説明

リン酸アルミニウムおよび3D−MPLを含むアジュバント組成物

(i)抗原;(ii)リン酸アルミニウムアジュバント;および(iii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含む免疫原性組成物。成分(ii)および(iii)はまた、別個のアジュバント系として用いられ得る。これら組成物の種々の特徴が開示され、少なくとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントは、リン酸アジュバントに吸着される。このアジュバント混合物は、B型肝炎ウイルス表面抗原にともなって特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に引用されるすべての書類は、それらの全体が参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ワクチンアジュバントの分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
一般に「ミョウバン(alum)」としばしば称されるアルミニウム塩は、古典的なワクチンアジュバントである。種々のさらなるアジュバントが記載され、そして詳細は、参考文献1および2のようなテキストに見出され得る。これらのアジュバントの1つは、3’脱アシル化モノホスホリルリピドA(または「3D−MPL」)である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
参考文献3〜10は、「AS04」と称されるアジュバント系を用いる非反応体肝炎患者における成功を報告し、3D−MPLおよびミョウバンの両方を含むといわれている(11〜14)。このアジュバント系に対する改変および改良を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントおよび3D−MPLアジュバントを含む。この二重のアジュバントの組み合わせは、参考文献12〜14に一般的な意味で既に記載されているが、本発明は、この組成物の多くの改変を開示している:
(a)この組成物は、200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間の浸透圧重量モル濃度を有する。
(b)この組成物は、5〜7.5の間のpHを有する。
(c)この組成物は、緩衝化されている。
(d)このワクチン中の3D−MPLの少なくとも50%は、リン酸アルミニウムに吸着されている。
(e)このワクチン中の3D−MPLは、150nmより小さい直径をもつミセル構造の形態をとる。
(f)このワクチン中の3D−MPLは、好ましくは少なくとも10%の6−アシル−鎖形態を含む、異なるアシル化形態の混合物である。
(g)この組成物は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;ソルビトール;トリエタノールアミン;トリエチルアンモニウムイオン;ラクトース;シュークロース;トレハロース;マンニトールの1つ以上を含み得る。
【0006】
これらの改変は、独立して、または組み合わせて用いられ得る。
【0007】
それ故、本発明は:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、この組成物は、200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間の浸透圧重量モル濃度を有することが特徴である。
【0008】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、この組成物は、5〜7.5のpHを有することが特徴である。
【0009】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、この組成物は、例えば、5〜7.5のpHに緩衝化されていることが特徴である。
【0010】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、すくなとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAがリン酸アルミニウムに吸着されていることが特徴である。
【0011】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、この組成物は、50μg/mlより少ない非吸着3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAを有することが特徴である。
【0012】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントが、150nmより小さい直径を有する粒子の形態であることが特徴である。
【0013】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)アシル化二糖類の混合物を含む3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、ここで、各二糖類は:(a)2つのβ−1’,6−連結2−デオキシ−2−アミノグルコース単糖ユニットを有し;(b)4’位置でリン酸化され;(c)1、3および6’位置で置換されておらず、(d)3’位置でO−アシル化され、そして(e)2および2’位置でN−アシル化され、そしてここで、アシル化二糖類の混合物が、少なくとも10重量%の、2、2’および3’位置のアシル基の各々がそれ自体が脂肪族炭素原子においてO−アシル基で置換される成分を含む。
【0014】
本発明はまた:(i)リン酸アルミニウムアジュバント;(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバント;およびソルビトール;トリエタノールアミン;トリエチルアンモニウムイオン;ラクトース;シュークロース;トレハロース;およびマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含むアジュバント組成物を提供する。
【0015】
これらの種々の特徴は、組み合わせて用いられ得る。それ故、本発明は;(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物を提供し、この組成物は、以下の性質の1つ以上を有することで特徴付けられる:
(1)200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間の浸透圧重量モル濃度;
(2)5〜7.5のpH;
(3)それは、緩衝液を含む;
(4)少なくとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAが上記リン酸アルミニウムに吸収されている;
(5)それは、50μg/mlより少ない非吸着3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAを有する;
(6)上記3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントは、150nmより小さい直径を有する粒子の形態である;
