周部から核へデンドリマーを構築することにある収束(convergent)合成。
【0007】
従って、それらの構造(規則性多官能ポリマー)及びそれらの末端部に大多数の官能基が存在することと関連があるそれらの特別な特性のために、デンドリマー類は、多くの用途、特に触媒作用の分野で触媒担体として、及び医薬品分野で有効成分放出薬剤としての用途を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主題は、金属抽出、特にランタニド及び最も詳しくはアクチニドのような金属類の抽出の分野で極めて有利な性能特性を有する新規のリン含有デンドリマー類である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらのリン含有デンドリマー類は、本発明によると、核、少なくとも1つの世代、及び完全に又は部分的に同一又は異なる単位から成る外部層を含み、前記単位は次式(I)を満足する:
【0010】
【化9】

【0011】
(式中、R及びRは、同一でも又は異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である)。
【発明の効果】
【0012】
従って、デンドリマータイプの樹木構造と外周部の周りの式(I)の単位との関連によって、得られる分子は、金属類、特にアクチニド金属類の抽出には特に有効となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上式(I)では、R及びRの各基はアルキル基でもよい。本発明により、これらのアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル及びi−ブチルの各基のような好ましくは1〜20個の炭素原子を有する線状又は枝分かれアルキル基でもよい。
【0014】
及びRの各基は、また、アルコキシ基でもよい。これらの基は、例えば、メトキシ基及びエトキシ基のような1〜20個の炭素原子を有する線状又は枝分かれでもよい。
【0015】
及びRの各基は、また、アリール基でもよい。R及びRの各基に使用できるアリール基は、環の1個の炭素原子から水素原子を取り除くことによりベンゼン環又は複素環式環のような芳香環から誘導される一価の基である。そのような基の例として、フェニル、ナフチル、ピリジル及びチオフェニルの各基を挙げることが可能である。
【0016】
好ましくは、R及びRの各基は、各々、1〜18個の炭素原子を有するのが好ましいフェニル基又はアルコキシ基を表す。
【0017】
本発明による特定のデンドリマー類は、次式(II)又は(III)のうちの1つを満足する単位から成る核を有する:
【0018】
【化10】

【0019】
(式中、mは2〜4の範囲の整数であり、同一又は異なる単位から成る第n世代を有し、nは1〜10の範囲の整数である)、前記単位は次式(IV)を満足する:
【0020】
【化11】

【0021】
(式中、
− mは1〜4の範囲の整数である;
− nが1より大きいとき、Rは第(n−1)世代については単結合を表し、第n世代については水素原子を表す;そして
− nが1に等しいとき、Rは水素原子を表す)。
【0022】
その他の特定のデンドリマー類は、式−NHの核、及び式(13)の単位から成る第n世代を有してもよく、n及び単位は、先行文節で示しているのと同じ定義を満足する。そのようなデンドリマーの例は、下記の説明の実験部分で実施例6の中で示されている。
【0023】
更に明白に、第(n−1)1世代(nが1より大きいとき)を構成する単位は次式(4a)を満足する:
【0024】
【化12】

【0025】
更に明白に、第n世代(nが1より大きいとき、“最終世代”と呼ばれる、或いはnが1に等しいとき、“単一世代”と呼ばれる)は次式(4b)を満足する:
【0026】
【化13】

【0027】
前記の定義を満足する1つの特定のデンドリマーは、本明細書に添付の図2に示されている。
【0028】
図2は、4に等しいmを持つ式(III)による式の核、3に等しいmを持つ式(IV)による4個の世代(即ち、nは4に等しい)、及びフェニル基(図2ではPhの記号で示されている)を表すR及びRを持つ式(I)による単位から成る外部層、を含むデンドリマーを示している。更に具体的には、次式の核に共有結合されるのは:
【0029】
【化14】