(7)上記3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントは、アシル化二糖類の混合物を含み、ここで各二糖類は:(a)2つのβ−1’,6−連結2−デオキシ−2−アミノグルコース単糖サブユニットを有し;(b)4’位置でリン酸化され;(c)1、3および6’位置で置換されておらず、(d)3’位置でO−アシル化され、そして(e)2および2’位置でN−アシル化され、そしてここで、アシル化二糖類の混合物が、少なくとも10重量%の、2、2’および3’位置のアシル基の各々がそれ自体が脂肪族炭素原子においてO−アシル基で置換される成分を含む;そして/または
(8)それは、ソルビトール;トリエタノールアミン;トリエチルアンモニウムイオン;ラクトース;シュークロース;トレハロース;およびマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0016】
本発明はまた、本発明のアジュバント組成物を含む免疫原性組成物を提供し、そして(iii)抗原をさらに含む。
【0017】
(リン酸アルミニウムアジュバント)
本発明の組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントおよび3D−MPLアジュバントを含む。用語「リン酸アルミニウム」は、当該技術分野で一般的であるが、存在している実際の化学的化合物の正確な描写ではない[例えば、参考文献2の第9章を参照のこと]。本発明は、アジュバントとして一般的に用いられる任意の「リン酸アルミニウム」を用い得、これらは、代表的には、ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、しばしば、少量の硫酸塩(すなわち、ヒドロキシリン酸硫酸アルミニウム)をまた含む。それらは沈殿によって得られ得、そして沈殿の間の反応条件および濃度は、この塩中のヒドロキシルに対するリン酸の置換の程度に影響する。ヒドロキシアパタイトは、一般に、0.3〜1.2の間のPO/Alモル比を有する。ヒドロキシアパタイトは、厳密なAlPOからヒドロキシル基の存在によって区別され得る。例えば、3164cm−1におけるIRバンド(例えば、200℃に加熱したとき)は、構造的ヒドロキシルの存在を示す[参考文献2の第9章]。
【0018】
このアルミニウム塩は、任意の適切な物理的形態をとり得るが、代表的にはアモルファスである。リン酸アルミニウムアジュバントのPO/Al3+モル比は、一般に0.3〜1.2、好ましくは0.8〜1.2、そしてより好ましくは0.95±0.1である。このリン酸アルミニウムは、一般に、特にヒドロキシリン酸塩についてはアモルファスである。代表的なアジュバントは、0.6mgAl3+/mlで含められる、0.84〜0.92のPO/Al3+モル比のアモモファスヒドロキシリン酸アルミニウムである。このリン酸アルミニウムは、一般に、粒子状である。この粒子の代表的な直径は、任意の抗原および/または3D−MPL吸着の後、0.5〜20μmの範囲(例えば、約5〜10μm)てある。リン酸アルミニウムのPZCは、ビトロキシルに対するリン酸の置換の程度に逆に相関し、そしてこの置換の程度は、沈殿によって塩を調製するために用いられる反応条件および反応体の濃度に依存して変動し得る。PZCはまた、溶液中の遊離のリン酸イオンの濃度を変化することによるか(より多くのリン酸=より酸性のPZC)、またはヒスチジン緩衝液(PZCをより塩基性にする)。本発明に従って用いられるリン酸アルミニウムは、一般に、4.0〜7.0の間、より好ましくは5.0〜6.5の間、例えば、約5.7のPZCを有する。
【0019】
このリン酸アルミニウムは、好ましくは、3D−MPL(そして、必要に応じて抗原)が添加される水溶液の形態で用いられる(NB:水性リン酸アルミニウムを「溶液」と称することが標準的であるが、厳密な物理化学的観点から、この塩は不溶性であり、そして懸濁物を形成する)。このリン酸アルミニウムを必要な濃度まで希釈し、そして3D−MPLおよび/または抗原の添加の前に均一な溶液を確実にすることが好ましい。
【0020】
3D−MPLおよび/または抗原の添加の前のAl3+の濃度は、一般に0と10mg/mlの間である。好ましい濃度は0.5と3mg/mlの間である。
【0021】
本発明の組成物を調製するために用いられるリン酸アルミニウムは、緩衝液を含み得るが(例えば、リン酸またはヒスチジンまたはTris緩衝液)、常に必要なわけではない。このリン酸アルミニウム溶液は、好ましくは、滅菌され、そして発熱物質を含まない。このリン酸アルミニウムは、例えば、1.0〜20mM、好ましくは5〜15mM、そしてより好ましくは約10mMの濃度で存在する遊離の水性リン酸イオンを含み得る。このリン酸アルミニウムはまた、塩化ナトリウムを含み得る。塩化ナトリウムの濃度は、好ましくは0.1〜100mg/mlの範囲であり(例えば、0.5〜50mg/ml、1〜20mg/ml、2〜10mg/ml)、そしてより好ましくは約3±1mg/mlである。NaClの存在は、その他の成分の吸着前のpHの正確な測定を容易にし、そしてまた浸透圧重量モル濃度に影響する。
【0022】
(3D−MPLアジュバント)
本発明の組成物は、リン酸アルミニウムアジュバントおよび3D−MPLアジュバントを含む。3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D−MPL)はまた、3脱−O−アシル化モノホスホリルリピドAまたは3−O−脱アシル−4’−ホスホリルリピドAと称される。この名前は、モノホスホリルリピドA中の還元末端グルコサミンの位置3が脱アシル化されることを示す。それは、Salmonella minnesotaのヘプトースのない改変体から調製され、そして化学的にリピドAに類似しているが、酸で壊れ易いホスホリル基および塩基で壊れ易いアシル基を欠いている。それは、単球/マクロファージ系統の細胞を活性化し、そしてIL−1、IL−2、TNF−αおよびGM−CSFを含むいくつかのサイトカインの放出を刺激する。3D−MPLの調製は、元は参考文献15に記載され、そしてその産物は、Corixa Corporationによって、商標名MPLTMの下で製造および販売されている。さらなる詳細は参考文献16〜19に見出され得る。
【0023】
代表的な組成物は、3D−MPLを、25μg/mlと200μg/mlとの間の濃度、例えば、50〜150μg/ml、75〜125μg/ml、90〜110μg/mlの範囲で、または約100μg/mlで含む。用量あたり25〜75μg/mlの3D−MPL、例えば、用量あたり、45〜55μgの間、または約50μgの3D−MPLを投与することが通常である。
【0024】
遊離には、この3D−MPLはリン酸アルミニウム上に吸収される。好ましくは、少なくとも50(重量)%、例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上またはそれより多くの3D−MPLが吸着される。吸着される%は、抗原に対するのと同じ方法で測定され得る。100μg/mlの総3D−MPL濃度を有する組成物では、そのときは、非吸着3D−MPLの濃度は、50μg/ml以下、例えば、40μg/ml以下、35μg/ml以下、30μg/ml以下、25μg/ml以下、20μg/ml以下、15μg/ml以下、10μg/ml以下、5μg/ml以下、2μg/ml以下、1μg/ml以下などであるべきである。
【0025】
3D−MPLは、それらのアシル化によって変動する(例えば、異なる長さであり得る3、4、5または6のアシル鎖を有する)関連分子の混合物の形態をとり得る。2つのグルコサミン(2−デオキシ−2−アミノ−グルコースとしてもまた知られる)単糖は、2−位置炭素(すなわち、2および2’位置)でN−アシル化されており、そしてまた3’位置でO−アシル化されている。炭素2に結合する基は、−NH−CO−CH−CR1’を有する。炭素2’に結合する基は、−NH−CO−CH−CR2’を有する。炭素3’に結合する基は、−O−CO−CH−CR3’を有する。代表的な構造は以下の通りである:
【0026】
【化1】


基R、RおよびRは各々独立して−(CH−CHである。nの値は、好ましく8〜16の間であり、より好ましくは9〜12の間であり、そして最も好ましくは10である。
基R1’、R2’およびR3’は各々独立して:(a)−H;(b)−OH;または(c)−O−CO−Rであり得、ここでRは−Hまたは−(CH−CHのいずれかであり、ここでmの値は好ましくは8〜16の間であり、そしてより好ましくは10、12または14である。2の位置ではmは好ましくは14である。2’位置ではmは好ましくは10である。3’位置ではmは好ましくは12である。基R1’、R2’およびR3’はそれ故好ましくはドデカン酸、テトラデカン酸またはヘキサデカン酸から選択される−O−アシル基である。
【0027】
1’、R2’およびR3’のすべてが−Hであるとき、上記3D−MPLは3つのアシル鎖を有する(位置2、2’および3’の各々に1つ)。R1’、R2’およびR3’の2つのみが−Hであるとき、上記3D−MPLは4つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’の1つのみが−Hであるとき、上記3D−MPLは5つのアシル鎖を有し得る。R1’、R2’およびR3’のいずれもが−Hでないとき、上記3D−MPLは、6つのアシル基を有し得る。本発明に従って用いられる3D−MPLは、3〜6のアシル鎖を備えたこれらの形態の混合物であり得るが、この混合物中に6つのアシル鎖をもつ3D−MPLを含むことが好ましく、そして特に6つのアシル鎖形態が総3D−MPLの少なくとも10重量%、例えば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上またはより多くを占めることが好ましい。6つのアシル鎖を備えた3D−MPLはが最もアジュバント活性な形態であることが見出された。
【0028】
その故、本発明の組成物に含めるために3D−MPLの最も好ましい形態は:
【0029】
【化2】


である。
【0030】
3D−MPLが混合物の形態で用いられるとき、本発明の組成物中の3D−MPLの量または濃度への参照は、この混合物中の合わせた3D−MPL種をいう。
【0031】
水性条件では、3D−MPLは、異なるサイズを備えた、例えば、直径<150nmまたは>500nmを備えたミセル凝集体または粒子を形成し得る。これらのいずれか、または両方が本発明とともに用いられ得、そしてより良好な粒子が慣用のアッセイによって選択され得る。より小さな粒子(例えば、3D−MPLの透明な懸濁物を与えるに十分小さい)が、それらの優れた活性[20]のために、本発明に従う使用に好ましい。好ましい粒子は、150nmより小さい、より好ましくは120nmより小さい平均直径を有し、そして100nmより小さい平均直径を有しさえし得る。大部分の事例では、しかし、この平均直径は50nmより小さくはない。
【0032】
3D−MPLがリン酸アルミニウムに吸着されるとき、3D−MPL粒子サイズを直接測定することは可能でないかも知れないが、粒子サイズは、吸着が起こる前に測定され得る。
【0033】
粒子直径は、動的光散乱の慣用の技法によって評価され得、これは、平均粒子直径を示す。粒子がxnmの直径を有するといわれる場合、ほぼこの平均の粒子の分布を有するが、数の少なくとも50%(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、またはそれより多く)の粒子が範囲x±25%内の直径を有する。
【0034】
(最適抗原)
本発明のアジュバントシステムは、好ましくは、抗原の投与から得られる免疫応答を増大するために抗原と組み合わせて用いられる。
【0035】
本発明のアジュバントシステムとの使用のための好ましい抗原は、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)または単純ヘルペスウイルス(HSV)からのようなウイルス抗原である。このアジュバントシステムはまた、Plasmodium falciparumからのような寄生虫抗原との使用に適切である。
【0036】
5μg/ml〜50μg/mlの間の抗原濃度、代表的には、例えば、10〜30μg/ml、15〜25μg/ml、または約20μg/mlが代表的である。5μg/用量〜50μg/用量の間の用量あたりの抗原量がまた代表的であり、例えば、10〜30μg/用量の間、15〜25μg/用量の間、または約20μg/用量である。
【0037】
この抗原は、好ましくは、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着される。吸着される組成物中の特定の抗原の%は、好ましくは、少なくとも50%(重量)、例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上またはより高く、例えば、100%までである。吸着される組成物中の抗原の%は、簡便には、例えば、遠心分離によって、非吸着物質から吸着された物質を分離することによって測定され得、ここではアルミニウム吸着抗原は容易にペレットを形成し、その一方、非吸着抗原は、上清液中に残る。上清液中の抗原の量(例えば、ELISAによって測定される)が、組成物中の抗原の総量から引かれ得、そして次に吸着された%が算出され得る。抗原が完全に吸着されること、すなわち、上清液に検出可能なものはないことが好ましい。
【0038】
B型肝炎ウイルス(HBV)は、ウイルス肝炎を引き起こす公知の作用因子の1つである。HBVビリオンは、外側タンパク質コートまたはキャプシッドによって取り囲まれた内側コアからなり、そしてこのウイルスコアは、ウイルスDNAゲノムを含む。キャプシッドの主要成分は、HBV表面抗原、またはより一般的には「HBsAg」として知られるタンパク質であり、これは、約24kDaの分子量をもつ226アミノ酸のポリペプチドである。すべての現存するB型肝炎ワクチンは、HBsAgを含み、そして、この抗原が通常のワクチン接種を受けるヒトに投与されるとき、それは、HBV感染に対して保護する抗HBsAg抗体の産生を刺激する。それ故、好ましいHBV抗原は、HBsAgである。HBsAgは、参考文献21に記載される方法を用いてリン酸アルミニウム上に吸収され得る。リン酸アルミニウムへの吸着は、周知のENGERIX−BTM産物(HBsAgが水酸化アルミニウムに吸着される)とは対照的であるが、HEPACCINETMおよびRECOMBIVAXTM産物におけるのと同じである。参考文献22に陳述されているように、リン酸アルミニウムは、水酸化アルミニウムよりHBsAgに対するより良好なアジュバントであり得る。