【0030】
次式の4個の単位:
【0031】
【化15】

【0032】
である:
これらの4個の単位はデンドリマーの第1世代を構成する。第1世代を構成する単位の各窒素原子に共有結合されるのは、前述のような式の2個の単位であり、こうして結合される単位の組み合わせ(数で6個)が第2世代を構成する。同様に、前述の式の2個の単位が、第2世代を構成する単位の各窒素原子に共有結合されると、こうして結合された単位の組み合わせ(数で12個)が第3世代を構成する。最後に、最終世代は式の単位:
【0033】
【化16】

【0034】
から成り、前記単位は、第3世代の窒素原子に共有結合され、最終世代の窒素原子は式の単位:
【0035】
【化17】

【0036】
に共有結合される。
【0037】
本発明により、その他の特定のデンドリマー類は、次式(II)を満足する単位から成る核を有する:
【0038】
【化18】

【0039】
及び、同一又は異なる単位から成る第n世代を有し、nは1〜10の範囲の整数であり、前記単位は次式(V)を満足する:
【0040】
【化19】

【0041】
(式中、
− mは2から5の範囲の整数であり;
− mは2から5の範囲の整数であり;
− nが1より大きいとき、Rは第(n−1)1世代については単結合であり、第n世代については水素結合である(最終世代と呼ばれる)、そして
− nが1に等しいとき、Rは水素原子を表す)。
【0042】
例えば、m及びmは3に等しくてもよい。
【0043】
更に明白に、第(n−1)1世代(言い換えると、nが1より大きいとき)を構成する単位は次式(5a)を満足する:
【0044】
【化20】

【0045】
更に明白に、第n世代(nが1より大きいとき、“最終世代”と呼ばれ、或いはnが1に等しいとき、“単一世代”と呼ばれる)を構成する単位が次式(5b)を満足する:
【0046】
【化21】

【0047】
本発明の定義によるデンドリマーが図3に示されている。
【0048】
この図では、示されているデンドリマーは、式(II)の核、2に等しいm及びmを持つ式(V)による単位を含む第3世代(即ち、nは3に等しい)、及びフェニル基(図3ではPhの記号で示されている)を表すR及びRを持つ式(I)による単位から成る外部層を含む。
【0049】
本発明の定義による特定のデンドリマー類は、官能化鉱物粒子、言い換えるとその表面が鉱物粒子と本発明のデンドリマー類の反応性官能基との間に橋かけを形成できる基を有する粒子、上にグラフト化(言い換えると、共有結合により結合される)されてもよい。
【0050】
有利なのは、そのような粒子は、グラフト化する前に、粒子の表面上に、COH、トリアジニル、とりわけ、ジクロロトリアジニル、又はエポキシドの各基を有するシリカ粒子でもよい。そのような粒子はマイクロモード(Micromod)により発売されている。そのような粒子でグラフト化すると、粒子とデンドリマーとの間に橋かけを形成する単位が形成され、前記橋かけ形成単位は、−CO−、−トリアジン−、−モノクロロトリアジン−及び−CHOH−CH−の各式を満足する。
【0051】
グラフト化されたデンドリマーの例が、実施例6に示されていて、このデンドリマーは次式で表される:
粒子 −CO−NH−(CH−N[(CH−NH]−CO−CHP(O)Ph
【0052】
本発明のデンドリマー類は、基体デンドリマー(base dendrimer)を次式(VI)の化合物と反応させることにある段階を包含する方法により製造可能である:
【0053】
【化22】

【0054】
(式中、R及びRは前記の定義の通りであり、Rは、H、p−ニトロフェニル基又は2,4−ジニトロフェニルフェニルを表す)、前記基体デンドリマーは、前記の定義の式(I)の単位を含む外部層を包含するデンドリマーを形成するように、式(VI)の前記化合物と反応できる末端官能基を有する単位から成る外部層を包含する。
【0055】
この方法の局面で使用される式(VI)の化合物は、次式(VII)に該当するアルキルホスフィナイト(alkyl phosphinite)から製造可能である:
【0056】
【化23】