【0039】
ワクチン製造のために、HBsAgは、2つの様式で作製され得る。最初の方法は、慢性B型肝炎キャリヤーの血漿から粒子中の抗原を精製することを含む。なぜなら、大量のHBsAgが肝臓中で合成され、そしてHBV感染の間に血流中に放出されるからである。第2の方法は、組換えDNA方法によってタンパク質を発現することを含む。本発明との使用のためのHBsAgは、いずれかの方法によって調製され得るが、組換えによって発現されたHBsAgを用いることが好ましい。特に、このHBsAgが、Saccharomyces cerevisiae酵母における発現によって調製されることが好ましい。ネイティブなHBsAg(すなわち、血漿精製産物におけるような)とは異なり、酵母で発現されたHBsAgは、一般にグリコシル化されておらず、そしてこれは、本発明との使用のためのHBsAgの最も好ましい形態である。なぜなら、それは、高度に免疫原性であり、そして血液産物汚染のリスクなくして調製され得るからである。この酵母発現されたHBsAgは、有利には、ホスホリピドを含む脂質マトリックスを含む、実質的に球形の粒子(約20nmの平均直径)の形態である。
【0040】
精製の後、HBsAgは、(例えば、システインとともに)透析に供され得、これは、HBsAg調製の間で用いられ得るチメロサール[23]のような任意の水銀を含んだ保存剤を除去するために用いられ得る。
【0041】
「S」配列に加え、表面抗原は、プレ−S1および/またはプレ−S2配列のすべてまたは一部のような、プレ−S配列のすべてまたは一部を含み得る。
【0042】
本発明との使用のための好ましいHPV抗原は、L1キャプシッドタンパク質であり、これは、ウイルス様粒子(VLP)として公知の構造物を形成するようにアセンブルし得る。このVLPは、酵母細胞中(例えば、S.cerevisiae中)または昆虫細胞中(例えば、S.frugiperdaのようなSpodoptera細胞中、またはDrosophila細胞中)のL1の組換え発現によって産生され得る。酵母細胞には、プラスミドベクターがL1遺伝子(単数または複数)を保持し得;昆虫細胞には、バキュロウイルスベクターがL1遺伝子(単数または複数)を保持し得る。より好ましくは、上記組成物は、HPV−16およびHPV−18株両方からのL1 VLSを含む。この二価の組み合わせは、高度に有効であることが示されている[24]。HPV−16およびHPV−18株に加え、HPV−6およびHPV−11からのL1 VLPを含むこともまた可能である。発癌HPV株の使用もまた可能である。ワクチンは、HPV株あたりL1の20〜60μg/ml(例えば、約40μg/ml)を含み得る。
【0043】
本発明との使用のために好ましいHSV抗原は、膜糖タンパク質gDである。HSV−2株からのgD(「gD2」抗原)を用いることが好ましい。上記組成物は、C末端膜アンカー領域が欠失したgD[25]の形態を用い得、例えば、先欠けgDは、C末端にアスパラギン酸とグルタミンとが付加された天然タンパク質のアミノ酸1〜306を含む。このタンパク質のこの形態は、切断されて成熟283アミノ酸タンパク質を生じるシグナルペプチドを含む。アンカーの欠失は、このタンパク質が可溶性形態で調製されるることを可能にする。
【0044】
本発明との使用のために好ましいP.falciparum抗原は、スポロゾイド周囲タンパク質(CS)に基づく。これは、「RTS,S」または「TRAP」として知られる、このCSタンパク質の一部をHBsAgと融合する組換えタンパク質の形態をとり得る。RTSは、HBV表面抗原のプレS2タンパク質の4つのアミノ酸を経由してHBsAgに連結されるCSの実質的にすべてのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質である[26]。酵母中(特に、S.cerevisiae中)で発現されるとき、RTSは、リポタンパク質粒子(特にホスホリピドを含む)として産生され、そしてそれがHBVからのS抗原とともに同時発現されるとき、それは、RTS,Sとして知られる混合粒子を産生する。約1:4のRTS:S比が有用である。TRAP抗原は、参考文献27に記載されている。
【0045】
(薬学的組成物)
アジュバントおよび抗原成分に加え、本発明の組成物はさらなる成分を含み得る。これらの成分は、種々の供給源を有し得る。例えば、それらは、製造の間に用いられる抗原またはアジュバント成分の1つ中に存在し得るか、または上記抗原成分とは別個に添加され得る。
【0046】
本発明の好ましい組成物は、1つ以上の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む。
【0047】
浸透圧を制御するために、ミネラル塩、例えば、ナトリウム塩のような生理学的塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、これは、1〜20mg/mlの間で存在し得る。これは、アジュバントの混合の間、および抗原とアジュバント(単数または複数)の混合の間に存在し得る。
【0048】
組成物は、一般に、200mOsm/kgと400mOsm/kgとの間、好ましくは、240mOsm/kgと360mOsm/kgとの間、そしてより好ましくは、290〜300mOsm/kgの範囲に入る浸透圧重量モル濃度を有する。浸透圧重量モル濃度は、先に、ワクチン接種によって引き起こされる痛みに対し衝撃を有することはないことが報告されている[28]が、それにもかかわらず、浸透圧重量モル濃度をこの範囲に保つことが好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、1つ以上の緩衝液を含み得る。代表的な緩衝液は:リン酸緩衝液;Tris緩衝液;ホウ酸緩衝液;コハク酸緩衝液;ヒスチジン緩衝液;またはクエン酸緩衝液を含む。緩衝液中および3D−MPL中のリン酸基間の競争を避けるために、そのときは、リン酸緩衝液以外の緩衝液が好適であり得る。緩衝液は、代表的には、5〜20mM範囲で含まれる。
【0050】
本発明の組成物のpHは、一般に、最適安定性のために5.0〜7.5の間、そしてより代表的には5.0〜6.0の間、または6.0〜7.0の間である。
【0051】
抗原の吸収される性質に起因して、最終のワクチン産物は、濁った外観をもつ懸濁液であり得る。この外観は、微生物汚染が容易に見えず、そしてそうなのでこのワクチンは、好ましは抗微生物薬剤を含むことを意味する。これは、このワクチンが複数用量コンテナにパッケージされるとき特に重要である。含めるための好ましい抗微生物剤は、2−フェノキシエタノールおよびチメロサールである。しかし、本発明のプロセスの間に水銀の保存剤(例えば、チメロサール)を用いないことが好ましい。しかし、本発明の組成物を調製するために用いられる前に、抗原が、このような保存剤で処理される場合、痕跡量の存在がは避けられないかも知れない。しかし、安全性のために、最終組成物が25ng/mlより少ない水銀を含むことが好ましい。より好ましくは、この最終ワクチン産物は、検出可能なチメロサールを含まない。これは、一般に、組成物を作製するために用いられる成分の調製の間にチメロサールの使用を避けることによって、本発明のプロセスにおいてその添加の前に抗原調製物から水銀保存剤を除去することにより避けられる。
【0052】
製造の間に、所望の最終濃度を与えるための成分の希釈は、通常、WFI(注射用の水)で実施され得る。
【0053】
本発明の組成物中のリン酸アルミニウムの濃度は、Al3+の項目で表され、好ましくは、5mg/mlより少なく、例えば、4mg/ml以下、3mg/ml以下、2mg/ml以下、1mg/ml以下などである。
【0054】
本発明の組成物中の3D−MPLの濃度は、好ましくは、200μg/mlより少なく、例えば、150μg/ml以下、125μg/ml以下、110μg/ml以下、100μg/ml以下などである。
【0055】
本発明の組成物中の個々の抗原の濃度は、好ましくは、60μg/mlより少なく、例えば、55μg/ml以下、50μg/ml以下、45μg/ml以下、40μg/ml以下などである。
【0056】
本発明の組成物は、好ましは、患者に0.5ml用量で投与される。0.5ml用量への参照は、通常の変動、例えば、0.5ml±0.1ml、0.5ml±0.05mlなどを含むことが理解される。
【0057】
好ましい組成物は、用量あたり、約50μgの3D−MPLおよび約0.5mgのアルミニウムアジュバントを有する。
【0058】
本発明は、患者への投与のために次いで分与され得る個々の用量へのパッケージングのために適切であるバルク材料を提供し得る。上記で述べた濃度は、最終のパッケージされた用量における代表的な濃度であり、そしてバルクワクチン中のそのような濃度はより高くても良い(例えば、希釈によって最終濃度まで減少され得る)。
【0059】
本発明の組成物は、一般に、水溶液形態である。
【0060】
本発明の組成物中に存在し得るさらなる成分は:3D−MPL凝集を防ぐために用いられているかも知れない[20]ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(「Tween80」);これもまた3D−MPL凝集を防ぐために用いられているかも知れないソルビトール;3D−MPLを可溶化するために用いられいるかも知れないトリエタノールアミン;これもまた3D−MPLを可溶化するために用いられいるかも知れないトリエチルアンモニウムイオン;ラクトース;シュークロース;トレハロース;および/またはマンニトールを含む。
【0061】
(本発明のプロセス)
本発明は、本発明のアジュバント組成物を製造するためのプロセスを提供し、(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを組み合わせる工程を包含する。
【0062】
本発明はまた、本発明の組成物を製造するプロセスを提供し、(i)抗原;(ii)リン酸アルミニウムアジュバント;および(iii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを組み合わせる工程を包含する。これら成分(i)(ii)および(iii)は、任意の順序で組み合わせられ得るが、好ましは、抗原とリン酸アルミニウムが最初に混合され、そして次に3D−MPLがこの抗原/リン酸アルミニウム混合物に添加される。代替として、3D−MPLとリン酸アルミニウムが最初に混合され、そして次に抗原がこのアジュバント混合物に添加される。
【0063】
本発明は、本発明の組成物を製造するためのプロセスを提供し;(a)組換え宿主中で抗原を発現する工程;(b)この抗原を精製する工程;および(c)この精製された抗原を、(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントと組み合わせる工程を包含する。この工程(c)で組み合わせられる3つの成分は、上記に記載のように、任意の順序で組み合わせられ得る。好ましい組換え宿主は、上記のような酵母および昆虫細胞である。
【0064】
本発明は、本発明の組成物を製造するためのプロセスを提供し、(a)抗原、リン酸アルミニウムアジュバントおよび3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを組み合わせる工程;(b)この組成物の浸透圧を測定する工程;そしてこの浸透圧重量モル濃度が200〜400mOsm/kgの範囲の外側である場合、(c)この浸透圧重量モル濃度を200〜400mOsm/kgの範囲内に調整する工程を包含する。この調整は、ナトリウム塩、例えば、塩化ナトリウムのような生理学的塩の添加を含み得る。
【0065】
本発明は、本発明の組成物を製造するためのプロセスを提供し、(a)抗原、リン酸アルミニウムアジュバントおよび3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを組み合わせる工程;(b)この組成物のpHを測定する工程;そしてこのpHが5.0〜7.5の範囲の外側である場合、(c)pHを5.0〜7.5の範囲内に入るように調整する工程を包含する。この調整は、酸または塩基の添加を含み得る。
【0066】
本発明は、本発明の組成物を製造するためのプロセスを提供し、(i)抗原、(ii)リン酸アルミニウムアジュバントおよび(iii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを組み合わせる工程を包含し、ここで、成分(iii)中の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAは、150nmより小さい直径を有する粒子の形態にある。成分(i)、(ii)および(iii)は、任意の順序で混合され得る。成分(iii)は、さらに、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートおよび/またはソルビトールを含み得る。
【0067】
上記抗原およびアジュバントを組み合わせた後、本発明のプロセスは、上記混合物の0.5mlサンプルをコンテナ中に抽出し、そしてパッケージする工程を包含し得る。複数用量の状況のために、複数用量の量が、単一のコンテナに一緒に抽出され、そしてパッケージされる。
【0068】
本発明のプロセスは、上記ワクチンの使用のためのコンテナ中にパッケージするさらなる工程を包含し得る。適切なコンテナは、バイアルおよび使い捨てシリンジ(好ましくは滅菌されたもの)を含む。
【0069】
(本発明のパッケージング組成物)
本発明の組成物が、バイアルにパッケージされる場合、これらは、好ましくは、ガラスまたはプラスチック材料から作製される。このバイアルは、好ましくは、上記組成物がそれに添加される前に滅菌され得る。ラテックス感受性患者にともなう問題を避けるために、バイアルは、好ましくは、ラテックスを含まないストッパーでシールされる。このバイアルは、単回用量のワクチンを含み得るか、またはそれは、1つ以上の用量(「複数用量」バイアル)例えば、10の用量を含み得る。複数用量バイアルを用いるとき、各用量は、厳密な無菌状態下で滅菌ニードルおよびシリンジで引き抜かれるべきであり、バイアル内容物を汚染することを避けるよう注意をする。好ましいバイアルは、色のないガラスから作製される。