【0057】
(式中、R及びRは前述の意味を有し、Rは炭素原子とブロモ酢酸エチルとの反応に引続き加水分解(Rが水素を表す化合物を形成するために)、更に引続きp−ニトロフェノール又は2,4−ジニトロフェノールによって得られる酸の随意のエステル化によって、例えば1〜4個の炭素原子を保有するアルキル基である)。
【0058】
好ましくは、基体デンドリマーと式(VI)の化合物との間の反応は、トリエチルアミンのような触媒の存在で、及びジシクロヘキシルカルボジイミドのような随意のカップリング活性剤の存在で行なわれる。
【0059】
基体デンドリマーと式(VI)の化合物との間の反応は、前記で定義された官能化シリカ粒子のような粒子の形であるのが好ましい担体上で行なわれて、基体デンドリマーが前記粒子の表面上にグラフト化されるのが有利である。本方法の局面でそのような担体を使用する有利性は、デンドリマーが前記粒子上でグラフト化されるとき、反応混合物から得られるデンドリマーを本方法の終了時に分離することが比較的容易である、即ち分離を簡単な濾過により行なうことができると言う事実にある。
【0060】
基体デンドリマーの末端官能基を構成し、式(VI)の化合物と反応できる官能基は、有利なのはリン含有化合物(VI)のCO基に付加され得る求核官能基であり、この付加は−OR基の脱離後に行なわれる。
【0061】
本発明の局面のなかでは、そのような官能基はNHであるのが好ましい。
【0062】
そのような官能基を有するそのような基体デンドリマー類は、いずれのタイプのデンドリマーでもよく、とりわけ市販のデンドリマー類でもよい。
【0063】
例としては、ポリプロピレンイミン・オクタアミン、・ヘキサコンタミン、・ドトリアコンタミン又は・テトラヘキサコンタミンのようなアルドリッチ(Aldrich)により発売のデンドリマー類を挙げることが可能である。例えば、ドトリアコンタミンデンドリマーは、外部層として32個の第一級アミン官能基の環を有し、前記アミン官能基は式(VI)の前記リン含有化合物と反応し、反応後に式(I)の単位の環から成る外部層を生成できる。
【0064】
前記ドトリアコンタミン化合物と化合物(VI)(フェニル基を表すR及びRを持つ)との反応によって、図2に示されているデンドリマーを得る。
【0065】
基体デンドリマーとして、ポリアミドアミン(PAMAM)タイプのデンドリマー類のようなデンドリテック(Dendritech)により合成されたデンドリマー類についても触れることが可能である。式(VI)の化合物との反応の後のこのタイプの第3世代デンドリマーの例は、図3に示されている。これらのデンドリマー類も合成によって製造することが可能であり、その反応スキームは図4に示されている。
【0066】
この特定の合成スキームによると、基体デンドリマーの第1世代は次のように合成される:
− 化合物(a)を得るためにメタノールの中で、アンモニアとアクリル酸メチルとの1,4−マイケル(Michael)付加反応;及び
− 化合物(b)を得るためにメタノールの中で、前記で得られた化合物(a)とエチレンジアミンとの反応。
【0067】
外周部の周りに第一級アミン官能基を有し、第1世代の化合物と呼ばれる化合物(b)は、前記の2つの反応を再び行うと、図4に示されているような第2世代の化合物(d)を得ることができる。
【0068】
式(I)の核、及び式(IV)の単位から成る世代を有する、本発明のデンドリマー類に対する前駆体基体デンドリマー類に関しては、これらは市販品を入手してもよく、図5に示されている合成スキームを使って製造してもよい(mが2に等しい場合)。
【0069】
この合成スキームは、連続して、ベンジルアミン(図2ではBz−NHで表されている)とアクリロニトリルとの反応、引続き、化合物(f)を得るためにコバルト(III)系触媒の存在で水素化ホウ素ナトリウムの作用によるニトリル官能基の−CH−NH官能基への還元を含む。これらの反応は、得たい世代の数と同じ回数が繰り返えされる。
【0070】