【0070】
上記組成物が、シリンジ中にパッケージされる場合、このシリンジは、通常、それに取り付けられたニードルを有さないが、別個のニードルがアセンブリおよび使用のためにシリンジととも提供され得る。安全ニードルが好ましい。1−インチ23−ゲージ、1−インチ25−ゲージおよび5/8−インチ25−ゲージのニードルが代表的である。シリンジには、その上に内容物のロット番号および使用期限日時がプリントされ得る剥ぎ取りラベルが提供され得、記録維持を容易にする。このシリンジ中のプランジャーは、好ましくは、ストッパーを有し、プランジャーが吸引の間に偶発的に除去されることを防ぐ。これらのシリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単回用量のワクチンを含む。このシリンジは、一般に、先端部キャップを有し、この先端部をニードルの取り付けの前にシールし、そしてこの先端部キャップは、好ましくはブチルゴムから作製される。このシリンジとニードルとが別個にパッケージされる場合、そのときは、このニードルは、好ましくは、ブチルゴムシールドが取り付けられる。Greyブチルゴムが好ましい。好ましいシリンジは、商標名「Tip−Lok」TMの下で販売されるものである。
【0071】
医師または患者が予備充填されたシリンジを受けるように、シリンジ中へのパッケージングが好ましい。ガラスコンテナ(例えば、シリンジまたはバイアル)が用いられる場合、ソーダ石灰ガラスからのよりむしろホウケイ酸ガラスから作製されたコンテナを用いることが好ましい。
【0072】
組成物がコンテナ中にパッケージされた後、このコンテナは、次いで、配給のための箱内、例えば、厚紙の箱の内側に囲われ得、そしてこの箱は、ワクチンの詳細、例えば、その商標名、ワクチン中の抗原のリスト(例えば、「B型肝炎組換え」など)、説明コンテナ(例えば、「使い捨て予備充填Tip−Lokシリンジ」または「10×0.5ml単回用量バイアル」)、その用量(例えば、「各々1回の0.5ml用量を含む」)、警告(例えば、「成人使用のみのため」)、使用期限日時、適応症などがラベルされる。各箱は、1つ以上のパッケージされたワクチン、例えば、5または10のパッケージされたワクチン(特にバイアルについて)を含み得る。このワクチンがシリンジ中に含まれる場合、このパッケージは、シリンジの絵を示し得る。
【0073】
ワクチンは、ワクチンの詳細、例えば、投与のための指示書、ワクチン内の抗原の詳細などを含む印刷物とともに一緒に(例えば、同じ箱中に)パッケージされ得る。これらの指示書はまた、警告、例えば、ワクチン接種の後のアナフィラキシー反応の事例で利用可能なアドレナリンの溶液を準備しておくことなどを含み得る。
【0074】
このパッケージされたワクチン材料は、好ましくは、滅菌されている。
【0075】
このパッケージされたワクチン材料は、好ましくは、発熱物質を含まず、例えば、用量あたり、<1EU(エンドトキシン単位、標準測定)、そして好ましは<0.1EUを含む。
【0076】
このパッケージされたワクチン材料は、好ましくは、グルテンを含まない。
【0077】
任意の水性のパッケージされたワクチン材料のpHは、5〜8の間、例えば、5.5〜6.5の間である。本発明のプロセスは、それ故、パッケージングの前にバルクワクチンのpHを調整する工程を包含し得る。
【0078】
このパッケージされたワクチンは、好ましは、2℃と8℃との間で貯蔵される。それは、凍結されるべきではない。
【0079】
(処置およびワクチンの投与の方法)
本発明の組成物は、ヒト患者への投与のために適切であり、そして本発明は、患者における免疫応答を高める方法を提供し、本発明の組成物を患者に投与する工程を包含する。
【0080】
本発明はまた、薬剤における使用のための本発明の組成物を提供する。
【0081】
本発明はまた、患者への投与のための医薬の製造における、(i)抗原;(ii)リン酸アルミニウムアジュバント;および(iii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントの使用を提供する。
【0082】
本発明の方法および使用は、HBV感染;HSV感染;HSVによって引き起こされる生殖器ヘルペス;HPV感染;HPVによって引き起こされる生殖器疣贅;HPVによって引き起こされる頸部癌;および/またはマラリアに対して保護するため、および/または処置するために患者に投与された後に免疫応答を惹起するために特に適切である。
【0083】
本発明の免疫原生組成物は、好ましくは、感染の保護および/または処置における使用のためのワクチンである。
【0084】
十分な効き目を有するために、代表的な免疫化スケジュールは、1つ以上の用量を投与することを含み得る。例えば、用量は:0および6月(時間0が最初の用量である);0、1、2および6月;0日、21日そして次に6〜12月の間の第3の用量;または0、1、2、6および12月であり得る。本発明の組成物は、筋肉内注入により、例えば、腕または脚中に投与され得る。本発明の組成物は、アルミニウムを基礎にしたアジュバントを含むので、成分の沈降が貯蔵の間に生じ得る。この組成物は、それ故、患者への投与の前に振とうされるべきである。この振とうされた組成物は、濁った白色の懸濁物であり得る。
【0085】
(さらなる抗原性成分)
HBsAg、HPV L1、HSV gDおよび/マラリア抗原を含むことと同様に、本発明の組成物は、1つ以上のさらなる抗原を含み得る。例えば、それらは、以下の1つ以上を含み得る:A型肝炎ウイルス抗原;ジフテリアトキソイド;破傷風トキソイド;不活性化ポリオウイルス抗原;細胞百日咳抗原;無毒化百日咳トキシン、線維状血球凝集素、および、必要に応じて69kDa抗原を含む、無細胞百日咳抗原;代表的には、キャリヤタンパク質として破傷風トキソイドとの複合体化H.influenzaeタイプB皮膜糖類;複合体化血清群A N.meningitidis皮膜糖類;複合体化血清群C N.meningitidis皮膜糖類;複合体化血清群Y N.meningitidis皮膜糖類;複合体化血清群W135 N.meningitidis皮膜糖類;複合体化S.pnuemoniae皮膜糖類。
【0086】
(リン酸アルミニウムの代替物)
いくつかの適用には、リン酸アルミニウムアジュバントを水酸化アルミニウムアジュバントで置換すること、または水酸化アルミニウムとリン酸アジュバントを組み合わせることが有用であり得る。HPVおよびHSVワクチンでは、例えば、水酸化アルミニウムは、リン酸アルミニウムより好ましくあり得る。従って、本発明の上記の定義は、補正され得る。
【0087】