Bz−N−タイプの核が脱ベンジル化(図には示されていない)を行なうと、こうして遊離されるNH基が再びアクリロニトリルと反応でき、引続き、式(I)の核及び式(IV)の単位から成る世代を持つデンドリマーを形成するように還元が起こり、最終世代は末端官能基として−NH官能基を有することを留意すべきである。
【0071】
本発明によるデンドリマー類を使うと、水溶液の中に、とりわけ照射燃料を溶解するための溶液のような酸溶液の中に、及び使用済みの核燃料再処理施設から発生する水性流出物の中に存在するアクチニド及び恐らくランタニドから選ばれる少なくとも1種の金属を抽出することが可能である。特に、これらの金属類はアメリシウム及びキュリウムでもよい。
【0072】
これらの金属類のうちの少なくとも1種を含む水溶液は、1〜5モル/リットルのHNOを含む硝酸溶液でもよい。
【0073】
本発明による抽出方法を利用するために、分離対象の金属又は金属類を含む水溶液を本発明の少なくとも1種のデンドリマーと、好ましくは水溶液の中にこのデンドリマーを溶解することにより接触させ、引続き、前記水溶液の金属又は金属類を捕捉したデンドリマー又はデンドリマー類を分離するように分離段階を行なう。好ましくは、この分離段階は、フィルターの上で水溶液を、フィルターの上に残る金属又は金属類を固定しているデンドリマー類と、重力の作用によりフィルターの細孔を容易に通過する溶液とに濾別することにより行なわれる。分離段階は、単純な重力作用の他に、濾過工程を速めるために圧力勾配をかけることにある限外濾過によって行なうことも可能である。
【0074】
これらの段階(接触及び分離)は、水相からの金属又は金属類の抽出を向上させるように数回繰り返してもよいことを留意すべきである。
【0075】
本方法の第1段階(即ち、デンドリマーと処理対象水溶液との接触)は、水溶液の中で本発明の少なくとも1種のデンドリマーを、直接前記水溶液の中に前記デンドリマーを加えることによって溶解することにある。溶解は、例えば超音波処理によって促進させてもよい。
【0076】
次に、分離対象の金属又は金属類を固定しているデンドリマー又はデンドリマー類の分離は、好適なフィルター(又は膜)上で水溶液の限外濾過によって、又は簡単な濾過によって行なわれるのが好ましく、デンドリマー類のサイズは、分離のために使用されるフィルターの細孔の中にデンドリマー類が捕捉されたままになるようなサイズである。
【0077】
限外濾過は、例えば圧力勾配の作用により、多孔性フィルター(例えば、0.22〜5μmの細孔直径を有する)の使用により、水性相の中に当初存在している少なくとも幾らか金属又は金属類を固定しているデンドリマー類から水性相を分離することにある。
【0078】
分離対象のデンドリマーのサイズによって、5μmより大きい孔径を有するフィルター、又は0.01〜5μmの孔径を有するフィルター、又は0.001〜0.01μmの孔径を有するフィルターを使用できる。
【0079】
極めて低い空孔率のこれらのフィルターは、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、又はポリフルオロエチレンの各膜がよいが、鉱物膜でもよい。
【0080】
この抽出方法は、従来の抽出方法の場合によくあるように、パルスカラム、又は遠心抽出器装置のような、核を生成しなければならない液/液抽出技術を使用する必要がないと言う事実によって実施することが極めて簡単であるので、特に有利である。
【0081】
本発明の他の特徴及び利点は、次の実施例を読むと更に明白になるであろう。勿論、実施例は説明の積りであって限定するもではない。
【実施例】
【0082】
実施例1〜3は、本発明によるデンドリマー類の製造を説明する。
【0083】
実施例4〜6は、アクチニド金属及びランタニド金属を抽出する場合の、本発明によるデンドリマー類の使用を説明する。
【0084】
実施例1
実施例1は、フェニル基を表すR及びRを持つ式(I)の単位から成る外部層、次式の核:
【0085】
【化24】

【0086】
及び次式の単位から成る第2〜第5世代:
【0087】
【化25】

【0088】
を有するデンドリマーの製造を説明する。
【0089】
第4世代のデンドリマーを図2に示している。
【0090】
下記で説明する全ての配合物は、末端官能基として−NH官能基を有する基体デンドリマー類から出発するが、これのデンドリマー類は次の製品名のもとにアルドリッチ(Aldrich)より発売されている:
− ポリプロピレンイミン・オクタアミン;
− ポリプロピレンイミン・ヘキサコタミン;
− ポリプロピレンイミン・ドトリアコンタアミン;及び
− ポリプロピレンイミン・テトラヘキサコタミン。
【0091】
a)2個の世代(第2世代デンドリマー)及び式(I)の8個の単位の環から成る外部層を有するデンドリマーの製造
クロロホルム20mlの中のポリプロピレンイミン・オクタアミンデンドリマー(参照番号DAB−Am−8でAldrichより発売)110mg及びトリエチルアミン1mlの溶液を、クロロホルム10mlの中の酢酸p−ニトロフェニル(ジフェニルホスホリル)活性エステル600mgの溶液に加えた。反応混合物を室温で数日間攪拌した。次に、この混合物を濃厚アンモニア水で3回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥したのち、殆ど乾燥するまで蒸発させた。得られた残留物にヘキサンを加えると沈殿物が生成した。この沈殿物を濾過したのち乾燥した。最終生成物に該当する固体を300mg、即ち、収率81%で得た。
【0092】
この生成物の特性は次の通りであった:
H−NMR(200MHz、CDCl、δ:7.98(br t、8H、NH)、7.8−7.65(m、32H、H フェニル)、7.5−7.3(m、48H、H フェニル)、3.40(d、J=13.7Hz、16H、CH)、3.10(m、16H、CH)、2.40−2.00(m、36H、CH)、1.50−1.20(m、28H、CH)。
【0093】
b)3個の世代(第3世代デンドリマー)、4個の世代(第4世代デントリマー)、及び5個の世代(第5世代デンドリマー)を含むデンドリマー類の製造
前記の種々のデンドリマー類を製造するために次の操作方法を適用した。
【0094】
クロロホルム10mlの中の酢酸p−ニトロフェニル(ジフェニルホスホリル)活性エステル550mgの溶液を、クロロホルム20mlとトリエチルアミン1mlに溶解した好適なデンドリマー110mgの溶液に加えた。反応混合物を室温で数日間(最長で1週間)攪拌した。
【0095】
この操作過程で、反応混合物は黄色になった。次に、この反応混合物を濃厚アンモニア水溶液で3回抽出した。アンモニア相を硫酸マグネシウムで乾燥したのち、蒸発させた。油状残留物を約10mlのクロロホルム、次いで40mlのトルエンの中に溶解した。得られた混合物を再び蒸発させた。トリエチルアミンを完全に取り除くために、操作(クロロホルム+トルエンの添加及び蒸発)を4回繰り返した。最後に、この操作を終えると、残留物をクロロホルムに溶解し、次いでヘキサンを加えた。得られた沈殿物を濾過したのち乾燥した。
【0096】
第3世代デンドリマーを合成するためには、合成用の基体デンドリマーはポリプロピレンイミン・ヘキサコンタミン(参照番号DAB−Am−16でAldrichより発売)であった。
【0097】
第4世代デンドリマーを合成するためには、合成用の基体デンドリマーはポリプロピレンイミン・ドトリアコンタミン(参照番号DAB−Am−32でAldrichより発売)であった。
【0098】
第5世代デンドリマーを合成するためには、合成用の基体デンドリマーはポリプロピレンイミン・テトラヘキサコンタミン(参照番号DAB−Am−64でAldrichより発売)であった。
【0099】
化合物の特性は次の通りであった:
− 第3世代デンドリマーの場合:
収率:58%(190mg)
H−NMR(200MHz、CDCl)、δ:8.01(br s、16H、NH)、7.8−7.65(m、64H、H フェニル)、7.5−7.3(m、96H、H フェニル)、3.40(d、J=13.6 Hz、32H、CH)、3.09(m、32H、CH)、2.80−2.00(m、36H、CH)、1.50−1.20(br s、28H、CH);
− 第4世代デンドリマーの場合:
収率:73%(240mg)
H−NMR(200MHz、CDCl)、δ:8.15(br s、32H、NH)、7.8−7.65(m、128H、H フェニル)、7.5−7.3(m、192H、H フェニル)、3.43(d、J=13.6Hz、64H、CH)、3.07(m、64H、CH)、2.50−2.00(m、180H、CH)、1.50−1.20(br s、124H、CH);及び
− 第5世代デンドリマーに関して:
収率:60%(190mg)
H−NMR(200MHz、CDCl)、δ:8.21(br s、64H、NH)、7.8−7.65(m、256H、H フェニル)、7.5−7.3(m、384H、H フェニル)、3.43(d、J=13.6Hz、128H、CH)、3.06(m、128H、CH)、2.50−2.00(m、372H、CH)、1.50−1.20(br s、256H、CH)。
【0100】
実施例2
実施例2は、フェニル基を表すR及びRを持つ式(I)の単位から成る外部層、次式の核:
【0101】
【化26】