用語「水酸化アルミニウム」は、当該分野では一般的であるが、存在している実際の化学的化合物の正確な説明はない[例えば、参考文献2の第9章を参照のこと]。本発明は、アジュバントとして一般的に使用される任意の「水酸化アルミニウム」アジュバントを用い得、これらは、代表的には、アルミニウムのオキシヒドロキシド塩であり、これらは、通常、少なくとも部分的に結晶である。式AlO(OH)によって表され得るオキシ水酸化アルミニウムは、赤外(IR)分光学によって、水酸化アルミニウムAl(OH)のようなその他のアルミニウム化合物から、特に、1070cm−1における吸着バンドおよび3090〜3100cm−1における強力なショルダーの存在によって区別され得る[参考文献2の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化の程度は、半分高さ(WHH)における回折バンドの幅によって反映され、乏しい結晶の粒子は、より小さな結晶サイズに起因するより大きなライン広範化を示す。表面積は、WHHが増加するとき増加し、そしてより高いWHH値をもつアジュバントは、抗原吸収についてより大きな能力を有することが観察されている。線維状形態(例えば、透過型電子顕微鏡写真に見られるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントのついて代表的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは代表的には約11であり、すなわち、このアジュバント自体は、生理学的pHで正の表面荷電を有する。pH7.4でmgA+++あたり1.8〜2.6mgタンパク質吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて方向されている。
【0088】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含有する(including)」および「からなる」を包含し、例えば、Xを含む組成物は、専らXからなり得るか、またはさらなる何かを含有し得る(例えば、X+Y)。用語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくても良い。必要である場合、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0089】
数値xに関する用語「約」は、例えば、x±10%を意味する。
【0090】
詳細に述べられていなければ、2つ以上の成分を混合する工程を含むプロセスは、混合の任意の特定の順序を要求しない。それ故、成分は任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在するとき、そのときは、2つの成分が互いと組み合わされ得、そして次にこの組み合わせが、第3の成分と組み合わされ得るなどである。
【0091】
イオン化可能基が、本明細書中の式で示される中性形態で存在し得るか、または例えば、pHに依存して荷電された形態で存在し得ることが認識される。それ故、リン酸基は、−P−O−(OH)として示され得、この式は、中性リン酸基の単なる代表であり、そしてその他の荷電形態が本発明によって包含される。同様に、糖のリングは、開いた形態および閉じた形態で存在し得、そして、閉じた形態は、本明細書中では構造式で示されているが、開いた形態もまた、本発明によって包含される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
(発明を実施するための様式)
組換えS.cerevisiae中で発現されたHBsAgは、細胞回収、沈殿、限外濾過、ゲル透過、イオン交換、超遠心分離および脱塩を含むプロセスによって精製される。精製された抗原は、グリコシル化されておらず、そして実質的に球形の粒子の形態で観察され得る(平均直径約20nm)。
【0093】
抗原は、リン酸緩衝液溶液中に維持され、そして撹拌下、室温で1時間の間アモルファスリン酸アルミニウムアジュバントに吸着される(3〜6mg/mlAl+++)。
【0094】
この混合物は室温で2週間の間貯蔵され、そして次に冷蔵庫で維持される。Corixaからの3D−MPLアジュバントが次いで添加され、リン酸アルミニウムアジュバント上に吸着され、そして収入のための水および滅菌生理食塩水を用いて、所望の最終抗原濃度までの任意の必要な希釈が達成される。このバルクワクチンは、次いで、使い捨てシリンジ中の個々の用量にパッケージされる。
【0095】
このようにして製造されたワクチンは、最初、健常青年および成人中で試験される。このワクチンは、すべての年齢グループの間でENGERIX BTM産物より強力な免疫応答(100%までの血清保護率、より高いGMT値)を惹起する。
【0096】
リン酸アルミニウム/3dMPLアジュバント混合物で、このワクチンが2−用量のスケジュール(0および6月)として投与されるとき、98.6%の血清保護率が観察され、これは、0、1および6月でENGERIX BTMを用いて観察される96.8%より良好である。GMTは、ほぼ7800(ENGERIX BTMの3700に対して)である。初期試験の後、試験は、15歳およびより年配である(平均年齢58)、血液透析前患者および既に血液透析を受けている患者に移行する。これらの患者は、生まれつきHBVである。このワクチンの単回用量(20μgのHBsAg)は、0、1、2および6月で投与された2倍用量のENGERIX BTMと比較される。血清保護および抗HBsAg GTMは以下のようである:
【0097】
【表1】


それ故、これらのワクチンは、市場で主役のENGERIX BTMワクチンより血液透析成人におけるより良好な免疫応答を一貫して惹起した。さらに、保護の発生は、より迅速であり(例えば、3月で血清保護された75%の患者に対して、ENGERIX BTMでは52%、p<0.005)そしてより長く持続する。
【0098】
肝臓移植を待つ生まれつきHBVである患者におけるさらなる試行は、類似の結果を示す。ワクチンは、0日および21日で(ENGERIX BTMについてはプララス7日の用量)、そして次に6〜12月の間の最終用量投与される。
【0099】
【表2】


血清保護率は、リン酸アルミニウム/3dMPLを用いてより高い(60%対32%、p<0.035)。
【0100】
満足できる安全性および反応発生能力がすべての患者で観察される。一時的な局所的不快さが本発明のワクチンでより高いが、これは、迅速に解決し、そして上記治療利益に比較されるとき、受容可能な副作用である。
【0101】
本発明が例示のみによって説明されており、そして本発明の範囲および思想内である改変がなされ得ることが理解される。
【0102】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)リン酸アルミニウムアジュバント;および(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを含むアジュバント組成物であって、少なくとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAが該リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている、アジュバント組成物。
【請求項2】
前記組成物が、5μg/mlより少ない非吸着3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAを有する、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