【0102】
及び次の単位から成る第4〜第5世代:
【0103】
【化27】

【0104】
を有するデンドリマー類の製造を説明する。
【0105】
第3世代のPAMAMタイプのデンドリマーを図4に示している。
【0106】
a)第4世代のPAMAMデンドリマーの製造
クロロホルム35mlの中の酢酸p−ニトロフェニル(ジフェニルホスホリル)活性エステル700mgの溶液を、クロロホルム35mlの中の32個のNH官能基を含む外部層を有する基体(第4世代)デンドリマー350mgとトリエチルアミン120mgの溶液に加えた。得られた淡黄色の溶液を室温で2.5日間攪拌した。次に、前記溶液を10%の水酸化ナトリウム溶液で4回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥して蒸発させた。得られた油状残留物をヘキサンの中でクロロホルムから沈殿させた。白色粉末を得て、これを濾過により収集したのち、乾燥した。
【0107】
化合物の特性は次の通りであった:
− 収率:6.7%(55mg)
【0108】
b)第5世代のPAMAMデンドリマーの製造
クロロホルム15mlの中の酢酸p−ニトロフェニル(ジフェニルホスホリル)活性エステル600mgの溶液を、クロロホルム35mlの中の、外層部として64個のNHアミノ官能基を有する基体(第5世代)デンドリマー215mgとトリエチルアミン210mgの溶液に加えた。得られた淡黄色の溶液を室温で2.5日間攪拌した。次に、前記溶液を10%の水酸化ナトリウム溶液で4回抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥して蒸発させた。得られた油状残留物をヘキサンの中でクロロホルムから沈殿させた。白色粉末を得て、これを濾過により収集し、乾燥した。
【0109】
化合物の特性は次の通りであった:
− 収率:16%(72mg)
【0110】
実施例3
本実施例では、第4世代デンドリマーに該当する、実施例1のデンドリマーの効力を、ユウロピウムを含む水溶液からその元素を分離する場合について評価した。
【0111】
この目的のために、異なるデンドリマー濃度(10−5モル/リットル及び2.5×10−5モル/リットル)で2個の試験を行なった。
【0112】
各試験に対して、ユウロピウム含有水性相を含むビーカーの中でデンドリマーを溶解した(溶液を超音波処理にかけることにより溶解速度を上げることができた)。
【0113】
次に、この溶液を濾過すると、デンドリマーは、フィルター上に吸収されたままのユウロピウムの一部を固定していた。得られた濾液を、予め定められた質量のデンドリマーと再び接触させ、引続き、濾過した。
【0114】
これらの操作を3回を繰り返した。
【0115】
各濾過の後に、濾液のユウロピウム濃度をγ−分光法又は液体シンチレーションによって測定した。
【0116】
次に、ユウロピウムの分布係数を次の方法で決めた、この係数は前と後の溶液の活性の差に基づいて計算される:
Kd=[(Cin−Cfin)/Cin]×V/Mext
(式中:
inは、デンドリマーが溶解される前の溶液(又は濾液)のユウロピウムの濃度である;
finは、デンドリマーが溶解されて濾過された後のユウロピウムの濃度である;
Vは、溶液の容積である;及び
extは、溶解されたデンドリマーの質量である)。
【0117】
結果を次表に示している:
【0118】
【表1】

【0119】
本表は、溶解/濾過の操作回数と共にKが増加していることを示していて、それにより、硝酸溶液の中に存在しているユウロピウムが極微量の場合でさえ、本発明のデンドリマー類は水性相からユウロピウムを分離できることを実証している。
【0120】
実施例4
本実施例では、ユウロピウム及びアメリシウムを含み、硝酸酸性度が3モル/リットルの溶液からこれら2種類の元素を分離する場合の、実施例1により製造したデンドリマー類の効力を評価した。
【0121】
種々の濃度を有するデンドリマー類(各々、第2、第3、第4及び第5世代)を、先行の実施例と同じ方法で、種々の前記の元素を含む溶液と接触させ、この操作の後に濾過を行ない、前記操作は少なくとも2回を繰り返した。
【0122】
ユウロピウム及びアメリシウムの各分布係数、並びにアメリシウム対ユウロピウムの選択係数を、先行の実施例と同じ方法で決めた。
【0123】
試験結果を下表に示している:
【0124】
【表2】

【0125】
先行の試験におけると同じ様に、この表は、両元素自体とも存在しているのが極微量の極めて低い濃度におけるアメリシウム及び、程度は少し劣るユウロピウムの除去のための、デンドリマー類の効力を示している。Am/Euの或る選択率は、溶液の中のカチオン濃度とは無関係のままであることも判る。
【0126】
実施例5
本実施例では、3M HNO溶液からEu及びAmを抽出する場合の、実施例2によって製造したデンドリマー類の効力を評価した。抽出の実施手順は実施例3及び4で説明した手順と同じであった。
【0127】
結果を次表に示している。
【0128】
【表3】

【0129】
これらCMPO PAMAMデンドリマー類の性能は、実施例4で得られた性能に極めて類似している。
【0130】
実施例6
本実施例では、下記に示しているような、粒子に共有結合されたデンドリマーを含む粒子300mgを使って、3M HNO溶液からEu及びAmを抽出する場合の、シリカ粒子上にグラフト化されたデンドリマー類の効力を評価した。
【0131】
使用したデンドリマーは次式のデンドリマーであった。
【0132】
【化28】

【0133】
−COH基がデンドリマーの−NHと反応した後に、次式に該当するグラフト化デンドリマーを得るためには、このデンドリマーがグラフト化されている粒子は、−COH基によって官能化されている粒子であった:
粒子 −CO−NH−(CH−N[(CH−NH]−CO−CHP(O)Ph
【0134】
抽出の実施手順は、実施例3及び4で説明した手順と同じであった。
【0135】
結果は次であった:
d Eu:57Kd Am:132。
【0136】
これらの結果は、本実施例のデンドリマー類が、アメリシウムに対して或る程度の選択率を持ちながらユウロピウムもアメリシウムも抽出できることを実証している。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】既に説明したデンドリマーの概略構造を示す図である。
【図2】既に説明した本発明によるデンドリマー類の式を示す図である。
【図3】既に説明した本発明によるデンドリマー類の式を示す図である。
【図4】既に説明した本発明によるデンドリマー類の合成のための基体デンドリマー類として機能するデンドリマー類を得るための合成スキームを示す図である。
【図5】既に説明した本発明によるデンドリマー類の合成のための基体デンドリマー類として機能するデンドリマー類を得るための合成スキームを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核、少なくとも1つの世代、及び完全に又は部分的に同一又は異なる単位から成る外部層を含み、前記単位は次式(I)を満足すること:
【化1】

(式中、R及びRは、同一でも又は異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である)、
を特徴とするリン含有デンドリマー。
【請求項2】
前記核が、次式(II)又は(III)のうちの1つを満足する単位から成ることであって:
【化2】

(式中、mは2〜4の範囲の整数であり、同一又は異なる単位から成る第n世代を有し、nは1〜10の範囲の整数である)、前記単位は次式(IV)を満足すること:
【化3】