少なくとも95%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAが、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている、請求項1〜2のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
前記3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントがアシル化二糖類の混合物を含み、ここで、各二糖類が:(a)2つのβ−1’,6−連結2−デオキシ−2−アミノグルコース単糖サブユニットを有し;(b)4’位置でリン酸化され;(c)1、3および6’位置で置換されておらず、(d)3’位置でO−アシル化され、そして(e)2および2’位置でN−アシル化され、そしてここで、アシル化二糖類の混合物が、少なくとも10重量%の、2、2’および3’位置のアシル基の各々がそれ自体が脂肪族炭素原子においてO−アシル基で置換される成分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項5】
トリメチルアンモニウムイオンをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項6】
前記組成物が、200〜400mOsm/kgの浸透圧重量モル濃度を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項7】
前記組成物が、5〜7.5のpHを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項8】
(i)リン酸アルミニウムアジュバント;(ii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバント;および(iii)抗原を含む免疫原性組成物であって、少なくとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAが該リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている、組成物。
【請求項9】
前記リン酸アルミニウムアジュバントが、アモルファスである、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアジュバント組成物。
【請求項10】
前記抗原が、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも50%(好ましくは少なくとも90%)のHBsAgが、リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、ホスホリピドを含むリピドマトリックスを含む実質的に球形の粒子の形態にある酵母で発現されたHBsAgである、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記酵母が、Saccharamyces cerevisiaeである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の0.5ml用量が:約50μgの3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドA;(Al3+の形態によって発現される)約0.5mgのリン酸アルミニウム;および約20μg/mlのHBsAgを有する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記抗原が、酵母で発現された混合粒子(RTS、S)であり:(a)HBV表面抗原のプレS2部分の4つのアミノ酸を経由してHBsAgに連結されるP.falciparum CSタンパク質の実質的にすべてのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質であるRTS;および(b)B型肝炎ウイルス表面抗原であるSを含む、請求項8または請求項9の組成物。
【請求項16】
シリンジに梱包された、請求項8〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記シリンジが、ホウケイ酸ガラスから作製され、そしてブチルゴムから作製される先端部キャップを有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項8〜15のいずれか1項に記載の組成物を調製するプロセスであって:(a)前記抗原および前記リン酸アルミニウムアジュバントを混合する工程;および次いで(b)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントを該抗原/リン酸アルミニウム混合物と組み合わせる工程、を包含する、プロセス。
【請求項19】
前記抗原が、前記工程(a)で前記リン酸アルミニウムアジュバントに吸着する、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記工程(b)の後に、前記混合物の0.5mlのサンプルをコンテナ中に抽出および梱包する工程をさらに包含する、請求項18または請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記コンテナが、ガラスシリンジである、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
(i)抗原;(ii)リン酸アルミニウムアジュバント;および(iii)3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAアジュバントの、患者に投与するためのワクチンの製造における使用であって、ここで、少なくとも50%の3−O−脱アシル化モノホスホリルリピドAが該リン酸アルミニウムアジュバントに吸着されている、使用。
【請求項23】
前記ワクチンが、筋肉内注入用である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記抗原が、HBsAgである、請求項22または23の使用。
【請求項25】
前記組成物が、0、1、2および6月における用量であって、時間0が最初の用量である免疫化スケジュールによって投与される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記患者が、血液透析成人である、請求項24または25に記載の使用。

【公表番号】特表2008−530195(P2008−530195A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555701(P2007−555701)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000557
【国際公開番号】WO2006/087563
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(506361100)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス, インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】