(式中、
− mは1〜4の範囲の整数である;
− nが1より大きいとき、Rは第(n−1)世代については単結合を表し、第n世代については水素原子を表す;及び
− nが1に等しいとき、Rは水素原子を表す)、
を特徴とする請求項1に記載のデンドリマー。
【請求項3】
前記核が、次式(II)を満足し:
【化4】

及び次式(V)を満足する同一又は異なる単位から成る第n世代を有する単位から成る:
【化5】

(式中、
− mは2から5の範囲の整数であり;
− mは2から5の範囲の整数であり;
− nが1より大きいとき、Rは第(n−1)世代については単結合であり、第n世代については水素結合である、及び
− nが1に等しいとき、Rは水素原子を表す)、
ことを特徴とする請求項1に記載のデンドリマー。
【請求項4】
前記デンドリマーが、官能化鉱物粒子上にグラフト化されることを特徴とする請求項1に記載のリン含有デンドリマー。
【請求項5】
前記官能化鉱物粒子が、前記グラフト化の前に、−COH基、ジクロロトリアジニル基及びエポキシド基から選ばれる1種以上の基を表面上に有するシリカ粒子であることを特徴とする請求項4に記載のリン含有デンドリマー。
【請求項6】
及びRが、フェニル基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの1項に記載のリン含有デンドリマー。
【請求項7】
及びRが、1〜18個の炭素原子を有するアルコキシ基を表すことを特徴とする請求項1〜5のいずれかの1項に記載のリン含有デンドリマー。
【請求項8】
リン含有デンドリマーの製造方法であって、前記デンドリマーが、核、少なくとも1つの世代、及び完全に又は部分的に同一又は異なる単位から成る外部層を含み、前記単位は次式(I)を満足すること:
【化6】

(式中、R及びRは、同一でも又は異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である)、及び
前記方法が、基体デンドリマー(base dendrimer)を次式(VI)の化合物と反応させる段階を包含すること:
【化7】

(式中、R及びRは請求項1での定義の通りであり、RはH、p−ニトロフェニル基又は2,4−ジニトロフェニルフェニル基を表す)、
前記基体デンドリマーが、式(VI)の前記化合物と反応できる末端官能基を有する単位から成る外部層を包含すること、
を特徴とする前記方法。
【請求項9】
式(VI)の化合物と反応できる末端官能基がNH官能基であることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
基体デンドリマーと式(VI)の化合物との間の反応が、触媒の存在及びカップリング活性剤の随意な存在下で行なわれることを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒がトリエチルアミンであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カップリング活性剤がジシクロヘキシルカルボジイミドであることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
基体デンドリマーと式(VI)の化合物との間の反応が、好ましくはシリカ粒子の形態である担体上で行なわれることを特徴とする請求項8〜12のいずれかの1項に記載の方法。
【請求項14】
水性溶液の中に存在しているアクチニド及び/又はランタニドから選ばれる少なくとも1種の金属の抽出方法において、前記方法が、前記水性溶液を、完全に又は部分的に同一又は異なる単位からなる外部層を有する少なくとも1種のリン含有デンドリマーと接触させる段階を含み、前記単位が次式(I)を満足すること;
【化8】

(式中、R及びRは、同一でも又は異なってもよく、アルキル基、アルコキシ基又はアリール基である)、引続き、水性溶液の金属(類)を捕捉している又は捕捉しているデンドリマー又はデンドリマー類を分離するように分離段階を含むこと、
を特徴とする前記方法。
【請求項15】
前記デンドリマーを、抽出対象の金属又は金属類を含む水溶液と接触させる段階が、前記溶液の中に前記デンドリマーを溶解することにより行なわれることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記分離段階が、フィルターの上で前記溶液を濾過することにより行なわれることであって、前記デンドリマーが前記フィルターの上に残る金属又は金属類を固定していることを特徴とする請求項14又は15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519288(P2006−519288A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502180(P2006−502180)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050083
【国際公開番号】WO2004/076509
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】